説明

結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法

【課題】飛翔体と構造物との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能な結合分離装置を提供する。
【解決手段】結合分離装置は、飛翔体の載置部材20と載置部材20に載置された構造物30とを係合するクランプバンド6と、クランプバンド6の両端部を結合又は分離する第1結合部4とを具備する。第1結合部4は、クランプバンド6の周方向に対して垂直な方向を軸Cとして回転可能な回転部43、46と、回転部43、46を回転不可能にし、又は回転可能にする回転保持部8とを備える。両端部を結合するとき、両端部は互いに逆方向から回転部43、46に係合され、回転保持部8は回転部43、46を回転不可能にする。両端部を分離するとき、回転保持部8は回転部43、46を回転可能にし、両端部は回転部43、46の回転で回転部43、46から脱離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法に関し、特に、飛翔体に構造物を結合し、結合された構造物を飛翔体から分離する結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔体(例示:ロケット)と構造物(例示:人工衛星)とを結合・分離する結合分離システムが知られている。ロケットの結合分離システムでは、衛星とロケットとの結合を、金属製のクランプバンドで締め付けることで行われている。図1は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略平面図である。図2は、図1のA−A断面の構成を示す概略断面図である。結合分離システムは、結合分離装置101とPAF(Payload Attached Fitting)構造120とを備えている。PAF構造120は、ロケットに搭載され、衛星を載置する円筒形状の台座である。結合分離装置101は、PAF構造120と、その上に搭載された衛星側構造130とを結合又は分離する。ただし、衛星側構造130は、円筒形状を有する衛星側の部材である。PAF構造120及び衛星側構造130の直径は概ね等しい。そして両者が結合される場合、結合分離装置101に締め付けられて、本来の直径よりも小さい直径に押し込められる。それにより、PAF構造120及び衛星側構造130には歪応力が発生している。結合分離装置101は、クランプバンド106と結合部104とを備えている。
【0003】
クランプバンド106は、PAF構造120と衛星側構造130との結合部分の成す円周形状に沿って設けられている。クランプバンド106は、複数のブロック103と、ストラップ102とを備えている。複数のブロック103は、PAF構造120と衛星側構造130との結合部分の成す円周形状に沿って並んで設けられている。ブロック103は、PAF構造120の端部120aと衛星側構造130の端部130aとを併せて係合する凹部103a(例示:断面がV字型の溝、以下V溝ともいう)を有している。PAF構造120と衛星側構造130とは、端部120aと端部130aとが凹部103aで係合することで、互いに結合している。ストラップ102は、複数のブロック103における凹部103aと反対の面に結合している。複数のブロック103とストラップ102とは一体である。ストラップ102を締め付けることで、複数のブロック103を、凹部103aと反対の面から結合部分に向かって押し込んでいる。結合部104は、ストラップ102の両端部102aを結合して、クランプバンド106の締め付けを保持する。結合部104は、ストラップ102の一方の端部102aに設けられたボルト状部材(図示されず)と、他方の端部102aに設けられたナット状部材(図示されず)とに例示される。結合部104は、ボルト状部材をナット状部材にねじ込むことで、ストラップ102の両端部102aを結合する。クランプバンド106には、外側のロケット本体に取り付けられた複数のバネ105により外向きの力が加えられている。
【0004】
結合分離装置101では、衛星とロケットとの結合の解除(分離)は、火工品を用いて行う。火工品は、その動作時に切断治具を高速に移動させ、結合部104のボルト状部材を切断する。そのボルト状部材の切断により、ストラップ102の両端102aが分離される。それにより、クランプバンド106が、クランプバンド106の張力及びバネ105の力で高速に外側に引っ張られる。その結果、複数のブロック103も高速に外側に移動するので、衛星とロケットとの結合が解除される。
【0005】
関連する技術として、米国特許US6454214号公報に、宇宙船の二つの部分を結合する装置及び方法が開示されている。クランプは、宇宙船の第1部分と第2部分とを開放可能に結合し、及び宇宙船の第1部分と第2部分とを分離するときに開放可能な圧縮応力のエネルギーを蓄積する操作が可能である。クランプは、第1端部と第2端部を備えている。少なくとも一つのエネルギー蓄積システムは、クランプを開いて宇宙船の第1部分と第2部分とを分離するときにクランプの圧縮応力の少なくとも一部を回転のエネルギーに変換する操作が可能である。エネルギー蓄積システムは、ネジ部を含む第1結合部と、ネジ部を含む第2結合部と、第1結合部と第2結合部のネジ部を相補的に係合する操作が可能な結合装置とを備える。結合装置は、クランプの第1端部と第2端部とを結合する操作が可能である。分離の間、結合部と結合装置とは、第1結合部と第2結合部が結合装置から開放されるように互いに回転可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許US6454214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1及び図2に示される結合分離装置101では、衛星とロケットとの結合を解除(分離)するとき、結合部104のボルト状部材が切断されて、クランプバンド106の張力及びバネ105の力で高速に外側に引っ張られる。その結果、クランプバンド106の締め付け力によりブロック103を介して押さえつけられていたPAF構造120及び衛星側構造130における中心から外側方向に向かう力(歪応力)が開放される。図3は、PAF構造120及び衛星側構造130における歪応力が開放された時の様子を示す模式図である。この図は、図2と同様の断面を示している。衛星側構造130は、結合時には、歪応力を蓄積した状態で、P0の位置にある。しかし、PAF構造120及び衛星側構造130は、結合部104のボルト状部材が切断されブロック103が開放された後は自由に動ける。そのため、極めて高速に歪応力を開放して、歪応力の無い位置であるPAへ移ろうとする。その結果、PAF構造120及び衛星側構造130は、PAの位置を略中心として激しく振動することになる。すなわち、火工品による衝撃に加えて、締め付け力の開放が瞬時に行われることにより、衛星側構造130に衝撃が発生してしまうことになる。このような分離衝撃が大きい場合には、衛星側機器の設計条件を厳しくする必要が出て、コストや重量等の面で問題となる。
【0008】
本発明の目的は、飛翔体(例示:ロケット)と構造物(例示:衛星)との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能な結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該結合を分離するとき、衛星側構造の歪エネルギーが瞬間的に開放されることによる衝撃を低減することが可能な結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法を提供することにある。
【0009】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の結合分離装置は、飛翔体の載置部材(20)と載置部材(20)に載置された構造物(30)とを係合するクランプバンド(6)と、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を結合又は分離する第1結合部(4)とを具備する。第1結合部(4)は、クランプバンド(6)の周方向に対して垂直な方向を軸(C)として回転可能な回転部(43、46)と、回転部(43、46)を回転不可能にし、又は回転可能にする回転保持部(8)とを備える。両端部(2a、2b)を結合するとき、両端部(2a、2b)は互いに逆方向から回転部(43、46)に係合され、回転保持部(8)は回転部(43、46)を回転不可能にする。両端部(2a、2b)を分離するとき、回転保持部(8)は回転部(43、46)を回転可能にし、両端部(2a、2b)は回転部(43、46)の回転で回転部(43、46)から脱離する。
【0012】
本発明では、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を分離するとき、瞬間的に分離するのではなく、回転体(43、46)の回転動作により少しずつ両端部(2a、2b)を離して行くようにしている。そのため、回転体(43、46)の回転にかかる時間分だけ分離に係る時間を延ばすことができる。それにより、当該時間分だけクランプバンド(6)が緩む余裕を与えることができる。そのクランプバンド(6)の緩みを利用して、構造物(30)がクランプバンド(6)に締め付けられて生じている歪応力を緩やかに開放することができる。その結果、分離衝撃を大幅に低減することができる。
【0013】
上記の結合分離装置において、回転部(43、46)は、両端部(2a、2b)が係合するラッチ部(46)と、ラッチ部(46)と共に軸(C)を中心に回転する回転体(43)とを含むことが好ましい。回転体(43)の慣性モーメントにより、回転部(43、46)の回転動作が制御されることが好ましい。
この場合、両端部(2a、2b)を係合する箇所(ラッチ部)と、慣性モーメントにより回転動作を制御する箇所(回転体)とを異ならせているので、回転動作の制御を容易に行うことができる。また、回転動作を慣性モーメント制御することは、回転体の質量(分布)や大きさなどの複数のパラメータで制御でき、所望の性能を付与しやすくできる。
【0014】
上記の結合分離装置において、ラッチ部(46)における両端部(2a、2b)の各々の係合する位置は、軸(C)に対して対称な位置であることが好ましい。
この場合、両端部(2a、2b)の動作が対称的になると考えられ、回転体(43)を含めた回転動作をより安定的に行わせることができる。
【0015】
上記の結合分離装置において、両端部(2a、2b)の各々の係合する位置と軸(C)との距離は、回転体(43)の半径よりも小さいことが好ましい。
この場合、回転開始の抵抗を相対的に大きくできるので、回転体(43)の大きさを小さくしても、回転に要する時間を所望の値に設定しやすくすることができる。それにより、回転体(43)の省スペース化や低質量化を図ることができる。
【0016】
上記の結合分離装置において、クランプバンド(6)の途中の部分を結合又は分離する第2結合部(7)を更に具備することが好ましい。
この場合、第2結合部(7)の種類によっては、第1結合部(4)の装着用の治具として用いたり、第1結合部(4)の予備として用いたりすることができる。
【0017】
上記の結合分離装置において、第2結合部(7)は、クランプバンド(6)における第1結合部(4)と同一構造であることが好ましい。
この場合、結合分離装置における第1結合部(4)の予備とし、その冗長性を持たせることができる。
【0018】
上記の結合分離装置において、回転部(43、46)は、その上側及び下側のうちの少なくとも一方に軸用の軸受(42、47)を有することが好ましい。
この場合、回転部(43、46)の回転をより安定的に行わせることができる。
【0019】
上記の結合分離装置において、回転体(43)は、開口部(15)を有することが好ましい。回転保持部(8)は、ピン(14a)と、ピン(14a)を開口部(15)に出し入れする駆動部(14b)とを備える。開口部(15)にピン(14a)を入れることで、回転体(43)の回転を不可能にすることが好ましい。開口部(15)からピン(14a)を抜くことで、回転体(43)の回転を可能にすることが好ましい。
この場合、ピンの出し入れという簡便な方法で、回転体(43)の動作を制御することができる。
【0020】
本発明の結合分離システムは、飛翔体に搭載され、構造物(30)を載置する載置部材(20)と、載置される構造物(30)を載置部材(20)に結合し又は分離する、上記各段落のいずれか一つに記載の結合分離装置(1)とを具備する。第1結合部(4)は、載置部材(20)に取り付けられる。
【0021】
本発明では、上述された本発明の結合分離装置(1)を用いている。そのため、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を分離するとき、回転体(43、46)の回転動作により少しずつ両端部(2a、2b)を離して行くようにすることができる。それにより、回転体(43、46)の回転にかかる時間分だけ分離に係る時間を延ばして、当該時間分だけクランプバンド(6)が緩む余裕を与えることができる。そのクランプバンド(6)の緩みを利用して、構造物(30)がクランプバンド(6)に締め付けられて生じている歪応力を緩やかに開放することができる。その結果、分離衝撃を大幅に低減することができる。
【0022】
本発明の結合分離方法は、飛翔体に構造物を結合し又は分離する結合分離システムを用いた結合分離方法である。ここで、結合分離システムは、飛翔体に搭載され、構造物(30)を載置する載置部材(20)と、載置される構造物(30)を載置部材(20)に結合し又は分離する結合分離装置(1)とを具備する。結合分離装置(1)は、載置部材(20)と構造物(30)とを係合するクランプバンド(6)と、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を結合又は分離する第1結合部(4)とを備える。第1結合部(4)は、クランプバンド(6)の周方向に対して垂直な方向を軸(C)として回転可能な回転部(43、46)と、回転部(43、46)を回転不可能にし、又は回転可能にする回転保持部(8)とを備える。第1結合部(4)は、載置部材(20)に取り付けられている。両端部(43、46)を結合するとき、回転保持部(8)は回転部(43、46)を回転不可能にし、両端部(2a、2b)は互いに逆方向から回転部(43、46)に係合される。
結合分離方法は、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を分離するとき、回転保持部(8)により回転部(43,46)を回転可能にするステップと、クランプバンド(6)の張力で両端部(2a、2b)を互いに逆方向に引っ張ることにより回転部(43、46)を回転させるステップと、両端部(2a、2b)が回転部(43、46)から脱離するステップとを具備する。
【0023】
本発明では、上述された本発明の結合分離システムを用いている。そのため、クランプバンド(6)の両端部(2a、2b)を分離するとき、回転体(43、46)の回転動作により少しずつ両端部(2a、2b)を離して行くようにすることができる。それにより、回転体(43、46)の回転にかかる時間分だけ分離に係る時間を延ばして、当該時間分だけクランプバンド(6)が緩む余裕を与えることができる。そのクランプバンド(6)の緩みを利用して、構造物(30)がクランプバンド(6)に締め付けられて生じている歪応力を緩やかに開放することができる。その結果、分離衝撃を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、飛翔体と構造物との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能となる。また、本発明により、当該結合を分離するとき、衛星側構造の歪エネルギーが瞬間的に開放されることによる衝撃を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略平面図である。
【図2】図2は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略断面図である。
【図3】図3は、PAF構造及び衛星側構造における歪応力が開放された時の様子を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの構成を示す概略平面図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面の構成を示す概略断面図である。
【図6】図6は、図4の結合分離システムの第1結合部及び近傍の構成を示す概略平面図である。
【図7】図7は、図4の結合分離システムの第1結合部及び近傍の構成を示す概略正面図である。
【図8】図8は、図4の結合分離システムの第1結合部及び近傍の構成を示す概略右側面図である。
【図9】図9は、図4の結合分離システムの第1結合部の構成を示す概略分解図である。
【図10】図10は、図4の結合分離システムの第1結合部及びその近傍の構成を示す概略斜視図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの動作を示すフロー図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る第1結合部及びその近傍の動作を示す概略平面図である。
【図13A】図13Aは、図11の各段階における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図13B】図13Bは、図11の各段階における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図14】図14は、図4の結合分離システムの第1結合部の変形例及び近傍の構成を示す概略右側面図である。
【図15】図15は、図14の結合分離システムの第1結合部の構成を示す概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。ここでは、結合分離システムが搭載される飛翔体としてロケット、飛翔体に結合され分離される構造物として衛星、の場合を例にして説明する。
【0027】
本発明の実施の形態に係る結合分離装置及び結合分離システムの構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの構成を示す概略平面図である。図5は、図4のA−A断面の構成を示す概略断面図である。結合分離システムは、結合分離装置1と、PAF(Payload Attached Fitting)構造20とを備えている。
【0028】
PAF構造20(載置部材)は、ロケットに搭載され、衛星を載置する円筒形状の台座である。結合分離装置1は、PAF構造20と、その上に載置された衛星側構造30とを結合又は分離する。ただし、衛星側構造30は、円筒形状を有する衛星側の部材である。PAF構造20及び衛星側構造30の直径は概ね等しい。そして両者が結合される場合、結合分離装置1に締め付けられて、本来の直径よりも小さい直径に押し込められる。それにより、PAF構造20及び衛星側構造30には歪応力が発生している。結合分離装置1は、クランプバンド6と、第1結合部4と、回転保持部8とを備えている。なお、図4に示すように、更に第2結合部7を備えていても良い。
【0029】
クランプバンド6は、PAF構造20と衛星側構造30との結合部分の成す円周形状に沿って設けられている。クランプバンド6を締め付けることにより、衛星側構造30とPAF構造20は内側に変形する。すなわち、衛星側構造30とPAF構造20は、係合時に、変形に伴う歪応力(歪エネルギー)を内包することになる。クランプバンド6は、複数のブロック3と、ストラップ2とを備えている。
【0030】
複数のブロック3は、PAF構造20と衛星側構造30との結合部分の成す円周形状に沿って並んで設けられている。ブロック3は、PAF構造20の端部20aと衛星側構造30の端部30aとを併せて係合する凹部3aを有している。凹部3aは略V字型の溝を形成している。PAF構造20と衛星側構造30とは、端部20aと端部30aとが合わさって山型の凸部を形成し、当該凸部が凹部3aに係合することで、互いに結合している。ブロック3は、例えば、アルミニウムで形成されている。
【0031】
ストラップ2は、両端部を後述される結合部4により結合された環形状を有する。ストラップ2は、複数のブロック3における凹部3aと反対の面に結合している。複数のブロック3とストラップ2とは一体である。ストラップ2を締め付けることで、複数のブロック3を凹部3aと反対の面から結合部分に向かって押し込んでいる。
【0032】
PAF構造20及び衛星構造体30の中心方向に向かうこの締め付け力で、複数のブロック3を当該中心方向に押し込んでいる。その押し込む力で、凹部3aにおいて、当該中心から外側方向に向かうPAF構造20及び衛星側構造30の力を抑え込んでいる。その押え込む力とPAF構造20及び衛星側構造30の歪応力との釣り合いにより、PAF構造20及び衛星側構造30とクランプバンド6との係合を維持することができる。クランプバンド6には、外側のロケット本体(図示されず)に取り付けられた複数のバネ5により外向きの力が加えられている。ストラップ2は、例えば、鋼(スチール)で形成されている。
【0033】
第1結合部4は、ストラップ2の両端部を結合して、クランプバンド6による締め付けを維持する。又は、両端部の結合を分離して、クランプバンド6による締め付けを開放する。第1結合部4の詳細は後述する。回転保持部8は、PAF構造20に取り付けられ、後述される第1結合部4の回転マスを回転できないように固定し、又はその固定を開放して回転可能にする。それにより、第1結合部4の結合を保持し、又はその結合を開放する。
【0034】
第2結合部7を備える場合には、その第2結合部7は、クランプバンド6の途中の位置(例示:第1結合部4と対向する位置)に設けられる。第2結合部7は、例えば、図1で説明した結合部104と同じ構成を用いることができる。すなわち、第2結合部7は、ボルト状部材をナット状部材にねじ込むことで、ストラップ2の両端部を結合する。ここで、第2結合部7は、クランプバンド6の取り付けを容易にするために設けられる。そのため、第2結合部7は切断されず、したがって火工品を用いない。ただし、衛星分離のときに第1結合部4で分離できない場合のバックアップとして分離可能としてもよいし、従来どおり分離するようにしてもよい。その分離を行うとき、歪応力の急速な開放による振動の低減が重要であり、火工品による振動が重要でない場合には、火工品でボルト状部材を切断して結合の分離を行っても良い。
【0035】
また、第2結合部7の構成を第1結合部4と同一構成とすることも考えられる。その場合、第1結合部4の予備用として、第1結合部4の冗長性を持たせることができる。あるいは、第2結合部7にも同様に結合分離をさせても良い。その場合、結合の分離は、第1結合部4と同時に行う。更に、第1結合部4や第2結合部7のような構成を、複数個所設けることも可能である。
【0036】
次に、第1結合部4の詳細について説明する。
図6〜図8は、図4の結合分離システムの第1結合部及びその近傍の構成を示す概略図である。図6は平面図、図7は正面図、及び図8は右側面図である。
【0037】
ストラップ2の一方の端部2aには、取付部11a及び引掛け部12aが設けられている。取付部11aは、引掛け部12aを端部2aに固定的に取り付ける。引掛け部12aは、一つの辺を有さない四角い枠の形状を有している。そして、その辺の無い側で取付部11aに固定されている。枠の内側に相当する部分を、後述される第1結合部4のラッチ部46の突出部46aに引っ掛かることが可能となっている。同様に、ストラップ2の他方の端部2bには、取付部11b及び引掛け部12bが設けられている。取付部11bは、引掛け部12bを端部2bに固定的に取り付ける。引掛け部12bは、一つの辺を有さない四角い枠の形状を有している。そして、その辺の無い側で取付部11bに固定されている。枠の内側に相当する部分を、後述される第1結合部4のラッチ部46の突出部46bに引っ掛かることが可能となっている。取付部11a、11b及び引掛け部12a、12bは、ラッチ部46に引っ掛けるために用いる部材であるから引掛け部と考えることができる。
【0038】
第1結合部4については、まず図9を参照して説明する。図9は、図2の結合分離システムの第1結合部の構成を示す概略分解図である。第1結合部4は、取付ブラケット41と、軸受42と、回転マス43と、ラッチ部46とを備えている。このうち、回転マス43及びラッチ部46は、軸受42を用いて、取付ブラケット41に回転軸Cを中心に回転可能に取り付けられている。
【0039】
ラッチ部46は、その上部に、突出部46a及び補助部46bと、突出部46c及び補助部46dとを有している。突出部46aは補助部46dと、及び、補助部46bは突出部46cと、それぞれ互いに背中合わせに設けられている。そして、突出部46aと突出部46cとは、回転軸Cに対して対称な位置に設けられている。同様に、補助部46bと補助部46dとは、回転軸Cに対して対称な位置に設けられている。ストラップ2の引掛け部12aは、突出部46aと補助部46bとで形成される断面がU字型の溝(以下U溝ともいう)に挿入され、突出部46aに引っ掛けられる。同様に、ストラップ2の引掛け部12bは、突出部46cと補助部46dとで形成されるU溝に挿入され、突出部46cに引っ掛けられる。これらのU溝は、溝の開口部が開いた状態にある。そのため、その溝内から開口部へ向かう方向(成分)の力を引掛け部12a、12bに付与すれば、それらをU溝から引き出すことができる。
【0040】
ラッチ部46は、その下部に軸部44aを有し、更にその下部に軸部44bを有している。軸部44aは、回転マス43の開口部43aと嵌合して、ラッチ部46と回転マス43とを固定的に結合している。ラッチ部46の回転軸Cを中心とした回転を回転マス43に伝達する。軸部44bは、軸受42に挿入され、ラッチ部46及び回転マス43を回転可能に保持している。ラッチ部46は、クランプバンド6の張力により引掛け部12aが突出部46aを一方向に、引掛け部12bが突出部46bを反対方向にそれぞれ引っ張ることで回転する。
【0041】
回転マス43は、略円板上の部材である。ラッチ部46の軸部44aを開口部43aに挿入されて、ラッチ部46と固定的に結合されている。回転マス43は、ラッチ部46と一体で回転する。回転マス43は、ラッチ部46の回転に際して、ラッチ部46に慣性モーメント(I=MR/2:質量M、半径Rの場合)を付与する。それにより、ラッチ部46の回転動作(回転状態)を制御する。例えば、慣性モーメントを大きくすればするほど、ラッチ部46の静止状態から回転を開始するまでの時間を長くし、回転開始初期の速度やその上昇(加速度)を低くすることができる。回転動作を所望の状態に制御するためには、例えば、質量Mや密度ρや半径Rを変更することで行うことができる。また、所望の慣性モーメントを与えることができれば、リング形状のような他の形状であっても良い。回転マス43の材料は、ステンレスのような金属が例示される。大きさを小さくしたい場合、W(タングステン)やPb(鉛)のような高密度材料を用いることも可能である。
【0042】
取付ブラケット41は、第1結合部4の基部であり、PAF構造30の側面に固定されている。取付ブラケット41は、上部表面に軸受42を保持する開口部41aを有している。軸受42は、その開口部41aに設けられている。軸受42は、軸受部42aに軸部44bを挿入され、回転マス43及びラッチ部46を一体的に回転可能に保持している。
【0043】
ラッチ部46と回転マス43の回転は、軸部44a、44bや回転マス43や軸受42の中心を通る回転軸Cを中心として回転する。回転軸C(z軸方向)は、クランプバンド6の周方向(xy面内方向)に対して垂直な方向である。すなわち、クランプバンド6が結合している時、クランプバンド6の周の上面を含む平面(xy平面)に対して垂直な方向(z軸方向)である。回転軸Cがこのような方向を向くことで、クランプバンド6の両端部2a、2bがラッチ部46を引っ張る方向と、回転マス43の回転面とを同一面上とすることができる。それにより、ラッチ部46の回転を、軸部44aを介して容易に回転マス43の回転に変換することができる。
【0044】
次に、図6〜図8を参照して、ラッチ部46及び回転マス43の回転は、上述した回転保持部8により制御される。回転保持部8は、取付部材13と、回転マス保持部14とを備えている。取付部材13は、回転マス保持部14をPAF構造20の内側側面に取り付けている。回転マス保持部14は、回転マス43を回転しないように固定し、又はその固定を開放して回転可能にする。回転マス保持部14は、ピンプラーに例示され、駆動部14aと、ピン14bとを含む。駆動部14aは、ピン14bを回転マス43に開口された穴15に挿入することで、回転マス43を回転できないように固定する。また、駆動部14aは、ピン14bを回転マス43の穴15から引き抜くことで、回転マス43を回転可能にする。
【0045】
回転マス43が回転可能になると、クランプバンド6の張力により両端部2a、2bが互いに離れる方向へ移動しようとする。それに伴い、ラッチ部46及び回転マス43が回転し、クランプバンド6の両端部2a、2bが離れて、クランプバンド6が緩む。クランプバンド6が緩むことにより、クランプバンド6が押え込んでいたPAF構造20及び衛星側構造30の歪応力がその緩んだ分だけ開放される。そして、その後、回転が進み、クランプバンド6の両端部2a、2bは最終的に分離して、クランプバンド6がバネ5に引っ張られて結合部分から離れる。クランプバンド6の両端部2a、2bが分離し、クランプバンド6が離れることにより、衛星側構造30の歪応力が全て開放される。
【0046】
このとき、回転マス43の回転に伴ってクランプバンド6が緩むので、回転に要する時間の分だけ歪応力の開放に時間がかかる。このように、PAF構造20及び衛星側構造30は一気に歪応力を開放するのではなく、時間をかけて応力を開放するので、歪応力の開放による振動や衝撃を大幅に抑制することができる。それにより、衛星分離の衝撃を低減することができる。なお、回転保持部8は、回転マス43を回転不可能に保持し、回転可能にすることができれば、上記形態に限定されるものではない。例えば、上下から回転マス43を挟んで固定して停止させる方法などが考えられる。
【0047】
制御装置16は、回転保持部8の動作を制御する。例えば、制御装置13がタイマーの場合、制御装置16は、予め設定された時刻まで、第1結合部4の回転マス43が回転しないように、回転マス保持部14のピン14bを回転マス43の開口部15に挿入させておく。そして、予め設定された時刻になったら、回転マス保持部14のピン14bを開口部15から引き抜き、第1結合部4の回転マス43が回転可能にする。又は、制御装置16が、マイクロコンピュータの場合、プログラム制御により、上記回転マス保持部14のピン14bの出し入れ動作を制御してもよい。更に、その制御に際して、外部の制御装置から他の制御信号を受けて、上記プログラム制御をおこなっても良い。更に、制御装置16として、ロケット内に搭載された他の制御装置を兼用しても良い。
【0048】
第1結合部4の回転マス43の大きさ及び質量に関しては、例えば、以下のように決定される。まず、ラッチ部46の静止状態から回転を開始するまでの時間や、回転開始初期の速度の上昇(加速度)をどの程度に設定するかを決定する。その後、その初期状態を実現する慣性モーメント(I=MR/2)を決定する。そのようにして決定された回転マス43の一例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。図4において、クランプバンド6での締め付け時の荷重が30kN、PAF構造20の直径φ0が1000mmの場合、例えば、回転マス43の直径は20cm程度、回転マス43の質量は5kg程度、PAF構造20の質量は100kg程度である。これは、回転保持部8から開放されて回転可能になってから、クランプバンド6の両端が離れるまで、数10msec(10msecオーダー)にしたい場合である。この場合、従来の火工品を用いた場合(図1)である数msec(1msecオーダー)と比較して、10倍程度遅くすることができる。
【0049】
また、ラッチ部46において引掛け部12a、12bが突出部46a、46bに引っ掛けられたときの回転軸Cと引掛け部12a、12bとの距離(以下オフセットともいう)は、回転マス43の半径よりも小さくなるように設定されている。これは、オフセットのサイズを小さくすると、回転開始の抵抗を相対的に大きくできるからである。そのようにすることで、回転マス43の大きさを小さくしても、回転に要する時間を所望の値にすることができる。それにより、回転マス43の省スペース化や低質量化を図ることができる。
【0050】
図10は、図4の結合分離システムの第1結合部及びその近傍の構成を示す概略斜視図である。
この図は、結合状態をわかりやすく示している。第1結合部4において、引掛け部12aは、ラッチ部46の突出部46aに引っ掛けられ、突出部46aと補助部46bとが成すU溝に嵌っている。同様に、引掛け部12bは、ラッチ部46の突出部46cに引っ掛けられ、突出部46cと補助部46dとが成すU溝に嵌っている。この状態は、回転保持部8(この図において図示されず;図8を参照)が回転マス保持部14のピン14bを回転マス43の穴15に挿入することで保持されている。
【0051】
次に、本発明の実施の形態に係る結合分離装置及び結合分離システムの動作(結合分離方法)について説明する。図11は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの動作を示すフロー図である。図6及び図12は、本発明の実施の形態に係る第1結合部及びその近傍の動作を示す概略平面図である。図13A〜図13Bは、図11の各段階における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【0052】
事前に、衛星側構造30は、結合分離システムに取り付けられている。すなわち、衛星側構造30は、クランプバンド6によりPAF構造20に結合している(図4〜図8、図10)。このとき、クランプバンド6の両端部2aの引掛け部12a、12bは、ラッチ部46に引っ掛けられている。回転マス保持部14はピン14bを回転マス43の穴15に挿入することで、回転マス43を回転できないように固定している。その結果、回転マス43に固定されたラッチ部46も同様に、図5〜図8、図10に示す位置に固定されている。この状態を示したのが、図6及び図13Aである。
【0053】
取り付け方法は、PAF構造20上に衛星側構造30を載置した後、ブロック3をその周囲に嵌め込み、ストラップ2を締め上げて、その両端部2a、2bの引掛け部12a、12bをラッチ部46に引掛ける方法が考えられる。また、クランプバンド6の途中に、図4のように第2結合部7を設ける場合には、PAF構造20上に衛星側構造30を載置した後、ブロック3をその周囲に嵌め込み、ストラップ2の第1結合部4の結合を完成し、しかる後に従来と同様にして第2結合部7を結合して、ボルト状部材を用いてクランプバンド6を締め上げる方法が考えられる。このとき、クランプバンド6はその自然長と比較して長く引き伸ばされており、その張力は、例えば、約30kNである。
【0054】
このようにして結合分離装置1を用いてPAF構造20に取り付けられている衛星側構造30を分離するには、以下の分離シーケンスを用いる。
【0055】
まず、制御装置16は、衛星側構造30を分離する時刻に達した段階で、回転保持部8の回転マス保持部14をONにする。回転マス保持部14は、回転マス43の穴15からピン14aを引き抜く(ステップS01)。それにより、回転マス43が回転可能になる。その結果、回転マス43に固定されたラッチ部46も回転可能になる。
【0056】
ラッチ部46が回転可能になると、締め上げられていたクランプバンド6の張力により両端部2a、2bが互いに離れる方向へ移動しようとする。すなわち、引掛け部12a、12bが互いに反対の方向に離れようとする。その離れることに伴い、突出部46a、46bが互いに反対方向に引っ張られることにより、ラッチ部46が回転し始める(ステップS02)。ラッチ部46は回転マス43と一体であり、回転マス43はラッチ部46よりも大きさが大きく且つ質量が大きい。そのため、ラッチ部46の回転(回転の速度や加速度)は回転マス43の慣性モーメントで概ね決定されることになる。したがって、例えば、慣性モーメントを相対的に大きくしておけば、回転マス43の回転を相対的に緩やかにすることができる。それにより、クランプバンド6の両端部2a、2bが離れる速度を相対的に遅くすることができる。ラッチ部46の回転によりクランプバンド6の両端部2a、2bが離れて、クランプバンド6の周方向の長さが、実質的に延伸したようになる。このようにしてクランプバンド6が緩み、その締め付け力が弱まることで、クランプバンド6が少し外側に移動できるので、PAF構造20及び衛星側構造30は位置P0から位置P1へ少し外側に広がることができる。それにより、クランプバンド6が押え込んでいた衛星側構造30の歪応力がその緩んだ分だけ開放される。その状態を示したのが、図12及び図13Bである。
【0057】
そして、その後、ラッチ部46の回転が進むと、ラッチ部46のU溝はクランプバンド6の両端部2a、2bの移動方向へその開口部を向けることになる。その結果、クランプバンド6の両端部2a、2bはU溝から最終的に飛び出し、クランプバンド6の両端部2a、2bの結合が分離する。そして、クランプバンド6は、バネ5に引っ張られて衛星側構造30とPAF構造20との結合部分から離れる。クランプバンド6の両端部2a、2bが分離し、クランプバンド6が離れることにより、衛星側構造30は何の拘束受けなくなる。その結果、衛星側構造30の歪応力は全て開放される(ステップS03)。それにより、衛星側構造30とPAF構造20との結合が開放される(分離する)。
【0058】
以上のような結合分離システムの動作により、衛星が分離される。
【0059】
本実施の形態では、クランプバンド6により結合部分に付与されている締め付け力を、従来の場合と比較して時間をかけて緩やかに開放する機構が設けられている。この機構では、クランプバンド6の両端部2a、2bの結合を分離するとき、両端部2a、2bが第1結合部4から離れようとする運動を、回転マス43の回転運度で制御している。両端部2a、2bにはクランプバンド6の張力がかかっている。その張力を瞬時に開放するのではなく、その張力に回転マス43を回転させる仕事をさせることで、張力の開放に回転マス43の慣性モーメントに対応した時間がかかるようにしている。それにより、クランプバンド6の締め付け力を従来の場合と比較して時間をかけて緩やかに開放することができる。その結果、締め付け力開放による衝撃を大幅に低減することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態では、第1結合部4として、ラッチ部46の回転で結合及び解除を行う構成という、火工品以外の構成(火薬を使用していない部材)を用いることができる。それにより、火工品による衝撃を緩和することも可能である。火工品を使用しない場合、運用制約が無くなる。加えて、再利用が可能なため、実際の使用の前に、現物で試験をすることが可能となる。
【0061】
更に、本実施の形態では、衛星側構造30やPAF構造20の構造、すなわち衛星とロケットとのインターフェースをこれまでと同じにすることができる。そのため、衛星から見て他のロケットと互換性を維持することができる。
【0062】
なお、上記実施の形態では、回転マス43の片側に軸受42を有する第1結合部4を用いている。しかし、本発明はこの例に限定されるものではなく、回転マス43の両側に軸受を有する第1結合部4を有していても良い。その例を示しているのが、図14及び図15である。以下にその例について説明する。
【0063】
図14は、図4の結合分離システムの第1結合部の変形例及びその近傍の構成を示す概略右側面図である。図15は、図14の結合分離システムの第1結合部の変形例の構成を示す概略分解図である。第1結合部4は、取付ブラケット41と、軸受42と、回転マス43と、上部取付ブラケット48と、上部軸受47と、ラッチ部46とを備えている。
【0064】
ラッチ部46は、その上部に、突出部46a及び補助部46bと、突出部46c及び補助部46dとを有している。これらの構成は、図9の場合と同様である。また、ラッチ部46は、その下部に、軸部44c、44a、44bを有している。軸部44cは、上部軸受47に挿入され、ラッチ部46及び回転マス43を回転可能に保持する。軸部44aは、回転マス43の開口部43aと嵌合して、ラッチ部46と回転マス43とを固定的に結合する。回転マス43の回転をラッチ部46に伝達する。軸部44bは、軸受42に挿入され、ラッチ部46及び回転マス43を回転可能に保持する。
【0065】
上部取付ブラケット48は、回転マス43とラッチ部46の上部との間に設けられ、PAF構造30の側面に固定されている。上部取付ブラケット48は、上部軸受47を保持するための貫通する開口部48aを有している。軸受47は、その開口部48aに設けられ、軸受部47aに軸部44cを挿入され、回転マス43及びラッチ部46を一体的に回転可能に保持する。
【0066】
なお、取付ブラケット41、軸受42、及び回転マス43の構成は、図9の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
ラッチ部46と回転マス43の回転は、軸部44や回転マス43や軸受42の中心を通る軸(回転軸)Cを中心として、回転する。回転軸C(z軸方向)は、クランプバンド6の周方向(xy面内方向)に対して垂直な方向である。すなわち、クランプバンド6が結合している時、クランプバンド6の周の上面を含む平面(xy平面)に対して垂直な方向(z軸方向)である。
【0068】
この場合にも、図5〜図8の場合と同様の効果を得ることができる。
更に、この場合、軸受42に加えて、大きな力がかかるラッチ部46上部の近傍に軸受47を設けている。このように、ラッチ部46上部の近傍にも軸受47を設け、回転マス43の両側で軸部を支持しているので、ラッチ部46から離れた軸受42だけで軸部を支える図5〜図8の場合と比較して、ラッチ部46及び回転マス43の回転を安定的に行うことができる。
【0069】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0070】
1、101 結合分離装置
2、102 ストラップ
2a、2b、102a 端部
3、103 ブロック
3a 凹部
4、104 (第1)結合部
5、105 バネ
6、106 クランプバンド
7 第2結合部
8 回転保持部
11a、11b 取付部
12a、12b 引掛け部
13 取付部材
14 回転マス保持部
14a 駆動部
14b ピン
15 穴
16 制御装置
20、120 PAF構造
20a 端部
30、130 衛星側構造
30a 端部
41 取付ブラケット
41a 開口部
42 軸受
42a 軸受部
43 回転マス
43a 開口部
44a、44b、44c 軸部
46 ラッチ部
46a、46c 突出部
46b、46d 補助部
48 上部取付ラケット
48a 開口部
47 上部軸受
47a 軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体の載置部材と前記載置部材に載置された構造物とを係合するクランプバンドと、
前記クランプバンドの両端部を結合又は分離する第1結合部と
を具備し、
前記第1結合部は、
前記クランプバンドの周方向に対して垂直な方向を軸として回転可能な回転部と、
前記回転部を回転不可能にし、又は回転可能にする回転保持部と
を備え、
前記両端部を結合するとき、前記両端部は互いに逆方向から前記回転部に係合され、前記回転保持部は前記回転部を回転不可能にし、
前記両端部を分離するとき、前記回転保持部は前記回転部を回転可能にし、前記両端部は前記回転部の回転で前記回転部から脱離する
結合分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結合分離装置において、
前記回転部は、
前記両端部が係合するラッチ部と、
前記ラッチ部と共に前記軸を中心に回転する回転体とを含み、
前記回転体の慣性モーメントにより、前記回転部の回転動作が制御される
結合分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の結合分離装置において、
前記ラッチ部における前記両端部の各々の係合する位置は、前記軸に対して対称な位置である
結合分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載の結合分離装置において、
前記両端部の各々の係合する位置と前記軸との距離は、前記回転体の半径よりも小さい
結合分離装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合分離装置において、
前記クランプバンドの途中の部分を結合又は分離する第2結合部を更に具備する
結合分離装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の結合分離装置において、
前記第2結合部は、前記クランプバンドにおける前記第1結合部と同一構造である
結合分離装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の結合分離装置において、
前記回転部は、その上側及び下側のうちの少なくとも一方に前記軸用の軸受を有する
結合分離装置。
【請求項8】
請求項2に記載の結合分離装置において、
前記回転体は、開口部を有し、
前記回転保持部は、
ピンと、
前記ピンを前記開口部に出し入れする駆動部と
を備え、
前記開口部にピンを入れることで、前記回転体の回転を不可能にし、
前記開口部から前記ピンを抜くことで、前記回転体の回転を可能にする
結合分離装置。
【請求項9】
飛翔体に搭載され、構造物を載置する載置部材と、
載置される前記構造物を前記載置部材に結合し又は分離する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の結合分離装置と
を具備し、
前記第1結合部は、前記載置部材に取り付けられる
結合分離システム。
【請求項10】
飛翔体に構造物を結合し又は分離する結合分離システムを用いた結合分離方法であって、
前記結合分離システムは、
前記飛翔体に搭載され、前記構造物を載置する載置部材と、
載置される前記構造物を前記載置部材に結合し又は分離する結合分離装置と
を具備し、
前記結合分離装置は、
前記載置部材と前記構造物とを係合するクランプバンドと、
前記クランプバンドの両端部を結合又は分離する第1結合部と
を備え、
前記第1結合部は、
前記クランプバンドの周方向に対して垂直な方向を軸として回転可能な回転部と、
前記回転部を回転不可能にし、又は回転可能にする回転保持部と
を備え、
前記第1結合部は、前記載置部材に取り付けられ、
前記両端部を結合するとき、前記回転保持部は前記回転部を回転不可能にし、前記両端部は互いに逆方向から前記回転部に係合され、
前記結合分離方法は、
前記クランプバンドの両端部を分離するとき、前記回転保持部により前記回転部を回転可能にするステップと、
前記クランプバンドの張力で前記両端部を互いに逆方向に引っ張ることにより前記回転部を回転させるステップと、
前記両端部が前記回転部から脱離するステップと
を具備する
結合分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−168176(P2011−168176A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33971(P2010−33971)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】