説明

給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構

【課題】給水栓ハンドルの回転角度調整を容易に行うことができるものとすることにより、使用者毎に回転角度範囲調整を簡便に行うことができるなど、使用者の利便性を向上させる。
【解決手段】吐水切換弁17を回転駆動するスピンドル18に固定されるとともに当たり部54を有するハンドル本体50を備え、湯水混合水栓2の水栓本体10側に設けられるセレーション部34と、セレーション部34に係合可能なセレーション部74を有する回転規制ブッシュ70とを備え、セレーション部34に内セレーション溝が形成され、セレーション部74には外セレーション溝が形成され、回転規制ブッシュ70には、ハンドル本体50が回転された際に当たり部54が当接可能な第一当接部が設けられ、セレーション部34に対して吐水ハンドル30の外部からの押動操作により進退自在に設けられて、係合可能又は係合状態が解除可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
給水栓ハンドルの回転角度範囲は、通常は工場出荷時等において予め定められ、所定の角度範囲内に定められており、例えば吐水ハンドルについては、止水位置から所定の角度範囲まで回転可能に設定されて、その最大吐水量が定められることになる。また、吐水ハンドル以外の給水栓ハンドルについても同様である。このような給水栓ハンドルにおいて回転角度範囲を調整可能とするものとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。これを具体的に説明すると、特許文献1に記載の給水栓は、温度調節ハンドルの規制範囲を調節可能とするものであり、温度調節ハンドル側のスピンドルと温度調節操作軸とのスプライン相互の嵌め合わせを適宜調整可能とし、適正温度範囲の出湯がなされたかどうかをチェックすることができるように設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−49268号公報(図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前述した従来の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構は、このような調整をするためには、ハンドル取り付けボルトを緩めた上でスピンドル等を取り外す必要がある。よって、一定以上の作業時間を要し、また作業には工具も必要とする。したがって、そもそも給水栓の使用者が自ら、所望の回転角度範囲に調整することを前提にしていない。そしてまた、例えば吐水ハンドルであれば、その最大吐水量について、給水栓の使用者毎の要望に応じて簡便に調整可能とする等、一般的な給水栓の使用者が、給水栓ハンドルを実際に使用して吐水を行なう場合に応じた利便性を考慮して、その回転角度範囲の調整を行うことを目的としたものではない。
【0005】
本発明は、前述した従来の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構の問題点を解決するものであり、給水栓ハンドルの回転角度調整を容易に行うことができるものとすることにより、使用者毎に給水栓ハンドルの回転角度範囲調整を簡便に行うことができるなど、給水栓の使用者の利便性を向上させることのできる給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための本発明の第一の手段は、
給水栓に設けられる切換弁、混合弁等の機能部品を回転駆動する駆動軸に固定されるとともに当たり部を有するハンドル本体を備えた給水栓ハンドルと、
給水栓の水栓本体側に設けられる係合部と、該係合部に係合可能な被係合部を有する回転規制部材とが備えられ、
前記係合部又は前記被係合部の一方には多数の係合凹部が形成され、他方には該係合凹部のそれぞれに係合可能な係合突部が形成され、
前記回転規制部材は、
前記ハンドル本体が回転された際に前記当たり部が当接可能な当接部を有するとともに、前記係合部に対して前記給水栓ハンドルの外部からの操作により進退自在に設けられ、前記係合部に対して進入された位置においては前記係合凹部と前記係合突部が係合可能に設けられて前記係合部に対して回転位置決めが可能に設けられ、前記係合部に対して退出された位置においては前記係合凹部と前記係合突部との係合状態が解除可能に設けられたことを特徴とする給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構である。
【0007】
本回転角度範囲調整機構によれば、回転規制部材を適宜回転させた上で、給水栓ハンドルの基端側に押し込むなどして係合部に対して進入させることにより、回転規制部材を適宜回転させた角度位置にて係合部に固定することができる。そして、この状態において、ハンドル本体を回転させて吐水等を行う場合には、係合部に対して回転方向において適宜の位置で固定された回転規制部材の当接部に、ハンドル本体の当たり部が当接することになる。すなわち、回転方向において位置が変更可能な当接部にハンドル本体の当たり部が当接される。よって、給水栓ハンドルの回転角度範囲は、適宜回転させた回転規制部材によって定められることになる。また、設定した回転角度の規制を解除したい場合には、係合部に対して回転規制部材を退出させ、係合部と被係合部との係合を解除すればよい。このようにして、回転規制部材の回転と・押動操作等の給水栓ハンドルの外部からの操作だけで給水栓ハンドルの回転角度範囲調整を簡便に実施することができ、回転規制部材を係合部に嵌め変えるために給水栓ハンドルを分解するなどの作業は必要としない。
【0008】
なお、本発明において「給水栓ハンドル」は、吐水ハンドル、温度調節ハンドル等、給水栓用に用いられ回転駆動される機能部品を備える全ての給水栓ハンドルを含むものである。また、「係合凹部」及び「係合突部」は、係合部と回転規制部材の被係合部とのいずれかにそれぞれ設ければ良く、係合部側に「係合凹部」、被係合部側に「係合突部」を設けることとしたり、逆に、係合部側に「係合突部」、被係合部側に「係合凹部」を設けることとすることができる。また、「係合凹部」は多数設けることとしているが、「係合突部」は多数設けることに限らず、少なくとも一つの「係合突部」が設けられれば良い。また、本発明において「係合」とは、「噛合」、「嵌合」なども含む主旨である。また、回転規制部材を給水栓ハンドルの外部からの操作により進退自在に設ける手段の具体例としては、回転規制部材自体を外部に露呈して使用者の押動操作等により回転規制部材を直接操作して進退自在に設けたり、回転規制部材に「操作部」(例えばボタン等)を連接して、使用者の操作部の操作により間接的に進退自在に設けたりするものなどを例示することができる。また、このような「操作部」としては、押しボタンやスライドスイッチ等を例示することができる。
【0009】
また本発明の第二の手段は、
前記回転規制部材の前記係合凹部及び前記係合突部がセレーションであることを特徴とする給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構である。
【0010】
回転規制部材の係合凹部及び係合突部として、セレーションを用いることにより、係合部に対する回転規制部材の被係合部の係合を、多段階かつ安定的に行わせることができ、給水栓ハンドルの回転角度範囲調整の利便性を向上させることができる。
【0011】
また本発明の第三の手段は、
前記回転規制部材が、前記係合部から離隔する方向に付勢されるとともに、ハートカム機構によって前記係合部に対して進退自在に取り付けられるものである。
【0012】
回転規制部材を進退自在に設ける手段としては、回転規制部材自体を進退いずれかの位置に手動で移動させても良いが、本発明のように、回転規制部材を、係合部から離隔する方向に付勢するとともにハートカム機構によって進退自在に取り付けることにより、バネなどの付勢手段の作用によって回転規制部材の進退動作を回転規制部材への押動操作等の操作によって容易に繰り返すことができる。
【0013】
また本発明の第四の手段は、
前記回転規制部材には、軸心回りにおいて前記ハンドル本体側に対して回転基準位置に戻るように付勢可能な付勢手段が、前記ハンドル本体側との間に介装されたものである。
【0014】
給水栓ハンドルの回転規制が解除された際に、回転規制部材が所定の基準位置に戻らない場合には、回転規制部材自体の回転角度範囲が制限され、再度給水栓ハンドルの回転角度範囲を所望の範囲に設定できない場合が生ずる。よって、付勢手段により、給水栓ハンドルの回転規制が解除された際、すなわち係合部と被係合部との係合が解除された場合には、所定の基準位置に回転規制部材が戻るように付勢する付勢手段を備えることとして、給水栓ハンドルの回転規制解除時の回転規制部材の回転位置が常に定められるように設けることとしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構は前述のように構成されているので、給水栓ハンドルの回転角度範囲を簡便に調整することができ、給水栓ハンドルの使用者において、所望の回転角度範囲とすることにより当該給水栓ハンドルの機能を使用者自身が任意に調節することができる。よって、給水栓ハンドルの使用者にとって利便性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】回転角度範囲を規制した状態の本発明の給水栓ハンドルの平面視横断面図である。
【図2】回転角度範囲を規制した状態の本発明の給水栓ハンドルの正面視縦断面図である。
【図3】図1の給水栓ハンドルのD−D‘線断面図である。
【図4】図1の給水栓ハンドルのA−A‘線断面図である。
【図5】図1の給水栓ハンドルのB−B‘線断面図である。
【図6】図1の給水栓ハンドルのC−C‘線断面図である。
【図7】回転角度範囲の規制を解除した状態の本発明の給水栓ハンドルの平面視横断面図である。
【図8】回転角度範囲の規制を解除した状態の本発明の給水栓ハンドルの正面視縦断面図である。
【図9】回転角度範囲を規制した状態の図1の給水栓ハンドルのD−D‘線断面図である。
【図10】回転角度範囲を規制した状態の給水栓ハンドルの要部斜視図である。
【図11】回転角度範囲の規制を解除した状態の給水栓ハンドルの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図を参考にして詳細に説明する。図1及び図2に示されるように、本発明の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構1は、本例においては、給水栓ハンドルの一例である湯水混合水栓2の吐水ハンドル30に用いられており、吐水ハンドル30の回転角度範囲を調整可能とすることにより、シャワー側から吐水される湯水の最大吐水量を容易に設定変更することができるように構成されるものである。湯水混合水栓2は、図示しない温度調節ハンドルを設定温度に回転調節することにより、内蔵されるサーモスタット式ミキシングバルブ(図示省略)によって水側流路11及び湯側流路(図示省略)から流入される湯及び水を適宜量混合して吐水温度を調節することができる。そして、吐水ハンドル30を回転操作することにより、湯水混合水栓2内の吐水切換弁17を駆動し、吐水ハンドル30を、右側面視において止水位置から左回りに回転させることにより、吐水口(図示省略)から湯水を吐水させ、一方、右側面視において止水位置から右回りに回転させることによりシャワー(図示省略)から湯水を散水させるものである。
【0018】
吐水切換弁17の右側端には、吐水切換弁17の流路を湯水混合水栓2の水栓本体10内の吐水口側流路14又はシャワー側流路16に選択的に開口可能に設けられるとともに、その開口量を調節することにより吐水口又はシャワーからの湯水の吐止水及びそれぞれの吐水量を調節するための「駆動軸」であるスピンドル18が突設されている。前述の通り、吐水ハンドル30を右側面視において右回りに回転操作すると、スピンドル18も右回りに回転されて、吐水切換弁17の流路がシャワー側流路16に開口される。また、本例においては、シャワー側、すなわち前述のように、右側面視において止水位置から右回りに最大90度吐水ハンドル30を回転させてシャワーから湯水を散水させることが可能であり、止水位置から90度回転させた位置において最大吐水量にて湯水を吐水するように設定されている。そして、本発明の回転角度範囲調整機構1は、この吐水ハンドル30の止水位置からシャワー側への回転可能な角度範囲について、当初設定されている90度以下に簡易に規制することができ(後述する例では45度までの範囲に規制する例について説明する)、湯水の最大吐水量を簡便に調節することができるものである。
【0019】
次いで、吐水ハンドル30及び回転角度範囲調整機構1について説明する。吐水切換弁17が収容される水栓本体10の右側開口部20には、二つの吐水形態(吐水口・シャワー)の切換表示と止水位置表示(いずれも図示省略)が付された表示カラー32が取り付けられている。表示カラー32は、円筒状に形成されて、図3に示されるように、その先端側内周面には、後述する回転規制ブッシュ70と噛合可能な本発明の多数の「係合凹部」が形成された一例である内セレーション溝33が刻設された本発明の「係合部」の一例であるセレーション部34が設けられている。図3に示されるように、内セレーション溝33はセレーション部34の内周のうち、その約270度の範囲において形成されている。後述するように本回転角度範囲調整機構1においては、約180度の範囲の外周面に本発明の「係合突部」が多数設けられた一例である外セレーション溝73が刻設された本発明の「被係合部」の一例であるセレーション部74を備えた回転規制ブッシュ70が内蔵されている。そして、このセレーション部74内において、回転規制ブッシュ70がその角度を約90度の範囲内で回転された上で噛合可能に設けられることにより、吐水ハンドル30により設定する湯水の最大吐水量以下のいずれかの吐水量を、使用者が所望する最大吐水量として設定可能に設けられている。
【0020】
なお、本例においては、「係合突部」を多数設けた態様である外セレーション溝73を例示したが、本発明の「係合突部」としては、例えば、多数形成された「係合凹部」のいずれかに係合可能な単一の「係合突部」や、複数個程度の「係合突部」を設けることでも良い。しかしながら、係合部と被係合部との係合を多段階かつ安定的に行わせ、給水栓ハンドルの回転角度範囲調整の利便性を向上させるには、本例のセレーション溝73のように、「係合突部」も多数設けることとして、多数の「係合凹部」(本例ではセレーション溝33)と多くの部位において係合させることが望ましい。また、「係合凹部」として多数の穴を設け、これに係合する「係合突部」として、ピン、棒、突設片などの片持ち梁状の部材を用いることとしても良い。
【0021】
図1及び図2に示されるように、前述した吐水切換弁17のスピンドル18にはハンドル固定ブッシュ40が固定されている。ハンドル固定ブッシュ40は、その基端側に、スピンドル18の雄ねじ部19に螺合される第一雌ねじ部41を備えており、スピンドル18に螺合固定可能に設けられている。また、ハンドル固定ブッシュ40の先端側の第二雌ねじ部42には、第二雌ねじ部42に螺合されるとともにスピンドル18の先端に係合固定される固定用ボルト46が取り付けられており、ハンドル固定ブッシュ40は、この固定用ボルト46の係止鍔部48に係止されて、スピンドル18に対して固定されている。
【0022】
また、ハンドル固定ブッシュ40には、摘み部52(図4参照)を備えたハンドル本体50が固定されている。このようにして、ハンドル本体50を回転操作することにより、ハンドル固定ブッシュ40、固定用ボルト46及びスピンドル18が一体的に回転駆動され、吐水切換弁17が駆動されることになる。また、ハンドル本体50内周面には、図1及び図3に示されるように、後述する回転規制ブッシュ70のセレーション部74の一端面から構成される第一当接部75(本発明の「当接部」に相当)に対して、後述する押しボタン56を押し込んでセレーション部74が吐水ハンドル30基端側に位置する状態においてのみ当接可能な当たり部54が突設されている。
【0023】
図1及び図4に示されるように、ハンドル本体50の先端開口部51には、押しボタン56が取り付けられている。この押しボタン56は、吐水ハンドル30の右側端において、ハンドル本体50外部に露呈されて取り付けられており、後述するように、使用者がこの押しボタン56の押動操作を繰り返すことにより、回転規制ブッシュ70が表示カラー32のセレーション部34に対して進退され、吐水ハンドル30の当初の回転可能な回転角度を90度以内の範囲で規制(図1及び図2の状態)又は規制解除(図7及び図8の状態)を選択できるように構成されるものである。
【0024】
押しボタン56の内側には、図2及び図5に示されるように、ハンドル固定ブッシュ40内側の挿通部43に挿通されて、後述する回転規制ブッシュ70に固定される中ボタン58が固定されている。中ボタン58は、ハンドル固定ブッシュ40に対して、吐水ハンドル30の軸心方向に沿って摺動自在に、前述した挿通部43に取り付けられている。また、ハンドル固定ブッシュ40のバネ収容部44にはバネ44aが収容されており、このバネ44aにより、中ボタン58とともに押しボタン56が吐水ハンドル30の先端方向に付勢されている。また、図5に示されるハンドル固定ブッシュ40のカム収容部45には図示しないハートカム機構が収容されている。このハートカム機構の一端はハンドル固定ブッシュ40に固定され、他端は中ボタン58に固定されており、押しボタン56を押す毎に、前述した中ボタン58を吐水ハンドル30の先端方向に付勢するバネ44aと相まって、中ボタン58が吐水ハンドル30の軸心方向に沿って、進退それぞれの位置に移動するように構成されている。
【0025】
図2及び図8に示すように、中ボタン58の基端側に突設された二つの係止片60には本発明の「回転規制部材」の一例である回転規制ブッシュ70が係止固定されている。円筒状の回転規制ブッシュ70は、その基体部72が、係止片60先端の係止爪62と、係止片60基端側の段部64との間に係止固定され、前述のように、中ボタン58等と共に吐水ハンドル30の軸心方向に沿って進退を繰り返すように設けられている。
【0026】
回転規制ブッシュ70の基体部72の基端側には、外セレーション溝73が刻設されたセレーション部74が延設されている。セレーション部74は、図3に示すように、回転規制ブッシュ70の軸心回りに約180度の範囲に形成されている。前述したように、押しボタン56の押動操作によって、回転規制ブッシュ70が吐水ハンドル30基端側に押し込まれることにより、このセレーション部74の外セレーション溝73が表示カラー32の内セレーション溝33に噛合された状態とされ(図1及び図2参照)、一方、吐水ハンドル30先端側に押し出されることにより、外セレーション溝73と内セレーション溝33との噛合状態を解除される(図7及び図8参照)。
【0027】
また、図1及び図6に示されるように、ハンドル本体50と回転規制ブッシュ70との間には、回転規制ブッシュ70の外周面に巻き付かせるようにしてねじりバネ76が介装されている。ねじりバネ76は、一端が、ハンドル本体50内周面にその軸心方向に沿って凹設された摺動溝53内に摺動自在に介装され、他端は、回転規制ブッシュ70の外周面に挿着されている。そして、前述のように回転規制ブッシュ70の外セレーション溝73が表示カラー32の内セレーション溝33に噛合していない場合には、図3及び図6に示されるように、回転規制ブッシュ70を常に一定の回転基準位置に戻すようにねじりバネ76が付勢するように構成されている。
【0028】
次いで、前述した吐水ハンドル30と回転角度範囲調整機構1の使用方法・作用について説明する。まず、通常の吐水ハンドル30においてシャワー散水を行う際、すなわち当初の吐水ハンドル30の回転角度範囲(止水位置から、水栓本体10の右側面視において右回りに90度まで回転可能とされてシャワー散水を行う場合)においては、図7、図8及び図11に示されるように、押しボタン56が吐水ハンドル30の先端寄りに突出した状態で位置され、押しボタン56に連設される中ボタン58、回転規制ブッシュ70も共に吐水ハンドル30の先端方向に位置する。よって、回転規制ブッシュ70のセレーション部74は、表示カラー32のセレーション部34に対して吐水ハンドル30先端側に後退し、外セレーション溝73と内セレーション溝33とは噛合していない。この状態において吐水ハンドル30を右側面視において右回りに回転させていくと、ハンドル固定ブッシュ40を介してスピンドル18が止水位置から90度まで回転可能とされ、回転位置に応じた吐水量のシャワー散水を得ることができる。
【0029】
次いで、吐水ハンドル30のシャワー散水の際の回転角度範囲を規制して、シャワー散水の最大吐水量を抑える場合について説明する。前述のように、吐水ハンドル30は、シャワー側において止水位置から90度までのいずれかの位置まで回転させて所望の吐水量を得ることができるが、このように所望の吐水量となるように吐水ハンドル30を回転させた状態において、図1、図2及び図10に示されるように、押しボタン56を押し込んで、中ボタン58を介して回転規制ブッシュ70を吐水ハンドル30基端側に位置させる。前述のように、ハートカム機構によって、押しボタン56、中ボタン58を介して回転規制ブッシュ70はこの押し込んだ位置に一旦固定される。この際には、図9にも示されるように、回転ブッシュ70のセレーション部74は、表示カラー32のセレーション部34内に挿嵌され、吐水ハンドル30の回転角度と同じだけ表示カラー32に対して回転された位置で外セレーション溝73が表示カラー32の内セレーション溝33に噛合される。図9に示されるのは、止水位置から吐水ハンドル30を45度回転させた際の吐水量を最大吐水量として調整した例であり、回転規制ブッシュ70は、図3に示される止水位置から45度回転させた位置において表示カラー32側に対して、その軸心回りに噛合固定されている。前述のように、表示カラー32側の内セレーション溝33は約270度の範囲で設けられ、これに噛合する回転規制ブッシュ70の外セレーション溝73が設けられるセレーション部74は約180度の範囲で設けられており、セレーション部74の第二当接部77が表示カラー32の内セレーション溝33の端部に設けられた係止部35に係止される角度まで、すなわち吐水ハンドル30の当初のシャワー側の最大回転角度である90度まで回転可能とされている。よって、当初のシャワー側の最大回転角度のいずれかの位置で回転規制を行うことができる。したがって、本例のような45度以外の角度においても、当初の最大吐水量の範囲内において最大吐水量を自由に調整することができる。そして、このように吐水ハンドル30の回転角度範囲を調整した後に、吐水ハンドル30を止水位置に戻して、いったん湯水混合水栓2の使用を終える。
【0030】
次いで、その後にシャワー散水を行う場合には、吐水ハンドル30の回転角度範囲の規制が行われ、止水位置から、前述のように設定した45度の回転角度における吐水量を最大吐水量として吐水が行われる。前述の通り、図1に示されるように、押しボタン56が押し込まれた状態では回転規制ブッシュ70のセレーション部74が吐水ハンドル30の基端側に押し込まれて、その第一当接部75に対して、ハンドル本体50の当たり部54が当接可能に相互の位置関係が変位されている。そして、図9に示されるように、止水位置から45度回転された状態で表示カラー32側に噛合固定されている回転規制ブッシュ70のセレーション部74の第一当接部75に、当たり部54が当接されるまで、ハンドル本体50、すなわち吐水ハンドル30は回転可能とされるように構成されている。
【0031】
次いで、このように回転角度範囲を調整した吐水ハンドル30の回転規制を解除する場合について説明する。押しボタン56を押し込んだ状態から、もう一度押しボタン56を押し込むと、前述のように、ハートカム機構によって、図7、図8及び図11に示されるように、押しボタン56、中ボタン58及び回転規制ブッシュ70は吐水ハンドル30先端寄りに位置される。すると、回転ブッシュ70のセレーション部74は、表示カラー32のセレーション部34内から後退し、外セレーション溝73と表示カラー32の内セレーション溝33との噛合固定は解除される。また、図11に示されるように、回転規制ブッシュ70のセレーション部74の第一当接部75に対して、ハンドル本体50の当たり部54は当接不能な位置関係に変位される。このようにして、吐水ハンドル30は、再度、予め定められた、右側面視において止水位置から右回りに90度までの範囲で回転が可能となり、吐水ハンドル30を90度回転させた位置での吐水量を最大吐水量として吐水することが可能となる。
【0032】
また、図6に示されるように、押しボタン56を再度押し込んで回転規制を解除した際には、表示カラー32との噛合固定が解除された回転規制ブッシュ70は、前述のように、付勢されるねじりバネ76の作用により、通常時の位置に復帰し、所定角度範囲(本例では0〜90度)での規制が可能となるように、再度回転角度範囲の規制を設定する際の回転基準位置に回転規制ブッシュ70が戻るように構成されている。これは、例えば図9に示されるように、吐水ハンドル30の回転角度範囲を45度として規制し、回転規制を解除した場合に、表示カラー32に対する回転規制ブッシュ70の軸心回りの位置決めをそのままとした場合、再度吐水ハンドル30の回転角度範囲を規制しようとしても回転規制ブッシュ70の第二当接部77が表示カラー32の係止部35に係止されて45度よりも大きい角度以上に回転不能となってしまう。そこで、本例のように、吐水ハンドル30の回転規制解除時には、ねじりバネ76によって、図3に示されるように、当初の回転規制ブッシュ70の回転基準位置に戻るように構成している。以上、このように、本回転角度範囲調整機構1では、吐水ハンドル30の各部品を分解するなどの作業を要することなく、吐水ハンドル30の使用に併せて極めて簡便に回転角度範囲の調整・解除を行うことができる。
【0033】
本発明は前述のように構成されているが、これらに限られるものではなく、本発明の趣旨の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、前述の例では、シャワー側の回転角度範囲を調整することとしたが、吐水口側の回転角度範囲を調整することとして、吐水口からの最大吐水量を調整するように構成することもできる。また、吐水ハンドル30に限らず、その他の各種の給水栓ハンドルに本発明を適用し、例えば、温度調節ハンドルに本発明を適用し吐水可能温度範囲を任意に調整可能としたり、浄水用ハンドルに本発明を適用し浄水の吐水の吐水量を任意に調整可能とすることなどにも利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は給水栓ハンドルに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1;回転角度範囲調整機構、2;湯水混合水栓、10;水栓本体、11;水側流路、14;吐水口側流路、16;シャワー側流路、17;吐水切換弁、18;スピンドル、19;雄ねじ部、30;吐水ハンドル、32;表示カラー、33;内セレーション溝、34;セレーション部、35;係止部、40;ハンドル固定ブッシュ、41;第一雌ねじ部、42;第二雌ねじ部、43;挿通部、44;バネ収容部、44a;バネ、45;カム収容部、46;固定用ボルト、48;係止鍔部、50;ハンドル本体、51;先端開口部、52;摘み部、53;摺動溝、54;当たり部、56;押しボタン、58;中ボタン、60;係止片、62;係止爪、64;段部、70;回転規制ブッシュ、72;基体部、73;外セレーション溝、74;セレーション部、75;第一当接部、76;ねじりバネ、77;第二当接部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水栓に設けられる切換弁、混合弁等の機能部品を回転駆動する駆動軸に固定されるとともに当たり部を有するハンドル本体を備えた給水栓ハンドルと、
給水栓の水栓本体側に設けられる係合部と、該係合部に係合可能な被係合部を有する回転規制部材とが備えられ、
前記係合部又は前記被係合部の一方には多数の係合凹部が形成され、他方には該係合凹部のそれぞれに係合可能な係合突部が形成され、
前記回転規制部材は、
前記ハンドル本体が回転された際に前記当たり部が当接可能な当接部を有するとともに、前記係合部に対して前記給水栓ハンドルの外部からの操作により進退自在に設けられ、前記係合部に対して進入された位置においては前記係合凹部と前記係合突部が係合可能に設けられて前記係合部に対して回転位置決めが可能に設けられ、前記係合部に対して退出された位置においては前記係合凹部と前記係合突部との係合状態が解除可能に設けられたことを特徴とする給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構。
【請求項2】
前記回転規制部材の前記係合凹部及び前記係合突部がセレーションであることを特徴とする請求項1に記載の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構。
【請求項3】
前記回転規制部材が、前記係合部から離隔する方向に付勢されるとともに、ハートカム機構によって前記係合部に対して進退自在に取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構。
【請求項4】
前記回転規制部材には、軸心回りにおいて前記ハンドル本体側に対して回転基準位置に戻るように付勢可能な付勢手段が、前記ハンドル本体側との間に介装されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の給水栓ハンドルの回転角度範囲調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−21374(P2012−21374A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162257(P2010−162257)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】