説明

給油ノズル用ガイド装置

【課題】給油口側筒部への組込操作性を良好にし、過大な衝撃を受けても不用意に係合解除しないようにする。
【解決手段】給油口側筒部10の内側に固定され、給油ノズル4を筒部10からフィラーパイプ11内へ挿入する際の案内となる給油ノズル用ガイド装置3として、筒部10の奥側に配置される略筒状の本体30、及び本体の一端側に設けられて給油ノズル4をセンタリング可能な導入部31とからなるとともに、本体30が外周の筒長手方向に設けられたガイド溝36と、ガイド溝から筒周囲方向に設けられたロック溝37とを備え、筒部10の内面に設けられた突起14にガイド溝36を嵌合した状態で筒部内に挿入され、かつ、回転されると突起14にロック溝37を係合して筒部10に装着可能となっていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油ノズル差込部を構成して給油ノズルのフィラーパイプ内への挿入を案内する給油ノズル用ガイド装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は特許文献1に開示の車両の給油口構造を示し、(a)は給油ノズルをフィーパイプの給油口側筒部に差し込んで給油している状態、(b)は給油ノズルを案内するノズルガイド(本願の給油ノズル用ガイド装置に対応)を示している。同図の構造では、給油ノズルNzが差し込まれる上端に拡開部5を有する給油口側筒部6と、筒部6の先端に絞り加工により小径化され、給油ノズルNzから吐出された燃料Fを燃料タンク側へ送る供給経路を形成するフィラーチューブ3と、筒部6の外周に接続されて燃料タンクの燃料ベーパVを排出するベントチューブ4と、筒部6に内設されて給油ノズルNzをフィラーパイプ3内へ案内するノズルガイド10とを備えている。
【0003】
ノズルガイド10は分割体11,12からなる。分割体11には可動爪11b及び壁部11cが設けられ、分割体12には押圧部12eが設けられている。そして、可動爪11bは、分割体11と分割体12とが相対移動させると押圧部12eによって押圧変形される。一方、筒部6には筒体2の段差端縁で形成された被係合部2cが設けられている。そしてノズルガイド10は、筒部6内で、可動爪11b付きの分割体11と押圧部12e付きの分割体12とを相対移動して、可動爪11bを押圧部12eにて押圧変位して被係合部2cに係合することにより筒内に固定される。
【0004】
すなわち、ノズルガイド10の組み付けに際しては、まず、分割体11を筒部6内の奥側に差し込み、次いで分割体12を筒部6内に差し込む。この場合、分割体12を筒部6内に差し込むと、分割体11,12同士が差込方向Iに相対的に近接し、分割体11の可動爪11b及び壁部11cが分割体12の切欠部12dに挿入される。このとき、切欠部12dの開放側の拡開部12f,12gが可動爪11bのガイドとなるため、可動爪11bを切欠部12dに円滑に移動可能となる。そして、可動爪11b及び壁部11cは、切欠部12dの内壁部12eにより筒外側に押し出される。これにより、可動爪11bの係止突起11dと壁部11cの側壁部11gの先端部分とが、被係合部2cに係合し、分割体11が筒部6内に係合される。同時に、分割体11,12同士は、分割体12を差込方向Iに押し込むことで、係合機構13を構成している分割体11側の開口部12hと分割体12側の突起12iとの係合により一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−188867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したノズルガイド構造では、筒部6内において分割体同士を係合機構13により係合一体化し、かつ分割体11を筒部6に係合固定するため、分割体同士の相対的な位置だしに苦労し組み付け作業性が悪い。また、筒部6に対する係合固定は、ベントチューブ4の端部を利用した周方向の回り止めと、可動爪の係止突起11d及び壁部の側壁部11gの先端部分を筒部6の段差端縁である被係合部2cに掛け止めしているだけなので、追突事故等のごとく過大な衝撃を受けると係合解除したり、がたつく虞があり、溶接作業が必須となり、位置決め作業性と相まって面倒な組込み作業を要していた。
【0007】
本発明の目的は、以上のような課題を解消するものであり、構造を簡単にして給油口側筒部への組込作業を溶接作業などを要することなくワンタッチで行え、かつ一旦取付けた状態で過大な衝撃を受けても係合解除しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、給油口を構成する筒部の内側に固定され、給油ノズルを前記給油口側筒部からフィラーパイプ内へ挿入する際の案内となる給油ノズル用ガイド装置において、前記ガイド装置は、前記筒部の奥側に配置される略筒状の本体、及び前記本体の一端側に設けられて前記給油ノズルをセンタリング可能な導入部とからなるとともに、前記本体が外周の筒長手方向に設けられたガイド溝と、前記ガイド溝から筒周囲方向に設けられたロック溝とを備えており、前記筒部の内面に設けられた突起に前記ガイド溝を嵌合した状態で前記筒部内に挿入され、かつ、回転されると前記突起に前記ロック溝を係合して前記筒部に装着可能となっていることを特徴としている。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜5で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記ガイド溝と前記ロック溝との接続付近に設けられて、前記ガイド装置を前記筒部内に挿入したときに前記突起と着脱自在に係合する仮止め用窪み部を有している構成である(請求項2)。
(イ)、前記ガイド溝及びロック溝を前記本体の2箇所以上に設けた構成である(請求項3)。
【0010】
(ウ)、前記本体は、前記ロック溝が前記突起に係合した状態で、前記筒部に接続されたベントチューブの開口と隙間を保って対向する対向部分、及び前記ベントチューブの開口より筒部奥側に挿入される下側周囲に突設されたフランジ部を有している構成である(請求項4)。
(エ)、前記導入部は、間隔を保って設けられた複数の翼部により構成されていることである(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1発明では、ガイド装置は取扱性、組込操作性、抜去不能な安定係合性の点で優れ、形態例のごとく樹脂一体成形することにより軽量かつ安価に製作できる。すなわち、本発明のガイド装置は、単一部材で構成されるため取り扱い易く製造費を低減できる点、図2及び図3に例示されるごとくガイド溝を給油口側筒部内の突起に嵌合した状態でその筒部内へ挿入し、かつ、筒内周方向への回転により前記突起をガイド溝からロック溝に係合固定するため筒部への取付作業をワンタッチ操作により行える点、その係合固定はロック溝がガイド装置の引き抜き方向と交差する方向に設けられているため確実に抜去不能にできる点、などで優れている。
【0012】
請求項2の発明では、ガイド装置がガイド溝を筒部側突起に嵌合した状態で筒部内に挿入されると、突起が窪み部に係合して仮止めされる。この仮止めは、例えば、筒部に対するガイド装置の挿入完了を突起と窪み部との係合時のクリック音により確認したり、その確認によりガイド装置を筒部周方向へ回転操作してロック溝に突起を係合固定する時期を分かるようにして、筒部への組込操作性が良好に得られるようにする。
【0013】
請求項3の発明では、ガイド装置が筒部に対してロック溝及び突起による複数箇所で係合固定されることにより、一旦組付けた状態での抜去不能な安定係合性をより確実に得られるようにする。
【0014】
請求項4の発明では、給油口側筒部内において、ベントチューブから上昇される燃料ペーパを、ベントチューブの開口と本体の対向部分との間に形成された隙間から、外の大気側に流れ易くし、それにより筒部奥側つまりフィラーパイプの燃料供給通路内に導入され難くすることができる。
【0015】
請求項5の発明では、ガイド装置の導入部が複数の翼部により構成されているため、ベントチューブから上昇される燃料ペーパをベントチューブの開口と本体の対向部分との間に形成された隙間から翼部同士の間隔を通って外の大気側に確実に流れるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】形態例のガイド装置を装備した給油口側筒部と給油ノズルの差込部を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の給油口側筒部とガイド装置との関係を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】上記ガイド装置の給油口側筒部への取付操作要領を示す斜視図である。
【図4】上記ガイド装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【図5】図4のガイド装置の細部を示し、(a)は図4のA−A線拡大断面図、(b)は図4のB−B線拡大断面図である。
【図6】上記ガイド装置を装着した給油口側筒部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図7】特許文献1の構造を示し、(a)は給油ノズル差込部の内部構造を給油ノズルを差し込んだ状態で示し、(b)はガイド装置(ノズルガイド)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の形態例について添付図面を参照しながら説明する。この説明では、ガイド装置の要部構造を明らかにした後、フィラーパイプの給油口側筒部への組入操作について詳述する。
【0018】
(構造)形態例の給油ノズル用ガイド装置3は、図1に示されるごとく給油ノズル差込部を構成し、給油口側筒部10の内側に係合固定され、給油ノズル4を給油口側筒部10の下部に絞り込み加工によって小径化されたフィラーパイプ1(11)内へ挿入案内するものである。構造特徴は、筒部10の奥側に配置される略筒状の本体30、及び本体30の一端側(上端側)に設けられて給油ノズル4をセンタリング可能な導入部31とからなり、本体10が外周に設けられて筒長手方向に延びるガイド溝36と、ガイド溝36の一端に接続されて筒周囲方向に延びるロック溝37とを備え、筒部10の内面に設けられた突起14にガイド溝36を嵌合した状態で筒部内に挿入されるとともに、突起14にロック溝37を係合することで筒部10に対して装着可能となっている。
【0019】
なお、フィラーパイプ1は、燃料タンクに燃料を給油するためのパイプであり、径大となった給油口側筒部10を除いたパイプ部を言う場合と、筒部10を含めて言う場合とがあるが、何れでもよい。ここでの給油口側筒部10は、図1から図3に示されるごとく開口端が鍔状のフランジ部12で縁取りされ、その下側周囲に設けられたねじ部13と、側面に接続されて燃料ベーパを排出するベントチューブ2と、筒部10のうちベントチューブ2の出口側端部2aと略同じ筒部周囲の内面に突設された一対の突起14とを有している。両突起14は対向して設けられている。
【0020】
ガイド装置3は、本体10及び導入部31を一体成形した耐油性の合成樹脂成形体からなる。本体10には、上下端の外周に突出されたフランジ部32,33と、外周及び下端側フランジ部33に一体化された状態に突出された複数(この例では2つ)の台座部35とが設けられている。なお、本体10の内、フランジ部32,33及び各台座部35を除いた外周は、後述するロック溝37ないしは係合穴37aと突起14とが係合した状態で、ベントチューブの出口側端部2aと隙間を保って対向する対向部分30aとなる。
【0021】
一方、導入部31は、所定の間隔34aを保って設けられた複数の翼部34で構成されている。各翼部34は、フランジ部32に接続された状態で漏斗状に広がっていて、先端が図1のごとく筒部10の内周面に圧接された状態で、給油ノズル4を本体10内へセンタリング可能となっている。
【0022】
ここで、本体10において、各フランジ部32,33及び台座部35の外径寸法は、給油口側筒部10の内寸法とほぼ同じか若干小さく設定されている。上端側フランジ部32には、図1及び図2から分かるように燃料ベーパーVを大気中に放出するための複数の切欠き部32aが外周側に設けられている。下端側フランジ部33には、ベントチューブの出口側端部2aに干渉しないようにする切欠き部33b、及び2箇所の小さな切欠き部33aがそれぞれ外周に設けられている。
【0023】
各台座部35は、外周をほぼ平坦面に設定し、そこに筒長手方向に延びる縦型のガイド溝36と、ガイド溝36の上側に接続されて筒周囲方向に延びるが横型のロック溝37とが設けられている。ガイド溝36及びロック溝37は、図2及び図5(b)に示されるごとく下端側フランジ部33から各台座部35の肉厚内に設けられた空洞38の存在により溝形成部分が弾性変位可能となっている。
【0024】
各台座部のガイド溝36は、上記した一対の突起14に対応した間隔に設けられ、かつ、突起14と余裕を持って嵌合する溝幅に設定されている。また、各ガイド溝36は、下端側フランジ部33にも連続して設けられているとともに、溝底面のうちフランジ部33から離れた側に仮止め用窪み部36aを形成している。ロック溝37は、ガイド溝36の一端に接続されて突起14と圧接されるように設定されているとともに、溝底面を一段深くした係合穴37aを形成しており、突起14がその係合穴37aに係止可能となっている。なお、係合穴37aは省いてもよく、その場合には突起14がロック溝37に弾性的に係合される。
【0025】
(組込み操作)以上のガイド装置3は次のような要領にて給油口側筒部10にワンタッチ操作により組込まれる。すなわち、ガイド装置3は、筒部10に対して、図2のごとく筒部内の各突起14の突出箇所に対応してガイド溝36の下端を位置させ、そのまま筒部10内に挿入される。すると、ガイド装置3は、各翼部34が内周面に当たって上方に向けて弾性歪曲しつつ挿通されるが、その際は図3に示されるごとく各突起14が対応するガイド溝36内を相対的に動いて仮止め用窪み部36aにクリック音を発して係合し、同時に、各翼部34が内周面に圧接した状態で抜止めがなされる。これらによって、ガイド装置3は目視確認を行うことなく、筒部10内の正しい位置に仮止めされる。
【0026】
次に、ガイド装置3は、その仮止め停止位置から、図3の矢印に示すように、筒部10に対して相対的に周方向へ回転操作されることにより、各突起14がロック溝36に入って弾性的に係合(この例では更に各突起14がロック溝36の一段深くなった係合穴36aと係合)し、これによって周廻り方向の位置固定、及び引き抜き方向も強固に固定される。このため、この取付構造では特に耐衝撃性に優れたものとなる。
【0027】
また、以上のガイド装置3では、各ロック溝36が対応する突起14に係合した取付状態において、本体30がベントチューブ2の出口側端部2aと隙間を保って対向する対向部分30a、及び出口側端部2aより筒部奥側に挿入された下端側フランジ部33を有し、また、導入部31が間隔34aを保って設けられた複数の翼部34からなることから、ベントチューブ2から上昇される燃料ペーパVを対向部分30aとの間に形成された隙間から、翼部34同士の間の間隔34aを通って筒部10の外へ流れ易くし、それにより燃料ペーパを筒部10の奥側つまりフィラーパイプ11の燃料供給通路内に導入され難くすることができる。
【0028】
なお、本発明のガイド装置は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は形態例を参考にして変更したり展開可能なものである。その一例としては、上記形態例では本体30の外周の180°対向位置にガイド溝36及びこれの頂部に連通するロック溝37を形成したが、これらを120°間隔で3つ、或いはそれ以上形成するとともに、突起14もそれに対応した個数にすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・フィラーパイプ(10は給油口側筒部、14は突起)
2・・・ベントチューブ(2aは出口側端部)
3・・・ガイド装置(30は本体、31は導入部)
32・・・上端側のフランジ部(32aは切欠き部)
33・・・下端側のフランジ部(33a,33bは切欠き部)
34・・・翼部(34aは間隔)
35・・・台座部
36・・・ガイド溝(36aは仮止め用窪み部)
37・・・ロック溝(37aは係合穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口を構成する筒部の内側に固定されて、給油ノズルを前記給油口側筒部からフィラーパイプ内へ挿入する際の案内となる給油ノズル用ガイド装置において、
前記ガイド装置は、前記筒部の奥側に配置される略筒状の本体、及び前記本体の一端側に設けられて前記給油ノズルをセンタリング可能な導入部とからなるとともに、前記本体が外周の筒長手方向に設けられたガイド溝と、前記ガイド溝から筒周囲方向に設けられたロック溝とを備えており、
前記筒部の内面に設けられた突起に前記ガイド溝を嵌合した状態で前記筒部内に挿入され、かつ、回転されると前記突起に前記ロック溝を係合して前記筒部に装着可能となっていることを特徴とする給油ノズル用ガイド装置。
【請求項2】
前記ガイド溝と前記ロック溝との接続付近に設けられて、前記ガイド装置を前記筒部内に挿入したときに前記突起と着脱自在に係合する仮止め用窪み部を有していることを特徴とする請求項1に記載の給油ノズル用ガイド装置。
【請求項3】
前記ガイド溝及びロック溝を前記本体の2箇所以上に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の給油ノズル用ガイド装置。
【請求項4】
前記本体は、前記ロック溝が前記突起に係合した状態で、前記筒部に接続されたベントチューブの開口と隙間を保って対向する対向部分、及び前記ベントチューブの開口より筒部奥側に挿入される下側周囲に突設されたフランジ部を有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の給油ノズル用ガイド装置。
【請求項5】
前記導入部は、間隔を保って設けられた複数の翼部により構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の給油ノズル用ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−183887(P2012−183887A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47560(P2011−47560)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】