説明

絞り装置

【課題】 シャッタ開口の周辺のスペースを狭くして装置の小型化を達成する。
【解決手段】 シャッタ開口2を2枚の羽根で協働して覆うことにより、小絞り状態とする絞り装置において、シャッタ開口2の一方側の外周に2枚の羽根33,38を配置する全開位置と2枚の羽根33,38を同一方向に移動させてシャッタ開口2を覆う小絞り位置とに作動する絞り作動部材12を備えている。2枚の羽根33,38が絞り作動部材12により駆動されてシャッタ開口2を覆う第1の位置Aに移動したときには、2つの板が協働してシャッタ開口2を十分に覆うが、シャッタ開口2から退避した第2の位置Bでは、小絞り板が小型であるのでシャッタ開口周辺のスペースが狭くてすむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタの絞り開口径を段階的に切り換える絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような絞り装置として、たとえば本出願人による実開平5−79541号公報に記載されたものがある。この従来の絞り装置について図8を参照して説明をする。
【0003】
図8において、永久磁石により形成されたロータ10、ロータ作動レバー11、絞り作動部材12及び小絞り板73が、図示されない地板にロータ軸10a、軸12a及び軸4を介して回動自在に支持されている。小絞り板73はシャッタ開口2を覆う大きさであり、小径の絞り開口73aを有し、シャッタ開口2を覆う第1の位置Aと、開口2から退避する第2の位置Bの間を移動自在に軸4により支持されている。また、小絞り板73は、ばね73cにより時計回り方向に付勢され、位置決めピン5に当接して停止している。また絞り作動部材12にはばね13が掛け止めてあり、係合ピン14に当接して停止している。
【0004】
コイルLに通電してステータ9が励磁されると、ロータ10が反時計回りに回動し、ロータ軸10aに固着してあるロータ作動レバー11も反時計回りに回動する。この回動はロータ作動レバーピン11aを介して絞り作動部材12を時計方向に回動させ、絞り作動部材12の突出部12bを介して小絞り板73は軸4の回りに反時計回りに回動され、第2の位置Bから第1の位置Aへ移動し、位置決めピン15に当接して停止する。従って、シャッタ開口2は絞り開口73aで規制される。この時、小絞り板73に固定されたピン73bが可動鉄片18を鉄心17aの吸着面に沿って移動させ、小絞り板73が第1の位置Aに達したところで電磁石17bが励磁され、可動鉄片18を吸着保持して、小径の絞り開口73aが維持される。
【特許文献1】実開平5−79541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の絞り装置にあっては、小絞り板73は1枚で構成されており、1枚でシャッタ開口2を覆う大きさであり、第1の位置Aを占める大きさのままで第2の位置Bへ移動するので、第2の位置Bではシャッタ開口2を覆わないように十分に退避しなければならず、そのために小絞り板73の十分な退避スペースが必要であり、シャッタ開口2の周辺が大型化するという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の絞り装置は、シャッタ開口の一方側の外周に2枚の羽根を配置する全開位置と2枚の羽根を同一方向に移動させてシャッタ開口を覆う小絞り位置とに作動する絞り作動部材を備える。このため、従来の絞り装置と違い2枚の羽根に分割しているため、小絞り板を従来より小面積とすることができ絞り装置の小型化が可能となる。また、2枚の羽根は、同一の軸により回転自在に軸支させてもよい。
【発明の効果】
【0007】
小絞り板を従来よりも小型にでき、小絞り板がシャッタ開口から退避するシャッタ開口の周辺のスペースを狭くすることが可能であり、装置の小型化を達成することができる。また部品の形状や配置などの自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の絞り装置は、シャッタ開口を2枚の羽根で協働して覆うことにより、小絞り状態とする絞り装置であって、シャッタ開口の一方側の外周に2枚の羽根を配置する全開位置と2枚の羽根を同一方向に移動させてシャッタ開口を覆う小絞り位置とに作動する絞り作動部材を備えることを特徴としている。2枚の羽根を協働させてシャッタ開口を覆うので、小絞り板を小さくすることが可能になり、シャッタの周辺を小型化することが可能になる。
【0009】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。説明に際して図8で説明した従来の構成と同一の個所には同一の符号を付している。
【0010】
図1において、ステータ9とロータ10とコイルLとはスイングモータMを構成しており、ステータ9には磁極部9a、9bが設けられコイルLへの通電により、N極、S極が各々に発生する。これによりロータ10は正逆両方向に回転することができる。
【0011】
このスイングモータMの回転により駆動されてシャッタ開口2を開閉するセクタ23、24は、図2に示すようにシャッタ開口2に対して対称に配置されており、セクタ24は図示されない地板に突設した軸25の回りに回動可能に支持されている。セクタ23は地板に突設した軸22の回りに回動可能に支持されており、このセクタ23の上面にセクタ開閉レバー20が軸22の回りに回動可能に支持されている。セクタ開閉レバー20の腕部20bは地板に設けられた係合ピン21と係合し、セクタ開閉レバー20のセクタ開閉レバーピン20aはセクタ23と軸着しており、且つセクタ24の溝部24aと係合してセクタ23、24を駆動するようになっている。セクタ開閉レバー20はばね20dにより常時は時計回り方向に付勢されている。
【0012】
図1に示すロータ10のロータ軸10aにはロータ作動レバー11が圧入固定されており、このロータ作動レバー11はロータ10と一体的に回動する。ロータ作動レバー11に備えられたロータ作動レバーピン11aは、地板に突設した軸12aの回りに回動可能に支持された絞り作動部材12と係合している。絞り作動部材12は、後述する小絞り板3と突出部12bを介して回動可能に当接させてあり、ばね13により常時は反時計回り方向に付勢されている。
【0013】
なお、ロータ作動レバー11が時計回り方向に回動した場合に、絞り作動部材12が反時計回り方向に回動しないように係合ピン14が地板に設けられる。
【0014】
更に図2に示すロータ作動レバー11に備えられたロータ作動レバーピン11bはセクタ開閉レバー20と当接することができ、ロータ作動レバー11が時計回り方向に回動することにより、セクタ開閉レバー20を反時計回り方向に回動させセクタ開閉レバー20がセクタ23、24を動作させることができる。
【0015】
図1に示す小絞り板3は迅速に正確な絞り口径を規制して撮影できるようシャッタ開口2よりも小径の絞り開口3aを有しており、地板に突設した軸4の回りに回動可能に支持されている。小絞り板3の形状は、シャッタ開口2から遠い外周形状はシャッタ開口2の円弧よりやや大径の円弧状になっているが、シャッタ開口2に近い外周形状はシャッタ開口2の円弧に沿った凹円弧状部3dになっている。小絞り板3に立設されたピン3bは可動鉄片18と係合している。小絞り板3はばね3cにより常時は時計回り方向に付勢されており、地板に突設した位置決めピン5に当接しその位置を保つ。
【0016】
可動鉄片18は電磁石装置17のコイル17bへの入力信号のON、OFFにより鉄芯17aに吸着したり開放されたりし、可動鉄片18が鉄芯17aに吸着されず開放されているときは、絞り開口3aがシャッタ開口2内にくる第1の位置Aに小絞り板3が移動可能となり、この位置で可動鉄片18が鉄芯17aに吸着されることにより、小絞り板3はシャッタ開口2内から退避不能に保持される。可動鉄片18が鉄芯17aによる吸着から開放されたときには、ばね3cにより位置決めピン5に当接する第2の位置Bに移動が可能である。
【0017】
小絞り板3は、シャッタ開口2を覆う第1の位置Aでは、凹円弧状部3dのためにシャッタ開口2の全面を覆うことができないので、この部分を覆うための補助板28を設けている。
【0018】
この補助板28は、軸12aの回りに回動自在に支持されている。補助板28の形状は、小絞り板3の凹円弧状部3dにわずかに重なった状態でシャッタ開口2を十分に覆うことが可能な形状であり、シャッタ開口2を間にして小絞り板3と反対側に位置している。補助板28はばね28aにより軸12aの回りに反時計方向に付勢されている。そして、絞り作動部材12が突出部12bにより受け部3fを介して小絞り板3を第1の位置Aへ移動させる際に、小絞り板3のピン3eが補助板28の突出部28bを押すことにより、補助板28を小絞り板3の回動に追従させ、実線にて図示した第2の位置Bから2点鎖線で図示した第1の位置Aへ移動した時には、小絞り板3と補助板28とが協働してシャッタ開口2の全面を覆うことができる。
【0019】
このような絞り装置の作用について次に説明する。図1、図2はシャッタ作動前の状態であり、この状態において電磁石装置17はOFFされているが、小絞り板3はばね3cによる時計回り方向の付勢作用による回動を位置決めピン5により規制されているので第2の位置Bを保つ。
【0020】
ここで被写体が明るい場合のように図3で示すプログラム選択手段1によりシャッタ開口2よりも絞り込んだ小径の絞り開口3aまでしか使用しない第1のプログラム(図4に破線で示す)が選択されている場合について説明する。
【0021】
まず図3に示すカメラのレリーズボタン6が押圧操作されると制御回路7によりモータ駆動部8を介して図1に示すコイルLに通電する。コイルLへの通電により、まずステータ9の磁極部9aにS極、磁極部9bにN極が発生し、ロータ10が反時計回り方向に回動する。この回動によりロータ10のロータ軸10aに圧入固定されたロータ作動レバー11も反時計回り方向に回動するので、ロータ作動レバー11のロータ作動レバーピン11aと係合している絞り作動部材12を介して小絞り板3も反時計回り方向に回動し、図1の二点鎖線で示す位置Aまで移動し位置決めピン15に当接する。また、小絞り板3のピン3eが補助板28の突出部28bを押して、補助板28を、図1の2点鎖線で示す位置Aへ移動させ、小絞り板3と補助板28との協働によってシャッタ開口2は小口径状態になる。この状態で電磁石装置17がOFFからONに変り、鉄芯17aが可動鉄片18を吸着し固定して、小絞り板3及び補助板28を第1の位置Aの状態で保持する。
【0022】
次にコイルLに正方向通電が行われ、ロータ10、ロータ作動レバー11は時計回り方向に回動し始める。しかし小絞り板3と補助板28はピン3bが可動鉄片18と係合している為、第1の位置Aの状態を保持する。
【0023】
ロータ10が時計回り方向の回転を続けると、図2に示すように今まで静止していたセクタ開閉レバー20にロータ作動レバー11に備えてあるロータ作動レバーピン11bが時計回り方向に回動することにより当接し始め、セクタ開閉レバー20を反時計回り方向に回動させる。それに伴いセクタ開閉レバー20に備えてあるセクタ開閉レバーピン20aを介して2枚のセクタ23、24が互に反対方向に回動して露出が開始される。
【0024】
セクタ23、24は図3に示す測光部26からの被写体の輝度情報、絞り情報、フィルム感度のISO情報27等により、制御回路7において決定された露出時間だけ作動し、その後、コイルLに逆方向通電が行われ、ロータ作動レバー20が反時計回り方向へ逆転し、図2の状態に戻る。
【0025】
その後、電磁石装置17がONからOFFに変る。この為、可動鉄片18が解放され小絞り板3及び補助板28はばね3cのばね力により第1の位置Aから第2の位置Bに戻り作動を終了する。
【0026】
以上の動作についてセクタ23、24、電磁石装置17、小絞り板3、コイルLの別にタイムチャートとして表すと図5(a)に示すようになる。
【0027】
次に被写体が暗い場合のように、図3に示すプログラム選択手段1によりシャッタ開口2の全開径まで使用する第2のプログラム(図4に実線で示す)が、選択される場合について説明する。
【0028】
図3に示すカメラのレリーズボタン6が押圧操作されると、制御回路7によりモータ駆動部8を介して図1に示すコイルLに通電する。この通電によりステータ9の磁極部9aにN極、磁極部9bにS極が発生し、ロータ10が時計回り方向に回動する。これにより、ロータ作動レバーピン11aと絞り作動部材12とは当接せず、絞り作動部材12が係合ピン14に当接したままになるので、ばね13のばね力により小絞り板3は第2の位置Bで待機状態を保つ。又、電磁石装置17はOFFの状態のままである。
【0029】
セクタ23、24は上記輝度情報等により決定された露出位置まで回動し、その後コイルLに逆方向通電が行われロータ10が逆転(反時計回り方向の回転)し図2の状態に戻る。
【0030】
以上の動作についてセクタ23、24、電磁石装置17、小絞り板3、コイルLの別にタイムチャートとして表すと図5(b)に示すようになる。
【0031】
なお、これまでの説明では、補助板28を小絞り板3に対してシャッタ開口2の反対側に位置させているので、小絞り板3に対して反対側から補助板28がシャッタ開口2を覆う第1の位置Aに移動する構成であるが、本願発明は、同一方向から移動する構成としたものである。この例について図6及び図7に基づいて次に説明する。
【0032】
先ず図6の例では、シャッタ開口2の一方の側(右側)の外周に、小径の絞り開口33aを有する小絞り板33と補助板38とが、共に同一の軸34により回動自在に軸支されており、小絞り板33はばね3cにより時計方向に付勢されている。絞り作動部材12の突出部12bは、先ず補助板38の受け部38fに接してこれを押し、次いで小絞り板33の受け部33fに接し、以後は両者を同時に押して2点鎖線に図示する第1の位置Aに移動させる。その他の図1と同一の構成の部分には同一の符号を付しており、作動についても同様である。
【0033】
図7の例では、シャッタ開口2の一方の側(右側)の外周に、小径の絞り開口43aを有する小絞り板43と補助板48とが、共に同一の軸44により回動自在に軸支されており、小絞り板43はばね3cにより時計方向に付勢されている。小絞り板43の形状は、シャッタ開口2に近い外周部がシャッタ開口2の円弧よりやや大径の円弧状をしており、シャッタ開口2より遠い外周部が切欠された外周部43dとなっている。補助板48はほぼ弓形の形状をしており、外周部43dと協働してシャッタ開口2を覆う形状である。従って、絞り作動部材12の突出部12bは先ず小絞り板43の受け部43fに接してこれを押し、僅かに遅れて補助板48の受け部48fに接し、以後は両者を同時に押して2点鎖線に図示する第1の位置Aに移動させる。その他の図1と同一の構成の部分には同一の符号を付しており、作動についても同様である。
【0034】
なお、前記実施例は、絞り作動部材をモータにより作動するものであるが、これに限定されるものではなく手動的に操作されるものでも良い。また、本発明の絞り装置はフィルム又は電荷結合素子を使用する写真カメラのほか、ビデオカメラ等にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】絞り装置を適用したシャッタ作動前の初期状態を示す正面図である。
【図2】同上のシャッタ作動前の初期状態でのセクタ及びその関連部材の正面図である。
【図3】図1、図2に示す絞り装置の制御ブロック図である。
【図4】第1のプログラムと第2のプログラムを示すEv値線図である。
【図5】(a)は第1のプログラムを選択した場合の各部材の動作を示すタイムチャート、(b)は第2のプログラムを選択した場合の各部材の動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の実施の一形態を示す絞り装置を適用したシャッタ作動前の初期状態を示す正面図である。
【図7】実施の他の形態を示す絞り装置を適用したシャッタ作動前の初期状態を示す正面図である。
【図8】従来の装置におけるシャッタ作動前の初期状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
2 シャッタ開口
3、33,43 小絞り板
3a、33a、43a 絞り開口
12 絞り作動部材
28、38、48 補助板
A 第1の位置
B 第2の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッタ開口を2枚の羽根で協働して覆うことにより、小絞り状態とする絞り装置において、
前記シャッタ開口の一方側の外周に前記2枚の羽根を配置する全開位置と前記2枚の羽根を同一方向に移動させて前記シャッタ開口を覆う小絞り位置とに作動する絞り作動部材
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
請求項1において、前記2枚の羽根は、同一の軸により回転自在に軸支されていることを特徴とする絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−148425(P2007−148425A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23715(P2007−23715)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【分割の表示】特願2000−25817(P2000−25817)の分割
【原出願日】平成12年2月3日(2000.2.3)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】