説明

結晶性化合物の固体製剤

本明細書には、活性医薬成分の製剤であって、活性医薬成分または薬物が1種以上の固体添加剤を含む固体懸濁物中に含まれる製剤が記載される。本明細書に記載される製剤は、あらゆる薬物または活性医薬成分(有機溶媒系および/または水性溶媒系において限られた溶解度を有するものを含む)を調合するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年10月19日に出願された米国仮特許出願第60/981,185号明細書および2008年3月24日に出願された米国仮特許出願第60/038,943号明細書についての米国特許法第119条(e)による利益を主張しており、これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、製剤の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物、そして特に、溶解性に乏しい薬物の生物学的利用能の改善が、非常に多くの製薬研究の中心であった。製薬業界全体にわたり、この問題に対処するための多くの異なるアプローチが報告されている。錠剤、カプセル剤、分散性粉剤などのための固体製剤という特定の領域において、典型的なアプローチは、界面活性剤および他のヒドロトロピー性物質(hydrotropic substance)を用いて薬物の生物学的利用能を増加させることである。近年、薬物を固体キャリアマトリックス中に分散させた固体分散体が報告された。その分散体において、薬物は、迅速な溶出のために非晶質であり得、または場合によっては、ある程度の結晶性(crystallinity)を保持し得る。しかしながら、その分散体において、キャリアマトリックスは、好都合には100%非晶質であることが十分に証明されている。その固体分散体は、非常に水に溶け易いポリマーマトリックス中に薬物を溶解させることにより調製され、製造プロセスの最後には、ポリマーマトリックス、そして多くの場合、薬物およびポリマーマトリックスの両方が非晶質固体の状態にあり、剤形からの溶出速度を加速する。さらに、そのような固体分散体が調製される場合、薬物中の高結晶性の存在または少しでもキャリアマトリックスの結晶性が検出されると、その調合バッチは捨てられることになることが従来から認められている。したがって、キャリアマトリックス中の結晶性は、固体分散体からの薬物の溶出速度および最終的な放出に悪影響を及ぼす有害な特性であることが認められてきた。それらの制約と共に、そのような固体分散体製剤はまた、薬物配合量が制限されるという欠点、ならびに調合物質の長期にわたる保管または熱および湿度の典型的な環境条件下での保管を妨げる非晶質材の不安定性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
活性医薬成分(薬学的に受容可能な有機溶媒系および薬学的に受容可能な水性溶媒系のいずれかまたは両方において限られた溶解性を有する活性医薬成分を含む)の小結晶の混合物を含む製剤が、そのような活性医薬成分のより迅速な分散、溶出および/または放出をもたらし得ることが見出された。一般的に、この製剤は、1種以上の活性医薬成分および1種以上の水溶性固体添加剤からなる小結晶の均質混合物により特徴づけられ得る。本明細書において、そのような固体製剤は固体懸濁物とも呼ばれ、これは、活性医薬成分のうちの少なくとも1種および固体添加剤のうちの少なくとも1種が結晶形態にあることを示している。活性医薬成分および固体添加剤それぞれの結晶は、一般的にマイクロメートル領域にあり、流動性粉末と一致する。しかしながら、広範な結晶の大きさ(例えば、ミリメートル領域からナノメートル領域の結晶を含む)が本明細書に記載される方法により提供され、依然として迅速に溶出し、迅速に分散し、迅速に崩壊し、かつ/または迅速に放出する製剤をもたらし得ることが理解される。また、本明細書に記載される製剤が、保管時間の長さおよび/または保管条件(例えば、相対湿度および温度)の点で改善された保管性を示し得ることも理解される。
【0005】
例示的な一実施形態において、約5〜95重量%の1種以上の活性医薬成分および約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性添加剤からなる固体懸濁物を含む医薬組成物が記載される。一態様において、固体添加剤のうちの少なくとも1種が、活性医薬剤の融解温度より低い融解温度を有する。別の態様において、固体懸濁物において活性医薬成分のうちの少なくとも1種の少なくとも一部が、結晶として存在する。別の態様において、固体懸濁物において固体添加剤のうちの少なくとも1種の少なくとも一部が結晶として存在する。
【0006】
別の例示的な実施形態において、添加剤が薬学的に受容可能なポリヒドロキシ化合物、ヒドロキシカルボン酸、および/またはポリヒドロキシカルボン酸から選択される医薬組成物が記載される。
【0007】
別の例示的な実施形態において、添加剤が薬学的に受容可能な還元炭水化物、糖アルコール、およびヒドロキシカルボン酸から選択される医薬組成物が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】製剤Gri10を調製する際に用いられる押出処理条件:(a)トルク[Ncm]、(b)温度[℃]および(c)スクリュー速度[rpm]。
【図2a】溶出プロファイル:(a)Gri10、(b)Phe10、(c)Spi10、(d)グリセオフルビン、(e)フェニトイン、(f)スピロノラクトン
【数1】

【図2b】溶出プロファイル:(a)Gri50、(b)Gri50 28d、(c)Gri50 90d、(d)グリセオフルビン
【数2】

【図2c】10%グリセオフルビンを含む押出物の溶出プロファイル:(a)乳酸、(b)マンニトール、(c)キシリトール、(d)グリセオフルビン粉末。
【図3a】自記温度記録図:(a)Gri10、(b)α−マンニトールおよび(c)グリセオフルビン。
【図3b】自記温度記録図:(a)Phe10、(b)α−マンニトールおよび(c)フェニトイン。
【図3c】自記温度記録図:(a)Spi10、(b)α−マンニトールおよび(c)スピロノラクトン。
【図3d】自記温度記録図:(a)Gri50、(b)α−マンニトールおよび(c)グリセオフルビン。
【図4a】X線図:(a)Gri10、(b)α−マンニトールおよび(c)グリセオフルビン。
【図4b】X線図:(a)Phe10、(b)α−マンニトールおよび(c)フェニトイン。
【図4c】X線図:(a)Spi10、(b)α−マンニトールおよび(c)スピロノラクトン。
【図4d】X線図:(a)Gri50、(b)α−マンニトールおよび(c)グリセオフルビン。
【図5a】(a)グルコース押出物および(b)グルコースからのX線回折図。
【図5b】(a)フルクトース押出物および(b)フルクトースからのX線回折図。
【図6a】(a)ソルビトール押出物および(b)ソルビトールからのX線回折図。
【図6b】(a)マンニトール押出物および(b)マンニトールからのX線回折図。
【図7a】(a)キシリトール押出物および(b)キシリトールからのX線回折図。
【図7b】(a)アラビトール押出物および(b)アラビトールからのX線回折図。
【図8】(a)乳酸押出物および(b)乳酸からのX線回折図。
【図9a】(a)押出物、(b)キシリトールおよび(c)グリセオフルビンからのX線回折図。
【図9b】(a)押出物、(b)乳酸および(c)グリセオフルビンからのX線回折図。
【図9c】(a)押出物および(b)キシリトールからのDSC自記温度記録図。
【図9d】(a)押出物および(b)乳酸からのDSC自記温度記録図。
【図10】37℃の水中の溶出プロファイル(n=6)(a)Gri50、低剪断力;(b)Gri50、高剪断力;(c)Gri10、低剪断力;(d)Gri10、高剪断力。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的な一実施形態において、約5〜95重量%の1種以上の活性医薬成分および約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性添加剤からなる固体懸濁物を含む医薬組成物が記載される。一態様において、固体添加剤のうちの少なくとも1種が、活性医薬剤の融解温度より低い融解温度を有する。別の態様において、固体懸濁物において活性医薬成分のうちの少なくとも1種の少なくとも一部が結晶として存在する。別の態様において、固体懸濁物において固体添加剤のうちの少なくとも1種の少なくとも一部が結晶として存在する。
【0010】
別の例示的な実施形態において、添加剤が薬学的に受容可能なポリヒドロキシ化合物、ヒドロキシカルボン酸、および/またはポリヒドロキシカルボン酸から選択される医薬組成物が記載される。
【0011】
別の例示的な実施形態において、添加剤が薬学的に受容可能な還元炭水化物、糖アルコール、およびヒドロキシカルボン酸から選択される医薬組成物が記載される。
【0012】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの活性医薬成分を含む医薬組成物であって、固体添加剤がモノマーである医薬組成物が記載される。別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの活性医薬成分を含む医薬組成物であって、固体添加剤がオリゴマーである医薬組成物が記載される。一態様において、オリゴマーは10マー以下である。一変形例において、オリゴマーは5マー以下である。別の変形例において、オリゴマーは3マー以下である。別の変形例において、オリゴマーは、2マー以下である。前述のオリゴマーの各モノマーは、同じであっても異なってもよいことが理解される。例示的なモノマーとしては、本明細書に記載された、ポリヒドロキシ化合物、ヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸、還元炭水化物、糖アルコール、およびヒドロキシカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。別の態様において、各モノマーは、約1000以下の分子量を有する。一変形例において、各モノマーの分子量は約500以下である。別の変形例において、各モノマーの分子量は約250以下である。別の変形例において、各モノマーの分子量は約200以下である。
【0013】
特に、本明細書に記載される固体添加剤は、例示的に、アラビトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アドニトール、および/またはラクチトール、ならびにそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。一変形例において、本明細書に記載される固体添加剤は、マンニトール、乳酸、アドニトール、キシリトール、および/またはソルビトール、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。別の変形例において、本明細書に記載される固体添加剤は、キシリトール、マンニトール、および/または乳酸、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0014】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、未調合の(unformulated)活性医薬成分が少なくとも約100℃の融点を有する医薬組成物が記載される。一変形例において、未調合の活性医薬成分は、少なくとも約125℃の融点を有する。別の変形例において、未調合の活性医薬成分は、少なくとも約150℃の融点を有する。別の変形例において、未調合の活性医薬成分は、少なくとも約200℃の融点を有する。別の変形例において、未調合の活性医薬成分は、少なくとも約250℃の融点を有する。
【0015】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0016】
【表1】

【0017】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0018】
【表2】

【0019】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0020】
【表3】

【0021】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0022】
【表4】

【0023】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0024】
【表5】

【0025】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0026】
【表6】

【0027】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0028】
【表7】

【0029】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0030】
【表8】

【0031】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0032】
【表9】

【0033】
【表10】

【0034】
【表11】

【0035】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0036】
【表12】

【0037】
【表13】

【0038】
【表14】

【0039】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0040】
【表15】

【0041】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、以下およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0042】
【表16】

【0043】
【表17】

【0044】
【表18】

【0045】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、例示的に、イブプロフェン、パクリタキソール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、フェニトイン、スピロノラクトン、およびそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない、医薬組成物が記載される。
【0046】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が少なくとも部分的に結晶形態にあり、結晶性の存在および程度がX線粉末回折により決定され得る医薬組成物が記載される。特に、X線粉末回折図が、活性医薬成分について1つ以上の別個のピークを示す医薬組成物が記載される。本明細書において、X線粉末回折図における1つ以上の別個のピークの存在は、結晶性を示していると理解される。X線粉末回折は、本明細書において記載される通りに実施されても、任意の従来の方法および装置を用いて実施されてもよいことが理解される。
【0047】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が少なくとも部分的に結晶形態にあり、結晶性の存在および程度が熱分析または熱量測定により(例えば、示差走査熱分析(DSC)または示差熱分析(DTA)を用いることにより)決定され得る医薬組成物が記載される。特に、DSC曲線またはDTA曲線が、活性医薬成分について1つ以上の別個のピークまたは転移パターンを示す医薬組成物が記載される。本明細書において、DSC曲線またはDTA曲線における1つ以上の別個のピークまたは転移パターンの存在は、結晶性を示していると理解される。DSCもしくはDTA、または同等の技術は、本明細書において記載される通りに実施されても、任意の従来の方法および装置を用いて実施されてもよいことが理解される。
【0048】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体添加剤の内の少なくとも1種が少なくとも部分的に結晶形態にあり、結晶性の存在および程度がX線粉末回折により決定され得る医薬組成物が記載される。特に、X線粉末回折図が、固体添加剤のうちの少なくとも1種について1つ以上の別個のピークを示す医薬組成物が記載される。本明細書において、X線粉末回折図における1つ以上の別個のピークの存在は、結晶性を示していると理解される。X線粉末回折は、本明細書に記載される通りに実施されても、任意の従来の方法および装置を用いて実施されてもよいことが理解される。
【0049】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体添加剤のうちの少なくとも1種が少なくとも部分的に結晶形態にあり、結晶性の存在および程度がサーモグラフィまたは熱量測定により(例えば、示差走査熱分析(DSC)または示差熱分析(DTA)を用いることにより)決定され得る医薬組成物が記載される。特に、DSC曲線またはDTA曲線が、固体添加剤のうちの少なくとも1種について1つ以上の別個のピークまたは転移パターンを示す医薬組成物が記載される。本明細書において、DSC曲線またはDTA曲線における1つ以上の別個のピークまたは転移パターンの存在は、結晶性を示していると理解される。DSCもしくはDTA、または同等の技術は、本明細書において記載される通りに実施されても、任意の従来の方法および装置を用いて実施されてもよいことが理解される。
【0050】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物において活性医薬成分のうちの少なくとも1種の大部分が結晶として存在する医薬組成物が記載される。別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物において固体添加剤のうちの少なくとも1種の大部分が結晶として存在する医薬組成物が記載される。
【0051】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物の約50%未満が非晶質である医薬組成物が記載される。一変形例において、固体懸濁物の約20%未満が非晶質である。別の変形例において、固体懸濁物の約10%未満が非晶質である。別の変形例において、固体懸濁物の約5%未満が非晶質である。別の変形例において、固体懸濁物の約1%未満が非晶質である。本明細書で用いられる場合、非晶質という用語は、結晶形態または他の分子組織をほとんどまたは全く有さない固体形態をいう。
【0052】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物が約50%を超えて結晶質である医薬組成物が記載される。一変形例において、固体懸濁物は、約80%を超えて結晶質である。別の変形体において、固体懸濁物は、約90%を超えて結晶質である。別の変形例において、固体懸濁物は、約95%を超えて結晶質である。別の変形例において、固体懸濁物は、約99%を超えて結晶質である。上記の各々において、医薬組成物の各構成成分の結晶形態は1種以上であり得ると理解される。
【0053】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物が調製から24時間以内に結晶性を示す医薬組成物が記載される。一変形例において、固体懸濁物は、調製から12時間以内に結晶性を示す。別の変形例において、固体懸濁物は、調製から6時間以内に結晶性を示す。別の変形例において、固体懸濁物は、調製から1時間以内に結晶性を示す。
【0054】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約1g/mL以下の溶解度を有する医薬組成物が記載される。一変形例において、活性医薬成分は、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約100mg/mL以下の溶解度を有する。別の変形例において、活性医薬成分は、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する。
【0055】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの活性医薬成分を含む医薬組成物であって、未調合時の医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する医薬組成物が記載される。一変形例において、未調合時の活性医薬成分は、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約1mg/mL以下の溶解度を有する。別の変形例において、未調合時の活性医薬成分は、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約0.1mg/mL以下の溶解度を有する。別の変形例において、未調合時の活性医薬成分は、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約1μg/mL以下の溶解度を有する。
【0056】
別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、1種以上の活性医薬成分が、固体懸濁物の約10重量%〜約50重量%を占める医薬組成物が記載される。一変形例において、1種以上の活性医薬成分が、固体懸濁物の約10重量%〜約40重量%を占める。別の変形例において、1種以上の活性医薬成分が、固体懸濁物の約15重量%〜約35重量%を占める。
【0057】
上記の例示的な実施形態の各々において、本明細書に記載される製剤中に、単一の活性医薬成分が含まれ得ること、または2種の活性医薬成分が含まれ得ること、または複数種の活性医薬成分が含まれ得ることが理解されるべきである。上記の例示的な実施形態の各々において、本明細書に記載される製剤中に、単一の固体添加剤が含まれ得ること、または2種の固体添加剤が含まれ得ること、または複数種の固体添加剤が含まれ得ることが、さらに理解されるべきである。
【0058】
本明細書に記載されるように、驚くことに、本明細書に記載される製剤は、対応する未調合の活性医薬成分と比較した場合、迅速な崩壊、迅速な溶出、および/または迅速な放出速度を示すことが見出された。一実施形態において、本明細書に記載される製剤からの活性医薬成分の崩壊、迅速な溶出および/または放出速度は、類似または同一の条件下で評価される場合、対応する未調合の活性医薬成分と比較して、少なくとも2倍迅速であるか、少なくとも3倍迅速であるか、少なくとも5倍迅速であるか、または少なくとも10倍迅速である。別の実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物が、約6時間以下の蒸留水中溶出半減期を有する医薬組成物が記載される。一変形例において、固体懸濁物は、約2時間以下または約1.5時間以下の蒸留水中溶出半減期を有する。
【0059】
別の例示的な実施形態において、例えば、上記実施形態のうちのいずれかの医薬組成物であって、固体懸濁物の形態が、活性医薬成分および固体添加剤の均質混合物により特徴づけられる医薬組成物が記載される。一態様において、固体懸濁物中の各構成成分の結晶の大きさは非常に小さく、その塊状材(bulk material)は極めて粒の細かい(highly−grained)微細構造を示す。そのような微細構造においては、同じ化学組成の結晶が隣接する場合、それらは結合して単一のより大きな結晶を形成するよりもむしろ、固体懸濁物中で別個の粒子または領域を形成する。理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、そのような微細構造が、本明細書に記載される製剤の迅速な分散および/または溶出に積極的に寄与すると考えられる。
【0060】
望ましくは、固体添加剤は毒物学的可能性が低く、かつ医薬または食品の材料として既に承認されていることが理解される。また、望ましくは、固体添加剤は親水特性を有することも理解される。理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、そうした親水特性と、活性医薬成分および固体添加剤の均質混合物と、各構成成分の結晶性とのそれぞれの組み合わせが、活性医薬成分の溶出速度を向上させると考えられる。さらに、理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、活性医薬成分および固体添加剤の均質混合物と各構成成分の結晶性との組み合わせが、製剤の安定性も向上させると考えられる。
【0061】
本明細書に記載される固体懸濁物を調製するための方法もまた、本明細書に記載される。一実施形態において、固体懸濁物は押出により調製される。一態様において、この方法は、約5〜95重量%の活性医薬成分を約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性固体添加剤と混合する工程と;活性医薬成分および1種以上の固体添加剤を含む前記混合物を、固体添加剤のうちの少なくとも1種の固体添加剤の融点に近いまたはその融点より高い温度に加熱する工程と;ならびに加熱された混合物を押出して固体懸濁物を形成する工程とを含む。一変形例において、約5〜95重量%の活性医薬成分が、約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性固体添加剤とは別個に加えられる。活性医薬成分が最初に加えられ、1種以上の水溶性固体添加剤を加える前に加熱され得ること、または、別の方法では、1種以上の水溶性固体添加剤が最初に加えられ、活性医薬成分を加える前に加熱され得ることが理解される。
【0062】
例示的な押出装置が本明細書に記載されるが、任意の従来の押出装置を使用して本明細書に記載される製剤を調製し得ることが理解されるべきである。一態様において、押出処理は、押出装置が活性医薬成分および固体添加剤の混合物に十分なエネルギーを伝達するような高トルクで行われる。一変形例において、押出処理は、押出装置が活性医薬成分および固体添加剤の混合物に十分なエネルギーを伝達するような高剪断力により行われる。理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、本明細書に記載される処理で用いられる高トルクおよび高剪断力が、各々、本明細書に記載される固体懸濁物の潜在的に高い活性医薬成分の配合量に寄与し得ると考えられる。さらに、理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、本明細書に記載される処理で用いられる高トルクおよび/または高剪断力が、各々、本明細書に記載される固体懸濁物の潜在的に迅速な溶出速度に寄与し得ると考えられる。さらに、理論に拘束されるわけではないが、本明細書において、本明細書に記載される処理で用いられる高トルクおよび/または高剪断力が、各々、本明細書に記載される固体懸濁物により示される結晶性に寄与し得ると考えられる。そのような結晶性は、本明細書に記載されるようなその結晶性が発現させる性向および速度の両方、ならびに微晶質構造、粒径および粒子配列という本明細書に記載される固体懸濁物を構成する化合物の全般的な性質を含む。
【0063】
別の態様において、押出処理は、固体添加剤のうちの少なくとも1種の固体添加剤の融解温度以上の温度で行われる。一変形例において、押出処理は、固体添加剤全ての組み合わせの融点以上の温度で行われる。別の変形例において、押出処理は、最も高い融点を有する固体添加剤の融点以上の温度で行われる。別の変形例において、押出処理は、活性医薬成分のうちの少なくとも1種の活性医薬成分の融解温度より低い温度で行われる。別の変形例において、押出処理は、活性医薬成分の組み合わせの融解温度より低い温度で行われる。別の変形例において、押出処理は、活性医薬成分のうちいずれか最も低い融解温度を有する活性医薬成分の融解温度より低い温度で行われる。
【0064】
固体剤形(錠剤、カプセル剤、分散性粉剤などを含むが、これらに限定されない)を調製するために、本明細書に記載される固体懸濁物を、任意の従来の方法で加工し得る。剤形を調製するために、さらにキャリア、希釈剤および/または賦形剤を本明細書に記載される固体懸濁物に加え得ることが理解されるべきである。例示的な従来の加工は、例えば米国特許第4,310,543号明細書、第4,525,339号明細書、第4,892,742号明細書、第5,190,748号明細書、第5,318,781号明細書、第5,393,765号明細書、第6,008,228号明細書、第6,350,786号明細書、第6,492,530号明細書、および第7,014,866号明細書に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0065】
材料
商業的供給者から入手した以下の材料を用いた:グリセオフルビン(Hawkins,Minneapolis,MN,USA)、マンニトール(Pearlitol50 C,Roquette,Lestrem,France)、アドニトール(Alfred Aesar,Karlsruhe,Germany)、フルクトース(Aldrich,Milwaukee,WI,USA)、グルコース(Merck,Rahway,NJ,USA)、ソルビトール(ICI Americans,Willington,DE,USA)およびキシリトール(Spectrum,Gardena,CA,USA)、フェニトイン(Spectrum,Gardena,CA,USA)およびスピロノラクトン(Hawkins,Minneapolis,MN,USA)。全ての物質が、米国薬局方(USP)グレードであった。本調査で用いた活性医薬成分は、製薬分野において、低溶解性および低溶出速度を有することが知られている。モデル化合物として、これらは、提示された固体懸濁物方法論を試す実行可能な手段を代表する。
【0066】
実施例の方法
押出
乾燥粉末材料を、ビーカー中で予め混合し、続いて押出機(Haake MiniLab,Thermo Electron,Newington,NH,USA)のラムフィーダーに移した。約7gの粉末材料を、次々に実施される4つの異なる供給工程に分割した。これらの材料を押出機中で混合し、続いて1mm径のダイを通して押出した。押出物をアルミホイル上で25℃に冷却し、次いで25℃、60%相対湿度(RH)にて24時間、ならびに40℃、75%RHにて28日間および90日間、さらなる特性決定のために保管した。これらは、安定性試験に用いられ得る典型的なストレス−保管条件である。
【0067】
予め混合された乾燥粉末材料(α−マンニトール中10%グリセオフルビンまたはα−マンニトール中50%グリセオフルビン)を、生産規模の押出機(Leistritz Mikro GL 27−28D,Leistritz,Nuermber,Germany)を用いて押出した。この押出処理は、40g/分の粉末供給速度および100rmpのスクリュー速度を用い、α−マンニトールの融点にて実施された。バレルの長さ、ダイ孔の数およびスクリューの形状を変えることにより、剪断速度を押出の間に2つのレベルで変更した。押出物を、予備実験の通りに溶出試験により特徴づけた(図10参照)。
【0068】
溶出
溶出試験を、USPに従う櫂形装置(VK7030,Varian,Cary,NC,USA)において50rpmにて行った。各バッチから6試料を、溶出媒体として37℃の水中で試験した。溶出試験用に、押出物を約2mgに小さく切り分けた。活性医薬成分の放出を、経路長50mmのキュベットを用い、異なる波長(グリセオフルビン 296nm、フェニトイン 220nm、およびスピロノラクトン 243nm)を用いてUV光度計(DU 640,Beckman,Fellerton,USA;Cary 300,Varian,Victoria,Australia)で120分間定量した。
【0069】
示差走査熱分析
示差走査熱量計(Q10,TA Instruments,New Castle,DE,USA)を用い、自記温度記録図を得た。正確に計量した約2mgの試料をアルミニウムパン中に気密密閉し、10K/分にて−25℃〜250℃に加熱した。乾燥窒素を流量50ml/分で用いてオーブンの試料室をパージした。各試料を二重に(in duplicate)測定した。
【0070】
X線回折
X線回折(LabX XRD6000,Shimadzu,Columbia,MD,USA)により、結晶構造を特徴づけた。Cu Ka放射線の点放射源(k=1.5406A)を、40kVおよび30mAにて作動させた。粉末化した試料をアルミニウムホルダーに置き、10〜40°2θの反射モードで測定した。走査速度は5°/分とし、0.02°のサンプリングピッチを用いた。各試料を二重に測定した。
【0071】
実施例の製剤および処理実施例
3種の活性医薬成分、グリセオフルビン(Gri)、フェニトイン(Phe)およびスピロノラクトン(Spi)を、水溶液中のそれらの低溶解性およびそれらの高UV吸収に基づいて選択した。これら活性医薬成分を、その治療適応または製薬剤形中濃度は別として、モデル活性医薬成分として用いた。マンニトールは、医薬品において公知の賦形剤であり、その低毒性および高溶解性により選択された。
【0072】
本調査は2つの部分で構成される。第一の部分は、3種の異なるモデル活性医薬成分を10%(w/w)の配合量(表1、Gri10、Phe10、Spi10)で用いての「固体懸濁物」概念の証明である。第二の部分においては、これらの活性医薬成分のうちの1つを、保管安定性および高配合量(50%w/w)を有する固体懸濁物(表1、Gri50)の製造の実施可能性を検討するために選択した。
【0073】
【表19】

【0074】
押出
活性医薬成分および賦形剤を、実験室規模の共回転(co−rotating)二軸スクリュー押出機(Haake MiniLab)を用いて共処理した(co−process)。この押出機の押出バレルは、多くの生産規模のスクリュー押出機が数個の加熱部を有するのに対し、1つの加熱部しか有さない。したがって、押出ダイを封鎖し、供給工程、混合工程および押出工程を、同時というよりもむしろ別個の工程で完了した(表2)。
【0075】
【表20】

【0076】
粉末材料を可塑化するために、供給工程をマンニトールの融解温度(165℃)で行った。供給工程の間、粉末の供給を加速させるために、スクリュー速度を360rpmに設定した。供給処理は3分で完了した(図1)。混合段階の間、スクリュー速度を、数回の予備試験で適切であると認められた200rpmに低下させた。粘度を上昇させることによって押出物にかかる摩擦力を増大するために、バレル温度も低下させた。したがって、さらに1分間均衡させた後に、押出スクリューのトルクを増大した。次いで、均一な混合物を生成するために、材料を15分間混合した。続いて、バレル温度を165℃に上昇させ、7分間均衡させて、ダイのあらゆる目詰りの可能性を排除した。
【0077】
活性医薬成分の放出
全3種の活性医薬成分の押出物からの活性医薬成分の放出は、2時間後にほぼ完了した(図2a)。比較すると、純粋なグリセオフルビンは50%放出を達成するのに6日かかった(図中のデータは120分で切られている)。これらのデータは、本明細書に記載される固体懸濁物により得られる溶出速度の増大が、約500倍(t1/2に基づく)であることを示している。このような目覚ましい規模の溶出速度向上は、望ましいとは言えない非晶質試料の形成を要する従来の固体分散体アプローチによって達成されるにすぎないことが報告されている。
【0078】
図2bは、高配合量で活性医薬成分を含む50%グリセオフルビンの押出物からの溶出プロファイルおよび純粋な活性医薬成分についてのプロファイルを示している。この押出物からの活性医薬成分の放出は、10%の配合量で活性医薬成分を含む押出物からの放出よりも僅かに遅い。これらの観察は、本明細書に記載される方法の一般性を支持しており、かつ、固体懸濁物のそのような調製が活性医薬成分の配合量によって制限されないことを示している。すなわち、活性医薬成分が高配合量であっても低配合量であっても所望の溶出速度向上をもたらし得るということは、この方法論が広範な活性医薬成分(高効力(低配合量)の活性医薬成分およびより高い用量(高配合量)を要する活性医薬成分を含む)に適用可能であることを含意している。製造の観点からは、同じ手順を適用して同じ活性の異なる用量が得られることが理解される。
【0079】
10%グリセオフルビンおよび90%キシリトールを含む押出物は、10%グリセオフルビンおよび90%マンニトールを含む製剤の溶出速度と類似した速い溶出速度を有する。L−(+)−乳酸を含む製剤からの活性医薬成分の放出は、マンニトールおよびキシリトールの製剤よりも遅い。しかしながら、この放出は、依然として、純粋な活性医薬成分からの活性医薬成分の放出よりもはるかに速い。押出物の溶出速度は、賦形剤の選択により変更し得る(図2c)。
【0080】
新しい押出物および保管された押出物は、統計的に同じ活性医薬成分の放出速度を有し(a=0.05)、安定した製剤であることを示している。
【0081】
結晶性
上記した結果は、本明細書で紹介される固体懸濁物アプローチが、従来の(非晶質で、熱力学的に不安定な)固体分散体から得られる溶出速度の向上と類似した規模の望ましい溶出速度の向上をもたらすことを証明している。しかしながら、固体分散体と比較した固体懸濁物の主要な利点は、この剤形をより熱力学的に安定にする押出物の結晶構造に基づき得ると理解される。したがって、押出物の結晶性を、示差走査熱分析およびX線回折により決定した。
【0082】
押出物中のマンニトールの融解温度は、純粋なα−マンニトールの融解温度と同じである。押出物のマンニトール溶融ピークの方が幅広であるが、これは、活性医薬成分の存在に帰され得る。純粋な活性医薬成分と比較した押出物中の活性医薬成分の融点低下は、溶融(液体)相中の不純物として作用するマンニトールの存在により引き起こされた(図3a、3b、3c、および3d)。得られた自記温度記録図に基づき、迅速な活性医薬成分の放出の理由として、非晶質固体分散体、共結晶(co−crystal)および共融混合物を排除し得る。フェニトインの融点は、マンニトールの沸点に非常に近いため、決定できなかった(図3b)。
【0083】
押出物の回折図中の全てのピークが、活性医薬成分の回折図により、またはα−マンニトールの回折図により説明され得た(図4a、4b、4cおよび4d)。これは、押出物が結晶性の活性医薬成分およびα−マンニトールの物理的混合物であることを証明している。
【0084】
本発明のさらなる実施形態において、固体懸濁物押出物を、グリセオフルビンおよびソルビトールから、グリセオフルビンおよびフルクトースから、ならびにグリセオフルビンおよびスクロースから調製した。
【0085】
固体添加剤実施例
炭水化物
さらなる糖を、本調査において検討した。グルコースおよびフルクトースの2つの糖も、上記の有利な特性を有すると思われる。グルコースおよびフルクトースは、数種のオリゴ糖および多糖中に含まれる単糖類であり、このことがこれらを本検討に適した例示的な例としている。
【0086】
X線回折図(図5a、5b)は、グルコースもフルクトースも押出後に結晶化しなかったことを示している。両物質は、24時間より長い間、非晶質固体として存続した。その理由は、結晶化の間の分子の迅速な配向を妨げる環状分子構造であり得る。したがって、グルコースおよびフルクトースの固体懸濁物は調製されなかった。
【0087】
ポリヒドロキシ化合物
別の例示的な実施形態において、線状分子構造を有するポリオールの群が記載される。適切な賦形剤であることが見出されたマンニトールの立体異性体であるソルビトールは、これらポリオールの別のメンバーである。
【0088】
ソルビトールはマンニトールほど迅速に結晶化せず、24時間後でも依然として大部分が非晶質であった(図6a、6b)。異性体の異なる結晶化動態は、結晶化動態が立体化学構造に関連することを示唆している。ソルビトールとは対照的に、マンニトールは対称な分子構造を有しており、結晶化の間の各分子の正確な配向の蓋然性が増す。理論に拘束されるわけではないが、これは、ソルビトールと比較してより迅速なマンニトールの結晶化の理由であり得る。
【0089】
別の例示的な実施形態において、他のポリオールである対称なキシリトールおよび非対称なアドニトールの2つが記載される。結晶化動態と対称または非対称な分子構造との相関が、これらの物質については証明されなかった(7a、7b)。しかしながら、キシリトールおよびアドニトールは、マンニトールおよびソルビトールより小さい分子量を有する。理論に拘束されるわけではないが、より小さな分子は、一般的に、より高い分子移動性を有し得、かつ類似した化学構造を有するより大きな分子よりも迅速に結晶化する傾向を有し得ると理解される。これは、非対称のアドニトールの迅速な結晶化の理由であり得る。
【0090】
ヒドロキシカルボン酸
分子の大きさが結晶化動態に影響するのであれば、低分子は、その化学構造に関わらず迅速に結晶化するはずである。一変形例において、L−(+)−乳酸が、低分子量を有する親水性の物質として記載される。
【0091】
L−(+)−乳酸の結晶化は非常に迅速であり、24時間以内に完了し、この仮説を裏付けた(図8)。
【0092】
別の実施形態において、キシリトールおよび乳酸が、グリセオフルビンを10%の配合量で含む押出物の調製において記載される。押出温度を、キシリトールについては100℃、そして乳酸については53℃に設定した。これらの温度は、先の調査においてマンニトールを用いた際に用いられた温度よりはるかに低い。理論に拘束されるわけではないが、より低い温度は製剤中の活性医薬成分に対する熱ストレスを低減し得ると理解される。したがって、調合の間の温度により大きな感受性を有する活性医薬成分の固溶体の形成には、処理の間の活性医薬成分の熱安定性という点で、キシリトールおよび乳酸の方がマンニトールよりも適し得る。
【0093】
押出物のX線回折図(図9a、9b)中のピークは、賦形剤(キシリトール、乳酸)または活性医薬成分(グリセオフルビン)のいずれかに十分に帰され得る。これは、押出物が、本明細書に記載される製剤の所望される属性のうちの1つである2種の物質の結晶性混合物であることを示している。押出物中の賦形剤の融点は、純粋な賦形剤と比較して、僅かに低下する(図9c、9d)。理論に拘束されるわけではないが、この低下は、賦形剤において低レベルの不純物として作用する活性医薬成分の存在に帰され得る。グリセオフルビンの融点は、キシリトールおよび乳酸の沸点を超えるため、押出物においては検討されなかった。気密密閉されたパンが、キシリトールまたはマンニトールの蒸気圧によりグリセオフルビンの融点未満で破壊され得る。これらの自記温度記録図は、共融混合物の不在、および製剤の非非晶質(すなわち結晶)特性を示している。
【0094】
熱溶融押出による結晶性混合物の調製が、溶解性に乏しい活性医薬成分の溶出速度を増大する有効な方法として記載される。反直感的ではあるが、溶出速度向上の規模は、公知の非晶質固体分散体に匹敵する。特定の実施形態において、キシリトール、L−(+)−乳酸、マンニトールが、熱溶融押出による均質結晶混合物の製造における使用に適している。理論に拘束されるわけではないが、分子の大きさおよび分子の立体化学に関連し得る結晶化動態が、本明細書に記載される固体懸濁物の調製に適した賦形剤を選択するための有用な要素であり得ることも本明細書において述べられた。高配合量で活性医薬成分を含む熱力学的に安定な剤形を調製するための方法もまた、本明細書に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5〜95重量%の活性医薬成分および約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性添加剤からなる固体懸濁物を含む医薬組成物であって、前記固体添加剤のうちの少なくとも1種が前記活性医薬剤の融解温度よりも低い融解温度を有し、前記固体懸濁物において前記活性医薬成分の少なくとも一部が結晶として存在し、前記固体懸濁物において前記固体添加剤の少なくとも一部が結晶として存在する、医薬組成物。
【請求項2】
前記1種以上の固体添加剤が、ポリヒドロキシ化合物、ヒドロキシカルボン酸、ポリヒドキシカルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記1種以上の固体添加剤が、還元炭水化物、糖アルコール、およびヒドロキシカルボン酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1の医薬組成物。
【請求項4】
前記固体添加剤のうちの少なくとも1種が、アラビトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アドニトール、およびラクチトールからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記固体添加剤のうちの少なくとも1種が、マンニトール、乳酸、アドニトール、キシリトール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記固体添加剤のうちの少なくとも1種が、キシリトール、マンニトール、および乳酸からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記活性医薬成分が、少なくとも約100℃の融点を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記活性医薬成分が、少なくとも約125℃の融点を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記活性医薬成分が、少なくとも約150℃の融点を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記活性医薬成分が、少なくとも約200℃の融点を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記活性医薬成分が、イブプロフェン、パクリタキソール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、フェニトイン、スピロノラクトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記活性医薬成分が、X線粉末回折により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、回折図が1つ以上の別個のピークを示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記活性医薬成分が、示差走査熱分析により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、前記示差走査熱分析が、1つ以上の別個の転移を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記固体添加剤が、X線粉末回折により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、回折図が1つ以上の別個のピークを示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記固体添加剤が、示差走査熱分析により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、前記示差走査熱分析が、1つ以上の別個の転移を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約1g/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約100mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約1mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約0.1mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記固体懸濁物が、約10〜50重量%の前記活性医薬成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記固体懸濁物が、約10〜40重量%の前記活性医薬成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記固体懸濁物が、約15〜30重量%の前記医薬活性成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記固体懸濁物が、第2の活性医薬成分をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記固体懸濁物が、少なくとも2種の水溶性添加剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記固体懸濁物が、約6時間以下の蒸留水中溶出半減期を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記固体懸濁物において前記活性医薬成分の大部分が結晶として存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記固体懸濁物において少なくとも1種の固体添加剤の大部分が結晶として存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記固体懸濁物の約50%未満が非晶質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記固体懸濁物の約20%未満が非晶質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記固体懸濁物の約10%未満が非晶質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記固体懸濁物の約5%未満が非晶質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体懸濁物を調製するための方法であって、
約5〜95重量%の前記活性医薬成分を約95〜5重量%の1種以上の薬学的に受容可能な水溶性固体添加剤と混合する工程と、
前記活性医薬成分および前記1種以上の固体添加剤を含む前記混合物を、前記固体添加剤のうちの少なくとも1種の固体添加剤の融点に近い温度または該融点より高い温度に加熱する工程と、
前記加熱した混合物を押出して前記固体懸濁物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項35】
前記混合物が、前記添加剤の融点に近いまたは該融点よりも高い温度であり、かつ前記活性医薬剤の融解温度より低い温度に加熱される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性医薬成分が、少なくとも約100℃の融点を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記活性医薬成分が、少なくとも約125℃の融点を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記活性医薬成分が、少なくとも約150℃の融点を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記活性医薬成分が、少なくとも約200℃の融点を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記活性医薬成分が、イブプロフェン、パクリタキソール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、フェニトイン、スピロノラクトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記活性医薬成分が、X線粉末回折により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、回折図が1つ以上の別個のピークを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記活性医薬成分が、示差走査熱分析により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、前記示差走査熱分析が、1つ以上の別個の転移を示す、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記固体添加剤が、X線粉末回折により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、回折図が1つ以上の別個のピークを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記固体添加剤が、示差走査熱分析により決定される場合に少なくとも部分的に結晶形態にあり、前記示差走査熱分析が、1つ以上の別個の転移を示す、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記混合物が、約80℃〜約200℃に加熱される、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記混合物が、約90℃〜約160℃に加熱される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記混合物が、約100℃〜約160℃に加熱される、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約1g/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約100mg/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な有機溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項51】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約10mg/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項52】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約1mg/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項53】
前記活性医薬成分が、薬学的に受容可能な水性溶媒系において約0.1mg/mL以下の溶解度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項54】
連続様式またはバッチ様式で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項55】
連続様式で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項56】
前記混合物が、約10〜50重量%の前記活性医薬成分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項57】
前記混合物が、約10〜40重量%の前記活性医薬成分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項58】
前記混合物が、約15〜30重量%の前記活性医薬成分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項59】
前記混合物が、第2の活性医薬成分をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項60】
前記混合物が、少なくとも2種の水溶性添加剤を含む、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−500724(P2011−500724A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530145(P2010−530145)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080327
【国際公開番号】WO2009/052391
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(507407157)
【Fターム(参考)】