説明

給水システム

【課題】膜式脱気装置を用いた給水システムにおいて、膜の破損を防止しつつ、簡易な構成で被冷却流体からの熱回収を可能とする。
【解決手段】第一給水路14は、膜式脱気装置8から給水タンク3へ開放される。この第一給水路14には、脱気装置8から給水タンク3への順方向の流れを遮断する弁が設けられない。第二給水路15は、第一給水路14から分岐して設けられ、被冷却流体との熱交換器18を介して給水タンク3へ給水する。水位センサ13は、給水タンク3の水位を監視する。水位センサ13の検出信号に基づき脱気装置8から給水タンク3へ給水する際、第二給水路15を介して給水可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水タンクへの給水で被冷却流体の冷却を図ると共に、被冷却流体の熱で給水タンクへの給水の加温を図る給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されるように、ボイラの給水タンク(7)への給水を用いて、圧縮空気の冷却や圧縮機の潤滑油の冷却を図ると共に、それにより給水タンクへの給水の加温を図ることで圧縮熱を回収するシステムが知られている。具体的には、脱気装置(11)からの水は補給水タンク(21)へまずは溜められ、その水は、エアクーラ(32)とオイルクーラ(31)とを介して、ボイラの給水タンク(7)へ供給される。エアクーラ(32)では圧縮空気の冷却が図られる一方、オイルクーラ(31)では圧縮機の潤滑油の冷却が図られ、各クーラにおいて給水タンクへの給水が加温される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−38385号公報(図1、段落番号0015−0016,0057)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱気装置として膜式の脱気装置を用いる場合、脱気装置の二次側には、順方向の流れを遮断する弁(たとえばボールタップ・定水位弁)を設けないことが望ましい。なぜなら、その弁の閉鎖により、脱気装置の脱気膜に規定以上の背圧がかかり、脱気膜が損傷するおそれがあるからである。そこで、膜式の脱気装置を用いる場合には、前記特許文献1に記載の発明のように、脱気装置からの水を一旦、補給水タンクに開放して使用することが行われている。
【0005】
しかしながら、このような構成では給水タンク以外に補給水タンクが別途必要となる。また、補給水タンクから給水タンクへの給水は、熱回収用のエアクーラやオイルクーラを介した給水だけでは不足するおそれがあるので、それに対応するための構成(第一給水路27)も必要となる。
【0006】
ところで、脱気装置以外の水処理装置(たとえば軟水装置)にも、膜を用いたものがあり、そのような膜式の水処理装置を用いた給水システムでも、上述した膜式脱気装置と同様のことがいえる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、膜式の水処理装置を用いた給水システムにおいて、膜の破損を防止しつつ、簡易な構成で被冷却流体からの熱回収を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、膜式の水処理装置から給水タンクへ開放され、前記水処理装置から前記給水タンクへの順方向の流れを遮断する弁が設けられない第一給水路と、この第一給水路から分岐して設けられ、被冷却流体との熱交換器を介して前記給水タンクへ給水する第二給水路と、前記給水タンクの水位を監視する水位センサとを備え、前記水位センサの検出信号に基づき前記水処理装置から前記給水タンクへ給水する際、前記第二給水路を介して給水可能とされたことを特徴とする給水システムである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、膜式水処理装置から給水タンクへの第一給水路には、順方向の流れを遮断する弁が設けられない。これにより、水処理装置の膜に背圧がかかることがなく、膜の破損を防止することができる。また、第一給水路から分岐させて第二給水路を設け、その第二給水路の熱交換器において、被冷却流体の冷却と給水の加温とを図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記水処理装置は膜式脱気装置であり、前記第二給水路には、通水ポンプおよび前記熱交換器が設けられ、前記水位センサの検出信号に基づき前記膜式脱気装置の給水弁を開いて前記給水タンクへ給水する際、前記通水ポンプを作動させて前記第二給水路に通水することを特徴とする請求項1に記載の給水システムである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、膜式脱気装置の膜の保護を図ることができる。また、給水タンクへの給水時、通水ポンプを作動させて第二給水路に通水することにより、第二給水路の熱交換器において、被冷却流体の冷却と給水の加温とを図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記第二給水路には、前記熱交換器の出口側に温度センサが設けられ、この温度センサの検出温度に基づき、前記第二給水路の通水量が調整され、この通水量の調整は、前記通水ポンプの回転数をインバータで調整するか、前記第二給水路に通水弁を設けてその開度を調整して行うことを特徴とする請求項2に記載の給水システムである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、温度センサの検出温度に基づき熱交換器の通水量を調整して、所望温度の温水を得ることができる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記熱交換器は、圧縮機の潤滑油を冷却するオイルクーラと、圧縮機からの圧縮空気を冷却するエアクーラとの内、一方または双方であることを特徴とする請求項3に記載の給水システムである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、給水タンクへの給水で圧縮機や圧縮空気の冷却を図る一方、圧縮熱により給水タンクへの給水を加温して、圧縮熱の回収を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、膜式の水処理装置を用いた給水システムにおいて、膜の破損を防止しつつ、簡易な構成で被冷却流体からの熱回収が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の給水システムの一実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の給水システムの一実施例を示す概略図である。本実施例の給水システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水(以下、この給水をボイラ給水という。)を用いて、圧縮空気の冷却と圧縮機4の潤滑油の冷却とを図ると共に、それによりボイラ給水の加温を図ることで圧縮熱を回収するシステムである。
【0019】
圧縮機4は、その構成を特に問わないが、本実施例では油潤滑式かつ水冷式の電動空気圧縮機である。この場合、圧縮機本体(図示省略)から吐出される圧縮空気は、オイルセパレータ(図示省略)へ送られ、オイルセパレータにおいて潤滑油の分離除去が図られる。そして、オイルセパレータで潤滑油を除去された圧縮空気は、エアクーラや所望によりドライヤ(図示省略)を介して、各種の圧縮空気利用機器(図示省略)へ送られる。一方、オイルセパレータで分離された潤滑油は、オイルクーラを介して圧縮機本体へ戻される。
【0020】
エアクーラは、圧縮空気とその冷却水との熱交換器である。一方、オイルクーラは、潤滑油とその冷却水との熱交換器である。通常、エアクーラおよびオイルクーラに通される冷却水は、クーリングタワーとの間で循環されるが、これでは圧縮熱を外部へ捨てることになる。そこで、本実施例では、クーリングタワーとの間で冷却水を循環する既存のエアクーラ(以下、第一エアクーラという。)およびオイルクーラ(以下、第一オイルクーラという。)はそのまま残しつつも、これら各クーラの上流側に、熱回収用の熱交換器を追加して、ボイラ給水で圧縮熱の回収を図る。
【0021】
すなわち、オイルセパレータから第一エアクーラ(図示省略)への送気路に、第二エアクーラ5を設け、この第二エアクーラ5において、圧縮空気とボイラ給水とを熱交換して、圧縮空気の冷却とボイラ給水の加温とを図る。同様に、オイルセパレータから第一オイルクーラ(図示省略)への送油路に、第二オイルクーラ6を設け、この第二オイルクーラ6において、潤滑油とボイラ給水とを熱交換して、潤滑油の冷却とボイラ給水の加温とを図る。
【0022】
次に、ボイラ2の給水タンク3への給水系統について説明する。本実施例の給水システム1は、軟水装置7、脱気装置8および給水タンク3を備える。
【0023】
軟水装置7は、イオン交換樹脂などを用いて、原水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度分を除去する装置である。
【0024】
脱気装置8は、本実施例では膜式の脱気装置であり、より具体的には、中空糸膜などの脱気膜を用いて、水中の酸素を除去する装置である。脱気装置8は、入口側に給水弁9を備え、この給水弁9が開かれると、軟水装置7からの軟水が脱気膜10を通される。これにより、脱気装置8から、脱気された軟水を取り出すことができる。
【0025】
給水タンク3は、脱気装置8からの水を貯留する。給水タンク3内の水は、給水ポンプ11および逆止弁12を介して、適宜ボイラ2へ供給され、ボイラ2において加熱され蒸気化される。
【0026】
給水タンク3には、水位センサ13が設けられている。水位センサ13は、その構成を特に問わず、たとえば、電極に電流が流れるか否かで所定水位の有無を把握する電極式の水位検出器の他、水位に比例した出力を得ることができる静電容量式の水位検出器などを用いることができる。いずれにしても、水位センサ13で給水タンク3内の水位を監視し、下限水位を下回ると給水弁9を開いて給水する一方、上限水位を上回ると給水弁9を閉じて給水を停止する。これにより、給水タンク3内の水位を所望範囲に維持することができる。
【0027】
脱気装置8からの水は、第一給水路14を介して給水タンク3へ供給される。この第一給水路14は、脱気装置8から給水タンク3への順方向の流れを遮断する弁(たとえばボールタップ・定水位弁)などが中途に設けられておらず、先端部を給水タンク3へ開口する。仮に上述のような弁が第一給水路14に設けられていると、その弁の閉鎖により、脱気装置8の脱気膜10に規定以上の背圧がかかり、脱気膜10が損傷するおそれがある。ところが、本実施例のように、脱気装置8からの第一給水路14を給水タンク3へそのまま開放しておけば、脱気膜10に背圧がかかるおそれはなく、脱気膜10を確実に保護することができる。なお、第一給水路14には、給水タンク3の側からの逆流を防止する逆止弁は設けておいてもよい。
【0028】
第一給水路14には、第二給水路15が分岐して設けられ、この第二給水路15を介しても、脱気装置8からの水を給水タンク3へ供給可能とされる。第二給水路15には、本実施例では、上流側から順に、通水ポンプ16、通水弁17、熱回収用熱交換器18が設けられている。
【0029】
熱回収用熱交換器18は、本実施例では、前述した第二エアクーラ5および第二オイルクーラ6である。本実施例では、第二給水路15には第二エアクーラ5と第二オイルクーラ6とを順に設けたが、この設置順序は場合により逆にしてもよい。また、本実施例では、第二給水路15には第二エアクーラ5と第二オイルクーラ6とを直列に設けているが、場合により並列に設けてもよい。
【0030】
次に、本実施例の給水システム1の運転について説明する。水位センサ13が低水位を検出すると、その信号は、脱気装置8、通水ポンプ16および通水弁17に送られる。これにより、脱気装置8が起動しその給水弁9が開かれる一方、これと連動するように、通水ポンプ16が作動すると共に通水弁17が開かれる。但し、通水ポンプ16は、本実施例では圧縮機4からも制御信号を受けており、圧縮機4が運転中または運転開始の場合に作動する。つまり、結果として、第二給水路15への通水は、圧縮機4が運転中または運転開始時になされる。通水ポンプ16の作動時、脱気装置8からの水は、通水ポンプ16の吸引力により、第一給水路14よりも第二給水路15を通過することが優先される。
【0031】
一方、水位センサ13が高水位を検出すると、脱気装置8を停止させその給水弁9を閉じる一方、これと連動するように、通水ポンプ16を停止すると共に通水弁17を閉じる。
【0032】
ところで、第二給水路15には、熱回収用熱交換器18(第二エアクーラ5、第二オイルクーラ6)の出口側に温度センサ19を設けておき、この温度センサ19の検出温度に基づき通水弁17の開度を調整して、第二給水路15から給水タンク3へ供給する水温を所望に維持するよう制御してもよい。この場合、第二給水路15の通水量によっては、第二エアクーラ5および第二オイルクーラ6だけでは圧縮空気や潤滑油を所望に冷却できないおそれもあるが、圧縮機4に既存の第一エアクーラおよび第一オイルクーラがあるので、圧縮空気や潤滑油を所望に冷却することが可能となる。
【0033】
なお、温度センサ19の検出温度に基づき通水弁17の開度を調整することに代えて、温度センサ19の検出温度に基づきインバータで通水ポンプ16の回転数を制御することで、熱回収用熱交換器18への通水量を調整してもよい。この場合、通水弁17の設置を省略することもできる。
【0034】
また、圧縮機4の側が過冷却となるおそれはないため、第二給水路15を介して加温する温度を所定に保つという制約がない場合には、通水弁17を最大流量のみの調整としてもよい。
【0035】
本発明の給水システム1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
たとえば、前記実施例では、圧縮機4の既存の冷却手段としての第一エアクーラおよび第一オイルクーラはそのまま残しつつ、熱回収用熱交換器18としての第二エアクーラ5および第二オイルクーラ6を第二給水路15に設置したが、第二エアクーラ5と第二オイルクーラ6との内、一方の設置を省略してもよい。つまり、第二給水路15に設ける熱回収用熱交換器18の数は適宜に変更可能である。また、第二エアクーラ5および/または第二オイルクーラ6の設置を省略して、第一エアクーラおよび/または第一オイルクーラを第二給水路15に設置して、第一エアクーラや第一オイルクーラの冷却水をボイラ給水としてもよい。
【0036】
また、前記実施例では、圧縮機4は、モータで駆動されたが、蒸気エンジンで駆動されてもよい。さらに、前記実施例において、圧縮機4は、複数段であってもよいし、無潤滑式(オイルフリー式)であってもよい。いずれの場合も、圧縮空気や潤滑油を冷却するためのクーラ18を第二給水路15に設置して、ボイラ給水で圧縮熱を回収すればよい。
【0037】
また、前記実施例では、第二給水路15に設置した熱交換器18で、圧縮機4の圧縮熱を回収するシステムとしたが、第二給水路15でボイラ給水を予熱する熱源は特に問わない。たとえば、第二給水路15に設置した熱交換器18において、各種装置からの排ガスと、ボイラ給水との熱交換を図ってもよい。
【0038】
また、前記実施例では、膜式脱気装置8の脱気膜10にかかる背圧を防止する例について説明したが、膜式脱気装置8に限らず、背圧制限のある膜を用いるその他の水処理装置にも同様に適用可能である。たとえば、膜式軟水装置やRO逆浸透膜式浄水装置などであってもよい。その場合も、膜式水処理装置からの第一給水路14は、順方向の流れを遮断する弁を介することなく、給水タンク3へ開放されることで、膜へ背圧がかかることを防止しつつ、水位センサ13の検出信号に基づき、膜式水処理装置への給水弁9と、通水ポンプ16などを制御すればよい。
【0039】
また、前記実施例では、第二給水路15に通水弁17を設け、温度センサ19の検出温度に基づき通水弁17の開度を調整する例を説明したが、通水量を規定するフローセッタを設けて、通水弁17や温度センサ19の設置を省略してもよい。
【0040】
さらに、前記実施例では、給水タンク3の水は、ボイラ2への給水として用いたが、空調機や食品機械など、ボイラ給水以外の用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 給水システム
2 ボイラ
3 給水タンク
4 圧縮機
5 第二エアクーラ
6 第二オイルクーラ
7 軟水装置
8 膜式脱気装置(膜式水処理装置)
9 給水弁
10 脱気膜
11 給水ポンプ
12 逆止弁
13 水位センサ
14 第一給水路
15 第二給水路
16 通水ポンプ
17 通水弁
18 熱交換器
19 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜式の水処理装置から給水タンクへ開放され、前記水処理装置から前記給水タンクへの順方向の流れを遮断する弁が設けられない第一給水路と、
この第一給水路から分岐して設けられ、被冷却流体との熱交換器を介して前記給水タンクへ給水する第二給水路と、
前記給水タンクの水位を監視する水位センサとを備え、
前記水位センサの検出信号に基づき前記水処理装置から前記給水タンクへ給水する際、前記第二給水路を介して給水可能とされた
ことを特徴とする給水システム。
【請求項2】
前記水処理装置は膜式脱気装置であり、
前記第二給水路には、通水ポンプおよび前記熱交換器が設けられ、
前記水位センサの検出信号に基づき前記膜式脱気装置の給水弁を開いて前記給水タンクへ給水する際、前記通水ポンプを作動させて前記第二給水路に通水する
ことを特徴とする請求項1に記載の給水システム。
【請求項3】
前記第二給水路には、前記熱交換器の出口側に温度センサが設けられ、
この温度センサの検出温度に基づき、前記第二給水路の通水量が調整され、
この通水量の調整は、前記通水ポンプの回転数をインバータで調整するか、前記第二給水路に通水弁を設けてその開度を調整して行う
ことを特徴とする請求項2に記載の給水システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、圧縮機の潤滑油を冷却するオイルクーラと、圧縮機からの圧縮空気を冷却するエアクーラとの内、一方または双方である
ことを特徴とする請求項3に記載の給水システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−36641(P2013−36641A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171438(P2011−171438)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】