結腸直腸癌の診断と予後
本発明は、ヒト被験者から採取した有効な体組織の診断サンプルにおける、結腸直腸癌の診断方法に関し、対照健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプル中のタンパク質の増加濃度を検出することを含む。タンパク質は、形質転換成長因子β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582)、SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2)、仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7)、カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439)、熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238)、ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669)、セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008)、またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)。あるいは、対照健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプル中のタンパク質の減少濃度を検出することを含む。タンパク質は、セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787)、26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No.Q9UNM7)、アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218)、フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479)、ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219)、α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023)、セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008)、またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である。同じタンパク質は、結腸直腸癌の治療過程におけるタンパク質濃度の変化を検出することによって、予後にも使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸癌の診断と予後に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌(Colorectal cancer:CRC)は世界で三番目に頻度の高い癌である。癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)(Gold and Freedman, 1965)、サイトケラチン(Moll et al., 1982)、CA19-9, CA 242(Nilsson et al., 1992)、CA 72-4(Fernandez-Fernandez et al., 1995)、VEGF(Broll et al., 2001)、p53(Shiota et al., 2000; Hammel et al., 2000)、HNP 1-3(Albrethsen et al., 2005)、RCAS1(Yamagushi et al., 2005)、アポリポタンパク質A-I、アポリポタンパク質C-I(Engwegen et al., 2006)、補体C3a des-arg、α-1-アンチトリプシン、トランスフェリン(Ward et al., 2006)、PSME3(Roessler et al., 2006)などの血清腫瘍マーカーが同定されている。しかしながら、腫瘍組織サンプルおよび体液(例えば血漿)サンプルにおけるCRCの新たなバイオマーカーを見つける必要がある。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、ヒト被験者から採取した有効な体組織の診断サンプルにおける、結腸直腸癌の診断の方法を提供し、この方法は、対照の健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプルにおいて以下のタンパク質の増加濃度を検出することを含む。タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)である。
あるいは、対照の健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプルにおいて以下のタンパク質の減少濃度を検出することを含む。タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である。
【0004】
上記のタンパク質は本明細書では“マーカータンパク質”もしくは“バイオマーカー”と称する。
【0005】
同じタンパク質は、結腸直腸癌の治療過程における濃度変化を検出することによって、予後にも利用できる。従って本発明は、被験者における結腸直腸癌の治療の効果をモニタリングする方法も提供する。この方法は、前記治療のある段階において、前記被験者から採取した有効な体組織サンプル中の、少なくとも一つのタンパク質の濃度の変化を、前記治療の前もしくは前記治療の初期段階において前記被験者から採取した有効な体組織サン
プルにおける前記タンパク質の濃度と比較して、検出することを含む。タンパク質は上記で特定したうちの少なくとも一つである。
【0006】
上記で特定したマーカータンパク質の同定には高い信頼性があるものの、本発明はその代わりに、二次元電気泳動ゲル上に特異的に発現したスポット中のタンパク質によって規定することができる。すなわち、上記の名前やデータベースIDに関係なく、本明細書の図3〜6で同定されたタンパク質によって規定することができる。
【0007】
<定義>
“タンパク質”(“ポリペプチドとも称される”)という用語は、上記のアクセッション番号に対応する配列に限定されず、それらの変異体(variants)、ミュータント (mutants)とアイソフォームを含む。変異体(variant)とは、ある配列に高い相同性を持つポリペプチドの配列に自然発生する変異と定義され、実質的に同じ機能特性と免疫学的性質を持つ。ミュータント(mutant)とは、人工的に作り出された変異体と定義される。高い相同性とは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも99%の相同性と定義される。変異体は、単一の種内で発生してもよいし、あるいは異種間で発生してもよい。ポリペプチドのアイソフォームは、ポリペプチドと同じ機能を持つが、異なる遺伝子によってコードされ、またその配列中にわずかな違いを有することもある。上記のタンパク質はヒト由来であるが、本発明は他の哺乳類種由来の対応するポリペプチドの利用も包含する。
【0008】
“特異的に発現した”という用語は、タンパク質染色スポット(stained protein-bearing spots)が、診断用に採取されたサンプル(“診断サンプル”)由来のゲルにおいて、対照サンプルもしくは他の比較サンプル由来のゲルよりも、高いもしくは低い光学濃度を示すことを意味する。従って、そのタンパク質は診断サンプルにおいて、対照サンプルまたは他の比較サンプルにおいてよりも、高いもしくは低い濃度で存在するということになる。
【0009】
“対照”という用語は、健常被験者、すなわちCRCを患っていない被験者、あるいは、診断サンプルと同じヒト被験者の健常組織のことをあらわす。
【0010】
“対照サンプルと比較して…増加した/減少した濃度”という術語は、比較のステップが実際に行われることを意味するものではない、というのも、多くの場合、濃度が異常に高いか低いかということは熟練者にとっては明らかであるからである。さらに、CRCの病期が漸次観察される時、あるいは治療過程が観察される時には、疾病の進行初期、または治療の初期もしくは治療の開始前において同じ被験者で以前に見られた濃度に対して、比較が実行され得る。
【0011】
“結合パートナー”という用語は、マーカータンパク質を認識する、あるいはマーカータンパク質に親和性を持つ物質を含む。これ自体は標識されていてもされていなくてもよい。
【0012】
“抗体”という用語は、ポリクローナル抗血清、モノクローナル抗体、一本鎖およびFabフラグメントなどの抗体のフラグメント、ならびに遺伝子組み換え抗体を含む。抗体は、キメラであってもよいしあるいは単一種のものであってもよい。
【0013】
“マーカータンパク質”もしくは“バイオマーカー”という用語は、同定されたタンパク質の生物学的に関連した全ての形を含む。例えば、マーカータンパク質は体組織においてグリコシル化型、リン酸化型、多量体型、または前駆体型で存在し得る。
【0014】
本明細書で使用される“診断”という用語は、CRCの有無を決定するステップを含み、また、CRCが進行した(あるいは治療過程で退行した)病期を決定するステップも含む。この診断は、患者の将来の転帰に関する予後の根拠となり得る。
【0015】
“有効な体組織”という用語は、その中でCRCに関連してマーカータンパク質が蓄積すると合理的に予想され得る任意の組織を意味する。これは結腸直腸サンプルであってもよいし、あるいは、例えば血液や血液由来物(blood derivative)(血漿や血清など)などの体液であってもよい。
【0016】
“抗体アレイ”もしくは“抗体マイクロアレイ”という用語は、連続固体表面上の固有の指定可能な要素のアレイを意味し、それによって、固有の指定可能な要素のそれぞれにおいて、抗原に対する明確な特異性を持つ抗体が、その後標的抗原をとらえ、その結合の程度を検出することができるように、固定される。固有の指定可能な要素のそれぞれは、固体表面上で他の全ての固有の指定可能な要素と離れており、特異抗原の結合と検出が、隣接する任意のこうした固有の指定可能な要素を妨げることがないようになっている。
【0017】
“ビーズサスペンションアレイ(bead suspension array)”は、一つ以上の識別可能な個別粒子の水懸濁液を意味し、それによって、各粒子はそのサイズと色に関するコード特性または蛍光特性を含み、そのようなコード特性の特有の組み合わせのビーズ全てが、その後標的抗原をとらえ、その結合の程度を検出することができるように、抗原に対する明確な特異性を持つ抗体で覆われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい診断方法は、マーカータンパク質のバインディングアッセイを行うことを含む。任意のある程度特異的な結合パートナーを使用できる。結合パートナーは標識されることが好ましい。アッセイは免疫測定(immunoassay)であることが好ましく、特に、マーカーと、タンパク質を認識する抗体(特に標識抗体)との間での免疫測定が好ましい。抗体は、その一部もしくは全体に対して作製されたものであってもよく、マーカータンパク質に対して高い特異性を持つ、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗ヒト抗血清が最も好ましい。
【0019】
従って、上述のマーカータンパク質は、診断サンプルに見られるマーカータンパク質の増加濃度または減少濃度を検出するのに使用できる、それに対する抗体を作製する目的に有効である。そのような抗体は、免疫診断の分野で周知の方法のいずれによっても作製することができる。
【0020】
抗体は、タンパク質の生物学的に関連する任意の状態に対するものとなり得る。従って抗体は、例えば、体内でグリコシル化された形で存在するタンパク質のグリコシル化されていない形や、前駆体タンパク質のより成熟した形(例えばシグナル配列のない形)、あるいはマーカータンパク質の関連エピトープを持つペプチドに対して、作製することができる。
【0021】
サンプルは、任意の有効な体組織から採取することができ、特に(ヒト)被験者の体液、好ましくは血液、血漿、もしくは血清から採取することができる。その他の利用可能な体液としては、脳脊髄液(CSF)、尿、および涙液を含む。
【0022】
好ましい免疫測定は、タンパク質/抗体の相互作用の程度を測定することによって実行される。任意の既知の免疫測定方法が使用され得る。サンドイッチアッセイが好ましい。この方法では、マーカータンパク質に対する一次抗体が、プラスチックマイクロタイタープレートのウェルなどの固相に結合し、サンプルと、分析されるタンパク質に特異的な標
識二次抗体と共にインキュベートされる。あるいは、抗体捕捉アッセイ(antibody capture assay)が利用できる。ここでは、試料サンプルが固相に結合してもよく、その後抗マーカータンパク質抗体が加えられ、また結合することができる。結合していない物質を洗浄した後、固相に結合した抗体の量を、抗一次抗体標識二次抗体を用いて測定する。
【0023】
別の実施形態では、サンプルと、標識マーカータンパク質もしくはそれ由来のペプチドとの間で競合アッセイが行われる。これら二つの抗原は、固体支持体に結合した抗マーカータンパク質抗体の限られた量をめぐって競合している。標識マーカータンパク質もしくはそのペプチドは、固相上で抗体とプレインキュベートさせることができ、それによって、サンプル中のマーカータンパク質は、抗体に結合したマーカータンパク質もしくはそのペプチドの一部を置き換える。
【0024】
なおも別の実施形態では、二つの抗原が抗体との一回の共インキュベーションで競合してもよい。洗浄によって支持体から非結合抗原を除去した後、支持体に結合した標識の量が測定され、また、サンプル中のタンパク質の量が、前もって設定された標準滴定曲線を参照して測定される。
【0025】
標識は酵素であることが好ましい。酵素の基質は、例えば発色性、蛍光性、または化学発光性であってもよい。
【0026】
バインディングアッセイの結合パートナーは、標識した特異的な結合パートナーであることが好ましいが、必ずしも抗体でなくてもよい。結合パートナーは、通常それ自体が標識されるが、その代わりに、例えば別の標識した基質から、シグナルが生成される二次反応によって検出されてもよい。
【0027】
比較的低レベルの検出タンパク質から、増強した“シグナル”が生成されるような、増幅された形のアッセイを使用することが非常に好ましい。増幅された免疫測定の一つの特定の形は、増強化学発光法(enhanced chemiluminescent assay)である。好都合なことに、抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼで標識される。これは、ルミノール、過酸化物基質、および放射光の強度と期間を増強する化合物(典型的には4-ヨードフェノールもしくは4-ヒドロキシケイヒ酸)との化学発光反応に参加する。
【0028】
別の好ましい増幅免疫測定の形は、イムノ-PCR(immuno-PCR)である。この技術では、抗体はPCRプライマーを含む任意のDNA分子に共有結合し、抗体が結合したDNAがポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。E.R.Hendrickson et al., Nucleic Acids Research 23: 522-529 (1995)を参照のこと。シグナルは前述と同様に読み取られる。
【0029】
あるいは、診断サンプルは染色ゲルをもたらす二次元ゲル電気泳動に供することができ、染色ゲル上のタンパク質含有スポットの強度の増加もしくは減少によって、対応する対照ゲルもしくは比較ゲルと比較して、タンパク質の増加濃度もしくは減少濃度が検出される。関連するスポットと特異的な発現は、下記に記載したように図2にあげたものである。本発明は、上記および図2に示したマーカータンパク質の同定とは無関係に、このような方法を含む。
【0030】
別の実施形態では、診断サンプルは、例えば凍結またはパラフィン包埋によって固定された組織切片であり、その後免疫組織化学に供される。
【0031】
さらなる実施形態では、診断サンプルは、上記で特定したタンパク質のうちの少なくとも一つのメッセンジャーRNAに対するDNAプローブを用いるin situハイブリダイゼーションに供される。
【0032】
なおもさらなる実施形態では、CRCで過剰発現した以下のマーカータンパク質のうちの一つ以上の増加濃度が、それに対する自己抗体の上昇レベルを、対照サンプルにおける自己抗体のレベルと比較して検出することによって、検出される。自己抗体のレベルは、自身の腫瘍、自己腫瘍、もしくはCRC細胞系に対する(1Dまたは2D電気泳動からの)ウェスタンブロットによって、精製タンパク質を用いる酵素結合免疫吸着法(ELISA)、タンパク質マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイによって、検出することができる。
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
ハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
【0033】
例として、結腸直腸癌患者で特異的に増加したタンパク質に対する自己抗体の検出は、以下のように実施できる。組み換えタンパク質をバキュロウィルス感染昆虫細胞内で発現させ、マイクロタイタープレートの表面を覆うために使用する。結腸直腸癌を罹患している疑いのある患者から採取した血清/血漿を、各マイクロタイタープレートの複製ウェル(duplicate wells)に加え、37℃で1時間インキュベートする。プレートは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗ヒトIgG抗血清を加える前に、吸引、洗浄し、37℃で1時間インキュベートする。最後に、抗ヒト抗血清の結合は、プレートの吸引、洗浄、そしてその後、HRPの存在下で着色した生成物を生じるテトラ-メチルベンジジン(TMB)を加えることによって、明らかとなる。この着色した生成物の強度は、450nmでプレートを読み取ることによって測定される。二次抗体がHRP標識抗ヒトIgM抗血清である場合を除いて、同じプレートのセットがテストされる。各CRCマーカータンパク質に対するIgGおよび/またはIgM自己抗体のレベルは、結腸直腸癌でない健常者の血清で見られるレベルと比較して上昇している。
【0034】
診断は、必ずしもタンパク質濃度(もしくは自己抗体濃度)の対照との比較のステップを必要としないが、診断は対照サンプルまたは比較サンプルのいずれかを参照して実施され得る。本発明は、必要に応じて、同じ患者から前に得られた結果を参照して、あるいは、疾病の病期に典型的と考えられる標準値を参照して、CRCの病期を決定するために使用することができる。このようにして、本発明は、例えば薬物もしくは候補薬物による患者の治療後、疾病が進行したかどうかを決定するために使用することができる。その結果は、疾病の転帰の予後につながり得る。
【0035】
本発明はさらに、上記で特定した、および/または、図3〜6のいずれかに示された特異的に発現した二次元ゲル電気泳動スポットによってあらわされたマーカータンパク質を、認識する、それと結合する、あるいはそれに対する親和性を持つパートナー物質を、診断(従って場合により予後)、または治療目的として使用することを含む。従って、例えば必要に応じて適切に人体に適応させた(humanised)マーカータンパク質に対する抗体が治療に使用されてもよい。パートナー物質は通常は抗体であり、任意のアッセイ適合性(assay-compatible)形式で、例えばビーズもしくはチップとして都合よく固定化された形式で使用される。パートナー物質は標識されるか、あるいは標識と相互作用することができるかのいずれかである。
【0036】
本発明は、上記のようなパートナー物質を、上記のようなアッセイ適合性形式で、診断サンプルに存在するタンパク質との相互作用のために含む、診断方法で使用するためのキットをさらに含む。
【0037】
本発明は、上記のような特異発現タンパク質を、上記のようなアッセイ適合性形式で、診断サンプルに存在する自己抗体との相互作用のために含む、診断方法で使用するためのキットをさらに含む。
【0038】
診断は、一つ、二つ、三つもしくはそれ以上のマーカータンパク質、またはこうしたタンパク質に対して作製された、一つ、二つ、三つ、もしくはそれ以上の自己抗体の特異発現、あるいは両者の組み合わせに基づくことができる。さらに、二つ以上の異なる疾病が診断されるようなより広範囲の診断の一部を成すことができる。CRCは、診断サンプル中の別のタンパク質濃度の変化を、対照の健常ヒト被験者のサンプルと比較して検出することを含む方法によって、同じ体組織サンプルにおける、少なくとも一つの他の疾病(癌であってもなくてもよい)と一緒に診断することができる。これらの他の疾病(一つまたは複数)は、体組織で診断可能な任意のものとすることができる。
【0039】
従って、とりわけ本発明においては、抗体と相互作用する一つ以上のタンパク質を検出可能な抗体チップまたはチップのアレイ、結腸直腸癌で特異的に発現したタンパク質と相互作用する一つ以上の自己抗体を検出可能なタンパク質チップまたはチップのアレイ、抗体アレイとタンパク質アレイの両方の組み合わせを使用することを企図する。
【0040】
以下の実施例は本発明を解説する。
【実施例】
【0041】
<実施例1>
15人の患者が選択された。これらの患者から、腫瘍組織に相当する15の結腸直腸サンプルと、隣接する健常組織に相当する15サンプルを採取した。腫瘍組織サンプルと健常組織サンプルを容器の液体窒素上に置き 、粉末状の硬さになるまで均質化した。
【0042】
<2Dゲル電気泳動(2DE)および質量分析(MS)>
実験研究の前に、2Dゲルの最小数で表示されるタンパク質の最大数をカバーするために、2DE分離最適化ステップを行った。いくつかのIPG(固定化pH勾配)ストリップ範囲をテストした(4-7、3-7NL(NL=非線形)、3-10、3-10NL)。本研究の手法では、最適範囲は3-10非線形であった。各サンプルにつき一つの分析ゲルを供した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド、100μgタンパク質負荷量)。ゲルを銀染色し、スキャンし、ゲル画像をProGenesisソフトウェア(v2005)で分析した。
【0043】
二つの腫瘍組織サンプルが分解(degraded)してしまったため、腫瘍組織群は13の分析ゲルに基づいた。健常組織群は、一つのゲルが画像分析から除去されたため(スポットが不鮮明(smearing)/拡散(diffuse))、14の分析ゲルに基づいた。二つのゲル群を相互に比較した。制御スポットを選択するため、以下の基準を用いた。スポットは少なくともゲルの60%以内に存在し、2倍の下方/上方制御で、p値<0.005。
【0044】
調製ゲルとして、四つの健常サンプルを混ぜ合わせ(健常組織混合物)、また四つの腫瘍サンプルを混ぜ合わせ(腫瘍組織混合物)、各混合サンプルのタンパク質500μgを一次IPG(pH 3-10NL, 10%アクリルアミド)に負荷した。ゲルはクマシー(Commassie)染色しスキャンした。
【0045】
目的のタンパク質スポットを調製ゲルから採取し、Spot Handling Workstation (GE He
althcare)で処理した。ペプチドプロファイルをMALDI-ToF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化‐飛行時間型質量分析装置)で作製し、Ms-Fitソフトウェア(Protein Prospector)で分析し、IPI(International Protein Index:国際タンパク質指標)データベースで検索した。
【0046】
[結果]
<画像分析法および目的の制御タンパク質スポットの数>
ゲル画像はProGenesis(v2005)で分析した。スポット検出、マッチング、バックグラウンド除去、および正規化はProGenesisによって自動的に行われた。バックグラウンド除去法は、Nonlinear Dynamics社によって確立された特許の(proprietary)バックグラウンド除去アルゴリズムを用いた。このアルゴリズムは、ゲル全体の表面モデルに基づいてバックグラウンドレベルを計算した。正規化モードは、“総スポット体積(Total Spot Volume)”法を用いた。この方法では、ゲル内の各スポットの体積を全スポットの総体積で除する。この方法は極めて小さな値を出す傾向があるため、結果にある係数を乗じた。例えば、デフォルト値である100を係数に使用した場合は、スポット百分率体積が得られる。本研究では、ProGenesisによって指定されたデフォルト値よりも大きな整数をデータ分析に使用できる係数1000での乗算を行うことに決めた。それからスポットデータをExcelにエクスポートし、マクロを用いて、変動係数(CV、%)、スチューデントT検定、マン・ホイットニ検定、および、腫瘍群対健常群のスポット体積比間の制御係数(Regulation
factor)を99.5の信頼度(p<0.005)以内で計算した。
【0047】
図1は各ゲルで検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計(IOD)、および倍率-S.F.-(基準ゲルの全スポットの体積の合計を、ゲル内の全スポットの体積の合計で除したもの)を示す。図1では、各ゲルに対し、検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計(IOD)、および倍数(S.F.)が示されている。ゲルn_03-0562_2217は基準ゲルに相当する。この表では、全ゲルが実験値(empiric value)を超える倍率(0.6<S.F.<1.5)を持つことがわかる。これら27のゲルは、画像分析に反映された。
【0048】
本研究では経験に基づき、これらの選択基準を適用した。スポットは少なくともゲルの60%以内で見られ、2倍の上方/下方変化が99.5の信頼度(スチューデントt検定および/またはマン・ホイットニ検定;p<0.005)でなければならない。スポットがゲルの60%以内に存在するという必要条件から、約900のスポットが統計分析にかけられた。31のスポットが腫瘍組織と健常組織間で特異的に発現していることがわかった。これらのスポットは図2に列挙してある。18のスポットは上方制御されたかあるいは腫瘍組織群で多くを占め、13のスポットは下方制御されたかあるいは健常組織群で多くを占めた。ゲルのスポット位置は図3〜6に示す。選択されたスポットからの正規化体積の散布図は、図9〜18に示す。
【0049】
99.5の信頼度は非常に狭い区間であり、高精度であることを意味し、従って非常に厳しい基準をあらわす。実に、0.005というp値は、この結果が200につき1未満の確率で起こり得ることを意味し、言い換えれば、200の選択されたスポットから、一つのスポットが無作為に選択されると予想され得る。本研究の場合、99.5の信頼度で、約5〜900のスポットを無作為に選択することができた。
【0050】
正規化データの全統計分析は、データのネガティブコントロール分析を伴わなければならない。これらのネガティブコントロールのうちの一つは、疑似群の分析、すなわちデータカラムの混合による分析である。例えば、実験が六つの対照ゲルと実験ゲルから構成される場合、比較される二群は三つの対照ゲル+三つの実験ゲル(疑似群)をそれぞれ含まなければならない。この“疑似群”比較は、分析におけるデータセットの潜在的なノイズを無視することによって、(i)スポットがいくつ無作為に選択され得るかを示し、(ii
)実際の比較から確固たる制御スポットが真の統計的有意性をもって選択されることを確実にする。この種のテストを実施することによって、どのような種類の選択基準が、実験群内の真の変化を明らかにできるかが明白となる。“疑似群”比較の実施後、実際の比較と同様の数の変化が見つかった場合は、そのデータセットは群特異的変化において“空(empty)”であるということになる。
【0051】
従って本研究では、健常組織ゲルの半分と腫瘍組織ゲルの半分を混合することによって二つの疑似群を作り、疑似群1と疑似群2を比較した。疑似群分析は、実際の比較に含まれていた全てのゲルを含む。この疑似群分析のために、同じスポット選択法(ゲルの60%以内、p<0.005かつ2倍の変化)を用いた。図7の表に示す通り、上記で計算された理論値に対応する五つのスポットが選択された。
【0052】
<目的タンパク質スポットの質量分析同定>
調製健常組織ゲルと調製腫瘍組織ゲルは、それぞれ四つの健常組織サンプルの混合と四つの腫瘍組織サンプルの混合と共に実験に供した。これらのゲルはクマシーブルーで染色され、目的スポットが採取され、Spot Handling workstation(GE Healthcare)で処理され、さらにペプチドはMALDI-ToFターゲット上にのせた。MSスペクトルはMs-FitソフトウェアとIPIデータベースで分析した。表2に示すように、提示された全タンパク質スポットは、タンパク質あたり平均13ペプチドで、約34%のタンパク質一致率と測定誤差4.7ppmでうまく同定された。31のタンパク質スポットは22の異なるタンパク質種に対応する。
【0053】
[考察]
<使用された技術の検証>
本研究は、腫瘍組織と健常組織間で特異的に発現したタンパク質が、2Dゲル電気泳動法によって同定されたことを明らかにした。CRCのバイオマーカーを見つけるために、いくつかのプロテオミクス研究は既に実行されている(Albrethsen et al., 2005; Mori et al., 2005; Ahmed, 2005; Alessandro et al., 2005; Drew et al., 2005, Alfonso et al., 2005; Friedman et al., 2004; Lawrie LC et al., 2001)。制御されていることがわかったタンパク質のうちのいくつかは、既に同定されている。:グリシル-tRNA合成酵素(スポット241)、60 kDa熱ショックタンパク質(スポット543および543左)、アデノシルホモシステイナーゼ(スポット768)、無機ピロホスファターゼ(スポット1015)、アネキシンA4(スポット1049)、Fアクチンキャッピングタンパク質βサブユニット(スポット1052)、トロポミオシンアルファ4(1081および1458)、Rho GDP解離阻害因子1(スポット1171)、14-3-3タンパク質α/β(スポット1171)、翻訳制御腫瘍タンパク質(スポット1229)、および血清アルブミン(スポット733, 346, 364, 404, 435, 460, 462, 519, 877, 1060および1256)。血清アルブミンスポット733を除く全てのタンパク質で観察された制御は、以前に見つかったものと一致した。これらのタンパク質を本研究で同定したという事実は、分析したサンプルと、使用した方法の正確性と感度が高値であることを示す。一方、これらの観察は、本研究の2-DEプロトコルの高解像度を裏付ける。実に、2D電気泳動法を扱う全ての出版物(Mori et al., 2005; Alfonso et al., 2005; Friedman et
al., 2004)はDIGE(蛍光標識2-Dディファレンスゲル電気泳動)技術(GE Healthcare)を使用した。
【0054】
<CRCの新たなバイオマーカー>
本研究は結腸癌組織でタンパク質を同定した:形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(スポット407)、SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(スポット949)、仮想タンパク質(スポット975)、カルポニン-2(スポット983)、熱ショックタンパク質HSP90-β(スポット1191)、セロトランスフェリン(スポット361)、26Sプロテアソームサブユニットp40.5(スポット877)、アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(スポット943)、フルクトサミン-3-キナーゼ(スポット943)、ペリフェリン(スポット543)お
よびホスホグリセリン酸ムターゼ1(スポット1354)。
【0055】
本研究は(i)CRCの新たなバイオマーカーを見つけるために実施され、(ii)癌の病期において高い発現タンパク質の方が低い発現タンパク質よりも検出が容易でありかつ正確であるため、本研究では癌組織において上方制御されたタンパク質の機能に関する情報をここで提示する。
【0056】
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(スポット407)は、機能未知のポリペプチドで、角膜のケラチノサイトで発現する(Escribano et al., 1994)。コード遺伝子TGFB1は結腸直腸癌と腺腫で有意に上昇することがわかっている(Zhang et al., 1997; Buckhaults et al., 2001)。
【0057】
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(スポット949)は、標的タンパク質のユビキチン化とプロテアソーム分解に関与し得る。二つのアイソフォームは免疫ブロット法によって確かめられている(Niikura and Kitagawa, 2003)。
【0058】
仮想タンパク質(スポット975)は何の機能も持たないが、図8に示すように、そのアミノ酸配列はURG4タンパク質のC末端配列(611-922)に厳密に一致する。HepG2細胞におけるURG4の過剰発現は、ヌードマウスで腫瘍成長を加速させた(Tufan et al., 2002)。
【0059】
カルポニン-2(スポット983)は細いフィラメントに関連するタンパク質で、平滑筋収縮の制御と調節に関与する。これはアクチン、カルモジュリン、トロポニンCおよびトロポミオシンに結合することができる。カルポニンとアクチンの相互作用は、アクトミオシンMg-ATPase活性を阻害する(Kitching et al.. 2002)。
【0060】
熱ショックタンパク質HSP90-β(スポット1191)は分子シャペロンであり、構成的に発現し、正常なフォールディング、細胞内動態、ならびに、細胞成長と生存の主要調節因子の多くのタンパク質分解ターンオーバーを誘導する。熱ショックタンパク質HSP90の本質的な防御能力(guard duty)は、極めて有望な独自の抗癌方法を提供すると思われる(Whitesell et al., 2005)。
【0061】
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(スポット1354)は糖分解酵素である。近年、乳癌細胞増殖を抑制する小分子MJE3が同定された(Evans et al., 2005)。MJE3はホスホグリセリン酸ムターゼ1と結合し、酵素阻害をもたらす。筆者らは、癌細胞が生存能力を解糖に依存していると提案し、ホスホグリセリン酸ムターゼ1を将来の治療標的として掲げている。
【0062】
[結論]
本研究の目的は、新たなバイオマーカーを見つけるために、CRC罹患患者から組織サンプルと血液サンプルをスクリーニングすることであった。本研究ではタンパク質を表示するために2-DEゲル電気泳動を使用し、タンパク質スポットを検出するために銀染色を使用し、目的タンパク質を同定するために質量分析を使用した。
【0063】
本研究では、組織分析の結果を示した。サンプル調製は、全サンプルに対し唯一で同一のプロトコルを用いて、熟練技術者によって行われた。全サンプルは同時に処理された。サンプルは異なる色であることが観察された(ほぼ赤/ピンク/茶)。二つの腫瘍サンプルからの2Dゲルは、タンパク質分解が起こり、異常なサンプルのプロファイル特性を示した(高分子量のゲル領域ではタンパク質スポットがなく、低分子量のゲル領域ではタンパク質スポット数が増加し、ゲルの底部で泳動先端がより濃くなった)。これらの二つのサンプルは、タンパク質濃度が最も低かっただけでなく、粉末状の硬さにすることも困難で
あった。
【0064】
さらに、結腸細胞は血液で灌流され、アルブミンがタンパク質量の〜50% を示すことが明らかであった。サンプルの色が異なるので(ピンク/赤/茶)、サンプルが異なる量のアルブミンを含んでいたと想像できる。アルブミンを制御タンパク質と同定した理由はこのことから説明され得る。サンプル調製は重要なステップであることが知られており、サンプルを凍結する前に予防措置が取られるべきである。例えば、組織を紙の上に置き、数分放置して組織から血液が吸い出されるのを確かめることを提案する。この類の予防措置は、観察結果の誤った解釈を防ぎ得る。
【0065】
本研究の2D法では、31のタンパク質スポットが健常組織と腫瘍組織間で特異的に発現していることがわかった。これらのスポットの全ては、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)によって同定され、これらは22の異なるタンパク質種に対応した。
【0066】
興味深いことに、同定された11のタンパク質(50%)がCRCの新たなマーカーに相当した。六つのタンパク質は、腫瘍組織で過剰発現していたため、特に興味深い。同定された他の11のタンパク質(50%)は、蛍光ダイ(DIGE技術)を用いるバイオマーカー発見の研究から既に公開されている。これらの11のタンパク質は、本研究の手法の能力を検証するものと見なしてよく、本研究の銀染色プロトコルの高い感度を示すものである。これらのタンパク質が、別のサンプルセットを用いた本研究で再発見されたという事実は、これらのマーカーの有用性を裏付けるものである。
【0067】
<実施例2>
腫瘍血漿サンプルおよび対照血漿サンプルにおけるタンパク質発現を分析するために、二次元ゲル電気泳動と質量分析が使用された。各サンプルは個別に除去され、2DEゲルで分離した。腫瘍サンプルと対照サンプル間で統計的に有意な変化を持つ七つのスポットに対して、大きな差異が見られた(少なくともゲルの60%以内にスポットが存在し、1.5倍の下方/上方制御で、かつp値<0.005)。全タンパク質スポットはMALDI-ToF MSによって同定され、これらは四つの異なるタンパク質種に対応した。
【0068】
15人の結腸直腸癌患者と、20人の対照健常者が選択された。全サンプルはAgilentのMARSカラムで同時に除去され、タンパク質はTCA沈殿させた。
【0069】
<2Dゲル電気泳動、画像分析、質量分析>
各血漿サンプルにつき、一つの分析ゲルを供した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド、100μgタンパク質負荷量)。ゲルを銀染色し、スキャンし、ゲル画像をProGenesisソフトウェア(v2006)で分析した。
【0070】
全45分析ゲル画像(対照群として20の健常血漿ゲル、腫瘍群として15の腫瘍血漿ゲル)を画像分析に取り込んだ。二群を相互比較した。制御スポットを選択するために、以下の基準を用いた。スポットは少なくともゲルの60%以内にあり、1.5倍の変化で、かつp値<0.005(マン・ホイットニ検定)。
【0071】
調製ゲルに対し、五つの健常サンプルを混ぜ合わせ、また五つの腫瘍サンプルを混ぜ合わせ、各混合サンプル350μgタンパク質を一次IPGに負荷した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド)。ゲルはクマシー染色しスキャンした。
【0072】
目的のタンパク質スポットを調製ゲルから採取し、Spot Handling Workstation(GE Healthcare)で処理した。ペプチドプロファイルをMALDI-ToFで作製し、Ms-Fitソフトウェア(Protein Prospector)で分析し、IPIデータベースで検索した。SwissProtとの相互参
照がIPIデータベースで利用可能な場合は、SwissProtでの参照番号を示した(図19)。
【0073】
[結果]
<1-画像分析法および検出された制御タンパク質スポットの数>
ゲル画像はProGenesis(v2006)で分析した。スポット検出、マッチング、バックグラウンド除去および正規化はProGenesisによって自動的に行われた。バックグラウンド除去方法は、Nonlinear Dynamics社によって確立された特許のバックグラウンド除去アルゴリズムを用いた。ゲル全体の表面モデルに基づいて、バックグラウンドをアルゴリズムが計算した。正規化モードは、“総スポット体積”法を用いた。この方法では、ゲル内の各スポットの体積を全スポットの総体積で除する。この方法はきわめて小さい値を生じる傾向があるので、結果にある係数を乗じた。例えば、デフォルト値である100を係数として用いる場合、スポット百分率体積がもたらされる。
【0074】
本研究では、ProGenesisによって指定されたデフォルト値よりも大きな整数をデータ分析に使用できる係数1000での乗算を行うことに決めた。その後スポットデータをExcelにエクスポートし、マクロを用いて、変動係数(CV、%)、スチューデントT検定、マン・ホイットニ検定、ならびに、腫瘍群対健常群のスポット体積比間の制御係数(Regulation factor)を99.5の信頼度(p<0.005)以内で計算した。
【0075】
本研究では経験に基づいて、これらの選択基準を適用した。スポットは少なくともゲルの60%以内で見られ、99.5の信頼度(マン・ホイットニ検定;p<0.005)以内で1.5倍の上方/下方変化でなければならない。ゲルの60%以内にスポットが存在するという必要条件で、約650のスポットが統計分析にかけられた。七つのスポットは腫瘍血漿サンプルと健常血漿サンプル間で特異的に発現することがわかった。これらのスポットは図19に列挙する。二つのスポットは腫瘍サンプル群で上方制御され、五つのスポットは健常サンプル群で下方制御された。ゲル内のスポット位置は図20に示す。
【0076】
<2-目的タンパク質スポットの質量分析同定>
調製健常血漿ゲルと調製腫瘍血漿ゲルは、それぞれ五つの健常サンプルの混合物と五つの腫瘍サンプルの混合物と共に実験に供した。これらのゲルはクマシーブルーで染色し、目的タンパク質を採取してSpot Handling Workstation(GE Healthcare)で処理し、ペプチドをMALDI-ToFターゲットにのせた。MSスペクトルはMs-FitソフトウェアとIPIデータベースで分析した。図19に示すように、提示された全てのタンパク質スポットは、タンパク質あたり平均13ペプチド、約20%のタンパク質一致率(protein coverage)でうまく同定された。七つのタンパク質スポットは四つの異なるタンパク質種に対応していた(図19)。
【0077】
[考察]
<1-組織中で制御されることが事前にわかっていたタンパク質は、全て血漿中で全く制御されないことがわかった>
腫瘍組織と健常組織間での特異的なタンパク質発現の分析に基づく実施例1では、22の特異的制御タンパク質が同定された。これら22のタンパク質のいくつかは既に血漿中で見つかっているという事実にも関わらず、それらのいずれも血漿中では制御されていないことがわかった。
【0078】
制御タンパク質の二つの異なるセット、すなわちCRC組織サンプルで一つのマーカーセットと、血漿サンプルで一つのマーカーセットが同定されたという事実は、組織における癌細胞の代謝特性に対応する事態は直接的に血流に移行されない、ということを示唆する。これは、組織細胞の細胞膜のフィルターの役目、および/または、2Dゲル法が補正できない、血中への高い希釈率のためである可能性がある。少なくとも、組織における実験で
は血清アルブミンが制御タンパク質として同定された。このタンパク質は血漿から除去され(上記の実験手順を参照)、従って調べた血漿サンプルでは見られなかったということになる。
【0079】
<2-CRC血漿で検出された制御タンパク質>
血漿の実験では、腫瘍サンプルにおいて二つの上方制御されたスポットが発見され(スポット748;2049)、それぞれセルピンC1タンパク質とハプトグロビン前駆体と同定された。また、三つの異なるタンパク質種α-2-マクログロブリン(スポット707;710;711)、セルピンC1タンパク質(スポット1040)、アポリポタンパク質A IV(スポット1149)に対応する、五つの下方制御されたスポットが腫瘍血漿で発見された(図19)。
【0080】
セルピンC1タンパク質(もしくはアンチトロンビン3)は、血液凝固カスケードを制御する血漿中の非常に重要なプロテアーゼ抑制因子である。近年、Sierko and coll.(2006)は、結腸癌の多くの症例において、アンチトロンビン3の発現は、いくつかの癌巣においては非常に低い強度を有することを観察した。症例の約15%においてはAT3の発現はなかったが、結腸癌の実験フラグメントの別の15%では、AT3が容易に検出された。本研究のゲルでは、二つのスポットがアンチトロンビン3と同定され、一つのスポットは下方制御され(1040)、もう一つのスポットは上方制御された(748)。結腸直腸癌血清サンプルにおける同じタンパク質のアイソフォームの異なる制御は、既に観察されている。実際に、Rodriguez-Pineiro and coll.(2006)が、CRCサンプルで上方制御された一つのクラステリンN-グリコシル化アイソフォームと、CRCサンプルで下方制御されたか、あるいは存在しない15のクラステリンN-グリコシル化アイソフォームを同定している。アンチトロンビンのN-グリコシル化の既知の四部位はSwiss-Protで示されるので(P01008)、本研究の観察結果を説明する、同様の事象がアンチトロンビン3に起こったかもしれないと想像できる。
【0081】
ハプトグロビンタンパク質は二つの鎖αとβを持つ。ハプトグロビンの主な機能は、ヘモグロビン(Hb)と結合して安定なHp-Hb複合体を形成し、それによって、Hb誘導酸化的組織損傷を妨げることである。このタンパク質はアルツハイマー病サンプルでも制御されることがわかっている。本研究で同定されたスポットは、別のグループによっても既にハプトグロビンと同定されており(ノートを参照、スポットが赤で示されている)、本研究の同定を裏付ける。
【0082】
Bresalier and coll.(2004)は、ハプトグロビンタンパク質がガレクチン-3のリガンドであることを同定した。ガレクチン-3は、腫瘍進行と結腸直腸癌の転移に関わるβ-ガラクトシド-結合タンパク質である。彼らは、結腸癌患者の血清中で上昇する、ガレクチン-3の主な循環リガンドが、ハプトグロビンの癌関連糖鎖結合型であると結論付けた。免疫組織化学染色により、健常結腸ではハプトグロビンが存在しないこと、ならびに結腸癌と腺腫性ポリープにおけるハプトグロビンの異所性発現が確認された。
【0083】
α-2-マクログロブリンタンパク質は、独特な“捕獲”機構によってプロテイナーゼの四つのクラスの全てを阻害することができる。ミエロペルオキシダーゼと共に、α-2-マクログロブリンはβアミロイド沈着につながる分子経路に関わる(Du et al., 1998)。α-2-マクログロブリンは、前立腺特異タンパク質(PSA)に結合することができ、その後PSA-A2M複合体は従来のPSA免疫測定では検出されない(Lilja et al., 1991)。α-2-マクログロブリンは、肝細胞の発癌に対するマーカーとして同定されたが(Kawakami et al., 2005)、結腸直腸癌のマーカーではない。このタンパク質はアルツハイマー病サンプルで下方制御されることもわかっている。成熟タンパク質は160796 Daの分子量を持ち、これは観察されたゲル内のスポットの分子量とは一致しない(〜100 kDa、図20、スポット707;710;711)。本研究で同定されたタンパク質は、α-2-マクログロブリンの全長
配列のフラグメントに相当し得ることが想像できる。α-2-マクログロブリンと同定されたスポットは、同じスポット鎖に属しており(図20)、これらのスポット間の差が、タンパク質の翻訳後修飾によるものであろうことも想像できる。
【0084】
アポリポタンパク質A4はHDL(高密度リポタンパク質)とカイロミクロンの主要構成要素であり、アポリポタンパク質C2によるリポタンパク質リパーゼの活性化に必要である。このタンパク質は腸で生成され、その後血漿中に分泌される。本研究では、アポリポタンパク質A4発現はCRC患者で抑制され、これは肝細胞癌(Kawakami et al., 2005)および膵臓癌(Zervos et al., 2006)で観察されたものと反対の発現に相当する。
【0085】
[結論]
本研究の目的は、新たなバイオマーカーを発見するために、CRC罹患患者からの除去血漿サンプルをスクリーニングすることであった。2-DEゲル電気泳動を用いてタンパク質を表示し、銀染色を用いてタンパク質スポットを検出し、質量分析を用いて目的タンパク質を同定した。
【0086】
血漿除去、サンプル調製、2Dゲル電気泳動は熟練技師が行った。全サンプルは同時に処理した。サンプルは完全包装され、良好な状態で受理されたので、これらの重要なステップの間、何の問題も生じず、2Dゲルにおいて分解は全く観察されなかった。
【0087】
七つのタンパク質スポットが健常者と腫瘍患者の血漿間で特異的に発現していることがわかった。これらの全スポットはPMFによって同定され、四つの異なるタンパク質種に相当した。
【0088】
興味深いことに、同定された一つのタンパク質(ハプトグロビン)は、CRCと関連することが既に知られている。これは、本研究の方法の妥当性を裏付け得る。異なる研究とグループにおいて同じ結腸直腸癌マーカーが同定されることは、その妥当性を強化する。
【0089】
さらに、健常患者で選択的に発現していたタンパク質(α-2-マクログロブリンとアポリポタンパク質A IV)は、代理マーカーと見なされ得る。これらのマーカーは、治療もしくは外科的処置の後に測定され得る。タンパク質が患者で新たに発現する場合、それは治療もしくは処置の成功を示唆し得る。本研究の暫定的結果を裏付けるために、より多くのサンプルのセットでさらなる研究が実施されるべきである。
【0090】
[参考文献]
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【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】下記の実施例1の結果の表であり、各ゲルに対し検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計、および倍率を示す。
【図2】下記の実施例1の結果の表であり、各スポットで検出されたタンパク質を示す。
【図3】実施例1に記載された方法によって腫瘍組織から抽出されたタンパク質の二次元ゲルの写真。示されたパターンは、銀染色ゲルの2-D PAGE画像に相当する。キロダルトン(kDa)の分子量マーカーが縦座標に示され、等電点(pI)が左から右に増加するように横座標に示される。スポット番号は、腫瘍組織で上方制御されたタンパク質のスポットを示す。
【図4】同様のゲルの写真であり、スポット番号は腫瘍組織で多くを占めるタンパク質のスポットを示す。
【図5】同様のゲルの写真であり、スポット番号は腫瘍組織で下方制御されたタンパク質のスポットを示す。
【図6】健常組織から抽出されたタンパク質の対応するゲルの写真であり、スポット番号は健常組織で多くを占めるタンパク質のスポットを示す。
【図7】下記の実施例1で記載したように、疑似群の分析によって無作為に選択されたスポットの数を示す表である。
【図8】仮想タンパク質(SeqA)のURG4タンパク質とのBLAST配列を示す。仮想タンパク質(1-312)のアミノ酸配列はURG4タンパク質のC末端アミノ酸配列(611-922)に完全に一致する。
【図9】セロトランスフェリンと同定されたスポット361からの正規化体積を示す散布図である。“Control”は対照サンプルゲルで検出されたスポットからの正規化体積強度を意味し、“Test”は腫瘍サンプルゲルで検出されたスポットからの正規化体積強度を意味する。
【図10】形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3と同定されたスポット407からの正規化体積を示す、対応する散布図である。
【図11】ペリフェリンと同定されたスポット543からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図12】血清アルブミンおよび26Sプロテアソームサブユニットp40.5という二つのタンパク質の混合物と同定された、スポット877からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図13】アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10およびフルクトサミン-3-キナーゼという二つのタンパク質の混合物と同定された、スポット943からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図14】SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)と同定されたスポット949からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図15】仮想タンパク質(URG4の一部)と同定されたスポット975からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図16】カルポニン-2と同定されたスポット983からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図17】熱ショックタンパク質HSP90-βと同定されたスポット1191からの正規化体積を示す対応する散布図を示す。
【図18】ホスホグリセリン酸ムターゼ1と同定されたスポット1354からの正規化体積を示す対応する散布図を示す。
【図19】下記の実施例2の結果の表であり、各スポットで検出されたタンパク質を示す。
【図20】実施例2で記載された方法によって血漿サンプルから抽出されたタンパク質の二次元ゲルの写真である。
【図21】実施例2で記載された、α-2-マクログロブリンと同定されたスポット707の散布図である。
【図22】α-2-マクログロブリンと同定されたスポット710の対応する散布図である。
【図23】α-2-マクログロブリンと同定されたスポット711の対応する散布図である。
【図24】セルピンC1タンパク質(アンチトロンビン3)と同定されたスポット1040の対応する散布図である。
【図25】アポリポタンパク質A-IVと同定されたスポット1149の対応する散布図である。
【図26】セルピンC1タンパク質(アンチトロンビン3)と同定されたスポット748の対応する散布図である。
【図27】ハプトグロビン前駆体と同定されたスポット2094の対応する散布図である。
【0092】
図9〜18および21〜27では、“Control”の結果は“Test”の結果の左側に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸癌の診断と予後に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌(Colorectal cancer:CRC)は世界で三番目に頻度の高い癌である。癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)(Gold and Freedman, 1965)、サイトケラチン(Moll et al., 1982)、CA19-9, CA 242(Nilsson et al., 1992)、CA 72-4(Fernandez-Fernandez et al., 1995)、VEGF(Broll et al., 2001)、p53(Shiota et al., 2000; Hammel et al., 2000)、HNP 1-3(Albrethsen et al., 2005)、RCAS1(Yamagushi et al., 2005)、アポリポタンパク質A-I、アポリポタンパク質C-I(Engwegen et al., 2006)、補体C3a des-arg、α-1-アンチトリプシン、トランスフェリン(Ward et al., 2006)、PSME3(Roessler et al., 2006)などの血清腫瘍マーカーが同定されている。しかしながら、腫瘍組織サンプルおよび体液(例えば血漿)サンプルにおけるCRCの新たなバイオマーカーを見つける必要がある。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、ヒト被験者から採取した有効な体組織の診断サンプルにおける、結腸直腸癌の診断の方法を提供し、この方法は、対照の健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプルにおいて以下のタンパク質の増加濃度を検出することを含む。タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)である。
あるいは、対照の健常ヒトサンプルと比較して、診断サンプルにおいて以下のタンパク質の減少濃度を検出することを含む。タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である。
【0004】
上記のタンパク質は本明細書では“マーカータンパク質”もしくは“バイオマーカー”と称する。
【0005】
同じタンパク質は、結腸直腸癌の治療過程における濃度変化を検出することによって、予後にも利用できる。従って本発明は、被験者における結腸直腸癌の治療の効果をモニタリングする方法も提供する。この方法は、前記治療のある段階において、前記被験者から採取した有効な体組織サンプル中の、少なくとも一つのタンパク質の濃度の変化を、前記治療の前もしくは前記治療の初期段階において前記被験者から採取した有効な体組織サン
プルにおける前記タンパク質の濃度と比較して、検出することを含む。タンパク質は上記で特定したうちの少なくとも一つである。
【0006】
上記で特定したマーカータンパク質の同定には高い信頼性があるものの、本発明はその代わりに、二次元電気泳動ゲル上に特異的に発現したスポット中のタンパク質によって規定することができる。すなわち、上記の名前やデータベースIDに関係なく、本明細書の図3〜6で同定されたタンパク質によって規定することができる。
【0007】
<定義>
“タンパク質”(“ポリペプチドとも称される”)という用語は、上記のアクセッション番号に対応する配列に限定されず、それらの変異体(variants)、ミュータント (mutants)とアイソフォームを含む。変異体(variant)とは、ある配列に高い相同性を持つポリペプチドの配列に自然発生する変異と定義され、実質的に同じ機能特性と免疫学的性質を持つ。ミュータント(mutant)とは、人工的に作り出された変異体と定義される。高い相同性とは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも99%の相同性と定義される。変異体は、単一の種内で発生してもよいし、あるいは異種間で発生してもよい。ポリペプチドのアイソフォームは、ポリペプチドと同じ機能を持つが、異なる遺伝子によってコードされ、またその配列中にわずかな違いを有することもある。上記のタンパク質はヒト由来であるが、本発明は他の哺乳類種由来の対応するポリペプチドの利用も包含する。
【0008】
“特異的に発現した”という用語は、タンパク質染色スポット(stained protein-bearing spots)が、診断用に採取されたサンプル(“診断サンプル”)由来のゲルにおいて、対照サンプルもしくは他の比較サンプル由来のゲルよりも、高いもしくは低い光学濃度を示すことを意味する。従って、そのタンパク質は診断サンプルにおいて、対照サンプルまたは他の比較サンプルにおいてよりも、高いもしくは低い濃度で存在するということになる。
【0009】
“対照”という用語は、健常被験者、すなわちCRCを患っていない被験者、あるいは、診断サンプルと同じヒト被験者の健常組織のことをあらわす。
【0010】
“対照サンプルと比較して…増加した/減少した濃度”という術語は、比較のステップが実際に行われることを意味するものではない、というのも、多くの場合、濃度が異常に高いか低いかということは熟練者にとっては明らかであるからである。さらに、CRCの病期が漸次観察される時、あるいは治療過程が観察される時には、疾病の進行初期、または治療の初期もしくは治療の開始前において同じ被験者で以前に見られた濃度に対して、比較が実行され得る。
【0011】
“結合パートナー”という用語は、マーカータンパク質を認識する、あるいはマーカータンパク質に親和性を持つ物質を含む。これ自体は標識されていてもされていなくてもよい。
【0012】
“抗体”という用語は、ポリクローナル抗血清、モノクローナル抗体、一本鎖およびFabフラグメントなどの抗体のフラグメント、ならびに遺伝子組み換え抗体を含む。抗体は、キメラであってもよいしあるいは単一種のものであってもよい。
【0013】
“マーカータンパク質”もしくは“バイオマーカー”という用語は、同定されたタンパク質の生物学的に関連した全ての形を含む。例えば、マーカータンパク質は体組織においてグリコシル化型、リン酸化型、多量体型、または前駆体型で存在し得る。
【0014】
本明細書で使用される“診断”という用語は、CRCの有無を決定するステップを含み、また、CRCが進行した(あるいは治療過程で退行した)病期を決定するステップも含む。この診断は、患者の将来の転帰に関する予後の根拠となり得る。
【0015】
“有効な体組織”という用語は、その中でCRCに関連してマーカータンパク質が蓄積すると合理的に予想され得る任意の組織を意味する。これは結腸直腸サンプルであってもよいし、あるいは、例えば血液や血液由来物(blood derivative)(血漿や血清など)などの体液であってもよい。
【0016】
“抗体アレイ”もしくは“抗体マイクロアレイ”という用語は、連続固体表面上の固有の指定可能な要素のアレイを意味し、それによって、固有の指定可能な要素のそれぞれにおいて、抗原に対する明確な特異性を持つ抗体が、その後標的抗原をとらえ、その結合の程度を検出することができるように、固定される。固有の指定可能な要素のそれぞれは、固体表面上で他の全ての固有の指定可能な要素と離れており、特異抗原の結合と検出が、隣接する任意のこうした固有の指定可能な要素を妨げることがないようになっている。
【0017】
“ビーズサスペンションアレイ(bead suspension array)”は、一つ以上の識別可能な個別粒子の水懸濁液を意味し、それによって、各粒子はそのサイズと色に関するコード特性または蛍光特性を含み、そのようなコード特性の特有の組み合わせのビーズ全てが、その後標的抗原をとらえ、その結合の程度を検出することができるように、抗原に対する明確な特異性を持つ抗体で覆われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい診断方法は、マーカータンパク質のバインディングアッセイを行うことを含む。任意のある程度特異的な結合パートナーを使用できる。結合パートナーは標識されることが好ましい。アッセイは免疫測定(immunoassay)であることが好ましく、特に、マーカーと、タンパク質を認識する抗体(特に標識抗体)との間での免疫測定が好ましい。抗体は、その一部もしくは全体に対して作製されたものであってもよく、マーカータンパク質に対して高い特異性を持つ、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗ヒト抗血清が最も好ましい。
【0019】
従って、上述のマーカータンパク質は、診断サンプルに見られるマーカータンパク質の増加濃度または減少濃度を検出するのに使用できる、それに対する抗体を作製する目的に有効である。そのような抗体は、免疫診断の分野で周知の方法のいずれによっても作製することができる。
【0020】
抗体は、タンパク質の生物学的に関連する任意の状態に対するものとなり得る。従って抗体は、例えば、体内でグリコシル化された形で存在するタンパク質のグリコシル化されていない形や、前駆体タンパク質のより成熟した形(例えばシグナル配列のない形)、あるいはマーカータンパク質の関連エピトープを持つペプチドに対して、作製することができる。
【0021】
サンプルは、任意の有効な体組織から採取することができ、特に(ヒト)被験者の体液、好ましくは血液、血漿、もしくは血清から採取することができる。その他の利用可能な体液としては、脳脊髄液(CSF)、尿、および涙液を含む。
【0022】
好ましい免疫測定は、タンパク質/抗体の相互作用の程度を測定することによって実行される。任意の既知の免疫測定方法が使用され得る。サンドイッチアッセイが好ましい。この方法では、マーカータンパク質に対する一次抗体が、プラスチックマイクロタイタープレートのウェルなどの固相に結合し、サンプルと、分析されるタンパク質に特異的な標
識二次抗体と共にインキュベートされる。あるいは、抗体捕捉アッセイ(antibody capture assay)が利用できる。ここでは、試料サンプルが固相に結合してもよく、その後抗マーカータンパク質抗体が加えられ、また結合することができる。結合していない物質を洗浄した後、固相に結合した抗体の量を、抗一次抗体標識二次抗体を用いて測定する。
【0023】
別の実施形態では、サンプルと、標識マーカータンパク質もしくはそれ由来のペプチドとの間で競合アッセイが行われる。これら二つの抗原は、固体支持体に結合した抗マーカータンパク質抗体の限られた量をめぐって競合している。標識マーカータンパク質もしくはそのペプチドは、固相上で抗体とプレインキュベートさせることができ、それによって、サンプル中のマーカータンパク質は、抗体に結合したマーカータンパク質もしくはそのペプチドの一部を置き換える。
【0024】
なおも別の実施形態では、二つの抗原が抗体との一回の共インキュベーションで競合してもよい。洗浄によって支持体から非結合抗原を除去した後、支持体に結合した標識の量が測定され、また、サンプル中のタンパク質の量が、前もって設定された標準滴定曲線を参照して測定される。
【0025】
標識は酵素であることが好ましい。酵素の基質は、例えば発色性、蛍光性、または化学発光性であってもよい。
【0026】
バインディングアッセイの結合パートナーは、標識した特異的な結合パートナーであることが好ましいが、必ずしも抗体でなくてもよい。結合パートナーは、通常それ自体が標識されるが、その代わりに、例えば別の標識した基質から、シグナルが生成される二次反応によって検出されてもよい。
【0027】
比較的低レベルの検出タンパク質から、増強した“シグナル”が生成されるような、増幅された形のアッセイを使用することが非常に好ましい。増幅された免疫測定の一つの特定の形は、増強化学発光法(enhanced chemiluminescent assay)である。好都合なことに、抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼで標識される。これは、ルミノール、過酸化物基質、および放射光の強度と期間を増強する化合物(典型的には4-ヨードフェノールもしくは4-ヒドロキシケイヒ酸)との化学発光反応に参加する。
【0028】
別の好ましい増幅免疫測定の形は、イムノ-PCR(immuno-PCR)である。この技術では、抗体はPCRプライマーを含む任意のDNA分子に共有結合し、抗体が結合したDNAがポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。E.R.Hendrickson et al., Nucleic Acids Research 23: 522-529 (1995)を参照のこと。シグナルは前述と同様に読み取られる。
【0029】
あるいは、診断サンプルは染色ゲルをもたらす二次元ゲル電気泳動に供することができ、染色ゲル上のタンパク質含有スポットの強度の増加もしくは減少によって、対応する対照ゲルもしくは比較ゲルと比較して、タンパク質の増加濃度もしくは減少濃度が検出される。関連するスポットと特異的な発現は、下記に記載したように図2にあげたものである。本発明は、上記および図2に示したマーカータンパク質の同定とは無関係に、このような方法を含む。
【0030】
別の実施形態では、診断サンプルは、例えば凍結またはパラフィン包埋によって固定された組織切片であり、その後免疫組織化学に供される。
【0031】
さらなる実施形態では、診断サンプルは、上記で特定したタンパク質のうちの少なくとも一つのメッセンジャーRNAに対するDNAプローブを用いるin situハイブリダイゼーションに供される。
【0032】
なおもさらなる実施形態では、CRCで過剰発現した以下のマーカータンパク質のうちの一つ以上の増加濃度が、それに対する自己抗体の上昇レベルを、対照サンプルにおける自己抗体のレベルと比較して検出することによって、検出される。自己抗体のレベルは、自身の腫瘍、自己腫瘍、もしくはCRC細胞系に対する(1Dまたは2D電気泳動からの)ウェスタンブロットによって、精製タンパク質を用いる酵素結合免疫吸着法(ELISA)、タンパク質マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイによって、検出することができる。
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
ハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
【0033】
例として、結腸直腸癌患者で特異的に増加したタンパク質に対する自己抗体の検出は、以下のように実施できる。組み換えタンパク質をバキュロウィルス感染昆虫細胞内で発現させ、マイクロタイタープレートの表面を覆うために使用する。結腸直腸癌を罹患している疑いのある患者から採取した血清/血漿を、各マイクロタイタープレートの複製ウェル(duplicate wells)に加え、37℃で1時間インキュベートする。プレートは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗ヒトIgG抗血清を加える前に、吸引、洗浄し、37℃で1時間インキュベートする。最後に、抗ヒト抗血清の結合は、プレートの吸引、洗浄、そしてその後、HRPの存在下で着色した生成物を生じるテトラ-メチルベンジジン(TMB)を加えることによって、明らかとなる。この着色した生成物の強度は、450nmでプレートを読み取ることによって測定される。二次抗体がHRP標識抗ヒトIgM抗血清である場合を除いて、同じプレートのセットがテストされる。各CRCマーカータンパク質に対するIgGおよび/またはIgM自己抗体のレベルは、結腸直腸癌でない健常者の血清で見られるレベルと比較して上昇している。
【0034】
診断は、必ずしもタンパク質濃度(もしくは自己抗体濃度)の対照との比較のステップを必要としないが、診断は対照サンプルまたは比較サンプルのいずれかを参照して実施され得る。本発明は、必要に応じて、同じ患者から前に得られた結果を参照して、あるいは、疾病の病期に典型的と考えられる標準値を参照して、CRCの病期を決定するために使用することができる。このようにして、本発明は、例えば薬物もしくは候補薬物による患者の治療後、疾病が進行したかどうかを決定するために使用することができる。その結果は、疾病の転帰の予後につながり得る。
【0035】
本発明はさらに、上記で特定した、および/または、図3〜6のいずれかに示された特異的に発現した二次元ゲル電気泳動スポットによってあらわされたマーカータンパク質を、認識する、それと結合する、あるいはそれに対する親和性を持つパートナー物質を、診断(従って場合により予後)、または治療目的として使用することを含む。従って、例えば必要に応じて適切に人体に適応させた(humanised)マーカータンパク質に対する抗体が治療に使用されてもよい。パートナー物質は通常は抗体であり、任意のアッセイ適合性(assay-compatible)形式で、例えばビーズもしくはチップとして都合よく固定化された形式で使用される。パートナー物質は標識されるか、あるいは標識と相互作用することができるかのいずれかである。
【0036】
本発明は、上記のようなパートナー物質を、上記のようなアッセイ適合性形式で、診断サンプルに存在するタンパク質との相互作用のために含む、診断方法で使用するためのキットをさらに含む。
【0037】
本発明は、上記のような特異発現タンパク質を、上記のようなアッセイ適合性形式で、診断サンプルに存在する自己抗体との相互作用のために含む、診断方法で使用するためのキットをさらに含む。
【0038】
診断は、一つ、二つ、三つもしくはそれ以上のマーカータンパク質、またはこうしたタンパク質に対して作製された、一つ、二つ、三つ、もしくはそれ以上の自己抗体の特異発現、あるいは両者の組み合わせに基づくことができる。さらに、二つ以上の異なる疾病が診断されるようなより広範囲の診断の一部を成すことができる。CRCは、診断サンプル中の別のタンパク質濃度の変化を、対照の健常ヒト被験者のサンプルと比較して検出することを含む方法によって、同じ体組織サンプルにおける、少なくとも一つの他の疾病(癌であってもなくてもよい)と一緒に診断することができる。これらの他の疾病(一つまたは複数)は、体組織で診断可能な任意のものとすることができる。
【0039】
従って、とりわけ本発明においては、抗体と相互作用する一つ以上のタンパク質を検出可能な抗体チップまたはチップのアレイ、結腸直腸癌で特異的に発現したタンパク質と相互作用する一つ以上の自己抗体を検出可能なタンパク質チップまたはチップのアレイ、抗体アレイとタンパク質アレイの両方の組み合わせを使用することを企図する。
【0040】
以下の実施例は本発明を解説する。
【実施例】
【0041】
<実施例1>
15人の患者が選択された。これらの患者から、腫瘍組織に相当する15の結腸直腸サンプルと、隣接する健常組織に相当する15サンプルを採取した。腫瘍組織サンプルと健常組織サンプルを容器の液体窒素上に置き 、粉末状の硬さになるまで均質化した。
【0042】
<2Dゲル電気泳動(2DE)および質量分析(MS)>
実験研究の前に、2Dゲルの最小数で表示されるタンパク質の最大数をカバーするために、2DE分離最適化ステップを行った。いくつかのIPG(固定化pH勾配)ストリップ範囲をテストした(4-7、3-7NL(NL=非線形)、3-10、3-10NL)。本研究の手法では、最適範囲は3-10非線形であった。各サンプルにつき一つの分析ゲルを供した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド、100μgタンパク質負荷量)。ゲルを銀染色し、スキャンし、ゲル画像をProGenesisソフトウェア(v2005)で分析した。
【0043】
二つの腫瘍組織サンプルが分解(degraded)してしまったため、腫瘍組織群は13の分析ゲルに基づいた。健常組織群は、一つのゲルが画像分析から除去されたため(スポットが不鮮明(smearing)/拡散(diffuse))、14の分析ゲルに基づいた。二つのゲル群を相互に比較した。制御スポットを選択するため、以下の基準を用いた。スポットは少なくともゲルの60%以内に存在し、2倍の下方/上方制御で、p値<0.005。
【0044】
調製ゲルとして、四つの健常サンプルを混ぜ合わせ(健常組織混合物)、また四つの腫瘍サンプルを混ぜ合わせ(腫瘍組織混合物)、各混合サンプルのタンパク質500μgを一次IPG(pH 3-10NL, 10%アクリルアミド)に負荷した。ゲルはクマシー(Commassie)染色しスキャンした。
【0045】
目的のタンパク質スポットを調製ゲルから採取し、Spot Handling Workstation (GE He
althcare)で処理した。ペプチドプロファイルをMALDI-ToF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化‐飛行時間型質量分析装置)で作製し、Ms-Fitソフトウェア(Protein Prospector)で分析し、IPI(International Protein Index:国際タンパク質指標)データベースで検索した。
【0046】
[結果]
<画像分析法および目的の制御タンパク質スポットの数>
ゲル画像はProGenesis(v2005)で分析した。スポット検出、マッチング、バックグラウンド除去、および正規化はProGenesisによって自動的に行われた。バックグラウンド除去法は、Nonlinear Dynamics社によって確立された特許の(proprietary)バックグラウンド除去アルゴリズムを用いた。このアルゴリズムは、ゲル全体の表面モデルに基づいてバックグラウンドレベルを計算した。正規化モードは、“総スポット体積(Total Spot Volume)”法を用いた。この方法では、ゲル内の各スポットの体積を全スポットの総体積で除する。この方法は極めて小さな値を出す傾向があるため、結果にある係数を乗じた。例えば、デフォルト値である100を係数に使用した場合は、スポット百分率体積が得られる。本研究では、ProGenesisによって指定されたデフォルト値よりも大きな整数をデータ分析に使用できる係数1000での乗算を行うことに決めた。それからスポットデータをExcelにエクスポートし、マクロを用いて、変動係数(CV、%)、スチューデントT検定、マン・ホイットニ検定、および、腫瘍群対健常群のスポット体積比間の制御係数(Regulation
factor)を99.5の信頼度(p<0.005)以内で計算した。
【0047】
図1は各ゲルで検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計(IOD)、および倍率-S.F.-(基準ゲルの全スポットの体積の合計を、ゲル内の全スポットの体積の合計で除したもの)を示す。図1では、各ゲルに対し、検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計(IOD)、および倍数(S.F.)が示されている。ゲルn_03-0562_2217は基準ゲルに相当する。この表では、全ゲルが実験値(empiric value)を超える倍率(0.6<S.F.<1.5)を持つことがわかる。これら27のゲルは、画像分析に反映された。
【0048】
本研究では経験に基づき、これらの選択基準を適用した。スポットは少なくともゲルの60%以内で見られ、2倍の上方/下方変化が99.5の信頼度(スチューデントt検定および/またはマン・ホイットニ検定;p<0.005)でなければならない。スポットがゲルの60%以内に存在するという必要条件から、約900のスポットが統計分析にかけられた。31のスポットが腫瘍組織と健常組織間で特異的に発現していることがわかった。これらのスポットは図2に列挙してある。18のスポットは上方制御されたかあるいは腫瘍組織群で多くを占め、13のスポットは下方制御されたかあるいは健常組織群で多くを占めた。ゲルのスポット位置は図3〜6に示す。選択されたスポットからの正規化体積の散布図は、図9〜18に示す。
【0049】
99.5の信頼度は非常に狭い区間であり、高精度であることを意味し、従って非常に厳しい基準をあらわす。実に、0.005というp値は、この結果が200につき1未満の確率で起こり得ることを意味し、言い換えれば、200の選択されたスポットから、一つのスポットが無作為に選択されると予想され得る。本研究の場合、99.5の信頼度で、約5〜900のスポットを無作為に選択することができた。
【0050】
正規化データの全統計分析は、データのネガティブコントロール分析を伴わなければならない。これらのネガティブコントロールのうちの一つは、疑似群の分析、すなわちデータカラムの混合による分析である。例えば、実験が六つの対照ゲルと実験ゲルから構成される場合、比較される二群は三つの対照ゲル+三つの実験ゲル(疑似群)をそれぞれ含まなければならない。この“疑似群”比較は、分析におけるデータセットの潜在的なノイズを無視することによって、(i)スポットがいくつ無作為に選択され得るかを示し、(ii
)実際の比較から確固たる制御スポットが真の統計的有意性をもって選択されることを確実にする。この種のテストを実施することによって、どのような種類の選択基準が、実験群内の真の変化を明らかにできるかが明白となる。“疑似群”比較の実施後、実際の比較と同様の数の変化が見つかった場合は、そのデータセットは群特異的変化において“空(empty)”であるということになる。
【0051】
従って本研究では、健常組織ゲルの半分と腫瘍組織ゲルの半分を混合することによって二つの疑似群を作り、疑似群1と疑似群2を比較した。疑似群分析は、実際の比較に含まれていた全てのゲルを含む。この疑似群分析のために、同じスポット選択法(ゲルの60%以内、p<0.005かつ2倍の変化)を用いた。図7の表に示す通り、上記で計算された理論値に対応する五つのスポットが選択された。
【0052】
<目的タンパク質スポットの質量分析同定>
調製健常組織ゲルと調製腫瘍組織ゲルは、それぞれ四つの健常組織サンプルの混合と四つの腫瘍組織サンプルの混合と共に実験に供した。これらのゲルはクマシーブルーで染色され、目的スポットが採取され、Spot Handling workstation(GE Healthcare)で処理され、さらにペプチドはMALDI-ToFターゲット上にのせた。MSスペクトルはMs-FitソフトウェアとIPIデータベースで分析した。表2に示すように、提示された全タンパク質スポットは、タンパク質あたり平均13ペプチドで、約34%のタンパク質一致率と測定誤差4.7ppmでうまく同定された。31のタンパク質スポットは22の異なるタンパク質種に対応する。
【0053】
[考察]
<使用された技術の検証>
本研究は、腫瘍組織と健常組織間で特異的に発現したタンパク質が、2Dゲル電気泳動法によって同定されたことを明らかにした。CRCのバイオマーカーを見つけるために、いくつかのプロテオミクス研究は既に実行されている(Albrethsen et al., 2005; Mori et al., 2005; Ahmed, 2005; Alessandro et al., 2005; Drew et al., 2005, Alfonso et al., 2005; Friedman et al., 2004; Lawrie LC et al., 2001)。制御されていることがわかったタンパク質のうちのいくつかは、既に同定されている。:グリシル-tRNA合成酵素(スポット241)、60 kDa熱ショックタンパク質(スポット543および543左)、アデノシルホモシステイナーゼ(スポット768)、無機ピロホスファターゼ(スポット1015)、アネキシンA4(スポット1049)、Fアクチンキャッピングタンパク質βサブユニット(スポット1052)、トロポミオシンアルファ4(1081および1458)、Rho GDP解離阻害因子1(スポット1171)、14-3-3タンパク質α/β(スポット1171)、翻訳制御腫瘍タンパク質(スポット1229)、および血清アルブミン(スポット733, 346, 364, 404, 435, 460, 462, 519, 877, 1060および1256)。血清アルブミンスポット733を除く全てのタンパク質で観察された制御は、以前に見つかったものと一致した。これらのタンパク質を本研究で同定したという事実は、分析したサンプルと、使用した方法の正確性と感度が高値であることを示す。一方、これらの観察は、本研究の2-DEプロトコルの高解像度を裏付ける。実に、2D電気泳動法を扱う全ての出版物(Mori et al., 2005; Alfonso et al., 2005; Friedman et
al., 2004)はDIGE(蛍光標識2-Dディファレンスゲル電気泳動)技術(GE Healthcare)を使用した。
【0054】
<CRCの新たなバイオマーカー>
本研究は結腸癌組織でタンパク質を同定した:形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(スポット407)、SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(スポット949)、仮想タンパク質(スポット975)、カルポニン-2(スポット983)、熱ショックタンパク質HSP90-β(スポット1191)、セロトランスフェリン(スポット361)、26Sプロテアソームサブユニットp40.5(スポット877)、アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(スポット943)、フルクトサミン-3-キナーゼ(スポット943)、ペリフェリン(スポット543)お
よびホスホグリセリン酸ムターゼ1(スポット1354)。
【0055】
本研究は(i)CRCの新たなバイオマーカーを見つけるために実施され、(ii)癌の病期において高い発現タンパク質の方が低い発現タンパク質よりも検出が容易でありかつ正確であるため、本研究では癌組織において上方制御されたタンパク質の機能に関する情報をここで提示する。
【0056】
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(スポット407)は、機能未知のポリペプチドで、角膜のケラチノサイトで発現する(Escribano et al., 1994)。コード遺伝子TGFB1は結腸直腸癌と腺腫で有意に上昇することがわかっている(Zhang et al., 1997; Buckhaults et al., 2001)。
【0057】
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(スポット949)は、標的タンパク質のユビキチン化とプロテアソーム分解に関与し得る。二つのアイソフォームは免疫ブロット法によって確かめられている(Niikura and Kitagawa, 2003)。
【0058】
仮想タンパク質(スポット975)は何の機能も持たないが、図8に示すように、そのアミノ酸配列はURG4タンパク質のC末端配列(611-922)に厳密に一致する。HepG2細胞におけるURG4の過剰発現は、ヌードマウスで腫瘍成長を加速させた(Tufan et al., 2002)。
【0059】
カルポニン-2(スポット983)は細いフィラメントに関連するタンパク質で、平滑筋収縮の制御と調節に関与する。これはアクチン、カルモジュリン、トロポニンCおよびトロポミオシンに結合することができる。カルポニンとアクチンの相互作用は、アクトミオシンMg-ATPase活性を阻害する(Kitching et al.. 2002)。
【0060】
熱ショックタンパク質HSP90-β(スポット1191)は分子シャペロンであり、構成的に発現し、正常なフォールディング、細胞内動態、ならびに、細胞成長と生存の主要調節因子の多くのタンパク質分解ターンオーバーを誘導する。熱ショックタンパク質HSP90の本質的な防御能力(guard duty)は、極めて有望な独自の抗癌方法を提供すると思われる(Whitesell et al., 2005)。
【0061】
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(スポット1354)は糖分解酵素である。近年、乳癌細胞増殖を抑制する小分子MJE3が同定された(Evans et al., 2005)。MJE3はホスホグリセリン酸ムターゼ1と結合し、酵素阻害をもたらす。筆者らは、癌細胞が生存能力を解糖に依存していると提案し、ホスホグリセリン酸ムターゼ1を将来の治療標的として掲げている。
【0062】
[結論]
本研究の目的は、新たなバイオマーカーを見つけるために、CRC罹患患者から組織サンプルと血液サンプルをスクリーニングすることであった。本研究ではタンパク質を表示するために2-DEゲル電気泳動を使用し、タンパク質スポットを検出するために銀染色を使用し、目的タンパク質を同定するために質量分析を使用した。
【0063】
本研究では、組織分析の結果を示した。サンプル調製は、全サンプルに対し唯一で同一のプロトコルを用いて、熟練技術者によって行われた。全サンプルは同時に処理された。サンプルは異なる色であることが観察された(ほぼ赤/ピンク/茶)。二つの腫瘍サンプルからの2Dゲルは、タンパク質分解が起こり、異常なサンプルのプロファイル特性を示した(高分子量のゲル領域ではタンパク質スポットがなく、低分子量のゲル領域ではタンパク質スポット数が増加し、ゲルの底部で泳動先端がより濃くなった)。これらの二つのサンプルは、タンパク質濃度が最も低かっただけでなく、粉末状の硬さにすることも困難で
あった。
【0064】
さらに、結腸細胞は血液で灌流され、アルブミンがタンパク質量の〜50% を示すことが明らかであった。サンプルの色が異なるので(ピンク/赤/茶)、サンプルが異なる量のアルブミンを含んでいたと想像できる。アルブミンを制御タンパク質と同定した理由はこのことから説明され得る。サンプル調製は重要なステップであることが知られており、サンプルを凍結する前に予防措置が取られるべきである。例えば、組織を紙の上に置き、数分放置して組織から血液が吸い出されるのを確かめることを提案する。この類の予防措置は、観察結果の誤った解釈を防ぎ得る。
【0065】
本研究の2D法では、31のタンパク質スポットが健常組織と腫瘍組織間で特異的に発現していることがわかった。これらのスポットの全ては、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)によって同定され、これらは22の異なるタンパク質種に対応した。
【0066】
興味深いことに、同定された11のタンパク質(50%)がCRCの新たなマーカーに相当した。六つのタンパク質は、腫瘍組織で過剰発現していたため、特に興味深い。同定された他の11のタンパク質(50%)は、蛍光ダイ(DIGE技術)を用いるバイオマーカー発見の研究から既に公開されている。これらの11のタンパク質は、本研究の手法の能力を検証するものと見なしてよく、本研究の銀染色プロトコルの高い感度を示すものである。これらのタンパク質が、別のサンプルセットを用いた本研究で再発見されたという事実は、これらのマーカーの有用性を裏付けるものである。
【0067】
<実施例2>
腫瘍血漿サンプルおよび対照血漿サンプルにおけるタンパク質発現を分析するために、二次元ゲル電気泳動と質量分析が使用された。各サンプルは個別に除去され、2DEゲルで分離した。腫瘍サンプルと対照サンプル間で統計的に有意な変化を持つ七つのスポットに対して、大きな差異が見られた(少なくともゲルの60%以内にスポットが存在し、1.5倍の下方/上方制御で、かつp値<0.005)。全タンパク質スポットはMALDI-ToF MSによって同定され、これらは四つの異なるタンパク質種に対応した。
【0068】
15人の結腸直腸癌患者と、20人の対照健常者が選択された。全サンプルはAgilentのMARSカラムで同時に除去され、タンパク質はTCA沈殿させた。
【0069】
<2Dゲル電気泳動、画像分析、質量分析>
各血漿サンプルにつき、一つの分析ゲルを供した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド、100μgタンパク質負荷量)。ゲルを銀染色し、スキャンし、ゲル画像をProGenesisソフトウェア(v2006)で分析した。
【0070】
全45分析ゲル画像(対照群として20の健常血漿ゲル、腫瘍群として15の腫瘍血漿ゲル)を画像分析に取り込んだ。二群を相互比較した。制御スポットを選択するために、以下の基準を用いた。スポットは少なくともゲルの60%以内にあり、1.5倍の変化で、かつp値<0.005(マン・ホイットニ検定)。
【0071】
調製ゲルに対し、五つの健常サンプルを混ぜ合わせ、また五つの腫瘍サンプルを混ぜ合わせ、各混合サンプル350μgタンパク質を一次IPGに負荷した(pH 3-10NL、10%アクリルアミド)。ゲルはクマシー染色しスキャンした。
【0072】
目的のタンパク質スポットを調製ゲルから採取し、Spot Handling Workstation(GE Healthcare)で処理した。ペプチドプロファイルをMALDI-ToFで作製し、Ms-Fitソフトウェア(Protein Prospector)で分析し、IPIデータベースで検索した。SwissProtとの相互参
照がIPIデータベースで利用可能な場合は、SwissProtでの参照番号を示した(図19)。
【0073】
[結果]
<1-画像分析法および検出された制御タンパク質スポットの数>
ゲル画像はProGenesis(v2006)で分析した。スポット検出、マッチング、バックグラウンド除去および正規化はProGenesisによって自動的に行われた。バックグラウンド除去方法は、Nonlinear Dynamics社によって確立された特許のバックグラウンド除去アルゴリズムを用いた。ゲル全体の表面モデルに基づいて、バックグラウンドをアルゴリズムが計算した。正規化モードは、“総スポット体積”法を用いた。この方法では、ゲル内の各スポットの体積を全スポットの総体積で除する。この方法はきわめて小さい値を生じる傾向があるので、結果にある係数を乗じた。例えば、デフォルト値である100を係数として用いる場合、スポット百分率体積がもたらされる。
【0074】
本研究では、ProGenesisによって指定されたデフォルト値よりも大きな整数をデータ分析に使用できる係数1000での乗算を行うことに決めた。その後スポットデータをExcelにエクスポートし、マクロを用いて、変動係数(CV、%)、スチューデントT検定、マン・ホイットニ検定、ならびに、腫瘍群対健常群のスポット体積比間の制御係数(Regulation factor)を99.5の信頼度(p<0.005)以内で計算した。
【0075】
本研究では経験に基づいて、これらの選択基準を適用した。スポットは少なくともゲルの60%以内で見られ、99.5の信頼度(マン・ホイットニ検定;p<0.005)以内で1.5倍の上方/下方変化でなければならない。ゲルの60%以内にスポットが存在するという必要条件で、約650のスポットが統計分析にかけられた。七つのスポットは腫瘍血漿サンプルと健常血漿サンプル間で特異的に発現することがわかった。これらのスポットは図19に列挙する。二つのスポットは腫瘍サンプル群で上方制御され、五つのスポットは健常サンプル群で下方制御された。ゲル内のスポット位置は図20に示す。
【0076】
<2-目的タンパク質スポットの質量分析同定>
調製健常血漿ゲルと調製腫瘍血漿ゲルは、それぞれ五つの健常サンプルの混合物と五つの腫瘍サンプルの混合物と共に実験に供した。これらのゲルはクマシーブルーで染色し、目的タンパク質を採取してSpot Handling Workstation(GE Healthcare)で処理し、ペプチドをMALDI-ToFターゲットにのせた。MSスペクトルはMs-FitソフトウェアとIPIデータベースで分析した。図19に示すように、提示された全てのタンパク質スポットは、タンパク質あたり平均13ペプチド、約20%のタンパク質一致率(protein coverage)でうまく同定された。七つのタンパク質スポットは四つの異なるタンパク質種に対応していた(図19)。
【0077】
[考察]
<1-組織中で制御されることが事前にわかっていたタンパク質は、全て血漿中で全く制御されないことがわかった>
腫瘍組織と健常組織間での特異的なタンパク質発現の分析に基づく実施例1では、22の特異的制御タンパク質が同定された。これら22のタンパク質のいくつかは既に血漿中で見つかっているという事実にも関わらず、それらのいずれも血漿中では制御されていないことがわかった。
【0078】
制御タンパク質の二つの異なるセット、すなわちCRC組織サンプルで一つのマーカーセットと、血漿サンプルで一つのマーカーセットが同定されたという事実は、組織における癌細胞の代謝特性に対応する事態は直接的に血流に移行されない、ということを示唆する。これは、組織細胞の細胞膜のフィルターの役目、および/または、2Dゲル法が補正できない、血中への高い希釈率のためである可能性がある。少なくとも、組織における実験で
は血清アルブミンが制御タンパク質として同定された。このタンパク質は血漿から除去され(上記の実験手順を参照)、従って調べた血漿サンプルでは見られなかったということになる。
【0079】
<2-CRC血漿で検出された制御タンパク質>
血漿の実験では、腫瘍サンプルにおいて二つの上方制御されたスポットが発見され(スポット748;2049)、それぞれセルピンC1タンパク質とハプトグロビン前駆体と同定された。また、三つの異なるタンパク質種α-2-マクログロブリン(スポット707;710;711)、セルピンC1タンパク質(スポット1040)、アポリポタンパク質A IV(スポット1149)に対応する、五つの下方制御されたスポットが腫瘍血漿で発見された(図19)。
【0080】
セルピンC1タンパク質(もしくはアンチトロンビン3)は、血液凝固カスケードを制御する血漿中の非常に重要なプロテアーゼ抑制因子である。近年、Sierko and coll.(2006)は、結腸癌の多くの症例において、アンチトロンビン3の発現は、いくつかの癌巣においては非常に低い強度を有することを観察した。症例の約15%においてはAT3の発現はなかったが、結腸癌の実験フラグメントの別の15%では、AT3が容易に検出された。本研究のゲルでは、二つのスポットがアンチトロンビン3と同定され、一つのスポットは下方制御され(1040)、もう一つのスポットは上方制御された(748)。結腸直腸癌血清サンプルにおける同じタンパク質のアイソフォームの異なる制御は、既に観察されている。実際に、Rodriguez-Pineiro and coll.(2006)が、CRCサンプルで上方制御された一つのクラステリンN-グリコシル化アイソフォームと、CRCサンプルで下方制御されたか、あるいは存在しない15のクラステリンN-グリコシル化アイソフォームを同定している。アンチトロンビンのN-グリコシル化の既知の四部位はSwiss-Protで示されるので(P01008)、本研究の観察結果を説明する、同様の事象がアンチトロンビン3に起こったかもしれないと想像できる。
【0081】
ハプトグロビンタンパク質は二つの鎖αとβを持つ。ハプトグロビンの主な機能は、ヘモグロビン(Hb)と結合して安定なHp-Hb複合体を形成し、それによって、Hb誘導酸化的組織損傷を妨げることである。このタンパク質はアルツハイマー病サンプルでも制御されることがわかっている。本研究で同定されたスポットは、別のグループによっても既にハプトグロビンと同定されており(ノートを参照、スポットが赤で示されている)、本研究の同定を裏付ける。
【0082】
Bresalier and coll.(2004)は、ハプトグロビンタンパク質がガレクチン-3のリガンドであることを同定した。ガレクチン-3は、腫瘍進行と結腸直腸癌の転移に関わるβ-ガラクトシド-結合タンパク質である。彼らは、結腸癌患者の血清中で上昇する、ガレクチン-3の主な循環リガンドが、ハプトグロビンの癌関連糖鎖結合型であると結論付けた。免疫組織化学染色により、健常結腸ではハプトグロビンが存在しないこと、ならびに結腸癌と腺腫性ポリープにおけるハプトグロビンの異所性発現が確認された。
【0083】
α-2-マクログロブリンタンパク質は、独特な“捕獲”機構によってプロテイナーゼの四つのクラスの全てを阻害することができる。ミエロペルオキシダーゼと共に、α-2-マクログロブリンはβアミロイド沈着につながる分子経路に関わる(Du et al., 1998)。α-2-マクログロブリンは、前立腺特異タンパク質(PSA)に結合することができ、その後PSA-A2M複合体は従来のPSA免疫測定では検出されない(Lilja et al., 1991)。α-2-マクログロブリンは、肝細胞の発癌に対するマーカーとして同定されたが(Kawakami et al., 2005)、結腸直腸癌のマーカーではない。このタンパク質はアルツハイマー病サンプルで下方制御されることもわかっている。成熟タンパク質は160796 Daの分子量を持ち、これは観察されたゲル内のスポットの分子量とは一致しない(〜100 kDa、図20、スポット707;710;711)。本研究で同定されたタンパク質は、α-2-マクログロブリンの全長
配列のフラグメントに相当し得ることが想像できる。α-2-マクログロブリンと同定されたスポットは、同じスポット鎖に属しており(図20)、これらのスポット間の差が、タンパク質の翻訳後修飾によるものであろうことも想像できる。
【0084】
アポリポタンパク質A4はHDL(高密度リポタンパク質)とカイロミクロンの主要構成要素であり、アポリポタンパク質C2によるリポタンパク質リパーゼの活性化に必要である。このタンパク質は腸で生成され、その後血漿中に分泌される。本研究では、アポリポタンパク質A4発現はCRC患者で抑制され、これは肝細胞癌(Kawakami et al., 2005)および膵臓癌(Zervos et al., 2006)で観察されたものと反対の発現に相当する。
【0085】
[結論]
本研究の目的は、新たなバイオマーカーを発見するために、CRC罹患患者からの除去血漿サンプルをスクリーニングすることであった。2-DEゲル電気泳動を用いてタンパク質を表示し、銀染色を用いてタンパク質スポットを検出し、質量分析を用いて目的タンパク質を同定した。
【0086】
血漿除去、サンプル調製、2Dゲル電気泳動は熟練技師が行った。全サンプルは同時に処理した。サンプルは完全包装され、良好な状態で受理されたので、これらの重要なステップの間、何の問題も生じず、2Dゲルにおいて分解は全く観察されなかった。
【0087】
七つのタンパク質スポットが健常者と腫瘍患者の血漿間で特異的に発現していることがわかった。これらの全スポットはPMFによって同定され、四つの異なるタンパク質種に相当した。
【0088】
興味深いことに、同定された一つのタンパク質(ハプトグロビン)は、CRCと関連することが既に知られている。これは、本研究の方法の妥当性を裏付け得る。異なる研究とグループにおいて同じ結腸直腸癌マーカーが同定されることは、その妥当性を強化する。
【0089】
さらに、健常患者で選択的に発現していたタンパク質(α-2-マクログロブリンとアポリポタンパク質A IV)は、代理マーカーと見なされ得る。これらのマーカーは、治療もしくは外科的処置の後に測定され得る。タンパク質が患者で新たに発現する場合、それは治療もしくは処置の成功を示唆し得る。本研究の暫定的結果を裏付けるために、より多くのサンプルのセットでさらなる研究が実施されるべきである。
【0090】
[参考文献]
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【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】下記の実施例1の結果の表であり、各ゲルに対し検出されたスポットの数、全スポットの体積の合計、および倍率を示す。
【図2】下記の実施例1の結果の表であり、各スポットで検出されたタンパク質を示す。
【図3】実施例1に記載された方法によって腫瘍組織から抽出されたタンパク質の二次元ゲルの写真。示されたパターンは、銀染色ゲルの2-D PAGE画像に相当する。キロダルトン(kDa)の分子量マーカーが縦座標に示され、等電点(pI)が左から右に増加するように横座標に示される。スポット番号は、腫瘍組織で上方制御されたタンパク質のスポットを示す。
【図4】同様のゲルの写真であり、スポット番号は腫瘍組織で多くを占めるタンパク質のスポットを示す。
【図5】同様のゲルの写真であり、スポット番号は腫瘍組織で下方制御されたタンパク質のスポットを示す。
【図6】健常組織から抽出されたタンパク質の対応するゲルの写真であり、スポット番号は健常組織で多くを占めるタンパク質のスポットを示す。
【図7】下記の実施例1で記載したように、疑似群の分析によって無作為に選択されたスポットの数を示す表である。
【図8】仮想タンパク質(SeqA)のURG4タンパク質とのBLAST配列を示す。仮想タンパク質(1-312)のアミノ酸配列はURG4タンパク質のC末端アミノ酸配列(611-922)に完全に一致する。
【図9】セロトランスフェリンと同定されたスポット361からの正規化体積を示す散布図である。“Control”は対照サンプルゲルで検出されたスポットからの正規化体積強度を意味し、“Test”は腫瘍サンプルゲルで検出されたスポットからの正規化体積強度を意味する。
【図10】形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3と同定されたスポット407からの正規化体積を示す、対応する散布図である。
【図11】ペリフェリンと同定されたスポット543からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図12】血清アルブミンおよび26Sプロテアソームサブユニットp40.5という二つのタンパク質の混合物と同定された、スポット877からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図13】アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10およびフルクトサミン-3-キナーゼという二つのタンパク質の混合物と同定された、スポット943からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図14】SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)と同定されたスポット949からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図15】仮想タンパク質(URG4の一部)と同定されたスポット975からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図16】カルポニン-2と同定されたスポット983からの正規化体積を示す対応する散布図である。
【図17】熱ショックタンパク質HSP90-βと同定されたスポット1191からの正規化体積を示す対応する散布図を示す。
【図18】ホスホグリセリン酸ムターゼ1と同定されたスポット1354からの正規化体積を示す対応する散布図を示す。
【図19】下記の実施例2の結果の表であり、各スポットで検出されたタンパク質を示す。
【図20】実施例2で記載された方法によって血漿サンプルから抽出されたタンパク質の二次元ゲルの写真である。
【図21】実施例2で記載された、α-2-マクログロブリンと同定されたスポット707の散布図である。
【図22】α-2-マクログロブリンと同定されたスポット710の対応する散布図である。
【図23】α-2-マクログロブリンと同定されたスポット711の対応する散布図である。
【図24】セルピンC1タンパク質(アンチトロンビン3)と同定されたスポット1040の対応する散布図である。
【図25】アポリポタンパク質A-IVと同定されたスポット1149の対応する散布図である。
【図26】セルピンC1タンパク質(アンチトロンビン3)と同定されたスポット748の対応する散布図である。
【図27】ハプトグロビン前駆体と同定されたスポット2094の対応する散布図である。
【0092】
図9〜18および21〜27では、“Control”の結果は“Test”の結果の左側に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者から採取した有効な体組織の診断サンプルにおける結腸直腸癌の診断方法であって、対照の健常ヒトサンプルと比較して、前記診断サンプル中のタンパク質の増加濃度を検出するステップを含み、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)であり、
あるいは、対照の健常ヒトサンプルと比較して、前記診断サンプル中のタンパク質の減少濃度を検出するステップを含み、前記タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記診断サンプル中の前記タンパク質濃度が、前記対照サンプルと比較して、少なくとも2倍増加するかあるいは減少することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質のバインディングアッセイによって、前記診断サンプルに対して前記検出が行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バインディングアッセイが、前記診断サンプルの前記タンパク質を、特異的な結合パートナーと相互作用させるステップと、前記相互作用を検出するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特異的な結合パートナーが標識されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特異的な結合パートナーが、前記タンパク質を認識する抗体もしくは抗体フラグメントであることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記対照サンプルが、前記診断サンプルと同じヒト被験者の健常組織から採取されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対照サンプルが、前記診断サンプルを提供するものとは異なるヒト被験者の健常組織から採取されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記体組織が体液であり、前記体液は免疫測定に供されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫測定が、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、抗体マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記診断サンプルは、凍結された、あるいはパラフィン包埋された組織切片であり、この組織切片が免疫組織染色に供されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記診断サンプルが、染色ゲルをもたらすために二次元ゲル電気泳動に供され、前記タンパク質の増加濃度もしくは減少濃度が、対応する対照ゲルと比較して、前記染色ゲル上のタンパク質含有スポットの増加強度もしくは減少強度によって検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
図3〜6における、スポット407、949、975、983、1191、もしくは1354の増加強度、あるいはスポット361、877、943、もしくは543の減少強度が検出されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1で特定された前記タンパク質のうちの少なくとも一つのメッセンジャーRNAに対するDNAプローブを用いるin situハイブリダイゼーションを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
以下のマーカータンパク質のうちの一つ以上の増加濃度が、前記対照サンプル中の自己抗体のレベルと比較して、それに対する自己抗体の上昇レベルを検出することによって検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログ対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
【請求項16】
前記自己抗体のレベルが、ウェスタンブロット、ELISA、タンパク質マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイによって検出されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1で特定された一つ以上のマーカータンパク質の前記濃度の増加または減少が検出されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記有効な体組織が結腸直腸サンプルであることを特徴とする、請求項1〜8および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
被験者の結腸直腸癌の治療の効果をモニタリングする方法であって、前記治療の段階において前記被験者から採取された有効な体組織サンプルにおいて、少なくとも一つのタンパク質の濃度の変化を、前記治療の前もしくは前記治療の初期段階において前記被験者から採取された有効な体組織サンプルにおける前記タンパク質の濃度と比較して、検出するステップを含み、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
ハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738):
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である
ことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記タンパク質濃度の変化が減少であって、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質濃度の変化が増加であって、前記タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)
であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質濃度の変化が、それに対する自己抗体のレベルにおける変化を、前記比較サンプルにおける自己抗体のレベルと比較して検出することによって検出されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有効な体組織が結腸直腸組織であることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記有効な体組織が、血液または、血清もしくは血漿などの血液産物であることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療が外科手術であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療が化学療法であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療が免疫療法であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1で特定されたタンパク質を認識する、請求項1で特定されたタンパク質と結合する、あるいは請求項1で特定されたタンパク質に対する親和性を持つパートナー物質の、診断目的または治療目的のための使用。
【請求項29】
前記パートナー物質が抗体であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抗体が固相上に固定されることを特徴とする、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記抗体が、ビーズ上に固定されるかあるいはチップとして固定されることを特徴とする、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記パートナー物質が自己抗体であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項33】
請求項1に記載の診断方法、または請求項19に記載の治療効果のモニタリング方法を実行するためのキットであり、前記診断サンプル中に存在するタンパク質との相互作用のための、アッセイ適合性形式のパートナー物質を含むキット。
【請求項34】
前記アッセイ適合性形式が、標識された形式であることを特徴とする、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記パートナー物質が固定化抗体であることを特徴とする、請求項33または34に記載のキット。
【請求項1】
ヒト被験者から採取した有効な体組織の診断サンプルにおける結腸直腸癌の診断方法であって、対照の健常ヒトサンプルと比較して、前記診断サンプル中のタンパク質の増加濃度を検出するステップを含み、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)であり、
あるいは、対照の健常ヒトサンプルと比較して、前記診断サンプル中のタンパク質の減少濃度を検出するステップを含み、前記タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記診断サンプル中の前記タンパク質濃度が、前記対照サンプルと比較して、少なくとも2倍増加するかあるいは減少することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質のバインディングアッセイによって、前記診断サンプルに対して前記検出が行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バインディングアッセイが、前記診断サンプルの前記タンパク質を、特異的な結合パートナーと相互作用させるステップと、前記相互作用を検出するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特異的な結合パートナーが標識されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特異的な結合パートナーが、前記タンパク質を認識する抗体もしくは抗体フラグメントであることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記対照サンプルが、前記診断サンプルと同じヒト被験者の健常組織から採取されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対照サンプルが、前記診断サンプルを提供するものとは異なるヒト被験者の健常組織から採取されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記体組織が体液であり、前記体液は免疫測定に供されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫測定が、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、抗体マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記診断サンプルは、凍結された、あるいはパラフィン包埋された組織切片であり、この組織切片が免疫組織染色に供されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記診断サンプルが、染色ゲルをもたらすために二次元ゲル電気泳動に供され、前記タンパク質の増加濃度もしくは減少濃度が、対応する対照ゲルと比較して、前記染色ゲル上のタンパク質含有スポットの増加強度もしくは減少強度によって検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
図3〜6における、スポット407、949、975、983、1191、もしくは1354の増加強度、あるいはスポット361、877、943、もしくは543の減少強度が検出されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1で特定された前記タンパク質のうちの少なくとも一つのメッセンジャーRNAに対するDNAプローブを用いるin situハイブリダイゼーションを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
以下のマーカータンパク質のうちの一つ以上の増加濃度が、前記対照サンプル中の自己抗体のレベルと比較して、それに対する自己抗体の上昇レベルを検出することによって検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログ対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
【請求項16】
前記自己抗体のレベルが、ウェスタンブロット、ELISA、タンパク質マイクロアレイ、またはビーズサスペンションアレイによって検出されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1で特定された一つ以上のマーカータンパク質の前記濃度の増加または減少が検出されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記有効な体組織が結腸直腸サンプルであることを特徴とする、請求項1〜8および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
被験者の結腸直腸癌の治療の効果をモニタリングする方法であって、前記治療の段階において前記被験者から採取された有効な体組織サンプルにおいて、少なくとも一つのタンパク質の濃度の変化を、前記治療の前もしくは前記治療の初期段階において前記被験者から採取された有効な体組織サンプルにおける前記タンパク質の濃度と比較して、検出するステップを含み、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
ハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738):
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)である
ことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記タンパク質濃度の変化が減少であって、前記タンパク質は、
形質転換成長因子-β誘導タンパク質IG-H3(SwissProt Acc. No. Q15582);
SKP1ホモログの対立遺伝子G2のサプレッサー(アイソフォーム2)(SwissProt Acc. No. Q9Y2Z0-2);
仮想タンパク質(URG4の一部)(SwissProt Acc. No. Q9NWR7);
カルポニン-2(SwissProt Acc. No. Q99439);
熱ショックタンパク質HSP90-β(SwissProt Acc. No. P08238);
ホスホグリセリン酸ムターゼ1(SwissProt Acc. No. P18669);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはハプトグロビン前駆体(SwissProt Acc. No. P00738)
であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質濃度の変化が増加であって、前記タンパク質は、
セロトランスフェリン(SwissProt Acc. No. P02787);
26Sプロテアソームサブユニットp40.5(SwissProt Acc. No. Q9UNM7);
アルド-ケト還元酵素ファミリー1メンバーB10(SwissProt Acc. No. O60218);
フルクトサミン-3-キナーゼ(SwissProt Acc. No. Q9H479);
ペリフェリン(SwissProt Acc. No. P41219);
α-2-マクログロブリン(SwissProt Acc. No. P01023);
セルピンC1タンパク質(SwissProt Acc. No. P01008);
またはアポリポタンパク質A IV(SwissProt Acc. No. P06727)
であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質濃度の変化が、それに対する自己抗体のレベルにおける変化を、前記比較サンプルにおける自己抗体のレベルと比較して検出することによって検出されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有効な体組織が結腸直腸組織であることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記有効な体組織が、血液または、血清もしくは血漿などの血液産物であることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療が外科手術であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療が化学療法であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療が免疫療法であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1で特定されたタンパク質を認識する、請求項1で特定されたタンパク質と結合する、あるいは請求項1で特定されたタンパク質に対する親和性を持つパートナー物質の、診断目的または治療目的のための使用。
【請求項29】
前記パートナー物質が抗体であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抗体が固相上に固定されることを特徴とする、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記抗体が、ビーズ上に固定されるかあるいはチップとして固定されることを特徴とする、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記パートナー物質が自己抗体であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項33】
請求項1に記載の診断方法、または請求項19に記載の治療効果のモニタリング方法を実行するためのキットであり、前記診断サンプル中に存在するタンパク質との相互作用のための、アッセイ適合性形式のパートナー物質を含むキット。
【請求項34】
前記アッセイ適合性形式が、標識された形式であることを特徴とする、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記パートナー物質が固定化抗体であることを特徴とする、請求項33または34に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2009−519460(P2009−519460A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545116(P2008−545116)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050460
【国際公開番号】WO2007/068985
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506049655)エレクトロフォレティックス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ELECTROPHORETICS LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050460
【国際公開番号】WO2007/068985
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506049655)エレクトロフォレティックス リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ELECTROPHORETICS LIMITED
【Fターム(参考)】
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