説明

給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法および発電設備

【課題】 給水ポンプ駆動用タービンに係る試験を容易かつ短時間に行う。
【解決手段】 補助蒸気ヘッダ10内の補助蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給する第2の駆動蒸気管94を設ける。試験時においては、蒸気止弁92を閉じて取り出し弁95を開け、補助蒸気ヘッダ10からの補助蒸気を給水ポンプ駆動用タービン9に供給し、給水ポンプ駆動用タービン9を回転させて試験を行うことで、試験を容易かつ短時間に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラに給水するポンプ(以下、「ボイラ給水ポンプ」という)を駆動するための蒸気タービン(以下、「給水ポンプ駆動用タービン」という)を回転させて試験を行う給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法および給水ポンプ駆動用タービンを備えた発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所などにおいては、例えば、次のようにして給水ポンプ駆動用タービンを回して、ボイラ給水ポンプを駆動している(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、図2に示すように、ボイラ100で発生した蒸気を高圧タービン101や中圧タービン102に供給し、高圧タービン101を通過した蒸気の一部(図中矢印F11)を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン103に供給する。これにより、給水ポンプ駆動用タービン103を回し、給水ポンプ駆動用タービン103に連結されているボイラ給水ポンプ104を駆動して、復水器105からの復水をボイラ100に供給するものである。
【特許文献1】特開2002−115807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、定期的に行う事業者検査などにおいて、給水ポンプ駆動用タービン103を回して過速度試験などの試験を行う場合がある。この場合、高圧タービン101から給水ポンプ駆動用タービン103への蒸気の流れを遮断し、ボイラ100からの蒸気を直接給水ポンプ駆動用タービン103に供給して、過速度試験などを行う必要があった。すなわち、高圧タービン101からの蒸気をボイラ100や給水ポンプ駆動用タービン103に供給する再熱蒸気系統管106のエルボ継手106a(図2中A部)を、図3に示すように取り外し、下流側の再熱蒸気系統管106bの開口を塞ぎ板107で塞ぐ。そして、ボイラ100からの蒸気を中圧タービン102および給水ポンプ駆動用タービン103側に流すバルブ100aを開けて、図2中矢印F12に示すように、ボイラ100からの蒸気を給水ポンプ駆動用タービン103に供給していた。
【0004】
しかしながら、再熱蒸気系統管106は大口径で、大口径のエルボ継手106aを取り外して塞ぎ板107を取り付けるには、多大な労力と時間とを要し、工事費がかさんでいた。しかも、再熱蒸気系統管106が高温になっているため、エルボ継手106aの取り外しや塞ぎ板107の取り付けなどには冷却時間や安全対策が必要となり、さらに労力と時間とを要する。このため、過速度試験などをして設備を復旧させるには、長時間を要していた。
【0005】
そこでこの発明は、試験を容易かつ短時間に行うことが可能な給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法および発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ボイラ給水ポンプを駆動する給水ポンプ駆動用タービンを回転させて試験を行う給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法であって、補助蒸気ヘッダからの補助蒸気を駆動蒸気として前記給水ポンプ駆動用タービンに供給し、前記給水ポンプ駆動用タービンを回転させて試験を行う、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、ボイラと、発電用タービンと、復水器と、給水ポンプ駆動用タービンで駆動するボイラ給水ポンプと、を備え、ボイラで発生した蒸気を発電用タービンに供給し、発電用タービンを通過した蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービンに供給して、給水ポンプ駆動用タービンの回転によってボイラ給水ポンプを駆動し、復水器からの復水をボイラに供給する発電設備において、補助蒸気ヘッダ内の補助蒸気を駆動蒸気として前記給水ポンプ駆動用タービンに供給する供給経路と、駆動蒸気を前記給水ポンプ駆動用タービンに前記発電用タービン側から供給するか、前記補助蒸気ヘッダから供給するかを切り替える切替手段と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、発電時においては、切替手段によって発電用タービン側(ボイラ側)から給水ポンプ駆動用タービンに駆動蒸気を供給し、試験時においては、切替手段によって補助蒸気ヘッダから給水ポンプ駆動用タービンに駆動蒸気を供給する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2に記載の発明によれば、給水ポンプ駆動用タービンを回して過速度試験などの試験を行う場合には、補助蒸気ヘッダからの補助蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービンに供給して試験を行うため、試験を容易かつ短時間に行うことが可能となる。すなわち、ボイラ(発電用タービン)からの蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービンに供給して試験を行うのではないため、再熱蒸気系統管のエルボ継手を取り外して塞ぎ板を取り付けたり、試験後に再びエルボ継手を取り付けたりする必要がない。しかも、高温のエルボ継手を取り外したりする必要がないため冷却時間や安全対策を要しない。この結果、試験を容易かつ短時間に行うことが可能で、しかも、試験後の復旧を短時間で行うことが可能となる。さらに、補助蒸気ヘッダから駆動蒸気を供給するため、試験時においてはボイラを稼動する必要がない。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、給水ポンプ駆動用タービンへの駆動蒸気の供給元を切替手段によって切り替えることで、容易かつ短時間に発電運転や試験運転に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態に係る発電ユニット(発電設備)1を示す概略構成図である。図中符号2はボイラで、このボイラ2で発生した主蒸気が、主蒸気管21を介して高圧タービン(発電用タービン)3に供給される。また、高圧タービン3を通過した主蒸気が排気蒸気となって、第1の再熱蒸気管31を介して(図中矢印F1の経路で)ボイラ2に送られ、ボイラ2で再加熱されて再熱蒸気として、第2の再熱蒸気管32を介して中圧タービン(発電用タービン)4に供給される。さらに、中圧タービン4から排出された排気蒸気が、中圧配管41を介して低圧タービン(発電用タービン)5に供給され、これらのタービン3〜5の回転によって、発電機6が稼働するようになっている。
【0013】
そして、低圧タービン5から排出された排気蒸気(水蒸気)は、復水器7に送られて復水されるようになっている。この復水器7とボイラ2とは、給水管71を介して接続され、この給水管71上には、ボイラ給水ポンプ8が配設されている。このボイラ給水ポンプ8には、給水ポンプ駆動用タービン9が連結され、この給水ポンプ駆動用タービン9と第1の再熱蒸気管31のボイラ2よりも上流側とが、第1の駆動蒸気管91を介して接続されている。そして、高圧タービン3から排出された排気蒸気が、第1の再熱蒸気管31および第1の駆動蒸気管91を介して(図中矢印F2の経路で)、駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給される。これにより、給水ポンプ駆動用タービン9が回転し、この回転に伴ってボイラ給水ポンプ8が駆動して、復水器7からの復水が給水管71を介してボイラ2に供給されるようになっている。
【0014】
また、第1の駆動蒸気管91の上流側(ボイラ2側)には蒸気止弁(切替手段)92が配設され、下流側(給水ポンプ駆動用タービン9側)には流量調整弁93が配設されている。さらに、一端が補助蒸気ヘッダ10に接続された第2の駆動蒸気管(供給経路)94の他端が、蒸気止弁92と流量調整弁93との間に位置する第1の駆動蒸気管91に接続されている。これにより、補助蒸気ヘッダ10内の補助蒸気が、第2の駆動蒸気管94を介して駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給されるようになっている。
【0015】
この第2の駆動蒸気管94は、小口径の管で、第2の駆動蒸気管94には、取り出し弁(切替手段)95が配設されている。そして、蒸気止弁92と取り出し弁95とによって、駆動蒸気を給水ポンプ駆動用タービン9に高圧タービン3側から供給するか、補助蒸気ヘッダ10側から供給するかを切り替えるようになっている。つまり、蒸気止弁92を開けて取り出し弁95を閉じた状態では、高圧タービン3側からの排気蒸気(駆動蒸気)が給水ポンプ駆動用タービン9に供給され、蒸気止弁92を閉じて取り出し弁95を開けた状態では、補助蒸気ヘッダ10側からの補助蒸気(駆動蒸気)が給水ポンプ駆動用タービン9に(図中矢印F3の経路で)供給される。
【0016】
ここで、補助蒸気ヘッダ10は、蒸気を所定圧の状態で補助蒸気として蓄える(一時貯留する)補助蒸気系統であり、この実施の形態では、この発電ユニット1で生成された蒸気を蓄えるとともに、他の発電ユニットで生成された蒸気なども蓄えられるようになっている。また、補助蒸気ヘッダ10内の補助蒸気は、ストレージタンクや燃料移送系統等の燃料配管などの加温用蒸気として供給されるようになっている。
【0017】
次に、このような構成の発電ユニット1の作用および、給水ポンプ駆動用タービン9に関する試験方法について説明する。
【0018】
まず、発電時においては、蒸気止弁92を開けて取り出し弁95を閉じた状態で、ボイラ2を稼働させる。これにより、ボイラ2で発生した主蒸気が高圧タービン3に供給され、その排気蒸気が主として第1の再熱蒸気管31を介してボイラ2に送られるとともに、一部が第1の駆動蒸気管91を介して駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給される。このとき、流量調整弁93の開度によって、駆動蒸気の供給量が調整される。そして、駆動蒸気の供給によって給水ポンプ駆動用タービン9が回転してボイラ給水ポンプ8が駆動し、復水器7からの復水がボイラ2に供給される。
【0019】
次に、定期的に行う事業者検査などにおいて、給水ポンプ駆動用タービン9の過速度試験や保安装置試験などを行う場合には、補助蒸気ヘッダ10側からの補助蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給し、給水ポンプ駆動用タービン9を回転させて試験を行う。すなわち、蒸気止弁92を閉じて取り出し弁95を開けることで、補助蒸気ヘッダ10側からの補助蒸気を給水ポンプ駆動用タービン9に供給し、その供給量は、流量調整弁93の開度によって調整する。このとき、試験内容などに応じて、ボイラ給水ポンプ8を給水ポンプ駆動用タービン9から切り離してもよく、また、ボイラ2の稼働を停止してもよい。
【0020】
ここで、保安装置試験としては、給水ポンプ駆動用タービン9の回転数が上昇することでターニングモータが自動停止することを確認する試験や、給水ポンプ駆動用タービン9の回転数が降下することで補助油ポンプが自動起動することを確認する試験、給水ポンプ駆動用タービン9の回転数が異常上昇することで非常調速装置が作動することを確認する試験、給水ポンプ駆動用タービン9の回転数が下がることでターニングモータが自動起動してターニングが開始することを確認する試験などが含まれる。そして、試験が終了した場合には、再び取り出し弁95を閉じて蒸気止弁92を開け、ボイラ2を稼働させることで、ボイラ給水ポンプ8が駆動し、復水器7からの復水がボイラ2に供給される。
【0021】
以上のように、この発電ユニット1および給水ポンプ駆動用タービン9に関する試験方法によれば、給水ポンプ駆動用タービン9に係る試験を行う場合には、補助蒸気ヘッダ10の補助蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービン9に供給して試験を行うため、試験を容易かつ短時間に行うことが可能となる。すなわち、ボイラ2からの蒸気を給水ポンプ駆動用タービン9に供給して試験を行うのではないため、第1の再熱蒸気管31(再熱蒸気系統管)のエルボ継手を取り外して塞ぎ板を取り付けて特別の蒸気経路を確保したり、再びエルボ継手を取り付けたりする必要がない。しかも、高温のエルボ継手を取り外したりする必要がないため冷却時間や安全対策を要しない。さらに、蒸気止弁92と取り出し弁95を開閉するだけで、給水ポンプ駆動用タービン9への駆動蒸気の供給元を切り替えることができる。この結果、試運転などを含む試験を容易かつ短時間に行うことが可能で、しかも、試験後の発電復旧を短時間で行うことが可能となる。さらに、補助蒸気ヘッダ10から駆動蒸気を供給するため、試験時においてはボイラ2を稼動する必要がない。
【0022】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、発電時において高圧タービン3から排気蒸気の一部を給水ポンプ駆動用タービン9に供給しているが、低温の再熱蒸気などを駆動蒸気として供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態に係る発電ユニットを示す概略構成図である。
【図2】従来の発電ユニットを示す概略構成図である。
【図3】図2の発電ユニットの再熱蒸気系統管のエルボ継手を取り外して塞ぎ板を取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 発電ユニット(発電設備)
2 ボイラ
3 高圧タービン(発電用タービン)
4 中圧タービン(発電用タービン)
5 低圧タービン(発電用タービン)
6 発電機
7 復水器
8 ボイラ給水ポンプ
9 給水ポンプ駆動用タービン
92 蒸気止弁(切替手段)
93 流量調整弁
94 第2の駆動蒸気管(供給経路)
95 取り出し弁(切替手段)
10 補助蒸気ヘッダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ給水ポンプを駆動する給水ポンプ駆動用タービンを回転させて試験を行う給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法であって、
補助蒸気ヘッダからの補助蒸気を駆動蒸気として前記給水ポンプ駆動用タービンに供給し、前記給水ポンプ駆動用タービンを回転させて試験を行う、ことを特徴とする給水ポンプ駆動用タービンに関する試験方法。
【請求項2】
ボイラと、発電用タービンと、復水器と、給水ポンプ駆動用タービンで駆動するボイラ給水ポンプと、を備え、ボイラで発生した蒸気を発電用タービンに供給し、発電用タービンを通過した蒸気を駆動蒸気として給水ポンプ駆動用タービンに供給して、給水ポンプ駆動用タービンの回転によってボイラ給水ポンプを駆動し、復水器からの復水をボイラに供給する発電設備において、
補助蒸気ヘッダ内の補助蒸気を駆動蒸気として前記給水ポンプ駆動用タービンに供給する供給経路と、
駆動蒸気を前記給水ポンプ駆動用タービンに前記発電用タービン側から供給するか、前記補助蒸気ヘッダから供給するかを切り替える切替手段と、
を設けたことを特徴とする発電設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−293469(P2009−293469A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146628(P2008−146628)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】