説明

結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタ

【課題】高流量かつ長寿命を実現することができる薄膜化された非対称の結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタの提供。
【解決手段】本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、膜の表面の平均孔径が膜の裏面の平均孔径よりも大きく、かつ前記表面から前記裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、膜の表面のフィブリルと結節の面積比が99:1〜75:25であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体等の精密濾過に使用される濾過効率の高い結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている(非特許文献1参照)。このような微孔性膜としては、例えばセルロースエステルを原料として製造されるもの(特許文献1〜7参照)、脂肪族ポリアミドを原料として製造されるもの(特許文献8〜14参照)、ポリフルオロカーボンを原料として製造されるもの(特許文献15〜18参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(特許文献19参照)、などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーによる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を原料とした微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
一般に、微孔性膜の単位面積当たりの濾過可能量は少ない(即ち濾過寿命が短い)。このため、工業的に使用する際には、膜面積を増すため、多くの濾過ユニットを並列して使用することを余儀無くされており、濾過工程のコストダウンの観点から、濾過寿命を上げることが必要とされている。例えば目詰まり等による流量低下に有効な微孔性膜として、インレット側からアウトレット側に向かって孔径が徐々に小さくなる非対称膜が提案されている(特許文献20及び21参照)。
また、小孔径を有する濾過層と、該濾過層より孔径が大きい支持層とからなるポリテトラフルオロエチレン複層多孔膜(特許文献22参照)、ポリテトラフルオロエチレンシート上にポリテトラフルオロエチレン乳化分散液を塗布し、延伸したもの(特許文献23参照)、などが提案されている。
【0004】
しかし、前記特許文献20及び21の非対称膜を、ポリテトラフルオロエチレンを用いて実現しようとすると、該ポリテトラフルオロエチレンが極めて特殊な溶媒にしか可溶でないため、孔径が徐々に小さくなる微孔性膜を製造することができない。また、得られた膜を用いて濾過を行うと、目詰まり等による流量低下を招くという問題がある。
また、前記特許文献22及び23によれば、前記特許文献20及び21における問題は低減できるが、その一方で、塗布し、乾燥させた際に、膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。更に、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献24には、ポリテトラフルオロエチレン半焼成体を延伸し、ポリテトラフルオロエチレン焼成体の融点以上の温度で熱処理したポリテトラフルオロエチレン多孔膜が提案されている。
さらに、特許文献25には、膜の表面の平均孔径が裏面の平均孔径よりも大きくて、且つ表面から裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している非対称のPTFE多孔質膜が開示されている。
【0006】
しかし、前記特許文献24によれば、多孔膜中のフィブリルの割合を大きくすることができるが、十分な濾過寿命が得られないという問題があり、前記特許文献25によれば、膜の濾過寿命を長くすることができるが、十分な流量が得られないという問題がある。また、十分な流量を得るためには、膜を薄くする手段が考えられるが、前記特許文献25の非対称のPTFE多孔質膜では、薄膜化が困難であるという問題もある。
そのため、流量及び濾過寿命の点で十分満足できる性能を有するPTFE多孔質膜の開発が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第3,133,132号明細書
【特許文献3】米国特許第2,944,017号明細書
【特許文献4】特公昭43−15698号公報
【特許文献5】特公昭45−3313号公報
【特許文献6】特公昭48−39586号公報
【特許文献7】特公昭48−40050号公報
【特許文献8】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献9】米国特許第3,408,315号明細書
【特許文献10】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献11】米国特許第4,340,480号明細書
【特許文献12】米国特許第4,450,126号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3,138,525号明細書
【特許文献14】特開昭58−37842号公報
【特許文献15】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,340,482号明細書
【特許文献17】特開昭55−99934号公報
【特許文献18】特開昭58−91732号公報
【特許文献19】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献20】特公昭55−6406号公報
【特許文献21】特公平4−68966号公報
【特許文献22】特開平4−351645号公報
【特許文献23】特開平7−292144号公報
【特許文献24】特開平5−202217号公報
【特許文献25】特開2007−332342号公報
【非特許文献1】アール・ケスティング(R.Kesting)著「シンセティック・ポリマー・メンブラン(Synthetic Polymer Membrane)」マグロウヒル社(McGrawHill社)発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高流量かつ長寿命を実現することができる薄膜化された非対称の結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 膜の表面の平均孔径が膜の裏面の平均孔径よりも大きく、かつ前記表面から前記裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、膜の表面のフィブリルと結節の面積比が99:1〜75:25であることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<2> 結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<3> 結晶性ポリマーからなるフィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程で得られた半焼成フィルムの一方の面を加熱して、前記半焼成フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<4> 結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、前記フィルムの厚み方向に温度勾配を形成して半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程で得られた半焼成フィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<5> 結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである前記<3>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<6> 延伸されたフィルムを親水化処理する親水化工程をさらに含む前記<3>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<7> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
<8> プリーツ状に加工成形してなる前記<7>に記載の濾過用フィルタである。
<9> 結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する前記<7>から<8>のいずれかに記載の濾過用フィルタである。
【0010】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、膜の表面の平均孔径が膜の裏面の平均孔径よりも大きく、かつ前記表面から前記裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、膜の表面のフィブリルと結節の面積比が99:1〜75:25である。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、高流量かつ長寿命を実現することができる薄膜化された非対称の結晶性ポリマー微孔性膜であるので、高流量化により大設備に用いることが可能となり、また、高寿命によりカートリッジの交換回数を減少することができる。
【0011】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーからなるフィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程で得られた半焼成フィルムの一方の面を加熱して、前記半焼成フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含む。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、前記フィルムの厚み方向に温度勾配を形成して半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程で得られた半焼成フィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含む。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法においては、本発明の前記微孔性膜を効率よく製造することができる。
【0012】
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いているので、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。また、比表面積が大きいため微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる効果が大きく、濾過寿命を大きく改善することができる。
【0013】
本発明においては、前記非対称加熱工程における加熱面の反対側である平均孔径が大きい方の面を「表面」と言い、前記非対称加熱工程における加熱面である平均孔径が小さい方の面を「裏面」と言っているが、これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎない。したがって、未加熱の結晶性ポリマーフィルム、及び前記全体加熱工程により得られた半焼成フィルムのいずれの面を加熱して(非対称加熱工程)半焼成後に「表面」にしても構わない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、高流量かつ長寿命を実現することができる薄膜化された非対称の結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、膜の表面の平均孔径が膜の裏面の平均孔径よりも大きく、かつ前記表面から前記裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、膜の表面のフィブリルと結節の面積比が99:1〜75:25である。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、全体加熱工程と、非対称加熱工程と、延伸工程とを少なくとも含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
以下、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
−結晶性ポリマー−
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、始めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
【0017】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアルキレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、液晶性ポリマーなどが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリルなどが挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性と扱い性の観点から、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点から、HDPEが特に好ましい。
【0018】
前記結晶性ポリマーは、そのガラス転移温度または融点が、40℃〜400℃が好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。また、前記結晶性ポリマーの質量平均分子量は、1,000〜100,000,000が好ましい。前記結晶性ポリマーの数平均分子量は、500〜50,000,000が好ましく、1,000〜10,000,000がより好ましい。
【0019】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、表面の平均孔径が裏面の平均孔径よりも大きいことを1つの特徴とする。
また、前記結晶性ポリマー微孔性膜は、膜厚みを「10」とし、表面から深さ方向「1」の厚み部分における平均孔径をP1とし、「9」の厚み部分における平均孔径をP2としたとき、P1/P2が2〜10,000が好ましく、3〜100がより好ましい。
また、前記結晶性ポリマー微孔性膜は、表面と裏面の平均孔径の比(表面/裏面比)が5倍〜30倍が好ましく、10倍〜25倍がより好ましく、15倍〜20倍が更に好ましい。
【0020】
ここで、前記平均孔径は、例えば走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径が求められる。
【0021】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、表面から裏面に向けて平均孔径が連続的に変化していることを特徴とする。これにより、濾過寿命を効果的に改善することができる。また、上記の特徴に加えて、更に単層構造であってもよい。これにより、濾過寿命を効果的に改善することができる。
【0022】
「表面から裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している」とは、横軸に表面からの厚み方向の距離d(表面からの深さに相当)をとり、縦軸に平均孔径Dをとったときに、グラフが1本の連続線で描かれることを意味する。表面(d=0)から裏面(d=膜厚)に至るまでのグラフは傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものであってもよいし、傾きが負の領域と傾きがゼロの領域(dD/dt=0)が混在するものであってもよいし、傾きが負の領域と正の領域(dD/dt>0)が混在するものであってもよい。好ましいのは、傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものであるか、傾きが負の領域と傾きがゼロの領域(dD/dt=0)が混在するものである。更に好ましいのは、傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものである。
【0023】
傾きが負の領域の中には少なくとも膜の表面が含まれることが好ましい。傾きが負の領域(dD/dt<0)においては、傾きが常に一定であっても異なっていてもよい。例えば、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものである場合、膜の表面におけるdD/dtよりも膜の裏面におけるdD/dtが大きい態様をとることができる。また、膜の表面から裏面に向かうにしたがって徐々にdD/dtが大きくなる態様(絶対値が小さくなる態様)をとることができる。
【0024】
「単層構造」からは、2以上の層を貼り合わせたり積層したりすることにより形成される複層構造は除外される。即ち、「単層構造」とは、複層構造に存在する層と層の間の境界を有しない構造を意味する。膜中に、表面の平均孔径よりも小さくかつ裏面の平均孔径よりも大きな平均孔径を有する面が存在することが好ましい。
【0025】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、膜の表面の平均孔径が裏面の平均孔径よりも大きくて、表面から裏面に向けて平均孔径が連続的に変化しており、かつ、単層構造であるものが好ましい。このような微孔性膜であれば、表面側から濾過を行ったときに一段と効率よく微粒子を捕捉することができ、濾過寿命も大きく改善することができるとともに、容易かつ安価に製造することもできる。
【0026】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の表面のフィブリルと結節の面積比は、99:1〜75:25であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、99:1〜80:20が好ましく、99:1〜85:15がより好ましく、99:1〜90:10が特に好ましい。前記フィブリルと結節の面積比が、75:25より小さいと開孔率が下がり、流量が低下することがある。一方、前記フィブリルと結節の面積比が前記特に好ましい範囲内であると、開孔率が上がり、流量の点で有利である。
【0027】
前記結節とは、次のいずれかを満足するものをいう。
(1)複数のフィブリルがつながっているかたまり(図1:点で埋められた部分。)
(2)つながっているかたまりがフィブリル径より太い(図2及び図3:斜線部)
(3)一次粒子及び一次粒子がかたまっていて、そこからフィブリルが放射線状に伸びている(図4、図5及び図6:斜線部)
なお、図7は、結節とは見なさない例である。すなわち、フィブリルが枝分かれしているが、フィブリルと分岐部分の径が同じである場合、分岐は結節とは見なさない。
【0028】
前記フィブリルと結節の面積比は、次に示す方法で測定することができる。
結晶性ポリマー微孔性膜表面(非対称加熱で加熱していない面)の写真を走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)でとる(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)。得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込み、フィブリルと結節に分離し、フィブリルのみからなる像と、結節のみからなる像を得る。そして、その像を演算処理することによりフィブリル像の面積の総和と、結節像の面積の総和を求め、フィブリルと結節の面積比を求めることができる。
【0029】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の気孔率は、50%〜95%であり、55%〜95%が好ましく、60%〜95%がより好ましい。
【0030】
なお、気孔率は、結晶性ポリマー微孔性膜(多孔質膜)中の気孔の体積を%表示したものであり、下記式で表される。
気孔率(%)=(1−結晶性ポリマー微孔性膜の嵩密度/PTFEの真比重)×100
気孔率(%)の測定法を下記に示す。約3cm×約3cmの多孔質膜を切り出し、乾燥重量(Ag)を秤量する。室温(25℃)で、この多孔質膜にイソプロパノールを十分に含ませ、多孔質最表面のイソプロパノールをキムワイプで拭き取り、秤量する(B(g))。PTFEの密度をC(g/cm)=2.16、イソプロパノールの密度をD(g/cm)=0.79、とし、下記式により気孔率%を計算した。
気孔率%=100×{(B−A)×C}/{B×C−A×C+A×D}
【0031】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の膜厚は、5μm〜50μmが好ましく、10μm〜45μmがより好ましく、60μm〜95μmが更に好ましい。
【0032】
なお、膜厚は、1,000分の1mmダイヤルシックネスゲージ(テクロック社製、品番 SM1201)を用いて測定する。膜内の任意の5箇所を測定し、平均値を「膜厚」とする。
【0033】
<結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法>
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、全体加熱工程と、非対称加熱工程と、延伸工程とを少なくとも含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0034】
−結晶性ポリマーフィルム作製工程−
結晶性ポリマーからなる未加熱の結晶性フィルムを製造する際に用いる結晶性ポリマー原料の種類としては、特に制限はなく、上述した結晶性ポリマーを好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン又はその水素原子がフッ素原子に置換された結晶性ポリマーが使用され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーは、数平均分子量500〜50,000,000のものが好ましく、1,000〜10,000,000のものがより好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーとしては、ポリエチレンが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いることができる。ポリテトラフルオロエチレンは、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、好ましくは乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用する。
原料として使用するポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は、250万〜1,000万が好ましく、300万〜1,000万がより好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ポリフロンPTFE F−104、ポリフロンPTFE F−201、ポリフロンPTFE F−205、ポリフロンPTFE F−207、ポリフロンPTFE F−301(いずれも、ダイキン工業株式会社製);Fluon PTFE CD1、Fluon PTFE CD141、Fluon PTFE CD145、Fluon PTFE CD123、Fluon PTFE CD076、Fluon PTFE CD090(いずれも、旭硝子株式会社製);テフロン(登録商標)PTFE 6−J、テフロン(登録商標)PTFE 62XT、テフロン(登録商標)PTFE 6C−J、テフロン(登録商標)PTFE 640−J(いずれも、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)、などが挙げられる。これらの中でも、F−104、CD1、CD141、CD145、CD123、6−Jが好ましく、F−104、CD1、CD123,6−Jがより好ましく、CD123が特に好ましい。
【0035】
前記結晶性ポリマー原料を押出助剤と混合した混合物を作製し、これをペースト押出して圧延することによりフィルムを調製するのが好ましい。押出助剤としては、液状潤滑剤を用いることが好ましく、具体的にはソルベントナフサ、ホワイトオイルなどを例示することができる。前記押出助剤としては、市場で販売されているエッソ石油株式会社製「アイソパー」などの炭化水素油を用いても構わない。前記押出助剤の添加量は、結晶性ポリマー100質量部に対して、20質量部〜30質量部が好ましい。
【0036】
ペースト押出しは、通常50℃〜80℃にて行うことが好ましい。押出し形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常は棒状にするのが好ましい。押出物は次いで圧延することによりフィルム状にする。圧延は、例えばカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けすることにより行うことができる。圧延温度は、通常50℃〜70℃に設定することができる。その後、フィルムを加熱することにより押出助剤を除去して結晶性ポリマー未加熱フィルムとすることが好ましい。このときの加熱温度は用いる結晶性ポリマーの種類に応じて適宜定めることができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。例えば、テトラフルオロエチレンを用いる場合には、150℃〜280℃が好ましく、200℃〜255℃がより好ましい。加熱は、フィルムを熱風乾燥炉に通すなどの方法で行うことができる。このようにして製造される結晶性ポリマー未加熱フィルムの厚みは、最終的に製造しようとする結晶性ポリマー微孔性膜の厚みに応じて適宜調整することができ、後の工程で延伸を行う場合には、延伸による厚みの減少も考慮して調整することが必要である。
なお、結晶性ポリマー未加熱フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0037】
−全体加熱工程−
前記全体加熱工程は、結晶性ポリマーからなるフィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する工程である。
前記全体加熱工程は、後述する延伸工程前のいずれかの段階で行われればよい。即ち、後述する非対称加熱工程の前後のいずれに実施してもよい。
【0038】
前記全体加熱工程における半焼成とは、結晶性ポリマーの加熱体の融点以上の温度で加熱処理することを意味する。
前記全体加熱工程において、結晶性ポリマーの未加熱体(未焼成体)とは、全体加熱処理、及び後述する非対称加熱処理をしていないものを意味する。また、結晶性ポリマーの加熱体(焼成体)とは、未加熱体の融点以上の温度で十分に加熱処理したものを意味する。
前記結晶性ポリマーの融点とは、結晶性ポリマーの未加熱体を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記加熱体の融点及び未加熱体の融点は、結晶性ポリマーの種類や平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
前記加熱処理の温度としては、結晶性ポリマーの加熱体の融点以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーの未加熱体の融点より高い温度、結晶性ポリマーの加熱体の融点とその未加熱体の融点との間の温度などが挙げられる。中でも、結晶性ポリマーの加熱体の融点とその未加熱体の融点との間の温度が、焼成度を制御する点で好ましい。このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンの場合、加熱体の融点が約324℃で未加熱体の融点が約345℃である。従って、半焼成体にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合、324℃〜345℃が好ましく、330℃〜340℃がより好ましく、例えば339℃の温度に加熱する。
【0039】
前記半焼成フィルム(結晶性ポリマーからなるフィルムの半焼成体)とは、焼成度が0.10〜0.85、好ましくは、0.15〜0.80、より好ましくは、0.30〜0.75であるものを示す。
前記半焼成体の焼成度は、次の様にして決定される。ここでは、結晶性ポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた場合を例として説明する。まず、PTFE未焼成体から3.0±0.1mgの試料を秤量して切取り、この試料を用いてまず結晶融解曲線を求める。同様にPTFE半焼成体から3.0±0.1mgの試料を秤量して切取り、この試料を用いて結晶融解曲線を求める。
【0040】
結晶融解曲線は、示差走査熱量計(以下、「DSC」という。例えば島津製作所社製DSC−50型)を用いて記録する。まず、PTFE未焼成体の試料を、DSCのアルミニウム製パンに仕込み、PTFE未焼成体の融解熱および焼成体の融解熱を次の手順で測定する。
(1)試料を50℃/分の加熱速度で250℃に加熱し、次いで10℃/分の加熱速度で250℃から380℃まで加熱する。この加熱工程において記録された結晶融解曲線の1例を図8の曲線Aとして示す。この工程において現われる吸熱カーブのピーク位置を「PTFE未焼成体の融点」または「PTFEファインパウダーの融点」と定義する。
(2)380℃まで加熱した直後、試料を10℃/分の冷却速度で250℃に冷却する。
(3)試料を再び10℃/分の加熱速度で380℃に加熱する。
加熱工程(3)において記録される結晶融解曲線の1例を図8の曲線Bとして示す。加熱工程(3)において現われる吸熱カーブのピーク位置を「PTFE焼成体の融点」と定義する。
【0041】
続いてPTFE半焼成体について結晶融解曲線を工程(1)に従って記録する。この場合の曲線の1例を図9に示す。PTFE未焼成体、焼成体、半焼成体の融解熱は吸熱カーブとベースラインとの間の面積に比例し、島津製作所社製DSC−50型では解析温度を設定すれば自動的に計算される。
【0042】
そこで焼成度は次の式によって計算される。
焼成度=(ΔH−ΔH)/(ΔH−ΔH
ここで、ΔHはPTFE未焼成体の融解熱、ΔHはPTFE焼成体の融解熱、ΔHはPTFE半焼成体の融解熱である。PTFE半焼成体に関しては、特開昭59−152825号公報に詳細な説明がある。
【0043】
前記全体加熱工程における半焼成は、結晶性ポリマーからなるフィルムの全体を加熱して行う。前記加熱については、連続的に加熱する方法、もしくは何度かに分割して間欠的に加熱する方法のいずれも採用することができる。
【0044】
前記加熱の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブンで加熱する方法、ソルトバスで加熱する方法、などの方法が挙げられる。
前記加熱の時間としては、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、通常5秒〜120秒であり、好ましくは10秒〜90秒であり、より好ましくは15秒〜80秒である。
【0045】
−非対称加熱工程−
前記非対称加熱工程は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、前記フィルムの厚み方向に温度勾配を形成して半焼成フィルムを形成する工程である。
前記非対称加熱工程は、後述する延伸工程前のいずれかの段階で行われればよい。即ち、上述した全体加熱工程の前後のいずれに実施してもよい。
【0046】
前記非対称加熱工程における半焼成とは、結晶性ポリマーをその加熱体の融点以上であり、かつ、その未加熱体の融点+15℃以下の温度で加熱処理することを意味する。
前記非対称加熱工程において、結晶性ポリマーの未加熱体(未焼成体)とは、非対称加熱処理、及び上述した全体加熱処理をしていないものを意味する。また、結晶性ポリマーの加熱体(焼成体)とは、未加熱体の融点以上の温度で加熱処理したものを意味する。
前記結晶性ポリマーの融点とは、結晶性ポリマーの未加熱体を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記加熱体の融点及び未加熱体の融点は、結晶性ポリマーの種類や平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンの場合、加熱体の融点が約324℃で未加熱体の融点が約345℃である。従って、半焼成体にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合、327℃〜360℃が好ましく、335℃〜350℃がより好ましく、例えば345℃の温度に加熱する。半焼成体は、融点約324℃のものと融点約345℃のものが混在している状態である。なお、前記半焼成フィルム(結晶性ポリマーからなるフィルムの半焼成体)とは、焼成度が0.10〜0.85、好ましくは、0.15〜0.80、より好ましくは、0.30〜0.75であるものを示す。
前記半焼成体の焼成度は、上述した焼成度の決定と同様に決定することができる。
【0047】
前記非対称加熱工程における半焼成は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して行う。これにより、厚み方向に非対称に加熱温度を制御することができ、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を容易に製造することができる。
また、フィルムの厚み方向の温度勾配としては、表面と裏面の温度差は30℃以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
【0048】
加熱については、本発明の工程中、連続的に加熱する方法、もしくは何度かに分割して間欠的に加熱する方法のいずれも採用することができる。前記非対称加熱工程の定義上、膜面の表裏で温度に差を生じさせることが必要であるが、この方法として、間欠的に加熱することにより表面の温度上昇を抑えるという方法が利用できる。一方、連続的に加熱する場合、この温度勾配を保持するために、裏面の加熱と同時に表面を冷却するという方法も有効に使用できる。
【0049】
加熱方法としては、熱風を吹き付ける方法、熱媒に接触させる方法、加熱した材料に接触させる方法、熱線(赤外線)を照射する方法、マイクロ波等電磁波による加熱など種々の方法が使用できる。この方法として特に制限はされないが、好ましくは、フィルムの表面に加熱物を接触させることにより行う。加熱物としては、加熱ロールを選択することが特に好ましい。加熱ロールであれば、工業的に流れ作業で連続的に半焼成を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。加熱ロールの温度は、上記の半焼成体にする際の温度に設定することができる。加熱ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、通常5秒〜120秒であり、好ましくは10秒〜90秒であり、より好ましくは15秒〜80秒である。
【0050】
前記赤外線を照射する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記赤外線の一般的な定義は「実用赤外線」(人間と歴史社、1992年発行)を参考にすることができる。本発明において、前記赤外線とは、波長が0.74μm〜1,000μmの電磁波を意味し、そのうち波長が0.74μm〜3μmの範囲を近赤外線とし、波長が3μm〜1,000μmの範囲を遠赤外線とする。
本発明においては、未加熱フィルムの表面と裏面での温度差がある方が好ましいため、表層の加熱に有利な遠赤外線が好ましく使用される。
前記赤外線の装置の種類としては、目的の波長の赤外線が照射できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に、近赤外線は電球(ハロゲンランプ)、遠赤外線はセラミック、石英、金属酸化面などの発熱体を用いることができる。
また、赤外線照射であれば、工業的に流れ作業で連続的に半焼成を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。また非接触であるため、クリーン、かつ毛羽立ちのような欠陥が生じることがない。
前記赤外線照射によるフィルム表面温度は、赤外線照射装置の出力、赤外線照射装置とフィルム表面の距離、照射時間(搬送速度)、雰囲気温度で制御でき、上記の半焼成体にする際の温度に設定することができるが、327℃〜380℃が好ましく、335℃〜360℃がより好ましい。前記表面温度が、327℃未満であると、結晶状態が変化せず、孔径制御ができなくなることがあり、380℃を超えると、フィルム全体が溶融することにより過度に形状が変形したり、ポリマーの熱分解が生じることがある。
前記赤外線の照射時間は、特に制限はなく、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、5秒間〜120秒間が好ましく、10秒間〜90秒間がより好ましく、15秒間〜80秒間が更に好ましい。なお、前記非対称加熱工程における赤外線照射は、連続的に行ってもよく、又は何度かに分割して間欠的に行ってもよい。
【0051】
逆に裏面を冷却する工程を実施する場合も、冷風を吹き付ける方法、冷媒に接触させる方法、冷却した材料に接触させる方法、放冷による冷却等種々の方法が使用できる。この方法として特に制限はされないが、好ましくは、フィルムの表面に冷却物を接触させることにより行う。冷却物としては、冷却ロールを選択することが特に好ましい。冷却ロールであれば、表面の加熱と同様に、工業的に流れ作業で連続的に半焼成を行うことができ、しかも、温度制御や装置のメンテナンスも容易である。冷却ロールの温度は、上記の半焼成体にする際の温度と差を生じさせるように設定することができる。冷却ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする半焼成が十分に進行するのに必要な時間であり、加熱工程と同時進行で行うことを前提とすると、通常5秒〜120秒であり、好ましくは10秒〜90秒であり、より好ましくは15秒〜80秒である。
【0052】
加熱ならびに冷却ロールの表面材質は、一般に耐久性に優れるステンレス鋼とすることができ、特にSUS316を挙げることができる。本発明の製造方法では、フィルムの表面を加熱ならびに冷却ロールに接触させることが好ましいが、当該加熱ならびに冷却ロールよりも低い温度に設定されたローラーをフィルムの裏面に接触させても構わない。例えば、常温に維持されたローラーをフィルム裏面から圧接させて、フィルムを加熱ロールにフィットさせるようにしてもよい。また、加熱ロールに接触させる前または後において、フィルムの裏面をガイドロールに接触させても構わない。
【0053】
−延伸工程−
前記延伸工程は、フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する工程である。前記延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
例えば、長手方向(縦方向)に1軸延伸すると、図10A及び図10Bに示すように、結節20と他の結節21との間に、縦方向に延びるフィブリル22が形成される。さらに、幅方向に延伸すると、図11A及び図11Bに示すように、幅方向に延びるフィブリル23が形成される。
【0054】
前記長手方向の延伸倍率は、4倍以上が好ましく、8倍以上がより好ましく、10倍以上が更に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、3倍〜100倍が好ましく、4倍〜90倍がより好ましく、5倍〜70倍が更に好ましく、10倍〜40倍が特に好ましい。
面積延伸倍率は、10倍以上が好ましく、25倍以上がより好ましく、50倍以上が更に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度にフィルムを予備加熱しておいてもよい。
ここで、長手方向乃至幅方向の延伸温度を、結晶性ポリマーの融点以上の温度(例えば、PTFEの融点)としてもよい。延伸温度を結晶性ポリマーの融点以上の温度とすることにより、フィルムの気孔率がさらに高くなる。
【0055】
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。該熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマー加熱体の融点未満で行うことが好ましい。
【0056】
−親水化工程−
前記親水化工程は、延伸後のフィルムを親水化処理する工程である。
前記親水化処理としては、(1)延伸後のフィルムにケトン類を含浸させた後、紫外線レーザーを照射する処理、(2)化学的エッチング処理、などが挙げられる。
【0057】
前記(1)の延伸後のフィルムにケトン類を含浸させた後、紫外線レーザーを照射する処理に使用しうる水溶性ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、アセトンが特に好ましい。結晶性ポリマー微孔性膜に含浸する段階での上記水溶性ケトンの濃度は結晶性ポリマー微孔性膜の材質及び細孔の大きさによって若干変動するが、アセトン及びメチルエチルケトンの場合、好ましくは85質量%〜100質量%である。また、紫外レーザー光照射時の結晶性ポリマー微孔性膜内部の水溶性ケトンの濃度は、使用する紫外レーザー光の波長における吸光度として0.1〜10が好ましい。例えばこれはアセトンの場合、光源としてKrFを使用する場合は、0.05質量%〜5質量%に相当する。吸光度として0.1〜6が好ましく、0.5〜5がより好ましい。この濃度範囲に調整された水溶性ケトンを含んだ結晶性ポリマー微孔性膜に紫外レーザー光を照射する場合には、従来よりもかなり低い照射量で既に満足すべき親水化効果が得られる。
【0058】
一般的には、沸点が50℃〜100℃の水溶性ケトンを用いる場合には、紫外レーザー照射による親水化処理効率が高く、親水化処理後の溶剤除去も容易であるが、沸点が100℃よりも高い水溶性ケトンを用いる場合には、親水化処理後のケトン除去が困難となる。
【0059】
水溶性ケトンを含浸した結晶性ポリマー微孔性膜に紫外レーザー光を照射して親水化処理するに当たっては、均一で高い親水化処理効果を得るために、水溶性ケトンを含浸した結晶性ポリマー微孔性膜に水を含浸させて結晶性ポリマー微孔性膜中の水溶性ケトン水溶液の濃度を、使用する紫外レーザー光の波長における吸光度が0.1〜10、好ましくは0.1〜6、特に好ましくは0.5〜5となるように調整する。前記吸光度が0.1よりも低い場合には十分な親水化処理効果が得難くなることがあり、10よりも高くなると、水溶液による光エネルギーの吸収が大きくなり、微孔内部までの十分な親水化処理が困難となることがある。
結晶性ポリマー微孔性膜中の水溶性ケトン水溶液の濃度を調整するために水を含浸させる方法としては、同じケトンの極低濃度の水溶液中に浸漬するのが好ましい。
ここで、前記吸光度とは、次式で定義される量を意味する。
吸光度≡log10(I/I)=εcd
ただし、εはケトンの吸光係数、cはケトン水溶液の濃度(モル/dm3)、dは透過光路長さ(cm)、Iは溶媒単独の光透過強度、Iはその溶液の光透過強度を表す。本発明で、吸光度がxとなる濃度とは、dが1cmの測定セルで測定した場合に吸光度がxとなるような濃度を意味する。ただし、dが1cmでは透過光量が少なすぎて吸光度の測定が困難であるような高い濃度の場合は、dが0.2cmの測定セルを使用して得られた吸光度を5倍したものを吸光度とした。
【0060】
前記水溶性ケトンの水溶液を結晶性ポリマー微孔性膜に含浸させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、浸漬法、噴霧法、塗布法等を結晶性ポリマー微孔性膜の形態や寸法等に応じて適宜採用すればよいが、浸漬法が一般的である。
前記水溶性ケトン又はその水溶液の含浸温度は、結晶性ポリマー微孔性膜の微孔内への水溶液の拡散速度の観点からは10℃〜40℃が好ましい。含浸温度が10℃よりも低い場合には、微孔内部へ水溶液を十分に拡散させるのに比較的長い時間が必要となり、また、40℃よりも高くなると、水溶性ケトンの蒸発速度が高くなり、好ましくない。
【0061】
前記含浸処理に付した結晶性ポリマー微孔性膜は含浸されている水溶性ケトンの濃度を上記範囲に調整したのち以下の紫外レーザー光照射処理に付される。
紫外レーザー光としては、波長が190nm〜400nm以下のものが好ましく、アルゴンイオンレーザー光、クリプトンイオンレーザー光、Nレーザー光、色素レーザー光、及びエキシマレーザー光等が例示されるが、エキシマレーザー光が好適である。これらの中でも、高出力が長時間にわたって安定して得られるKrFエキシマレーザー光(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)及びXeClエキシマレーザー光(308nm)が特に好ましい。
前記エキシマレーザー光照射は、通常、室温、大気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。また、エキシマレーザー光の照射条件は、フッ素樹脂の種類及び所望の表面改質の程度によって左右されるが、一般的な照射条件は次の通りである。
・フルエンス:10mJ/cm/パルス以上
・入射エネルギー:0.1J/cm以上
【0062】
特に好適なKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、及びXeClエキシマレーザー光の常用される照射条件は次の通りである。
・KrFフルエンス:50〜500mJ/cm/パルス
・入射エネルギー:0.25〜3.0J/cm
・ArFフルエンス:10〜200mJ/cm/パルス
・入射エネルギー:0.1〜3.0J/cm
・XeClフルエンス:50〜500mJ/cm/パルス
・入射エネルギー:3.0〜30.0J/cm
【0063】
前記(2)の化学的エッチング処理としては、アルカリ金属を用いて、結晶性ポリマー微孔性膜を構成するフッ素樹脂を変性し、その変性された部分を除去する酸化分解処理が挙げられる。
前記酸化分解処理は、例えば、有機アルカリ金属溶液を用いて行われる。結晶性ポリマー微孔性膜に、有機アルカリ金属溶液により化学的エッチング処理を施すと、表面は変性され親水性が付与されるとともに、褐色化した層(褐色層)が形成される。この褐色層は、フッ化ナトリウム、炭素−炭素二重結合を有するフッ素樹脂の分解物、これらとナフタレン、アントラセンとの重合物等からなるが、これらは、脱落、分解、溶出等により濾過液に混入する場合があるので、除去することが好ましい。これらの除去は、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ、オゾン等による酸化分解によりすることができる。
【0064】
前記化学的エッチング処理は、有機アルカリ金属溶液等を用いて行うことができるが、具体的には、有機アルカリ金属溶液に結晶性ポリマー微孔性膜を浸漬することにより行うことができる。この場合、結晶性ポリマー微孔性膜の表面側から化学的エッチング処理が行われるので、膜の両表面近傍のみに化学的エッチング処理を施すことも可能である。しかし、膜の保水性をより高めるためには、両表面近傍のみではなく、結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施すことが好ましい。結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施しても、分離膜としての機能の低下は小さい。
前記化学的エッチング処理に用いられる有機アルカリ金属溶液としては、例えばメチルリチウム、金属ナトリウム−ナフタレン錯体、金属ナトリウム−アントラセン錯体のテトラヒドロフラン等の有機溶剤溶液、金属ナトリウム−液体アンモニアの溶液等が挙げられる。これらの中でも、ナフタレンを芳香族アニオンラジカルとした金属ナトリウムとの錯体の溶液が一般に広く用いられているが、結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施こすためには、ベンゾフェノン、アントラセン、ビフェニルを芳香族アニオンラジカルとして用いることが好ましい。
【0065】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、様々な用途に用いることができるが、特に、以下に説明する濾過用フィルタとして好適に用いることができる。
【0066】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その表面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0067】
本発明の濾過用フィルタは、差圧0.1kg/cmとして濾過を行った時に、少なくとも5ml/cm・min以上の濾過が可能なものとすることができる。
本発明の濾過用フィルタの形状としては、ろ過膜をひだ折りするプリーツ型、ろ過膜をのり巻き状にするスパイラル型、円板状のろ過膜を積層させるフレーム・アンド・プレート型、ろ過膜を管状にするチューブ型などがある。これらの中でも、カートリッジあたりのフィルタのろ過に使用する有効表面積を増大させることができる点から、プリーツ型が特に好ましい。
また、劣化したろ過膜を取り換える際にフィルターエレメントのみを取り換えるエレメント交換式フィルターカートリッジと、フィルターエレメントをろ過ハウジングと一体に加工しハウジングごと使い捨てのタイプにしたカプセル式のフィルターカートリッジとに分類される。
【0068】
ここで、図12はエレメント交換式のプリーツフィルターカートリッジエレメントの構造を示す展開図である。精密ろ過膜103は2枚の膜サポート102、104によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するコアー105の廻りに巻き付けられている。その外側には外周カバー101があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端にはエンドプレート106a、106bにより、精密ろ過膜がシールされている。エンドプレートはガスケット107を介してフィルターハウジング(不図示)のシール部と接する。ろ過された液体はコアーの集液口から集められ、流体出口108から排出される。
【0069】
カプセル式のプリーツフィルターカートリッジを図13及び図14に示す。
図13はカプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込まれる前の精密ろ過膜フィルターエレメントの全体構造を示す展開図である。精密ろ過膜2は2枚のサポート1、3によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するフィルターエレメントコア7の廻りに巻き付けられている。その外側にはフィルターエレメントカバー6があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端には上部エンドプレート4、下部エンドプレート5により、精密ろ過膜がシールされている。
図14は、フィルターエレメントがハウジングに組込まれて一体化されたカプセル式のプリーツフィルターカートリッジの構造を示す。フィルターエレメント10はハウジングベース12とハウジングカバー11よりなるハウジング内に組込まれている。下部エンドプレートはOリング8を介してハウジングベース12中心部にある集水管(不図示)にシールされている。液体は液入口ノズル13からハウジング内に入り、フィルターメディア9を通過し、フィルターエレメントコア7の集液口から集められ、液出口ノズル14から排出される。ハウジングベースとハウジングカバーは通常溶着部17で液密に熱融着される。
【0070】
図13は、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールをOリング8を介して行う事例を示しているが、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールは熱融着や接着剤によって行われることもある。またハウジングベースとハウジングカバーとのシールも熱融着の他に、接着剤を用いる方法も可能である。図12〜図14は精密ろ過フィルターカートリッジの具体例であり、本発明はこれらの図に限定されるわけではない。
【0071】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるという特徴を有することから、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを並列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば並列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0072】
本発明の濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられる。特に、本発明の濾過用フィルタは耐熱性及び耐薬品性に優れているため、従来の濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも効果的に用いられる。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
【0074】
−予備成形体の作製−
結晶性ポリマーとして、数平均分子量が約1,000万のポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(旭硝子株式会社製、「Fluon PTFE CD123」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーH」)22質量部を加え、ペーストを作製した。図15に示すように、作製したペースト71を下金型72に敷き詰め、加圧し、密度1.33Kg/mの予備成形体70とした(図16参照)。
【0075】
−未加熱フィルムの作製−
作製した予備成形体70を、図17に示すようなペースト押し出し金型のシリンダー内に挿入し、シート状にペースト押出しを行った。これを、60℃に加熱したカレンダーロールによりカレンダー掛けして、ポリテトラフルオロエチレンフィルム73を作製した。得られたポリテトラフルオロエチレンフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ120μm、平均幅150mm、密度1.55Kg/mのポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。
【0076】
−全体加熱による半焼成フィルムの作製−
得られたポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを339℃のオーブン中で50秒間加熱処理して、焼成度0.50の半焼成フィルムを作製した。
【0077】
−−焼成度の決定−−
前記半焼成体の焼成度は、次のようにして決定した。まず、PTFE未焼成体から3.0±0.1mgの試料を秤量して切取り、この試料を用いてまず結晶融解曲線を求めた。同様にPTFE半焼成体から3.0±0.1mgの試料を秤量して切取り、この試料を用いて結晶融解曲線を求めた。
前記結晶融解曲線は、示差走査熱量計(以下、「DSC」という。島津製作所社製DSC−50型)を用いて記録した。まず、PTFE未焼成体の試料を、DSCのアルミニウム製パンに仕込み、PTFE未焼成体の融解熱および焼成体の融解熱を次の手順で測定した。
(1)試料を50℃/分の加熱速度で250℃に加熱し、次いで10℃/分の加熱速度で250℃から380℃まで加熱した。この工程において現われた吸熱カーブのピーク位置を「PTFE未焼成体の融点」とした。
(2)380℃まで加熱した直後、試料を10℃/分の冷却速度で250℃に冷却した。
(3)試料を再び10℃/分の加熱速度で380℃に加熱した。
加熱工程(3)において現われた吸熱カーブのピーク位置を「PTFE焼成体の融点」とした。
続いてPTFE半焼成体について結晶融解曲線を工程(1)に従って記録した。PTFE未焼成体、焼成体、半焼成体の融解熱は、島津製作所社製DSC−50型で計算した。
そして、焼成度は次の式によって計算した結果、前記半焼成フィルムの焼成度は、0.50であった。
焼成度=(ΔH−ΔH)/(ΔH−ΔH
ここで、ΔHはPTFE未焼成体の融解熱、ΔHはPTFE焼成体の融解熱、ΔHはPTFE半焼成体の融解熱である。
【0078】
−非対称加熱による半焼成フィルムの作製(ロール加熱)−
全体加熱により得られた半焼成フィルムを350℃に加熱したスチールロール(由利ロール株式会社製「誘導発熱方式高温高速カレンダー機(由利ロール株式会社内に設置)」に搭載の誘導発熱金属ロール)で1分間加熱して、非対称加熱による半焼成フィルム(焼成度0.60)を作製した。このとき用いたロールの定常状態(0.1秒間隔の温度測定において10秒間の温度バラツキが1℃以内である状態)での幅方向の温度分布を赤外線サーモグラフィーにより測定したところ、最大温度部位と最小温度部位との温度差は1.0℃であった。
【0079】
−延伸フィルムの作製−
上記で得られた半焼成フィルムを270℃にて長手方向に10倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、フィルムを305℃に予備加熱した後、両端をクリップで挟み、270℃で幅方向に5倍に延伸した。その後、380℃で熱固定を行った。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0080】
(実施例2)
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
実施例1において、非対称加熱による半焼成フィルムの作製を、ロール加熱で行うことに代えて、下記に示す赤外線加熱で行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0081】
−非対称加熱による半焼成フィルムの作製(赤外線加熱)−
全体加熱により得られた半焼成フィルムの一方の面を、タングステンフィラメント内蔵のハロゲンヒーターで近赤外線により、フィルム表面温度が350℃で1分間加熱して、非対称加熱による半焼成フィルム(焼成度0.62)を作製した。
【0082】
(実施例3)
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
実施例1において、全体加熱による半焼成フィルムの作製を非対称加熱による半焼成フィルムの作製(ロール加熱)の前に行うことに代えて、全体加熱による半焼成フィルムの作製を非対称加熱による半焼成フィルムの作製(ロール加熱)の後であって、延伸フィルムの作製の前に行った以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
なお、非対称加熱により作製した半焼成フィルムの焼成度は0.15であり、全体加熱により作製した半焼成フィルムの焼成度は0.60であった。
【0083】
(実施例4)
実施例2において、全体加熱による半焼成フィルムの作製を非対称加熱による半焼成フィルムの作製(赤外線加熱)の前に行うことに代えて、全体加熱による半焼成フィルムの作製を非対称加熱による半焼成フィルムの作製(赤外線加熱)の後であって、延伸フィルムの作製の前に行った以外は、実施例2と同様にして、実施例4のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
なお、非対称加熱により作製した半焼成フィルムの焼成度は0.15であり、全体加熱により作製した半焼成フィルムの焼成度は0.63であった。
【0084】
(実施例5)
実施例1において、延伸フィルムの作製の後に、下記に示す親水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例5のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0085】
−親水化処理−
濃度0.03質量%の過酸化水素水中に、予めエタノールを含浸させた延伸フィルムを浸漬し(液温:40℃)、20時間後に引き上げた該微孔性膜の上方から、フルエンス25mJ/cm/パルス、照射量10J/cmの条件下でArFエキシマレーザー光(193nm)を照射して親水化した。
該微孔性膜の濡れ性は、純水で十分洗浄し、乾燥させた後、JIS K6768に規定された濡れ指数標準液で測定した。即ち、表面張力が順を追って変化する一連の混合液を該微孔性膜に順次滴下してゆき、該微孔性膜を濡らすと判定される混合液の最高の表面張力を濡れ指数として評価した。その結果、該微孔性膜の濡れ指数は52dyn/cmであった。この濡れ指数は、紫外レーザー光を照射しないポリテトラフルオロエチレン製微孔性膜の値(31dyn/cm未満)に比べて著しく大きい。この結果から、親水化処理によりフッ素樹脂表面の濡れ性が大幅に改善されたことが分かった。
【0086】
(比較例1)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、全体加熱工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0087】
<膜の表面のフィブリルと結節の面積比>
実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、該微孔性膜の非対称加熱工程における加熱面の反対側である表面のフィブリルと結節の面積比を、以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜表面(非対称加熱で加熱していない面)の写真を走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)でとり(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込み、フィブリルと結節に分離し、フィブリルのみからなる像と、結節のみからなる像を得た。そして、その像を演算処理することによりフィブリル像の面積の総和と、結節像の面積の総和を求め、フィブリルと結節の面積比を求めた。
【0088】
次に、作製した実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、該微孔性膜の非対称加熱工程における加熱面の反対側である表面の平均孔径が裏面の平均孔径よりも大きく、かつ表面から裏面に向かって平均孔径が連続的に変化しているか否かを確認するため、以下のようにして、フィルム厚み(平均膜厚)、及びP1/P2の測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
<フィルムの厚み(平均膜厚)の測定>
実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の厚み(平均膜厚)を1,000分の1mmダイヤルシックスネスゲージ(テクロック社製、品番 SM1201)により測定した。任意の5箇所を測定し、その平均値を求め平均膜厚とした。
【0090】
<P1/P2の測定>
実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、微孔性膜の膜厚を「10」とし、表面から深さ方向「1」の厚み部分における平均孔径をP1とし、「9」の厚み部分の平均孔径をP2としたときのP1/P2を求めた。
ここで、前記微孔性膜の平均孔径は、走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んでポリテトラフルオロエチレン繊維のみからなる像を得、その像を演算処理することにより平均孔径を求めた。
【0091】
次に、作製した実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、以下のようにして、気孔率、及び加熱面(裏面)の孔径分布の測定を行った。結果を表1に示す。
【0092】
<気孔率の測定>
実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の気孔率を以下のように測定した。約3cm×3cmの多孔質膜を切り出し、乾燥重量(Ag)を秤量する。室温(25℃)で、この多孔質膜にイソプロパノールを十分に含ませ、多孔質最表面のイソプロパノールをキムワイプで拭き取り、秤量する(B(g))。PTFEの密度をC(g/cm)=2.16、イソプロパノールの密度をD(g/cm)=0.79、とし、下記式により気孔率%を計算した。
気孔率%=100×{(B−A)×C}/{B×C−A×C+A×D}
【0093】
<加熱面(裏面)の孔径分布の測定>
実施例1〜5及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の加熱面(裏面)の孔径分布を以下のように測定した。サンプルの幅方向に等間隔に10点写真撮影を行い、平均孔径を求め、以下の式により孔径分布(%)とした。
孔径分布 = (10点の平均孔径の標準偏差値/10点の平均値)× 100
【0094】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜5及び比較例1の各微孔性膜は、加熱面の反対側である表面の平均孔径が裏面の平均孔径よりも大きく、かつ表面から裏面に向かって平均孔径が連続的に変化していることが分かった。
【0095】
また、表1の結果から、比較例1の微孔性膜は、フィブリル:結節の面積比が70:30と低かった。
これに対し、実施例1〜5の各微孔性膜は、フィブリル:結節の面積比が90:10〜92:8と高い値を示し、面積比の増大効果が顕著であった。
【0096】
また、表1の結果から、比較例1の微孔性膜は、気孔率が45%と低かった。
これに対し、実施例1〜5の各微孔性膜は、気孔率が68%から71%と高い値を示し、気孔率の増大効果が顕著であった。
【0097】
また、表1の結果から、比較例1の微孔性膜は、非対称加熱工程における加熱面(裏面)の孔径分布が16と大きかった。
これに対し、実施例1〜5の各微孔性膜は、非対称加熱工程における加熱面(裏面)の孔径分布が6〜7と小さく、非対称加熱工程における加熱面(裏面)の孔径分布の狭小効果が顕著であった。
【0098】
<濾過テスト(1)>
次に、実施例1〜5及び比較例1の各微孔性膜について、濾過寿命テストおよび流量テストを行った。
【0099】
−濾過寿命テスト−
濾過寿命測定は多分散粒径のラテックス分散液を用い、実質的に目詰まりするまでのろ過量(L/m)で評価した。本発明における「実質的に目詰まりする」とは、一定ろ過圧において、初期流量の1/2まで流量が低下した時点と定義する。本測定で用いるラテックス分散液に用いるラテックスの種類は、膜の孔径によって適宜選択される。選択の条件としては、ろ過後の液に含まれる粒子が1ppm以下、かつラテックスの平均粒径と膜の孔径の比が1/5〜5、である。分散媒としてはイソプロパノールを用い、濃度としては100ppmで行った。結果を表2に示す。
【0100】
−濾過流量テスト−
濾過流量測定はJIS K3831に従い以下の条件で行った。試験方法の種類は「加圧ろ過試験方法」を用い、サンプルは直径13mmの円形に切り出し、ステンレス製のホルダーにセットして測定を行った。試験液としてはイソプロパノールを用い、圧力100KPaにおいて100mLの試験液をろ過するのに要した時間を測り、濾過流量(L/min・m)を計算した。結果を表2に示す。
【0101】
【表2】

表2の結果から、比較例1の微孔性膜は110L/mで実質的に目詰まりを起こした。
これに対し、実施例1〜5は、本発明の微孔性膜を用いることにより濾過寿命が大幅に改善されることが分かった。
【0102】
また、比較例1の微孔性膜の流量は、100L/min・mと小さかった。
これに対し、実施例1〜5は、本発明の微孔性膜を用いることにより濾過流量が大幅に改善されることが分かった。実施例1〜5では、流量が900L/min・m以上となり、濾過流量の増大効果が顕著であった。
【0103】
<濾過テスト(2)>
次に、実施例1〜5及び比較例1の各微孔性膜について、濾過テスト(2)を行った。まず、ポリスチレンラテックス(粒子サイズ 0.01μm〜0.1μm、平均粒子サイズ 0.05μm)を0.01質量%含有するIPA分散液を、差圧100KPaとして濾過を行い、濾液中のポリスチレンラテックスの最大粒径(濾過精度)を測定した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
表3の結果から、比較例1の微孔性膜での濾過テスト(2)における濾液中のポリスチレンラテックスの最大粒径は大きかった。
これに対し、実施例1〜5の各微孔性膜での濾過テスト(2)における濾液中のポリスチレンラテックスの最大粒径は小さいことが分かった。
【0106】
(実施例6)
−フィルターカートリッジ化−
実施例1のPTFE微孔性膜を以下の構成のように積層し、ひだ幅12.5mmにプリーツ(プリーツ幅=220mm)し、その230山分のひだをとって円筒状に丸め、その合わせ目をインパルスシーラーで溶着する。円筒の両端15mmずつを切り落とし、その切断面をポリプロピレン性のエンドプレートに熱溶着してエレメント交換式のフィルターカートリッジに仕上げた。
−構成−
1次側 ネット AET社製DELNET(RC−0707−20P)
厚み:0.13mm、坪量:31g/m、使用面積:約1.3m
1次側 不織布 三井化学社製シンテックス(PK−404N)
厚み:0.15mm、使用面積:約1.3m
ろ材 実施例1のPTFE微孔性膜
厚み:約0.05mm、使用面積:約1.3m
2次側 ネット AET社製DELNET(RC−0707−20P)
厚み:0.13mm、坪量:31g/m、使用面積:約1.3m
本発明のフィルターカートリッジは、結晶性ポリマーを用いているため耐溶剤性に優れる。更に孔部が非対称構造を有するため、大流量かつ目詰まりを起こしにくく長寿命であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、例えば、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その1)。
【図2】図2は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その2)。
【図3】図3は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その3)。
【図4】図4は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その4)。
【図5】図5は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その5)。
【図6】図6は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その6)。
【図7】図7は、フィブリル−結節構造の一例の模式図である(その7)。
【図8】図8は、焼成度を測定する場合にDSCにより測定された未焼成PTFE及び焼成PTFEの結晶融解曲線の一例を示す図である。
【図9】図9は、焼成度を測定する場合にDSCにより測定された半焼成PTFEの結晶融解曲線の一例を示す図である。
【図10A】図10Aは、縦方向に延伸した結晶性ポリマー微孔性膜の表面におけるフィブリル−結節構造を説明する図である。
【図10B】図10Bは、縦方向に延伸した結晶性ポリマー微孔性膜の表面のレーザー顕微鏡写真である。
【図11A】図11Aは、幅方向に延伸した結晶性ポリマー微孔性膜の表面におけるフィブリル−結節構造を説明する図である。
【図11B】図11Bは、幅方向に延伸した結晶性ポリマー微孔性膜の表面のレーザー顕微鏡写真である。
【図12】図12は、ハウジングに組込む前の一般的なプリーツフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図13】図13は、カプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込む前の一般的なフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図14】図14は、ハウジングと一体化された一般的なカプセル式のフィルターカートリッジの構造を表す図である。
【図15】図15は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の一例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の予備成形体の一例を示す図である。
【図17】図17は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の他の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1 一次側サポート
2 精密ろ過膜
3 二次側サポート
4 上部エンドプレート
5 下部エンドプレート
6 フィルターエレメントカバー
7 フィルターエレメントコア
8 Oリング
9 フィルターメディア
10 フィルターエレメント
11 ハウジングカバー
12 ハウジングベース
13 液入口ノズル
14 液出口ノズル
15 エアーベント
16 ドレン
17 溶着部
20 結節
21 結節
22 フィブリル
23 フィブリル
70 予備成形体
71 ペースト
72 下金型
73 ポリテトラフルオロエチレンフィルム
101 外周カバー
102 膜サポート
103 精密ろ過膜
104 膜サポート
105 コアー
106a、106b エンドプレート
107 ガスケット
108 流体出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜の表面の平均孔径が膜の裏面の平均孔径よりも大きく、かつ前記表面から前記裏面に向けて平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、膜の表面のフィブリルと結節の面積比が99:1〜75:25であることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項2】
結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項3】
結晶性ポリマーからなるフィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程で得られた半焼成フィルムの一方の面を加熱して、前記半焼成フィルムの厚み方向に温度勾配を形成した半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項4】
結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面を加熱して、前記フィルムの厚み方向に温度勾配を形成して半焼成フィルムを形成する非対称加熱工程と、前記非対称加熱工程で得られた半焼成フィルムの全体を加熱して、半焼成フィルムを形成する全体加熱工程と、前記全体加熱工程により得られた半焼成フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項5】
結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである請求項3から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項6】
延伸されたフィルムを親水化処理する親水化工程をさらに含む請求項3から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。
【請求項8】
プリーツ状に加工成形してなる請求項7に記載の濾過用フィルタ。
【請求項9】
結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する請求項7から8のいずれかに記載の濾過用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−58026(P2010−58026A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225184(P2008−225184)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】