結合分子結合酵素アッセイによる分析物の検出
分析物を検出および定量するための方法、キットおよび組成物が提供される。典型的には、本方法では、分析物特異的結合剤と分析物との間で複合体が形成される。分析物特異的結合剤は、結合分子および分析物の存在を示すPCR鋳型を生成する活性を有する酵素を含んでいる。PCR鋳型の増幅および検出は、分析物濃度の感受性および定量的測定を生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明は、分析物を検出および定量するための、例えばリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素へ結合した結合分子を有する分析物特異的結合剤を用いる、便宜的で高速かつ感受性の方法、組成物、およびキットに関する。分析物が結合分子に結合すると、酵素は、核酸増幅反応のための鋳型を生成するための手段を提供する。増幅産物の存在の検出は、サンプル中に分析物が存在することを表示する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイの開発および核酸検出における進歩は、生物学的サンプル中の分析物の検出を前進させてきた。酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)は、サンプル中のタンパク質の存在についてのサンプルの高スループット・スクリーニングを許容する。分析物の存在は、アルカリ・ホスファターゼまたはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼをベースとする酵素的比色アッセイの使用によって検出されることが多い。これは酵素基質の比色変化の検出範囲に依存してアッセイの感受性および範囲を制限する。これには、血清中の分析物のおおよその量を決定するための初期スクリーニング、またはサンプルが使用される特定方法および試薬の検出範囲内で試験されることを保証するために、広範囲の連続する希釈率の使用のいずれかを必要とする。この方法に関するその他の問題には、高いバックグラウンドレベルならびに低感受性が含まれる。例えば、ELISAプレートへのホースラディッシュ・ペルオキシダーゼの直接結合は、非特異的バックグラウンドシグナルを生じさせる。非特異的結合を減少させるために、比較的に不活性のタンパク質(乳汁または血清アルブミン)を含有するブロッキング溶液がアッセイに加えられる。しかし、バックグラウンドシグナルを生じさせる非特異的結合は排除されないので、それによってアッセイは低感受性となる。
【0003】
これらの制限に対応するために、酵素に基づくサンプル中の分析物の検出と結び付けて使用するための核酸に基づく検出方法が開発されてきた。このような方法は、時々はイムノ−PCRと呼ばれている。
【0004】
例えば、特許文献1は、特異的タンパク質を検出する感受性を増加させるために、抗体の検出とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とを結び付けている。標準的イムノ−PCRプロトコールでは、核酸配列に結合した抗体は、抗原分子上のエピトープに結合する。抗体と核酸との結合は、核酸および抗体に対して二重特異性親和性を備えるリンカーを介して発生するので、このため特異的抗原−抗体−DNAコンジュゲートの形成を生じさせる。続いて、結合した核酸配列のセグメントはPCRによって増幅させられ、PCR産物はゲル電気泳動法によって検出される。しかし、DNAを抗体へ結合させる工程は、DNAが付着性であり、任意の未結合DNAは検出前にシステムから容易に洗浄されないために、アッセイにおける非特異的結合および高いバックグラウンドを生じさせるので、問題が多い。
【0005】
その他のイムノ−PCRアッセイおよび方法は、例えば、非特許文献1、特許文献2および特許文献3;特許文献4;特許文献5および特許文献6に記載されている。特許文献2および特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、それらの各々がオリゴヌクレオチドに連結している、少なくとも第1および第2分析物結合化合物(例えば、抗体など)を用いる方法を含んでいる。化合物が分析物に結合すると、オリゴヌクレオチドは近接近させられ、そこでこれらは相互作用して、増幅反応工程後に検出可能な核酸複合体を形成することができる。しかしこれらの方法はいずれも、結合化合物を酵素とは連結させない。むしろこれらの方法は全部が、相違するオリゴヌクレオチドに連結した2つ以上の結合化合物の使用を必要とする。さらに、オリゴヌクレオチドの小さな部分が、特別にはバックグラウンドシグナルに起因して、結合化合物の濃度が上昇するにつれて分析物の非存在下で相互作用する可能性がある。
【0006】
特許文献5は、1)例えばオキシダーゼなどの開裂誘導成分を有し、複合体内で第1タンパク質に対して特異的である第1プローブと、2)複合体内で1つ以上の第2タンパク質に対して特異的な1つ以上の結合化合物とを用いるイムノ−PCRアッセイについて記載している。第1プローブおよび1つ以上の結合化合物が複合体と結合し、近接近させられると、開裂プローブは、結合化合物に結合した分子標識を開裂する、一重項酸素などの活性種を生成するように誘導される。放出された分子標識は、サンプル中の分子複合体のプロファイルを提供するために分離かつ検出される。極めて様々な分離技術を使用すると、物理的、化学的または光学的相違に基づいて当該の分子標識を識別することができる。しかし、このシステムで使用される分子標識は、開裂誘導成分による開裂に感受性でなければならない。
【0007】
特許文献7は、核酸分子を修飾することのできるホスファターゼなどの酵素を検出するための方法について記載している。ホスファターゼがサンプル中に存在する場合は、ホスファターゼは標的核酸分子から5’末端リン酸塩を除去し、それによりエキソヌクレアーゼ消化から標的核酸を保護するであろう。エキソヌクレアーゼ処理および任意の増幅反応工程後の標的核酸の検出は、サンプル中のホスファターゼの存在を指示している。この方法は抗体もしくはその他の結合成分に結合したDNAを含むプローブの使用を回避するが、その教示はホスファターゼ活性を有する酵素の検出に限定される。さらに、検出された酵素は、核酸分子を直接的に修飾することができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,665,539号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064779号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0003361号明細書
【特許文献4】米国特許第6,511,809号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/019470号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2007/044903号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0257879号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Niemeyerら、(Nuc.Acid Res.31:e90,2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、分析物特異的結合剤を用いてサンプル中の分析物を検出および定量するための方法、キット、および組成物を提供する。分析物特異的結合剤は、例えば、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。分析物特異的結合剤は、使用される特異的結合分子に対応する分析物を検出するために分析物特異的結合剤を分析物に結合させるための条件下で、サンプルとともにインキュベートされる。結合した分析物特異的結合剤は、1つ以上のポリヌクレオチドと、分析物特異的結合剤中の酵素に依存して、酵素が核酸増幅反応のための鋳型を生成することを許容する条件下でインキュベートされる。鋳型は、好ましくは、増幅産物を形成するために使用できるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための鋳型である。増幅産物の存在の検出は、サンプル中に分析物が存在することを表示する。定量的増幅反応は、サンプル中の分析物の量を定量するために実施できる。これらの方法、組成物、およびキットは、特異的結合対結合反応(例、免疫検出法)と触媒反応(例、酵素に基づく検出系)の感受性とを結び付ける。これらはさらに、市販の系において見られる様々なバックグラウンドの起源を減少または排除する2工程結合/検出プロセスを許容することによって、市販の系全体のバックグラウンドレベルの減少を許容する。
【0011】
1つの態様においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物を含有する可能性があるサンプルと接触させる工程による方法が提供される。分析物特異的結合剤は、リガーゼ活性を有する酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。リガーゼ活性は、トポイソメラーゼまたはリガーゼのいずれかから引き出すことができる。結合した分析物特異的結合剤は、さらにリガーゼ活性のために基質とインキュベートされる。基質は、少なくとも1つの二本鎖DNA分子の第1および第2末端を含んでおり、末端は、増幅鋳型を形成するために(例、ライゲーション混合物中で)ライゲーションを許容する条件下で相互にアニーリングしてライゲートされることのできる適切な付着末端である。これらの末端は、少なくとも1つの二本鎖DNA分子によって、少なくとも2つの別個の二本鎖DNA分子によって、または少なくとも1つの二本鎖DNA分子および1つの一本鎖核酸分子によって提供することができる。ライゲーション混合物の少なくとも一部分は、増幅産物を少なくとも1つのdNTP、好ましくは全4つのdNTP、およびポリメラーゼの存在下で生成することを許容する方向において鋳型の反対側の鎖へハイブリダイズする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む増幅反応混合物中においてインキュベートされる。増幅産物は、分析物がサンプル中に存在するかどうかを決定するための増幅反応中および/または後に検出される。増幅産物は、qPCRまたは他の方法による増幅中に検出することができる。
【0012】
また別の態様においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物特異的結合剤を、分析物の結合を許容する条件下でサンプルとともにインキュベートする工程による方法が提供されるが、このとき分析物特異的結合剤は、逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。結合した分析物特異的結合剤は、さらに逆転写反応混合物中で基質として機能できるRNA分子とインキュベートされると、順に核酸増幅のための鋳型として機能できるcDNAを形成する。逆転写反応混合物の少なくとも一部分は、好ましくは少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む増幅反応混合物中でインキュベートされる。プライマーは、1つは相補鎖の重合を許容するためにcDNAにハイブリダイズでき、1つはcDNAの相補鎖へハイブリダイズできるように設計される。プライマーは、少なくとも1つのdNTP、好ましくは全4つのdNTP、およびポリメラーゼの存在下で生成することを許容する方向において、cDNAおよび相補鎖へハイブリダイズするように設計される。増幅産物は、分析物がサンプル中に存在するかどうかを決定するための増幅反応中および/または後に検出される。増幅産物は、qPCRまたは他の方法によって増幅中に検出することができる。
【0013】
さらに別の態様においては、本明細書に開示した方法を実践するためのキットおよび組成物が提供される。キットおよび組成物は、例えば、トポイソメラーゼ、リガーゼ、または逆転写酵素などの酵素に結合した分析物特異的結合分子を含む分析物特異的結合剤、酵素成分のための1つ以上のポリヌクレオチド基質、およびそれらのためのパッキング材料を含むことができる。本キットもしくは組成物は、例えば逆転写酵素、PCR用試薬、特別にはqPCRなどの核酸増幅反応工程のための1つ以上の試薬、およびプライマーをさらに含むことができる。分析物特異的結合剤の代わりに、本キットもしくは組成物は、例えば抗体などの分析物特異的結合成分へ結合するための基を有する酵素を含むことができる。例えば、プロテインA、プロテインG、またはプロテインLに結合した酵素は、最終使用者が分析物特異的結合剤を形成するために抗体と混合することができる。または、酵素は、ストレプトアビジンもしくはアビジンに結合させ、他の起源(例、市販されているかまたは実験室で生成する)から入手したビオチン化抗体と混合することができる。以下では、分析物特異的結合分子および酵素を相互に結合させるためのその他の方法について考察する。
【0014】
また別の態様においては、分析物特異的結合分子および酵素を含む分析物特異的結合剤が提供される。分析物特異的結合剤は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、レクチン、細胞表面受容体、受容体リガンド、ペプチド、炭水化物、アプタマー、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、プロテインA、プロテインG、およびプロテインL、ならびにそれらの任意の結合フラグメントからなる群から選択される分析物特異的結合分子を含むことができる。酵素は、トポイソメラーゼ、リガーゼ、逆転写酵素、アデニングアニン・アルキルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、リコンビナーゼ類、例えばCreリコンビナーゼλ−インテグラーゼ、φC31−リコンビナーゼまたはflp−リコンビナーゼ、およびポリヌクレオチドキナーゼを含むことができる。
【0015】
また別の態様においては、分析物を検出するための方法、キット、および組成物が提供されるが、このとき2つ以上の分析物特異的結合剤と分析物との間で複合体が形成される。この態様では、各分析物特異的結合剤は、分析物特異的結合分子およびそれに結合した酵素の一部分を含んでいる。酵素の部分は相互作用して、分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、機能的酵素複合体を形成する。機能的酵素複合体は、次にサンプル中における分析物の存在および/または量の指標である検出可能なシグナルを生成する。所定の実施形態においては、酵素は、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である。そこで、本出願に記載した方法、キット、および組成物では、酵素に結合した分析物特異的結合分子は、各々が分析物特異的結合分子および酵素の一部分を含む2つ以上の分析物特異的結合剤と、酵素の部分が相互作用して分析物特異的結合剤が分析物へ結合すると機能的酵素複合体を形成するように、置換することができる。
【0016】
所定の態様においては、第1および第2結合分子は、抗体(またはその抗原結合フラグメント)を含んでいる。1つの実施形態においては、抗体は、例えば融合タンパク質として、酵素へ直接的に連結または結合している。他の実施形態においては、抗体は、例えばビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用などのビオチン−結合相互作用を通して、酵素へ間接的に連結または結合している。
【0017】
1つの態様においては、抗体などの分析物特異的結合分子は、スペーサ分子によって酵素から分離されている。同様に、酵素が抗体などの分析物特異的結合成分へ結合または連結するための基(例、プロテインA、プロテインG、プロテインL、ビオチン、ストレプトアビジン、またはアビジン)を有する1つの実施形態においては、酵素は、スペーサ分子によって基から分離することができる。複数の実施形態においては、スペーサ分子は、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、ポリヌクレオチド、またはその他の化学リンカーを含んでいる。スペーサ分子を用いることによって分析物特異的結合分子を酵素から分離することは、例えば融合タンパク質に対するより大きな柔軟性を提供し、結合および酵素成分の妨害されない機能を促進することに有用である。スペーサ分子は、さらにまた分割酵素成分(例、NおよびC末端部分)の相互作用および機能的酵素複合体の再構成を促進するためにも役立つ。
【0018】
用語の定義
本明細書で使用する用語「増幅」または「合成」は、核酸配列に適用される場合は、それによって特定核酸配列の1つ以上のコピーが鋳型核酸から生成されるプロセスを意味する。本明細書で使用する「増幅」は、プライマー伸長反応によるように、核酸配列の単一複製(single replication/copying)を含むことが意図されている。しかし一般的に、増幅は、当技術分野において周知の技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)テクノロジー(Dieffenbach,C.W.and G.S.Dveksler(1995) PCR Primer,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.)を用いて実施される。さらに、本明細書に開示した方法は、鎖置換増幅法(SDA)、回転環増幅法(RCA)、転写媒介増幅法(TMA)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)を用いて実施することができる。シグナルの増幅は、リアルタイム増幅法を用いて均質な閉管環境内で生成することができる。リアルタイム増幅法のために適切な機器類には、Stratagene社製Mx3005P、ABI PRISM社製TaqManシステム、Roche社製LightCycler、Idaho Technologies社製RapidCycler、Bio−Rad社製iCyclerおよびCepheid社製SmartCyclerが含まれる。
【0019】
本明細書で使用する「増幅産物」は、熱安定性または非熱安定性DNAポリメラーゼを用いて重合反応によって生成されたポリヌクレオチドを意味する。好ましい実施形態においては、重合反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。増幅産物は、定性的または半定量的方法によって、例えばゲル電気泳動法および染色もしくはドットブロット法によって、増幅反応中および/または増幅反応後の1つ以上の時点に入手された増幅反応由来のサンプルを使用して検出することができる。増幅産物は、増幅反応を通して、例えば上述した試薬などの、多数の市販の試薬のいずれかを用いて蛍光監視により定量的PCR法を使用して検出することができる。
【0020】
1つの実施形態においては、指数関数的増幅は、一本鎖ポリヌクレオチド鋳型および単一プライマーを用いて達成できる。これは、一本鎖標的の一方の末端ではプライマー結合配列を、および標的鎖の反対側の末端ではプライマー結合部位の相補配列を含有するポリヌクレオチド鋳型配列を設計することによって達成される。プライマーのアニーリングおよび伸長は、同一のプライマー結合部位を含有する標的相補鎖の形成を生じさせる。この方法では、結果として生じる二本鎖標的の(+)および(−)鎖はどちらも標的二重鎖の対向する末端で同一のプライマー部位を含有しており、ポリメラーゼおよび標的核酸と組み合わせて使用される同一プライマーは、+および−標的鎖の両方の複製を促進する。そこで、所定の実施形態においては、本出願で考察する第1および第2プライマーは、同一プライマーであってよい。
【0021】
本明細書で使用する用語「分析物」は、本明細書に開示した方法によって検出またはアッセイされる物質を意味する。典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、細胞表面受容体、受容体リガンド、核酸、炭水化物、分子、細胞、微生物およびそれらのフラグメント、またはそれに対して分析物特異的結合分子、例えば抗体を発生させることのできる任意の物質が含まれてよいが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する用語「分析物特異的結合剤」は、酵素の少なくとも活性部分に結合または連結した分析物特異的結合分子を有する分子を意味する。これらの部分は、例えば、単一融合タンパク質として2つの部分の発現によって、いずれのタンパク質にも自然ではない介在配列を用いて、または用いずに結合することができる。例えばプロテインA、G、またはLなどの一般的抗体結合リガンドに対するコーディング配列は、酵素を分析物結合分子へ結合させるために、酵素のコーディング配列へ融合させ、抗体と混合することができる。ビオチンおよびストレプトアビジンなどの高親和性結合パートナーもまた使用できる。ビオチンは、分析物特異的結合剤のいずれかの部分に結合させることができ、アビジンまたはストレプトアビジンは相互に結合させることができる。分析物特異的結合分子、例えば抗分析物mAb(モノクローナル抗体)は、分析物特異的結合剤を形成するために架橋剤によって酵素へ結合させることができる。タンパク質をコンジュゲート化するために当技術分野において公知の任意の架橋結合化学は、本発明と結び付けて使用できる。
【0023】
結合部分は、結合分子が酵素の活性を実質的に妨害しない、およびその逆もまた同様であるように、酵素成分へ機能的に連結している。この連結は、酵素の活性を70%、60%、50%、40%もしくは30%未満、好ましくは25%、20%、15%、もしくは10%未満、より好ましくは5%、3%、2%、もしくは1%未満減少させる。同様に、この連結は、結合成分の親和性を70%、60%、50%、40%もしくは30%未満、好ましくは25%、20%、15%、もしくは10%未満、より好ましくは5%、3%、2%、もしくは1%未満減少させる。本発明は、分析物特異的結合剤の成分の特定構造または結合方法によって限定されない。典型的には、分析物特異的結合分子および酵素は、約1:1の比で存在している。しかし、様々な部分の機能が他の成分の存在によって実質的に阻害されないことを前提に、その他の比率も可能である。
【0024】
分析物特異的結合剤の酵素成分に適用される本明細書で使用する用語「相互作用する」は、反応性成分が物理的に結び付くことができるように、2つ以上の反応性成分(例、酵素の第1および第2部分、例えばトポイソメラーゼ、リガーゼ、または逆転写酵素)を相互に近接近させることを意味する。酵素の第1および第2部分を有する1対の分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、酵素の第1および第2部分は、相互作用して機能的酵素複合体を形成できるように近接近させられる。この機能的酵素複合体を次に使用すると、増幅鋳型を(例えば、リガーゼまたは逆転写酵素活性を通して)合成することができる。酵素の第1および第2部分が(相互作用せずに)分離される場合は、これらの部分には実質的に合成活性(すなわち、酵素活性、例えばリガーゼまたは逆転写酵素活性を通して増幅反応に使用できる鋳型を合成する能力)が欠けている。
【0025】
本明細書で使用する用語「実質的に合成活性が欠けている」は、機能的酵素複合体の合成活性を50%、40%、30%、20%または10%以上有していない、および好ましくは1%未満しか有していない酵素の第1または第2部分を意味する。
【0026】
本明細書で使用する、第1酵素に関連する用語「部分」は、単離されると実質的に核酸合成活性が欠如するが、酵素の第2部分と相互作用すると核酸合成活性を有する、酵素のフラグメントを意味する。本明細書で使用する、第1酵素に関連する用語「部分」は、50〜1000アミノ酸のフラグメントであるが全長酵素より短いフラグメントを意味する。1つの実施形態においては、部分は、酵素の少なくとも50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、もしくは600以上のアミノ酸を有するが、全長酵素よりは短い。また別の実施形態では、酵素の第1および第2部分は一緒に、野生型酵素の少なくとも90%、または少なくとも95%配列同一性を含んでおり、それらが相互作用すると機能的酵素複合体を形成する。
【0027】
本明細書で使用する用語「機能的酵素複合体」は、本明細書に規定したように、いずれかの部分単独(例、複合体中ではない)の合成活性の少なくとも2倍である合成活性を有するポリペプチド複合体を形成するために相互作用する酵素の2つ以上の部分を意味している。
【0028】
本明細書で使用する用語「アニーリング」は、オリゴヌクレオチドプライマーが相補的付着末端または鋳型核酸鎖へハイブリダイズすることを許容することを意味する。プライマーアニーリングのための条件は、プライマーの長さおよび配列に伴って変動し、そのプライマーについての計算Tm値に基づいている。本明細書で使用する用語「アニーリングを許容する条件下」は、反応において適切な塩、カチオン、緩衝液、および相補的核酸の濃度、ならびに二本鎖核酸分子の形成が可能であるような適切な温度を含むがこれらに限定されない適切な条件を有することであると理解されている。本明細書で使用する「二本鎖核酸分子」は、好ましくは2つの別個の核酸分子によって形成される。一般に、増幅レジメンにおけるアニーリング工程は、鎖分離工程後に温度をプライマー配列について計算されたTmに基づく温度へ、このようなアニーリングを許容するために十分な時間にわたり低下させることを含んでいる。
【0029】
本明細書で使用する用語「抗体」は、抗原、例えば分析物に結合できる免疫グロブリンタンパク質を意味する。抗体は、一般には「エピトープ結合フラグメント」と呼ばれる、全長抗体によって認識されるエピトープへ結合する能力を保持している抗体の任意の部分を含んでいる。抗体フラグメントの実施例には、好ましくは、Fab、Fab’、およびF(ab’)2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)ならびにVLもしくはVHドメインのいずれかを含むフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。一本鎖抗体を含むエピトープ結合フラグメントは、可変領域を単独で、または次のヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体もしくは一部分と組み合わせて含むことができる。
【0030】
本明細書で使用する用語「分析物特異的結合分子」は、分析物に安定性で結合する分子または分子の一部分を意味する。結合分子には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、アプタマー、細胞表面受容体、受容体リガンド、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、ならびにプロテインA、G、およびL、レクチン、核酸、ペプチド、分析物相互作用パートナーが含まれるが、これらに限定されない。結合分子は、さらにまた列挙した結合成分の結合フラグメント、例えば上記に列挙した抗体フラグメントであってよい。結合分子は、分析物特異的結合剤を形成するために酵素へ直接的または間接的に連結している。
【0031】
本明細書で使用する用語「結合分析物特異的結合剤」は、その対応する分析物に結合した分析物特異的結合剤である。
【0032】
本明細書で使用する用語「Ct」は、定量的増幅反応から生成されたシグナルが最初に「閾値」より上方に上昇する、すなわち標的核酸配列の増幅の最初の確実な検出が生じるサイクル数を意味する。「確実な」は、シグナルが増幅中の増幅産物の検出可能なレベルを反映することを意味する。Ctは、一般に未知の量の標的核酸の出発量と相関しており、すなわちより低量の標的はより後期のCtを生じさせる。Ctは、出発核酸の初期コピー数または濃度と結び付いている。
【0033】
「捕捉分子」は、分析物へ結合するための固体支持体上の特異的または非特異的物質を意味する。捕捉分子は、分析物へ特異的に結合する抗体であってよい。捕捉分子は、さらにまた分析物によって結合されている一本鎖もしくは二本鎖の核酸配列、DNAまたはRNAであってもよい。または、捕捉分子は、ポリ−リジン、シラン、コラーゲン、または固体支持体上に分析物を捕捉するための他の非特異的物質であってよい。
【0034】
本明細書で使用する、リガーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、または他の酵素の用語「触媒部分」は、本明細書に開示した方法に使用される酵素反応を促進するために必要とされる酵素の部分である。このような酵素の構造は公知であり、様々なアミノ酸とドメインおよび酵素活性との間の構造−機能関係は明確に理解されている(例えば、トポイソメラーゼについてはChampouxら、Annu.Rev.Biochem.70:369−413,1991;ならびにポリメラーゼについてはBraithwaite and Ito,Nuc.Acids Res.19:4045,1991、およびBrathwaite and Ito,Nucleic Acids Res.21:787,1993を参照されたい。それら全部は参照して本明細書に組み込まれる)。酵素の特異的触媒活性を実質的には変化させない短縮および突然変異を含有する酵素は、本明細書に開示した方法に使用できる。
【0035】
本明細書で使用する用語「cDNA」は、RNA依存性DNAポリメラーゼ(例、逆転写酵素)の作用によってRNA鋳型から生成される相補的またはコピーポリヌクレオチドを意味する。「cDNAクローン」は、クローニングベクターで運ばれる、当該のRNA分子に相補的な二重鎖DNA配列を意味する。
【0036】
本明細書で使用する用語「開裂」は、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖の切断、典型的には酵素的切断を意味する。
【0037】
本明細書で使用する用語「開裂産物」は、ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖の切断後に溶液中へ放出されるポリヌクレオチドフラグメントである。一部の実施形態においては、開裂産物は、トポイソメラーゼによって開裂されたオリゴヌクレオチドである。また別の実施形態においては、開裂産物は、制限酵素によって開裂されたオリゴヌクレオチドである。開裂産物は、相補鎖へ事前にハイブリダイズした、短い一本鎖部分であってよい。または、開裂産物は、二本鎖であってよい。
【0038】
本明細書で使用する用語「開裂部位」は、開裂剤によって開裂され得るポリヌクレオチド構造もしくは配列を意味する。開裂部位には、トポイソメラーゼ酵素認識部位、制限酵素部位、リボザイム部位、ニッカーゼ部位、DNAザイム部位、回転環レプリコンと結び付いているニッカーゼについての認識部位および移入の起源、ならびにヌクレアーゼ開裂部位が含まれるが、これらに限定されない。例えば、ワクシニアウイルス(vaccinia−virus)に基づくトポイソメラーゼおよびMCVトポイソメラーゼに対する特異的開裂認識部位は、CCCTTである。開裂は、最後のTの後で起こる。制限酵素のための開裂部位は周知であり、分子生物学試薬のための多数のカタログのいずれかに見いだすことができる。
【0039】
本明細書で使用する用語「適合性付着末端」は、核酸分子のライゲーションを許容する条件下でハイブリダイズすることのできる、典型的には核酸分子の短い(例えば、長さが約20ヌクレオチド未満、約15未満、または約10未満)一本鎖末端である。付着末端のアニーリングする部分の長さを増加させることによって、鎖が安定性にアニーリングする温度が上昇し、より高温(例えば、37℃)でのリガーゼの使用を許容する。このような基質は、ヌクレオチド主鎖内にギャップを含むことができるが、ヌクレオチド対合内にはギャップを含んでいない。トポイソメラーゼによるライゲーションは、アクセプター分子の5’末端で遊離5’−OHの存在を必要とし、従来型リガーゼによるライゲーションは5’リン酸基を必要とする。
【0040】
本明細書で使用する用語「相補的」は、1本の鎖の構造が他方の鎖の構造を決定するように、DNA、および場合によってはRNAの鎖間でプリンおよびピリミジン塩基が正確に対合する能力を意味する。第1ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドに対して、第1ポリヌクレオチドのあらゆるヌクレオチドが第2ポリヌクレオチドの相補領域内のヌクレオチドと塩基対を形成する場合は、「十分に相補的」または「完全に相補的」であると言われる。第1ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドに対して、第1ポリヌクレオチドのあらゆるヌクレオチドが第2ポリヌクレオチドの相補領域内でヌクレオチドと塩基対を形成しない場合は、相補的ではない(すなわち、部分的に相補的である)。例えば、2つのポリヌクレオチドは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%相補的である可能性がある。相補性率は、例えば、相補性塩基の数を二本鎖部分の全長またはポリヌクレオチドの短い方の鎖の長さによって割ることによって決定できる。ポリヌクレオチド鎖間の相補性度は、ポリヌクレオチド鎖間のアニーリングまたはハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な影響を及ぼす。これは、ポリヌクレオチド鎖間の結合に依存する、増幅反応において特に重要である。オリゴヌクレオチドは、増幅を許容するために鋳型に対して100%相補性である必要はない。オリゴヌクレオチドと鋳型との間のミスマッチは、伸長反応においてオリゴヌクレオチドの3’末端よりオリゴヌクレオチドの5’末端に近い方でより多く許容される。典型的には、オリゴヌクレオチドの末端3’ヌクレオチドでのミスマッチは、ポリメラーゼによる伸長を阻害するであろう。
【0041】
本明細書で使用する、結合、増幅または増幅産物の形成、ライゲーション、ハイブリダイゼーションなどを「許容する条件」は、例えば塩、緩衝液、ヌクレオチド、酵素、二価カチオン、ATPなどの必要な試薬の存在下での、適切な時間量にわたるpHおよび温度の適切な条件にあると理解されている。特定酵素の活性を許容する条件は、典型的には酵素製造業者によって提供される。抗体の結合を許容する条件は、例えば、Harlow and Lane(Eds.),Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(著作権)1988(参照して本明細書に組み込まれる)の中に見いだすことができる。増幅、増幅産物の形成、およびオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを許容する条件は、例えば、Chen and Janes(Eds.),PCR Cloning Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press,Inc.,Totowa,NJ、(著作権)2002(参照して本明細書に組み込まれる)の中に見いだすことができる。
【0042】
本明細書で使用する「連結した」は、例えば水素、イオン性、またはファンデルワールス(Van−der−Waals)結合によって共有的および非共有的相互作用を通した2つの分子の結び付きまたは結合を意味する。このような結合は、同一もしくは相違する原子もしくはイオンのうちの少なくとも2つの間で、これらの原子もしくはイオンの電子密度の再分布の結果として形成される可能性がある。例えば、酵素は抗体−酵素融合タンパク質としての抗体へ、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を通して、またはFcプロテインA/G/L相互作用(例えば、ポリメラーゼはプロテインA/Gへ連結され、これは順に抗体のFc領域へ結合する)を介する結合を通して連結させることができる。
【0043】
本明細書で使用する「検出する工程」、「検出」などは、サンプル中の特定分析のためにアッセイが実施されることであると理解されている。分析物は任意の特定濃度もしくは量でサンプル中に存在する必要はないが、本アッセイが分析物を検出する能力はサンプル中に存在する濃度/量に関連するであろうことに留意されたい。所定の場合には、本明細書に開示した方法は、分析物がサンプル中に存在しない、またはアッセイの検出レベルより低い量で存在することを決定するために使用できる。
【0044】
本明細書で使用する「dNTP」は、デオキシヌクレオチド三リン酸塩であると理解されており、天然または「標準」dNTP、dATP、dCTP、dGTP、およびTTPを含んでいる。本明細書で使用する「dNTP」はさらに、例えば蛍光標識さもなければ化学標識されたヌクレオチドなどの天然および非天然ヌクレオチドアナログを含んでいる。
【0045】
本明細書で使用する「二本鎖DNA」は、DNAの相補鎖もしくはセグメントにアニーリングしている少なくとも一部分を有するDNAを意味すると理解されている。二本鎖DNAは、2本の別個の鎖から構成されて、または自己相補的配列(例、ヘアピン構造)を備える単一ポリヌクレオチドであってよい。二本鎖DNA分子もしくはポリヌクレオチドは、一本鎖部分を含むことができる。
【0046】
本明細書で使用する「酵素」は、例えば、トポイソメラーゼ、リガーゼ、逆転写酵素、アデニングアニン・アルキルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼなどの酵素、例えばCreリコンビナーゼλ−インテグラーゼ、φC31−リコンビナーゼもしくはflp−リコンビナーゼなどのリコンビナーゼ類、および分析物特異的結合分子へ結合させることのできるポリヌクレオチドキナーゼの少なくとも触媒部分を含んでいる。酵素部分は、分析物特異的結合分子から独立して存在することができる。
【0047】
本明細書で使用する「融合ポリペプチド」は、フレーム内で相互に結合(連結)している2つ以上のポリペプチドを含むポリペプチドを意味する。本明細書で使用する用語「結合した」もしくは「融合した」は、フレーム内で相互に結合した2つ以上のポリペプチドをコードする融合分子を形成するためにポリペプチドまたは核酸の2つ以上のセグメントを一緒に結合することを意味する。2つ以上のポリペプチドは、直接的に、またはリンカー配列を介して結合させることができる。
【0048】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」は、相補的ヌクレオシドもしくはヌクレオチド塩基間でのワトソン−クリック(Watson−Crick)、フーグスティーン(Hoogsteen)もしくは逆フーグスティーン水素結合であってよい、水素結合の工程を意味している。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を通して対合する相補的核酸塩基である。
【0049】
本明細書で使用する「単離(した)」または「精製(した)」は、ポリヌクレオチドに関連して使用する場合は、天然型配列がその通常の細胞(例、染色体)環境から分配されている、または非自然環境において合成(例えば、人工的に合成)されていることを意味する。ここで、「単離(した)」または「精製(した)」配列は、無細胞溶液中にあってよい、または相違する細胞環境内に配置されていてよい。用語「精製(した)」は、その配列が存在する唯一のヌクレオチド配列であるが、それと自然に関連している非ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを実質的に含んでいない(約90〜95%、99〜100%まで純粋)ことを意味していないので、単離染色体とは識別される。
【0050】
本明細書で使用する「リガーゼ」は、酵素である適切なリガーゼ基質中でDNA鎖の隣接端の結合を触媒することのできるリガーゼもしくはトポイソメラーゼ酵素の少なくとも一部分である。リガーゼの構造および機能は、当技術分野において周知である。例えば、全部がこれにより参照して本明細書に組み込まれるTimson DJら、“DNA ligases in the repair and replication of DNA,” Mutat.Res.2000 40:301−18;Wilkinson Aら、“Bacterial DNA ligases,” Mol.Microbiol.2001 40:1241−48;Martin and MacNeil,“ATP−depedendent DNA ligases,” Genome Biology 2002 3(4):reviews3005.1−3005.7を参照されたい。用語のリガーゼは、RNAリガーゼをさらに含んでいる。
【0051】
本明細書で使用する「融点」もしくは「Tm」は、2つの相補的核酸分子の相互に対する親和性に関連する温度値であると理解されている。Tmは、当業者であれば、多数の広汎に利用できる多数のアルゴリズム(例、OLIGO(商標)(Molecular Biology Insights社、カリフォルニア州カスケード(Cascade,CA))、Primer Design、ならびにPrimer3およびOligo Calculatorを含むインターネット上で入手できるプログラム)のいずれかを用いて容易に予測できる。大多数の増幅レジメンのためには、アニーリング温度は予測Tmより約5℃低い温度へ選択されるが、Tmにより近い、およびそれより高い(例、予想Tmより1℃〜5℃低い、または予想Tmの1℃〜5℃高い)温度を使用でき、同様に予想Tmより5℃より低い、または高い(例、6℃低い、8℃低い、10℃低い、および6℃高い、8℃高い、または10℃高い)温度も使用できる。一般に、アニーリング温度がTmにより近いほど、アニーリングはより特異的である。プライマーのアニーリング時間は、反応量に高度に左右され、反応量が大きいほどより長い時間を必要とするが、さらにまたプライマーおよび鋳型の濃度に依存し、鋳型に対するプライマーの相対濃度が高いほど、低濃度より短い時間を必要とする。容量および相対プライマー/鋳型濃度に依存して、増幅レジメンにおけるプライマーアニーリング工程は、約1秒間〜5分間であってよいが、一般には10秒間〜2分間であろう。
【0052】
本明細書で使用する用語「成分」もしくは「部分」は、例えば分析物特異的検出剤などの何かがそれに分けられる活性ドメインの1つであると理解されている。成分もしくは部分は、分析物特異的検出剤から独立して存在することができる。
【0053】
本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボース)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)、およびプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾プリンもしくはピリミジン塩基のN−グリコシドである、任意のポリヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドへハイブリダイズすることができる、または自己ハイブリダイズする、例えばヘアピン構造を有することができる。オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドには、制限なく、一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが含まれる。本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、さらに2’−O−メチル修飾および2’もしくは3’NH2修飾を含むがこれらに限定されない、1つ以上の修飾された塩基もしくは糖を含有するDNAもしくはRNAを含んでいる。そこで、安定性またはその他の理由から修飾されたバックボーンを備えるDNAもしくはRNAは、「ポリヌクレオチド」である。本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、このような化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、ならびに例えば単純型および複雑型細胞を含むウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形を含んでいる。本明細書に記載した方法のために有用なオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドは、単離もしくは精製されたポリヌクレオチドで、または増幅反応において増幅したポリヌクレオチドであってよい。
【0054】
本明細書で使用する「複数」は1つより多い、典型的には少なくとも2つを意味すると理解されている。
【0055】
本明細書で使用する「ポリメラーゼ」は、鋳型依存方法でヌクレオチドの重合を触媒する酵素である。ポリメラーゼは、鋳型としてDNAもしくはRNAを使用できる。ポリメラーゼは、熱安定性または非熱安定性であってよい。一般に、酵素は、核酸鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端で合成を開始し、鋳型鎖の5’末端に向かって進行するであろう。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼには、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、1991,Gene,108:1)、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI(Lecomte and Doubleday,1983,Nucleic Acids Res.11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstromら、1981,J.Biol.Chem.256:3112)、サームス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(Myers and Gelfand 1991,Biochemistry 30:7661)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Stenesh and McGowan,1977,Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも呼ばれる、Carielloら、1991,Nucleic Acids Res,19:4193)、9°Nm DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社からの製造中止になった製品)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(Diaz and Sabino,1998 Braz J.Med.Res,31:1239)、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chienら、1976,J.Bacteoriol,127:1550)、パイロコッカス・コダカレンシス(Pyrococcus kodakaraensis)(KOD)DNAポリメラーゼ(Takagiら、1997,Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(国際特許公開第0132887号パンフレット)、およびパイロコッカス(Pyrococcus GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginestaら、1994,Biotechniques,16:820)が含まれる。上記の酵素のポリメラーゼ活性は、当分野において周知の手段によって決定することができる。1単位のDNAポリメラーゼ活性は、最適温度(例、Pfu DNAポリメラーゼのためには72℃)で30分間にわたり10nM(ナノモル)の全dNTPのポリマー形への組込みを触媒する酵素の量であると規定されている。非熱安定性DNAポリメラーゼには、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、大腸菌DNAポリメラーゼI、およびΦ29 DNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用する「酵素に対するポリヌクレオチド基質分子」は、中間体もしくは産物を形成するために酵素により触媒的に作用することができる1つ以上のDNAもしくはRNA分子であると理解されている。「増幅もしくはPCRのためのポリヌクレオチド基質」は、2つの特異的オリゴヌクレオチドプライマーの結合を許容するために十分な長さの一本鎖または二本鎖DNAポリヌクレオチドであると理解されている(一方は第1鎖、およびもう一方は第1鎖を鋳型として用いて合成された第2鎖または相補鎖)。例えば、RNA分子は、逆転写酵素のための基質であってよい。リガーゼ活性を有する酵素のための基質は、ライゲーションを許容する条件下で相互にアニーリングおよびライゲーションできる適合する末端を備える第1二本鎖DNA分子および第2核酸分子を含んでいる。第2核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよい。5’−CCCTT−3’(配列番号1)配列を含む二本鎖DNA分子は、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIのための基質になることができる。2つのプライマーの特異的結合を可能にするために十分な長さかつ適切な配列の二本鎖DNA分子は、PCRによる核酸増幅のための基質になることができる。
【0057】
用語「プライマー」は、1つより多いプライマーを意味する場合があり、精製された制限消化物中におけるように自然に発生しようと、または核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれると相補鎖に沿った合成の開始点として機能できる合成により生成されようと、オリゴヌクレオチドを意味する。そのような条件には、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補因子である、またはpH、イオン強度などに影響を及ぼす置換基を含んでいる)中、および適切な温度での、4つの相違するデオキシリボヌクレオシド三リン酸塩およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合誘導剤の存在が含まれる。プライマーは、好ましくは、増幅において最大効率を得るためには一本鎖である。
【0058】
オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸配列にハイブリダイズすることができ、第2核酸鎖の酵素的合成をプライミングする一本鎖DNAもしくはRNA分子である。プライマーは、標的分子の一部分に相補的である。オリゴヌクレオチドプライマーは、化学的または酵素的いずれかの合成方法によって調製できる、と考えられる。または、このような分子もしくはこのフラグメントは天然型であり、天然起源から単離される、または商業的供給業者から購入される。オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、長さが5〜200ヌクレオチド、理想的には17〜40ヌクレオチドであるが、相違する長さのプライマーおよびプローブも有用である。増幅のためのプライマーは、好ましくは17〜25ヌクレオチドである。プライマーは、さらにまた融点推定法によって特定の融点(Tm)を有するように設計できる。OLIGO(商標)(Molecular Biology Insights社、カリフォルニア州カスケード(Cascade,CA))を含む市販のプログラム、Primer3 and Oligo Calculatorを含むウェブ上で入手できるプライマー設計およびプログラムを使用すると、核酸配列のTmを計算することができる。プライマーの好ましい融点は、実践される特定実施形態に左右されるであろう。オリゴヌクレオチドは、(修飾もしくは非修飾)ポリヌクレオチド鋳型およびプライマーを含んでいる。ポリヌクレオチド鋳型は、長さが少なくとも10塩基、典型的には長さが少なくとも20塩基、例えば長さが少なくとも30、40、50、60、70、80、90または100塩基からの範囲内の長さを備えて調製できる。オリゴヌクレオチドは大きな核酸フラグメントであってよいが、一般には、500塩基以下の核酸に限定される。
【0059】
オリゴヌクレオチドは、溶液中で遊離していて、または結合分子に共役していてよい。結合成分に共役しているオリゴヌクレオチドは、一般には、これらが共役されることを許容する、これらのヌクレオチド配列内の任意の地点で化学的活性基(例えば、第1級アミン基)を有しているであろう。
【0060】
本明細書で使用する「反応混合物」は、典型的には、塩、緩衝液、核酸、および酵素を含むが、これらに限定されない試薬の組み合わせである。反応混合物は、典型的には所望の反応が発生できる条件に曝露させられる。反応が発生できる条件は、少なくとも一部の試薬、例えば酵素とともに提供される製造業者の取扱説明書に提供されることが多い。
【0061】
本明細書で使用する用語「制限酵素」は、特異的ヌクレオチド配列、またはその近くで二本鎖DNAを切断する酵素を意味する。多数の制限酵素の特異性は、当技術分野において周知である。様々な制限酵素は市販されており、それらの反応条件、補因子、および酵素供給業者によって確立されるその他の要件は周知である。
【0062】
本明細書で使用する「逆転写酵素」は、MMLVおよびAMV逆転写酵素を含むRNA依存性DNAポリメラーゼである。逆転写酵素は、HIV、HTLV−I、HTLV−II、FeLV、FIV、SIV、AMV、MMTV、およびMoMuLVを含む全てのレトロウイルスについてのウイルスRNAからのcDNAの合成を仲介する。例えば、いずれもこれにより参照して組み込まれるLevin,1997,Cell,88:5−8;Brosiusら、1995,Virus Genes 11 :163−79を参照されたい。逆転写酵素の構造および機能は、当技術分野において周知である。例えば、参照して組み込まれる米国特許出願第11/100183号明細書(米国特許出願公開第2005/0272074号明細書)を参照されたい。1つの実施形態においては、逆転写酵素は、ウイルス逆転写酵素である。相違する温度で使用するための様々な逆転写酵素は、AFFINITYSCRIPT(商標)、ACCUSCRIPT(登録商標)およびSTRATASCRIPT(登録商標)(全部がStratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA)から)を含めて市販されている。
【0063】
本明細書で使用する用語「サンプル」は、その自然環境から単離されており、分析物を含有すると疑われる、または分析物を含有する可能性がある生物学的物質を意味する。本明細書に開示した方法による「サンプル」は、精製もしくは単離された分析物を含有していてよい、または分析物を含有することが疑われる組織サンプル、生体液サンプル、もしくは細胞サンプルなどの生物学的サンプルを含むことができる。生体液には、血液、血漿、血清、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液、および白血球泳動サンプルが含まれる。サンプルは、分析物を含有することが疑われる任意の植物、動物、細菌、もしくはウイルス物質を含むことができる。
【0064】
本明細書で使用する「固体支持体」または「固体表面」は、捕捉分子のための支持体を提供する任意の構造を意味する。適切な固体支持体には、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、例えばニトロセルロース、PVDFもしくはナイロンなどの膜、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、シリカビーズ、常磁性もしくはラテックスミクロスフェア、またはマイクロタイターウエルが含まれる。また別の例として、固体支持体は、例えば抗体などの捕捉分子のプレートへの共役結合を可能にするTOP YIELD(商標)プレート(Nunc社、ニューヨーク州ロチェスター(Rochester,NY))などの修飾されたマイクロタイタープレートであってよい。固体支持体がビーズ、常磁性ミクロスフェアもしくはラテックスミクロスフェアなどの物質である場合は、固体支持体は、どちらも実験室において一般に使用される、複数ウエル組織培養皿などの開放容器内に、またはネジ蓋付きチューブなどの密封容器内に収容することができる。
【0065】
本明細書で使用する用語「特異的に結合する」および「特異的結合」は、抗体もしくはその他の結合分子が、抗原、リガンドもしくは分析物などの標的へ、本発明の特定の条件下で他の分子へ結合するよりはるかに大きな親和性で結合することを意味する。抗体もしくは抗体フラグメントは、当技術分野において公知であるように、抗原などの他の分子に結合できる領域を含有するポリペプチド分子である。様々な実施形態においては、「特異的に結合する工程」は、抗体もしくはその他の生物学的分子が少なくとも10−6〜10−14/Mの親和性で標的分子に結合することを意味することができるが、より好ましくはそれらは少なくとも10−8/Mの親和性を有し、最も好ましくは少なくとも10−9/Mの親和性を有するであろう。
【0066】
本明細書で使用する「リガーゼのための基質」は、本明細書では1対の核酸分子である(少なくともその一方は部分的に二本鎖である)、または相互に付着末端へのアニーリングがヌクレオチドを消失することなく、各鎖のバックボーン内での中断を伴う二本鎖核酸分子を生じさせるように適合する付着末端を有する1つの二本鎖核酸分子の2つの末端であると理解されている。核酸鎖は、少なくとも1本の鎖上の中断部位およびその周囲で、中断点およびその周囲で少なくとも3、5、7、もしくは10連続相補的ヌクレオチドにわたり相補鎖へハイブリダイズさせられる。両方の鎖はDNA分子である、または鎖の1本はDNA分子であり、他方の鎖はRNA分子である。中断点での鎖の両端は、リガーゼもしくはトポイソメラーゼによるライゲーションを許容するために適切な末端官能基を有している。リガーゼは、アクセプター分子の5’末端では5’リン酸基を必要とするが、トポイソメラーゼは、アクセプター分子の5’末端で遊離5’−OHを必要とする。リガーゼは、熱安定性または非熱安定性であってよい。非熱安定性リガーゼは、高温への曝露、またはポリメラーゼ連鎖反応の変性工程によって不活性化することができる。
【0067】
本明細書で使用する「ポリメラーゼのための基質」は、本明細書では、二本鎖部分の第1鎖の3’末端が、それがアニーリングしている配列に完全に相補的であり、第2鎖は3’末端が伸長するであろう方向に第1鎖の3’末端を越えて伸長する、二本鎖配列の一部分を備える一本鎖核酸、いずれかのDNAであると理解されている。3’末端は、さらに3’末端の伸長を可能にするために3’−ヒドロキシル基を含んでいる。このようなDNA鋳型は、「PCR鋳型」でもある。または、核酸は、それからcDNAを生成することができ、順にPCR鋳型として機能できるRNA鎖であってよい。このようなRNA鎖は、「逆転写酵素のための基質」でもある。
【0068】
本明細書で使用する「熱安定性ポリメラーゼ」は、熱に対して安定性である、耐熱性である、および各核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物を形成するために適正な方法でヌクレオチドの結合を触媒(促進)する酵素であると理解されている。熱安定性ポリメラーゼは、二本鎖核酸の変性を実行するために必要な時間にわたり高温に曝露させた場合に非可逆的に変性(不活性化)されない。本発明のための非可逆的変性は、酵素活性の永続的かつ完全な消失を意味する。核酸変性のために必要な加熱条件は、例えば、緩衝液の塩濃度および組成ならびに変性させられる核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するであろうが、典型的には温度および核酸長に主として依存した時間、典型的には30秒間〜4分間にわたり約90〜約105℃である。緩衝塩の濃度および/または核酸のGC組成が増加するにつれて、より高い温度が許容される場合がある。好ましくは、酵素は、約90〜100℃では非可逆的に変性されないであろう。「非熱安定性ポリメラーゼ」は、熱安定性ポリメラーゼによって忍容される条件下で非可逆的に変性されるようになるポリメラーゼを意味すると理解されている。熱安定性および非熱安定性ポリメラーゼはどちらも、多数の業者から広汎に入手できる。
【0069】
本明細書で使用する「トポイソメラーゼ」は、DNAの開裂およびライゲーションを媒介できる酵素の少なくとも触媒部分を意味する。トポイソメラーゼの構造および機能は、当技術分野において周知である。その開示がこれにより参照して組み込まれる、Wang,J.C.,“DNA topoisomerases,” Anu.Rev.Biochem.65:635−92(1996)を参照されたい。一部のトポイソメラーゼはDNA分子の二本鎖部分の1本の鎖の開裂を触媒するが、その他は両方の鎖の開裂を触媒し、DNAの巻き付けおよび/または巻き戻しを触媒する。トポイソメラーゼは、配列特異的であってよく、特定配列もしくはその後で開裂する、または非配列特異的で、好ましい配列では開裂しない場合がある。2つの配列特異的トポイソメラーゼは公知であり、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIおよびMCVトポイソメラーゼである。どちらも、本明細書では「トポイソメラーゼ開裂認識部位」とよばれる、配列CCCTT(配列番号1)のすぐ後で1本のDNA鎖を開裂する。
【0070】
本明細書で使用する「トポイソメラーゼ−核酸結合中間体」は、DNAの二本鎖部分の鎖の一方の3’末端に近いトポイソメラーゼ開裂認識部位を備える2本鎖DNA基質を提供することによって生成される。鎖の開裂は、他のDNA鎖へ安定性でハイブリダイズし続けるには短すぎる短鎖開裂産物の生成を生じさせる(Tmは、トポイソメラーゼ反応の温度より10℃以上高くなく、好ましくは5℃以上高くない)。トポイソメラーゼは、リガーゼ活性のための基質を完成させるための核酸がトポイソメラーゼのライゲーションおよび遊離を可能にするために適合性の付着末端へアニーリングするまでは、核酸に結合したままとなる。
【0071】
本明細書に提供する範囲は、その範囲内の数値全部についての省略表現であると理解されている。例えば、長さが1〜50ヌクレオチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むと理解されている。
【0072】
他に特に明記しない限り、または状況から明白にならない限り、本明細書で使用する用語「または」は、包含的であると理解されている。
【0073】
他に特に明記しない限り、または状況から明白にならない限り、本明細書で使用する用語「1つの」および「その」は、単数形または複数形であると理解されている。
【0074】
本明細書に組み込まれていてその一部を構成する添付の図面は、本発明の所定の実施形態を例示しており、文書による記載と一緒に、本発明の所定の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】酵素としてトポイソメラーゼを使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図2】酵素としてリガーゼを使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図3】酵素として逆転写酵素を使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図4】トポイソメラーゼ・ライゲーションアッセイの略図を示す図である。
【図5】トポイソメラーゼ・ライゲーションアッセイの検出感受性を示している増幅プロットを示す図である。
【図6】様々な濃度のトポイソメラーゼを用いた閾値サイクル数(Ct)を示すグラフである。
【図7】7桁を超えるトポイソメラーゼ濃度についてのCtを示す標準曲線を示す図である。
【図8】6桁を超えるトポイソメラーゼ濃度についてのCtの標準曲線を示す図であり、プロテインGのワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIへの融合が実質的にこの酵素の機能を妨害しないこと、そして6桁を超える結果の直線性を妨害しないことを示している。
【図9】図9Aおよび9Bは、レポーター酵素としてトポイソメラーゼを使用するELISAによって決定された様々な量のVEGFのCtを示すグラフである。
【図10】ATPの存在下または非存在下での様々な濃度のHis標識T3リガーゼを用いたCtを示すグラフである。
【図11】PCRマスターミックス中で反応を実施した、ATPの存在下または非存在下での様々な濃度のHis標識T3またはT7リガーゼを用いたCtを示すグラフである。
【図12】10倍の連続希釈濃度の、野生型T4 DNAリガーゼまたはT4 DNAリガーゼに結合したストレプトアビジンを含む融合タンパク質のいずれかを用いたライゲーション反応後の増幅反応において得られたCt値を比較したグラフである。
【図13】1つはN末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有し、もう1つはC末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有する2つの分析物特異的結合剤を用いて、それらのフラグメントが、近接近して分析物に結合すると機能的トポイソメラーゼ酵素を形成するように、様々な濃度のビオチン化BSAの近接性に基づく検出を示すグラフである。
【図14】図14Aおよび14B1つはN末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有し、もう1つはC末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有する、450pm(図14A)または110pM(図14B)の2つの分析物特異的結合剤を用いて、それらのフラグメントが、近接近して分析物に結合すると機能的トポイソメラーゼ酵素を形成するように、様々な濃度のビオチン化抗体の近接性に基づく検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下では、実施例が添付の図面に示されている、本発明の様々な代表的実施形を詳細に参照されたい。以下の詳細な説明は、読者に本発明の態様の所定の実施形態、特徴および詳細をより十分に理解してもらうために提供されており、本発明の範囲の制限であると解釈すべきではないことを理解されたい。
【0077】
上記で考察したように、当該の物質を免疫検出するための試薬および方法は公知であり、市販されている。しかし、これらの試薬および方法は、最も顕著には相当に低感受性である、もしくはシグナル対ノイズ比が不良である(バックグラウンドシグナルが高い)、またはその両方が顕著であるという重大な欠点に悩まされる。さらに、一部は所定の方法でのみ機能するように特別設計されているので、そこで当該の物質を検出するために広汎に使用するためには適合しない。感受性を向上させるために免疫PCR技術が考案されてきたが、商業的に利用できるテクノロジーは今もなおそれらの有用性を制限する高いシグナル対ノイズ比に悩まされる。本出願は、高度に感受性の酵素部分(例、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素)に連結した高度に特異的な結合部分(例、抗体部分)を含む分析物特異的結合剤を使用することによって、検出アッセイの特異性および/または感受性を同時に保持または改善しながら、シグナル対ノイズ比を向上させる方法、組成物、およびキットを開示するが、このとき物質は酵素とともに、その酵素が増幅反応(例、PCR)のための鋳型を生成することを許容する条件下でインキュベートすることができる。この方法で、増幅のための鋳型を形成することに責任のある酵素は、感受性を維持または改良しながらバックグラウンドシグナルを減少させるために役立つように、分析物が存在する場所にのみ存在する。さらに、本検出反応は、結合反応から物理的に分離することができる。例えば、結合反応後、増幅反応のための鋳型は、増幅反応を実施するための別個の容器へ移すことができる。
【0078】
本明細書では、分析物を検出するための方法、キットおよび組成物が提供される。これらの方法では、反応における分析物の存在は、反応における分析物の存在を指示する核酸増幅鋳型の形成を生じさせる。分析物特異的結合剤の酵素は、1つ以上のポリヌクレオチド分子と相互作用し、増幅鋳型分子、好ましくはPCR増幅鋳型を生じさせる。増幅産物の増幅および検出は、感受性であり、分析物の存在の潜在的な定量的指標である。1つの態様では、分析物は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、細胞表面受容体、または受容体リガンドである。
【0079】
1つの態様では、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物を、サンプル中の分析物へ特異的に結合し、かつさらにPCR増幅のための鋳型の形成を触媒することのできる酵素部分を含んでいる分析物特異的結合剤と接触させる工程を含んでいる。PCR増幅のための鋳型は、直鎖状DNAポリヌクレオチドを形成するためにアニーリングした1対のDNA二重鎖の少なくとも1本の鎖と適合する付着末端とのライゲーションによって生成することができる。3つ以上のライゲートした二重鎖の鎖を作製するためには、2対以上のDNA二重鎖を直列でライゲートすることができる。適合する付着末端は、少なくとも一部には、鎖の1本を開裂して開裂産物を遊離し、付着末端を形成する配列特異的トポイソメラーゼによって生成することができる。PCRのための鋳型は、さらにまたRNA鋳型の存在下で逆転写酵素によって生成することもできる。生成されたcDNAは、PCRのための鋳型である。PCRのための鋳型は、増幅反応において第1および第2プライマーと接触させられる。第1プライマーは、PCR増幅のための鋳型へ、鋳型に相補的な鎖を生成するための増幅を許容する条件下で結合する。この第2鎖は、PCRによる第2鎖の増幅のために第2プライマーへ結合する。プライマーは、サンプル中の分析物の存在を証明するために、鋳型からの特定産物の増幅を許容するように設計される。増幅産物の生成は、例えば、SYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))、TAQMAN(登録商標)プローブ(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))、または分子ビーコンプローブを使用することによって監視できる。未知のサンプル中で検出されたシグナルの量は、元の未知のサンプル中に存在する分析物の量を決定するために、既知量の分析物を含有するコントロールサンプル中で検出されたシグナルと比較することができる。または、増幅産物は、例えば、ドットブロット法もしくはゲル電気泳動法および臭化エチジウム染色によって、半定量的または定性的に検出することができる。一連の希釈率の未知サンプルを分析し、それを一連の既知サンプルと比較することによって、未知サンプル中の分析物サンプルの量を推定することができる。
【0080】
そこで、1つの実施形態においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤はリガーゼに結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、第1核酸分子はリガーゼの存在下で第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)核酸増幅を許容する条件下で(b)の反応混合物の少なくとも一部分を、第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、第1オリゴヌクレオチドプライマーは第1核酸分子と特異的に結合し、第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために第2核酸分子と結合するステップと、および
(d)増幅産物を検出する工程と、
を含む方法に向けられる。
【0081】
また別の実施形態においては、溶液中の分析物を検出するための方法は、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤はリガーゼ活性含有分子に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、各々が2つの末端を有する1つ以上のポリヌクレオチド基質分子を備えるリガーゼとともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、リガーゼは核酸増幅のための鋳型を生成するために基質分子の2つの末端と結合するステップと、
(c)反応混合物(b)の少なくとも一部分を増幅反応液とともにインキュベートするステップと、および
(d)増幅産物を検出するステップと、
を含む。
【0082】
他の実施形態においては、本方法は、
トポイソメラーゼ核酸結合中間体の形成をさらに含み、
増幅産物は、特異的増幅産物であり、
特異的増幅産物は、サイズによって決定され、
第2核酸分子は二本鎖核酸であり、第1二本鎖核酸および第2二本鎖核酸は適合する付着末端を有し、または反応混合物中の末端は適合する付着末端を有し、
第1二本鎖核酸もしくは第2二本鎖核酸のいずれかは配列特異的トポイソメラーゼ開裂部位を有し、またはそれらの末端の少なくとも一方は配列特異的トポイソメラーゼ開裂部位を有し、
適合する付着末端の少なくとも1つは配列特異的トポイソメラーゼ開裂によって生成され、
二本鎖核酸の開裂は、ライゲーションを許容する条件下では安定性にハイブリダイズしない核酸の二本鎖部分の形成を生じさせ、または
非鋳型生成鎖の核酸は、修飾を含んでいる。
【0083】
さらにまた別の実施形態においては、サンプル中の分析物を検出するための方法は、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤は逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、cDNA分子を生成するためにRNAの逆転写を許容する条件下でRNA分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップと、
(c)核酸増幅を許容する条件下で(b)の反応混合物の少なくとも一部分を、第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、第1オリゴヌクレオチドプライマーはcDNA分子と特異的に結合し、第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために第cDNA分子の相補体と結合するステップと、および
(d)増幅産物を検出する工程と、
を含む。
【0084】
他の実施形態においては、
本方法は、増幅産物の一部分へハイブリダイズする第3オリゴヌクレオチドを提供するステップをさらに含み、
第3オリゴヌクレオチドは、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))プローブもしくは分子ビーコンプローブであり、
増幅産物は、特異的増幅産物であり、
特異的増幅産物は、サイズによって決定され、
検出は、増幅産物の定量をさらに含み、
方法は、工程(b)の前に未結合分析物特異的結合を除去する工程をさらに含む。
【0085】
本明細書に開示した方法の、酵素として各々トポイソメラーゼ、リガーゼ、および逆転写酵素を使用する様々な実施形態の略図は、図1、2、および3に提供されている。
【0086】
図1(1)では、結合した分析物特異的結合剤のトポイソメラーゼ部分は、トポイソメラーゼのための基質上のトポイソメラーゼ特異的開裂部位へ結合している。明確にするために、完全に結合した分析物特異的結合剤は1回しか示されていないが、トポイソメラーゼは、本方法を通して結合剤に結合したままとなっている。図1(2)では、トポイソメラーゼは、リガーゼ基質を生成するための適合する付着末端を生成するためにトポイソメラーゼ基質を開裂する。開裂産物は放出され、トポイソメラーゼ−核酸結合中間体が生成される。リガーゼ基質の付着末端はアニーリングし、アニーリングした基質の各々の上の鎖(top strand)のライゲーションおよびトポイソメラーゼの放出を可能にする。下の鎖(bottom strand)の3’末端は、上の鎖に対して完全に相補的である必要はない(例、図2(1)を参照されたい)。図1(3)は、増幅反応における鋳型として機能できるライゲーション産物を示している。
【0087】
図2(1)では、結合した分析物特異的結合剤のリガーゼ部分はリガーゼのための基質の半分に結合しており、リガーゼ基質の付着末端はアニーリングされている。付着末端の少なくとも1つの5’末端は、リン酸化されている。図2(2)では、リガーゼは、増幅反応に使用するための鋳型を生成するためにリン酸化された5’末端を有する鎖を結合している。
【0088】
図3では、結合した分析物特異的結合剤の逆転写酵素部分は、逆転写酵素のための基質であるRNAへ結合している。逆転写酵素は、増幅反応に使用するための鋳型を生成するためにRNA鎖をDNA内に転写する。
【0089】
好ましい実施形態においては、分析物特異的結合分子は、ビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用を通して任意で酵素へ間接的に結合している抗体である。
【0090】
本明細書に開示した実施形態は、さらにまた第1および第2分析物特異的結合剤が提供される、本明細書に記載した分割バージョンの酵素を用いて実施することもできる。これらの実施形態においては、各分析物特異的結合剤は、酵素の一部分に連結した分析物特異的結合分子を含んでいる。酵素部分は相互作用して、分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、機能的酵素複合体を形成する。機能的酵素複合体は、次にサンプル中における分析物の存在および/または量の指標である検出可能なシグナルを生成する。1つの実施形態においては、分割バージョンのリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素が提供される。また別の実施形態においては、第1および第2分析物特異的結合分子は抗体である。好ましい実施形態においては、第1および第2分析物特異的結合分子は、例えばビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用などの、ビオチン結合相互作用を通して酵素部分へ間接的に結合している抗体である。例えば、酵素の第1および第2部分は、ストレプトアビジンまたはアビジンへ融合させられ、当該の分析物に対して特異的なビオチン化抗体と混合される。
【0091】
1つの実施形態においては、分割された酵素は、配列番号19のアミノ酸配列を有するワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIまたは、配列番号19と少なくとも90%および好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドなどの、ポリペプチドがトポイソメラーゼ活性を保持することを前提とするトポイソメラーゼに由来する。例えば、トポイソメラーゼ酵素の第1部分は、配列番号17のアミノ酸残基179〜275を含む。または、トポイソメラーゼ酵素の第1部分は、第1部分が機能的酵素複合体を形成するためにトポイソメラーゼ酵素の第2部分と相互作用する能力を保持することを前提として、配列番号17のアミノ酸残基179〜275に対して少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。例えば、トポイソメラーゼ酵素の第2部分は、配列番号18のアミノ酸残基1〜216を含んでいる。または、トポイソメラーゼ酵素の第2部分は、第2部分が機能的酵素複合体を形成するためにトポイソメラーゼ酵素の第1部分と相互作用する能力を保持することを前提として、配列番号18のアミノ酸残基1〜216に対して少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。酵素は、2つのドメインが相互作用すると酵素活性を回復できる他のサブドメインへ分離することができる。
【0092】
ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIのアミノ酸配列(配列番号19)は、例えば、アクセッション番号YP_232986で公表されているものを含めて、公的に入手できる。ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIは、ウイルスDNAトポイソメラーゼ・スーパーファミリーに属しており、鎖β2およびβ3の間に左巻き交差を備えるN末端β(2)−α−β−α−β(2)折り畳みを想定している。DNA結合ドメインおよび触媒ドメイン内の保存残基は、当技術分野において公知である。例えば、ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIB型は、触媒活性と相関する5つの保存残基(R130、K167、K220、R223、およびH264)ならびに触媒ドメイン内のDNA結合部位へマッピングされる17の保存残基(R130、F131、G132、K133、K135、T142、K167、D168、Y209、K213、R218、I219、K220、R223、H265、T266、およびY274)を含有する、アミノ酸残基約75〜アミノ酸残基約285に及ぶC末端触媒ドメインを含有している。そこで当業者であれば、これらの保存残基での保存的突然変異は、トポイソメラーゼ活性を有するタンパク質を生じさせる可能性が高いが、他方保存ドメインの外側での突然変異は、触媒活性に大きく影響を及ぼさないと予想されるであろう。
【0093】
本明細書に開示した実施形態は、分析物特異的結合分子と酵素または分割酵素系にある酵素の第1および第2部分との間に配置された任意のスペーサ分子を用いて実施することもできる。スペーサ分子は、任意の物質または物質の組み合わせから構成されてよい。しかし典型的には、スペーサ分子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドから構成されるであろう。1つの実施形態においては、スペーサ分子は、例えばグリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンなどの小さなアミノ酸を含んでいる。また別の実施形態においては、天然型柔軟性非構造領域を使用できる。このような領域は、豊富に発現したタンパク質から、例えば大腸菌(E.coli)由来のzipAタンパク質(Ohashi T,Hale CA,de Boer PA,Erickson HP.“Structural evidence that the P/Q domain of ZipA is an unstructured,flexible tether between the membrane and the C−terminal FtsZ−binding domain.” J Bacteriol.2002;184(15):4313−4315)またはL7/L12リボソームタンパク質(Bocharovら、“From structure and dynamics of protein L7/L12 to molecular switching in ribosome,” J.Biol.Chem.,2004 279(17):17697−706)から選択することができる。多数の非構造領域は当業者には公知であり、例えばEntrez Structure NCBIデータベースからのDisprotデータベースからなどのデータベース内のタンパク質構造から入手できる。さらに、非構造領域は、例えばScooby−Domain法(Pang CNら、“Identifying foldable regions in protein sequence from the hydrophobic signal,” Nucleic Acids Res.,2008 36(2):578−88)を用いるバイオインフォーマティクス法によってタンパク質中で予測できる。
【0094】
本出願に開示された方法は、サンプル中の分析物の特異的および感受性検出のため、ならびに任意の定量のために有用である。本法は、当該分析物を結合させるために特定分析物を調製できることを前提に、本質的にあらゆる分析物を検出するために使用できる。分析物は、例えば哺乳動物もしくはヒトなどの生物由来の組織もしくは体液などの生物学的サンプル由来であってよい。本方法は、例えば、疾患状態または臨床的介入の有効性を決定するために経時的にタンパク質の発現を監視するために使用できる。サンプルは、例えば、水もしくは土壌サンプル中の分析物の存在を検出するために、環境起源由来であってよい。サンプルは、汚染物質または感染性物質の存在について試験するために農業的もしくは食物起源由来であってよい。分析物を特異的分析物結合成分へ結合させるために抽出物を調製する方法は、当業者であれば周知である。
【0095】
1つの態様においては、公知のELISAタイプのアッセイと組み合わせて検出剤を使用するための組成物およびキットが提供される。一般に、本キットは、典型的には容器を貯蔵および/または輸送するための包装材料と組み合わせて、少なくとも1つの容器内に、分析物特異的結合剤を含んでいる。分析物特異的結合剤は、増幅反応のための鋳型を形成するための基質、および増幅反応、好ましくはPCR反応、より好ましくは定量的PCR反応に使用するために必要とされる試薬と組み合わせて使用できる。
【0096】
特定の分析物を検出するための多数のキットは、市販されている。このようなキットは、典型的にはELISAプレート、および分析物へ結合するためにプレート上に事前にコーティングされた、または別個のいずれかでの捕捉分子を含んでいる。公知の濃度にあるコントロール分析物は、陽性コントロールとしてキットともに提供されてよい。分析物を検出するための分析物特異的抗体は、市販のELISAの成分として提供され、分析物特異的抗体を検出するためには、検出可能なレベルに結合した第2抗体が提供される。1つの実施形態においては、本キットは、ELISAアッセイにおいて提供される、および/または典型的に使用される第2抗体の代りに使用するための組成物および試薬を含んでいる。
【0097】
さらに、市販されているキットを含むELISAアッセイとともに検出試薬として使用するためのプロテインA、G、またはLなどの抗体結合ドメインに連結した、例えばリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素を含有するキットが提供される。酵素は、さらにまたキット内に含まれる、またはまた別の起源から入手されるビオチン化抗体へ結合させるためにストレプトアビジンまたはアビジンへ結合させることができる。抗体結合ドメインまたはストレプトアビジンに連結した酵素は、分析物特異的結合剤を生成するために、分析物特異的抗体または任意のビオチン化分子各々と接触させることができる。または、抗体結合ドメインへ連結した酵素は、分析物特異的抗体と結合する抗体と接触させることができる。例えば、分析物特異的抗体がマウスIgGモノクローナル抗体である場合は、市販の抗マウスIgG抗体は、抗体結合ドメイン(例、プロテインG)と連結した酵素と接触させることができる。または、本キットには、検出剤として使用するための酵素成分と連結した抗免疫グロブリン抗体を含むキットを含むことができる。
【0098】
本キットは、PCR用の鋳型を生成するための酵素の基質である、核酸分子をさらに含んでいる。
【0099】
トポイソメラーゼに基づくキットでは、核酸分子は、その一方の末端は開裂されると第2二本鎖核酸分子にアニーリングするために適合する付着末端を生成する、トポイソメラーゼ開裂部位を含有する1つまたは2つの二本鎖核酸分子、好ましくはDNA分子であってよい。アクセプター鎖は、トポイソメラーゼのための基質を形成するために5’−OHを含んでいる。
【0100】
リガーゼに基づくキットでは、核酸分子は、第2二本鎖核酸分子もしくは一本鎖核酸分子にアニーリングするために適合する付着末端を有する、2つの二本鎖核酸分子または1つの二本鎖核酸分子および1つの一本鎖核酸分子、好ましくはDNA分子であってよい。増幅のための鋳型となる鎖内の少なくともアクセプター鎖は、トポイソメラーゼのための基質を形成するために5’−リン酸塩を含んでいる。5’−リン酸塩を含んでいない鎖は、例えばPfuなどの高レベルの識別を備えるポリメラーゼによる鎖の増幅を妨害する非天然dNTPを含む可能性がある。
【0101】
逆転写酵素に基づくキットでは、核酸分子は、RNA分子である。RNA分子は、逆転写酵素を実質的に妨害することなくRNA鋳型の安定性を増加させるために化学修飾を含むことができる。このようなRNA分子は、当業者には公知である。
【0102】
本キットは、酵素成分によって生成された鋳型からの産物の定量的増幅のために、プライマー、プローブ(例、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))もしくは分子ビーコンプローブ)、またはその他の物質(例、SYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。本キットは、PCR産物を増幅させるためのポリメラーゼをさらに含むことができる。
【0103】
また別の態様では、本明細書に開示した方法およびキットに使用するための組成物が提供される。例えば、本組成物は、試薬と結び付けて使用するために適合する少なくとも1つの他の物質と結合できる、酵素もしくは酵素成分と連結した分析物特異的結合分子を有する分析物特異的検出剤(例、融合タンパク質)を含んでいてよい。適切な物質には、本発明による方法において所望であるように実施する能力に有害な影響を及ぼさずに試薬に接触することを引き起こせる物質が含まれる。または、追加して、組成物は分析物特異的検出剤およびそれに試薬が特異的に結合する1つ以上の物質(例、検出対象の分析物)または分析物特異的検出剤の酵素部分と相互作用する1つ以上の物質(例、例えば本明細書に開示した方法およびキットに使用するために本明細書において考察したような、酵素の核酸基質)を含むことができる。さらに、例えばプロテインA、G、もしくはLなどの抗体結合ドメイン、または好ましくは結合剤として使用するためのビオチン、アビジン、もしくはストレプトアビジンへ連結した酵素もしくは酵素成分である。さらに、好ましくは結合剤として使用するための抗免疫グロブリン抗体にさらに連結した抗体結合ドメインに連結した酵素もしくは酵素成分である。組成物は、例えば、凍結乾燥粉末もしくは水性混合液中のような液体形もしくは固体形で見いだすことができる。したがって、結合および検出アッセイにおける組成物の使用が提供される。
【0104】
1つの態様においては、本方法は、サンプル中に存在する可能性がある特異的分析物の結合を許容するために分析物捕捉分子を備える固体表面を調製する工程を含んでいる。市販の抗体でコーティングされたプレート、または抗体および抗体を表面に結合させるための取扱説明書を含むELISAキットもまた使用できる。分析物捕捉分子は、特異的もしくは非特異的結合剤であってよく、または特定物質を非特異的物質によってプレートに結合させることができる。捕捉分子は、例えばビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジンなどの、結合対の半分を含むことができる。固体表面はアビジンもしくはストレプトアビジンでコーティングできる、および捕捉分子はビオチンへ結合させることができる。捕捉分子を固体支持体へ結合させる正確な方法は、本発明の制限内にはない。プレートを捕捉分子でコーティングした後、表面を洗浄し、表面への物質の非特異的結合を防止するために非特異的物質を用いてブロッキングする。
【0105】
調製したプレートは、結合を可能にする時間および温度の適切な条件下で適切な緩衝液中で分析物と接触させられる。これらの条件は、使用される分析物および捕捉試薬に依存して変動する場合がある。このような検討材料は、当業者には明確に理解されている。未結合分析物は、洗浄する工程によって除去される。
【0106】
分析物特異的結合剤は、分析物の存在を検出するために調製される。分析物特異的結合剤は、酵素に連結した、融合した、または付着した分析物特異的結合分子を含む。分析物結合分子は、分析物に分析物捕捉分子とは別個のエピトープで結合するように、かつ分析物および酵素成分以外の反応の任意の他の成分へ結合しないように選択されなければならない。例えば、捕捉分子および分析物結合分子は、分析物上の2つの別個の、非妨害性エピトープで結合する、分析物を標的とするモノクローナル抗体であってよい。または、捕捉分子および分析物結合分子は、どちらも、2つの抗体が分析物へ同時に結合できるように分析物の少なくとも実質的部分に向けられたポリクローナル抗体であってよい。同一エピトープに結合する抗体は、繰り返し構造もしくはモチーフを有する分析物(例、コラーゲン)のために使用できる。
【0107】
分析物特異的結合剤の酵素部分は、リガーゼもしくはトポイソメラーゼのいずれかに由来するリガーゼ、または逆転写酵素成分であってよい。分析物特異的結合分子は抗体であることが多いので、分析物特異的結合分子は、便宜的には、例えばプロテインA、GもしくはLなどの一般的抗体結合ペプチドとの融合タンパク質として酵素成分を発現させることによって、頻回に酵素に連結させることができる。しかし、酵素が固体支持体に結合した捕捉分子には結合しないことを保証するために注意を払わなければならない。例えば、ニワトリIgYはプロテインA、G、もしくはLのいずれによっても結合されず、ラット、ウシ、ヤギ、およびヒツジ由来の全IgGはプロテインAによって弱くしか結合されないが、他方ヒト、マウス、およびウサギIgGは、プロテインAによって強力に結合される。このため、ニワトリIgY抗体またはラット、ウシ、ヤギ、もしくはヒツジ抗体は、分析物特異的結合分子としてのヒト、マウス、もしくはウサギIgGに結合させるためのプロテインAドメインに融合した酵素と結び付けて酵素捕捉分子として使用できる。このような許容できる組み合わせは、当業者であれば容易に決定できる。
【0108】
分析物特異的結合剤は、分析物の結合剤への結合を許容する条件下で、調製された固体表面に結合した分析物と接触させられる。これらの条件は、使用される分析物および結合剤に依存して変動する場合がある。そのような検討材料は、当業者には明確に理解されている。未結合結合剤は、洗浄する工程によって除去される。
【0109】
その後の工程および試薬は、酵素内に含まれる酵素成分に依存する。各トポイソメラーゼ、リガーゼ、および逆転写酵素のために適切な基質および反応条件は、本明細書で考察されている。結合した分析物特異的結合剤は、酵素によって触媒された反応が発生するのを許容する条件下で、適切な核酸基質とともにインキュベートされる。インキュベーション後、反応混合物の一部分は増幅反応混合物、好ましくはPCR反応混合物、より好ましくは定量的PCR反応混合物へ移される。増幅産物の量は、増幅反応中および/または後に検出され、サンプル中の分析物の存在が決定される。
【0110】
上記の態様のいずれかでは、増幅鋳型および検出反応の合成は、単独の工程反応(例、同一反応混合物およびインキュベーション工程)として、または連続的(例、別個の反応混合物およびインキュベーション工程)に実施することができる。
【0111】
結合分子
本明細書に開示した方法は、利用された捕捉分子および検出分子が、本方法に使用した捕捉分子(例、固体支持体に結合した捕捉抗体)および/または分析物特異的検出剤をそのために本法が使用される分析物を特異的に認識して結合するように単純に変化させることによって、任意の分析物を検出するために適応する可能性がある。一部の実施形態においては、分析物は、捕捉抗体が必要ではないように固体支持体へ直接的に結合させることができる。他の実施形態においては、捕捉抗体は分析物に結合し、未標識中間体抗体は分析物に結合し、および検出抗体は中間体抗体に結合する。
【0112】
他の実施形態においては、本アッセイは、液相反応として実行される(例、捕捉抗体および固体支持体を使用せずに、図1B、2B、および3Bを参照されたい)。これらの実施形態においては、本方法は、一般に、第1はポリヌクレオチド鋳型へ機能的に連結しており、第2は酵素成分に結合している2つの分析物特異的結合分子(例、抗体)を利用する。抗体は、ポリヌクレオチドおよび酵素成分が増幅鋳型を形成できるように相互作用することを可能にできるように分析物上で相互に近接近して結合できるように設計される。このようなアッセイは、2006年10月11日に出願された、その全体が参照して本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/546695号明細書に記載されている。
【0113】
捕捉分子および分析物特異的検出剤は、調査対象の分析物(例、多価分析物)の同一部分またはエピトープを認識して結合することができる。または、捕捉分子および分析物特異的検出剤は、分析物の相違する部分またはエピトープを認識して結合する。一部の実施形態においては、捕捉分子および分析物特異的検出剤は、同一分析物に結合することができないが、相互作用して複合体を形成する2つの相違する分析物に結合することができる。例えば、捕捉分子、受容体タンパク質、リガンドおよび検出抗体の全部が複合体を形成するように、捕捉抗体は、受容体タンパク質に特異的で結合することができ、検出抗体は受容体のリガンドに対して特異的で結合することができる。
【0114】
本明細書に開示した方法に使用される捕捉分子および検出分子として使用される特異的分子は、特別には限定されない。捕捉分子および分析物結合検出分子として有用な分子には、モノクローナル、ポリクローナル、もしくはファージ由来抗体、抗体フラグメント、ペプチド、リガンド、ハプテン、核酸、核酸アプタマー、プロテインA、プロテインG、葉酸塩、葉酸塩結合タンパク質、プラスミノーゲン、マレイミドおよびその他のスルフヒドリル反応性基、ならびに本明細書に開示した方法と一緒に使用するために生成できる分子が含まれる。
【0115】
好ましくは、捕捉分子および分析物結合検出分子は、モノクローナル、ポリクローナル、もしくはファージ由来抗体、または抗体フラグメントである。より好ましくは、捕捉分子および検出分子は、モノクローナル抗体である。
【0116】
抗体は、それらがポリクローナル、モノクローナル抗体であろうと、またはそれらの免疫反応性フラグメントであろうと、当業者であれば習熟している慣例的方法によって製造することができる。従来型のモノクローナルおよびポリクローナル抗体は有用であり、好ましいタイプの結合分子を表している。このため確立された抗体調製方法は、免疫タイプの結合分子を調整するために使用できる。免疫タイプの結合成分のための抗体を調製および精製するために適切な方法は、Harlow and Lane in Antibodies a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に記載されている。さらに、本明細書に記載したアッセイは、現在入手可能な市販の抗体とともに使用できる。
【0117】
「ポリクローナル抗体」は、抗原、もしくはその抗原性機能的誘導体を用いて免疫された動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体を製造するためには、ウサギ、マウス、およびヤギなどの宿主動物を、任意でアジュバントが補給された抗原もしくはハプテン−担体コンジュゲートの注射によって免疫することができる。
【0118】
モノクローナル抗体を生成するために当技術分野において公知の、例えばファージ提示テクノロジーを用いたインビトロ生成による、および例えばマウスなどの動物を免疫する工程による生体内生成による方法が企図されている。これらの方法には、Kohler and Milstein(Nature 256,495−497(1975))およびCampbell(“Monoclonal Antibody Technology,The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas” in Burdonら、Eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Volume 13,Elsevier Science Publishers,Amsterdam(1995))によって記載された免疫学的方法、ならびにHuseらによって記載された組み換えDNA法(Science 246,1275−1281(1989))が含まれる。標準的な組み換えDNA技術は、Sambrookら(Molecular Cloning,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987))およびAusubel(Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates/Wiley−Interscience,New York(1990))の中に記載されている。これらの方法の各々は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0119】
捕捉分子および検出分子は無傷抗体には限定されず、例えば抗体フラグメントなどの他の結合分子および抗体フラグメントを含む組み換え融合タンパク質を含んでいる。
【0120】
分析物結合検出分子と酵素との連結
分析物結合検出分子および酵素は、結合もしくは連結する工程が成分のいずれかの活性を実質的に妨害しない限り、任意の方法で結合もしくは連結することができる。2つの部分間の連結を提供する正確な方法もしくは構造は制限ではなく、選択される様々な成分および最終ユーザが入手できる試薬に依存する選択の問題である。1つの連結タイプは、分析物特異的結合分子に連結した酵素を含んでいる。これらは、当業者には周知の方法を使用して調製できる。D.G.Williams,J.Immun.Methods,79,261(1984)を参照されたい。または、分析物結合剤は、組み換えDNAおよび遺伝子組み換え技術を使用して生成することができる。I.Pastan and D.Fitzgerald,Science,254,1173(1991)を参照されたい。
【0121】
文献の中には、タンパク質を例えば抗体などの結合化合物(他のタンパク質)へ共有結合させるための広汎な指針を見いだすことができる。例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,(Academic Press,New York,1996)などを参照されたい。1つの態様においては、1つ以上の酵素が分析物特異的結合分子上の一般的反応性基へ直接的または間接的に結合させられる。一般的反応性基には、アミン、チオール、カルボキシレート、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトンなどが含まれ、市販の架橋剤によってタンパク質に連結させることができる。例えば、Hermanson(上記);Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Products,Ninth Edition(Molecular Probes,Eugene,OR,2002)を参照されたい。1つの実施形態においては、分子標識のNHS−エステルが結合分子上の遊離アミンと反応させられる。
【0122】
また別のタイプの連結は、分析物が核酸である場合は、酵素に連結したポリヌクレオチド鋳型配列から構成される。これらは、タンパク質をアミノ−オリゴヌクレオチドへ結合させるために当業者に公知の方法の変形を用いると調製できる。例えば、これは、アミノ修飾dNTPが核酸の3’末端へ追加される酵素的テーリング法を使用して遂行することができる。A.Kumar,Anal.Biochem.,169,376(1988)を参照されたい。または、アミノ修飾塩基を核酸塩基配列内に合成的に導入することができる。P.Liら、Nucleic Acids Res.,15,5275(1987)を参照されたい。酵素は次に、Urdeaの方法(M.S.,Urdea,Nucleic Acids Res.,16,4937(1988))においてアミノ修飾核酸へ結合させることができる。
【0123】
一部の実施形態においては、核酸/抗体コンジュゲートは、米国特許第5324650号明細書の中でTsengらによって記載された化学的方法を用いて、順に抗体へ連結させられるDNAオリゴヌクレオチド標的へのヘテロ二官能架橋剤の連結を含んでいる。
【0124】
オリゴヌクレオチドの抗体への化学結合を促進するために、オリゴヌクレオチドは、シアノエチル−ホスホルアミダイト化学を用いる合成中に5’末端で第1級アミン基を導入することによってアミノ修飾することができる。アミノ修飾オリゴヌクレオチドは、スルフヒドリル基を導入するヘテロ二官能試薬を用いてさらに修飾することができる。試薬であるN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)は、アセチル保護スルフヒドリル基を導入するアミノ修飾オリゴヌクレオチドへ連結させるために第1級アミン反応性基であるN−ヒドロキシル−スクシンイミド(NHS)を使用するヘテロ二官能架橋剤である。抗体は、また別のNHS架橋剤であるスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を用いて修飾される。SMCCは、抗体のペプチド内の第1級アミン基(例、リシン上のイプシロン基)と反応し、マレイミド基(遊離スルフヒドリル反応性基)を抗体へ導入する。マレイミド修飾抗体は、SATA修飾抗体と混合される。SATA修飾オリゴヌクレオチド上のアセチル保護スルフヒドリル基は、反応性遊離スルフヒドリル基を生成するためにヒドロキシルアミンの添加を用いて活性化される(米国特許第5324650号明細書)。遊離スルフヒドリル含有オリゴヌクレオチドは、マレイミド修飾抗体と直ちに反応して、DNA−抗体コンジュゲートを形成する。
【0125】
または、酵素は酵素配列に融合した(例えば、下記の実施例を参照されたい)、または2つの別個のポリペプチドとして発現して化学的に結合されたプロテインA、プロテインG、またはプロテインLコーディング配列によって、抗体分析物特異的結合剤の抗体分析物特異的結合部分に結合させられる。
【0126】
同様に、ストレプトアビジンまたはアビジン配列は、コーディング配列を酵素のコーディング配列へ融合させることによって酵素に結合させることができ、またはポリペプチドを個別に発現させて化学的に結合することができる。ストレプトアビジンまたはアビジン結合酵素は次に、当業者には周知の条件下で、例えばポリペプチドもしくは核酸分子などの任意のビオチン化分子と混合することができる。
【0127】
固体表面に結合した結合分子
1つの実施形態においては、捕捉抗体が固体支持体へ結合させられる。また別の実施形態においては、分析物は、固体支持体へ直接的に結合する。
【0128】
固体支持体は、捕捉分子の固体の表面上への結合を促進するために、例えばポリL−リシンを用いた表面のコーティング、またはアミノアルデヒドシランもしくはエポキシシランを用いたシリコン化などによって修飾することができる。当業者であれば、本明細書に開示した方法が実施される状況は、どの固体支持体が最も好ましいのか、および容器が使用されるかどうかを規定することを理解するであろう。市販の、プレコートされたELISAプレートおよびELISAキットは市販されており、本明細書に開示した検出方法と結び付けて使用できる。
【0129】
固体支持体に結合させるべき捕捉分子の量は、試験サンプル中の量を模倣すると予測されるであろう様々な量の分析物を用いた公差力価測定によって実験的に決定できよう。一般に、試験サンプル中の分析物の量は、アトグラムからミリグラムの範囲内にあると予想される。試験サンプル中の未知の濃度の分析物は規定容量で加えられ、これは試験の感受性に影響を及ぼすであろう。大容量の試験サンプル(例、200〜400μL)が使用される場合は、サンプルの大容量を可能にするために試験フォーマットの変更が必要になることがある。しかし一般には、捕捉分子の濃度は、1mLあたり約1〜約10μg(マイクログラム)であろう。
【0130】
捕捉分子は、分析物をプラスチックもしくはその他の固体支持体系(例、膜もしくはミクロスフェア)へ結合させるために記載されてきたルーチン方法によって固体支持体へ結合させることができる。このような方法の例は、どちらも参照して本明細書に組み込まれる米国特許第4045384号明細書および米国特許第4046723号明細書中に見いだすことができる。
【0131】
捕捉分子の、例えば膜、ミクロスフェア、もしくはマイクロタイターウエルなどの表面への結合は、PBS、もしくは規定pHを備える他の緩衝液中への直接添加、その後の対流式オーブン中での乾燥によって実施することができる。
【0132】
捕捉分子は、固体支持体へ、例えば吸着、共有結合、アビジン−ビオチン結合、ストレプトアビジン−ビオチン結合、ヘテロ二官能架橋剤、プロテインA結合またはプロテインG結合などの結合手段によって結合させることができる。結合手段は各々、固体支持体の表面からの捕捉分子の消失を最小限に抑えながら、ストリンジェントな洗浄条件の使用を許容しなければならない。このような条件については下記で考察するが、当業者には明確に理解されている。1つの例として、吸着は、親水性吸着であってよい。また別の例として、ヘテロ二官能架橋剤は、マレイン酸無水物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、N−5アジド、2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB−NOS)またはメルカプトシランであってよい。
【0133】
捕捉分子は、例えばアミノ酸残基、好ましくはリシンもしくはアルギニン残基、チオール基、または炭水化物残基などの捕捉分子の一部分を通して固体支持体に結合させることができる。捕捉分子が抗体である場合は、チオール基は抗体ヒンジ領域のチオール基であってよい。
【0134】
固体支持体は、アビジンもしくはストレプトアビジンを用いて誘導体化することができ、捕捉分子は、固体支持体への捕捉分子の結合に役立つように、少なくとも1つのビオチン成分を含有するように修飾することができる。または、固体支持体はビオチンを用いて誘導体化することでき、捕捉分子は少なくとも1つのアビジンまたは少なくとも1つのストレプトアビジン成分を含有するように修飾することができる。
【0135】
試験サンプルおよび分析物の結合
本明細書に開示した方法を実施する際には、調査対象の選択された分析物を含有すると疑われるサンプルが、固体支持体上に分析物を捕捉するために抗体もしくは他の物質をコーティングして調製された支持体へ適用される。または、溶液に基づくアッセイでは、試験サンプルは固体支持体を含んでいない液相反応混合物へ直接的に加えられる。支持体の同一性に依存して、支持体は何らかのタイプの培養デバイス内に含有されてよい。支持体が膜の場合は、例えば膜の長さおよび幅よりわずかに大きな浅いガラス皿を使用できる。支持体がミクロスフェアである場合は、ミクロスフェアは、例えばポリプロピレンもしくはポリスチレン製のネジ蓋式のチューブなどのチューブに含有されてよい。容器の同一性は決定的ではないが、容器は、本明細書に開示した方法に使用される試薬がそれに非特異的には付着しない材料から作製されなければならない。
【0136】
使用される試験サンプルの量は決定的ではないが、容易に取り扱える量でなければならない。試験サンプルはさらにまた、支持体を適正に被覆するために十分でなければならず、これに関連して必要であれば希釈することができる。例えば、試験サンプルの量は、0.5μL〜2mLであってよい。好ましくは、試験サンプルの量は、0.5μL〜1mLである。最も好ましくは、試験サンプルの量は、0.5μL〜200mLであってよい。より少ない容量のサンプルは、マイクロ流体デバイスと結び付けて使用できる。当業者であれば、濃度は試験サンプルの容量に依存して変動してよいこと、そこで分析物を検出できる濃度範囲を提供することは困難であることを理解するであろう。
【0137】
そこで本明細書で教示する方法およびキットは、低い数字でサンプル中に存在する分析物を検出するために使用できる。本明細書に開示した方法において分析される試験サンプルは、104分子以下の分析物、106分子以下の分析物、108分子以下の分析物、1010分子以下の分析物、1012分子以下の分析物、または1014分子以下の分析物を含有する可能性がある。サンプルの量が増加するにつれて、一層大量の分析物を検出することが可能である。
【0138】
捕捉分子は、固体支持体と、捕捉分子が固体支持体に結合することを可能にするために十分な時間にわたってインキュベートされる。または、分析物は、分析物が固体支持体に結合することを可能にするために十分な時間にわたって固体支持体とともにインキュベートされる。好ましくは、インキュベーションは約10分間〜約60分間にわたって進行するが、一晩を必要とする場合がある。
【0139】
本方法のインキュベーション工程の各々が実施される特定温度もまた臨界的ではない。温度は、例えば任意の特定工程で使用される酵素、または任意の特定工程でアニーリングされるべき核酸のTmに依存する。このような検討材料は、当業者には明確に理解されている。
【0140】
結合した分析物特異的結合剤の検出
検出反応は、結合/ライゲーションまたは逆転写酵素反応と同一もしくは別個の反応容器内で実施されてよい。例えば、増幅鋳型を有する反応混合物のアリコートを96ウエルPCRプレートの対応するウエルへ移す。このステップでは、増幅鋳型は、検出試薬(例、TAQMAN(登録商標)プローブ(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))、SYBR(登録商標)Green(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))、第1および第2プライマーならびにポリメラーゼと反応させられる。検出反応混合物は、プライマーのアニーリング、増幅鋳型の増幅および増幅鋳型の検出を可能にする反応条件にかけられる。好ましい実施形態においては、第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは相違する。また別の実施形態においては、第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは同一である。例えば、1つの実施形態においては、検出反応は、増幅および検出のために必要な適切な時間および温度を用いてプログラミングされているリアルタイムPCR装置内で実行される。例えば、MX3005PリアルタイムPCR装置は、解離曲線ならびに90℃で10分間、次に40サイクルにわたり95℃で15秒間、および63℃で34秒間が続く2工程サイクリングパラメータを備えるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))Green検出アッセイに対応するプログラムを用いて利用できる。その他のリアルタイムPCR検出の手段は当技術分野において周知であり(例、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))および分子ビーコン検出アッセイ)、本実施形に使用するために適応させることができる。検出されたシグナルを次に使用すると、サンプル中の分析物の濃度を決定できる。
【0141】
非特異的増幅産物の増幅の防止
ライゲーションに基づく方法では、PCRのための増幅産物を生成するためには1本の鎖だけがライゲートされる必要がある。トポイソメラーゼを使用すると、1本の鎖だけがライゲートされる。しかしライゲーションもしくはトポイソメラーゼ反応混合物の少なくとも一部分が増幅反応混合物へ移される場合は、ライゲーションもしくはトポイソメラーゼ反応へ加えられた二本鎖DNA分子のライゲートしていない部分が非特異的増幅産物の産生を生じさせよう。このような産物の形成は、不対3’ヌクレオチドオーバーハングの組み込みまたは例えば非天然ヌクレオチドアナログ、例えば2’−Me、もしくは類似の修飾、UTPもしくは他のRNAヌクレオチド、特別にはライゲーション部位に近位のライゲートしていない鎖の3’末端などの鎖内への修飾の組み込みを、高レベルの識別を有し、修飾DNA鎖の向かい側のヌクレオチドを組み込まないであろうPfuなどのポリメラーゼの使用と結び付けて制限することができる。
【0142】
洗浄条件
本明細書に開示した方法における試薬の添加間には、本アッセイシステムは、好ましくは非特異的結合の発生率を低下させるために洗浄にかけられる。洗浄サイクルおよび浸漬時間の数は実験によって決定されるが、一般には、洗剤、典型的には例えばTween 20、Triton X−100、またはNP−40(約1.0%まで)などの非イオン性ポリマー系洗剤を備える水または低もしくは高モル塩溶液(約1Mまでの塩、典型的にはNaCl)のいずれかを洗浄溶液として使用することができる。各々が約5秒間〜5分間持続する1〜8回の洗浄を、本方法に使用される試薬各々のインキュベーション後に実施できる。極めて高い、または極めて低い塩濃度は生理的塩濃度よりはるかにストリンジェントであると理解されている。洗剤濃度が高いほど、低い洗剤濃度よりストリンジェントである。適切な洗浄用緩衝液の選択は明確に、当業者の能力の範囲内である。一般的に使用される洗浄用緩衝液には、0.02%のTween 20もしくは0.1%のTriton X−100を備えるリン酸緩衝食塩液(PBS)(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、2mMのKH2PO4)またはTris緩衝食塩液(TBS)(100mMのTris−Cl(pH7.5);150mMのNaCl)が含まれる。洗浄する工程は、各インキュベーション工程間に、例えば固体支持体への捕捉分子の添加後、試験サンプルの添加後、および検出分子の添加後に実施できる。典型的な洗浄条件については、実施例で記載する。
【0143】
診断法
本方法、キット、および組成物は、サンプル中の分析物を検出および/または定量するために使用できる。典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、細胞表面受容体、受容体リガンド、核酸、炭水化物、ハプテン、分子、細胞、微生物およびそれらのフラグメントが含まれてよいが、これらに限定されない。本明細書に開示した方法の感受性に起因して、本方法は、典型的には極めて低濃度で存在する治療用生物学的物質を検出するために使用できる。
【0144】
組み換えポリペプチドの発現
本発明の実践は、他に特に規定しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用するが、これらは明確に当業者の技量の範囲内に含まれる。このような技術は、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis” (Gait,1984);“Animal Cell Culture” (Freshney,1987);“Methods in Enzymology”,“Handbook of Experimental Immunology” (Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells” (Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology” (Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”,(Coligan,1991)などの文献において十分に説明されている。これらの技術は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生成に適用することができるので、したがって本発明を作製および実践する際に考察することができる。特定の実施形態に特に有用な技術については、以下の項で考察する。
【0145】
下記の実施例は、当業者に本アッセイ、スクリーニング、および治療方法を作成および使用する方法についての完全な開示および説明を提供できるように考えられており、本発明者らが本発明であると見なす範囲を限定することは意図されていない。
【0146】
トポイソメラーゼ/リガーゼ用の基質の例
トポイソメラーゼについては、第1二本鎖核酸は、以下の配列を含んでいる。リガーゼについては、上の鎖は3’末端でATGGGT配列を含んでおらず、配列番号4の5’末端はリン酸化されており、
5’−TGACGCCCGAAGCCAAGTGCGGGACGGCTTCTCCAGCTTGGCCCCTTATGGGT−3’(配列番号2)
3’−CTTAACCGGGGAATACCCTTGCT−5’(配列番号3)
および第2核酸分子は、
5’−ATGGGAACGAGCAGACCGACCGCTAGACAGCTCCGTGGA−3’(配列番号4)
3’−CGTCTGGCTGGCGATCTGTCGAGGCACCT−5’(配列番号5)
を含んでいる。
【0147】
上記に示したトポイソメラーゼ/リガーゼのための対の基質とともに使用できる増幅のための第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは、第1オリゴヌクレオチドプライマー
5’−TCCACGGAGCTGTCTAGCG−3’(配列番号10)
および第2オリゴヌクレオチドプライマー
5’−TGACGCCCGAAGCCAAGTG−3’(配列番号11)
を含む。
【0148】
逆転写酵素用の基質の例
逆転写酵素のための基質となるRNA分子の配列を提供する。この配列は、図示した逆相補的RNA鎖であるDNA鋳型を用いた逆転写酵素反応の産物であってよい。
5’−GAAUUGGAGCUCCACCGCGGUGGCGGCCGCUCUAGAACUAGUGGAUCCCCCGGGCUGCAGGAAUCGAUAUCAAGCUAUCGAUACCGUCGACCUCGAGGGGGGGCCCGGUACCCAGCUUUUGUUCCCUUUAGTGAGGGUUAAUUGCGCGCUUGGCGUAAUCAUGGUCAUAGCUGUUUCCUGUGUGAAAU−3’(配列番号9)
【実施例】
【0149】
実施例1:トポイソメラーゼ活性の定量的検出
トポイソメラーゼアッセイは、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIの2工程反応に基づいている。この基質の上の鎖は、トポイソメラーゼ認識部位(CCCTT)を含有している。トポイソメラーゼ反応は、1μLのトポイソメラーゼと2μLの基質を結合することによって実施した。トポイソメラーゼ基質およびライゲーション基質は、1mMのTris HCl(pH8.0)、60mMのNaCl、1ng/μLのBSA中に各々10nM/Lで存在した。反応は、室温で10分間にわたりインキュベートさせた。
【0150】
トポイソメラーゼ酵素は、認識部位の後で上の鎖を開裂し、開裂部位の3’末端へ共有結合するようになる。開裂部位の配列3’(図4では、上の鎖の3’末端の6マー「ATGGGT」(配列番号12))は、相補鎖へアニーリングしたままとなるには短すぎるので、開裂産物は基質分子から拡散するであろう。結果として、トポイソメラーゼ反応サイクル(1本の鎖の開裂およびその後の開裂部位のライゲーション)は完了することができず、トポイソメラーゼ酵素はトポイソメラーゼ−核酸結合中間体として捕捉されたままとなる。反応サイクルは、ライゲーション基質へのライゲーションによって完了され、結果としてフローチャートの底部で生成物を生じる。この産物は次に新しくライゲートされたDNA分子内でライゲート部位をフランキングするPCRプライマーを用いて増幅される(図4では、このような配列はボールド体で指示されている。トポイソメラーゼ反応は上の鎖しか開裂せず、下の鎖には切れ目を残すことに注目されたい)。
【0151】
プローブに基づく検出のためには、それに対するプローブが確立されている産物内に2つの検出配列を統合した(したがって、名称HoxプローブおよびeNOS)。Hoxプローブ配列はトポイソメラーゼ認識部位(CCCTT)を含有していることを留意されたい。定量的PCR反応は、Taqポリメラーゼおよび400nMの各PCRプライマー(最終濃度)を含有する27μLのqPCRマスターミックス(プローブに基づく検出のためには:BRILLIANT(登録商標)QPCR Master Mix、製品番号600549(Stratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA));染料に基づく検出のためには:BRILLIANT(登録商標)QPCR Core試薬キット、製品番号600530(Stratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA))を加えることによって実施した。qPCR反応サイクルは、95℃で10分間、次に95℃で15秒間、および60℃で45秒間を40サイクルにわたり実施した。プローブに基づく検出のためには、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))プローブを最終濃度100nMで加えた。
【0152】
Hoxプローブに基づくアッセイの増幅プロットは、図6に示した。qPCRアッセイにおける二倍希釈シリーズのVV−トポイソメラーゼ(注意:酵素コントロールを用いていない場合は検出可能なCt値は得られない)。表1からのデータは、図3にグラフで示した。
【0153】
【表1】
【0154】
同一アッセイを、プローブ検出法ではなくSYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))を用いて実施かつ定量した。結果は、4桁を超えて線形であった。表2からのデータは、図7にグラフで示した。
【0155】
【表2】
【0156】
本アッセイの検出限界は、約100分子のVV−トポイソメラーゼであると決定された。
【0157】
実施例2:トポイソメラーゼ−プロテインG融合タンパク質の活性
プロテインG標識ワクシニア・トポイソメラーゼをBL21−(DE3)細胞内で生成し、CBP標識を用いて親和性精製した。Wt−トポイソメラーゼを従来型カラム精製法によって精製した。本アッセイは、プロテインG融合が酵素の機能を妨害するかどうかを決定するために、上記の方法を用いてHoxプローブを使用して実施した。CBP−プロテインGトポイソメラーゼは、wt−トポイソメラーゼより約1桁低い比活性を有することが見いだされた(図8を参照)。これは、融合タンパク質としてのトポイソメラーゼの発現が酵素成分の活性を実質的に妨害しないことを証明している。
【0158】
実施例3:分析物の定量的検出のためのトポイソメラーゼに基づくELISA
ポリ塩化ビニル製マイクロタイタープレートのウエルを分析物に対する等量の精製モノクローナル抗体でコーティングする。ウエルを洗浄し、例えばリン酸緩衝食塩液(PBS)などの適切な緩衝液中のウシ血清アルブミン(BSA)などの非特異的タンパク質を用いてブロッキングする。分析物を含有する可能性があるサンプルは、適切な緩衝液中で連続的に希釈する。ブロッキング剤を除去するために、ウエルを洗浄する。元のサンプルの様々な希釈液を含有する等量のサンプルを調製したウエル内へ、好ましくは2つずつ、または3つずつ配置する。定量的アッセイのためには、一連の公知の分析物濃度を一連の別個のウエルに加える。プレートは、サンプル中に存在する分析物が抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の適切な条件下でインキュベートする。インキュベーション後、ウエルを洗浄して未結合分析物を除去する。
【0159】
ウエルは、分析物特異的結合分子としての抗体成分、および酵素成分としてのトポイソメラーゼ成分を含む分析物特異的結合剤に曝露させる。抗体成分は、ウエルをコーティングするために使用した抗体とは別個である分析物上のエピトープに結合する。マイクロタイタープレートは、サンプル中に存在する分析物が分析物特異的結合剤中に存在する抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の条件下でインキュベートする。分析物特異的結合剤の成分は、ウエルへの非特異的結合を生じさせるであろう結合基によっては相互に結合されない。ウエルは、未結合の分析物特異的結合剤を除去するために洗浄する。
【0160】
ウエル内の結合した分析物特異的結合剤は、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼI反応混合物中の2つの少なくとも部分的に二本鎖であるDNA二重鎖と接触させる。DNA二重鎖の1本は、配列CCCTTN6(配列番号13)を備える3’末端を有しており、各Nは独立して任意のヌクレオチドである。もう1本の二本鎖のDNA二重鎖は、N6配列のトポイソメラーゼ開裂によって生成される5’オーバーハングに相補的である5’オーバーハングを有している。2つの二重鎖は、二本鎖の二重鎖の1本の鎖を結合できるワクシニアのトポイソメラーゼ活性のための基質を形成する。
【0161】
トポイソメラーゼ反応混合物の一部分をウエルから取り出して、トポイソメラーゼ産物からの産物の特異的増幅を可能にするように設計された2つのプライマーを含むqPCRのための反応混合物へ移す。この反応は、結合したSYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))によって閾値サイクル(Ct)を決定するために監視する。標準曲線は、既知量の分析物を含有するウエル由来のサンプルに基づいて作製する。未治療の分析物を含有するサンプルのCtを決定し、元のサンプル中に存在した分析物の量は、既知濃度の分析物を含むサンプルを用いて作製された標準曲線を用いて決定する。
【0162】
実施例4:読出しとしてトポイソメラーゼ活性を使用する異種VEGF ELISAアッセイ
VEGF ELISAは、分析物であるVEGFの存在についての読出しとしてトポイソメラーゼ活性を用いて実施した。VEGF検出のためのELISAキットは、業者(R&D Systems社)から購入した。結合および洗浄工程は、検出試薬であるHRP結合抗体を加える時点まで反応容量を100μLから5μLへ減少させることを除いて、製造業者の取扱説明書にしたがって実施した。検出試薬であるストレプトアビジン−トポイソメラーゼ融合タンパク質(SA−Topo)は、1:1000および1:10,000の希釈率で加え、未結合の検出試薬はインキュベーション後に洗浄した。3μLのトポイソメラーゼ基質とともに10分間にわたりインキュベーションした後、27μLのPCR混合物を加え、PCRを実施例1に記載したように実施した。Ct値は、VEGFの投入濃度に対してプロットした(図9A)。破線は、アッセイのバックグラウンド(VEGFの添加なし)を表している。黒色の太線は、製造業者による検出限界(30pg(ピコグラム)/mL)を表す。図9Bでは、同一データを検出されたVEGFのpg値として表した。同様に、黒色の太線は、標準ELISAにおける検出限界(100μLに付き3pg)を表す。30pg/mLのVEGF濃度は、本方法によって確実に検出することができる。検出された絶対量は約150fg(フェムトグラム)、または市販のELISAアッセイより約20分の1少ない量であった。これらのデータは、本方法の感受性が比色酵素検出剤に匹敵することを証明している。
【0163】
実施例5:様々な緩衝液中でのHis融合タンパク質としてのT3およびT7 DNAリガーゼの活性
T3およびT7 DNAリガーゼは、精製を促進するために組み換えHis標識タンパク質として発現させた。これらのリガーゼは、1mMのATPの存在下または非存在下でリガーゼ緩衝液(50mMのTris(pH7.5)、7mMのMgCl2、1mMのDTT)中において活性について試験した。リガーゼの10倍の希釈率の範囲にわたるライゲーション産物の精製は、PCR増幅によって決定した。ある範囲のリガーゼ分子についての増幅産物のCtは、表10に提示した。このデータは、加えられたATPがリガーゼ反応を進行させるためには必ずしも必要とされないこと、およびHis標識タンパク質が機能的であることの両方を証明している。
【0164】
T3およびT7リガーゼは、さらにPCRマスターミックス(BRILLIANT(登録商標)QPCR Mastermix(Stratagene社、製品番号600549)中で試験した。His標識タンパク質としての両方のリガーゼは、Ctによって決定されたようにPCRマスターミックス中で機能的であることが見いだされた(図11を参照されたい)。
【0165】
T3 DNAリガーゼは、T7リガーゼより有効であること、およびT3リガーゼはリガーゼ緩衝液中でPCRマスターミックスよりも活性であることに注目されたい。
【0166】
T3リガーゼは、各々ストレプトアビジンおよびプロテインGを用いて融合タンパク質としても生成されている。融合パートナーは、どちらのリガーゼも融合タンパク質として機能的であることが見いだされたので、リガーゼの活性を実質的に妨害しなかった。
【0167】
実施例6:タンパク質−タンパク質相互作用についてスクリーニングするためのリガーゼに基づく検出法
ランダム突然変異導入法および高スループットスクリーニング法を使用すると、タンパク質−タンパク質相互作用を変化させる突然変異についてスクリーニングすることができる。その結合パートナーとの相互作用について試験対象のタンパク質をランダム突然変異導入法にかけ、エピトープ標識を含有する発現ベクター内にサブクローニングする。個別のコロニーを採取し、培養中で増殖させる。各培養の一部分を使用して、ランダムに突然変異ライブラリー由来のタンパク質を含有する溶解物を調製する。
【0168】
ポリ塩化ビニル製マイクロタイタープレートのウエルを、各ライブラリーメンバーによって発現させたエピトープ標識に対する等量の精製モノクローナル抗体でコーティングする。ウエルを洗浄し、PBS中のBSAでブロッキングする。個別のライブラリーメンバーから調製した抽出物を適切な緩衝液中で希釈する。ブロッキング剤を除去するために、ウエルを洗浄する。等量の希釈抽出物を調製したウエル内へ、好ましくは2つずつ、または3つずつ配置する。結合パートナーに結合することが公知である突然変異誘発のために使用されたバージョンのタンパク質を含有する陽性コントロールウエル、およびタンパク質を含有していない、または結合パートナーと相互作用しないことが公知であるバージョンのタンパク質を含有する陰性コントロールウエルもまた調製する。プレートは、抽出物中のライブラリーメンバーが抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の適切な条件下でインキュベートする。インキュベーション後、ウエルを洗浄して未結合ライブラリーメンバーを除去する。
【0169】
結合パートナーを含む適切な分析物特異的結合剤をリガーゼドメインに結合させる。結合パートナーは、例えば上述した方法などの組み換えポリペプチド法を使用してリガーゼドメインを備える融合タンパク質として生成される。結合パートナーおよびリガーゼドメインは、1つのドメインが他方に及ぼす可能性がある作用を減少させるために、短い、柔軟性のタンパク質配列によって分離する。
【0170】
ウエルは、ライブラリーメンバーが結合パートナーに結合することを可能にする適切な時間にわたり温度および湿度の条件下で結合パートナー−リガーゼ融合タンパク質に曝露させる。ウエルは、未結合の分析物特異的結合剤を除去するために洗浄する。
【0171】
ウエル内の結合した分析物特異的結合剤は、少なくとも1本の鎖がライゲーションしてPCRのための鋳型を形成することを可能にするために適合する末端および少なくとも1つの5’−リン酸を有する2本の二本鎖DNA二重鎖と接触させる。2本の二重鎖は、ライゲーションを許容する条件下でリガーゼのための基質として機能する。ライゲーション混合物は、規定時間にわたって適切な温度でインキュベートする。
【0172】
ライゲーション反応混合物の一部分をウエルから取り出して、ライゲーション反応からの産物の特異的増幅を可能にするように設計された2つのプライマーを含むPCRのための反応混合物へ移す。増幅反応の終了時に、反応混合物の一部分を取り出し、ライブラリーメンバーと結合パートナーとの相互作用を示す増幅産物の存在を検出するために、ゲル電気泳動法および臭化エチジウムを用いた染色法にかける。所望の特性を有するライブラリーメンバーについてさらに分析する。
【0173】
実施例7:T4リガーゼ−ストレプトアビジン融合タンパク質の活性
ストレプトアビジンに連結したT4 DNAリガーゼを含む融合タンパク質(「T4/SA融合タンパク質」)を調製し、リガーゼ活性について試験した。市販されているT4 DNAリガーゼをT4/SA融合タンパク質の2つの調製物と比較した。2μLの10倍希釈シリーズのT4 DNAリガーゼもしくはT4/SA融合タンパク質を、1mMのATP、200nMプライマー(配列番号10および配列番号11)を含む23μLの1X BRILLIANT(登録商標)QPCR緩衝液(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))および、ライゲートすることのできる5塩基対オーバーハングを有する最終濃度13.3nMの以下のライゲーション基質と結合した。
5’TGACGCCCGAAGCCAAGTGCGGGACGGCTTCTCCAGCTTGGCCCCTT(配列番号6)
ACTGCGGGCTTCGGTTCACGCCCTGCCGAAGAGGTCGAACCGGGGAATACCCA−PO4 5’(配列番号14)
5’PO4−TGGGTACGAGCAGACCGACCGCTAGACAGCTCCGTGGA(配列番号15)
TGCTCGTCTGGCTGGCGATCTGTCGAGGCACCT 5’(配列番号16)
【0174】
この反応を周囲温度で30分間維持し、その後でMX 3005P(Stratagene社、ラ・ホーヤ)上で40サイクルを実行することによるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))Greenに基づく産物形成の検出法によってライゲーション産物を検出した。
【0175】
図12に示したように、T4/SA融合タンパク質の平均Ct値は5〜7閾値サイクル後であり、これは市販のT4 DNAリガーゼと比較して活性のほぼ100分の1への減少に対応する。さらにデータは、T4 DNAリガーゼが融合タンパク質として機能的であることを証明している。
【0176】
実施例8:トポイソメラーゼ活性の近接性に基づく相補性による分析物の検出
本実施例は、同種アッセイにおける分割したトポイソメラーゼ酵素を用いた分析物の検出を証明している(すなわち、ELISAタイプのアッセイにおけるような酵素を使用せずに、および任意の洗浄工程を使用せずに溶液中で)。当然ながら、本出願で考察するように、近接性に基づく検出法は、固相アッセイとして実施することもできる。例えば、(本実施例のように)酵素がアビジンもしくはストレプトアビジンに結合させられる実施形態においては、検出アッセイは、当該の分析物に対して特異的なビオチン化抗体を用いて固相アッセイとして実施することができる。
【0177】
以下の実験では、分析物はビオチン化タンパク質(ビオチン化BSAまたはビオチン化IgG(抗体)のいずれか)であり、分析物特異的結合分子はストレプトアビジンであり、酵素は融合タンパク質としてのストレプトアビジンに結合させたトポイソメラーゼである。ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼは、各々がストレプトアビジンに融合したN末端およびC末端フラグメントに分割した。詳細には、以下のトポイソメラーゼC末端フラグメント−ストレプトアビジン融合タンパク質を合成した:
His−SA−C−Topo:
MGSSHHHHHΗAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYVLTGRYDSAPATDGSGTALGWTVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWLLTSGTTEANVWKSTLVGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQLEGGGSGGGGSGGGGSGGGGIRIKDLRTYGVNYTFLYNFWTNVKSISPLPSPKKLIALTIKQTAEVVGHTPSISKRAYMATTILEMVKDKNFLDVVSKTTFDEFLSIVVDHVKSSTD(配列番号17)
【0178】
以下のトポイソメラーゼN末端フラグメント−ストレプトアビジン融合タンパク質を合成した:
N−Topo−SA−His:
MRALFYKDGKLFTDNNFLNPVSDDNPAYEVLQHVKIPTHLTDVVVYEQTWEEALTRLIFVGSDSKGRRQYFYGKMHVQNRNAKRDRIFVRVYNVMKRINCFINKNIKKSSTDSNYQLAVFMLMETMFFIRFGKMKYLKENETVGLLTLKNKHIEISPDEIVIKFVGKDKVSHEFVVHKSNRLYKPLLKLTDDSSPEEFLFNKLSERKVYECIKQFGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGRRILVSAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYVLTGRYDSAPATDGSGTALGWTVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWLLTSGTTEANVWKSTLVGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQHHHHHH(配列番号18)
【0179】
これらの構築体の各々では、N末端およびC末端トポイソメラーゼフラグメント(下線付き)のアミノ酸配列をストレプトアビジン(ボールド体およびイタリック体)および6x−His標識へ融合させる。トポイソメラーゼおよびストレプトアビジンドメインは、グリシンおよびセリンリッチリンカーによって分離する。
【0180】
トポイソメラーゼフラグメント自体には、有意な検出可能なトポイソメラーゼ活性を有していない。しかし一緒に結合すると、両方の半分は相互に対して測定可能な親和性を有しており(本発明者らの推定では、約2×10−9M)、トポイソメラーゼ活性を再構成できる。推定KDを超える濃度で両半分を使用した実験に基づくと、N末端およびC末端フラグメントから再構成されたトポイソメラーゼは、全長トポイソメラーゼとほぼ同一の酵素活性を提示する。これらの内因性親和性のKD未満の濃度で使用した場合は、トポイソメラーゼフラグメントは、トポイソメラーゼ活性の近接性依存性再構成によって分析物を検出するために使用できる。
【0181】
分析物のシグナル対近接性依存性検出のプロットは、最終的に全部の分析物特異的結合剤は別個の分析物分子と結び付き、近接性増強シグナル生成に関わることがあり得ないように、典型的には分析物濃度が分析物特異的結合剤の濃度より高い場合に観察されるスケルチング作用に起因する二相曲線を生じさせる。分析物特異的結合剤の濃度の上限は、分析物特異的結合剤の相互に対する親和性のKDによって与えられる。KDを超える濃度では、大多数の酵素の半分はすでに再構成される。分析物特異的結合剤の濃度を低下させると、シグナルがまだ検出限界の上方にあればアッセイ感受性を改善できる。分析物特異的結合剤の濃度の下限は、分析物特異的結合分子(例、ストレプトアビジン)の分析物(例、担体タンパク質に結合したビオチン、KD 10−14M)への親和性およびシグナル検出のための検出限界によって決定する。
【0182】
近接性依存性検出実験は、ストレプトアビジンに融合した指示濃度のN末端およびC末端トポイソメラーゼフラグメントを用いて3μLの反応容量で実施した(図13および14を参照されたい)。詳細には、1μLのビオチン化BSAもしくはビオチン化ヤギ−抗ウサギ抗体(American Qualex社、カリフォルニア州サンクレメンテ(San Clemente,CA))を指示(最終)濃度で1μLのストレプトアビジン/N末端トポイソメラーゼフラグメント融合タンパク質および1μLのストレプトアビジン/C末端トポイソメラーゼフラグメント融合タンパク質(450pm、110pM、または55pMいずれかの最終濃度で、各々はそのモノマー形にある)と混合した。この混合物を室温で4時間にわたりインキュベートした。1μLのトポイソメラーゼ基質(12nM)を加え、さらに10分間にわたりインキュベートした。最終濃度が400nMの増幅プライマーを含む26μLのBRILLIANT(登録商標)(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))PCRミックスを加え、トポイソメラーゼ由来鋳型の量は、MX 3005P(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))上で40サイクル実行することによるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))に基づく産物形成検出法によって検出した。提示のために、Ct値は、全長トポイソメラーゼ/ストレプトアビジンの標準曲線に基づいて全長トポイソメラーゼ等量へ変換させた。図13ならびに図14Aおよび14Bにおける黒塗り記号は、分析物を伴わないバックグラウンドシグナルを表している。ビオチン化タンパク質(BSAおよびIgG)についての推定検出限界は、約500fMまたは2×107分子であった。
【0183】
その他の実施形態
上記の説明から、様々な使用および状態に適合させるために、本明細書に記載した本発明に変更および修飾を加えられることは明白であろう。このような実施形態もまた、以下の特許請求項の範囲内に含まれる。
【0184】
本明細書の変量の任意の定義における要素の列挙は、任意の単一要素または列挙した要素の組み合わせ(もしくは小組み合わせ)としての変量の定義を含んでいる。本明細書での実施形態についての詳述は、任意の単一実施形態としての、または任意の他の実施形態もしくはそれらの部分と組み合わせた実施形態を含んでいる。
【0185】
本明細書で言及した全ての特許および刊行物は、各独立特許および刊行物が参照して組み込まれると特別かつ個別に言及されているのと同程度まで参照して本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明は、分析物を検出および定量するための、例えばリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素へ結合した結合分子を有する分析物特異的結合剤を用いる、便宜的で高速かつ感受性の方法、組成物、およびキットに関する。分析物が結合分子に結合すると、酵素は、核酸増幅反応のための鋳型を生成するための手段を提供する。増幅産物の存在の検出は、サンプル中に分析物が存在することを表示する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイの開発および核酸検出における進歩は、生物学的サンプル中の分析物の検出を前進させてきた。酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)は、サンプル中のタンパク質の存在についてのサンプルの高スループット・スクリーニングを許容する。分析物の存在は、アルカリ・ホスファターゼまたはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼをベースとする酵素的比色アッセイの使用によって検出されることが多い。これは酵素基質の比色変化の検出範囲に依存してアッセイの感受性および範囲を制限する。これには、血清中の分析物のおおよその量を決定するための初期スクリーニング、またはサンプルが使用される特定方法および試薬の検出範囲内で試験されることを保証するために、広範囲の連続する希釈率の使用のいずれかを必要とする。この方法に関するその他の問題には、高いバックグラウンドレベルならびに低感受性が含まれる。例えば、ELISAプレートへのホースラディッシュ・ペルオキシダーゼの直接結合は、非特異的バックグラウンドシグナルを生じさせる。非特異的結合を減少させるために、比較的に不活性のタンパク質(乳汁または血清アルブミン)を含有するブロッキング溶液がアッセイに加えられる。しかし、バックグラウンドシグナルを生じさせる非特異的結合は排除されないので、それによってアッセイは低感受性となる。
【0003】
これらの制限に対応するために、酵素に基づくサンプル中の分析物の検出と結び付けて使用するための核酸に基づく検出方法が開発されてきた。このような方法は、時々はイムノ−PCRと呼ばれている。
【0004】
例えば、特許文献1は、特異的タンパク質を検出する感受性を増加させるために、抗体の検出とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とを結び付けている。標準的イムノ−PCRプロトコールでは、核酸配列に結合した抗体は、抗原分子上のエピトープに結合する。抗体と核酸との結合は、核酸および抗体に対して二重特異性親和性を備えるリンカーを介して発生するので、このため特異的抗原−抗体−DNAコンジュゲートの形成を生じさせる。続いて、結合した核酸配列のセグメントはPCRによって増幅させられ、PCR産物はゲル電気泳動法によって検出される。しかし、DNAを抗体へ結合させる工程は、DNAが付着性であり、任意の未結合DNAは検出前にシステムから容易に洗浄されないために、アッセイにおける非特異的結合および高いバックグラウンドを生じさせるので、問題が多い。
【0005】
その他のイムノ−PCRアッセイおよび方法は、例えば、非特許文献1、特許文献2および特許文献3;特許文献4;特許文献5および特許文献6に記載されている。特許文献2および特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、それらの各々がオリゴヌクレオチドに連結している、少なくとも第1および第2分析物結合化合物(例えば、抗体など)を用いる方法を含んでいる。化合物が分析物に結合すると、オリゴヌクレオチドは近接近させられ、そこでこれらは相互作用して、増幅反応工程後に検出可能な核酸複合体を形成することができる。しかしこれらの方法はいずれも、結合化合物を酵素とは連結させない。むしろこれらの方法は全部が、相違するオリゴヌクレオチドに連結した2つ以上の結合化合物の使用を必要とする。さらに、オリゴヌクレオチドの小さな部分が、特別にはバックグラウンドシグナルに起因して、結合化合物の濃度が上昇するにつれて分析物の非存在下で相互作用する可能性がある。
【0006】
特許文献5は、1)例えばオキシダーゼなどの開裂誘導成分を有し、複合体内で第1タンパク質に対して特異的である第1プローブと、2)複合体内で1つ以上の第2タンパク質に対して特異的な1つ以上の結合化合物とを用いるイムノ−PCRアッセイについて記載している。第1プローブおよび1つ以上の結合化合物が複合体と結合し、近接近させられると、開裂プローブは、結合化合物に結合した分子標識を開裂する、一重項酸素などの活性種を生成するように誘導される。放出された分子標識は、サンプル中の分子複合体のプロファイルを提供するために分離かつ検出される。極めて様々な分離技術を使用すると、物理的、化学的または光学的相違に基づいて当該の分子標識を識別することができる。しかし、このシステムで使用される分子標識は、開裂誘導成分による開裂に感受性でなければならない。
【0007】
特許文献7は、核酸分子を修飾することのできるホスファターゼなどの酵素を検出するための方法について記載している。ホスファターゼがサンプル中に存在する場合は、ホスファターゼは標的核酸分子から5’末端リン酸塩を除去し、それによりエキソヌクレアーゼ消化から標的核酸を保護するであろう。エキソヌクレアーゼ処理および任意の増幅反応工程後の標的核酸の検出は、サンプル中のホスファターゼの存在を指示している。この方法は抗体もしくはその他の結合成分に結合したDNAを含むプローブの使用を回避するが、その教示はホスファターゼ活性を有する酵素の検出に限定される。さらに、検出された酵素は、核酸分子を直接的に修飾することができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,665,539号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064779号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0003361号明細書
【特許文献4】米国特許第6,511,809号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/019470号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2007/044903号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0257879号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Niemeyerら、(Nuc.Acid Res.31:e90,2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、分析物特異的結合剤を用いてサンプル中の分析物を検出および定量するための方法、キット、および組成物を提供する。分析物特異的結合剤は、例えば、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。分析物特異的結合剤は、使用される特異的結合分子に対応する分析物を検出するために分析物特異的結合剤を分析物に結合させるための条件下で、サンプルとともにインキュベートされる。結合した分析物特異的結合剤は、1つ以上のポリヌクレオチドと、分析物特異的結合剤中の酵素に依存して、酵素が核酸増幅反応のための鋳型を生成することを許容する条件下でインキュベートされる。鋳型は、好ましくは、増幅産物を形成するために使用できるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための鋳型である。増幅産物の存在の検出は、サンプル中に分析物が存在することを表示する。定量的増幅反応は、サンプル中の分析物の量を定量するために実施できる。これらの方法、組成物、およびキットは、特異的結合対結合反応(例、免疫検出法)と触媒反応(例、酵素に基づく検出系)の感受性とを結び付ける。これらはさらに、市販の系において見られる様々なバックグラウンドの起源を減少または排除する2工程結合/検出プロセスを許容することによって、市販の系全体のバックグラウンドレベルの減少を許容する。
【0011】
1つの態様においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物を含有する可能性があるサンプルと接触させる工程による方法が提供される。分析物特異的結合剤は、リガーゼ活性を有する酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。リガーゼ活性は、トポイソメラーゼまたはリガーゼのいずれかから引き出すことができる。結合した分析物特異的結合剤は、さらにリガーゼ活性のために基質とインキュベートされる。基質は、少なくとも1つの二本鎖DNA分子の第1および第2末端を含んでおり、末端は、増幅鋳型を形成するために(例、ライゲーション混合物中で)ライゲーションを許容する条件下で相互にアニーリングしてライゲートされることのできる適切な付着末端である。これらの末端は、少なくとも1つの二本鎖DNA分子によって、少なくとも2つの別個の二本鎖DNA分子によって、または少なくとも1つの二本鎖DNA分子および1つの一本鎖核酸分子によって提供することができる。ライゲーション混合物の少なくとも一部分は、増幅産物を少なくとも1つのdNTP、好ましくは全4つのdNTP、およびポリメラーゼの存在下で生成することを許容する方向において鋳型の反対側の鎖へハイブリダイズする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む増幅反応混合物中においてインキュベートされる。増幅産物は、分析物がサンプル中に存在するかどうかを決定するための増幅反応中および/または後に検出される。増幅産物は、qPCRまたは他の方法による増幅中に検出することができる。
【0012】
また別の態様においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物特異的結合剤を、分析物の結合を許容する条件下でサンプルとともにインキュベートする工程による方法が提供されるが、このとき分析物特異的結合剤は、逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含んでいる。結合した分析物特異的結合剤は、さらに逆転写反応混合物中で基質として機能できるRNA分子とインキュベートされると、順に核酸増幅のための鋳型として機能できるcDNAを形成する。逆転写反応混合物の少なくとも一部分は、好ましくは少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む増幅反応混合物中でインキュベートされる。プライマーは、1つは相補鎖の重合を許容するためにcDNAにハイブリダイズでき、1つはcDNAの相補鎖へハイブリダイズできるように設計される。プライマーは、少なくとも1つのdNTP、好ましくは全4つのdNTP、およびポリメラーゼの存在下で生成することを許容する方向において、cDNAおよび相補鎖へハイブリダイズするように設計される。増幅産物は、分析物がサンプル中に存在するかどうかを決定するための増幅反応中および/または後に検出される。増幅産物は、qPCRまたは他の方法によって増幅中に検出することができる。
【0013】
さらに別の態様においては、本明細書に開示した方法を実践するためのキットおよび組成物が提供される。キットおよび組成物は、例えば、トポイソメラーゼ、リガーゼ、または逆転写酵素などの酵素に結合した分析物特異的結合分子を含む分析物特異的結合剤、酵素成分のための1つ以上のポリヌクレオチド基質、およびそれらのためのパッキング材料を含むことができる。本キットもしくは組成物は、例えば逆転写酵素、PCR用試薬、特別にはqPCRなどの核酸増幅反応工程のための1つ以上の試薬、およびプライマーをさらに含むことができる。分析物特異的結合剤の代わりに、本キットもしくは組成物は、例えば抗体などの分析物特異的結合成分へ結合するための基を有する酵素を含むことができる。例えば、プロテインA、プロテインG、またはプロテインLに結合した酵素は、最終使用者が分析物特異的結合剤を形成するために抗体と混合することができる。または、酵素は、ストレプトアビジンもしくはアビジンに結合させ、他の起源(例、市販されているかまたは実験室で生成する)から入手したビオチン化抗体と混合することができる。以下では、分析物特異的結合分子および酵素を相互に結合させるためのその他の方法について考察する。
【0014】
また別の態様においては、分析物特異的結合分子および酵素を含む分析物特異的結合剤が提供される。分析物特異的結合剤は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、レクチン、細胞表面受容体、受容体リガンド、ペプチド、炭水化物、アプタマー、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、プロテインA、プロテインG、およびプロテインL、ならびにそれらの任意の結合フラグメントからなる群から選択される分析物特異的結合分子を含むことができる。酵素は、トポイソメラーゼ、リガーゼ、逆転写酵素、アデニングアニン・アルキルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、リコンビナーゼ類、例えばCreリコンビナーゼλ−インテグラーゼ、φC31−リコンビナーゼまたはflp−リコンビナーゼ、およびポリヌクレオチドキナーゼを含むことができる。
【0015】
また別の態様においては、分析物を検出するための方法、キット、および組成物が提供されるが、このとき2つ以上の分析物特異的結合剤と分析物との間で複合体が形成される。この態様では、各分析物特異的結合剤は、分析物特異的結合分子およびそれに結合した酵素の一部分を含んでいる。酵素の部分は相互作用して、分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、機能的酵素複合体を形成する。機能的酵素複合体は、次にサンプル中における分析物の存在および/または量の指標である検出可能なシグナルを生成する。所定の実施形態においては、酵素は、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である。そこで、本出願に記載した方法、キット、および組成物では、酵素に結合した分析物特異的結合分子は、各々が分析物特異的結合分子および酵素の一部分を含む2つ以上の分析物特異的結合剤と、酵素の部分が相互作用して分析物特異的結合剤が分析物へ結合すると機能的酵素複合体を形成するように、置換することができる。
【0016】
所定の態様においては、第1および第2結合分子は、抗体(またはその抗原結合フラグメント)を含んでいる。1つの実施形態においては、抗体は、例えば融合タンパク質として、酵素へ直接的に連結または結合している。他の実施形態においては、抗体は、例えばビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用などのビオチン−結合相互作用を通して、酵素へ間接的に連結または結合している。
【0017】
1つの態様においては、抗体などの分析物特異的結合分子は、スペーサ分子によって酵素から分離されている。同様に、酵素が抗体などの分析物特異的結合成分へ結合または連結するための基(例、プロテインA、プロテインG、プロテインL、ビオチン、ストレプトアビジン、またはアビジン)を有する1つの実施形態においては、酵素は、スペーサ分子によって基から分離することができる。複数の実施形態においては、スペーサ分子は、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、ポリヌクレオチド、またはその他の化学リンカーを含んでいる。スペーサ分子を用いることによって分析物特異的結合分子を酵素から分離することは、例えば融合タンパク質に対するより大きな柔軟性を提供し、結合および酵素成分の妨害されない機能を促進することに有用である。スペーサ分子は、さらにまた分割酵素成分(例、NおよびC末端部分)の相互作用および機能的酵素複合体の再構成を促進するためにも役立つ。
【0018】
用語の定義
本明細書で使用する用語「増幅」または「合成」は、核酸配列に適用される場合は、それによって特定核酸配列の1つ以上のコピーが鋳型核酸から生成されるプロセスを意味する。本明細書で使用する「増幅」は、プライマー伸長反応によるように、核酸配列の単一複製(single replication/copying)を含むことが意図されている。しかし一般的に、増幅は、当技術分野において周知の技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)テクノロジー(Dieffenbach,C.W.and G.S.Dveksler(1995) PCR Primer,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.)を用いて実施される。さらに、本明細書に開示した方法は、鎖置換増幅法(SDA)、回転環増幅法(RCA)、転写媒介増幅法(TMA)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)を用いて実施することができる。シグナルの増幅は、リアルタイム増幅法を用いて均質な閉管環境内で生成することができる。リアルタイム増幅法のために適切な機器類には、Stratagene社製Mx3005P、ABI PRISM社製TaqManシステム、Roche社製LightCycler、Idaho Technologies社製RapidCycler、Bio−Rad社製iCyclerおよびCepheid社製SmartCyclerが含まれる。
【0019】
本明細書で使用する「増幅産物」は、熱安定性または非熱安定性DNAポリメラーゼを用いて重合反応によって生成されたポリヌクレオチドを意味する。好ましい実施形態においては、重合反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。増幅産物は、定性的または半定量的方法によって、例えばゲル電気泳動法および染色もしくはドットブロット法によって、増幅反応中および/または増幅反応後の1つ以上の時点に入手された増幅反応由来のサンプルを使用して検出することができる。増幅産物は、増幅反応を通して、例えば上述した試薬などの、多数の市販の試薬のいずれかを用いて蛍光監視により定量的PCR法を使用して検出することができる。
【0020】
1つの実施形態においては、指数関数的増幅は、一本鎖ポリヌクレオチド鋳型および単一プライマーを用いて達成できる。これは、一本鎖標的の一方の末端ではプライマー結合配列を、および標的鎖の反対側の末端ではプライマー結合部位の相補配列を含有するポリヌクレオチド鋳型配列を設計することによって達成される。プライマーのアニーリングおよび伸長は、同一のプライマー結合部位を含有する標的相補鎖の形成を生じさせる。この方法では、結果として生じる二本鎖標的の(+)および(−)鎖はどちらも標的二重鎖の対向する末端で同一のプライマー部位を含有しており、ポリメラーゼおよび標的核酸と組み合わせて使用される同一プライマーは、+および−標的鎖の両方の複製を促進する。そこで、所定の実施形態においては、本出願で考察する第1および第2プライマーは、同一プライマーであってよい。
【0021】
本明細書で使用する用語「分析物」は、本明細書に開示した方法によって検出またはアッセイされる物質を意味する。典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、細胞表面受容体、受容体リガンド、核酸、炭水化物、分子、細胞、微生物およびそれらのフラグメント、またはそれに対して分析物特異的結合分子、例えば抗体を発生させることのできる任意の物質が含まれてよいが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する用語「分析物特異的結合剤」は、酵素の少なくとも活性部分に結合または連結した分析物特異的結合分子を有する分子を意味する。これらの部分は、例えば、単一融合タンパク質として2つの部分の発現によって、いずれのタンパク質にも自然ではない介在配列を用いて、または用いずに結合することができる。例えばプロテインA、G、またはLなどの一般的抗体結合リガンドに対するコーディング配列は、酵素を分析物結合分子へ結合させるために、酵素のコーディング配列へ融合させ、抗体と混合することができる。ビオチンおよびストレプトアビジンなどの高親和性結合パートナーもまた使用できる。ビオチンは、分析物特異的結合剤のいずれかの部分に結合させることができ、アビジンまたはストレプトアビジンは相互に結合させることができる。分析物特異的結合分子、例えば抗分析物mAb(モノクローナル抗体)は、分析物特異的結合剤を形成するために架橋剤によって酵素へ結合させることができる。タンパク質をコンジュゲート化するために当技術分野において公知の任意の架橋結合化学は、本発明と結び付けて使用できる。
【0023】
結合部分は、結合分子が酵素の活性を実質的に妨害しない、およびその逆もまた同様であるように、酵素成分へ機能的に連結している。この連結は、酵素の活性を70%、60%、50%、40%もしくは30%未満、好ましくは25%、20%、15%、もしくは10%未満、より好ましくは5%、3%、2%、もしくは1%未満減少させる。同様に、この連結は、結合成分の親和性を70%、60%、50%、40%もしくは30%未満、好ましくは25%、20%、15%、もしくは10%未満、より好ましくは5%、3%、2%、もしくは1%未満減少させる。本発明は、分析物特異的結合剤の成分の特定構造または結合方法によって限定されない。典型的には、分析物特異的結合分子および酵素は、約1:1の比で存在している。しかし、様々な部分の機能が他の成分の存在によって実質的に阻害されないことを前提に、その他の比率も可能である。
【0024】
分析物特異的結合剤の酵素成分に適用される本明細書で使用する用語「相互作用する」は、反応性成分が物理的に結び付くことができるように、2つ以上の反応性成分(例、酵素の第1および第2部分、例えばトポイソメラーゼ、リガーゼ、または逆転写酵素)を相互に近接近させることを意味する。酵素の第1および第2部分を有する1対の分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、酵素の第1および第2部分は、相互作用して機能的酵素複合体を形成できるように近接近させられる。この機能的酵素複合体を次に使用すると、増幅鋳型を(例えば、リガーゼまたは逆転写酵素活性を通して)合成することができる。酵素の第1および第2部分が(相互作用せずに)分離される場合は、これらの部分には実質的に合成活性(すなわち、酵素活性、例えばリガーゼまたは逆転写酵素活性を通して増幅反応に使用できる鋳型を合成する能力)が欠けている。
【0025】
本明細書で使用する用語「実質的に合成活性が欠けている」は、機能的酵素複合体の合成活性を50%、40%、30%、20%または10%以上有していない、および好ましくは1%未満しか有していない酵素の第1または第2部分を意味する。
【0026】
本明細書で使用する、第1酵素に関連する用語「部分」は、単離されると実質的に核酸合成活性が欠如するが、酵素の第2部分と相互作用すると核酸合成活性を有する、酵素のフラグメントを意味する。本明細書で使用する、第1酵素に関連する用語「部分」は、50〜1000アミノ酸のフラグメントであるが全長酵素より短いフラグメントを意味する。1つの実施形態においては、部分は、酵素の少なくとも50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、もしくは600以上のアミノ酸を有するが、全長酵素よりは短い。また別の実施形態では、酵素の第1および第2部分は一緒に、野生型酵素の少なくとも90%、または少なくとも95%配列同一性を含んでおり、それらが相互作用すると機能的酵素複合体を形成する。
【0027】
本明細書で使用する用語「機能的酵素複合体」は、本明細書に規定したように、いずれかの部分単独(例、複合体中ではない)の合成活性の少なくとも2倍である合成活性を有するポリペプチド複合体を形成するために相互作用する酵素の2つ以上の部分を意味している。
【0028】
本明細書で使用する用語「アニーリング」は、オリゴヌクレオチドプライマーが相補的付着末端または鋳型核酸鎖へハイブリダイズすることを許容することを意味する。プライマーアニーリングのための条件は、プライマーの長さおよび配列に伴って変動し、そのプライマーについての計算Tm値に基づいている。本明細書で使用する用語「アニーリングを許容する条件下」は、反応において適切な塩、カチオン、緩衝液、および相補的核酸の濃度、ならびに二本鎖核酸分子の形成が可能であるような適切な温度を含むがこれらに限定されない適切な条件を有することであると理解されている。本明細書で使用する「二本鎖核酸分子」は、好ましくは2つの別個の核酸分子によって形成される。一般に、増幅レジメンにおけるアニーリング工程は、鎖分離工程後に温度をプライマー配列について計算されたTmに基づく温度へ、このようなアニーリングを許容するために十分な時間にわたり低下させることを含んでいる。
【0029】
本明細書で使用する用語「抗体」は、抗原、例えば分析物に結合できる免疫グロブリンタンパク質を意味する。抗体は、一般には「エピトープ結合フラグメント」と呼ばれる、全長抗体によって認識されるエピトープへ結合する能力を保持している抗体の任意の部分を含んでいる。抗体フラグメントの実施例には、好ましくは、Fab、Fab’、およびF(ab’)2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)ならびにVLもしくはVHドメインのいずれかを含むフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。一本鎖抗体を含むエピトープ結合フラグメントは、可変領域を単独で、または次のヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体もしくは一部分と組み合わせて含むことができる。
【0030】
本明細書で使用する用語「分析物特異的結合分子」は、分析物に安定性で結合する分子または分子の一部分を意味する。結合分子には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、アプタマー、細胞表面受容体、受容体リガンド、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、ならびにプロテインA、G、およびL、レクチン、核酸、ペプチド、分析物相互作用パートナーが含まれるが、これらに限定されない。結合分子は、さらにまた列挙した結合成分の結合フラグメント、例えば上記に列挙した抗体フラグメントであってよい。結合分子は、分析物特異的結合剤を形成するために酵素へ直接的または間接的に連結している。
【0031】
本明細書で使用する用語「結合分析物特異的結合剤」は、その対応する分析物に結合した分析物特異的結合剤である。
【0032】
本明細書で使用する用語「Ct」は、定量的増幅反応から生成されたシグナルが最初に「閾値」より上方に上昇する、すなわち標的核酸配列の増幅の最初の確実な検出が生じるサイクル数を意味する。「確実な」は、シグナルが増幅中の増幅産物の検出可能なレベルを反映することを意味する。Ctは、一般に未知の量の標的核酸の出発量と相関しており、すなわちより低量の標的はより後期のCtを生じさせる。Ctは、出発核酸の初期コピー数または濃度と結び付いている。
【0033】
「捕捉分子」は、分析物へ結合するための固体支持体上の特異的または非特異的物質を意味する。捕捉分子は、分析物へ特異的に結合する抗体であってよい。捕捉分子は、さらにまた分析物によって結合されている一本鎖もしくは二本鎖の核酸配列、DNAまたはRNAであってもよい。または、捕捉分子は、ポリ−リジン、シラン、コラーゲン、または固体支持体上に分析物を捕捉するための他の非特異的物質であってよい。
【0034】
本明細書で使用する、リガーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、または他の酵素の用語「触媒部分」は、本明細書に開示した方法に使用される酵素反応を促進するために必要とされる酵素の部分である。このような酵素の構造は公知であり、様々なアミノ酸とドメインおよび酵素活性との間の構造−機能関係は明確に理解されている(例えば、トポイソメラーゼについてはChampouxら、Annu.Rev.Biochem.70:369−413,1991;ならびにポリメラーゼについてはBraithwaite and Ito,Nuc.Acids Res.19:4045,1991、およびBrathwaite and Ito,Nucleic Acids Res.21:787,1993を参照されたい。それら全部は参照して本明細書に組み込まれる)。酵素の特異的触媒活性を実質的には変化させない短縮および突然変異を含有する酵素は、本明細書に開示した方法に使用できる。
【0035】
本明細書で使用する用語「cDNA」は、RNA依存性DNAポリメラーゼ(例、逆転写酵素)の作用によってRNA鋳型から生成される相補的またはコピーポリヌクレオチドを意味する。「cDNAクローン」は、クローニングベクターで運ばれる、当該のRNA分子に相補的な二重鎖DNA配列を意味する。
【0036】
本明細書で使用する用語「開裂」は、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖の切断、典型的には酵素的切断を意味する。
【0037】
本明細書で使用する用語「開裂産物」は、ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖の切断後に溶液中へ放出されるポリヌクレオチドフラグメントである。一部の実施形態においては、開裂産物は、トポイソメラーゼによって開裂されたオリゴヌクレオチドである。また別の実施形態においては、開裂産物は、制限酵素によって開裂されたオリゴヌクレオチドである。開裂産物は、相補鎖へ事前にハイブリダイズした、短い一本鎖部分であってよい。または、開裂産物は、二本鎖であってよい。
【0038】
本明細書で使用する用語「開裂部位」は、開裂剤によって開裂され得るポリヌクレオチド構造もしくは配列を意味する。開裂部位には、トポイソメラーゼ酵素認識部位、制限酵素部位、リボザイム部位、ニッカーゼ部位、DNAザイム部位、回転環レプリコンと結び付いているニッカーゼについての認識部位および移入の起源、ならびにヌクレアーゼ開裂部位が含まれるが、これらに限定されない。例えば、ワクシニアウイルス(vaccinia−virus)に基づくトポイソメラーゼおよびMCVトポイソメラーゼに対する特異的開裂認識部位は、CCCTTである。開裂は、最後のTの後で起こる。制限酵素のための開裂部位は周知であり、分子生物学試薬のための多数のカタログのいずれかに見いだすことができる。
【0039】
本明細書で使用する用語「適合性付着末端」は、核酸分子のライゲーションを許容する条件下でハイブリダイズすることのできる、典型的には核酸分子の短い(例えば、長さが約20ヌクレオチド未満、約15未満、または約10未満)一本鎖末端である。付着末端のアニーリングする部分の長さを増加させることによって、鎖が安定性にアニーリングする温度が上昇し、より高温(例えば、37℃)でのリガーゼの使用を許容する。このような基質は、ヌクレオチド主鎖内にギャップを含むことができるが、ヌクレオチド対合内にはギャップを含んでいない。トポイソメラーゼによるライゲーションは、アクセプター分子の5’末端で遊離5’−OHの存在を必要とし、従来型リガーゼによるライゲーションは5’リン酸基を必要とする。
【0040】
本明細書で使用する用語「相補的」は、1本の鎖の構造が他方の鎖の構造を決定するように、DNA、および場合によってはRNAの鎖間でプリンおよびピリミジン塩基が正確に対合する能力を意味する。第1ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドに対して、第1ポリヌクレオチドのあらゆるヌクレオチドが第2ポリヌクレオチドの相補領域内のヌクレオチドと塩基対を形成する場合は、「十分に相補的」または「完全に相補的」であると言われる。第1ポリヌクレオチドは、第2ポリヌクレオチドに対して、第1ポリヌクレオチドのあらゆるヌクレオチドが第2ポリヌクレオチドの相補領域内でヌクレオチドと塩基対を形成しない場合は、相補的ではない(すなわち、部分的に相補的である)。例えば、2つのポリヌクレオチドは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%相補的である可能性がある。相補性率は、例えば、相補性塩基の数を二本鎖部分の全長またはポリヌクレオチドの短い方の鎖の長さによって割ることによって決定できる。ポリヌクレオチド鎖間の相補性度は、ポリヌクレオチド鎖間のアニーリングまたはハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な影響を及ぼす。これは、ポリヌクレオチド鎖間の結合に依存する、増幅反応において特に重要である。オリゴヌクレオチドは、増幅を許容するために鋳型に対して100%相補性である必要はない。オリゴヌクレオチドと鋳型との間のミスマッチは、伸長反応においてオリゴヌクレオチドの3’末端よりオリゴヌクレオチドの5’末端に近い方でより多く許容される。典型的には、オリゴヌクレオチドの末端3’ヌクレオチドでのミスマッチは、ポリメラーゼによる伸長を阻害するであろう。
【0041】
本明細書で使用する、結合、増幅または増幅産物の形成、ライゲーション、ハイブリダイゼーションなどを「許容する条件」は、例えば塩、緩衝液、ヌクレオチド、酵素、二価カチオン、ATPなどの必要な試薬の存在下での、適切な時間量にわたるpHおよび温度の適切な条件にあると理解されている。特定酵素の活性を許容する条件は、典型的には酵素製造業者によって提供される。抗体の結合を許容する条件は、例えば、Harlow and Lane(Eds.),Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(著作権)1988(参照して本明細書に組み込まれる)の中に見いだすことができる。増幅、増幅産物の形成、およびオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを許容する条件は、例えば、Chen and Janes(Eds.),PCR Cloning Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press,Inc.,Totowa,NJ、(著作権)2002(参照して本明細書に組み込まれる)の中に見いだすことができる。
【0042】
本明細書で使用する「連結した」は、例えば水素、イオン性、またはファンデルワールス(Van−der−Waals)結合によって共有的および非共有的相互作用を通した2つの分子の結び付きまたは結合を意味する。このような結合は、同一もしくは相違する原子もしくはイオンのうちの少なくとも2つの間で、これらの原子もしくはイオンの電子密度の再分布の結果として形成される可能性がある。例えば、酵素は抗体−酵素融合タンパク質としての抗体へ、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を通して、またはFcプロテインA/G/L相互作用(例えば、ポリメラーゼはプロテインA/Gへ連結され、これは順に抗体のFc領域へ結合する)を介する結合を通して連結させることができる。
【0043】
本明細書で使用する「検出する工程」、「検出」などは、サンプル中の特定分析のためにアッセイが実施されることであると理解されている。分析物は任意の特定濃度もしくは量でサンプル中に存在する必要はないが、本アッセイが分析物を検出する能力はサンプル中に存在する濃度/量に関連するであろうことに留意されたい。所定の場合には、本明細書に開示した方法は、分析物がサンプル中に存在しない、またはアッセイの検出レベルより低い量で存在することを決定するために使用できる。
【0044】
本明細書で使用する「dNTP」は、デオキシヌクレオチド三リン酸塩であると理解されており、天然または「標準」dNTP、dATP、dCTP、dGTP、およびTTPを含んでいる。本明細書で使用する「dNTP」はさらに、例えば蛍光標識さもなければ化学標識されたヌクレオチドなどの天然および非天然ヌクレオチドアナログを含んでいる。
【0045】
本明細書で使用する「二本鎖DNA」は、DNAの相補鎖もしくはセグメントにアニーリングしている少なくとも一部分を有するDNAを意味すると理解されている。二本鎖DNAは、2本の別個の鎖から構成されて、または自己相補的配列(例、ヘアピン構造)を備える単一ポリヌクレオチドであってよい。二本鎖DNA分子もしくはポリヌクレオチドは、一本鎖部分を含むことができる。
【0046】
本明細書で使用する「酵素」は、例えば、トポイソメラーゼ、リガーゼ、逆転写酵素、アデニングアニン・アルキルトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼなどの酵素、例えばCreリコンビナーゼλ−インテグラーゼ、φC31−リコンビナーゼもしくはflp−リコンビナーゼなどのリコンビナーゼ類、および分析物特異的結合分子へ結合させることのできるポリヌクレオチドキナーゼの少なくとも触媒部分を含んでいる。酵素部分は、分析物特異的結合分子から独立して存在することができる。
【0047】
本明細書で使用する「融合ポリペプチド」は、フレーム内で相互に結合(連結)している2つ以上のポリペプチドを含むポリペプチドを意味する。本明細書で使用する用語「結合した」もしくは「融合した」は、フレーム内で相互に結合した2つ以上のポリペプチドをコードする融合分子を形成するためにポリペプチドまたは核酸の2つ以上のセグメントを一緒に結合することを意味する。2つ以上のポリペプチドは、直接的に、またはリンカー配列を介して結合させることができる。
【0048】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」は、相補的ヌクレオシドもしくはヌクレオチド塩基間でのワトソン−クリック(Watson−Crick)、フーグスティーン(Hoogsteen)もしくは逆フーグスティーン水素結合であってよい、水素結合の工程を意味している。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を通して対合する相補的核酸塩基である。
【0049】
本明細書で使用する「単離(した)」または「精製(した)」は、ポリヌクレオチドに関連して使用する場合は、天然型配列がその通常の細胞(例、染色体)環境から分配されている、または非自然環境において合成(例えば、人工的に合成)されていることを意味する。ここで、「単離(した)」または「精製(した)」配列は、無細胞溶液中にあってよい、または相違する細胞環境内に配置されていてよい。用語「精製(した)」は、その配列が存在する唯一のヌクレオチド配列であるが、それと自然に関連している非ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを実質的に含んでいない(約90〜95%、99〜100%まで純粋)ことを意味していないので、単離染色体とは識別される。
【0050】
本明細書で使用する「リガーゼ」は、酵素である適切なリガーゼ基質中でDNA鎖の隣接端の結合を触媒することのできるリガーゼもしくはトポイソメラーゼ酵素の少なくとも一部分である。リガーゼの構造および機能は、当技術分野において周知である。例えば、全部がこれにより参照して本明細書に組み込まれるTimson DJら、“DNA ligases in the repair and replication of DNA,” Mutat.Res.2000 40:301−18;Wilkinson Aら、“Bacterial DNA ligases,” Mol.Microbiol.2001 40:1241−48;Martin and MacNeil,“ATP−depedendent DNA ligases,” Genome Biology 2002 3(4):reviews3005.1−3005.7を参照されたい。用語のリガーゼは、RNAリガーゼをさらに含んでいる。
【0051】
本明細書で使用する「融点」もしくは「Tm」は、2つの相補的核酸分子の相互に対する親和性に関連する温度値であると理解されている。Tmは、当業者であれば、多数の広汎に利用できる多数のアルゴリズム(例、OLIGO(商標)(Molecular Biology Insights社、カリフォルニア州カスケード(Cascade,CA))、Primer Design、ならびにPrimer3およびOligo Calculatorを含むインターネット上で入手できるプログラム)のいずれかを用いて容易に予測できる。大多数の増幅レジメンのためには、アニーリング温度は予測Tmより約5℃低い温度へ選択されるが、Tmにより近い、およびそれより高い(例、予想Tmより1℃〜5℃低い、または予想Tmの1℃〜5℃高い)温度を使用でき、同様に予想Tmより5℃より低い、または高い(例、6℃低い、8℃低い、10℃低い、および6℃高い、8℃高い、または10℃高い)温度も使用できる。一般に、アニーリング温度がTmにより近いほど、アニーリングはより特異的である。プライマーのアニーリング時間は、反応量に高度に左右され、反応量が大きいほどより長い時間を必要とするが、さらにまたプライマーおよび鋳型の濃度に依存し、鋳型に対するプライマーの相対濃度が高いほど、低濃度より短い時間を必要とする。容量および相対プライマー/鋳型濃度に依存して、増幅レジメンにおけるプライマーアニーリング工程は、約1秒間〜5分間であってよいが、一般には10秒間〜2分間であろう。
【0052】
本明細書で使用する用語「成分」もしくは「部分」は、例えば分析物特異的検出剤などの何かがそれに分けられる活性ドメインの1つであると理解されている。成分もしくは部分は、分析物特異的検出剤から独立して存在することができる。
【0053】
本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボース)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)、およびプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾プリンもしくはピリミジン塩基のN−グリコシドである、任意のポリヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドへハイブリダイズすることができる、または自己ハイブリダイズする、例えばヘアピン構造を有することができる。オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドには、制限なく、一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが含まれる。本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、さらに2’−O−メチル修飾および2’もしくは3’NH2修飾を含むがこれらに限定されない、1つ以上の修飾された塩基もしくは糖を含有するDNAもしくはRNAを含んでいる。そこで、安定性またはその他の理由から修飾されたバックボーンを備えるDNAもしくはRNAは、「ポリヌクレオチド」である。本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」は、このような化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、ならびに例えば単純型および複雑型細胞を含むウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形を含んでいる。本明細書に記載した方法のために有用なオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドは、単離もしくは精製されたポリヌクレオチドで、または増幅反応において増幅したポリヌクレオチドであってよい。
【0054】
本明細書で使用する「複数」は1つより多い、典型的には少なくとも2つを意味すると理解されている。
【0055】
本明細書で使用する「ポリメラーゼ」は、鋳型依存方法でヌクレオチドの重合を触媒する酵素である。ポリメラーゼは、鋳型としてDNAもしくはRNAを使用できる。ポリメラーゼは、熱安定性または非熱安定性であってよい。一般に、酵素は、核酸鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端で合成を開始し、鋳型鎖の5’末端に向かって進行するであろう。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼには、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、1991,Gene,108:1)、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI(Lecomte and Doubleday,1983,Nucleic Acids Res.11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstromら、1981,J.Biol.Chem.256:3112)、サームス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(Myers and Gelfand 1991,Biochemistry 30:7661)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Stenesh and McGowan,1977,Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも呼ばれる、Carielloら、1991,Nucleic Acids Res,19:4193)、9°Nm DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社からの製造中止になった製品)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(Diaz and Sabino,1998 Braz J.Med.Res,31:1239)、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chienら、1976,J.Bacteoriol,127:1550)、パイロコッカス・コダカレンシス(Pyrococcus kodakaraensis)(KOD)DNAポリメラーゼ(Takagiら、1997,Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(国際特許公開第0132887号パンフレット)、およびパイロコッカス(Pyrococcus GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginestaら、1994,Biotechniques,16:820)が含まれる。上記の酵素のポリメラーゼ活性は、当分野において周知の手段によって決定することができる。1単位のDNAポリメラーゼ活性は、最適温度(例、Pfu DNAポリメラーゼのためには72℃)で30分間にわたり10nM(ナノモル)の全dNTPのポリマー形への組込みを触媒する酵素の量であると規定されている。非熱安定性DNAポリメラーゼには、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、大腸菌DNAポリメラーゼI、およびΦ29 DNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用する「酵素に対するポリヌクレオチド基質分子」は、中間体もしくは産物を形成するために酵素により触媒的に作用することができる1つ以上のDNAもしくはRNA分子であると理解されている。「増幅もしくはPCRのためのポリヌクレオチド基質」は、2つの特異的オリゴヌクレオチドプライマーの結合を許容するために十分な長さの一本鎖または二本鎖DNAポリヌクレオチドであると理解されている(一方は第1鎖、およびもう一方は第1鎖を鋳型として用いて合成された第2鎖または相補鎖)。例えば、RNA分子は、逆転写酵素のための基質であってよい。リガーゼ活性を有する酵素のための基質は、ライゲーションを許容する条件下で相互にアニーリングおよびライゲーションできる適合する末端を備える第1二本鎖DNA分子および第2核酸分子を含んでいる。第2核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよい。5’−CCCTT−3’(配列番号1)配列を含む二本鎖DNA分子は、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIのための基質になることができる。2つのプライマーの特異的結合を可能にするために十分な長さかつ適切な配列の二本鎖DNA分子は、PCRによる核酸増幅のための基質になることができる。
【0057】
用語「プライマー」は、1つより多いプライマーを意味する場合があり、精製された制限消化物中におけるように自然に発生しようと、または核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれると相補鎖に沿った合成の開始点として機能できる合成により生成されようと、オリゴヌクレオチドを意味する。そのような条件には、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補因子である、またはpH、イオン強度などに影響を及ぼす置換基を含んでいる)中、および適切な温度での、4つの相違するデオキシリボヌクレオシド三リン酸塩およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合誘導剤の存在が含まれる。プライマーは、好ましくは、増幅において最大効率を得るためには一本鎖である。
【0058】
オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸配列にハイブリダイズすることができ、第2核酸鎖の酵素的合成をプライミングする一本鎖DNAもしくはRNA分子である。プライマーは、標的分子の一部分に相補的である。オリゴヌクレオチドプライマーは、化学的または酵素的いずれかの合成方法によって調製できる、と考えられる。または、このような分子もしくはこのフラグメントは天然型であり、天然起源から単離される、または商業的供給業者から購入される。オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、長さが5〜200ヌクレオチド、理想的には17〜40ヌクレオチドであるが、相違する長さのプライマーおよびプローブも有用である。増幅のためのプライマーは、好ましくは17〜25ヌクレオチドである。プライマーは、さらにまた融点推定法によって特定の融点(Tm)を有するように設計できる。OLIGO(商標)(Molecular Biology Insights社、カリフォルニア州カスケード(Cascade,CA))を含む市販のプログラム、Primer3 and Oligo Calculatorを含むウェブ上で入手できるプライマー設計およびプログラムを使用すると、核酸配列のTmを計算することができる。プライマーの好ましい融点は、実践される特定実施形態に左右されるであろう。オリゴヌクレオチドは、(修飾もしくは非修飾)ポリヌクレオチド鋳型およびプライマーを含んでいる。ポリヌクレオチド鋳型は、長さが少なくとも10塩基、典型的には長さが少なくとも20塩基、例えば長さが少なくとも30、40、50、60、70、80、90または100塩基からの範囲内の長さを備えて調製できる。オリゴヌクレオチドは大きな核酸フラグメントであってよいが、一般には、500塩基以下の核酸に限定される。
【0059】
オリゴヌクレオチドは、溶液中で遊離していて、または結合分子に共役していてよい。結合成分に共役しているオリゴヌクレオチドは、一般には、これらが共役されることを許容する、これらのヌクレオチド配列内の任意の地点で化学的活性基(例えば、第1級アミン基)を有しているであろう。
【0060】
本明細書で使用する「反応混合物」は、典型的には、塩、緩衝液、核酸、および酵素を含むが、これらに限定されない試薬の組み合わせである。反応混合物は、典型的には所望の反応が発生できる条件に曝露させられる。反応が発生できる条件は、少なくとも一部の試薬、例えば酵素とともに提供される製造業者の取扱説明書に提供されることが多い。
【0061】
本明細書で使用する用語「制限酵素」は、特異的ヌクレオチド配列、またはその近くで二本鎖DNAを切断する酵素を意味する。多数の制限酵素の特異性は、当技術分野において周知である。様々な制限酵素は市販されており、それらの反応条件、補因子、および酵素供給業者によって確立されるその他の要件は周知である。
【0062】
本明細書で使用する「逆転写酵素」は、MMLVおよびAMV逆転写酵素を含むRNA依存性DNAポリメラーゼである。逆転写酵素は、HIV、HTLV−I、HTLV−II、FeLV、FIV、SIV、AMV、MMTV、およびMoMuLVを含む全てのレトロウイルスについてのウイルスRNAからのcDNAの合成を仲介する。例えば、いずれもこれにより参照して組み込まれるLevin,1997,Cell,88:5−8;Brosiusら、1995,Virus Genes 11 :163−79を参照されたい。逆転写酵素の構造および機能は、当技術分野において周知である。例えば、参照して組み込まれる米国特許出願第11/100183号明細書(米国特許出願公開第2005/0272074号明細書)を参照されたい。1つの実施形態においては、逆転写酵素は、ウイルス逆転写酵素である。相違する温度で使用するための様々な逆転写酵素は、AFFINITYSCRIPT(商標)、ACCUSCRIPT(登録商標)およびSTRATASCRIPT(登録商標)(全部がStratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA)から)を含めて市販されている。
【0063】
本明細書で使用する用語「サンプル」は、その自然環境から単離されており、分析物を含有すると疑われる、または分析物を含有する可能性がある生物学的物質を意味する。本明細書に開示した方法による「サンプル」は、精製もしくは単離された分析物を含有していてよい、または分析物を含有することが疑われる組織サンプル、生体液サンプル、もしくは細胞サンプルなどの生物学的サンプルを含むことができる。生体液には、血液、血漿、血清、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液、および白血球泳動サンプルが含まれる。サンプルは、分析物を含有することが疑われる任意の植物、動物、細菌、もしくはウイルス物質を含むことができる。
【0064】
本明細書で使用する「固体支持体」または「固体表面」は、捕捉分子のための支持体を提供する任意の構造を意味する。適切な固体支持体には、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、例えばニトロセルロース、PVDFもしくはナイロンなどの膜、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、シリカビーズ、常磁性もしくはラテックスミクロスフェア、またはマイクロタイターウエルが含まれる。また別の例として、固体支持体は、例えば抗体などの捕捉分子のプレートへの共役結合を可能にするTOP YIELD(商標)プレート(Nunc社、ニューヨーク州ロチェスター(Rochester,NY))などの修飾されたマイクロタイタープレートであってよい。固体支持体がビーズ、常磁性ミクロスフェアもしくはラテックスミクロスフェアなどの物質である場合は、固体支持体は、どちらも実験室において一般に使用される、複数ウエル組織培養皿などの開放容器内に、またはネジ蓋付きチューブなどの密封容器内に収容することができる。
【0065】
本明細書で使用する用語「特異的に結合する」および「特異的結合」は、抗体もしくはその他の結合分子が、抗原、リガンドもしくは分析物などの標的へ、本発明の特定の条件下で他の分子へ結合するよりはるかに大きな親和性で結合することを意味する。抗体もしくは抗体フラグメントは、当技術分野において公知であるように、抗原などの他の分子に結合できる領域を含有するポリペプチド分子である。様々な実施形態においては、「特異的に結合する工程」は、抗体もしくはその他の生物学的分子が少なくとも10−6〜10−14/Mの親和性で標的分子に結合することを意味することができるが、より好ましくはそれらは少なくとも10−8/Mの親和性を有し、最も好ましくは少なくとも10−9/Mの親和性を有するであろう。
【0066】
本明細書で使用する「リガーゼのための基質」は、本明細書では1対の核酸分子である(少なくともその一方は部分的に二本鎖である)、または相互に付着末端へのアニーリングがヌクレオチドを消失することなく、各鎖のバックボーン内での中断を伴う二本鎖核酸分子を生じさせるように適合する付着末端を有する1つの二本鎖核酸分子の2つの末端であると理解されている。核酸鎖は、少なくとも1本の鎖上の中断部位およびその周囲で、中断点およびその周囲で少なくとも3、5、7、もしくは10連続相補的ヌクレオチドにわたり相補鎖へハイブリダイズさせられる。両方の鎖はDNA分子である、または鎖の1本はDNA分子であり、他方の鎖はRNA分子である。中断点での鎖の両端は、リガーゼもしくはトポイソメラーゼによるライゲーションを許容するために適切な末端官能基を有している。リガーゼは、アクセプター分子の5’末端では5’リン酸基を必要とするが、トポイソメラーゼは、アクセプター分子の5’末端で遊離5’−OHを必要とする。リガーゼは、熱安定性または非熱安定性であってよい。非熱安定性リガーゼは、高温への曝露、またはポリメラーゼ連鎖反応の変性工程によって不活性化することができる。
【0067】
本明細書で使用する「ポリメラーゼのための基質」は、本明細書では、二本鎖部分の第1鎖の3’末端が、それがアニーリングしている配列に完全に相補的であり、第2鎖は3’末端が伸長するであろう方向に第1鎖の3’末端を越えて伸長する、二本鎖配列の一部分を備える一本鎖核酸、いずれかのDNAであると理解されている。3’末端は、さらに3’末端の伸長を可能にするために3’−ヒドロキシル基を含んでいる。このようなDNA鋳型は、「PCR鋳型」でもある。または、核酸は、それからcDNAを生成することができ、順にPCR鋳型として機能できるRNA鎖であってよい。このようなRNA鎖は、「逆転写酵素のための基質」でもある。
【0068】
本明細書で使用する「熱安定性ポリメラーゼ」は、熱に対して安定性である、耐熱性である、および各核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物を形成するために適正な方法でヌクレオチドの結合を触媒(促進)する酵素であると理解されている。熱安定性ポリメラーゼは、二本鎖核酸の変性を実行するために必要な時間にわたり高温に曝露させた場合に非可逆的に変性(不活性化)されない。本発明のための非可逆的変性は、酵素活性の永続的かつ完全な消失を意味する。核酸変性のために必要な加熱条件は、例えば、緩衝液の塩濃度および組成ならびに変性させられる核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するであろうが、典型的には温度および核酸長に主として依存した時間、典型的には30秒間〜4分間にわたり約90〜約105℃である。緩衝塩の濃度および/または核酸のGC組成が増加するにつれて、より高い温度が許容される場合がある。好ましくは、酵素は、約90〜100℃では非可逆的に変性されないであろう。「非熱安定性ポリメラーゼ」は、熱安定性ポリメラーゼによって忍容される条件下で非可逆的に変性されるようになるポリメラーゼを意味すると理解されている。熱安定性および非熱安定性ポリメラーゼはどちらも、多数の業者から広汎に入手できる。
【0069】
本明細書で使用する「トポイソメラーゼ」は、DNAの開裂およびライゲーションを媒介できる酵素の少なくとも触媒部分を意味する。トポイソメラーゼの構造および機能は、当技術分野において周知である。その開示がこれにより参照して組み込まれる、Wang,J.C.,“DNA topoisomerases,” Anu.Rev.Biochem.65:635−92(1996)を参照されたい。一部のトポイソメラーゼはDNA分子の二本鎖部分の1本の鎖の開裂を触媒するが、その他は両方の鎖の開裂を触媒し、DNAの巻き付けおよび/または巻き戻しを触媒する。トポイソメラーゼは、配列特異的であってよく、特定配列もしくはその後で開裂する、または非配列特異的で、好ましい配列では開裂しない場合がある。2つの配列特異的トポイソメラーゼは公知であり、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIおよびMCVトポイソメラーゼである。どちらも、本明細書では「トポイソメラーゼ開裂認識部位」とよばれる、配列CCCTT(配列番号1)のすぐ後で1本のDNA鎖を開裂する。
【0070】
本明細書で使用する「トポイソメラーゼ−核酸結合中間体」は、DNAの二本鎖部分の鎖の一方の3’末端に近いトポイソメラーゼ開裂認識部位を備える2本鎖DNA基質を提供することによって生成される。鎖の開裂は、他のDNA鎖へ安定性でハイブリダイズし続けるには短すぎる短鎖開裂産物の生成を生じさせる(Tmは、トポイソメラーゼ反応の温度より10℃以上高くなく、好ましくは5℃以上高くない)。トポイソメラーゼは、リガーゼ活性のための基質を完成させるための核酸がトポイソメラーゼのライゲーションおよび遊離を可能にするために適合性の付着末端へアニーリングするまでは、核酸に結合したままとなる。
【0071】
本明細書に提供する範囲は、その範囲内の数値全部についての省略表現であると理解されている。例えば、長さが1〜50ヌクレオチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むと理解されている。
【0072】
他に特に明記しない限り、または状況から明白にならない限り、本明細書で使用する用語「または」は、包含的であると理解されている。
【0073】
他に特に明記しない限り、または状況から明白にならない限り、本明細書で使用する用語「1つの」および「その」は、単数形または複数形であると理解されている。
【0074】
本明細書に組み込まれていてその一部を構成する添付の図面は、本発明の所定の実施形態を例示しており、文書による記載と一緒に、本発明の所定の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】酵素としてトポイソメラーゼを使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図2】酵素としてリガーゼを使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図3】酵素として逆転写酵素を使用する方法の実施形態の略図を示す図である。
【図4】トポイソメラーゼ・ライゲーションアッセイの略図を示す図である。
【図5】トポイソメラーゼ・ライゲーションアッセイの検出感受性を示している増幅プロットを示す図である。
【図6】様々な濃度のトポイソメラーゼを用いた閾値サイクル数(Ct)を示すグラフである。
【図7】7桁を超えるトポイソメラーゼ濃度についてのCtを示す標準曲線を示す図である。
【図8】6桁を超えるトポイソメラーゼ濃度についてのCtの標準曲線を示す図であり、プロテインGのワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIへの融合が実質的にこの酵素の機能を妨害しないこと、そして6桁を超える結果の直線性を妨害しないことを示している。
【図9】図9Aおよび9Bは、レポーター酵素としてトポイソメラーゼを使用するELISAによって決定された様々な量のVEGFのCtを示すグラフである。
【図10】ATPの存在下または非存在下での様々な濃度のHis標識T3リガーゼを用いたCtを示すグラフである。
【図11】PCRマスターミックス中で反応を実施した、ATPの存在下または非存在下での様々な濃度のHis標識T3またはT7リガーゼを用いたCtを示すグラフである。
【図12】10倍の連続希釈濃度の、野生型T4 DNAリガーゼまたはT4 DNAリガーゼに結合したストレプトアビジンを含む融合タンパク質のいずれかを用いたライゲーション反応後の増幅反応において得られたCt値を比較したグラフである。
【図13】1つはN末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有し、もう1つはC末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有する2つの分析物特異的結合剤を用いて、それらのフラグメントが、近接近して分析物に結合すると機能的トポイソメラーゼ酵素を形成するように、様々な濃度のビオチン化BSAの近接性に基づく検出を示すグラフである。
【図14】図14Aおよび14B1つはN末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有し、もう1つはC末端トポイソメラーゼフラグメントに融合したストレプトアビジンを有する、450pm(図14A)または110pM(図14B)の2つの分析物特異的結合剤を用いて、それらのフラグメントが、近接近して分析物に結合すると機能的トポイソメラーゼ酵素を形成するように、様々な濃度のビオチン化抗体の近接性に基づく検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下では、実施例が添付の図面に示されている、本発明の様々な代表的実施形を詳細に参照されたい。以下の詳細な説明は、読者に本発明の態様の所定の実施形態、特徴および詳細をより十分に理解してもらうために提供されており、本発明の範囲の制限であると解釈すべきではないことを理解されたい。
【0077】
上記で考察したように、当該の物質を免疫検出するための試薬および方法は公知であり、市販されている。しかし、これらの試薬および方法は、最も顕著には相当に低感受性である、もしくはシグナル対ノイズ比が不良である(バックグラウンドシグナルが高い)、またはその両方が顕著であるという重大な欠点に悩まされる。さらに、一部は所定の方法でのみ機能するように特別設計されているので、そこで当該の物質を検出するために広汎に使用するためには適合しない。感受性を向上させるために免疫PCR技術が考案されてきたが、商業的に利用できるテクノロジーは今もなおそれらの有用性を制限する高いシグナル対ノイズ比に悩まされる。本出願は、高度に感受性の酵素部分(例、リガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素)に連結した高度に特異的な結合部分(例、抗体部分)を含む分析物特異的結合剤を使用することによって、検出アッセイの特異性および/または感受性を同時に保持または改善しながら、シグナル対ノイズ比を向上させる方法、組成物、およびキットを開示するが、このとき物質は酵素とともに、その酵素が増幅反応(例、PCR)のための鋳型を生成することを許容する条件下でインキュベートすることができる。この方法で、増幅のための鋳型を形成することに責任のある酵素は、感受性を維持または改良しながらバックグラウンドシグナルを減少させるために役立つように、分析物が存在する場所にのみ存在する。さらに、本検出反応は、結合反応から物理的に分離することができる。例えば、結合反応後、増幅反応のための鋳型は、増幅反応を実施するための別個の容器へ移すことができる。
【0078】
本明細書では、分析物を検出するための方法、キットおよび組成物が提供される。これらの方法では、反応における分析物の存在は、反応における分析物の存在を指示する核酸増幅鋳型の形成を生じさせる。分析物特異的結合剤の酵素は、1つ以上のポリヌクレオチド分子と相互作用し、増幅鋳型分子、好ましくはPCR増幅鋳型を生じさせる。増幅産物の増幅および検出は、感受性であり、分析物の存在の潜在的な定量的指標である。1つの態様では、分析物は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、細胞表面受容体、または受容体リガンドである。
【0079】
1つの態様では、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、分析物を、サンプル中の分析物へ特異的に結合し、かつさらにPCR増幅のための鋳型の形成を触媒することのできる酵素部分を含んでいる分析物特異的結合剤と接触させる工程を含んでいる。PCR増幅のための鋳型は、直鎖状DNAポリヌクレオチドを形成するためにアニーリングした1対のDNA二重鎖の少なくとも1本の鎖と適合する付着末端とのライゲーションによって生成することができる。3つ以上のライゲートした二重鎖の鎖を作製するためには、2対以上のDNA二重鎖を直列でライゲートすることができる。適合する付着末端は、少なくとも一部には、鎖の1本を開裂して開裂産物を遊離し、付着末端を形成する配列特異的トポイソメラーゼによって生成することができる。PCRのための鋳型は、さらにまたRNA鋳型の存在下で逆転写酵素によって生成することもできる。生成されたcDNAは、PCRのための鋳型である。PCRのための鋳型は、増幅反応において第1および第2プライマーと接触させられる。第1プライマーは、PCR増幅のための鋳型へ、鋳型に相補的な鎖を生成するための増幅を許容する条件下で結合する。この第2鎖は、PCRによる第2鎖の増幅のために第2プライマーへ結合する。プライマーは、サンプル中の分析物の存在を証明するために、鋳型からの特定産物の増幅を許容するように設計される。増幅産物の生成は、例えば、SYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))、TAQMAN(登録商標)プローブ(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))、または分子ビーコンプローブを使用することによって監視できる。未知のサンプル中で検出されたシグナルの量は、元の未知のサンプル中に存在する分析物の量を決定するために、既知量の分析物を含有するコントロールサンプル中で検出されたシグナルと比較することができる。または、増幅産物は、例えば、ドットブロット法もしくはゲル電気泳動法および臭化エチジウム染色によって、半定量的または定性的に検出することができる。一連の希釈率の未知サンプルを分析し、それを一連の既知サンプルと比較することによって、未知サンプル中の分析物サンプルの量を推定することができる。
【0080】
そこで、1つの実施形態においては、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤はリガーゼに結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、第1核酸分子はリガーゼの存在下で第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)核酸増幅を許容する条件下で(b)の反応混合物の少なくとも一部分を、第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、第1オリゴヌクレオチドプライマーは第1核酸分子と特異的に結合し、第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために第2核酸分子と結合するステップと、および
(d)増幅産物を検出する工程と、
を含む方法に向けられる。
【0081】
また別の実施形態においては、溶液中の分析物を検出するための方法は、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤はリガーゼ活性含有分子に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、各々が2つの末端を有する1つ以上のポリヌクレオチド基質分子を備えるリガーゼとともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、リガーゼは核酸増幅のための鋳型を生成するために基質分子の2つの末端と結合するステップと、
(c)反応混合物(b)の少なくとも一部分を増幅反応液とともにインキュベートするステップと、および
(d)増幅産物を検出するステップと、
を含む。
【0082】
他の実施形態においては、本方法は、
トポイソメラーゼ核酸結合中間体の形成をさらに含み、
増幅産物は、特異的増幅産物であり、
特異的増幅産物は、サイズによって決定され、
第2核酸分子は二本鎖核酸であり、第1二本鎖核酸および第2二本鎖核酸は適合する付着末端を有し、または反応混合物中の末端は適合する付着末端を有し、
第1二本鎖核酸もしくは第2二本鎖核酸のいずれかは配列特異的トポイソメラーゼ開裂部位を有し、またはそれらの末端の少なくとも一方は配列特異的トポイソメラーゼ開裂部位を有し、
適合する付着末端の少なくとも1つは配列特異的トポイソメラーゼ開裂によって生成され、
二本鎖核酸の開裂は、ライゲーションを許容する条件下では安定性にハイブリダイズしない核酸の二本鎖部分の形成を生じさせ、または
非鋳型生成鎖の核酸は、修飾を含んでいる。
【0083】
さらにまた別の実施形態においては、サンプル中の分析物を検出するための方法は、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で分析物とともにインキュベートするステップであって、分析物特異的結合剤は逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の結合した分析物特異的結合剤を、cDNA分子を生成するためにRNAの逆転写を許容する条件下でRNA分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップと、
(c)核酸増幅を許容する条件下で(b)の反応混合物の少なくとも一部分を、第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、第1オリゴヌクレオチドプライマーはcDNA分子と特異的に結合し、第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために第cDNA分子の相補体と結合するステップと、および
(d)増幅産物を検出する工程と、
を含む。
【0084】
他の実施形態においては、
本方法は、増幅産物の一部分へハイブリダイズする第3オリゴヌクレオチドを提供するステップをさらに含み、
第3オリゴヌクレオチドは、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))プローブもしくは分子ビーコンプローブであり、
増幅産物は、特異的増幅産物であり、
特異的増幅産物は、サイズによって決定され、
検出は、増幅産物の定量をさらに含み、
方法は、工程(b)の前に未結合分析物特異的結合を除去する工程をさらに含む。
【0085】
本明細書に開示した方法の、酵素として各々トポイソメラーゼ、リガーゼ、および逆転写酵素を使用する様々な実施形態の略図は、図1、2、および3に提供されている。
【0086】
図1(1)では、結合した分析物特異的結合剤のトポイソメラーゼ部分は、トポイソメラーゼのための基質上のトポイソメラーゼ特異的開裂部位へ結合している。明確にするために、完全に結合した分析物特異的結合剤は1回しか示されていないが、トポイソメラーゼは、本方法を通して結合剤に結合したままとなっている。図1(2)では、トポイソメラーゼは、リガーゼ基質を生成するための適合する付着末端を生成するためにトポイソメラーゼ基質を開裂する。開裂産物は放出され、トポイソメラーゼ−核酸結合中間体が生成される。リガーゼ基質の付着末端はアニーリングし、アニーリングした基質の各々の上の鎖(top strand)のライゲーションおよびトポイソメラーゼの放出を可能にする。下の鎖(bottom strand)の3’末端は、上の鎖に対して完全に相補的である必要はない(例、図2(1)を参照されたい)。図1(3)は、増幅反応における鋳型として機能できるライゲーション産物を示している。
【0087】
図2(1)では、結合した分析物特異的結合剤のリガーゼ部分はリガーゼのための基質の半分に結合しており、リガーゼ基質の付着末端はアニーリングされている。付着末端の少なくとも1つの5’末端は、リン酸化されている。図2(2)では、リガーゼは、増幅反応に使用するための鋳型を生成するためにリン酸化された5’末端を有する鎖を結合している。
【0088】
図3では、結合した分析物特異的結合剤の逆転写酵素部分は、逆転写酵素のための基質であるRNAへ結合している。逆転写酵素は、増幅反応に使用するための鋳型を生成するためにRNA鎖をDNA内に転写する。
【0089】
好ましい実施形態においては、分析物特異的結合分子は、ビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用を通して任意で酵素へ間接的に結合している抗体である。
【0090】
本明細書に開示した実施形態は、さらにまた第1および第2分析物特異的結合剤が提供される、本明細書に記載した分割バージョンの酵素を用いて実施することもできる。これらの実施形態においては、各分析物特異的結合剤は、酵素の一部分に連結した分析物特異的結合分子を含んでいる。酵素部分は相互作用して、分析物特異的結合剤が分析物に結合すると、機能的酵素複合体を形成する。機能的酵素複合体は、次にサンプル中における分析物の存在および/または量の指標である検出可能なシグナルを生成する。1つの実施形態においては、分割バージョンのリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素が提供される。また別の実施形態においては、第1および第2分析物特異的結合分子は抗体である。好ましい実施形態においては、第1および第2分析物特異的結合分子は、例えばビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用などの、ビオチン結合相互作用を通して酵素部分へ間接的に結合している抗体である。例えば、酵素の第1および第2部分は、ストレプトアビジンまたはアビジンへ融合させられ、当該の分析物に対して特異的なビオチン化抗体と混合される。
【0091】
1つの実施形態においては、分割された酵素は、配列番号19のアミノ酸配列を有するワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIまたは、配列番号19と少なくとも90%および好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドなどの、ポリペプチドがトポイソメラーゼ活性を保持することを前提とするトポイソメラーゼに由来する。例えば、トポイソメラーゼ酵素の第1部分は、配列番号17のアミノ酸残基179〜275を含む。または、トポイソメラーゼ酵素の第1部分は、第1部分が機能的酵素複合体を形成するためにトポイソメラーゼ酵素の第2部分と相互作用する能力を保持することを前提として、配列番号17のアミノ酸残基179〜275に対して少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。例えば、トポイソメラーゼ酵素の第2部分は、配列番号18のアミノ酸残基1〜216を含んでいる。または、トポイソメラーゼ酵素の第2部分は、第2部分が機能的酵素複合体を形成するためにトポイソメラーゼ酵素の第1部分と相互作用する能力を保持することを前提として、配列番号18のアミノ酸残基1〜216に対して少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。酵素は、2つのドメインが相互作用すると酵素活性を回復できる他のサブドメインへ分離することができる。
【0092】
ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIのアミノ酸配列(配列番号19)は、例えば、アクセッション番号YP_232986で公表されているものを含めて、公的に入手できる。ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIは、ウイルスDNAトポイソメラーゼ・スーパーファミリーに属しており、鎖β2およびβ3の間に左巻き交差を備えるN末端β(2)−α−β−α−β(2)折り畳みを想定している。DNA結合ドメインおよび触媒ドメイン内の保存残基は、当技術分野において公知である。例えば、ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIB型は、触媒活性と相関する5つの保存残基(R130、K167、K220、R223、およびH264)ならびに触媒ドメイン内のDNA結合部位へマッピングされる17の保存残基(R130、F131、G132、K133、K135、T142、K167、D168、Y209、K213、R218、I219、K220、R223、H265、T266、およびY274)を含有する、アミノ酸残基約75〜アミノ酸残基約285に及ぶC末端触媒ドメインを含有している。そこで当業者であれば、これらの保存残基での保存的突然変異は、トポイソメラーゼ活性を有するタンパク質を生じさせる可能性が高いが、他方保存ドメインの外側での突然変異は、触媒活性に大きく影響を及ぼさないと予想されるであろう。
【0093】
本明細書に開示した実施形態は、分析物特異的結合分子と酵素または分割酵素系にある酵素の第1および第2部分との間に配置された任意のスペーサ分子を用いて実施することもできる。スペーサ分子は、任意の物質または物質の組み合わせから構成されてよい。しかし典型的には、スペーサ分子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドから構成されるであろう。1つの実施形態においては、スペーサ分子は、例えばグリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンなどの小さなアミノ酸を含んでいる。また別の実施形態においては、天然型柔軟性非構造領域を使用できる。このような領域は、豊富に発現したタンパク質から、例えば大腸菌(E.coli)由来のzipAタンパク質(Ohashi T,Hale CA,de Boer PA,Erickson HP.“Structural evidence that the P/Q domain of ZipA is an unstructured,flexible tether between the membrane and the C−terminal FtsZ−binding domain.” J Bacteriol.2002;184(15):4313−4315)またはL7/L12リボソームタンパク質(Bocharovら、“From structure and dynamics of protein L7/L12 to molecular switching in ribosome,” J.Biol.Chem.,2004 279(17):17697−706)から選択することができる。多数の非構造領域は当業者には公知であり、例えばEntrez Structure NCBIデータベースからのDisprotデータベースからなどのデータベース内のタンパク質構造から入手できる。さらに、非構造領域は、例えばScooby−Domain法(Pang CNら、“Identifying foldable regions in protein sequence from the hydrophobic signal,” Nucleic Acids Res.,2008 36(2):578−88)を用いるバイオインフォーマティクス法によってタンパク質中で予測できる。
【0094】
本出願に開示された方法は、サンプル中の分析物の特異的および感受性検出のため、ならびに任意の定量のために有用である。本法は、当該分析物を結合させるために特定分析物を調製できることを前提に、本質的にあらゆる分析物を検出するために使用できる。分析物は、例えば哺乳動物もしくはヒトなどの生物由来の組織もしくは体液などの生物学的サンプル由来であってよい。本方法は、例えば、疾患状態または臨床的介入の有効性を決定するために経時的にタンパク質の発現を監視するために使用できる。サンプルは、例えば、水もしくは土壌サンプル中の分析物の存在を検出するために、環境起源由来であってよい。サンプルは、汚染物質または感染性物質の存在について試験するために農業的もしくは食物起源由来であってよい。分析物を特異的分析物結合成分へ結合させるために抽出物を調製する方法は、当業者であれば周知である。
【0095】
1つの態様においては、公知のELISAタイプのアッセイと組み合わせて検出剤を使用するための組成物およびキットが提供される。一般に、本キットは、典型的には容器を貯蔵および/または輸送するための包装材料と組み合わせて、少なくとも1つの容器内に、分析物特異的結合剤を含んでいる。分析物特異的結合剤は、増幅反応のための鋳型を形成するための基質、および増幅反応、好ましくはPCR反応、より好ましくは定量的PCR反応に使用するために必要とされる試薬と組み合わせて使用できる。
【0096】
特定の分析物を検出するための多数のキットは、市販されている。このようなキットは、典型的にはELISAプレート、および分析物へ結合するためにプレート上に事前にコーティングされた、または別個のいずれかでの捕捉分子を含んでいる。公知の濃度にあるコントロール分析物は、陽性コントロールとしてキットともに提供されてよい。分析物を検出するための分析物特異的抗体は、市販のELISAの成分として提供され、分析物特異的抗体を検出するためには、検出可能なレベルに結合した第2抗体が提供される。1つの実施形態においては、本キットは、ELISAアッセイにおいて提供される、および/または典型的に使用される第2抗体の代りに使用するための組成物および試薬を含んでいる。
【0097】
さらに、市販されているキットを含むELISAアッセイとともに検出試薬として使用するためのプロテインA、G、またはLなどの抗体結合ドメインに連結した、例えばリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素などの酵素を含有するキットが提供される。酵素は、さらにまたキット内に含まれる、またはまた別の起源から入手されるビオチン化抗体へ結合させるためにストレプトアビジンまたはアビジンへ結合させることができる。抗体結合ドメインまたはストレプトアビジンに連結した酵素は、分析物特異的結合剤を生成するために、分析物特異的抗体または任意のビオチン化分子各々と接触させることができる。または、抗体結合ドメインへ連結した酵素は、分析物特異的抗体と結合する抗体と接触させることができる。例えば、分析物特異的抗体がマウスIgGモノクローナル抗体である場合は、市販の抗マウスIgG抗体は、抗体結合ドメイン(例、プロテインG)と連結した酵素と接触させることができる。または、本キットには、検出剤として使用するための酵素成分と連結した抗免疫グロブリン抗体を含むキットを含むことができる。
【0098】
本キットは、PCR用の鋳型を生成するための酵素の基質である、核酸分子をさらに含んでいる。
【0099】
トポイソメラーゼに基づくキットでは、核酸分子は、その一方の末端は開裂されると第2二本鎖核酸分子にアニーリングするために適合する付着末端を生成する、トポイソメラーゼ開裂部位を含有する1つまたは2つの二本鎖核酸分子、好ましくはDNA分子であってよい。アクセプター鎖は、トポイソメラーゼのための基質を形成するために5’−OHを含んでいる。
【0100】
リガーゼに基づくキットでは、核酸分子は、第2二本鎖核酸分子もしくは一本鎖核酸分子にアニーリングするために適合する付着末端を有する、2つの二本鎖核酸分子または1つの二本鎖核酸分子および1つの一本鎖核酸分子、好ましくはDNA分子であってよい。増幅のための鋳型となる鎖内の少なくともアクセプター鎖は、トポイソメラーゼのための基質を形成するために5’−リン酸塩を含んでいる。5’−リン酸塩を含んでいない鎖は、例えばPfuなどの高レベルの識別を備えるポリメラーゼによる鎖の増幅を妨害する非天然dNTPを含む可能性がある。
【0101】
逆転写酵素に基づくキットでは、核酸分子は、RNA分子である。RNA分子は、逆転写酵素を実質的に妨害することなくRNA鋳型の安定性を増加させるために化学修飾を含むことができる。このようなRNA分子は、当業者には公知である。
【0102】
本キットは、酵素成分によって生成された鋳型からの産物の定量的増幅のために、プライマー、プローブ(例、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))もしくは分子ビーコンプローブ)、またはその他の物質(例、SYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。本キットは、PCR産物を増幅させるためのポリメラーゼをさらに含むことができる。
【0103】
また別の態様では、本明細書に開示した方法およびキットに使用するための組成物が提供される。例えば、本組成物は、試薬と結び付けて使用するために適合する少なくとも1つの他の物質と結合できる、酵素もしくは酵素成分と連結した分析物特異的結合分子を有する分析物特異的検出剤(例、融合タンパク質)を含んでいてよい。適切な物質には、本発明による方法において所望であるように実施する能力に有害な影響を及ぼさずに試薬に接触することを引き起こせる物質が含まれる。または、追加して、組成物は分析物特異的検出剤およびそれに試薬が特異的に結合する1つ以上の物質(例、検出対象の分析物)または分析物特異的検出剤の酵素部分と相互作用する1つ以上の物質(例、例えば本明細書に開示した方法およびキットに使用するために本明細書において考察したような、酵素の核酸基質)を含むことができる。さらに、例えばプロテインA、G、もしくはLなどの抗体結合ドメイン、または好ましくは結合剤として使用するためのビオチン、アビジン、もしくはストレプトアビジンへ連結した酵素もしくは酵素成分である。さらに、好ましくは結合剤として使用するための抗免疫グロブリン抗体にさらに連結した抗体結合ドメインに連結した酵素もしくは酵素成分である。組成物は、例えば、凍結乾燥粉末もしくは水性混合液中のような液体形もしくは固体形で見いだすことができる。したがって、結合および検出アッセイにおける組成物の使用が提供される。
【0104】
1つの態様においては、本方法は、サンプル中に存在する可能性がある特異的分析物の結合を許容するために分析物捕捉分子を備える固体表面を調製する工程を含んでいる。市販の抗体でコーティングされたプレート、または抗体および抗体を表面に結合させるための取扱説明書を含むELISAキットもまた使用できる。分析物捕捉分子は、特異的もしくは非特異的結合剤であってよく、または特定物質を非特異的物質によってプレートに結合させることができる。捕捉分子は、例えばビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジンなどの、結合対の半分を含むことができる。固体表面はアビジンもしくはストレプトアビジンでコーティングできる、および捕捉分子はビオチンへ結合させることができる。捕捉分子を固体支持体へ結合させる正確な方法は、本発明の制限内にはない。プレートを捕捉分子でコーティングした後、表面を洗浄し、表面への物質の非特異的結合を防止するために非特異的物質を用いてブロッキングする。
【0105】
調製したプレートは、結合を可能にする時間および温度の適切な条件下で適切な緩衝液中で分析物と接触させられる。これらの条件は、使用される分析物および捕捉試薬に依存して変動する場合がある。このような検討材料は、当業者には明確に理解されている。未結合分析物は、洗浄する工程によって除去される。
【0106】
分析物特異的結合剤は、分析物の存在を検出するために調製される。分析物特異的結合剤は、酵素に連結した、融合した、または付着した分析物特異的結合分子を含む。分析物結合分子は、分析物に分析物捕捉分子とは別個のエピトープで結合するように、かつ分析物および酵素成分以外の反応の任意の他の成分へ結合しないように選択されなければならない。例えば、捕捉分子および分析物結合分子は、分析物上の2つの別個の、非妨害性エピトープで結合する、分析物を標的とするモノクローナル抗体であってよい。または、捕捉分子および分析物結合分子は、どちらも、2つの抗体が分析物へ同時に結合できるように分析物の少なくとも実質的部分に向けられたポリクローナル抗体であってよい。同一エピトープに結合する抗体は、繰り返し構造もしくはモチーフを有する分析物(例、コラーゲン)のために使用できる。
【0107】
分析物特異的結合剤の酵素部分は、リガーゼもしくはトポイソメラーゼのいずれかに由来するリガーゼ、または逆転写酵素成分であってよい。分析物特異的結合分子は抗体であることが多いので、分析物特異的結合分子は、便宜的には、例えばプロテインA、GもしくはLなどの一般的抗体結合ペプチドとの融合タンパク質として酵素成分を発現させることによって、頻回に酵素に連結させることができる。しかし、酵素が固体支持体に結合した捕捉分子には結合しないことを保証するために注意を払わなければならない。例えば、ニワトリIgYはプロテインA、G、もしくはLのいずれによっても結合されず、ラット、ウシ、ヤギ、およびヒツジ由来の全IgGはプロテインAによって弱くしか結合されないが、他方ヒト、マウス、およびウサギIgGは、プロテインAによって強力に結合される。このため、ニワトリIgY抗体またはラット、ウシ、ヤギ、もしくはヒツジ抗体は、分析物特異的結合分子としてのヒト、マウス、もしくはウサギIgGに結合させるためのプロテインAドメインに融合した酵素と結び付けて酵素捕捉分子として使用できる。このような許容できる組み合わせは、当業者であれば容易に決定できる。
【0108】
分析物特異的結合剤は、分析物の結合剤への結合を許容する条件下で、調製された固体表面に結合した分析物と接触させられる。これらの条件は、使用される分析物および結合剤に依存して変動する場合がある。そのような検討材料は、当業者には明確に理解されている。未結合結合剤は、洗浄する工程によって除去される。
【0109】
その後の工程および試薬は、酵素内に含まれる酵素成分に依存する。各トポイソメラーゼ、リガーゼ、および逆転写酵素のために適切な基質および反応条件は、本明細書で考察されている。結合した分析物特異的結合剤は、酵素によって触媒された反応が発生するのを許容する条件下で、適切な核酸基質とともにインキュベートされる。インキュベーション後、反応混合物の一部分は増幅反応混合物、好ましくはPCR反応混合物、より好ましくは定量的PCR反応混合物へ移される。増幅産物の量は、増幅反応中および/または後に検出され、サンプル中の分析物の存在が決定される。
【0110】
上記の態様のいずれかでは、増幅鋳型および検出反応の合成は、単独の工程反応(例、同一反応混合物およびインキュベーション工程)として、または連続的(例、別個の反応混合物およびインキュベーション工程)に実施することができる。
【0111】
結合分子
本明細書に開示した方法は、利用された捕捉分子および検出分子が、本方法に使用した捕捉分子(例、固体支持体に結合した捕捉抗体)および/または分析物特異的検出剤をそのために本法が使用される分析物を特異的に認識して結合するように単純に変化させることによって、任意の分析物を検出するために適応する可能性がある。一部の実施形態においては、分析物は、捕捉抗体が必要ではないように固体支持体へ直接的に結合させることができる。他の実施形態においては、捕捉抗体は分析物に結合し、未標識中間体抗体は分析物に結合し、および検出抗体は中間体抗体に結合する。
【0112】
他の実施形態においては、本アッセイは、液相反応として実行される(例、捕捉抗体および固体支持体を使用せずに、図1B、2B、および3Bを参照されたい)。これらの実施形態においては、本方法は、一般に、第1はポリヌクレオチド鋳型へ機能的に連結しており、第2は酵素成分に結合している2つの分析物特異的結合分子(例、抗体)を利用する。抗体は、ポリヌクレオチドおよび酵素成分が増幅鋳型を形成できるように相互作用することを可能にできるように分析物上で相互に近接近して結合できるように設計される。このようなアッセイは、2006年10月11日に出願された、その全体が参照して本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/546695号明細書に記載されている。
【0113】
捕捉分子および分析物特異的検出剤は、調査対象の分析物(例、多価分析物)の同一部分またはエピトープを認識して結合することができる。または、捕捉分子および分析物特異的検出剤は、分析物の相違する部分またはエピトープを認識して結合する。一部の実施形態においては、捕捉分子および分析物特異的検出剤は、同一分析物に結合することができないが、相互作用して複合体を形成する2つの相違する分析物に結合することができる。例えば、捕捉分子、受容体タンパク質、リガンドおよび検出抗体の全部が複合体を形成するように、捕捉抗体は、受容体タンパク質に特異的で結合することができ、検出抗体は受容体のリガンドに対して特異的で結合することができる。
【0114】
本明細書に開示した方法に使用される捕捉分子および検出分子として使用される特異的分子は、特別には限定されない。捕捉分子および分析物結合検出分子として有用な分子には、モノクローナル、ポリクローナル、もしくはファージ由来抗体、抗体フラグメント、ペプチド、リガンド、ハプテン、核酸、核酸アプタマー、プロテインA、プロテインG、葉酸塩、葉酸塩結合タンパク質、プラスミノーゲン、マレイミドおよびその他のスルフヒドリル反応性基、ならびに本明細書に開示した方法と一緒に使用するために生成できる分子が含まれる。
【0115】
好ましくは、捕捉分子および分析物結合検出分子は、モノクローナル、ポリクローナル、もしくはファージ由来抗体、または抗体フラグメントである。より好ましくは、捕捉分子および検出分子は、モノクローナル抗体である。
【0116】
抗体は、それらがポリクローナル、モノクローナル抗体であろうと、またはそれらの免疫反応性フラグメントであろうと、当業者であれば習熟している慣例的方法によって製造することができる。従来型のモノクローナルおよびポリクローナル抗体は有用であり、好ましいタイプの結合分子を表している。このため確立された抗体調製方法は、免疫タイプの結合分子を調整するために使用できる。免疫タイプの結合成分のための抗体を調製および精製するために適切な方法は、Harlow and Lane in Antibodies a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に記載されている。さらに、本明細書に記載したアッセイは、現在入手可能な市販の抗体とともに使用できる。
【0117】
「ポリクローナル抗体」は、抗原、もしくはその抗原性機能的誘導体を用いて免疫された動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体を製造するためには、ウサギ、マウス、およびヤギなどの宿主動物を、任意でアジュバントが補給された抗原もしくはハプテン−担体コンジュゲートの注射によって免疫することができる。
【0118】
モノクローナル抗体を生成するために当技術分野において公知の、例えばファージ提示テクノロジーを用いたインビトロ生成による、および例えばマウスなどの動物を免疫する工程による生体内生成による方法が企図されている。これらの方法には、Kohler and Milstein(Nature 256,495−497(1975))およびCampbell(“Monoclonal Antibody Technology,The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas” in Burdonら、Eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Volume 13,Elsevier Science Publishers,Amsterdam(1995))によって記載された免疫学的方法、ならびにHuseらによって記載された組み換えDNA法(Science 246,1275−1281(1989))が含まれる。標準的な組み換えDNA技術は、Sambrookら(Molecular Cloning,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987))およびAusubel(Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates/Wiley−Interscience,New York(1990))の中に記載されている。これらの方法の各々は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0119】
捕捉分子および検出分子は無傷抗体には限定されず、例えば抗体フラグメントなどの他の結合分子および抗体フラグメントを含む組み換え融合タンパク質を含んでいる。
【0120】
分析物結合検出分子と酵素との連結
分析物結合検出分子および酵素は、結合もしくは連結する工程が成分のいずれかの活性を実質的に妨害しない限り、任意の方法で結合もしくは連結することができる。2つの部分間の連結を提供する正確な方法もしくは構造は制限ではなく、選択される様々な成分および最終ユーザが入手できる試薬に依存する選択の問題である。1つの連結タイプは、分析物特異的結合分子に連結した酵素を含んでいる。これらは、当業者には周知の方法を使用して調製できる。D.G.Williams,J.Immun.Methods,79,261(1984)を参照されたい。または、分析物結合剤は、組み換えDNAおよび遺伝子組み換え技術を使用して生成することができる。I.Pastan and D.Fitzgerald,Science,254,1173(1991)を参照されたい。
【0121】
文献の中には、タンパク質を例えば抗体などの結合化合物(他のタンパク質)へ共有結合させるための広汎な指針を見いだすことができる。例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,(Academic Press,New York,1996)などを参照されたい。1つの態様においては、1つ以上の酵素が分析物特異的結合分子上の一般的反応性基へ直接的または間接的に結合させられる。一般的反応性基には、アミン、チオール、カルボキシレート、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトンなどが含まれ、市販の架橋剤によってタンパク質に連結させることができる。例えば、Hermanson(上記);Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Products,Ninth Edition(Molecular Probes,Eugene,OR,2002)を参照されたい。1つの実施形態においては、分子標識のNHS−エステルが結合分子上の遊離アミンと反応させられる。
【0122】
また別のタイプの連結は、分析物が核酸である場合は、酵素に連結したポリヌクレオチド鋳型配列から構成される。これらは、タンパク質をアミノ−オリゴヌクレオチドへ結合させるために当業者に公知の方法の変形を用いると調製できる。例えば、これは、アミノ修飾dNTPが核酸の3’末端へ追加される酵素的テーリング法を使用して遂行することができる。A.Kumar,Anal.Biochem.,169,376(1988)を参照されたい。または、アミノ修飾塩基を核酸塩基配列内に合成的に導入することができる。P.Liら、Nucleic Acids Res.,15,5275(1987)を参照されたい。酵素は次に、Urdeaの方法(M.S.,Urdea,Nucleic Acids Res.,16,4937(1988))においてアミノ修飾核酸へ結合させることができる。
【0123】
一部の実施形態においては、核酸/抗体コンジュゲートは、米国特許第5324650号明細書の中でTsengらによって記載された化学的方法を用いて、順に抗体へ連結させられるDNAオリゴヌクレオチド標的へのヘテロ二官能架橋剤の連結を含んでいる。
【0124】
オリゴヌクレオチドの抗体への化学結合を促進するために、オリゴヌクレオチドは、シアノエチル−ホスホルアミダイト化学を用いる合成中に5’末端で第1級アミン基を導入することによってアミノ修飾することができる。アミノ修飾オリゴヌクレオチドは、スルフヒドリル基を導入するヘテロ二官能試薬を用いてさらに修飾することができる。試薬であるN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)は、アセチル保護スルフヒドリル基を導入するアミノ修飾オリゴヌクレオチドへ連結させるために第1級アミン反応性基であるN−ヒドロキシル−スクシンイミド(NHS)を使用するヘテロ二官能架橋剤である。抗体は、また別のNHS架橋剤であるスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を用いて修飾される。SMCCは、抗体のペプチド内の第1級アミン基(例、リシン上のイプシロン基)と反応し、マレイミド基(遊離スルフヒドリル反応性基)を抗体へ導入する。マレイミド修飾抗体は、SATA修飾抗体と混合される。SATA修飾オリゴヌクレオチド上のアセチル保護スルフヒドリル基は、反応性遊離スルフヒドリル基を生成するためにヒドロキシルアミンの添加を用いて活性化される(米国特許第5324650号明細書)。遊離スルフヒドリル含有オリゴヌクレオチドは、マレイミド修飾抗体と直ちに反応して、DNA−抗体コンジュゲートを形成する。
【0125】
または、酵素は酵素配列に融合した(例えば、下記の実施例を参照されたい)、または2つの別個のポリペプチドとして発現して化学的に結合されたプロテインA、プロテインG、またはプロテインLコーディング配列によって、抗体分析物特異的結合剤の抗体分析物特異的結合部分に結合させられる。
【0126】
同様に、ストレプトアビジンまたはアビジン配列は、コーディング配列を酵素のコーディング配列へ融合させることによって酵素に結合させることができ、またはポリペプチドを個別に発現させて化学的に結合することができる。ストレプトアビジンまたはアビジン結合酵素は次に、当業者には周知の条件下で、例えばポリペプチドもしくは核酸分子などの任意のビオチン化分子と混合することができる。
【0127】
固体表面に結合した結合分子
1つの実施形態においては、捕捉抗体が固体支持体へ結合させられる。また別の実施形態においては、分析物は、固体支持体へ直接的に結合する。
【0128】
固体支持体は、捕捉分子の固体の表面上への結合を促進するために、例えばポリL−リシンを用いた表面のコーティング、またはアミノアルデヒドシランもしくはエポキシシランを用いたシリコン化などによって修飾することができる。当業者であれば、本明細書に開示した方法が実施される状況は、どの固体支持体が最も好ましいのか、および容器が使用されるかどうかを規定することを理解するであろう。市販の、プレコートされたELISAプレートおよびELISAキットは市販されており、本明細書に開示した検出方法と結び付けて使用できる。
【0129】
固体支持体に結合させるべき捕捉分子の量は、試験サンプル中の量を模倣すると予測されるであろう様々な量の分析物を用いた公差力価測定によって実験的に決定できよう。一般に、試験サンプル中の分析物の量は、アトグラムからミリグラムの範囲内にあると予想される。試験サンプル中の未知の濃度の分析物は規定容量で加えられ、これは試験の感受性に影響を及ぼすであろう。大容量の試験サンプル(例、200〜400μL)が使用される場合は、サンプルの大容量を可能にするために試験フォーマットの変更が必要になることがある。しかし一般には、捕捉分子の濃度は、1mLあたり約1〜約10μg(マイクログラム)であろう。
【0130】
捕捉分子は、分析物をプラスチックもしくはその他の固体支持体系(例、膜もしくはミクロスフェア)へ結合させるために記載されてきたルーチン方法によって固体支持体へ結合させることができる。このような方法の例は、どちらも参照して本明細書に組み込まれる米国特許第4045384号明細書および米国特許第4046723号明細書中に見いだすことができる。
【0131】
捕捉分子の、例えば膜、ミクロスフェア、もしくはマイクロタイターウエルなどの表面への結合は、PBS、もしくは規定pHを備える他の緩衝液中への直接添加、その後の対流式オーブン中での乾燥によって実施することができる。
【0132】
捕捉分子は、固体支持体へ、例えば吸着、共有結合、アビジン−ビオチン結合、ストレプトアビジン−ビオチン結合、ヘテロ二官能架橋剤、プロテインA結合またはプロテインG結合などの結合手段によって結合させることができる。結合手段は各々、固体支持体の表面からの捕捉分子の消失を最小限に抑えながら、ストリンジェントな洗浄条件の使用を許容しなければならない。このような条件については下記で考察するが、当業者には明確に理解されている。1つの例として、吸着は、親水性吸着であってよい。また別の例として、ヘテロ二官能架橋剤は、マレイン酸無水物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、N−5アジド、2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB−NOS)またはメルカプトシランであってよい。
【0133】
捕捉分子は、例えばアミノ酸残基、好ましくはリシンもしくはアルギニン残基、チオール基、または炭水化物残基などの捕捉分子の一部分を通して固体支持体に結合させることができる。捕捉分子が抗体である場合は、チオール基は抗体ヒンジ領域のチオール基であってよい。
【0134】
固体支持体は、アビジンもしくはストレプトアビジンを用いて誘導体化することができ、捕捉分子は、固体支持体への捕捉分子の結合に役立つように、少なくとも1つのビオチン成分を含有するように修飾することができる。または、固体支持体はビオチンを用いて誘導体化することでき、捕捉分子は少なくとも1つのアビジンまたは少なくとも1つのストレプトアビジン成分を含有するように修飾することができる。
【0135】
試験サンプルおよび分析物の結合
本明細書に開示した方法を実施する際には、調査対象の選択された分析物を含有すると疑われるサンプルが、固体支持体上に分析物を捕捉するために抗体もしくは他の物質をコーティングして調製された支持体へ適用される。または、溶液に基づくアッセイでは、試験サンプルは固体支持体を含んでいない液相反応混合物へ直接的に加えられる。支持体の同一性に依存して、支持体は何らかのタイプの培養デバイス内に含有されてよい。支持体が膜の場合は、例えば膜の長さおよび幅よりわずかに大きな浅いガラス皿を使用できる。支持体がミクロスフェアである場合は、ミクロスフェアは、例えばポリプロピレンもしくはポリスチレン製のネジ蓋式のチューブなどのチューブに含有されてよい。容器の同一性は決定的ではないが、容器は、本明細書に開示した方法に使用される試薬がそれに非特異的には付着しない材料から作製されなければならない。
【0136】
使用される試験サンプルの量は決定的ではないが、容易に取り扱える量でなければならない。試験サンプルはさらにまた、支持体を適正に被覆するために十分でなければならず、これに関連して必要であれば希釈することができる。例えば、試験サンプルの量は、0.5μL〜2mLであってよい。好ましくは、試験サンプルの量は、0.5μL〜1mLである。最も好ましくは、試験サンプルの量は、0.5μL〜200mLであってよい。より少ない容量のサンプルは、マイクロ流体デバイスと結び付けて使用できる。当業者であれば、濃度は試験サンプルの容量に依存して変動してよいこと、そこで分析物を検出できる濃度範囲を提供することは困難であることを理解するであろう。
【0137】
そこで本明細書で教示する方法およびキットは、低い数字でサンプル中に存在する分析物を検出するために使用できる。本明細書に開示した方法において分析される試験サンプルは、104分子以下の分析物、106分子以下の分析物、108分子以下の分析物、1010分子以下の分析物、1012分子以下の分析物、または1014分子以下の分析物を含有する可能性がある。サンプルの量が増加するにつれて、一層大量の分析物を検出することが可能である。
【0138】
捕捉分子は、固体支持体と、捕捉分子が固体支持体に結合することを可能にするために十分な時間にわたってインキュベートされる。または、分析物は、分析物が固体支持体に結合することを可能にするために十分な時間にわたって固体支持体とともにインキュベートされる。好ましくは、インキュベーションは約10分間〜約60分間にわたって進行するが、一晩を必要とする場合がある。
【0139】
本方法のインキュベーション工程の各々が実施される特定温度もまた臨界的ではない。温度は、例えば任意の特定工程で使用される酵素、または任意の特定工程でアニーリングされるべき核酸のTmに依存する。このような検討材料は、当業者には明確に理解されている。
【0140】
結合した分析物特異的結合剤の検出
検出反応は、結合/ライゲーションまたは逆転写酵素反応と同一もしくは別個の反応容器内で実施されてよい。例えば、増幅鋳型を有する反応混合物のアリコートを96ウエルPCRプレートの対応するウエルへ移す。このステップでは、増幅鋳型は、検出試薬(例、TAQMAN(登録商標)プローブ(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))、SYBR(登録商標)Green(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))、第1および第2プライマーならびにポリメラーゼと反応させられる。検出反応混合物は、プライマーのアニーリング、増幅鋳型の増幅および増幅鋳型の検出を可能にする反応条件にかけられる。好ましい実施形態においては、第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは相違する。また別の実施形態においては、第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは同一である。例えば、1つの実施形態においては、検出反応は、増幅および検出のために必要な適切な時間および温度を用いてプログラミングされているリアルタイムPCR装置内で実行される。例えば、MX3005PリアルタイムPCR装置は、解離曲線ならびに90℃で10分間、次に40サイクルにわたり95℃で15秒間、および63℃で34秒間が続く2工程サイクリングパラメータを備えるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))Green検出アッセイに対応するプログラムを用いて利用できる。その他のリアルタイムPCR検出の手段は当技術分野において周知であり(例、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))および分子ビーコン検出アッセイ)、本実施形に使用するために適応させることができる。検出されたシグナルを次に使用すると、サンプル中の分析物の濃度を決定できる。
【0141】
非特異的増幅産物の増幅の防止
ライゲーションに基づく方法では、PCRのための増幅産物を生成するためには1本の鎖だけがライゲートされる必要がある。トポイソメラーゼを使用すると、1本の鎖だけがライゲートされる。しかしライゲーションもしくはトポイソメラーゼ反応混合物の少なくとも一部分が増幅反応混合物へ移される場合は、ライゲーションもしくはトポイソメラーゼ反応へ加えられた二本鎖DNA分子のライゲートしていない部分が非特異的増幅産物の産生を生じさせよう。このような産物の形成は、不対3’ヌクレオチドオーバーハングの組み込みまたは例えば非天然ヌクレオチドアナログ、例えば2’−Me、もしくは類似の修飾、UTPもしくは他のRNAヌクレオチド、特別にはライゲーション部位に近位のライゲートしていない鎖の3’末端などの鎖内への修飾の組み込みを、高レベルの識別を有し、修飾DNA鎖の向かい側のヌクレオチドを組み込まないであろうPfuなどのポリメラーゼの使用と結び付けて制限することができる。
【0142】
洗浄条件
本明細書に開示した方法における試薬の添加間には、本アッセイシステムは、好ましくは非特異的結合の発生率を低下させるために洗浄にかけられる。洗浄サイクルおよび浸漬時間の数は実験によって決定されるが、一般には、洗剤、典型的には例えばTween 20、Triton X−100、またはNP−40(約1.0%まで)などの非イオン性ポリマー系洗剤を備える水または低もしくは高モル塩溶液(約1Mまでの塩、典型的にはNaCl)のいずれかを洗浄溶液として使用することができる。各々が約5秒間〜5分間持続する1〜8回の洗浄を、本方法に使用される試薬各々のインキュベーション後に実施できる。極めて高い、または極めて低い塩濃度は生理的塩濃度よりはるかにストリンジェントであると理解されている。洗剤濃度が高いほど、低い洗剤濃度よりストリンジェントである。適切な洗浄用緩衝液の選択は明確に、当業者の能力の範囲内である。一般的に使用される洗浄用緩衝液には、0.02%のTween 20もしくは0.1%のTriton X−100を備えるリン酸緩衝食塩液(PBS)(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、2mMのKH2PO4)またはTris緩衝食塩液(TBS)(100mMのTris−Cl(pH7.5);150mMのNaCl)が含まれる。洗浄する工程は、各インキュベーション工程間に、例えば固体支持体への捕捉分子の添加後、試験サンプルの添加後、および検出分子の添加後に実施できる。典型的な洗浄条件については、実施例で記載する。
【0143】
診断法
本方法、キット、および組成物は、サンプル中の分析物を検出および/または定量するために使用できる。典型的な分析物には、タンパク質、ペプチド、細胞表面受容体、受容体リガンド、核酸、炭水化物、ハプテン、分子、細胞、微生物およびそれらのフラグメントが含まれてよいが、これらに限定されない。本明細書に開示した方法の感受性に起因して、本方法は、典型的には極めて低濃度で存在する治療用生物学的物質を検出するために使用できる。
【0144】
組み換えポリペプチドの発現
本発明の実践は、他に特に規定しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用するが、これらは明確に当業者の技量の範囲内に含まれる。このような技術は、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis” (Gait,1984);“Animal Cell Culture” (Freshney,1987);“Methods in Enzymology”,“Handbook of Experimental Immunology” (Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells” (Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology” (Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”,(Coligan,1991)などの文献において十分に説明されている。これらの技術は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生成に適用することができるので、したがって本発明を作製および実践する際に考察することができる。特定の実施形態に特に有用な技術については、以下の項で考察する。
【0145】
下記の実施例は、当業者に本アッセイ、スクリーニング、および治療方法を作成および使用する方法についての完全な開示および説明を提供できるように考えられており、本発明者らが本発明であると見なす範囲を限定することは意図されていない。
【0146】
トポイソメラーゼ/リガーゼ用の基質の例
トポイソメラーゼについては、第1二本鎖核酸は、以下の配列を含んでいる。リガーゼについては、上の鎖は3’末端でATGGGT配列を含んでおらず、配列番号4の5’末端はリン酸化されており、
5’−TGACGCCCGAAGCCAAGTGCGGGACGGCTTCTCCAGCTTGGCCCCTTATGGGT−3’(配列番号2)
3’−CTTAACCGGGGAATACCCTTGCT−5’(配列番号3)
および第2核酸分子は、
5’−ATGGGAACGAGCAGACCGACCGCTAGACAGCTCCGTGGA−3’(配列番号4)
3’−CGTCTGGCTGGCGATCTGTCGAGGCACCT−5’(配列番号5)
を含んでいる。
【0147】
上記に示したトポイソメラーゼ/リガーゼのための対の基質とともに使用できる増幅のための第1および第2オリゴヌクレオチドプライマーは、第1オリゴヌクレオチドプライマー
5’−TCCACGGAGCTGTCTAGCG−3’(配列番号10)
および第2オリゴヌクレオチドプライマー
5’−TGACGCCCGAAGCCAAGTG−3’(配列番号11)
を含む。
【0148】
逆転写酵素用の基質の例
逆転写酵素のための基質となるRNA分子の配列を提供する。この配列は、図示した逆相補的RNA鎖であるDNA鋳型を用いた逆転写酵素反応の産物であってよい。
5’−GAAUUGGAGCUCCACCGCGGUGGCGGCCGCUCUAGAACUAGUGGAUCCCCCGGGCUGCAGGAAUCGAUAUCAAGCUAUCGAUACCGUCGACCUCGAGGGGGGGCCCGGUACCCAGCUUUUGUUCCCUUUAGTGAGGGUUAAUUGCGCGCUUGGCGUAAUCAUGGUCAUAGCUGUUUCCUGUGUGAAAU−3’(配列番号9)
【実施例】
【0149】
実施例1:トポイソメラーゼ活性の定量的検出
トポイソメラーゼアッセイは、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼIの2工程反応に基づいている。この基質の上の鎖は、トポイソメラーゼ認識部位(CCCTT)を含有している。トポイソメラーゼ反応は、1μLのトポイソメラーゼと2μLの基質を結合することによって実施した。トポイソメラーゼ基質およびライゲーション基質は、1mMのTris HCl(pH8.0)、60mMのNaCl、1ng/μLのBSA中に各々10nM/Lで存在した。反応は、室温で10分間にわたりインキュベートさせた。
【0150】
トポイソメラーゼ酵素は、認識部位の後で上の鎖を開裂し、開裂部位の3’末端へ共有結合するようになる。開裂部位の配列3’(図4では、上の鎖の3’末端の6マー「ATGGGT」(配列番号12))は、相補鎖へアニーリングしたままとなるには短すぎるので、開裂産物は基質分子から拡散するであろう。結果として、トポイソメラーゼ反応サイクル(1本の鎖の開裂およびその後の開裂部位のライゲーション)は完了することができず、トポイソメラーゼ酵素はトポイソメラーゼ−核酸結合中間体として捕捉されたままとなる。反応サイクルは、ライゲーション基質へのライゲーションによって完了され、結果としてフローチャートの底部で生成物を生じる。この産物は次に新しくライゲートされたDNA分子内でライゲート部位をフランキングするPCRプライマーを用いて増幅される(図4では、このような配列はボールド体で指示されている。トポイソメラーゼ反応は上の鎖しか開裂せず、下の鎖には切れ目を残すことに注目されたい)。
【0151】
プローブに基づく検出のためには、それに対するプローブが確立されている産物内に2つの検出配列を統合した(したがって、名称HoxプローブおよびeNOS)。Hoxプローブ配列はトポイソメラーゼ認識部位(CCCTT)を含有していることを留意されたい。定量的PCR反応は、Taqポリメラーゼおよび400nMの各PCRプライマー(最終濃度)を含有する27μLのqPCRマスターミックス(プローブに基づく検出のためには:BRILLIANT(登録商標)QPCR Master Mix、製品番号600549(Stratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA));染料に基づく検出のためには:BRILLIANT(登録商標)QPCR Core試薬キット、製品番号600530(Stratagene社、カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla,CA))を加えることによって実施した。qPCR反応サイクルは、95℃で10分間、次に95℃で15秒間、および60℃で45秒間を40サイクルにわたり実施した。プローブに基づく検出のためには、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems社、カリフォルニア州アラメダ(Alameda,CA))プローブを最終濃度100nMで加えた。
【0152】
Hoxプローブに基づくアッセイの増幅プロットは、図6に示した。qPCRアッセイにおける二倍希釈シリーズのVV−トポイソメラーゼ(注意:酵素コントロールを用いていない場合は検出可能なCt値は得られない)。表1からのデータは、図3にグラフで示した。
【0153】
【表1】
【0154】
同一アッセイを、プローブ検出法ではなくSYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))を用いて実施かつ定量した。結果は、4桁を超えて線形であった。表2からのデータは、図7にグラフで示した。
【0155】
【表2】
【0156】
本アッセイの検出限界は、約100分子のVV−トポイソメラーゼであると決定された。
【0157】
実施例2:トポイソメラーゼ−プロテインG融合タンパク質の活性
プロテインG標識ワクシニア・トポイソメラーゼをBL21−(DE3)細胞内で生成し、CBP標識を用いて親和性精製した。Wt−トポイソメラーゼを従来型カラム精製法によって精製した。本アッセイは、プロテインG融合が酵素の機能を妨害するかどうかを決定するために、上記の方法を用いてHoxプローブを使用して実施した。CBP−プロテインGトポイソメラーゼは、wt−トポイソメラーゼより約1桁低い比活性を有することが見いだされた(図8を参照)。これは、融合タンパク質としてのトポイソメラーゼの発現が酵素成分の活性を実質的に妨害しないことを証明している。
【0158】
実施例3:分析物の定量的検出のためのトポイソメラーゼに基づくELISA
ポリ塩化ビニル製マイクロタイタープレートのウエルを分析物に対する等量の精製モノクローナル抗体でコーティングする。ウエルを洗浄し、例えばリン酸緩衝食塩液(PBS)などの適切な緩衝液中のウシ血清アルブミン(BSA)などの非特異的タンパク質を用いてブロッキングする。分析物を含有する可能性があるサンプルは、適切な緩衝液中で連続的に希釈する。ブロッキング剤を除去するために、ウエルを洗浄する。元のサンプルの様々な希釈液を含有する等量のサンプルを調製したウエル内へ、好ましくは2つずつ、または3つずつ配置する。定量的アッセイのためには、一連の公知の分析物濃度を一連の別個のウエルに加える。プレートは、サンプル中に存在する分析物が抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の適切な条件下でインキュベートする。インキュベーション後、ウエルを洗浄して未結合分析物を除去する。
【0159】
ウエルは、分析物特異的結合分子としての抗体成分、および酵素成分としてのトポイソメラーゼ成分を含む分析物特異的結合剤に曝露させる。抗体成分は、ウエルをコーティングするために使用した抗体とは別個である分析物上のエピトープに結合する。マイクロタイタープレートは、サンプル中に存在する分析物が分析物特異的結合剤中に存在する抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の条件下でインキュベートする。分析物特異的結合剤の成分は、ウエルへの非特異的結合を生じさせるであろう結合基によっては相互に結合されない。ウエルは、未結合の分析物特異的結合剤を除去するために洗浄する。
【0160】
ウエル内の結合した分析物特異的結合剤は、ワクシニアウイルスDNAトポイソメラーゼI反応混合物中の2つの少なくとも部分的に二本鎖であるDNA二重鎖と接触させる。DNA二重鎖の1本は、配列CCCTTN6(配列番号13)を備える3’末端を有しており、各Nは独立して任意のヌクレオチドである。もう1本の二本鎖のDNA二重鎖は、N6配列のトポイソメラーゼ開裂によって生成される5’オーバーハングに相補的である5’オーバーハングを有している。2つの二重鎖は、二本鎖の二重鎖の1本の鎖を結合できるワクシニアのトポイソメラーゼ活性のための基質を形成する。
【0161】
トポイソメラーゼ反応混合物の一部分をウエルから取り出して、トポイソメラーゼ産物からの産物の特異的増幅を可能にするように設計された2つのプライマーを含むqPCRのための反応混合物へ移す。この反応は、結合したSYBR Green(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))によって閾値サイクル(Ct)を決定するために監視する。標準曲線は、既知量の分析物を含有するウエル由来のサンプルに基づいて作製する。未治療の分析物を含有するサンプルのCtを決定し、元のサンプル中に存在した分析物の量は、既知濃度の分析物を含むサンプルを用いて作製された標準曲線を用いて決定する。
【0162】
実施例4:読出しとしてトポイソメラーゼ活性を使用する異種VEGF ELISAアッセイ
VEGF ELISAは、分析物であるVEGFの存在についての読出しとしてトポイソメラーゼ活性を用いて実施した。VEGF検出のためのELISAキットは、業者(R&D Systems社)から購入した。結合および洗浄工程は、検出試薬であるHRP結合抗体を加える時点まで反応容量を100μLから5μLへ減少させることを除いて、製造業者の取扱説明書にしたがって実施した。検出試薬であるストレプトアビジン−トポイソメラーゼ融合タンパク質(SA−Topo)は、1:1000および1:10,000の希釈率で加え、未結合の検出試薬はインキュベーション後に洗浄した。3μLのトポイソメラーゼ基質とともに10分間にわたりインキュベーションした後、27μLのPCR混合物を加え、PCRを実施例1に記載したように実施した。Ct値は、VEGFの投入濃度に対してプロットした(図9A)。破線は、アッセイのバックグラウンド(VEGFの添加なし)を表している。黒色の太線は、製造業者による検出限界(30pg(ピコグラム)/mL)を表す。図9Bでは、同一データを検出されたVEGFのpg値として表した。同様に、黒色の太線は、標準ELISAにおける検出限界(100μLに付き3pg)を表す。30pg/mLのVEGF濃度は、本方法によって確実に検出することができる。検出された絶対量は約150fg(フェムトグラム)、または市販のELISAアッセイより約20分の1少ない量であった。これらのデータは、本方法の感受性が比色酵素検出剤に匹敵することを証明している。
【0163】
実施例5:様々な緩衝液中でのHis融合タンパク質としてのT3およびT7 DNAリガーゼの活性
T3およびT7 DNAリガーゼは、精製を促進するために組み換えHis標識タンパク質として発現させた。これらのリガーゼは、1mMのATPの存在下または非存在下でリガーゼ緩衝液(50mMのTris(pH7.5)、7mMのMgCl2、1mMのDTT)中において活性について試験した。リガーゼの10倍の希釈率の範囲にわたるライゲーション産物の精製は、PCR増幅によって決定した。ある範囲のリガーゼ分子についての増幅産物のCtは、表10に提示した。このデータは、加えられたATPがリガーゼ反応を進行させるためには必ずしも必要とされないこと、およびHis標識タンパク質が機能的であることの両方を証明している。
【0164】
T3およびT7リガーゼは、さらにPCRマスターミックス(BRILLIANT(登録商標)QPCR Mastermix(Stratagene社、製品番号600549)中で試験した。His標識タンパク質としての両方のリガーゼは、Ctによって決定されたようにPCRマスターミックス中で機能的であることが見いだされた(図11を参照されたい)。
【0165】
T3 DNAリガーゼは、T7リガーゼより有効であること、およびT3リガーゼはリガーゼ緩衝液中でPCRマスターミックスよりも活性であることに注目されたい。
【0166】
T3リガーゼは、各々ストレプトアビジンおよびプロテインGを用いて融合タンパク質としても生成されている。融合パートナーは、どちらのリガーゼも融合タンパク質として機能的であることが見いだされたので、リガーゼの活性を実質的に妨害しなかった。
【0167】
実施例6:タンパク質−タンパク質相互作用についてスクリーニングするためのリガーゼに基づく検出法
ランダム突然変異導入法および高スループットスクリーニング法を使用すると、タンパク質−タンパク質相互作用を変化させる突然変異についてスクリーニングすることができる。その結合パートナーとの相互作用について試験対象のタンパク質をランダム突然変異導入法にかけ、エピトープ標識を含有する発現ベクター内にサブクローニングする。個別のコロニーを採取し、培養中で増殖させる。各培養の一部分を使用して、ランダムに突然変異ライブラリー由来のタンパク質を含有する溶解物を調製する。
【0168】
ポリ塩化ビニル製マイクロタイタープレートのウエルを、各ライブラリーメンバーによって発現させたエピトープ標識に対する等量の精製モノクローナル抗体でコーティングする。ウエルを洗浄し、PBS中のBSAでブロッキングする。個別のライブラリーメンバーから調製した抽出物を適切な緩衝液中で希釈する。ブロッキング剤を除去するために、ウエルを洗浄する。等量の希釈抽出物を調製したウエル内へ、好ましくは2つずつ、または3つずつ配置する。結合パートナーに結合することが公知である突然変異誘発のために使用されたバージョンのタンパク質を含有する陽性コントロールウエル、およびタンパク質を含有していない、または結合パートナーと相互作用しないことが公知であるバージョンのタンパク質を含有する陰性コントロールウエルもまた調製する。プレートは、抽出物中のライブラリーメンバーが抗体に結合するために適切な時間にわたり温度および湿度の適切な条件下でインキュベートする。インキュベーション後、ウエルを洗浄して未結合ライブラリーメンバーを除去する。
【0169】
結合パートナーを含む適切な分析物特異的結合剤をリガーゼドメインに結合させる。結合パートナーは、例えば上述した方法などの組み換えポリペプチド法を使用してリガーゼドメインを備える融合タンパク質として生成される。結合パートナーおよびリガーゼドメインは、1つのドメインが他方に及ぼす可能性がある作用を減少させるために、短い、柔軟性のタンパク質配列によって分離する。
【0170】
ウエルは、ライブラリーメンバーが結合パートナーに結合することを可能にする適切な時間にわたり温度および湿度の条件下で結合パートナー−リガーゼ融合タンパク質に曝露させる。ウエルは、未結合の分析物特異的結合剤を除去するために洗浄する。
【0171】
ウエル内の結合した分析物特異的結合剤は、少なくとも1本の鎖がライゲーションしてPCRのための鋳型を形成することを可能にするために適合する末端および少なくとも1つの5’−リン酸を有する2本の二本鎖DNA二重鎖と接触させる。2本の二重鎖は、ライゲーションを許容する条件下でリガーゼのための基質として機能する。ライゲーション混合物は、規定時間にわたって適切な温度でインキュベートする。
【0172】
ライゲーション反応混合物の一部分をウエルから取り出して、ライゲーション反応からの産物の特異的増幅を可能にするように設計された2つのプライマーを含むPCRのための反応混合物へ移す。増幅反応の終了時に、反応混合物の一部分を取り出し、ライブラリーメンバーと結合パートナーとの相互作用を示す増幅産物の存在を検出するために、ゲル電気泳動法および臭化エチジウムを用いた染色法にかける。所望の特性を有するライブラリーメンバーについてさらに分析する。
【0173】
実施例7:T4リガーゼ−ストレプトアビジン融合タンパク質の活性
ストレプトアビジンに連結したT4 DNAリガーゼを含む融合タンパク質(「T4/SA融合タンパク質」)を調製し、リガーゼ活性について試験した。市販されているT4 DNAリガーゼをT4/SA融合タンパク質の2つの調製物と比較した。2μLの10倍希釈シリーズのT4 DNAリガーゼもしくはT4/SA融合タンパク質を、1mMのATP、200nMプライマー(配列番号10および配列番号11)を含む23μLの1X BRILLIANT(登録商標)QPCR緩衝液(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))および、ライゲートすることのできる5塩基対オーバーハングを有する最終濃度13.3nMの以下のライゲーション基質と結合した。
5’TGACGCCCGAAGCCAAGTGCGGGACGGCTTCTCCAGCTTGGCCCCTT(配列番号6)
ACTGCGGGCTTCGGTTCACGCCCTGCCGAAGAGGTCGAACCGGGGAATACCCA−PO4 5’(配列番号14)
5’PO4−TGGGTACGAGCAGACCGACCGCTAGACAGCTCCGTGGA(配列番号15)
TGCTCGTCTGGCTGGCGATCTGTCGAGGCACCT 5’(配列番号16)
【0174】
この反応を周囲温度で30分間維持し、その後でMX 3005P(Stratagene社、ラ・ホーヤ)上で40サイクルを実行することによるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))Greenに基づく産物形成の検出法によってライゲーション産物を検出した。
【0175】
図12に示したように、T4/SA融合タンパク質の平均Ct値は5〜7閾値サイクル後であり、これは市販のT4 DNAリガーゼと比較して活性のほぼ100分の1への減少に対応する。さらにデータは、T4 DNAリガーゼが融合タンパク質として機能的であることを証明している。
【0176】
実施例8:トポイソメラーゼ活性の近接性に基づく相補性による分析物の検出
本実施例は、同種アッセイにおける分割したトポイソメラーゼ酵素を用いた分析物の検出を証明している(すなわち、ELISAタイプのアッセイにおけるような酵素を使用せずに、および任意の洗浄工程を使用せずに溶液中で)。当然ながら、本出願で考察するように、近接性に基づく検出法は、固相アッセイとして実施することもできる。例えば、(本実施例のように)酵素がアビジンもしくはストレプトアビジンに結合させられる実施形態においては、検出アッセイは、当該の分析物に対して特異的なビオチン化抗体を用いて固相アッセイとして実施することができる。
【0177】
以下の実験では、分析物はビオチン化タンパク質(ビオチン化BSAまたはビオチン化IgG(抗体)のいずれか)であり、分析物特異的結合分子はストレプトアビジンであり、酵素は融合タンパク質としてのストレプトアビジンに結合させたトポイソメラーゼである。ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼは、各々がストレプトアビジンに融合したN末端およびC末端フラグメントに分割した。詳細には、以下のトポイソメラーゼC末端フラグメント−ストレプトアビジン融合タンパク質を合成した:
His−SA−C−Topo:
MGSSHHHHHΗAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYVLTGRYDSAPATDGSGTALGWTVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWLLTSGTTEANVWKSTLVGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQLEGGGSGGGGSGGGGSGGGGIRIKDLRTYGVNYTFLYNFWTNVKSISPLPSPKKLIALTIKQTAEVVGHTPSISKRAYMATTILEMVKDKNFLDVVSKTTFDEFLSIVVDHVKSSTD(配列番号17)
【0178】
以下のトポイソメラーゼN末端フラグメント−ストレプトアビジン融合タンパク質を合成した:
N−Topo−SA−His:
MRALFYKDGKLFTDNNFLNPVSDDNPAYEVLQHVKIPTHLTDVVVYEQTWEEALTRLIFVGSDSKGRRQYFYGKMHVQNRNAKRDRIFVRVYNVMKRINCFINKNIKKSSTDSNYQLAVFMLMETMFFIRFGKMKYLKENETVGLLTLKNKHIEISPDEIVIKFVGKDKVSHEFVVHKSNRLYKPLLKLTDDSSPEEFLFNKLSERKVYECIKQFGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGRRILVSAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYVLTGRYDSAPATDGSGTALGWTVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWLLTSGTTEANVWKSTLVGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQHHHHHH(配列番号18)
【0179】
これらの構築体の各々では、N末端およびC末端トポイソメラーゼフラグメント(下線付き)のアミノ酸配列をストレプトアビジン(ボールド体およびイタリック体)および6x−His標識へ融合させる。トポイソメラーゼおよびストレプトアビジンドメインは、グリシンおよびセリンリッチリンカーによって分離する。
【0180】
トポイソメラーゼフラグメント自体には、有意な検出可能なトポイソメラーゼ活性を有していない。しかし一緒に結合すると、両方の半分は相互に対して測定可能な親和性を有しており(本発明者らの推定では、約2×10−9M)、トポイソメラーゼ活性を再構成できる。推定KDを超える濃度で両半分を使用した実験に基づくと、N末端およびC末端フラグメントから再構成されたトポイソメラーゼは、全長トポイソメラーゼとほぼ同一の酵素活性を提示する。これらの内因性親和性のKD未満の濃度で使用した場合は、トポイソメラーゼフラグメントは、トポイソメラーゼ活性の近接性依存性再構成によって分析物を検出するために使用できる。
【0181】
分析物のシグナル対近接性依存性検出のプロットは、最終的に全部の分析物特異的結合剤は別個の分析物分子と結び付き、近接性増強シグナル生成に関わることがあり得ないように、典型的には分析物濃度が分析物特異的結合剤の濃度より高い場合に観察されるスケルチング作用に起因する二相曲線を生じさせる。分析物特異的結合剤の濃度の上限は、分析物特異的結合剤の相互に対する親和性のKDによって与えられる。KDを超える濃度では、大多数の酵素の半分はすでに再構成される。分析物特異的結合剤の濃度を低下させると、シグナルがまだ検出限界の上方にあればアッセイ感受性を改善できる。分析物特異的結合剤の濃度の下限は、分析物特異的結合分子(例、ストレプトアビジン)の分析物(例、担体タンパク質に結合したビオチン、KD 10−14M)への親和性およびシグナル検出のための検出限界によって決定する。
【0182】
近接性依存性検出実験は、ストレプトアビジンに融合した指示濃度のN末端およびC末端トポイソメラーゼフラグメントを用いて3μLの反応容量で実施した(図13および14を参照されたい)。詳細には、1μLのビオチン化BSAもしくはビオチン化ヤギ−抗ウサギ抗体(American Qualex社、カリフォルニア州サンクレメンテ(San Clemente,CA))を指示(最終)濃度で1μLのストレプトアビジン/N末端トポイソメラーゼフラグメント融合タンパク質および1μLのストレプトアビジン/C末端トポイソメラーゼフラグメント融合タンパク質(450pm、110pM、または55pMいずれかの最終濃度で、各々はそのモノマー形にある)と混合した。この混合物を室温で4時間にわたりインキュベートした。1μLのトポイソメラーゼ基質(12nM)を加え、さらに10分間にわたりインキュベートした。最終濃度が400nMの増幅プライマーを含む26μLのBRILLIANT(登録商標)(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))PCRミックスを加え、トポイソメラーゼ由来鋳型の量は、MX 3005P(Stratagene社、ラ・ホーヤ(La Jolla))上で40サイクル実行することによるSYBR(登録商標)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))に基づく産物形成検出法によって検出した。提示のために、Ct値は、全長トポイソメラーゼ/ストレプトアビジンの標準曲線に基づいて全長トポイソメラーゼ等量へ変換させた。図13ならびに図14Aおよび14Bにおける黒塗り記号は、分析物を伴わないバックグラウンドシグナルを表している。ビオチン化タンパク質(BSAおよびIgG)についての推定検出限界は、約500fMまたは2×107分子であった。
【0183】
その他の実施形態
上記の説明から、様々な使用および状態に適合させるために、本明細書に記載した本発明に変更および修飾を加えられることは明白であろう。このような実施形態もまた、以下の特許請求項の範囲内に含まれる。
【0184】
本明細書の変量の任意の定義における要素の列挙は、任意の単一要素または列挙した要素の組み合わせ(もしくは小組み合わせ)としての変量の定義を含んでいる。本明細書での実施形態についての詳述は、任意の単一実施形態としての、または任意の他の実施形態もしくはそれらの部分と組み合わせた実施形態を含んでいる。
【0185】
本明細書で言及した全ての特許および刊行物は、各独立特許および刊行物が参照して組み込まれると特別かつ個別に言及されているのと同程度まで参照して本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の前記結合した分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、前記第1核酸分子は前記リガーゼの存在下で前記第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記第1核酸分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第2核酸分子と結合するステップと、
(d)前記増幅産物を検出する工程、
とを含む、方法。
【請求項2】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)第1分析物特異的結合剤および第2分析物特異的結合剤を、前記分析物が前記第1および第2分析物特異的結合剤と結合することを許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記第1分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する酵素の第1部分に結合した第1分析物特異的結合分子を含み、前記第2分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する前記酵素の第2部分に結合した第2分析物特異的結合分子を含み、リガーゼ活性を有する前記酵素の第1および第2部分は相互作用して、前記第1および第2分析物特異的結合剤が前記分析物に結合するとリガーゼ活性を有する機能的酵素複合体を形成するステップと、
(b)(a)の前記結合した第1および第2分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、前記第1核酸分子はリガーゼ活性を有する前記機能的酵素の存在下で前記第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記第1核酸分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第2核酸分子と結合するステップと、
(d)前記増幅産物を検出する工程
とを含む、方法。
【請求項3】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、トポイソメラーゼまたはDNAリガーゼである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析物特異的結合分子は、抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIもしくは伝染性軟属種(molluscum contagiosum)ウイルス(MCV)トポイソメラーゼまたはそれらの触媒部分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、T3 DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T5 DNAリガーゼもしくはT7 DNAリガーゼまたはそれらの触媒部分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分析物は、固体支持体に結合させられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、リガーゼ活性を有する前記酵素またはリガーゼ活性を有する前記酵素の第1および第2部分へビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用によって間接的に結合させられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DNAポリメラーゼは、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、Φ29 DNAポリメラーゼまたは大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIから選択される非熱安定性ポリメラーゼである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNAポリメラーゼは、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・コダカレンシス(Pyrococcus kodakaraensis)(KOD)DNAポリメラーゼ、JDF−3 DNAポリメラーゼ、またはパイロコッカス(Pyrococcus)GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼから選択される熱安定性ポリメラーゼである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前に未結合分析物特異的結合剤を除去するステップをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記分析物特異的結合剤は逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の前記結合した分析物特異的結合剤を、cDNA分子を生成するために前記RNAの逆転写を許容する条件下でRNA分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記cDNA分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第cDNA分子の相補体と結合するステップと、 (d)前記増幅産物を検出するステップ
とを含む方法。
【請求項13】
前記逆転写酵素は、MMLV逆転写酵素もしくはAMV逆転写酵素、またはこれらの触媒部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物特異的結合分子は、逆転写酵素に直接的または間接的に連結した抗体である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼは、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Φ29 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、または大腸菌DNAポリメラーゼIから選択される非熱安定性ポリメラーゼである、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼは、パイロコッカス・フリオサス(Pfu)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Tth)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアロサーモフィラスDNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Tli)DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Tma)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Taq)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・コダカレンシス(KOD)DNAポリメラーゼ、JDF−3 DNAポリメラーゼ、またはパイロコッカスGB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼから選択される熱安定性ポリメラーゼである、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
分析物特異的結合剤を含む組成物であって、前記分析物特異的結合剤は酵素に連結した分析物特異的結合分子を含み、前記酵素はリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である組成物。
【請求項18】
前記分析物特異的結合分子は、前記酵素へ直接的または間接的に連結した抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
分析物を検出するためのキットであって、
酵素に結合した分析物特異的結合分子を含む分析物特異的結合剤であって、前記酵素はリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である分析物特異的結合剤と、
前記酵素のための1つ以上のポリヌクレオチド基質であって、前記1つ以上のポリヌクレオチド上の前記酵素の活性は前記分析物の存在を示すPCR鋳型を生成する1つ以上のポリヌクレオチド基質と、
これらのための包装材料
とを含むキット。
【請求項20】
前記分析物特異的結合分子は、前記酵素に直接的または間接的に連結した抗体である、請求項19に記載のキット。
【請求項1】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の前記結合した分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、前記第1核酸分子は前記リガーゼの存在下で前記第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記第1核酸分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第2核酸分子と結合するステップと、
(d)前記増幅産物を検出する工程、
とを含む、方法。
【請求項2】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)第1分析物特異的結合剤および第2分析物特異的結合剤を、前記分析物が前記第1および第2分析物特異的結合剤と結合することを許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記第1分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する酵素の第1部分に結合した第1分析物特異的結合分子を含み、前記第2分析物特異的結合剤はリガーゼ活性を有する前記酵素の第2部分に結合した第2分析物特異的結合分子を含み、リガーゼ活性を有する前記酵素の第1および第2部分は相互作用して、前記第1および第2分析物特異的結合剤が前記分析物に結合するとリガーゼ活性を有する機能的酵素複合体を形成するステップと、
(b)(a)の前記結合した第1および第2分析物特異的結合剤を、第1二本鎖核酸分子および第2核酸分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップであって、前記第1核酸分子はリガーゼ活性を有する前記機能的酵素の存在下で前記第2核酸分子にライゲートされるステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記第1核酸分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第2核酸分子と結合するステップと、
(d)前記増幅産物を検出する工程
とを含む、方法。
【請求項3】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、トポイソメラーゼまたはDNAリガーゼである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析物特異的結合分子は、抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、ワクシニアウイルス・トポイソメラーゼIもしくは伝染性軟属種(molluscum contagiosum)ウイルス(MCV)トポイソメラーゼまたはそれらの触媒部分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
リガーゼ活性を有する前記酵素は、T3 DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T5 DNAリガーゼもしくはT7 DNAリガーゼまたはそれらの触媒部分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分析物は、固体支持体に結合させられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、リガーゼ活性を有する前記酵素またはリガーゼ活性を有する前記酵素の第1および第2部分へビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用によって間接的に結合させられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DNAポリメラーゼは、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、Φ29 DNAポリメラーゼまたは大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIから選択される非熱安定性ポリメラーゼである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNAポリメラーゼは、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・コダカレンシス(Pyrococcus kodakaraensis)(KOD)DNAポリメラーゼ、JDF−3 DNAポリメラーゼ、またはパイロコッカス(Pyrococcus)GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼから選択される熱安定性ポリメラーゼである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前に未結合分析物特異的結合剤を除去するステップをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
(a)分析物特異的結合剤を、結合を許容する条件下で前記分析物とともにインキュベートするステップであって、前記分析物特異的結合剤は逆転写酵素に結合した分析物特異的結合分子を含むステップと、
(b)(a)の前記結合した分析物特異的結合剤を、cDNA分子を生成するために前記RNAの逆転写を許容する条件下でRNA分子とともに反応混合物中でインキュベートするステップと、
(c)(b)の前記反応混合物の少なくとも一部分の核酸増幅を許容する条件下で第1オリゴヌクレオチドプライマー、第2オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、および少なくとも1つのdNTPを含む増幅反応混合物とともにインキュベートするステップであって、前記第1オリゴヌクレオチドプライマーは前記cDNA分子と特異的に結合し、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーは増幅産物の形成を許容するために前記第cDNA分子の相補体と結合するステップと、 (d)前記増幅産物を検出するステップ
とを含む方法。
【請求項13】
前記逆転写酵素は、MMLV逆転写酵素もしくはAMV逆転写酵素、またはこれらの触媒部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物特異的結合分子は、逆転写酵素に直接的または間接的に連結した抗体である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼは、T3 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Φ29 DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、または大腸菌DNAポリメラーゼIから選択される非熱安定性ポリメラーゼである、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼは、パイロコッカス・フリオサス(Pfu)DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Tth)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアロサーモフィラスDNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Tli)DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Tma)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Taq)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・コダカレンシス(KOD)DNAポリメラーゼ、JDF−3 DNAポリメラーゼ、またはパイロコッカスGB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼから選択される熱安定性ポリメラーゼである、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
分析物特異的結合剤を含む組成物であって、前記分析物特異的結合剤は酵素に連結した分析物特異的結合分子を含み、前記酵素はリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である組成物。
【請求項18】
前記分析物特異的結合分子は、前記酵素へ直接的または間接的に連結した抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
分析物を検出するためのキットであって、
酵素に結合した分析物特異的結合分子を含む分析物特異的結合剤であって、前記酵素はリガーゼ、トポイソメラーゼ、または逆転写酵素である分析物特異的結合剤と、
前記酵素のための1つ以上のポリヌクレオチド基質であって、前記1つ以上のポリヌクレオチド上の前記酵素の活性は前記分析物の存在を示すPCR鋳型を生成する1つ以上のポリヌクレオチド基質と、
これらのための包装材料
とを含むキット。
【請求項20】
前記分析物特異的結合分子は、前記酵素に直接的または間接的に連結した抗体である、請求項19に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2010−537635(P2010−537635A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522994(P2010−522994)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/069953
【国際公開番号】WO2009/032401
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509331283)アジレント テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/069953
【国際公開番号】WO2009/032401
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509331283)アジレント テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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