説明

結晶型[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)(アトロバスタチン)

【課題】 高脂血症、高コレステロール血症、骨粗しょう症、およびアルツハイマー病を治療する薬剤として有用なアトルバスタチンの新規結晶型を提供する。
【解決手段】 X型、またはXII型として示される、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,Δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(アトロバスタチン)の新規結晶型が提供され、そのX線粉末回折、固体NMR、および/またはラマン分光法により特徴付けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬製剤として有用な、化学名[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩で知られるアトロバスタチンの新規結晶型、これらの製造および単離方法、これらの化合物および製薬上許容できる担体を含有する医薬組成物、並びにこのような組成物を用いて高脂血症、高コレステロール血症、骨粗しょう症、およびアルツハイマー病に罹患している被験体(ヒト被験者を含む)を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A(HMG−CoA)のメバロン酸塩への変換は、コレステロール生合成経路における初期工程であり、律速工程である。この工程は酵素HMG−CoAレダクターゼにより触媒されている。スタチン類はHMG−CoAレダクターゼがこの変換を触媒することを阻害する。従って、スタチン類は、全体的に有効な脂質低減剤である。
【0003】
米国特許5,273,995号(参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるアトロバスタチンカルシウムは、現在化学名[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)3水和物および式;
【化1】

を有するLipitor(R)として販売されている。
【0004】
アトロバスタチンカルシウムはHMG−CoAレダクターゼの選択的、拮抗阻害剤である。従って、アトロバスタチンカルシウムは、有効な脂質低減化合物であり、従って脂質低下および/またはコレステロール低下剤として有用である。
【0005】
米国特許4,681,893号(参照により本明細書に組み込まれる)は、トランス(±)−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[(2−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドを含め、ある種のトランス−6−[2−(3−または4−カルボキサミド−置換ピロール−1−イル)アルキル]−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンを開示している。
【0006】
米国特許5,273,995号(参照により本明細書に組み込まれる)は、トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル1−[(2−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドの開環した酸のR型を有するエナンチオマー、すなわち、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸つまり、アトロバスタチンを開示している。
【0007】
米国特許5,003,080;5,097,045;5,103,024;5,124,482;5,149,837;5,155,251;5,216,174;5,245,047;5,248,793;5,280,126;5,397,792;5,342,952;5,298,627;5,446,054;5,470,981;5,489,690;5,489,691;5,510,488;5,998,633;および6,087,511号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)は、アモルファスアトロバスタチンを製造するための様々な方法および主要な中間体を開示している。アモルファスアトロバスタチンは大規模生産を目的とした濾過および乾燥に不向きな特性を有しており、熱、光、酸素、および湿気から保護されなければならない。
【0008】
アトロバスタチンカルシウムの結晶型は米国特許5,969,156号および6,121,461号(これらは参照により本願に組み込まれる)において開示されている。
【0009】
国際公開特許出願番号WO01/36384は多型相のアトロバスタチンカルシウムを開示したとされている。
【0010】
アトロバスタチンカルシウムの安定な経口製剤は、米国特許5,686,104号および6,126,971号において開示されている。
【0011】
アトロバスタチンはそのカルシウム塩として、すなわち、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)として製造される。このカルシウム塩は、これによりアトロバスタチンを例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、粉剤等、経口投与用の剤形に好都合に製剤することが可能になるために望ましい。また、製剤を厳格な製薬要件および規格に適合できるようにするために、アトロバスタチンを純粋な結晶型で製造する必要がある。
【0012】
更に、アトロバスタチンの製造方法は、大規模生産に従うものであることが必要とされる。また、製品が敏速に濾過でき、そして容易に乾燥される形態であることが望ましい。最終的には、製品が特殊な保存条件を必要とせずに長期間安定であることが経済的に望ましい。
【0013】
本発明者らは、今回驚くべきことに、そして予期せずも新規結晶型のアトロバスタチンを発見した。従って、本発明はV、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX型で示される新規結晶型のアトロバスタチンを提供する。新規結晶型のアトロバスタチンはアモルファス製品よりも純粋であり、安定であり、すなわち有利な製造特性を有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、V結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表1】

【0015】
また、2θ値について示された以下のV結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表2】

【0016】
更に、本発明は以下の固体13C核磁気共鳴(ssNMR)スペクトルにより特徴付けられるV結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関し、ここで化学シフトは100万分の1で表されている:
【表3】

【0017】
また、本発明は以下のcm-1で表されるピークを有するラマンスペクトルにより特徴付けられるV結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する;
【表4】

【0018】
本発明の第1の特徴の好ましい態様において、V結晶型アトロバスタチンは3水和物である。
【0019】
第2の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、VI結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表5】

【0020】
また、2θ値について示された以下のVI結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表6】

【0021】
更に、本発明は以下の固体13C核磁気共鳴スペクトルにより特徴付けられるVI結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関し、ここで化学シフトは100万分の1で表されている:
【表7】

【0022】
第3の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、VII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表8】

【0023】
また、2θ値について示された以下のVII結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表9】

【0024】
更に、本発明は以下の固体13C核磁気共鳴スペクトルにより特徴付けられるVII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関し、ここで化学シフトは100万分の1で表されている:
【表10】

【0025】
また、本発明は以下のcm-1で表されるピークを有するラマンスペクトルにより特徴付けられるVII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する;
【表11】

【0026】
本発明の第3の特徴の好ましい態様において、VII結晶型アトロバスタチンはセスキ水和物である。
【0027】
第4の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、VIII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表12】

【0028】
また、2θ値について示された以下のVIII結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表13】

【0029】
更に、本発明は以下の固体13C核磁気共鳴スペクトルにより特徴付けられるVIII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関し、ここで化学シフトは100万分の1で表されている:
【表14】

【0030】
また、本発明は以下のcm-1で表されるピークを有するラマンスペクトルにより特徴付けられるVIII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する;
【表15】

【0031】
本発明の第4の特徴の好ましい態様において、VIII結晶型アトロバスタチンは2水和物である。
【0032】
第5の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、IX結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表16】

【0033】
また、2θ値について示された以下のIX結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表17】

【0034】
第6の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、X結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表18】

【0035】
また、2θ値について示された以下のX結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表19】

【0036】
更に、本発明は以下の固体13C核磁気共鳴スペクトルにより特徴付けられるX結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関し、ここで化学シフトは100万分の1で表されている:
【表20】

【0037】
また、本発明は以下のcm-1で表されるピークを有するラマンスペクトルにより特徴付けられるX結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する;
【表21】

【0038】
本発明の第6の特徴の好ましい態様において、X結晶型アトロバスタチンは3水和物である。
【0039】
第7の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XI結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表22】

【0040】
第8の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表23】

【0041】
また、2θ値について示された以下のXII結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表24】

【0042】
また、本発明は以下のcm-1で表されるピークを有するラマンスペクトルにより特徴付けられるXII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する;
【表25】

【0043】
第9の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてシマズ回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XIII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表26】

【0044】
第10の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XIV結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表27】

【0045】
第11の特徴において、CuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XV結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表28】

【0046】
第12の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XVI結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表29】

【0047】
また、2θ値について示された以下のXVI結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、CuKα放射を用いてシマズ回折計で測定された:
【表30】

【0048】
また、2θ値について示された以下のXVI結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表31】

【0049】
第13の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XVII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表32】

【0050】
第14の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XVIII結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表33】

【0051】
また、2θ値について示された以下のXVIII結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、CuKα放射を用いてシマズ回折計で測定された:
【表34】

【0052】
また、2θ値について示された以下のXVIII結晶型アトロバスタチンのX線粉末回折像は、Inel(キャピラリー)回折計で測定された:
【表35】

【0053】
第15の特徴において、本発明はCuKα放射を用いてBruker D5000回折計で測定され、相対強度>10%を有するような2θと相対強度について示された、以下のX線粉末回折像により特徴付けられる、XIX結晶型アトロバスタチンおよびその水和物に関する:
【表36】

【0054】
HMG−CoAレダクターゼの阻害剤として、新規結晶型のアトロバスタチンは有用な脂質低下およびコレステロール低下剤であり、同じく、有用な骨粗しょう症およびアルツハイマー病の治療における薬剤である。
【0055】
本発明の更に他の態様は、単位剤形における、有効量の結晶V型、VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型、XII型、XIII型、XIV型、XV型、XVI型、XVII型、XVIII型、またはXIX型アトロバスタチンを、前述の処置方法において投与するための医薬組成物である。
最終的に本発明は、V型、VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型、XII型、XIII型、XIV型、XV型、XVI型、XVII型、XVIII型、またはXIX型アトロバスタチンの製造方法に関する。
【0056】
本発明を添付の図1〜35の以下にある短い詳細を参照する下記の非限定的な実施例により更に説明する。
【0057】
〔発明の詳細な説明〕
結晶V型、VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型、XII型、XIII型、XIV型、XV型、XVI型、XVII型、XVIII型、またはXIX型アトロバスタチンは、これらのX線粉末回折像により、これらの固体核磁気共鳴スペクトル(NMR)により、および/またはこれらのラマン
スペクトルにより特徴付けられる。
【0058】
X線粉末回折
V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX型
V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、またはXIX型アトロバスタチンは、これらのX線粉末回折像により特徴付けられる。従って、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、またはXIII型アトロバスタチンのX線回折像をCuKα放射を用いるシマズXRD−6000X線粉末回折計で測定した。機器には高精度焦点X線管が備え付けられている。管電圧および管電流はそれぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散および散乱スリットは1°に設定し、受光スリットは0.15mmに設定した。回折される電磁波をNaIシンチレーション検出器により検出した。3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で、2.5〜40°2θのθ−2、θ連続読み取りを用いた。機器の心合わせを確認するために、シリコン標準を各日分析した。XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX型のX線回折像は、銅放射、固定スリット(1.0、1.0、0.6mm)、およびKevex固形検出器を用いるBruker D5000回折計で行った。データはステップサイズ0.04度およびステップ時間1.0秒を用いて、2θにおける3.0〜40.0度で回収した。BrukerがSiemansを合併していることは書き留めておくべきであり;従って、Bruker D5000機器は本質的にSiemans D5000と同じである。
【0059】
また、V、VI、VII、VIII、IX、X、XII、XVI、およびXVIII型のX線回折像はInel回折計で行った。X線回折分析は、120度の2θ領域を有する曲線位置高感度(CPS)検出器を備えたInelXRG−3000回折計で行った。分解能0.03°2θで、CuKα放射を約4°2θで開始することにより実時間データを回収した。管電圧および管電流はそれぞれ40kVおよび30mAに設定した。試料は、これらを薄壁ガラスキャピラリー中に充填して分析用に調製した。各キャピラリーをゴニオメータ先端上にマウントし、これによりデータ収集中のキャピラリーの回転が動力化される。機器の校正は常にシリコン参照標準を用いて行う。利用できる形態のためのInel回折グラムは、基線を減算しない形で示される。これらの回折グラムから強度を算出することは、当業界技術の範囲内であり、バックグラウンド散乱(例えば、キャピラリーからの散乱)を計上するために基線減算を用いることを包含する。
【0060】
シマズまたはBruker機器など、本明細書中で報告する計測に用いられる機器を用いてX線粉末回折計測を行うために、一般に試料はキャビティーを有する容器中に置かれる。試料粉末をスライドガラスまたは相当物で押し付け、ランダムな表面および適当な試料の高さが確実に得られるようにする。次いで試料容器を機器(シマズまたはBruker)中に置く。X線源は試料の上に、最初は容器の平面に対し小角度で配置し、入射線と容器の平面との間の角度が連続的に増加するように円弧上を移動させる。このようなX線粉末解析に伴う計測の差は:(a)試料調製の誤差(例えば試料の高さ)、(b)機器誤差(例えば平面試料誤差)、(c)校正誤差、(d)操作者誤差(ピーク位置を測定する際に存在するこれらの誤差を含む)、および(e)選択方位、を含む様々な要素に起因する。校正誤差および試料高さの誤差は、しばしば結果として等量により、同方位における全てのピークのシフトを招く。平面容器上の試料高さのわずかな差が、XRPDピーク位置における大きなずれを導く。体系的研究により、典型的Bragg−Brentano構成のシマズXRD−6000を使用する場合、試料高さの差が1mmあると、1°2θと同じ高さのピークシフトが起きることが示された(Chenら,J. Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2001;26:63)。これらのシフトはX線回折グラムから識別され、シフトの補正(系統的補正率をピーク位置の全値に適用する)または機器の再校正により解消される。一方、本発明で用いられるInel機器では、試料を機器の中心にあるキャピラリー中に入れる。これにより、試料高さの誤差(a)および選択方位(e)が最小限に抑えられる。キャピラリーを使用する際、試料高さの設定は手動ではないため、一般的にInel計測からのピーク位置はシマズまたはBruker機器からのものより正確である。上記の通り、系統的補正率をピーク位置が一致するように適用することにより、種々の機器からの計測を補正することができる。一般に、この補正率は、シマズおよびBrukerからのピーク位置をInelからのものに合わせ、0〜0.2°2θの範囲になるであろう。
【0061】
表1に、V〜XIX結晶型アトロバスタチンについて、>10%の相対強度を有する試料
における、全線の2θおよび相対強度を記載する。
【0062】
この表に記載されている数はおおよその(端数を切り捨てた)数である。
【0063】
【表37】

【0064】
【表38】

【0065】
【表39】

【0066】
結晶型アトロバスタチンは19種のみが知られているため、各型は線の組合せまたは他型のX線粉末回折とは異なるパターンのいずれかにより、特定でき、他の結晶型と識別することができる。
【0067】
例として、表2にV〜XIX型アトロバスタチンについての2θピークの組合せ、即ち、各型固有のX線回折線セットを記載する。米国特許5,969,156および6,121,461に開示されるI〜IV型アトロバスタチンが、比較として挙げられる。
【0068】
【表40】

【0069】
固体核磁気共鳴(NMR)
方法論
固体13C NMRスペクトルはTecmag機器により270または360MHzで得られた。約4.7および4.2kHzまたは4.6および4.0kHzにおけるマジック角回転を有する、高出力プロトンデカップリングおよび交差分極で68MHz(13C周波数)データ収集を行い、4.9および4.4kHzで91MHz(13C周波数)データ収集を行った。マジック角は、側波帯を検出することによりKBrのBrシグナルを用いて調整した。試料は7mmDotyローター中にパックし、各実験に用いた。化学シフトが定まらないX型以外、化学シフトはアダマンチンを外部基準とした。
【0070】
表3にV、VI、VII、VIIIおよびX結晶型アトロバスタチンの固体NMRスペクトルを示す。
【0071】
【化2】

【0072】
【表41】

【0073】
V、VI、VII、VIIIおよびX型:相対ピーク強度20以上のものをここに示す(4.5、4.6、4.7、または4.9kHzCPMAS)。スペクトルは2つの異なるマジック核回転速度を用いて側波帯の回転を計測することにより得られた。
【0074】
X型:相対ピーク強度20以上のものをここに示す(5.0kHzCPMAS)。
【0075】
表4にV、VI、VII、VIIIおよびX型アトロバスタチンに固有の固体NMRピーク、すなわち、±1.0ppm以内のピークを示す。I〜IV型アトロバスタチンを比較として記載する。
【0076】
【表42】

【0077】
ラマン分光法
方法論
ラマンスペクトルはNicolet Magna 860 Fourier 変換赤外分光計用ラマン付属インタフェースを用いて得られた。該付属品は1064nmの励起波長と約0.45Wのネオジム−ドープ イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザー出力を利用する。スペクトルは4cm-1分解能で得られる64または128共付加スキャンを表す。試料は、一部を直径5mmガラス管中に入れ、この管を分光計中に置くことにより、分析用に調製される。分光計は使用の際に、イオウおよびシクロヘキサンで校正(波長)する。
【0078】
表5にV、VI、VII、VIII、XおよびXII型アトロバスタチンのラマンスペクトルを示す。
【0079】
【表43】

【0080】
表6にV、VI、VII、VIII、XおよびXII型アトロバスタチンに固有のラマンピーク、すなわち1種の型のみにおいて±4cm-1で示されるピークを記載する。VIおよびX型に関しては、固有のピーク組合せを表す。I〜IV型アトロバスタチンを比較として記載する。
【0081】
【表44】

【0082】
本発明のV〜XIX結晶型アトロバスタチンは、無水形態並びに水和および溶媒和形態で存在し得る。一般に、水和形態は非水和形態に等価であり、本発明の範囲内に包含される。XIV結晶型は約6モルの水を含有する。好ましくは、XIV型は6モルの水を含有する。V、XおよびXV結晶型アトロバスタチンは約3モルの水を含有する。好ましくは、V、XおよびXV型アトロバスタチンは3モルの水を含有する。
【0083】
VII結晶型は約1.5モルの水を含有する。好ましくは、VII型アトロバスタチンは1.5モルの水を含有する。VIII結晶型は約2モルの水を含有する。好ましくは、VIII型アトロバスタチンは2モルの水を含有する。
【0084】
XVI〜XIX結晶型は溶媒和物として存在し得る。
【0085】
水和および/または溶媒和の程度に関係なく、等しいX線粉末回折グラム、ssNMR、またはラマンスペクトルを有する本発明のアトロバスタチンの結晶型は、本発明の範囲内に包含される。
【0086】
結晶型は一般に、有利な特性を有し得る。多形体、溶媒和物、または水和物は、その結晶構造および特性により定義される。結晶構造はX線データから得られるか、または他のデータから概算される。特性は試験して決定される。化学式および化学構造は特定の多形性または結晶性水和物形態の結晶構造が記載または示唆されるわけではない。化学式から特定の結晶型を確定することはできず、また化学式の情報から、特定の結晶性固体形態を同定することも、その特性を説明することも不可能である。化合物が3種の状態(固体、液体、および気体)で存在できるのに対し、結晶性固体形態は固体状態でのみ存在する。化合物が一旦溶解または融解すると、結晶性固体形態は破壊され、もはや存在しなくなる(Wells J. I.,Aulton M. E. Pharmaceutics. The “Science of Dosage Form Design".
Reformulation,Aulton M. E. ed.,Churchill Livingstone,1988; 13:237)。
【0087】
本明細書中に記載される新規の結晶型のアトロバスタチンは有利な特性を有する。VII型は良好な化学安定性を有し、これはI型(米国特許5,969,156において開示される)と比較できる。非結晶性形態のアトロバスタチンは化学的に安定ではないため、これは重要な利点であり、貯蔵安定性の向上およびより長い有効期限に言い換えることができる。VII型はアセトン/水から製造でき、これに対しI型はより毒性の高いメタノール/
水系から製造される。VII型はセスキ水和物であり含水率がより低く、つまりVII型の単位重量はより多くのアトロバスタチン分子を含有し、つまりより高い有効性を有する。
【0088】
工業規模で良い錠剤を形成する材料の能力は、Hiestand H. および Smith D.,Indices
of Tableting Performance, Powder Technology,1984; 38: 145−159に記載されるタブレッティング・インデックスのような、種々の薬剤の物理的性質によって決定される。これらのインデックスは優れた錠剤成型特性を有するアトロバスタチンカルシウムの型を同定するのに用いることができる。このようなインデックスの1種として、脆性破壊インデックス(BFI)があり、これは脆性を反映し、0(良好な、低い脆性)〜1(不良の、高い脆性)の範囲で定められる。例えば、VII型はBFI値0.09であり、これに対してI型はBFI値0.81である。即ち、VII型はI型よりも壊れにくい。この低い脆性は、錠剤の製造がより容易であることを示している。
【0089】
またVIII型はI型よりも含水率が低く(2水和物 対 3水和物)、従ってVIII型1グラムは、より多くのアトロバスタチン分子を含有する。
【0090】
X型は毒性のより低いイソプロパノール(IPA):水系から製造することができ、従って毒性のより高いメタノール:水系を用いずに済む点において有利である。
【0091】
XII型は最も高い融点(210.6)を有する。高融点は高温における安定性と相関するため、つまりこの型は融点近くの温度で最も安定である。高融点型は、高温を伴う製造方法が用いられる場合に有利と成り得る。またXII型は、毒性のより低いテトラヒドロフラン(THF)水系から製造される。
【0092】
XIV型は毒性のより低いTHF/水系を用いて製造される。
【0093】
本発明は、V〜XIX結晶型アトロバスタチンを生産する条件下で、溶媒中の溶液からアトロバスタチンを結晶化することを包含する、V〜XIX結晶型アトロバスタチンの製造方法を提供する。
【0094】
V〜XIX結晶型アトロバスタチンが形成される明確な条件は、実験的に決定されうるが、実施に適することが分かっているいくつかの方法でのみ得ることが可能である。
【0095】
本発明の化合物は、多種多様な経口および非経口の剤形に製造し、投与できる。即ち、本発明の化合物は注射により、つまり静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹膜内に投与できる。また、本発明の化合物は吸入により、例えば鼻腔内に投与できる。更に、本発明の化合物は経皮的に投与できる。以下の剤形が活性成分として、本発明の化合物だけでなく、相当の製薬上許容し得る化合物の塩も含有し得ることは当業者には明らかであろう。
【0096】
本発明の化合物から医薬組成物を製造するには、製薬上許容し得る担体は固体であっても液体であってもよい。固形製剤とは、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤を包含する。固体担体は、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化物質としても作用し得る、1またはそれ以上の物質であり得る。
【0097】
粉剤においては、担体は、微細に分割された活性成分との混合物中の微細分割固体として存在する。
【0098】
錠剤においては、活性成分は適当な割合で、必須の結合特性を有する担体と混合され、所望の形および大きさに成形される。
【0099】
粉剤および錠剤は好ましくは、2または10〜約70%の活性成分を含有する。適当な担体は炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等である。「製造」という用語は活性化合物を、カプセル中で活性成分が(他の担体と共に、または他の担体は含まずに)担体により包囲されているような、すなわち担体と関連しているような該カプセルを与える担体としてのカプセル化物質と処方することを含むことを意味する。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も包含される。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸薬、カシェ剤およびトローチ剤は経口投与に適する固体剤形として用いられる。
【0100】
坐剤を製造するには、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂混合物のような低融点ワックスを最初に融解し攪拌することにより、活性成分をそこに均一に分散させる。次いで、融解した均一な混合物を適当な大きさの型に注ぎ、冷ましてその結果凝固させる。
【0101】
液状製剤は、液剤、懸濁剤、保持性浣腸剤および乳剤、例えば水またはプロピレングリコール水溶液を包含する。非経口注入には、液体製剤はポリエチレングリコール水溶液中の液剤として処方できる。
【0102】
経口使用に適する水溶性液剤は、活性成分を水中に溶解し、所望により適当な着色剤、矯味矯臭剤、安定剤および増粘剤を加えることにより製造できる。
【0103】
経口使用に適する水溶性懸濁剤は、微細に分割した活性成分を、天然または合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他のよく知られた懸濁化剤のような粘性物質と共に水中に分散させることにより製造できる。
【0104】
また、使用直前に経口投与用の液状製剤に変換される固形製剤も包含される。このような液状形態は液剤、懸濁剤、および乳剤を包含する。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、矯味矯臭剤、安定材、溶媒、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有してもよい。
【0105】
医薬製剤は好ましくは単位剤形である。このような形態において、製剤は適量の活性成分を含有する単位量に細分される。単位剤形は包装製剤、分離量の製剤を含有した小包、例えば包装錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル入りの粉剤であってよい。また、単位剤形はカプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはトローチ剤それ自体であっても、または、適当な数のこれらの任意のものを、包装形態にした剤形であってもよい。
【0106】
単位量製剤中の活性成分の量は、特定の用途および活性成分の効力に応じて、0.5mg〜100mg、好ましくは2.5mg〜80mgで変化させるか、または調整してよい。また所望により、組成物は他の適合可能な治療剤を含有し得る。
【0107】
脂質低下剤および/またはコレステロール低下剤、並びに骨粗しょう症およびアルツハイマー病を処置するための薬剤としての治療上の使用においては、本発明の医薬方法において利用されるV〜XIX結晶型アトロバスタチンを初回量1日当り、約2.5mg〜約80mgで投与する。1日量は約2.5mg〜約20mgの範囲が好ましい。しかしながら、
投与量は患者の要求、治療する病状の重症度、および用いられる化合物に応じて変化してよい。特定の状況に適する投与量の決定は、当業者に任せられる。一般に、化合物の至適投与量よりも少ない、より少量の投与量で治療を開始する。その後に、その状況における至適効果が得られるまで、投与量を少量ずつ増加させる。便宜上、1日当りの全投与量は所望により、1日の内で数回に分割して投与してもよい。
【0108】
以下の非制限的実施例により、本発明者による、本発明の化合物の好ましい製造方法を説明する。
【実施例1】
【0109】
[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(V〜XIX型アトロバスタチン)
V型アトロバスタチン
方法A
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)を、アセトニトリル/水(9:1)の混合物中にスラリーにして、V結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
I結晶型アトロバスタチンカルシウム(米国特許5,969,156)を、60℃で一晩、アセトニトリル/水(9:1)の混合物中にスラリーにして、濾過し、風乾してV結晶型アトロバスタチンを得た。
方法C
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)を、アセトニトリル/水(9:1)の蒸気下で加圧し、V結晶型アトロバスタチンを得た。
方法D
アセトニトリルを、テトラヒドロフラン/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液に加え、冷却してV結晶型アトロバスタチンを得た。
方法E
アセトニトリルを、ジメチルホルムアミド/水中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液に加え、高速蒸発してV結晶型アトロバスタチンを得た。
方法F
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)をアセトニトリル/水(9:1)の蒸気中に拡散して、V結晶型アトロバスタチンを得た。
V結晶型アトロバスタチン、mp 171.4℃、3水和物
カール・フィッシャー 4.88%(水 3モル)
【0110】
VI型アトロバスタチン
方法A
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)を、ジメチルホルムアミド/水(9:1)を含む蒸気瓶中に20日間入れ、VI結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)のジメチルホルムアミド/水の溶液を高速蒸発し、VI結晶型アトロバスタチンを得た。
方法C
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)のジメチルホルムアミド/水(飽和)溶液を高速蒸発し、VI結晶型の結晶種を入れ、VI結晶型アトロバスタチンを得た。
VI結晶型アトロバスタチン、mp 145.9℃
【0111】
VII型アトロバスタチン
方法A
アセトン/水(1:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液(5.8mg/mL)を一晩攪拌した。固体が形成され、これを濾過してVII結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
アセトン/水(1:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液を50℃で蒸発し、VII結晶型アトロバスタチンを得た。
方法C
アセトン/水(1:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の飽和水溶液にVII結晶型アトロバスタチンの結晶種を入れ、VII結晶型
アトロバスタチンを得た。
方法D
アセトン/水(1:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の飽和水溶液を高速乾燥し、これにVII結晶型アトロバスタチンの結晶種を入れ、VII結晶型アトロバスタチンを得た。
VII結晶型アトロバスタチン、mp 195.9℃、1.5水和物
カール・フィッシャー 2.34%(水 1.5モル)
【0112】
VIII型アトロバスタチン
方法A
ジメチルホルムアミド/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の飽和溶液にVIII結晶型の結晶種を入れ、蒸発してVIII結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
ジメチルホルムアミド/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液を高速蒸発して、VIII結晶型アトロバスタチンを得た。
VIII結晶型アトロバスタチン、mp 151℃、2水和物
カール・フィッシャー 2.98%(水 2モル)
【0113】
IX型アトロバスタチン
方法A
アセトン/水(6:4)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液(3.4mg/mL)をロータリーエバポレーターで蒸発し、IX結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
アセトン/水(6:4)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液を濾過し、IX結晶型の結晶種を入れ、ロータリーエバポレーターで蒸発し、IX結晶型アトロバスタチンを得た。
方法C
アセトン/水(6:4)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液を0.5時間攪拌し、濾過し、ロータリーエバポレーターで蒸発して溶液を濃縮し、真空オーブン中で乾燥してIX結晶型アトロバスタチンを得た。
【0114】
X型アトロバスタチン
方法A
イソプロパノール/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)のスラリーを数日間攪拌し、濾過し、風乾してX結晶型アトロバスタチンを得た。
方法B
イソプロパノール/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)のスラリーを5日間攪拌し、濾過し、風乾してX結晶型アトロバスタチンを得た。
方法C
イソプロパノール/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の飽和溶液を2日間攪拌し、濾過し、風乾してX結晶型アトロバスタチンを得た。
X結晶型アトロバスタチン、mp 180.1℃、3水和物
カール・フィッシャー 5.5%(水 3.5モル)
【0115】
XI型アトロバスタチン
アセトニトリル/水(9:1)中のアモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号)の溶液を濾過し、ゆっくりと蒸発するのを待ち、XI結晶型アトロバスタチンを得た。
【0116】
XII型アトロバスタチン
I結晶型アトロバスタチンカルシウム(米国特許5,969,156)を、90℃で5日間テトラヒドロフラン/水(2:8)中にスラリーにし、濾過し、風乾してXII結晶型アトロバスタチンを得た。
XII結晶型アトロバスタチン、mp 210.6℃
【0117】
XIII型アトロバスタチン
I結晶型アトロバスタチンカルシウム(米国特許5,969,156)を、10mLの2:
8 水:メタノールに加え、バイアルの底に固体の相ができるよう静置した。スラリーを約70℃で5日間加熱した。上清を除去し、固体を風乾してXIII結晶型アトロバスタチンを得た。
【0118】
XIV型アトロバスタチン
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号) 1gを、イソプロピルアルコール 45mL/水 5mL(9:1)中に周囲温度で3週間スラリーにした。混合物を濾過し、周囲温度で乾燥してXIV結晶型アトロバスタチンを得た。
【0119】
示差走査熱量測定(DSC)により、約60℃(ピーク)で僅かに脱溶媒化現象が、次いで約150℃で融解が観測される。燃焼分析により、化合物が6水和物であることが示される。サーモグラフ赤外分光法(TG−1R)により、化合物が水を含有することが示される。
カール・フィッシャーにより、化合物は水 5.8%を含有することが示される。
【0120】
XV型アトロバスタチン
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号) 1gをアセトニトリル 45mL/水 5mL(9:1)中に周囲温度で3週間スラリーにした。混合物を濾過し、周囲温度で乾燥してXV結晶型アトロバスタチンを得た。DSCにより、約78℃(ピーク)で僅かに脱溶媒化現象が、次いで約165℃で融解が観測される。燃焼分析により、化合物は3水和物であることが示される。TG−1Rにより、化合物が水を含有することが示される。
【0121】
XVI型アトロバスタチン
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号) 1gを、アセトニトリル/水(9:1)中に周囲温度で約1日間スラリーにした。混合物を濾過し、周囲温度で乾燥してXVI結晶型アトロバスタチンを得た。DSCにより、72℃のピーク温度でブロードの吸熱が、また164℃で吸熱の開始が観測される。サーモグラフ分析(TGA)による重量損失特性では、30℃〜160℃で約7%の全重量損失が観測される。TGAおよびカール・フィッシャー分析(結果、水 7.1%を含有)と燃焼分析結果により、化合物は4水和物/アセトニトリル溶媒和物であることが示される。
【0122】
XVII型アトロバスタチン
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号) 0.5gを、アセトニトリル 25mLを含有するジメチルホルムアミド(DMF)/水(9:1)の5mL中に室温で、約2日間スラリーにした。混合物を濾過し、周囲温度で乾燥してXVII結晶型アトロバスタチンを得た。DSCにより、化合物が溶媒和物であったことを示す多重ブロードの吸熱が観測された。
【0123】
XVIII型アトロバスタチン
XVI結晶型アトロバスタチン 0.5gを、室温で約1日間乾燥し、XVIII結晶型アトロバスタチンを得た。DSCにより、低温でのブロードの吸熱が観測され、化合物が溶媒和物であったことが示された。カール・フィッシャー分析により、化合物が水 4.4%を含有することが示された。
【0124】
XIX型アトロバスタチン
アモルファスアトロバスタチンカルシウム(米国特許5,273,995号) 0.4gを、メチルエチルケトン 4mL中に室温で、約7日間スラリーにした。混合物を濾過し、周囲温度で乾燥してXIX結晶型アトロバスタチンを得た。DSCにより、約50℃(ピーク)で僅かに脱溶媒化現象が、次いで約125℃で融解が観測された。TGA分析により、低温での脱溶媒化が観測され、化合物が溶媒和物であったことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】シマズ XRD−6000回折計で行ったV型アトロバスタチンの回折グラム。
【図2】シマズ XRD−6000回折計で行ったVI型アトロバスタチンの回折グラム。
【図3】シマズ XRD−6000回折計で行ったVII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図4】シマズ XRD−6000回折計で行ったVIII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図5】シマズ XRD−6000回折計で行ったIX型アトロバスタチンの回折グラム。
【図6】シマズ XRD−6000回折計で行ったX型アトロバスタチンの回折グラム。
【図7】シマズ XRD−6000回折計で行ったXI型アトロバスタチンの回折グラム。
【図8】シマズ XRD−6000回折計で行ったXII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図9】シマズ XRD−6000回折計で行ったXIII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図10】Burker D5000回折計で行ったXIV型アトロバスタチンの回折グラム。
【図11】Burker D5000回折計で行ったXV型アトロバスタチンの回折グラム。
【図12】Burker D5000回折計で行ったXVI型アトロバスタチンの回折グラム。
【図13】Burker D5000回折計で行ったXVII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図14】Burker D5000回折計で行ったXVIII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図15】Burker D5000回折計で行ったXIX型アトロバスタチンの回折グラム。
【図16】Inel XRG−3000回折計で行ったV型アトロバスタチンの回折グラム。
【図17】Inel XRG−3000回折計で行ったVI型アトロバスタチンの回折グラム。
【図18】Inel XRG−3000回折計で行ったVII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図19】Inel XRG−3000回折計で行ったVIII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図20】Inel XRG−3000回折計で行ったIX型アトロバスタチンの回折グラム。
【図21】Inel XRG−3000回折計で行ったX型アトロバスタチンの回折グラム。
【図22】Inel XRG−3000回折計で行ったXII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図23】Inel XRG−3000回折計で行ったXVI型アトロバスタチンの回折グラム。
【図24】Inel XRG−3000回折計で行ったXVIII型アトロバスタチンの回折グラム。
【図25】アスタリスクにより識別されるスピン側波帯を用いた、V型アトロバスタチンの固体13C核磁気共鳴スペクトル。
【図26】アスタリスクにより識別されるスピン側波帯を用いた、VI型アトロバスタチンの固体13C核磁気共鳴スペクトル。
【図27】アスタリスクにより識別されるスピン側波帯を用いた、VII型アトロバスタチンの固体13C核磁気共鳴スペクトル。
【図28】アスタリスクにより識別されるスピン側波帯を用いた、VIII型アトロバスタチンの固体13C核磁気共鳴スペクトル。
【図29】X型アトロバスタチンの固体13C核磁気共鳴スペクトル。
【図30】V型のラマンスペクトル。
【図31】VI型のラマンスペクトル。
【図32】VII型のラマンスペクトル。
【図33】VIII型のラマンスペクトル。
【図34】X型のラマンスペクトル。
【図35】XII型のラマンスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα放射を用いて測定される以下の2θ値:4.7、5.2、5.8、6.9、7.9、9.2、9.5、10.3(ブロード)、11.8、16.1、16.9、19.1、19.8、21.4、22.3(ブロード)、23.7(ブロード)、24.4、および28.7を含むX線粉末回折を有する、X結晶型アトロバスタチンまたはその水和物。
【請求項2】
CuKα放射を用いて測定される以下の2θ値:5.4、7.7、8.0、8.6、8.9、9.9、10.4(ブロード)、12.5、13.9(ブロード)、16.2、17.8、19.4、20.8、21.7、22.4−22.6(ブロード)、24.3、25.5、26.2、および27.1を含むX線粉末回折を有する、XII結晶型アトロバスタチンまたはその水和物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2007−182460(P2007−182460A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103465(P2007−103465)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【分割の表示】特願2003−510638(P2003−510638)の分割
【原出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】