結晶形アジスロマイシン
【課題】新規な結晶形アジスロマイシン、及び感染症の治療に有用な抗生物質に関する。
【解決手段】アジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【解決手段】アジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶形アジスロマイシン(Azithromycin)に関する。アジスロマイシンは、市販されており、広範な細菌感染の治療に効果的な抗生物質である。本発明による結晶形アジスロマイシンは、同様にヒトを含む哺乳動物だけなく、魚類や鳥類にも抗菌剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシンは、以下の構造式で表される:
【化1】
【0003】
アジスロマイシンが、米国特許第4,517,359号及び第4,474,768号で記載且つ請求されている。アジスロマイシンは、また9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリトマイシンAとしても知られている。
【0004】
アジスロマイシンを直接的又は間接的にカバーしている他の特許又は特許出願に、アジスロマイシン二水和物を請求しているヨーロッパ特許出願第EP298,650号;トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)種の菌株の処理方法を請求している米国特許第4,963,531号;苦みを減少させたチュアブル錠又は懸濁液医薬組成物を請求している米国特許第5,633,006号;アジスロマイシンの調製に有用な中間体を請求している米国特許第5.686,587号;アジスロマイシンの投与に関連した「食物効果」を減少させる経口投与剤形を請求している米国特許第5,605,889号;アジスロマイシンを含有する制御された剤形を請求している米国特許第6,068,859号;アジスロマイシンを二価金属又は三価金属と組み合わせて含有する組成物を請求している米国特許第5,498,699号;眼感染の治療方法を請求しているEP925,789;アジスロマイシンの水溶性塩に関する中国特許出願CN1123279A;アジスロマイシンソジウムジヒドロジェンホスフェート複塩に関する中国特許出願CN1046945C;アジスロマイシン結晶に関する中国特許出願CN1114960A;アジスロマイシン結晶に関する中国特許出願CN1161971A;アジスロマイシンの水溶性塩の調製方法に関する中国特許出願CN1205338A;アジスロマイシンのエタノール和物に関する国際公開WO00/32203;及びアジスロマイシン一水和物イソプロパノールクラスレートに関するEP984,020などがある。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
【0006】
本発明は、結晶形アジスロマイシンに関する。本明細書で使用される用語「結晶形(形態)」又は「形(形態)」は、特記のない限りは、一種以上の結晶形アジスロマイシンを意味する。
【0007】
特に、本発明は、結晶形が、C形、D形、E形、F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形、P形、Q形及びR形(本明細書で定義される)から選ばれるものである結晶形アジスロマイシンに関する。F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形及びP形は、ファミリーIアジスロマイシンに属し、セル寸法がa=16.3±0.3Å、b=16.2±0.3Å、c=18.4±0.3Å及びベータ=109±2°である単斜晶系P21空間群に属する。C形、D形、E形及びR形は、ファミリーIIアジスロマイシンに属し、セル寸法がa=8.9±0.4Å、b=12.3±0.5Å及びc=45.8±0.5Åである斜方晶系P212121空間群に属する。Q形は、ファミリーI及びファミリーIIとは異なる。
【0008】
F形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・0.5C2H5OHで表される、アジスロマイシン一水和物半エタノール溶媒和物である。F形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%とエタノール1〜4重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。F形の13CssNMR(固形核磁気共鳴)スペクトルは、約179±1ppm(179.5±0.2ppm及び178.6±0.2ppm)で2つの化学シフトピークを有し、6.4〜11.0ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有し、58.0±0.5ppm及び17.2±0.5ppmにエタノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0009】
また、本発明は、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンに関する。
【0010】
さらに、本発明は、アジスロマイシンをエタノールで処理して40〜70℃で完全に溶解し、エタノールを減少させて冷却するか、水を添加して冷却することにより結晶化させることにより、F形アジスロマイシンを調製する方法に関する。また、本発明は、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンの製造方法をも含む。
【0011】
G形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・1.5H2Oで表される、アジスロマイシンセスキ水和物である。G形は、さらに粉末試料において水2.5〜6重量%と有機溶媒(単一又は複数)1重量%未満とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。G形の13CssNMRスペクトル約179±1ppm(179.5±0.2ppm;0.3ppm未満での開裂が存在してもよい)で一つの化学シフトピークを有し、6.3〜11.0ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有する。
【0012】
また、本発明は、実質的に純粋なG形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないG形アジスロマイシンに関する。
【0013】
さらに、本発明は、アジスロマイシンを、メタノールと水との混合物又はアセトンと水との混合物で処理して40〜60℃で完全に溶解し、冷却して結晶化させることにより、実質的に純粋なG形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないG形アジスロマイシンを調製する方法に関する。
【0014】
H形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C3H8O2で表されるアジスロマイシン一水和物半−1,2−プロパンジオール溶媒和物である。
【0015】
J形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・0.5C3H7OHで表される、アジスロマイシン一水和物半−n−プロパノール溶媒和物である。J形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%と1−プロパノール1〜5重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。J形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(179.6±0.2ppm及び178.4±0.2ppm)で2つの化学シフトピークを有し、6.6〜11.7ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有し、25.2±0.4ppmにn−プロパノールのピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0016】
さらに、本発明は、アジスロマイシンをn−プロパノールで処理して25〜55℃で完全に溶解し、水を添加して冷却することにより結晶化させることにより、J形を調製する方法に関する。
【0017】
M形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C3H7OHで表される、アジスロマイシン一水和物半−イソプロパノール溶媒和物である。M形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%と2−プロパノール1〜4重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。M形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(179.6±0.2ppm)で一つの化学シフトピークを有し、41.9±0.2ppmにピークを有し、6.9〜16.4ppmに一組のピーク(6つのピークからなる)を有し、26.0±0.4ppmにイソプロパノールのピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0018】
また、本発明は、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンに関する。
【0019】
さらに、本発明は、アジスロマイシンを、イソプロパノールで処理して40〜60℃で完全に溶解し、イソプロパノールの量を減少させた後に冷却するか、冷却してから水を添加することにより結晶化させることにより、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンを調製する方法に関する。
【0020】
N形アジスロマイシンは、ファミリーIの同形の混合物である。この混合物は、種々の割合(%)で同形、F形、G形、H形、J形、M形等並びに種々の量の水及び有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、ペンタノール等を含有してもよい。水の重量%は1〜5%の範囲であることができ、有機溶媒の総重量%は2〜5%(各溶媒含量が0.5〜4%)であることができる。N形の試料は、ファミリーIに属するものの全ての特性ピークを種々の割合で示す。N形は、ファミリーI同形の「混晶」又は「結晶性固溶体」として特徴付けられることができる。
【0021】
N形は、ファミリーIにおける同形の組み合わせとして化学シフトを示す。ピークは、N形結晶性固溶体に含有される可変割合の同形の混合のため、化学シフトppmにおいて±0.2ppm内で異なり、また相対強度及び幅において異なることがある。
【0022】
P形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C5H12Oで表されるアジスロマイシン一水和物半−n−ペンタノール溶媒和物である。
【0023】
Q形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C4H8Oで表されるアジスロマイシン一水和物半−テトラヒドロフラン溶媒和物である。
【0024】
R形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C5H12Oで表されるアジスロマイシン一水和物モノ−メチルt−ブチルエーテル溶媒和物である。
【0025】
D形アジスロマイシンは、その単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・C6H12で表される、アジスロマイシン一水和物モノシクロヘキサン溶媒和物である。D形は、さらに粉末試料において水2〜6重量%とシクロヘキサン3〜12重量%とを含有し、表9で定義するような代表的な粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。D形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(178.1±0.2ppm)で一つの化学シフトピークを有し、103.9±0.2ppm、95.1±0.2ppm、84.2±0.2ppmにピークを有し、8.4〜11ppmに一組のピーク(3つのピークからなる)を有する。
【0026】
さらに、本発明は、アジスロマイシン二水和物をシクロヘキサンによりスラリー化することにより、D形を調製する方法に関する。
【0027】
E形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C4H8Oで表されるアジスロマイシン一水和物モノ−テトラヒドロフラン溶媒和物である。
【0028】
さらに、本発明は、非晶質アジスロマイシンに関し、さらにアジスロマイシン結晶格子から水及び/又は溶媒を除去することを含む、非晶質アジスロマイシンの調製方法に関する。非晶質アジスロマイシンについてのX線回折粉末パターンは、シャープな2θピークを示さないが、2つのブロードな丸いピークを有する。第一のピークは、4°〜13°で生じる。第二ピークは、13°〜25°で生じる。
【0029】
また、本発明は、治療に有効な量の上記した結晶化合物又は非晶質アジスロマイシンと、薬学的に許容される担体とを含む、哺乳動物、魚又は鳥における細菌感染又は原生動物感染の治療のための医薬組成物に関する。
【0030】
また、本発明は、治療に有効な量の上記した結晶化合物又は非晶質アジスロマイシンを哺乳動物、魚又は鳥に投与することを含む、哺乳動物、魚又は鳥における細菌感染又は原生動物感染を治療するための方法に関する。
【0031】
また、本発明は、適当な溶媒にアジスロマイシンをスラリー化するか、加熱した有機溶媒又は有機溶媒/水溶液にアジスロマイシンを溶解し、溶媒の容量を減少させて溶液を冷却して結晶形アジスロマイシンを沈殿させるか、又はアジスロマイシンを溶媒又は溶媒混合物に溶解し、水をこの溶液に添加して結晶形アジスロマイシンを沈殿させることを含む、結晶形アジスロマイシンの調製方法に関する。非晶質アジスロマイシンは、結晶形アジスロマイシンを真空中で加熱することにより調製する。
【0032】
本明細書で使用される用語「治療」とは、特記のない限りは、細菌感染又は原生動物感染の症状を治したり、減少させるか、又はこのような感染の進行を遅らせることを含む、本発明の方法により提供されるような細菌感染又は原生動物感染の治療又は予防を意味する。用語「治療する」は、上記用語「治療」に準じて定義される。
【0033】
所定の結晶形アジスロマイシンに関して使用される用語「実質的に含まない」とは、存在する所定の結晶形の20%(重量基準)未満、より好ましくは存在する所定の結晶形の10%(重量基準)未満、より好ましくは存在する所定の結晶形の5%(重量基準)未満、最も好ましくは存在する所定の結晶形の1%(重量基準)未満であることを意味する。例えば、アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンとは、アジスロマイシン二水和物の含有量が20%(重量基準)以下、より好ましくは10%(重量基準)以下、最も好ましくは1%(重量基準)であるF形を意味する。
【0034】
所定の結晶形アジスロマイシンに関して使用される用語「実質的に純粋な」とは、所定の結晶形態が、別の多形又は同形結晶形アジスロマイシン等の残留成分の含量が20%(重量基準)未満であることを意味する。実質的に純粋な形態のアジスロマイシンにおける別の多形又は同形結晶形アジスロマイシンの含量が、10%(重量基準)未満、より好ましくは5%(重量基準)未満、最も好ましくは1%(重量基準)未満であることが、好ましい。
【0035】
バルク結晶形アジスロマイシン又は結晶形アジスロマイシン含有組成物について用いられる用語「実質的にアジスロマイシン二水和物を含まない」とは、結晶形アジスロマイシンにおけるアジスロマイシン二水和物の含量が、約5%(重量基準)未満、より好ましくは約3%(重量基準)未満、最も好ましくは1%(重量基準)未満であることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される用語「細菌感染」又は「原生動物感染」とは、特記のない限りは、本発明の化合物等の抗生物質を投与することにより治療又は予防できる、哺乳動物、魚及び鳥において生じる細菌感染及び原生動物感染並びにこのような感染により生じる疾病だけでなく、細菌感染及び原生動物感染に関連した障害をも含む。このような細菌感染及び原生動物感染並びに障害には、以下のもの等があるが、これらには限定されない:肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、モラキセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus spp.)による感染に関連した肺炎、中耳炎、静脈洞炎、気管支炎、扁桃炎及び乳様突起炎;ストレプトコッカス・ピオゲンス(Streptococcus pyogenes)、C群及びG群のレンサ球菌(Streptococci)、クロストリジウム・ジプテリアエ(Clostridium diptheriae)又はアクチノバシラス・ヘモリティカム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関連した咽頭炎、リウマチ熱若しくは糸球体腎炎;肺炎マイコプラズマ菌(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)若しくは肺炎クラミジア菌(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連した気道感染症;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌(coagulase−positive staphylococci)(即ち、エス・エピデルミディス(S.epidermidis)、エス・ヘモリティカス(S.hemolyticus)等)、ストレプトコッカス・ピオゲンス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、レンサ球菌C〜F群(微小なコロニーレンサ球菌)、ビリダンス群レンサ球菌、コリネバクテリウム・マイニュウチシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)又はバルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)による感染に関連した非併発性皮膚及び軟組織感染症、膿瘍及び骨髄炎、及び産じゅく熱;スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)又は腸球菌種(Enterococcus spp.)による感染に関連した非併発性急性尿道感染症;クラミジア・トラコーマティス(Chlamydia trachomatis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、トレポネーマ・パリデュム(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリティカム(Ureaplasma urealyticum)又は淋菌(Neiserria gonorrheae)による感染に関連した尿道炎及び子宮頚管炎及び性的伝染病;黄色ブドウ球菌(S.aureus)(食中毒及び中毒性ショック症候群)又はA群、B群及びC群のレンサ球菌による感染に関連した毒素疾患;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連した潰瘍;回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)による感染に関連した全身性発熱症候群;ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染に関連したライム病;クラミジア・トラコーマティス(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲンス(S.pyogenes)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(H.influenzae)又はリステリア種(Listeria spp.)による感染に関連した結膜炎、角膜炎及び涙嚢炎;マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)又はマイコバクテリウム・イントラセルラレ(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連した散在性マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(MAC)疾患;カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)による感染に関連した胃腸炎;クリプトスポリジウム種(Cryptosporidium spp.)による感染に関連した腸プロトゾア(intestinal protozoa);ビリダンス群レンサ球菌(viridans streptococci)による感染に関連した歯原性感染症(odontogenic infection);百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連した持続性咳;クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)又はバクテロイデス種(Bacteroides spp.)による感染に関連したガス壊疽;並びにヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)又は肺炎クラミジア菌(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連したアテローム硬化症。アテローム硬化症及びマラリアも含まれる。動物における治療されうる又は予防されうる、細菌感染症及び原生動物感染症並びにこのような感染症に関連した障害は下記のものも含まれるが、これらには限定されない:ピー・ヘモリティカ(P.haem.)、ピー・ムルトシダ(P.multocida)、マイコプラズマ・ボヴィス(Mycoplasma bovis)又はボルデテラ種(Bordetella spp.)による感染に関連したウシ呼吸器疾患;大腸菌(E.coli)又は原生動物(即ち、コクシジア(coccidia)、クリプトスポリジア(cryptosporidia)等)による感染に関連したウシ腸疾患;黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)、ストレプトコッカス・ウベリス(Strep.uberis)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Strep.agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクチアエ(Strep.dysgalactiae)、クレブシェラ種(Klebsiella spp.)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)又は腸球菌種(Enterococcus spp.)による感染に関連した乳牛乳腺炎;エイ・プロイロ(A.pleuro.)、ピー・ムルトシダ(P.multocida)又はマイコプラズマ種(Mycoplasma spp.)による感染に関連したブタ呼吸器疾患;大腸菌(E.coli)、ロウソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、サルモネラ又はセルプリナ・ヒョーディスインテリアエ(Serpulina hyodyisinteriae)による感染に関連したブタ腸疾患;フソバクテリウム種(Fusobacterium spp.)による感染に関連したウシ腐蹄症;大腸菌(E.coli)による感染に関連したウシ子宮炎;フソバクテリウム・ネクロホルム(Fusobacterium necrophorum)又はバクテロイデス・ノドサス(Bacteroides nodosus)による感染に関連したウシ有毛いぼ;モラキセラ・ボヴィス(Moraxella bovis)による感染に関連したウシ伝染性角結膜炎;原生動物(即ち、ネオスポリウム(neosporium))による感染に関連したウシ早産;大腸菌(E.coli)による感染に関連したイヌ及びネコにおける尿道感染症;スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staph.epidermidis)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staph.intermedius)、コアグラーゼ陰性レンサ球菌又はピー・ムルトシダ(P.multocida)による感染に関連したイヌ及びネコにおける皮膚及び軟組織感染症;並びにアルカリゲネス種(Alcaligenes spp.)、バクテロイデス種(Bacteroides spp.)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)、エンテロバクター種(Enterobacter spp.)、オイバクテリウム(Eubacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)又はプレボテラ(Prevotella)による感染に関連したイヌ及びネコにおける歯又は口内感染症。本発明の方法によって治療又は予防されうる、他の細菌感染症及び原生動物感染症並びにこのような感染症に関連した障害は、J.P.Sanford等,“The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy(サンフォードによる抗菌療法の指針”,第26版(Antimicrobial Therapy,Inc.,1996)に記載されている。
【0037】
また、本発明は、一つ以上の原子が、通常天然で見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられた同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に含有させることのできる同位体としては、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素及び塩素、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、18O及び17Oなどがある。このような放射性同位体標識化合物及び安定な同位体標識化合物は、研究又は診断ツールとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
アジスロマイシンは、異なる結晶形態で存在することが見いだされた。二水和物であるA形、非化学量論的水和物であるB形が、それぞれヨーロッパ特許出願第EP298650号及び米国特許第4,512,359号に開示されている。16の他の形態、すなわち、C形、D形、E形、F形、G形、H形、I形、J形、K形、L形、M形、N形、O形、P形、Q形及びR形が見いだされた。これらの形態は、アジスロマイシン遊離塩基の水和物又は水和物/溶媒和物である。L形及びK形は、高温で検出されるA形の準安定低級水和物形態である。A形、C形、D形、E形、F形、G形、H形、J形及びO形の結晶構造が解明された。これらの結晶形の構造のデータを、以下に示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0039】
これらの16個の結晶形態の間で、2つの同形ファミリーがある。ファミリーIには、F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形及びP形などがある。ファミリーIIには、C形、D形、E形及びR形などがある。Q形は、ファミリーI及びIIとは異なる。ファミリー内の形態は、セルパラメータがわずかに異なる同じ空間群で結晶化する同形であり、化学的に関連しているが元素組成が異なる構造を有する。この場合、同形間の化学組成の差異は、異なる水/溶媒分子の含有から生じる。その結果、同形は、類似しているが同一ではないX線回折パターン及び固形NMRスペクトル(ssNMR)を示す。他の手法、例えば、近赤外分光分析法(NIR)、示差走査熱量法(DSC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、熱重量分析(TGA)又は熱重量分析/赤外分光分析(TG−IR)、Karl Fischer水分析(KF)及び分子モデル化/可視化により、同形の追試同定のためのデータが得られる。脱水/脱溶媒和温度を、DSCにより、加熱速度5℃/分の条件で求めた。
【0040】
C形:この結晶形態は、単結晶構造(表2)−アジスロマイシンの一水和物から同定した。C形は、空間群P212121を有し、且つD形及びE形と同様なセルパラメータを有しているので、ファミリーII同形に属している。その計算された粉末パターンは、D形及びE形と類似している。
【0041】
D形:D形は、シクロヘキサンから結晶化した。D形の単結晶構造は、アジスロマイシンの一水和物/モノシクロヘキサン溶媒和物の化学量論組成を示す(表3)。シクロヘキサン分子は、結晶格子において無秩序となることが分かった。単結晶データから得たD形の水含量及びシクロヘキサン含量の計算値は、それぞれ2.1%及び9.9%である。D形の粉末パターン及び計算による粉末パターンの両方は、C形及びE形のものと類似している。D形の粉末試料は、30〜300℃の5℃/分でのDSC分析において、開始温度約87℃で脱溶媒和/脱水吸熱を示し、200〜280℃でブロードな吸熱(分解)を示した。
【0042】
D形は、アジスロマイシンをシクロヘキサンに2〜4日間スラリー化することにより調製する。固形のD形アジスロマイシンを濾取し、乾燥する。
【0043】
E形:E形を、THF/水媒体から集めた単結晶として得た。E形は、単結晶分析したところ、一水和物及びモノ−THF溶媒和物である(表4)。この単結晶構造により、計算によるPXRDパターンは、C形及びD形のものと類似しており、ファミリーII同形である。
【0044】
E形は、アジスロマイシンをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解することにより調製する。水蒸気を時間をかけて飽和アジスロマイシンTHF溶液に拡散することにより、E形結晶が生じる。
【0045】
F形:F形の単結晶は、モノ水和物/半エタノール和物として、2つのアジスロマイシン、2つの水及び1つのエタノールを含有する非対称単位を有する単斜晶系空間群P21で結晶化した(表5)。F形は、同形であり、全てのファミリーIアジスロマイシン結晶形を形成する。この形態の計算されたPXRDパターンは、他のファミリーI同形のものと類似している。理論水含量とエタノール含量は、それぞれ2.3%及び2.9%である。粉末試料は、110〜125℃の開始温度で脱水/脱溶媒和吸熱を示す。F形は、アジスロマイシンをエタノール(1〜3容(重量基準))に約50〜70℃の温度で溶解することにより、調製する。完全に溶解したら、溶液を、周囲以下の温度に冷却して沈殿を生じさせる。攪拌しながら1〜2時間真空蒸留することによりエタノールの容積を減少させて、収量を増加させることができる。別法として、約0.1〜2容の水(必要に応じて0〜20℃に冷却)を加え、水の添加後30分以内に固形物を集めることができる。水の添加に先立ち、アジスロマイシンのエタノール溶液を、20℃未満、好ましくは15℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは5℃に冷却することにより、実質的に純粋なF形アジスロマイシンが得られる。固形F形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0046】
G形:G形の単結晶構造は、一つの非対称単位当たりアジスロマイシン2分子と水3分子からなっている(表6)。これは、理論水含量が3.5%である、セスキ水和物に相当する。G形の粉末試料の水含量は、約2.5〜約6%の範囲である。総残留有機溶媒は、結晶化に使用される対応の溶媒の1%未満であり、この値は溶媒和物の理論量よりもはるかに小さい。この形態は、約110〜120℃の開始温度で脱水する。
【0047】
アジスロマイシンを予め混合した有機溶媒(メタノール、アセトン、アセトニトリル、エタノール又はイソプロパノールであることができる)/水混合物(容積比1/1)に添加することにより、 G形を調製できる。この混合物を、攪拌し、高温、例えば、45〜55℃で4〜6時間加熱して溶解させる。周囲温度に冷却する間に沈殿が生じる。この固形G形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0048】
H形:この結晶形は、アジスロマイシン遊離塩基の一水和物/半−プロピレングリコール溶媒和物である(表7)。これを、プロピレングリコールを含有する配合溶液から単離した。H形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形と同形である。
【0049】
アジスロマイシン二水和物をプロピレングリコール6容に溶解することにより、H形アジスロマイシンを調製する。得られたアジスロマイシンのプロピレングリコール溶液に、水を2容添加し、沈殿を生じさせる。スラリーを、24時間攪拌し、固形物を濾過し、周囲温度で空気乾燥してH形結晶を得る。
【0050】
J形:J形は、一水和物/半−n−プロパノール溶媒和物である(表8)。溶媒含量の計算値は、n−プロパノール約3.8%、水約2.3%である。実験データによれば、粉末試料については、n−プロパノール約2.5〜約4.0%、水分約2.5〜約3%である。そのPXRDパターンは、その同形のF形、G形、H形、M形及びN形のものに極めて類似している。F形及びG形のように、粉末試料は、115〜125℃で脱水/脱溶媒和吸熱を示す。
【0051】
アジスロマイシンをn−プロパノール4容に約25〜55℃の温度で溶解することにより、J形を調製する。水約6〜7容を室温で添加し、スラリーを0.5〜2時間連続して攪拌する。固形のJ形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0052】
K形:K形のPXRDパターンから、95℃で3時間アニーリング後、A形アジスロマイシンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物であることが分かった。K形は、A形の低級水和物であり、準安定高温形態である。
【0053】
L形:この形態は、二水和物(A形)を加熱したときのみに観察された。可変温度粉末X線回折(VT−PXRD)実験では、A形を約90℃に加熱すると、新しい粉末X線回折パターンが現れる。L形と称するこの新しい形態は、A形がTGAにより90℃で約2.5重量%を損失するので一水和物への転化に相当することから、A形の低級水和物である。周囲温度に冷却すると、L形は、迅速にA形に戻る。
【0054】
M形:イソプロパノール/水スラリーから単離したM形は、水とイソプロパノールの両方を含有する。そのPXRDパターン及びss−NMRスペクトルは、ファミリーI同形のものに極めて類似しており、M形がファミリーIに属していることが明らかである。公知のファミリーI同形の結晶構造に類似しているので、M形の単結晶構造は、一水和物/半イソプロパノール和物であろう。M形の脱水/脱溶媒和温度は、約115〜125℃である。
【0055】
アジスロマイシンをイソプロパノール(IPA)2〜3容に40〜50℃で溶解することにより、M形を調製できる。この溶液を、15℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは約5℃に冷却し、約5℃の冷水2〜4容を添加して沈殿させる。M形の種結晶を、結晶化の開始に添加してもよい。スラリーを、約5時間未満、好ましくは約3時間未満、より好ましくは約1時間未満、最も好ましくは約30分以下攪拌し、固形物を濾取する。固形物を、イソプロパノールに再スラリー化してもよい。この操作により、アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形が得られる。
【0056】
N形:A形の水/エタノール/イソプロパノールスラリーから単離したN形結晶は、可変量の結晶化溶媒及び水を含有してもよい。その水含量は、約3.4〜約5.3重量%の範囲で異なる。GCヘッドスペースによる分析から、エタノールとイソプロパノールの溶媒含量が可変であることが分かる。N形試料の総溶媒含量は、通常調製及び乾燥条件によって、約5%未満である。N形のPXRDパターンは、ファミリーI同形のF形、G形、H形、J形及びM形のものと類似している。N形の試料の脱水/脱溶媒和吸熱は、よりブロードで且つ110〜130℃で異なっていてよい。
【0057】
アジスロマイシン結晶格子組み込み有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン、アセトニトリル等と水の混合物からアジスロマイシンを再結晶することにより、N形アジスロマイシンを調製できる。この溶媒混合物を45〜60℃に加熱し、アジスロマイシンを加熱した溶媒混合物に、総容積約4容まで添加する。溶解したら、45〜60℃で連続的に攪拌しながら水1〜3容を添加する。N形アジスロマイシンは、白色固形物として沈殿する。スラリーを、攪拌しながら周囲温度まで冷却させる。固形のN形アジスロマイシンを、濾過により単離し、乾燥する。
【0058】
O形:この結晶形態は、単結晶構造データからみて、アジスロマイシン遊離塩基の半水和物半−n−ブタノール溶媒和物である(表8−A)。O形を、逆溶媒の拡散によりアジスロマイシンのn−ブタノール溶液から単離した。O形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形に同形である。
【0059】
アジスロマイシンを、n−ブタノールに完全に溶解する。逆溶媒、例えば、ヘキサン、水、IPE又は他の非溶媒を拡散により添加すると、O形が沈殿する。
【0060】
P形:これは、アジスロマイシン遊離塩基の半水和物半-n−ペンタノール溶媒和物である提案結晶形である。P形は、アジスロマイシンのn−ペンタノール溶液から逆溶媒の拡散により単離できる。P形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形に同形である。
【0061】
P形アジスロマイシンは、以下のようにして調製できる:アジスロマイシンを、n−ペンタノールに完全に溶解させる;逆溶媒、例えば、ヘキサン、水、イソプロピルエーテル(IPE)又は他の非溶媒を拡散添加することにより、P形が沈殿する。
【0062】
Q形:Q形結晶は、独特の粉末X線回折パターンを示す。Q形は、水約4%とTHF約4.5%を含有し、水和物半THF溶媒和物である。主脱水/脱溶媒和温度は、約80〜約110℃である。
【0063】
アジスロマイシン二水和物を、THF6容に溶解し、水2容を添加する。この溶液を、周囲条件で蒸発乾固させてQ形結晶を得る。
【0064】
R形:この結晶形は、非晶質アジスロマイシンをt−ブチルメチルエーテル(MTBE)2.5容に添加することにより、調製する。得られた粘ちょうな白色懸濁液を、周囲条件で3日間攪拌する。固形物を、真空濾過で集め、空気乾燥する。得られたR形バルクアジスロマイシンは、理論水含量2.1重量%及び理論メチルt−ブチルエーテル含量10.3重量%を有する。
【0065】
これらの構造が似ているので、同形は、「混晶」又は「結晶固溶体」と称されることもあるファミリー内の形態の混合物を形成する傾向がある。N形はこのような結晶固溶体であり、溶媒組成及び固形NMRデータからファミリーI同形の混合物であることが分かった。
【0066】
ファミリーI同形とファミリーII同形の両方が、アジスロマイシンの水和物及び/又は溶媒和物である。キャビティ内の溶媒分子は、特定の条件下で溶媒と水との交換を生じる傾向がある。したがって、同形の溶媒/水含量は、ある程度異なっていてよい。
【0067】
同形ファミリーIの結晶形は、加熱したときにA形よりも安定である。F形、G形、H形、J形、M形及びN形の開始脱水温度110〜125℃は、開始脱水温度約90〜約110℃であり且つ約90℃で同時にL形に固体転化するA形よりも高かった。
【0068】
非晶質アジスロマイシン:全てのアジスロマイシンの結晶形は、水若しくは溶媒(単一又は複数)又は水と溶媒(単一又は複数)の両方を含有する。水と溶媒を結晶固形物から除去すると、アジスロマイシンが非晶質となる。非晶質固形物は、初期溶解速度が高いという利点がある。
【0069】
以下の実施例では、種々の結晶形態の合成の出発材料として、特記のない限りはアジスロマイシン二水和物を使用した。他の形態のアジスロマイシン、例えば、非晶質アジスロマイシン又はアジスロマイシンの他の非二水和物結晶形を、用いてもよい。
【実施例】
【0070】
例1:D形の調製
アジスロマイシン二水和物をシクロヘキサンに高温、例えば、25〜50℃で2〜4日間スラリー化することにより、D形を調製した。D形結晶固形物を、濾取し、乾燥した。
【0071】
例2:F形の調製
2A:アジスロマイシン二水和物を、約70℃の温エタノール1容にゆっくりと添加し、65〜70℃で完全に溶解するまで攪拌した。F形の種晶1〜2重量%を入れて結晶化を容易にしてもよい。溶液を、徐々に2〜5℃に冷却させ、冷却水1容を添加した。水を添加後短時間(好ましくは30分未満)で真空濾過により、結晶固形物を濾取した。
【0072】
2B:アジスロマイシン二水和物を、約70℃の温エタノール1容にゆっくりと添加し、65〜70℃で完全に溶解するまで攪拌した。F形の種晶1〜2重量%を入れて結晶化を容易にしてもよい。溶液を、徐々に2〜5℃に冷却させる。エタノール容積を、真空蒸留により減少させてもよい。2時間以下攪拌した後、結晶固形物を、真空濾過で集める。結晶を単離することにより、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンが得られる。
【0073】
例3:G形の調製
反応容器に、A形アジスロマイシンを入れた。別の容器で、メタノール1.5容と水1.5容とを混合した。溶媒混合物を、A形アジスロマイシンを含有する反応容器に添加した。スラリーを、約5時間50℃で加熱攪拌した。加熱を停止し、スラリーを攪拌しながら冷却して周囲温度とした。G形アジスロマイシンを、濾取し、約30分間空気乾燥した。集めたG形アジスロマイシンを、さらに真空オーブン中で45℃で乾燥した。この操作により、実質的に純粋なG形アジスロマイシンが得られ、このG形アジスロマイシンはアジスロマイシン二水和物を実質的に含まない。
【0074】
例4:J形の調製
アジスロマイシンをn−プロパノール4容に約25℃の温度で溶解することにより、J形を調製した。水(6.7容)を添加し、スラリーを1時間連続攪拌した後、約0℃に冷却する。固形のJ形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥した。
【0075】
例5:アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形の調製
5A:アジスロマイシン二水和物を、温イソプロパノール2容に40〜50℃で完全に溶解する。M形の種晶を、必要に応じて入れて結晶化を容易にしてもよい。次に、この溶液を0〜5℃に冷却し、逆溶媒としての冷却水4容を添加し、固形物を真空濾過により集める。固形物を、イソプロパノール1容に、40〜45℃で3〜5時間再スラリー化した後、0〜5℃に冷却する。水を添加後短時間(約15分)で、真空濾過により結晶固形物を集める。得られた固形物を、イソプロパノール0.5〜1容に25〜40℃で再スラリー化し、約5℃に冷却した後、M形固形物を濾取する。
【0076】
5B:アジスロマイシン二水和物(1940g)を、温イソプロパノール(45℃)2容に完全に溶解した。得られた透明溶液を、インライン0.2マイクロメートルフィルターにより濾過して清浄なフラスコに入れた。温度を45℃に維持し、溶液にM形種晶を加えた。冷却水7.8リットルを、8分間かけて添加した。この溶液を、5℃に冷却し、粘ちょうスラリーを得た。固形物を、真空濾過で単離し、清浄なフラスコに移した。結晶アジスロマイシンを、35℃に暖めながらイソプロパノール1容にスラリー化した。このスラリーを、次に5℃で30分間冷却し、固形結晶物質を濾取した。
【0077】
これらの操作により、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンが得られる。
【0078】
例6:N形の調製
エタノール2容とイソプロパノール2容を、反応容器に添加し、50℃に加熱した。A形アジスロマイシンを、加熱したエタノール/イソプロパノール混合物に攪拌しながら添加して透明溶液を得た。反応容器に、蒸留水2容(周囲温度)を入れた。50℃で攪拌を継続したところ、約1時間後に固形のN形アジスロマイシンが沈殿した。水を添加して5時間後、加熱を停止した。スラリーを、周囲温度に冷却した。沈殿したN形アジスロマイシンを、濾取し、真空オーブン中45℃で4時間乾燥した。
【0079】
例7:非晶質アジスロマイシンの調製
A形結晶アジスロマイシンを、オーブン中、真空下110〜120℃で一晩加熱した。非晶質固形物を、集め、必要に応じて乾燥剤を用いて保存した。
【0080】
例8:H形の調製
アジスロマイシン二水和物又は他の結晶形を、プロピレングリコール6容に溶解した。得られたアジスロマイシンのプロピレングリコール溶液に、水2容を添加したところ、沈殿が生じた。スラリーを24時間攪拌し、得られた固形物を、濾取し、周囲温度で空気乾燥してH形結晶を得た。
【0081】
例9:Q形の調製
A形アジスロマイシン500mgをTHF2mlに溶解することにより、結晶粉末を調製した。透明無色溶液に、水1mlを室温で添加した。溶液が白濁したら、さらにTHFを1ml添加してアジスロマイシンを完全に溶解させ、得られた溶液を周囲温度で攪拌した。溶媒を7日間かけて蒸発させ、その後、乾燥固形物を集め、特性付けした。
【0082】
例10:粉末X線回折分析
銅X線、固定スリット(1.0、1.0、0.6mm)及びKevex固体検出器を備えたBrukerD5000回折計(ウィスコンシン州にあるMadison社製)を用いて、粉末パターンを収集した。ステップサイズ0.04度及びステップ時間1.0秒を用いて、2θ3.0度から40.0度までのデータを収集した。得られた結果を、表9に示す。
【0083】
A形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図2に示す。
【0084】
D形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図6に示す。
【0085】
F形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図10に示す。
【0086】
G形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図13に示す。
【0087】
J形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図16に示す。
【0088】
M形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図18に示す。
【0089】
N形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図19に示す。
【0090】
非晶質アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図20に示す。
【0091】
Q形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図30に示す。
【0092】
R形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図31に示す。
【0093】
実験の試料間のばらつきは、2θで約±0.2°であり、同じばらつきが、単結晶構造からの粉末の計算値と実験データとの間で観察された。詳細な分析から、ファミリーIにおける同形がPXRDにより表9に示した特性ピーク組ではっきりと認められることが分かった。
【0094】
【表10】
【表11】
【0095】
ファミリーI同形は、以下の共通の特性を有する:2θ6.2度、11.2度、21.0±0.1度及び22.5±0.1度での回折ピーク。各同形は、以下の代表的な回折ピーク組を示し、各組は特徴的なピーク間距離を有する。
【0096】
記載の回折ピーク位置の精度は、2θの±0.2度内である。
【0097】
A形の代表的なPXRDパターンを、図2に示す。A形は、2θ9.3度、13.0度及び18.7度でピークを示す。
【0098】
D形の代表的なPXRDパターンを、図6に示す。D形は、2θ3.9度、10.1度、10.6度及び21.4度でピークを示す。
【0099】
F形の代表的なPXRDパターンを、図10に示す。F形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.5度に1組目;2θ13.9度、14.3度、14.7度及び14.8度に2組目;2θ16.2度、16.6度、17.1度、17.2度及び17.7度に3組目を示す。
【0100】
G形の代表的なPXRDパターンを、図13に示す。G形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.6度に1組目;2θ14.0度、14.4度、14.6度及び14.9度に2組目;2θ16.3度、16.6度、17.2度、17.4度及び17.8度に3組目を示す。
【0101】
J形の代表的なPXRDパターンを、図16に示す。J形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.4度に1組目;2θ13.9度、14.2度及び14.6度に2組目;2θ16.0度、16.6度、17.0度、17.2度及び17.5度に3組目を示す。
【0102】
M形の代表的なPXRDパターンを、図18に示す。M形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度に1組目;2θ14.0度及び14.6度に2組目;2θ15.9度、16.6度、17.1度及び17.5度に3組目を示す。
【0103】
N形の代表的なPXRDパターンを、図10に示す。N形は、ファミリーIの特徴的なピークを示す。N形のピーク組は、F形、G形、J形及びM形のものと似ており、2θ11.2度〜11.6度に1組目;2θ13.9度〜15.0度に2組目;2θ15.9度〜17.9度に3組目を示す。ピークは、ファミリーIにおける同形の可変割合での混合のために、位置、強度及び幅がわずかに異なることがある。
【0104】
Q形の代表的なPXRDパターンを、図30に示す。Q形は、2θ6.8度、8.4度及び20.2度にピークを示す。
【0105】
R形の代表的なPXRDパターンを、図31に示す。
【0106】
例11:単結晶X線分析
銅X線及び黒鉛モノクロメーターを備えたBrukerX線回折計を用いて、室温でデータを収集した。直接法を用いて、構造を解明した。全ての必要な結晶学的計算と分子ディスプレイを容易にするために、Bruker AXS社製のSHELXTLコンピュータライブラリー(SHELXTL(商標)、米国ウィスコンシン州マディソンにあるBruker AXS社のリファレンスマニュアル、バージョン5.1(1997))を用いた。
【0107】
例12:単結晶データからのPXRDパターンの計算
単結晶と粉末試料との間の結果を比較するために、単結晶の結果から計算粉末パターンを得ることができる。SHELXTLコンピュータライブラリーの一部分として提供されたXFOG及びXPOWコンピュータプログラムを使用して、この計算をおこなった。計算粉末パターンと実験粉末パターンとを比較することにより、粉末試料が割り当てられた単結晶構造に相当するかどうかを確認する(表9−A)。この操作を、A形、D形、F形、G形及びJ形結晶形態のアジスロマイシンについておこなった。
【0108】
A形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図1に示す。
【0109】
D形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図5に示す。
【0110】
F形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図9に示す。
【0111】
G形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図12に示す。
【0112】
J形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図15に示す。
【0113】
図3、図7、図11、図14及び図17におけるそれぞれA形、D形、F形、G形及びJ形のオーバーレイ粉末X線回折パターンに結果を示す。下の方のパターンは、計算粉末パターン(単結晶の結果から得た)に相当し、上の方のパターンは、代表的な実験粉末パターンに相当する。2つのパターンが一致している場合、粉末試料と対応する単結晶構造とが一致していた。
【0114】
【表12】
【0115】
例13:固体NMR分析
固体NMR分析:
全ての13C固体NMRスペクトルを、11.75T分光計((マサチューセッツ州ビレリカにあるBruker Biospin社)125MHz13C周波数に対応)により収集した。スペクトルを、交差分極マジック角スピンニング(CPMAS)プローブを周囲温度及び圧力で操作して収集した。分析した試料の量に応じて、7mmBL又は4mmBL Brukerプローブ(試料300mg及び75mgにそれぞれ最大速度7kHz及び15kHzを適用)を用いた。データを、5.0Hzの指数ライン広がり関数により処理した。65kHz及び100kHzのプロトンデカップリングを、それぞれ7mmプローブ及び4mmプローブとともに使用した。十分な取得数を平均して、全てのピークについて適切な信号対ノイズ比を得た。典型的には、リサイクル遅延3.0秒で600スキャン(ほぼ総獲得時間30分間に相当)を得た。標準NMRベンダープラクティスに従ってKBr粉末を用いて、マジック角を調整した。スペクトルは、ヘキサメチルベンゼン(HMB)のメチル共鳴(17.3ppm)又はアダマンタン(ADM)のアップフィールド共鳴(29.5ppm)を基準とした。HMB基準スペクトルは、ADM基準の同じスペクトルに対して全てのピークが0.08ppmだけ下のフィールドにシフトした化学シフトを示す。スペクトルウインドウは、極微の190〜0ppmのスペクトル領域を含んでいた。結果を、表10に示す。M形、H形及びR形についてのSs−NMRスペクトルは、ADM基準とした。A形、D形、G形、F形、J形及びN形のSs−NMRスペクトルは、HMB基準とした。H形とR形は、15kHzの速度でスピンした。
【0116】
【表13】
【0117】
【表14】
【0118】
【表15】
【0119】
記載の化学シフトの精度は、特記のない限りは±0.2ppm内である。
【0120】
A形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図21に示す。A形は、178.1ppmにピーク、さらに104.1ppm、98.4ppm、84.6ppm、26.9ppm、13.2ppm、11.3ppm及び7.2ppmにピークを示す。
【0121】
D形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図22に示す。D形は、178.1ppmに最高化学シフトピークを示し、さらに103.9ppm、95.1ppm、84.2ppm、10.6ppm、9.0ppm及び8.6ppmの化学シフトにピークを示す。
【0122】
F形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図23に示す。F形は、約179.1±2ppm(179.5ppm及び178.6ppm)に2つの化学シフトピークを有し、10.1ppm、9.8ppm、9.3ppm、7.9ppm及び6.6ppmに5つのピークの組を有し、58.0±0.5ppm及び17.2±0.5ppmにエタノールピークを示す。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0123】
G形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図24に示す。G形は、179.5ppmの最高化学シフトピーク(<0.3ppmの開裂を有することのある単一ピーク)を有し、10.4ppm、9.9ppm、9.3ppm、7.6ppm及び6.5ppmに5つのピークの組を有する。
【0124】
J形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図25に示す。J形は、約179.1±2ppm(179.6ppm及び178.4ppm)に2つの化学シフトピークを有し、10.0ppm、9.3ppm、8.1ppm及び6.8ppmに4つのピークの組を有し、11.5±0.5ppm及び25.2±0.5ppmにn−プロパノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0125】
M形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図26に示す。M形は、179.1±1ppm(179.6ppm)に一つの化学シフトピークを有し、41.9ppm及び16.3ppmにピークを有し、10.3ppm、9.6ppm、9.3ppm、7.7ppm及び7.1ppmに5つのピークの組を有し、26.0±0.5ppmにイソプロパノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0126】
N形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図27に示す。N形は、ファミリーIにおける同形の組み合わせとしての化学シフトを示す。これらのピークは、N形結晶固溶体に含有される同形の可変割合での混合のため、化学シフト並びに相対強度及び幅が異なることがある。
【0127】
非晶質形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図28に示す。非晶質アジスロマイシンは、ブロードな化学シフトを示す。特徴的な化学シフトのピーク位置は、179及び11±0.5ppmである。
【0128】
A形、D形、F形、G形、H形、J形、M形、N形及びR形アジスロマイシンについて観察されたssNMRピークを、まとめて表10に示す。
【0129】
例14:剤形のNMR分析
13CssNMRにより医薬剤形に含有されるアジスロマイシンの形態を同定できることを示すために、G形アジスロマイシンを含有する被覆アジスロマイシン錠剤を作製し、13CssNMRにより分析した。錠剤を、湿式顆粒化し、0.262”×0.531”ツーリングを用いてF−Press(英国リバプールにあるManesty社)により錠剤化した。錠剤は、以下に示す処方により総錠剤重量が450mgでG形アジスロマイシン250mgを含有するように配合及び錠剤化した。錠剤に、ピンク色のOpadryII(登録商標)(ラクトース一水和物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、二酸化チタン、Drug&Cosmeticレッド#30と、トリアセチンとの混合物)(ペンシルバニア州ウェストポイントにあるColorcon社製)を均一に被覆した。
【0130】
【表16】
【0131】
【表17】
【0132】
被覆錠剤を、徐々に破砕し、得られた粉末試料を、充填ツールにより、13Cバックグランド含まない固体ロータに充填した。試料の分析は、例13に概略を示す条件下で実施した。
【0133】
G形アジスロマイシンを含有する錠剤の代表的な13CssNMRスペクトルを、図29に示す。
【0134】
例15:抗菌活性:
細菌及び原生動物の病原体に対する本発明の結晶形の活性は、ヒト病原体(アッセイI)又は動物病原体(アッセイII及びIII)の確定している菌株の増殖を阻害する化合物の能力により示される。
【0135】
アッセイI
以下に述べるアッセイIでは、通常の方法と判定基準を用いる。アッセイIは、マクロライド耐性の確定している機構を回避する化合物を得ることができる化学的変性の指針が得られるように設計する。アッセイIでは、細菌菌株のパネルを、特徴付けられたマクロライド耐性機構の代表的なものを含む、種々の標的病原体種を含むようにして作製する。このパネルを使用すると、化学構造/活性の関係を、効力、活性スペクトル、耐性機構を除去するために必要であると考えられる構造要素又は変性(修飾)とに関連して決定することができる。スクリーニングパネルを含む細菌病原体を、下表に示す。多くの場合、マクロライド感受性親菌株とそれに由来するマクロライド耐性菌株の両方が、耐性機構を回避する化合物の能力をより正確に評価するのに有効である。ermA/ermB/ermCと命名されている遺伝子を含有する菌株は、Ermメチラーゼによる23SrRNA分子の修飾(メチル化)のため、マクロライド、リンコサミド及びストレプトグラミンB抗生物質に対して耐性を有するので、一般的に3種の構造の全ての結合を防止する。2種類のマクロライドエフラックスについての記載がなされている;msrAは、マクロライド及びストレプトグラミンの侵入を阻止するブドウ球菌のエフラックス系の成分をコードし、mefA/Eはマクロライドのみを流出させると思われる膜貫通タンパク質をコードする。マクロライド抗生物質の不活性化が生じることがあり、これは2’−ヒドロキシル(mph)のリン酸化又は大環式ラクトン(エステラーゼ)の開裂のいずれかが介在することがある。これらの菌株は、通常のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて及び/又は耐性決定因子を配列決定することによって特徴付けることができる。この用途におけるPCR法の使用については、J.Sutcliffe等,“Detection Of Erythromycin−Resistant Determinants By PCR”,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,40(11),2562−2566(1996)に記載されている。このアッセイは、マイクロタイタートレーでおこなわれ、Performance Standards
for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests−第6版;Approved Standard(The National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)発行)ガイドラインによって判定される;最小阻止濃度(MIC)を、菌株の比較に用いる。結晶化合物を、最初にジメチルスルホキシド(DMSO)中に40mg/ml原液として溶解する。
【0136】
【表18】
【0137】
アッセイIIは、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)に対する活性についての試験に利用され、アッセイIIIは、パスツレラ・ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)に対する活性についての試験に利用される。
【0138】
アッセイII
このアッセイは、マイクロリットルフォーマットでの液体希釈法に基づいている。ピー・ムルトシダ(P.multocida)(菌株59A067)の単一コロニーを、ブレインハートインフージョン(BHI)ブロス5mlに接種する。化合物1mgを、ジメチルスルホキシド(DMSO)125μlに可溶化することによって、試験化合物を調製する。接種されないBHIブロスを用いて、試験化合物の希釈物を調製する。用いた試験化合物の濃度は、二倍連続希釈法によって200μg/ml〜0.098μg/mlの範囲である。ピー・ムルトシダ(P.multocida)接種BHIを接種されないBHIブロスによって希釈して、細胞懸濁液104/200μlを形成する。BHI細胞懸濁液に試験化合物の各連続希釈物を混合して、37℃で18時間インキュベートする。最小阻止濃度(MIC)は、接種されない対照と比較して判定したときに、ピー・ムルトシダ(P.multocida)の増殖の100%阻害を示した化合物の濃度に等しい。
【0139】
アッセイIII
このアッセイは、Steers Replicatorを用いた寒天希釈法に基づいている。寒天プレートから単離した2〜5コロニーを、BHIブロスに接種して、振とうしながら(200rpm)、37℃において一晩インキュベートする。翌朝、300μlの完全増殖ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)前培養物を3mlの新鮮なBHIブロスに接種して、振とうしながら(200rpm)、37℃においてインキュベートする。適当な量の試験化合物を、エタノール中に溶解して、一連の二倍連続希釈物を調製する。各連続希釈物2mlを溶融BHI寒天18mlと混合して、凝固させる。接種したピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)培養物が0.5McFarland標準密度に達したときに、ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)培養物約5μlを、種々な濃度の試験化合物を含有するBHI寒天プレート上に、Steers Replicatorを用いて接種し、37℃で18時間インキュベートする。試験化合物の初期濃度は、100〜200μg/mlの範囲である。MICは、接種されない対照と比較して判定したときに、ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)の増殖の100%阻害を示した試験化合物の濃度に等しい。
【0140】
本発明の結晶形のインビボ活性は、マウスにおいて通常行われる、当業者に周知の通常の動物保護試験によって測定することができる。
【0141】
マウスを、それらの到着時に、ケージに割り当て(10匹/ケージ)、用いる前に少なくとも48時間順化させる。動物に、0.5mlの3x103CFU/ml細菌懸濁液(ピー・ムルトシダ(P.multocida)菌株59A006)を腹腔内接種する。各実験は、0.1Xチャレンジ量で感染された1群と、1Xチャレンジ量で感染された2群とを含めた、少なくとも3つの非薬剤投与対照群を有し;10Xチャレンジデータ群も用いることができる。一般に、ある一定の試験における総てのマウスを、特に反復使用注射器(例えば、Cornwall(登録商標)注射器)を用いて、チャレンジ投与する場合には、30〜90分以内にチャレンジすることができる。チャレンジを開始してから30分後に、最初の化合物処置をする。30分間の終了までに動物の総てがチャレンジされなかった場合には、化合物投与を開始するために、もう一人必要なことがある。投与経路は皮下投与又は経口投与である。皮下投与の場合、首の背部における緩い皮膚に投与され、経口投与の場合、栄養針を用いておこなう。両方の場合に、マウス1匹当りに0.2mlの容量が用いられる。化合物はチャレンジ後30分間目、4時間目及び24時間目に投与される。各試験には、同じ経路で投与される既知効力の対照化合物を含める。動物を毎日観察し、各群の生存動物数を記録する。ピー・ムルトシダ(P.multocida)モデルの監視を、チャレンジ後96時間(4日間)続ける。
【0142】
PD50は、試験した化合物が薬物治療のない場合に致命的であろう細菌感染症による死亡からマウス群の50%を保護する、計算投与量である。
【0143】
本発明の結晶形(以下、「活性化合物」と称する)は、細菌感染症又は原生動物感染症の治療又は予防に経口、非経口、局所又は直腸経路によって投与することができる。一般に、これらの活性化合物は、1回投与量又は分割投与量(即ち、1〜4回投与/日)として約0.2mg/kg体重/日(mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の範囲である投与量で投与するのが最も望ましいが、治療される対象の種、体重及び状態並びに選択された特定の投与経路によって変化が必然的に生じることがある。しかしながら、約2mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲内である投与量レベルを用いるのが、最も望ましい。それにもかかわらず、治療される哺乳動物、魚類又は鳥類の種、前記薬物に対するその個体の反応並びに選択された医薬的製剤の種類及びこのような投与が行われる時間と間隔によって、変化が生じることがある。場合によっては、上記範囲の下限未満の投与量レベルで十分であることがあり、他の場合には、さらに投与量を増やしても有害な副作用を生じることなく用いることができるが、このような大きな投与量の場合は、1日間を通して投与するために最初にいくつかの小さい投与量に分割する。
【0144】
活性化合物を、単独で又は薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて、予め指定された経路によって投与することができ、このような投与は1回投与量で又は複数回投与量で行うことができる。より具体的には、活性化合物を、非常に多様な異なる投与形で投与することができる、即ち、活性化合物を、種々な薬学的に許容される不活性担体と、錠剤、カプセル、菱形剤、トローチ、硬質キャンディ、粉末、スプレー、クリーム、膏薬、座薬、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、薬袋、経口投与用懸濁剤用粉末、水性懸濁液、注射可能な溶液、エリキシル剤、シロップ等の形態で組み合わせることができる。このような担体には、固体希釈剤若しくは充填剤、無菌水性媒質及び種々な非毒性有機溶媒等がある。さらに、経口医薬組成物は、適当に甘味及び/又はフレーバーをつけることができる。一般に、活性化合物はこのような投与形中に約1.0重量%〜約70重量%の範囲の濃度レベルで存在する。
【0145】
経口投与の場合、例えば微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム及びグリシンのような、種々な賦形剤を含有する錠剤を、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような造粒結合剤と共に、例えば、澱粉(好ましくは、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉若しくはタピオカ澱粉)、アルギン酸及びある一定の複合シリケートのような種々な崩壊剤とともに、用いることができる。さらに、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような滑剤が、錠剤形成のためにしばしば非常に有用である。同様な種類の固体組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることもでき;これに関連して好ましい物質には、ラクトース又は乳糖だけでなく、高分子量ポリエチレングリコールなどもある。経口投与のために水性懸濁液及び/又はエリキシル剤が望ましい場合には、活性化合物を種々な甘味剤又はフレーバー剤、着色剤又は染料と組み合わせることができ、必要に応じて、乳化剤及び/又は懸濁化剤も、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの種々な同様な組み合わせのような希釈剤と共に組み合わせることができる。
【0146】
非経口投与の場合、胡麻油若しくは落花生油中又は水性プロピレングリコール中の活性化合物の溶液を用いることができる。水溶液は、必要に応じて適当に緩衝化しなければならず(好ましくは、8より大きいpH)、液体希釈剤は最初に等張性にしなければならない。これらの水溶液は、静脈内注射に好適である。油性溶液は、関節内、筋肉内及び皮下注射に好適である。無菌条件下での総てのこれらの溶液の製造は、当業者に周知の標準製薬技術によって容易におこなうことができる。
【0147】
さらに、活性化合物を、局所投与することも可能であり、これは標準的製薬法に従って、クリーム、ゼリー、ゲル、ペースト、パッチ、軟膏等によっておこなうことができる。
【0148】
ヒト以外の動物、例えば、家畜又は家庭内動物への投与の場合、活性化合物を、動物の飼料に含めて又は経口的にドレンチ組成物として投与することができる。
【0149】
また、活性化合物を、例えば小さい単ラメラ小胞、大きい単ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞のようなリポソーム放出系として投与することもできる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンのような、種々のリン脂質から形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】A形のアジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図2】A形のアジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図3】図1と図2を重ねた図であって、下の方がA形アジスロマイシンの計算回折パターン(図1)であり、上の方がA形アジスロマイシンの実験回折パターン(図2)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図4】C形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図5】D形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図6】D形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図7】図5と図6を重ねた図であって、下の方がD形アジスロマイシンの計算回折パターン(図5)であり、上の方がD形アジスロマイシンの実験回折パターン(図6)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図8】E形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図9】F形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図10】F形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図11】図9と図10を重ねた図であって、下の方がF形アジスロマイシンの計算回折パターン(図9)であり、上の方がF形アジスロマイシンの実験回折パターン(図10)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図12】G形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図13】G形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図14】図12と図13を重ねた図であって、下の方がG形アジスロマイシンの計算回折パターン(図12)であり、上の方がG形アジスロマイシンの実験回折パターン(図13)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図15】J形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図16】J形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図17】図15と図16を重ねた図であって、下の方がJ形アジスロマイシンの計算回折パターン(図15)であり、上の方がJ形アジスロマイシンの実験回折パターン(図16)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図18】M形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図19】N形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図20】非晶質アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図21】A形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図22】D形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図23】F形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図24】G形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図25】J形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図26】M形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図27】N形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図28】非晶質アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図29】G形アジスロマイシンを含有する医薬錠剤の13C固体NMRスペクトルである。
【図30】Q形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図31】R形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図32】H形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図33】R形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶形アジスロマイシン(Azithromycin)に関する。アジスロマイシンは、市販されており、広範な細菌感染の治療に効果的な抗生物質である。本発明による結晶形アジスロマイシンは、同様にヒトを含む哺乳動物だけなく、魚類や鳥類にも抗菌剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシンは、以下の構造式で表される:
【化1】
【0003】
アジスロマイシンが、米国特許第4,517,359号及び第4,474,768号で記載且つ請求されている。アジスロマイシンは、また9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリトマイシンAとしても知られている。
【0004】
アジスロマイシンを直接的又は間接的にカバーしている他の特許又は特許出願に、アジスロマイシン二水和物を請求しているヨーロッパ特許出願第EP298,650号;トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)種の菌株の処理方法を請求している米国特許第4,963,531号;苦みを減少させたチュアブル錠又は懸濁液医薬組成物を請求している米国特許第5,633,006号;アジスロマイシンの調製に有用な中間体を請求している米国特許第5.686,587号;アジスロマイシンの投与に関連した「食物効果」を減少させる経口投与剤形を請求している米国特許第5,605,889号;アジスロマイシンを含有する制御された剤形を請求している米国特許第6,068,859号;アジスロマイシンを二価金属又は三価金属と組み合わせて含有する組成物を請求している米国特許第5,498,699号;眼感染の治療方法を請求しているEP925,789;アジスロマイシンの水溶性塩に関する中国特許出願CN1123279A;アジスロマイシンソジウムジヒドロジェンホスフェート複塩に関する中国特許出願CN1046945C;アジスロマイシン結晶に関する中国特許出願CN1114960A;アジスロマイシン結晶に関する中国特許出願CN1161971A;アジスロマイシンの水溶性塩の調製方法に関する中国特許出願CN1205338A;アジスロマイシンのエタノール和物に関する国際公開WO00/32203;及びアジスロマイシン一水和物イソプロパノールクラスレートに関するEP984,020などがある。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
【0006】
本発明は、結晶形アジスロマイシンに関する。本明細書で使用される用語「結晶形(形態)」又は「形(形態)」は、特記のない限りは、一種以上の結晶形アジスロマイシンを意味する。
【0007】
特に、本発明は、結晶形が、C形、D形、E形、F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形、P形、Q形及びR形(本明細書で定義される)から選ばれるものである結晶形アジスロマイシンに関する。F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形及びP形は、ファミリーIアジスロマイシンに属し、セル寸法がa=16.3±0.3Å、b=16.2±0.3Å、c=18.4±0.3Å及びベータ=109±2°である単斜晶系P21空間群に属する。C形、D形、E形及びR形は、ファミリーIIアジスロマイシンに属し、セル寸法がa=8.9±0.4Å、b=12.3±0.5Å及びc=45.8±0.5Åである斜方晶系P212121空間群に属する。Q形は、ファミリーI及びファミリーIIとは異なる。
【0008】
F形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・0.5C2H5OHで表される、アジスロマイシン一水和物半エタノール溶媒和物である。F形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%とエタノール1〜4重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。F形の13CssNMR(固形核磁気共鳴)スペクトルは、約179±1ppm(179.5±0.2ppm及び178.6±0.2ppm)で2つの化学シフトピークを有し、6.4〜11.0ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有し、58.0±0.5ppm及び17.2±0.5ppmにエタノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0009】
また、本発明は、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンに関する。
【0010】
さらに、本発明は、アジスロマイシンをエタノールで処理して40〜70℃で完全に溶解し、エタノールを減少させて冷却するか、水を添加して冷却することにより結晶化させることにより、F形アジスロマイシンを調製する方法に関する。また、本発明は、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンの製造方法をも含む。
【0011】
G形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・1.5H2Oで表される、アジスロマイシンセスキ水和物である。G形は、さらに粉末試料において水2.5〜6重量%と有機溶媒(単一又は複数)1重量%未満とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。G形の13CssNMRスペクトル約179±1ppm(179.5±0.2ppm;0.3ppm未満での開裂が存在してもよい)で一つの化学シフトピークを有し、6.3〜11.0ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有する。
【0012】
また、本発明は、実質的に純粋なG形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないG形アジスロマイシンに関する。
【0013】
さらに、本発明は、アジスロマイシンを、メタノールと水との混合物又はアセトンと水との混合物で処理して40〜60℃で完全に溶解し、冷却して結晶化させることにより、実質的に純粋なG形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないG形アジスロマイシンを調製する方法に関する。
【0014】
H形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C3H8O2で表されるアジスロマイシン一水和物半−1,2−プロパンジオール溶媒和物である。
【0015】
J形アジスロマイシンは、単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・0.5C3H7OHで表される、アジスロマイシン一水和物半−n−プロパノール溶媒和物である。J形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%と1−プロパノール1〜5重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。J形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(179.6±0.2ppm及び178.4±0.2ppm)で2つの化学シフトピークを有し、6.6〜11.7ppmに一組のピーク(5つのピークからなる)を有し、25.2±0.4ppmにn−プロパノールのピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0016】
さらに、本発明は、アジスロマイシンをn−プロパノールで処理して25〜55℃で完全に溶解し、水を添加して冷却することにより結晶化させることにより、J形を調製する方法に関する。
【0017】
M形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C3H7OHで表される、アジスロマイシン一水和物半−イソプロパノール溶媒和物である。M形は、さらに粉末試料において水2〜5重量%と2−プロパノール1〜4重量%とを含有し、表9で定義するような粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。M形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(179.6±0.2ppm)で一つの化学シフトピークを有し、41.9±0.2ppmにピークを有し、6.9〜16.4ppmに一組のピーク(6つのピークからなる)を有し、26.0±0.4ppmにイソプロパノールのピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱い場合がある。
【0018】
また、本発明は、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンに関する。
【0019】
さらに、本発明は、アジスロマイシンを、イソプロパノールで処理して40〜60℃で完全に溶解し、イソプロパノールの量を減少させた後に冷却するか、冷却してから水を添加することにより結晶化させることにより、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンを調製する方法に関する。
【0020】
N形アジスロマイシンは、ファミリーIの同形の混合物である。この混合物は、種々の割合(%)で同形、F形、G形、H形、J形、M形等並びに種々の量の水及び有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、ペンタノール等を含有してもよい。水の重量%は1〜5%の範囲であることができ、有機溶媒の総重量%は2〜5%(各溶媒含量が0.5〜4%)であることができる。N形の試料は、ファミリーIに属するものの全ての特性ピークを種々の割合で示す。N形は、ファミリーI同形の「混晶」又は「結晶性固溶体」として特徴付けられることができる。
【0021】
N形は、ファミリーIにおける同形の組み合わせとして化学シフトを示す。ピークは、N形結晶性固溶体に含有される可変割合の同形の混合のため、化学シフトppmにおいて±0.2ppm内で異なり、また相対強度及び幅において異なることがある。
【0022】
P形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C5H12Oで表されるアジスロマイシン一水和物半−n−ペンタノール溶媒和物である。
【0023】
Q形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・0.5C4H8Oで表されるアジスロマイシン一水和物半−テトラヒドロフラン溶媒和物である。
【0024】
R形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C5H12Oで表されるアジスロマイシン一水和物モノ−メチルt−ブチルエーテル溶媒和物である。
【0025】
D形アジスロマイシンは、その単結晶構造において式C38H72N2O12・H2O・C6H12で表される、アジスロマイシン一水和物モノシクロヘキサン溶媒和物である。D形は、さらに粉末試料において水2〜6重量%とシクロヘキサン3〜12重量%とを含有し、表9で定義するような代表的な粉末X線回折2θピークを有するものとして特徴付けられる。D形の13CssNMRスペクトルは、約179±1ppm(178.1±0.2ppm)で一つの化学シフトピークを有し、103.9±0.2ppm、95.1±0.2ppm、84.2±0.2ppmにピークを有し、8.4〜11ppmに一組のピーク(3つのピークからなる)を有する。
【0026】
さらに、本発明は、アジスロマイシン二水和物をシクロヘキサンによりスラリー化することにより、D形を調製する方法に関する。
【0027】
E形アジスロマイシンは、式C38H72N2O12・H2O・C4H8Oで表されるアジスロマイシン一水和物モノ−テトラヒドロフラン溶媒和物である。
【0028】
さらに、本発明は、非晶質アジスロマイシンに関し、さらにアジスロマイシン結晶格子から水及び/又は溶媒を除去することを含む、非晶質アジスロマイシンの調製方法に関する。非晶質アジスロマイシンについてのX線回折粉末パターンは、シャープな2θピークを示さないが、2つのブロードな丸いピークを有する。第一のピークは、4°〜13°で生じる。第二ピークは、13°〜25°で生じる。
【0029】
また、本発明は、治療に有効な量の上記した結晶化合物又は非晶質アジスロマイシンと、薬学的に許容される担体とを含む、哺乳動物、魚又は鳥における細菌感染又は原生動物感染の治療のための医薬組成物に関する。
【0030】
また、本発明は、治療に有効な量の上記した結晶化合物又は非晶質アジスロマイシンを哺乳動物、魚又は鳥に投与することを含む、哺乳動物、魚又は鳥における細菌感染又は原生動物感染を治療するための方法に関する。
【0031】
また、本発明は、適当な溶媒にアジスロマイシンをスラリー化するか、加熱した有機溶媒又は有機溶媒/水溶液にアジスロマイシンを溶解し、溶媒の容量を減少させて溶液を冷却して結晶形アジスロマイシンを沈殿させるか、又はアジスロマイシンを溶媒又は溶媒混合物に溶解し、水をこの溶液に添加して結晶形アジスロマイシンを沈殿させることを含む、結晶形アジスロマイシンの調製方法に関する。非晶質アジスロマイシンは、結晶形アジスロマイシンを真空中で加熱することにより調製する。
【0032】
本明細書で使用される用語「治療」とは、特記のない限りは、細菌感染又は原生動物感染の症状を治したり、減少させるか、又はこのような感染の進行を遅らせることを含む、本発明の方法により提供されるような細菌感染又は原生動物感染の治療又は予防を意味する。用語「治療する」は、上記用語「治療」に準じて定義される。
【0033】
所定の結晶形アジスロマイシンに関して使用される用語「実質的に含まない」とは、存在する所定の結晶形の20%(重量基準)未満、より好ましくは存在する所定の結晶形の10%(重量基準)未満、より好ましくは存在する所定の結晶形の5%(重量基準)未満、最も好ましくは存在する所定の結晶形の1%(重量基準)未満であることを意味する。例えば、アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンとは、アジスロマイシン二水和物の含有量が20%(重量基準)以下、より好ましくは10%(重量基準)以下、最も好ましくは1%(重量基準)であるF形を意味する。
【0034】
所定の結晶形アジスロマイシンに関して使用される用語「実質的に純粋な」とは、所定の結晶形態が、別の多形又は同形結晶形アジスロマイシン等の残留成分の含量が20%(重量基準)未満であることを意味する。実質的に純粋な形態のアジスロマイシンにおける別の多形又は同形結晶形アジスロマイシンの含量が、10%(重量基準)未満、より好ましくは5%(重量基準)未満、最も好ましくは1%(重量基準)未満であることが、好ましい。
【0035】
バルク結晶形アジスロマイシン又は結晶形アジスロマイシン含有組成物について用いられる用語「実質的にアジスロマイシン二水和物を含まない」とは、結晶形アジスロマイシンにおけるアジスロマイシン二水和物の含量が、約5%(重量基準)未満、より好ましくは約3%(重量基準)未満、最も好ましくは1%(重量基準)未満であることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される用語「細菌感染」又は「原生動物感染」とは、特記のない限りは、本発明の化合物等の抗生物質を投与することにより治療又は予防できる、哺乳動物、魚及び鳥において生じる細菌感染及び原生動物感染並びにこのような感染により生じる疾病だけでなく、細菌感染及び原生動物感染に関連した障害をも含む。このような細菌感染及び原生動物感染並びに障害には、以下のもの等があるが、これらには限定されない:肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、モラキセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus spp.)による感染に関連した肺炎、中耳炎、静脈洞炎、気管支炎、扁桃炎及び乳様突起炎;ストレプトコッカス・ピオゲンス(Streptococcus pyogenes)、C群及びG群のレンサ球菌(Streptococci)、クロストリジウム・ジプテリアエ(Clostridium diptheriae)又はアクチノバシラス・ヘモリティカム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関連した咽頭炎、リウマチ熱若しくは糸球体腎炎;肺炎マイコプラズマ菌(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)若しくは肺炎クラミジア菌(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連した気道感染症;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌(coagulase−positive staphylococci)(即ち、エス・エピデルミディス(S.epidermidis)、エス・ヘモリティカス(S.hemolyticus)等)、ストレプトコッカス・ピオゲンス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、レンサ球菌C〜F群(微小なコロニーレンサ球菌)、ビリダンス群レンサ球菌、コリネバクテリウム・マイニュウチシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)又はバルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)による感染に関連した非併発性皮膚及び軟組織感染症、膿瘍及び骨髄炎、及び産じゅく熱;スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)又は腸球菌種(Enterococcus spp.)による感染に関連した非併発性急性尿道感染症;クラミジア・トラコーマティス(Chlamydia trachomatis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、トレポネーマ・パリデュム(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリティカム(Ureaplasma urealyticum)又は淋菌(Neiserria gonorrheae)による感染に関連した尿道炎及び子宮頚管炎及び性的伝染病;黄色ブドウ球菌(S.aureus)(食中毒及び中毒性ショック症候群)又はA群、B群及びC群のレンサ球菌による感染に関連した毒素疾患;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連した潰瘍;回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)による感染に関連した全身性発熱症候群;ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染に関連したライム病;クラミジア・トラコーマティス(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲンス(S.pyogenes)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(H.influenzae)又はリステリア種(Listeria spp.)による感染に関連した結膜炎、角膜炎及び涙嚢炎;マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)又はマイコバクテリウム・イントラセルラレ(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連した散在性マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(MAC)疾患;カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)による感染に関連した胃腸炎;クリプトスポリジウム種(Cryptosporidium spp.)による感染に関連した腸プロトゾア(intestinal protozoa);ビリダンス群レンサ球菌(viridans streptococci)による感染に関連した歯原性感染症(odontogenic infection);百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連した持続性咳;クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)又はバクテロイデス種(Bacteroides spp.)による感染に関連したガス壊疽;並びにヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)又は肺炎クラミジア菌(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連したアテローム硬化症。アテローム硬化症及びマラリアも含まれる。動物における治療されうる又は予防されうる、細菌感染症及び原生動物感染症並びにこのような感染症に関連した障害は下記のものも含まれるが、これらには限定されない:ピー・ヘモリティカ(P.haem.)、ピー・ムルトシダ(P.multocida)、マイコプラズマ・ボヴィス(Mycoplasma bovis)又はボルデテラ種(Bordetella spp.)による感染に関連したウシ呼吸器疾患;大腸菌(E.coli)又は原生動物(即ち、コクシジア(coccidia)、クリプトスポリジア(cryptosporidia)等)による感染に関連したウシ腸疾患;黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)、ストレプトコッカス・ウベリス(Strep.uberis)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Strep.agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクチアエ(Strep.dysgalactiae)、クレブシェラ種(Klebsiella spp.)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)又は腸球菌種(Enterococcus spp.)による感染に関連した乳牛乳腺炎;エイ・プロイロ(A.pleuro.)、ピー・ムルトシダ(P.multocida)又はマイコプラズマ種(Mycoplasma spp.)による感染に関連したブタ呼吸器疾患;大腸菌(E.coli)、ロウソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、サルモネラ又はセルプリナ・ヒョーディスインテリアエ(Serpulina hyodyisinteriae)による感染に関連したブタ腸疾患;フソバクテリウム種(Fusobacterium spp.)による感染に関連したウシ腐蹄症;大腸菌(E.coli)による感染に関連したウシ子宮炎;フソバクテリウム・ネクロホルム(Fusobacterium necrophorum)又はバクテロイデス・ノドサス(Bacteroides nodosus)による感染に関連したウシ有毛いぼ;モラキセラ・ボヴィス(Moraxella bovis)による感染に関連したウシ伝染性角結膜炎;原生動物(即ち、ネオスポリウム(neosporium))による感染に関連したウシ早産;大腸菌(E.coli)による感染に関連したイヌ及びネコにおける尿道感染症;スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staph.epidermidis)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staph.intermedius)、コアグラーゼ陰性レンサ球菌又はピー・ムルトシダ(P.multocida)による感染に関連したイヌ及びネコにおける皮膚及び軟組織感染症;並びにアルカリゲネス種(Alcaligenes spp.)、バクテロイデス種(Bacteroides spp.)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)、エンテロバクター種(Enterobacter spp.)、オイバクテリウム(Eubacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)又はプレボテラ(Prevotella)による感染に関連したイヌ及びネコにおける歯又は口内感染症。本発明の方法によって治療又は予防されうる、他の細菌感染症及び原生動物感染症並びにこのような感染症に関連した障害は、J.P.Sanford等,“The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy(サンフォードによる抗菌療法の指針”,第26版(Antimicrobial Therapy,Inc.,1996)に記載されている。
【0037】
また、本発明は、一つ以上の原子が、通常天然で見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられた同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に含有させることのできる同位体としては、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素及び塩素、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、18O及び17Oなどがある。このような放射性同位体標識化合物及び安定な同位体標識化合物は、研究又は診断ツールとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
アジスロマイシンは、異なる結晶形態で存在することが見いだされた。二水和物であるA形、非化学量論的水和物であるB形が、それぞれヨーロッパ特許出願第EP298650号及び米国特許第4,512,359号に開示されている。16の他の形態、すなわち、C形、D形、E形、F形、G形、H形、I形、J形、K形、L形、M形、N形、O形、P形、Q形及びR形が見いだされた。これらの形態は、アジスロマイシン遊離塩基の水和物又は水和物/溶媒和物である。L形及びK形は、高温で検出されるA形の準安定低級水和物形態である。A形、C形、D形、E形、F形、G形、H形、J形及びO形の結晶構造が解明された。これらの結晶形の構造のデータを、以下に示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0039】
これらの16個の結晶形態の間で、2つの同形ファミリーがある。ファミリーIには、F形、G形、H形、J形、M形、N形、O形及びP形などがある。ファミリーIIには、C形、D形、E形及びR形などがある。Q形は、ファミリーI及びIIとは異なる。ファミリー内の形態は、セルパラメータがわずかに異なる同じ空間群で結晶化する同形であり、化学的に関連しているが元素組成が異なる構造を有する。この場合、同形間の化学組成の差異は、異なる水/溶媒分子の含有から生じる。その結果、同形は、類似しているが同一ではないX線回折パターン及び固形NMRスペクトル(ssNMR)を示す。他の手法、例えば、近赤外分光分析法(NIR)、示差走査熱量法(DSC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、熱重量分析(TGA)又は熱重量分析/赤外分光分析(TG−IR)、Karl Fischer水分析(KF)及び分子モデル化/可視化により、同形の追試同定のためのデータが得られる。脱水/脱溶媒和温度を、DSCにより、加熱速度5℃/分の条件で求めた。
【0040】
C形:この結晶形態は、単結晶構造(表2)−アジスロマイシンの一水和物から同定した。C形は、空間群P212121を有し、且つD形及びE形と同様なセルパラメータを有しているので、ファミリーII同形に属している。その計算された粉末パターンは、D形及びE形と類似している。
【0041】
D形:D形は、シクロヘキサンから結晶化した。D形の単結晶構造は、アジスロマイシンの一水和物/モノシクロヘキサン溶媒和物の化学量論組成を示す(表3)。シクロヘキサン分子は、結晶格子において無秩序となることが分かった。単結晶データから得たD形の水含量及びシクロヘキサン含量の計算値は、それぞれ2.1%及び9.9%である。D形の粉末パターン及び計算による粉末パターンの両方は、C形及びE形のものと類似している。D形の粉末試料は、30〜300℃の5℃/分でのDSC分析において、開始温度約87℃で脱溶媒和/脱水吸熱を示し、200〜280℃でブロードな吸熱(分解)を示した。
【0042】
D形は、アジスロマイシンをシクロヘキサンに2〜4日間スラリー化することにより調製する。固形のD形アジスロマイシンを濾取し、乾燥する。
【0043】
E形:E形を、THF/水媒体から集めた単結晶として得た。E形は、単結晶分析したところ、一水和物及びモノ−THF溶媒和物である(表4)。この単結晶構造により、計算によるPXRDパターンは、C形及びD形のものと類似しており、ファミリーII同形である。
【0044】
E形は、アジスロマイシンをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解することにより調製する。水蒸気を時間をかけて飽和アジスロマイシンTHF溶液に拡散することにより、E形結晶が生じる。
【0045】
F形:F形の単結晶は、モノ水和物/半エタノール和物として、2つのアジスロマイシン、2つの水及び1つのエタノールを含有する非対称単位を有する単斜晶系空間群P21で結晶化した(表5)。F形は、同形であり、全てのファミリーIアジスロマイシン結晶形を形成する。この形態の計算されたPXRDパターンは、他のファミリーI同形のものと類似している。理論水含量とエタノール含量は、それぞれ2.3%及び2.9%である。粉末試料は、110〜125℃の開始温度で脱水/脱溶媒和吸熱を示す。F形は、アジスロマイシンをエタノール(1〜3容(重量基準))に約50〜70℃の温度で溶解することにより、調製する。完全に溶解したら、溶液を、周囲以下の温度に冷却して沈殿を生じさせる。攪拌しながら1〜2時間真空蒸留することによりエタノールの容積を減少させて、収量を増加させることができる。別法として、約0.1〜2容の水(必要に応じて0〜20℃に冷却)を加え、水の添加後30分以内に固形物を集めることができる。水の添加に先立ち、アジスロマイシンのエタノール溶液を、20℃未満、好ましくは15℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは5℃に冷却することにより、実質的に純粋なF形アジスロマイシンが得られる。固形F形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0046】
G形:G形の単結晶構造は、一つの非対称単位当たりアジスロマイシン2分子と水3分子からなっている(表6)。これは、理論水含量が3.5%である、セスキ水和物に相当する。G形の粉末試料の水含量は、約2.5〜約6%の範囲である。総残留有機溶媒は、結晶化に使用される対応の溶媒の1%未満であり、この値は溶媒和物の理論量よりもはるかに小さい。この形態は、約110〜120℃の開始温度で脱水する。
【0047】
アジスロマイシンを予め混合した有機溶媒(メタノール、アセトン、アセトニトリル、エタノール又はイソプロパノールであることができる)/水混合物(容積比1/1)に添加することにより、 G形を調製できる。この混合物を、攪拌し、高温、例えば、45〜55℃で4〜6時間加熱して溶解させる。周囲温度に冷却する間に沈殿が生じる。この固形G形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0048】
H形:この結晶形は、アジスロマイシン遊離塩基の一水和物/半−プロピレングリコール溶媒和物である(表7)。これを、プロピレングリコールを含有する配合溶液から単離した。H形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形と同形である。
【0049】
アジスロマイシン二水和物をプロピレングリコール6容に溶解することにより、H形アジスロマイシンを調製する。得られたアジスロマイシンのプロピレングリコール溶液に、水を2容添加し、沈殿を生じさせる。スラリーを、24時間攪拌し、固形物を濾過し、周囲温度で空気乾燥してH形結晶を得る。
【0050】
J形:J形は、一水和物/半−n−プロパノール溶媒和物である(表8)。溶媒含量の計算値は、n−プロパノール約3.8%、水約2.3%である。実験データによれば、粉末試料については、n−プロパノール約2.5〜約4.0%、水分約2.5〜約3%である。そのPXRDパターンは、その同形のF形、G形、H形、M形及びN形のものに極めて類似している。F形及びG形のように、粉末試料は、115〜125℃で脱水/脱溶媒和吸熱を示す。
【0051】
アジスロマイシンをn−プロパノール4容に約25〜55℃の温度で溶解することにより、J形を調製する。水約6〜7容を室温で添加し、スラリーを0.5〜2時間連続して攪拌する。固形のJ形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥する。
【0052】
K形:K形のPXRDパターンから、95℃で3時間アニーリング後、A形アジスロマイシンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物であることが分かった。K形は、A形の低級水和物であり、準安定高温形態である。
【0053】
L形:この形態は、二水和物(A形)を加熱したときのみに観察された。可変温度粉末X線回折(VT−PXRD)実験では、A形を約90℃に加熱すると、新しい粉末X線回折パターンが現れる。L形と称するこの新しい形態は、A形がTGAにより90℃で約2.5重量%を損失するので一水和物への転化に相当することから、A形の低級水和物である。周囲温度に冷却すると、L形は、迅速にA形に戻る。
【0054】
M形:イソプロパノール/水スラリーから単離したM形は、水とイソプロパノールの両方を含有する。そのPXRDパターン及びss−NMRスペクトルは、ファミリーI同形のものに極めて類似しており、M形がファミリーIに属していることが明らかである。公知のファミリーI同形の結晶構造に類似しているので、M形の単結晶構造は、一水和物/半イソプロパノール和物であろう。M形の脱水/脱溶媒和温度は、約115〜125℃である。
【0055】
アジスロマイシンをイソプロパノール(IPA)2〜3容に40〜50℃で溶解することにより、M形を調製できる。この溶液を、15℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは約5℃に冷却し、約5℃の冷水2〜4容を添加して沈殿させる。M形の種結晶を、結晶化の開始に添加してもよい。スラリーを、約5時間未満、好ましくは約3時間未満、より好ましくは約1時間未満、最も好ましくは約30分以下攪拌し、固形物を濾取する。固形物を、イソプロパノールに再スラリー化してもよい。この操作により、アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形が得られる。
【0056】
N形:A形の水/エタノール/イソプロパノールスラリーから単離したN形結晶は、可変量の結晶化溶媒及び水を含有してもよい。その水含量は、約3.4〜約5.3重量%の範囲で異なる。GCヘッドスペースによる分析から、エタノールとイソプロパノールの溶媒含量が可変であることが分かる。N形試料の総溶媒含量は、通常調製及び乾燥条件によって、約5%未満である。N形のPXRDパターンは、ファミリーI同形のF形、G形、H形、J形及びM形のものと類似している。N形の試料の脱水/脱溶媒和吸熱は、よりブロードで且つ110〜130℃で異なっていてよい。
【0057】
アジスロマイシン結晶格子組み込み有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン、アセトニトリル等と水の混合物からアジスロマイシンを再結晶することにより、N形アジスロマイシンを調製できる。この溶媒混合物を45〜60℃に加熱し、アジスロマイシンを加熱した溶媒混合物に、総容積約4容まで添加する。溶解したら、45〜60℃で連続的に攪拌しながら水1〜3容を添加する。N形アジスロマイシンは、白色固形物として沈殿する。スラリーを、攪拌しながら周囲温度まで冷却させる。固形のN形アジスロマイシンを、濾過により単離し、乾燥する。
【0058】
O形:この結晶形態は、単結晶構造データからみて、アジスロマイシン遊離塩基の半水和物半−n−ブタノール溶媒和物である(表8−A)。O形を、逆溶媒の拡散によりアジスロマイシンのn−ブタノール溶液から単離した。O形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形に同形である。
【0059】
アジスロマイシンを、n−ブタノールに完全に溶解する。逆溶媒、例えば、ヘキサン、水、IPE又は他の非溶媒を拡散により添加すると、O形が沈殿する。
【0060】
P形:これは、アジスロマイシン遊離塩基の半水和物半-n−ペンタノール溶媒和物である提案結晶形である。P形は、アジスロマイシンのn−ペンタノール溶液から逆溶媒の拡散により単離できる。P形の結晶構造は、ファミリーIの結晶形に同形である。
【0061】
P形アジスロマイシンは、以下のようにして調製できる:アジスロマイシンを、n−ペンタノールに完全に溶解させる;逆溶媒、例えば、ヘキサン、水、イソプロピルエーテル(IPE)又は他の非溶媒を拡散添加することにより、P形が沈殿する。
【0062】
Q形:Q形結晶は、独特の粉末X線回折パターンを示す。Q形は、水約4%とTHF約4.5%を含有し、水和物半THF溶媒和物である。主脱水/脱溶媒和温度は、約80〜約110℃である。
【0063】
アジスロマイシン二水和物を、THF6容に溶解し、水2容を添加する。この溶液を、周囲条件で蒸発乾固させてQ形結晶を得る。
【0064】
R形:この結晶形は、非晶質アジスロマイシンをt−ブチルメチルエーテル(MTBE)2.5容に添加することにより、調製する。得られた粘ちょうな白色懸濁液を、周囲条件で3日間攪拌する。固形物を、真空濾過で集め、空気乾燥する。得られたR形バルクアジスロマイシンは、理論水含量2.1重量%及び理論メチルt−ブチルエーテル含量10.3重量%を有する。
【0065】
これらの構造が似ているので、同形は、「混晶」又は「結晶固溶体」と称されることもあるファミリー内の形態の混合物を形成する傾向がある。N形はこのような結晶固溶体であり、溶媒組成及び固形NMRデータからファミリーI同形の混合物であることが分かった。
【0066】
ファミリーI同形とファミリーII同形の両方が、アジスロマイシンの水和物及び/又は溶媒和物である。キャビティ内の溶媒分子は、特定の条件下で溶媒と水との交換を生じる傾向がある。したがって、同形の溶媒/水含量は、ある程度異なっていてよい。
【0067】
同形ファミリーIの結晶形は、加熱したときにA形よりも安定である。F形、G形、H形、J形、M形及びN形の開始脱水温度110〜125℃は、開始脱水温度約90〜約110℃であり且つ約90℃で同時にL形に固体転化するA形よりも高かった。
【0068】
非晶質アジスロマイシン:全てのアジスロマイシンの結晶形は、水若しくは溶媒(単一又は複数)又は水と溶媒(単一又は複数)の両方を含有する。水と溶媒を結晶固形物から除去すると、アジスロマイシンが非晶質となる。非晶質固形物は、初期溶解速度が高いという利点がある。
【0069】
以下の実施例では、種々の結晶形態の合成の出発材料として、特記のない限りはアジスロマイシン二水和物を使用した。他の形態のアジスロマイシン、例えば、非晶質アジスロマイシン又はアジスロマイシンの他の非二水和物結晶形を、用いてもよい。
【実施例】
【0070】
例1:D形の調製
アジスロマイシン二水和物をシクロヘキサンに高温、例えば、25〜50℃で2〜4日間スラリー化することにより、D形を調製した。D形結晶固形物を、濾取し、乾燥した。
【0071】
例2:F形の調製
2A:アジスロマイシン二水和物を、約70℃の温エタノール1容にゆっくりと添加し、65〜70℃で完全に溶解するまで攪拌した。F形の種晶1〜2重量%を入れて結晶化を容易にしてもよい。溶液を、徐々に2〜5℃に冷却させ、冷却水1容を添加した。水を添加後短時間(好ましくは30分未満)で真空濾過により、結晶固形物を濾取した。
【0072】
2B:アジスロマイシン二水和物を、約70℃の温エタノール1容にゆっくりと添加し、65〜70℃で完全に溶解するまで攪拌した。F形の種晶1〜2重量%を入れて結晶化を容易にしてもよい。溶液を、徐々に2〜5℃に冷却させる。エタノール容積を、真空蒸留により減少させてもよい。2時間以下攪拌した後、結晶固形物を、真空濾過で集める。結晶を単離することにより、実質的に純粋なF形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないF形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないF形アジスロマイシンが得られる。
【0073】
例3:G形の調製
反応容器に、A形アジスロマイシンを入れた。別の容器で、メタノール1.5容と水1.5容とを混合した。溶媒混合物を、A形アジスロマイシンを含有する反応容器に添加した。スラリーを、約5時間50℃で加熱攪拌した。加熱を停止し、スラリーを攪拌しながら冷却して周囲温度とした。G形アジスロマイシンを、濾取し、約30分間空気乾燥した。集めたG形アジスロマイシンを、さらに真空オーブン中で45℃で乾燥した。この操作により、実質的に純粋なG形アジスロマイシンが得られ、このG形アジスロマイシンはアジスロマイシン二水和物を実質的に含まない。
【0074】
例4:J形の調製
アジスロマイシンをn−プロパノール4容に約25℃の温度で溶解することにより、J形を調製した。水(6.7容)を添加し、スラリーを1時間連続攪拌した後、約0℃に冷却する。固形のJ形アジスロマイシンを、濾取し、乾燥した。
【0075】
例5:アジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形の調製
5A:アジスロマイシン二水和物を、温イソプロパノール2容に40〜50℃で完全に溶解する。M形の種晶を、必要に応じて入れて結晶化を容易にしてもよい。次に、この溶液を0〜5℃に冷却し、逆溶媒としての冷却水4容を添加し、固形物を真空濾過により集める。固形物を、イソプロパノール1容に、40〜45℃で3〜5時間再スラリー化した後、0〜5℃に冷却する。水を添加後短時間(約15分)で、真空濾過により結晶固形物を集める。得られた固形物を、イソプロパノール0.5〜1容に25〜40℃で再スラリー化し、約5℃に冷却した後、M形固形物を濾取する。
【0076】
5B:アジスロマイシン二水和物(1940g)を、温イソプロパノール(45℃)2容に完全に溶解した。得られた透明溶液を、インライン0.2マイクロメートルフィルターにより濾過して清浄なフラスコに入れた。温度を45℃に維持し、溶液にM形種晶を加えた。冷却水7.8リットルを、8分間かけて添加した。この溶液を、5℃に冷却し、粘ちょうスラリーを得た。固形物を、真空濾過で単離し、清浄なフラスコに移した。結晶アジスロマイシンを、35℃に暖めながらイソプロパノール1容にスラリー化した。このスラリーを、次に5℃で30分間冷却し、固形結晶物質を濾取した。
【0077】
これらの操作により、実質的に純粋なM形アジスロマイシン、G形アジスロマイシンを実質的に含まないM形アジスロマイシン及びアジスロマイシン二水和物を実質的に含まないM形アジスロマイシンが得られる。
【0078】
例6:N形の調製
エタノール2容とイソプロパノール2容を、反応容器に添加し、50℃に加熱した。A形アジスロマイシンを、加熱したエタノール/イソプロパノール混合物に攪拌しながら添加して透明溶液を得た。反応容器に、蒸留水2容(周囲温度)を入れた。50℃で攪拌を継続したところ、約1時間後に固形のN形アジスロマイシンが沈殿した。水を添加して5時間後、加熱を停止した。スラリーを、周囲温度に冷却した。沈殿したN形アジスロマイシンを、濾取し、真空オーブン中45℃で4時間乾燥した。
【0079】
例7:非晶質アジスロマイシンの調製
A形結晶アジスロマイシンを、オーブン中、真空下110〜120℃で一晩加熱した。非晶質固形物を、集め、必要に応じて乾燥剤を用いて保存した。
【0080】
例8:H形の調製
アジスロマイシン二水和物又は他の結晶形を、プロピレングリコール6容に溶解した。得られたアジスロマイシンのプロピレングリコール溶液に、水2容を添加したところ、沈殿が生じた。スラリーを24時間攪拌し、得られた固形物を、濾取し、周囲温度で空気乾燥してH形結晶を得た。
【0081】
例9:Q形の調製
A形アジスロマイシン500mgをTHF2mlに溶解することにより、結晶粉末を調製した。透明無色溶液に、水1mlを室温で添加した。溶液が白濁したら、さらにTHFを1ml添加してアジスロマイシンを完全に溶解させ、得られた溶液を周囲温度で攪拌した。溶媒を7日間かけて蒸発させ、その後、乾燥固形物を集め、特性付けした。
【0082】
例10:粉末X線回折分析
銅X線、固定スリット(1.0、1.0、0.6mm)及びKevex固体検出器を備えたBrukerD5000回折計(ウィスコンシン州にあるMadison社製)を用いて、粉末パターンを収集した。ステップサイズ0.04度及びステップ時間1.0秒を用いて、2θ3.0度から40.0度までのデータを収集した。得られた結果を、表9に示す。
【0083】
A形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図2に示す。
【0084】
D形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図6に示す。
【0085】
F形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図10に示す。
【0086】
G形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図13に示す。
【0087】
J形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図16に示す。
【0088】
M形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図18に示す。
【0089】
N形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図19に示す。
【0090】
非晶質アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図20に示す。
【0091】
Q形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図30に示す。
【0092】
R形アジスロマイシンの実験PXRD回折パターンを、図31に示す。
【0093】
実験の試料間のばらつきは、2θで約±0.2°であり、同じばらつきが、単結晶構造からの粉末の計算値と実験データとの間で観察された。詳細な分析から、ファミリーIにおける同形がPXRDにより表9に示した特性ピーク組ではっきりと認められることが分かった。
【0094】
【表10】
【表11】
【0095】
ファミリーI同形は、以下の共通の特性を有する:2θ6.2度、11.2度、21.0±0.1度及び22.5±0.1度での回折ピーク。各同形は、以下の代表的な回折ピーク組を示し、各組は特徴的なピーク間距離を有する。
【0096】
記載の回折ピーク位置の精度は、2θの±0.2度内である。
【0097】
A形の代表的なPXRDパターンを、図2に示す。A形は、2θ9.3度、13.0度及び18.7度でピークを示す。
【0098】
D形の代表的なPXRDパターンを、図6に示す。D形は、2θ3.9度、10.1度、10.6度及び21.4度でピークを示す。
【0099】
F形の代表的なPXRDパターンを、図10に示す。F形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.5度に1組目;2θ13.9度、14.3度、14.7度及び14.8度に2組目;2θ16.2度、16.6度、17.1度、17.2度及び17.7度に3組目を示す。
【0100】
G形の代表的なPXRDパターンを、図13に示す。G形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.6度に1組目;2θ14.0度、14.4度、14.6度及び14.9度に2組目;2θ16.3度、16.6度、17.2度、17.4度及び17.8度に3組目を示す。
【0101】
J形の代表的なPXRDパターンを、図16に示す。J形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度及び11.4度に1組目;2θ13.9度、14.2度及び14.6度に2組目;2θ16.0度、16.6度、17.0度、17.2度及び17.5度に3組目を示す。
【0102】
M形の代表的なPXRDパターンを、図18に示す。M形は、ファミリーIの特徴的なピークを示し、3組のピーク、すなわち、2θ11.2度に1組目;2θ14.0度及び14.6度に2組目;2θ15.9度、16.6度、17.1度及び17.5度に3組目を示す。
【0103】
N形の代表的なPXRDパターンを、図10に示す。N形は、ファミリーIの特徴的なピークを示す。N形のピーク組は、F形、G形、J形及びM形のものと似ており、2θ11.2度〜11.6度に1組目;2θ13.9度〜15.0度に2組目;2θ15.9度〜17.9度に3組目を示す。ピークは、ファミリーIにおける同形の可変割合での混合のために、位置、強度及び幅がわずかに異なることがある。
【0104】
Q形の代表的なPXRDパターンを、図30に示す。Q形は、2θ6.8度、8.4度及び20.2度にピークを示す。
【0105】
R形の代表的なPXRDパターンを、図31に示す。
【0106】
例11:単結晶X線分析
銅X線及び黒鉛モノクロメーターを備えたBrukerX線回折計を用いて、室温でデータを収集した。直接法を用いて、構造を解明した。全ての必要な結晶学的計算と分子ディスプレイを容易にするために、Bruker AXS社製のSHELXTLコンピュータライブラリー(SHELXTL(商標)、米国ウィスコンシン州マディソンにあるBruker AXS社のリファレンスマニュアル、バージョン5.1(1997))を用いた。
【0107】
例12:単結晶データからのPXRDパターンの計算
単結晶と粉末試料との間の結果を比較するために、単結晶の結果から計算粉末パターンを得ることができる。SHELXTLコンピュータライブラリーの一部分として提供されたXFOG及びXPOWコンピュータプログラムを使用して、この計算をおこなった。計算粉末パターンと実験粉末パターンとを比較することにより、粉末試料が割り当てられた単結晶構造に相当するかどうかを確認する(表9−A)。この操作を、A形、D形、F形、G形及びJ形結晶形態のアジスロマイシンについておこなった。
【0108】
A形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図1に示す。
【0109】
D形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図5に示す。
【0110】
F形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図9に示す。
【0111】
G形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図12に示す。
【0112】
J形アジスロマイシンの計算PXRD回折パターンを、図15に示す。
【0113】
図3、図7、図11、図14及び図17におけるそれぞれA形、D形、F形、G形及びJ形のオーバーレイ粉末X線回折パターンに結果を示す。下の方のパターンは、計算粉末パターン(単結晶の結果から得た)に相当し、上の方のパターンは、代表的な実験粉末パターンに相当する。2つのパターンが一致している場合、粉末試料と対応する単結晶構造とが一致していた。
【0114】
【表12】
【0115】
例13:固体NMR分析
固体NMR分析:
全ての13C固体NMRスペクトルを、11.75T分光計((マサチューセッツ州ビレリカにあるBruker Biospin社)125MHz13C周波数に対応)により収集した。スペクトルを、交差分極マジック角スピンニング(CPMAS)プローブを周囲温度及び圧力で操作して収集した。分析した試料の量に応じて、7mmBL又は4mmBL Brukerプローブ(試料300mg及び75mgにそれぞれ最大速度7kHz及び15kHzを適用)を用いた。データを、5.0Hzの指数ライン広がり関数により処理した。65kHz及び100kHzのプロトンデカップリングを、それぞれ7mmプローブ及び4mmプローブとともに使用した。十分な取得数を平均して、全てのピークについて適切な信号対ノイズ比を得た。典型的には、リサイクル遅延3.0秒で600スキャン(ほぼ総獲得時間30分間に相当)を得た。標準NMRベンダープラクティスに従ってKBr粉末を用いて、マジック角を調整した。スペクトルは、ヘキサメチルベンゼン(HMB)のメチル共鳴(17.3ppm)又はアダマンタン(ADM)のアップフィールド共鳴(29.5ppm)を基準とした。HMB基準スペクトルは、ADM基準の同じスペクトルに対して全てのピークが0.08ppmだけ下のフィールドにシフトした化学シフトを示す。スペクトルウインドウは、極微の190〜0ppmのスペクトル領域を含んでいた。結果を、表10に示す。M形、H形及びR形についてのSs−NMRスペクトルは、ADM基準とした。A形、D形、G形、F形、J形及びN形のSs−NMRスペクトルは、HMB基準とした。H形とR形は、15kHzの速度でスピンした。
【0116】
【表13】
【0117】
【表14】
【0118】
【表15】
【0119】
記載の化学シフトの精度は、特記のない限りは±0.2ppm内である。
【0120】
A形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図21に示す。A形は、178.1ppmにピーク、さらに104.1ppm、98.4ppm、84.6ppm、26.9ppm、13.2ppm、11.3ppm及び7.2ppmにピークを示す。
【0121】
D形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図22に示す。D形は、178.1ppmに最高化学シフトピークを示し、さらに103.9ppm、95.1ppm、84.2ppm、10.6ppm、9.0ppm及び8.6ppmの化学シフトにピークを示す。
【0122】
F形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図23に示す。F形は、約179.1±2ppm(179.5ppm及び178.6ppm)に2つの化学シフトピークを有し、10.1ppm、9.8ppm、9.3ppm、7.9ppm及び6.6ppmに5つのピークの組を有し、58.0±0.5ppm及び17.2±0.5ppmにエタノールピークを示す。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0123】
G形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図24に示す。G形は、179.5ppmの最高化学シフトピーク(<0.3ppmの開裂を有することのある単一ピーク)を有し、10.4ppm、9.9ppm、9.3ppm、7.6ppm及び6.5ppmに5つのピークの組を有する。
【0124】
J形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図25に示す。J形は、約179.1±2ppm(179.6ppm及び178.4ppm)に2つの化学シフトピークを有し、10.0ppm、9.3ppm、8.1ppm及び6.8ppmに4つのピークの組を有し、11.5±0.5ppm及び25.2±0.5ppmにn−プロパノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0125】
M形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図26に示す。M形は、179.1±1ppm(179.6ppm)に一つの化学シフトピークを有し、41.9ppm及び16.3ppmにピークを有し、10.3ppm、9.6ppm、9.3ppm、7.7ppm及び7.1ppmに5つのピークの組を有し、26.0±0.5ppmにイソプロパノールピークを有する。溶媒ピークは、ブロードで且つ強度が比較的弱いことがある。
【0126】
N形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図27に示す。N形は、ファミリーIにおける同形の組み合わせとしての化学シフトを示す。これらのピークは、N形結晶固溶体に含有される同形の可変割合での混合のため、化学シフト並びに相対強度及び幅が異なることがある。
【0127】
非晶質形の代表的な13CssNMRスペクトルを、図28に示す。非晶質アジスロマイシンは、ブロードな化学シフトを示す。特徴的な化学シフトのピーク位置は、179及び11±0.5ppmである。
【0128】
A形、D形、F形、G形、H形、J形、M形、N形及びR形アジスロマイシンについて観察されたssNMRピークを、まとめて表10に示す。
【0129】
例14:剤形のNMR分析
13CssNMRにより医薬剤形に含有されるアジスロマイシンの形態を同定できることを示すために、G形アジスロマイシンを含有する被覆アジスロマイシン錠剤を作製し、13CssNMRにより分析した。錠剤を、湿式顆粒化し、0.262”×0.531”ツーリングを用いてF−Press(英国リバプールにあるManesty社)により錠剤化した。錠剤は、以下に示す処方により総錠剤重量が450mgでG形アジスロマイシン250mgを含有するように配合及び錠剤化した。錠剤に、ピンク色のOpadryII(登録商標)(ラクトース一水和物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、二酸化チタン、Drug&Cosmeticレッド#30と、トリアセチンとの混合物)(ペンシルバニア州ウェストポイントにあるColorcon社製)を均一に被覆した。
【0130】
【表16】
【0131】
【表17】
【0132】
被覆錠剤を、徐々に破砕し、得られた粉末試料を、充填ツールにより、13Cバックグランド含まない固体ロータに充填した。試料の分析は、例13に概略を示す条件下で実施した。
【0133】
G形アジスロマイシンを含有する錠剤の代表的な13CssNMRスペクトルを、図29に示す。
【0134】
例15:抗菌活性:
細菌及び原生動物の病原体に対する本発明の結晶形の活性は、ヒト病原体(アッセイI)又は動物病原体(アッセイII及びIII)の確定している菌株の増殖を阻害する化合物の能力により示される。
【0135】
アッセイI
以下に述べるアッセイIでは、通常の方法と判定基準を用いる。アッセイIは、マクロライド耐性の確定している機構を回避する化合物を得ることができる化学的変性の指針が得られるように設計する。アッセイIでは、細菌菌株のパネルを、特徴付けられたマクロライド耐性機構の代表的なものを含む、種々の標的病原体種を含むようにして作製する。このパネルを使用すると、化学構造/活性の関係を、効力、活性スペクトル、耐性機構を除去するために必要であると考えられる構造要素又は変性(修飾)とに関連して決定することができる。スクリーニングパネルを含む細菌病原体を、下表に示す。多くの場合、マクロライド感受性親菌株とそれに由来するマクロライド耐性菌株の両方が、耐性機構を回避する化合物の能力をより正確に評価するのに有効である。ermA/ermB/ermCと命名されている遺伝子を含有する菌株は、Ermメチラーゼによる23SrRNA分子の修飾(メチル化)のため、マクロライド、リンコサミド及びストレプトグラミンB抗生物質に対して耐性を有するので、一般的に3種の構造の全ての結合を防止する。2種類のマクロライドエフラックスについての記載がなされている;msrAは、マクロライド及びストレプトグラミンの侵入を阻止するブドウ球菌のエフラックス系の成分をコードし、mefA/Eはマクロライドのみを流出させると思われる膜貫通タンパク質をコードする。マクロライド抗生物質の不活性化が生じることがあり、これは2’−ヒドロキシル(mph)のリン酸化又は大環式ラクトン(エステラーゼ)の開裂のいずれかが介在することがある。これらの菌株は、通常のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて及び/又は耐性決定因子を配列決定することによって特徴付けることができる。この用途におけるPCR法の使用については、J.Sutcliffe等,“Detection Of Erythromycin−Resistant Determinants By PCR”,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,40(11),2562−2566(1996)に記載されている。このアッセイは、マイクロタイタートレーでおこなわれ、Performance Standards
for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests−第6版;Approved Standard(The National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)発行)ガイドラインによって判定される;最小阻止濃度(MIC)を、菌株の比較に用いる。結晶化合物を、最初にジメチルスルホキシド(DMSO)中に40mg/ml原液として溶解する。
【0136】
【表18】
【0137】
アッセイIIは、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)に対する活性についての試験に利用され、アッセイIIIは、パスツレラ・ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)に対する活性についての試験に利用される。
【0138】
アッセイII
このアッセイは、マイクロリットルフォーマットでの液体希釈法に基づいている。ピー・ムルトシダ(P.multocida)(菌株59A067)の単一コロニーを、ブレインハートインフージョン(BHI)ブロス5mlに接種する。化合物1mgを、ジメチルスルホキシド(DMSO)125μlに可溶化することによって、試験化合物を調製する。接種されないBHIブロスを用いて、試験化合物の希釈物を調製する。用いた試験化合物の濃度は、二倍連続希釈法によって200μg/ml〜0.098μg/mlの範囲である。ピー・ムルトシダ(P.multocida)接種BHIを接種されないBHIブロスによって希釈して、細胞懸濁液104/200μlを形成する。BHI細胞懸濁液に試験化合物の各連続希釈物を混合して、37℃で18時間インキュベートする。最小阻止濃度(MIC)は、接種されない対照と比較して判定したときに、ピー・ムルトシダ(P.multocida)の増殖の100%阻害を示した化合物の濃度に等しい。
【0139】
アッセイIII
このアッセイは、Steers Replicatorを用いた寒天希釈法に基づいている。寒天プレートから単離した2〜5コロニーを、BHIブロスに接種して、振とうしながら(200rpm)、37℃において一晩インキュベートする。翌朝、300μlの完全増殖ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)前培養物を3mlの新鮮なBHIブロスに接種して、振とうしながら(200rpm)、37℃においてインキュベートする。適当な量の試験化合物を、エタノール中に溶解して、一連の二倍連続希釈物を調製する。各連続希釈物2mlを溶融BHI寒天18mlと混合して、凝固させる。接種したピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)培養物が0.5McFarland標準密度に達したときに、ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)培養物約5μlを、種々な濃度の試験化合物を含有するBHI寒天プレート上に、Steers Replicatorを用いて接種し、37℃で18時間インキュベートする。試験化合物の初期濃度は、100〜200μg/mlの範囲である。MICは、接種されない対照と比較して判定したときに、ピー・ヘモリティカ(P.haemolytica)の増殖の100%阻害を示した試験化合物の濃度に等しい。
【0140】
本発明の結晶形のインビボ活性は、マウスにおいて通常行われる、当業者に周知の通常の動物保護試験によって測定することができる。
【0141】
マウスを、それらの到着時に、ケージに割り当て(10匹/ケージ)、用いる前に少なくとも48時間順化させる。動物に、0.5mlの3x103CFU/ml細菌懸濁液(ピー・ムルトシダ(P.multocida)菌株59A006)を腹腔内接種する。各実験は、0.1Xチャレンジ量で感染された1群と、1Xチャレンジ量で感染された2群とを含めた、少なくとも3つの非薬剤投与対照群を有し;10Xチャレンジデータ群も用いることができる。一般に、ある一定の試験における総てのマウスを、特に反復使用注射器(例えば、Cornwall(登録商標)注射器)を用いて、チャレンジ投与する場合には、30〜90分以内にチャレンジすることができる。チャレンジを開始してから30分後に、最初の化合物処置をする。30分間の終了までに動物の総てがチャレンジされなかった場合には、化合物投与を開始するために、もう一人必要なことがある。投与経路は皮下投与又は経口投与である。皮下投与の場合、首の背部における緩い皮膚に投与され、経口投与の場合、栄養針を用いておこなう。両方の場合に、マウス1匹当りに0.2mlの容量が用いられる。化合物はチャレンジ後30分間目、4時間目及び24時間目に投与される。各試験には、同じ経路で投与される既知効力の対照化合物を含める。動物を毎日観察し、各群の生存動物数を記録する。ピー・ムルトシダ(P.multocida)モデルの監視を、チャレンジ後96時間(4日間)続ける。
【0142】
PD50は、試験した化合物が薬物治療のない場合に致命的であろう細菌感染症による死亡からマウス群の50%を保護する、計算投与量である。
【0143】
本発明の結晶形(以下、「活性化合物」と称する)は、細菌感染症又は原生動物感染症の治療又は予防に経口、非経口、局所又は直腸経路によって投与することができる。一般に、これらの活性化合物は、1回投与量又は分割投与量(即ち、1〜4回投与/日)として約0.2mg/kg体重/日(mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の範囲である投与量で投与するのが最も望ましいが、治療される対象の種、体重及び状態並びに選択された特定の投与経路によって変化が必然的に生じることがある。しかしながら、約2mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲内である投与量レベルを用いるのが、最も望ましい。それにもかかわらず、治療される哺乳動物、魚類又は鳥類の種、前記薬物に対するその個体の反応並びに選択された医薬的製剤の種類及びこのような投与が行われる時間と間隔によって、変化が生じることがある。場合によっては、上記範囲の下限未満の投与量レベルで十分であることがあり、他の場合には、さらに投与量を増やしても有害な副作用を生じることなく用いることができるが、このような大きな投与量の場合は、1日間を通して投与するために最初にいくつかの小さい投与量に分割する。
【0144】
活性化合物を、単独で又は薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて、予め指定された経路によって投与することができ、このような投与は1回投与量で又は複数回投与量で行うことができる。より具体的には、活性化合物を、非常に多様な異なる投与形で投与することができる、即ち、活性化合物を、種々な薬学的に許容される不活性担体と、錠剤、カプセル、菱形剤、トローチ、硬質キャンディ、粉末、スプレー、クリーム、膏薬、座薬、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、薬袋、経口投与用懸濁剤用粉末、水性懸濁液、注射可能な溶液、エリキシル剤、シロップ等の形態で組み合わせることができる。このような担体には、固体希釈剤若しくは充填剤、無菌水性媒質及び種々な非毒性有機溶媒等がある。さらに、経口医薬組成物は、適当に甘味及び/又はフレーバーをつけることができる。一般に、活性化合物はこのような投与形中に約1.0重量%〜約70重量%の範囲の濃度レベルで存在する。
【0145】
経口投与の場合、例えば微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム及びグリシンのような、種々な賦形剤を含有する錠剤を、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような造粒結合剤と共に、例えば、澱粉(好ましくは、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉若しくはタピオカ澱粉)、アルギン酸及びある一定の複合シリケートのような種々な崩壊剤とともに、用いることができる。さらに、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような滑剤が、錠剤形成のためにしばしば非常に有用である。同様な種類の固体組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることもでき;これに関連して好ましい物質には、ラクトース又は乳糖だけでなく、高分子量ポリエチレングリコールなどもある。経口投与のために水性懸濁液及び/又はエリキシル剤が望ましい場合には、活性化合物を種々な甘味剤又はフレーバー剤、着色剤又は染料と組み合わせることができ、必要に応じて、乳化剤及び/又は懸濁化剤も、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの種々な同様な組み合わせのような希釈剤と共に組み合わせることができる。
【0146】
非経口投与の場合、胡麻油若しくは落花生油中又は水性プロピレングリコール中の活性化合物の溶液を用いることができる。水溶液は、必要に応じて適当に緩衝化しなければならず(好ましくは、8より大きいpH)、液体希釈剤は最初に等張性にしなければならない。これらの水溶液は、静脈内注射に好適である。油性溶液は、関節内、筋肉内及び皮下注射に好適である。無菌条件下での総てのこれらの溶液の製造は、当業者に周知の標準製薬技術によって容易におこなうことができる。
【0147】
さらに、活性化合物を、局所投与することも可能であり、これは標準的製薬法に従って、クリーム、ゼリー、ゲル、ペースト、パッチ、軟膏等によっておこなうことができる。
【0148】
ヒト以外の動物、例えば、家畜又は家庭内動物への投与の場合、活性化合物を、動物の飼料に含めて又は経口的にドレンチ組成物として投与することができる。
【0149】
また、活性化合物を、例えば小さい単ラメラ小胞、大きい単ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞のようなリポソーム放出系として投与することもできる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンのような、種々のリン脂質から形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】A形のアジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図2】A形のアジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図3】図1と図2を重ねた図であって、下の方がA形アジスロマイシンの計算回折パターン(図1)であり、上の方がA形アジスロマイシンの実験回折パターン(図2)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図4】C形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図5】D形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図6】D形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図7】図5と図6を重ねた図であって、下の方がD形アジスロマイシンの計算回折パターン(図5)であり、上の方がD形アジスロマイシンの実験回折パターン(図6)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図8】E形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図9】F形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図10】F形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図11】図9と図10を重ねた図であって、下の方がF形アジスロマイシンの計算回折パターン(図9)であり、上の方がF形アジスロマイシンの実験回折パターン(図10)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図12】G形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図13】G形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図14】図12と図13を重ねた図であって、下の方がG形アジスロマイシンの計算回折パターン(図12)であり、上の方がG形アジスロマイシンの実験回折パターン(図13)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図15】J形アジスロマイシンの計算粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図16】J形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図17】図15と図16を重ねた図であって、下の方がJ形アジスロマイシンの計算回折パターン(図15)であり、上の方がJ形アジスロマイシンの実験回折パターン(図16)であり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図18】M形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図19】N形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図20】非晶質アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図21】A形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図22】D形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図23】F形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図24】G形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図25】J形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図26】M形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図27】N形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図28】非晶質アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図29】G形アジスロマイシンを含有する医薬錠剤の13C固体NMRスペクトルである。
【図30】Q形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図31】R形アジスロマイシンの実験粉末X線回折パターンであり、横座標の目盛りの単位は、度(2シータ(2θ))であり、縦座標は強度カウント値である。
【図32】H形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【図33】R形アジスロマイシンの13C固体NMRスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項2】
13C固体NMRスペクトルが、複数のピークを含み、少なくとも1つのピークが、179.5ppmの化学シフトを有することを特徴とする、請求項1に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項3】
50重量%超の請求項1に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、アジスロマイシン粗結晶。
【請求項4】
60重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項3に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項5】
70重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項4に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項6】
80重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項5に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項7】
前記13C固体NMRスペクトルが、10.4ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項2に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項8】
前記13C固体NMRスペクトルが、9.9ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項7に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項9】
前記13C固体NMRスペクトルが、9.3ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項8に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項10】
前記13C固体NMRスペクトルが、7.6ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項9に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項11】
前記13C固体NMRスペクトルが、6.5ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項10に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項12】
アジスロマイシンセスキ水和物結晶の製造方法であって、該アジスロマイシンセスキ水和物がその中で形成されるところのメタノール/水混合溶媒を使用するステップを含む、前記方法。
【請求項1】
アジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項2】
13C固体NMRスペクトルが、複数のピークを含み、少なくとも1つのピークが、179.5ppmの化学シフトを有することを特徴とする、請求項1に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項3】
50重量%超の請求項1に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、アジスロマイシン粗結晶。
【請求項4】
60重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項3に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項5】
70重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項4に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項6】
80重量%超のアジスロマイシンセスキ水和物結晶を含む、請求項5に記載のアジスロマイシン粗結晶。
【請求項7】
前記13C固体NMRスペクトルが、10.4ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項2に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項8】
前記13C固体NMRスペクトルが、9.9ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項7に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項9】
前記13C固体NMRスペクトルが、9.3ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項8に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項10】
前記13C固体NMRスペクトルが、7.6ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項9に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項11】
前記13C固体NMRスペクトルが、6.5ppmの化学シフトのピークをさらに有する、請求項10に記載のアジスロマイシンセスキ水和物結晶。
【請求項12】
アジスロマイシンセスキ水和物結晶の製造方法であって、該アジスロマイシンセスキ水和物がその中で形成されるところのメタノール/水混合溶媒を使用するステップを含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2007−161726(P2007−161726A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30654(P2007−30654)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2002−591516(P2002−591516)の分割
【原出願日】平成14年5月1日(2002.5.1)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2002−591516(P2002−591516)の分割
【原出願日】平成14年5月1日(2002.5.1)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]