説明

給湯システム

【課題】湯水混合ユニットが故障などを生じた場合であっても、給湯を好適に行なうことが可能な利便性に優れた給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システムAのリモコン3Aは、湯水混合ユニット2の通信接続が正常であるか否かを判断する制御部30Aを備えており、この制御部30Aは、前記通信接続は正常でないと判断したときに、湯水混合ユニット2の代替として、予め定められた出湯温度の指示データを給湯機1に送信する出湯温度指示手段として機能する。好ましくは、制御部30Aは、給湯機1に設定されている出湯温度のデータを参照し、かつこのデータが所定温度を超えているときに、そのデータを前記所定温度以下に下げるように前記指示データを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機から出湯される湯を、台所、浴室、洗面所などの複数の給湯先に対して異なる温度で同時に供給できるようにするための湯水混合ユニットを備えている給湯システム、さらに詳しくは、湯水混合ユニットが故障した場合に好適に対処することが可能とされた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の給湯システムの具体例としては、特許文献1,2に記載されたものがある。この給湯システムは、給湯機と、この給湯機から出湯した湯に水を混合させてその温度調整を行なう複数の湯水混合弁を有する湯水混合ユニットとを備えている。前記複数の湯水混合弁によって所望の温度に調整された湯は、たとえば台所、浴室、洗面所などの複数の給湯先に送られるようになっている。また、前記給湯機には、リモコンが通信線を介して接続されており、このリモコンは、台所、浴室、洗面所などの給湯先ごとの目標出湯温度を設定できるようになっている。
【0003】
このような構成の給湯システムによれば、給湯機から湯水混合ユニットに湯が供給された際に、複数の湯水混合弁を利用して異なる温度の湯を生成することが可能である。したがって、台所、浴室、洗面所などの複数の給湯先に対して、リモコンで設定されている目標出湯温度の湯を同時に供給することができる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、前記給湯システムを実際に使用している場合、種々の事情により、湯水混合ユニットが故障する場合がある。また、湯水混合ユニットそのものが故障を生じていなくても、給湯機と湯水混合ユニットとの通信状態に異常が発生する場合もある。これに対し、前記従来技術においては、そのような事態が発生した場合に好適に対処するための手段は、講じられていない。このため、従来の給湯システムでは、湯水混合ユニットに故障などが発生したときには、給湯機が正常であるにも拘わらず、その時点で給湯システム全体の運転を停止せざるを得ない。ところが、このように給湯システム全体の運転を停止させたのでは、ユーザは湯を全く使用することができないこととなり、不便を生じる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−270868号公報
【特許文献2】特開2003−83603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、湯水混合ユニットが故障などを生じた場合であっても、給湯を好適に行なうことが可能な利便性に優れた給湯システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される給湯システムは、出湯温度を変更可能な給湯機と、前記給湯機から出湯した湯に水を混合させてその温度調整を行なうための複数の湯水混合手段を有する湯水混合ユニットと、複数の給湯先のそれぞれに対応させて目標給湯温度を設定可能であり、かつ前記給湯機との間でデータ通信が可能なリモコンと、を備えており、前記湯水混合ユニットは、前記給湯機との間でデータ通信を行なう機能を有しているとともに、前記リモコンで設定された複数の目標給湯温度のデータに基づいて前記給湯機に出湯温度の指示データを送信可能とされている給湯システムであって、前記リモコンおよび前記給湯機の少なくとも一方は、前記湯水混合ユニットの通信接続が正常であるか否かを判断する判断手段を備えており、前記リモコンは、前記判断手段が前記通信接続は正常でないと判断したときに、前記湯水混合ユニットの代替として、予め定められた出湯温度の指示データを前記給湯機に送信する出湯温度指示手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
【0011】
まず、湯水混合ユニットに故障などが生じておらず、この湯水混合ユニットと給湯機との間で適切な通信がなされている場合、給湯システムでは通常運転がなされる。この通常運転時においては、湯水混合ユニットが給湯機に対して出湯温度の指示データを送信し、給湯機からはそれに対応した温度の湯が出湯され、この湯が湯水混合ユニットの各湯水混合手段によって所望の温度に調整されてから給湯先に送られることとなる。これに対し、湯水混合ユニットに故障などが発生し、前記判断手段が湯水混合ユニットの通信接続は正常でないと判断したときには、給湯システムはいわゆる応急運転状態となる。この応急運転時には、湯水混合ユニットから給湯機に対して出湯温度の指示データが送信されないこととなるが、リモコンに具備されている出湯温度指示手段は、前記湯水混合ユニットの代わりに、予め定められている出湯温度の指示データを給湯機に送信する。したがって、給湯機を適切に運転させて、所望の給湯先に湯を供給することができる。湯水混合ユニットが故障などを生じた場合、給湯機から出湯した湯を湯水混合ユニットによって適切に温度調整することができない虞れがあるものの、前記出湯温度指示手段から給湯機に送信される出湯温度の内容をたとえば40〜42°C程度にすれば、台所や浴室などにおいて湯が高温過ぎて使用できないといったことはない。このように、本発明によれば、湯水混合ユニットに故障などを生じても、給湯機を有効に利用して給湯を行なわせることができ、ユーザにとって甚だ便利である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記リモコンの出湯温度指示手段は、前記判断手段が前記通信接続は正常でないと判断した場合、前記給湯機に設定されている出湯温度のデータを参照し、かつこのデータが所定温度を超えているときには、そのデータを前記所定温度以下に下げるように前記指示データを出力する構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、湯水混合ユニットが故障などを生じていわゆる応急運転となった場合、所定温度よりも高温の湯が給湯機から出湯しないようにすることができる。また、応急運転に切り換わる前に、既に湯水混合ユニットから給湯機に対して指示されていた出湯温度が、所定温度よりも低い場合には、先に指示されていた出湯温度のままとされる。したがって、応急運転開始前よりも開始後の方が、給湯温度が高くなるといったことはなく、給湯先に高温の湯が供給される虞れがより徹底して防止される。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明が適用された給湯システムの一実施形態を示している。本実施形態の給湯システムAは、給湯機1、湯水混合ユニット2、および複数のリモコン3(3A〜3C)を備えている。
【0017】
給湯機1は、たとえばガス燃焼式の給湯機であり、その基本的なハード構成は、従来既知のものと同様である。具体的には、この給湯機1は、缶体11内に送風ブロア16から燃焼用空気を送り込みながら、燃焼器12により燃料ガスを燃焼させるようになっている。この燃焼器12の上方には、水管13を有する熱交換器14が設けられている。水管13の入水口13aには、水道管などの給水管40Aが接続されている。熱交換器14を通過することにより得られた湯は、水管13の出湯口13bから出湯し、配管41を介して湯水混合ユニット2の給湯口21aに供給されるようになっている。
【0018】
給湯機1は、制御部10を備えている。この制御部10は、CPUやこれに付属する各種のメモリを具備して構成されており、また湯水混合ユニット2やリモコン3との通信を行なうための通信回路(図示略)も具備している。この制御部10は、出湯口13bから出湯する湯の温度制御を実行する。この制御は、燃焼器12に供給される燃料ガス量の調整、あるいは熱交換器14を通過した湯に水を混合させるバイパス経路13cに設けられている流量調整弁15の開度を調整するなどして行なわれる。この給湯機1は、後述する複数の給湯栓6A〜6Cのいずれかが開状態とされることにより水管13内に水流が生じ、かつその流量が予め定められた閾値を超えると、燃焼器12などが駆動されるようになっている。また、前記流量が閾値以下に減少すると、燃焼器12などの駆動が停止されるようになっており、このような制御も制御部10が担当している。給湯機1が運転される際の制御部10のより詳細な制御内容については、後述する。
【0019】
複数のリモコン3としては、たとえば台所に設置されるメインのリモコン3Aと、浴室や洗面所に設置されるサブのリモコン3B,3Cとがある。これらのリモコン3は、目標給湯温度や給湯流量などの種々のデータを入力設定するための操作スイッチ32A〜32C、データ表示を行なうための表示部31A〜31C、および各種の信号処理などを実行する制御部30A〜30Cを備えている。制御部30A〜30Cは、給湯機1の制御部10と同様に、CPUやこれに付属する各種のメモリを具備して構成されており、また図1に示すように、給湯機1の制御部10との間で通信線50を介して通信を行なう通信回路も具備している。通信線50には、給湯機1から各リモコン3に対して駆動電力を供給すべく直流電圧印加がなされており、前記データ通信方式としては、AM変調波が重畳されて伝送される重畳2芯方式が用いられている。各リモコン3において目標給湯温度などのデータが入力設定されると、このデータは、湯水混合ユニット2の後述する制御部20に送信される。
【0020】
ただし、サブのリモコン3B,3Cは、それらが設置されている浴室または洗面所についての給湯に関するデータを設定し得るに過ぎないのに対し、メインのリモコン3Aにおいては、サブのリモコン3B,3Cで設定されたデータ内容を取り込んで記憶可能である。また、メインのリモコン3Aでは、台所、浴室、洗面所のいずれの給湯先についても目標給湯温度などのデータを入力設定可能となっている。制御部30A〜30Cのうち、少なくとも制御部30Aは、給湯機1と湯水混合ユニット2との間で実行される通信状況を監視し、かつその通信接続状態が正常であるか否かの判断を行なうとともに、正常ではないと判断したときには、給湯機1の制御部10に対して出湯温度の指示データを送信するように構成されている。その具体的な内容については、後述する。この制御部30Aは、本発明でいう判断手段、および出湯温度指示手段の具体例に相当している。
【0021】
湯水混合ユニット2は、給湯口21aを有する湯用の配管21A、水道管などの給水管40Bが接続された入水口21bを有する水用の配管21B、これらの配管21A,21Bに流れる湯と水を所定の比率で混合させて所望温度の湯を生成するための複数の湯水混合弁23(23A〜23C)、およびこれら複数の湯水混合弁23の駆動制御を行なう制御部20を備えている。複数の湯水混合弁23の下流側には、複数の配管24A〜24Cが接続されており、それらの終端の接続口24a〜24cには外部配管60A〜60Cが接続されている。これら外部配管60A〜60Cの終端には、台所、浴室、洗面所に配される複数の給湯栓6A〜6Cが取り付けられている。配管24Cは、2つの接続口24cを有するように分岐しているが、このような構成によれば、たとえば家屋の1階および2階のそれぞれの洗面所への給湯が可能となる。
【0022】
図2を参照して湯水混合ユニット2の構造をさらに詳述する。各湯水混合弁23の入湯・入水用の上流口には、配管21A,21Bの終端またはそれらの分岐配管が接続されている。各湯水混合弁23は、たとえば電動モータMの駆動によって弁本体23aを動作させることにより、湯と水の混合割合を変更自在である。配管21A,21Bのうち、各湯水混合弁23よりも上流側には、一対の開閉弁22A,22B、入湯温度ならびに入水温度を検出するための一対の温度センサ70A,70B、および各湯水混合弁23からの逆流を防止する複数の逆止弁71が設けられている。各湯水混合弁23の下流側に接続された配管24A〜24Cには、各湯水混合弁23から流出した湯の温度を検出するための温度センサ71、各湯水混合弁23から流出する湯量の最大量を制限するための過流出防止弁72、および流量センサ73が設けられている。前記した各種センサから出力される信号は、制御部20に送信され、また前記した各種の弁(逆止弁71を除く)は、制御部20により駆動制御される。
【0023】
制御部20は、先に述べた制御部10,30A〜30Cと同様なハード構成であり、図1に示すように、給湯機1の制御部10との間で通信線51を介して通信を行なう通信回路(図示略)も具備している。この通信方式も、先に述べたのと同様な重畳2芯方式である。ただし、湯水混合ユニット2には、たとえば商用電源から電力供給が行なわれるようになっており、通信線51を利用した電力供給は行なわれない。制御部20は、給湯機1と各リモコン3との間で実行される通信を監視しており、リモコン3Aにおいて目標給湯温度などのデータが入力設定されると、そのデータを取り込んで記憶するようになっている。また、制御部20は、前記データに基づいて給湯機1の出湯温度を決定し、この出湯温度のデータを指示データとして給湯機1の制御部10に送信するように構成されている。給湯機1から湯水混合ユニット2に湯が供給されてくると、制御部20は、給湯先のリモコン3で設定されている目標給湯温度の湯がその給湯先に送られるように、給湯先に対応する湯水混合弁23を制御するようになっている。
【0024】
次に、前記した給湯システムAの作用、ならびにリモコン3Aの制御部30Aの動作処理手順の一例について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
まず、リモコン3Aに電力が供給されて起動すると、制御部30Aは、給湯機1や湯水混合ユニット2間において適正な通信が実行されているか否かの監視を始める(S1)。給湯機1および湯水混合ユニット2は、その起動後には一定手順の通信を実行し合うようにプログラミングされており、制御部30Aは、その通信状況を監視するようになっている。制御部30Aには、給湯機1と湯水混合ユニット2との間で実行される通信手順のデータが予め記憶されており、制御部30Aは、そのデータと実際の通信状況とを比較することにより、給湯機1と湯水混合ユニット2とが適切に通信接続されているか否かを判断するようになっている。
【0026】
制御部30Aが、起動後の適当な時間内に湯水混合ユニット2の通信接続がなされている旨を認識できない場合、それらの少なくとも一方が故障していると考えられる。したがって、この場合には、制御部30Aはリモコン3Aの表示部31Aに適当な文字や図形を表示させたり、あるいは音声やアラーム音を発生させるなどして、湯水混合ユニット2が異常である旨をユーザに報知させる制御を実行する(S2:NO,S12)。他のリモコン3B,3Cにそれと同様な報知動作を行なわせるようにしてもよい。また、前記したような異常が発生している際には、仮に給湯栓6A〜6Cのいずれかが開状態とされても、給湯機1の制御部10は、燃焼器12などを駆動させないようになっており、給湯機1の運転は停止されたままである。なお、給湯機1の制御部10も、リモコン3Aの制御部30Aと同様に、湯水混合ユニット2が適切に通信接続されているか否かを判断する機能を有している。したがって、この制御部10も、本発明でいう判断手段の具体例に相当する。ただし、本発明では、2つの制御部30A,10のそれぞれが前記した通信接続の判断機能を有していなくてもよく、たとえばそれらのうちのいずれか一方のみが前記した判断機能を有し、その判断結果を他方に通知する構成としてもかまわない。
【0027】
前記とは異なり、起動後の所定時間内に湯水混合ユニット2の通信接続が認識された場合(S2:YES)、制御部30Aは、通常運転モードとなる。このモードでは、制御部30Aは、給湯機1との間において目標給湯温度などの所定データの送受信を行なう(S3)。湯水混合ユニット2の制御部20は、既述したとおり、前記の目標給湯温度などのデータを取り込んで記憶し、給湯栓6A〜6Cのいずれかに給湯が開始されるときには、前記データに基づいて給湯機1の出湯温度T1を決定し、かつ給湯機1の制御部10に対してはその出湯温度T1で出湯を行なうべき旨を指令する。給湯機1は、その指令にしたがった出湯を行ない、出湯口13bから湯水混合ユニット2に送られた湯は、湯水混合弁23によって目標給湯温度に調整されてから所定の給湯先に供給される。
【0028】
制御部30Aは、湯水混合ユニット2の通信状況をその後も継続して監視しており、その通信接続が正常であるか否かを判断している(S4)。前記通信接続が正常であると判断されれば、前記した通常運転モードは維持される。これに対し、前記通信接続は正常でないと判断した場合、制御部30Aは、応急運転モードに移行する(S6)。通信接続が正常でない旨の判断は、給湯機1と湯水混合ユニット2との間の通信途絶状態が予め設定された時間にわたって継続した場合になされる。制御部30Aは、応急運転モードになると、まずその旨をリモコン3Aにおいて画面表示または音声発生などにより報知させる(S7)。他のリモコン3B,3Cにも前記の旨の報知を行なわせてもよいことはステップS12の場合と同様である。
【0029】
次いで、制御部30Aは、先の通常運転モードの際に給湯機1の制御部10に設定されていた出湯温度T1のデータを読み出し、かつこの出湯温度T1が制御部30Aに予め設定されている温度T2を超えているか否かを判断する(S8,S9)。そして、出湯温度T1が所定の温度T2を超えている場合には、制御部30Aは、温度T2のデータを出湯温度の指示データとして給湯機1の制御部10に送信する(S9:YES,S10)。好ましくは、温度T2の値は、たとえばユーザがリモコン3Aのスイッチ操作などを行なうことにより変更できるように構成されている。温度T2は、たとえば40°Cであり、制御部10はこの温度T2のデータを記憶することとなる。制御部10は、その後給湯機1において出湯がなされるときに、出湯口13bから温度T2の湯を出湯させる制御を行なう。
【0030】
前記した制御がなされると、応急運転モードに切り換わる直前には、給湯機1の出湯温度がたとえば50〜80°C程度の高温であった場合でも、湯水混合ユニット2が故障した応急運転モードになると、その出湯温度はたとえば40°Cに下げられることとなる。湯水混合ユニット2が故障した状況では、複数の湯水混合弁23の全部または一部が湯側全開・水側全閉、あるいはこれに近い状態で固定されたままになる可能性があるものの、給湯機1の出湯温度が前記したようにたとえば40°Cにされると、台所やその他の給湯先においてその湯が高温過ぎて使用できないといった不具合はない。
【0031】
一方、温度T1が温度T2以下の場合には、制御部30Aは、給湯機1に設定されている出湯温度の指示データを温度T2に変更する制御は実行しない(S9:NO)。したがって、応急運転モードに切り換わる直前の出湯温度がたとえば36〜39°C程度に設定されていた場合に、そのデータがたとえば40°Cに引き上げられることはない。応急運転モードになった際に、通常運転モード時よりも給湯温度が高くなることも適切に回避される。
【0032】
前記したように、この給湯システムAによれば、使用途中において湯水混合ユニット2が故障するなどの異常を生じても、このことによってシステム全体の運転は停止されず、給湯機1の有効利用を図り、所望の給湯先に湯を好適に供給することが可能である。また、その際には、給湯機1からの出湯温度が予め設定された温度とされ、ユーザにとって温度が高すぎる湯が供給される虞れも適切に回避される。とくに、応急運転に切り換わった際に、それ以前の通常運転時よりも給湯温度が高くなることも適切に回避されるために、ユーザにとって温度が高過ぎる湯が供給されることを、より徹底して防止することができる。
【0033】
上述した実施形態においては、湯水混合ユニット2が故障するなどしてその通信接続が異常となった場合を主に説明しているが、この給湯システムAは、各部が故障などを生じておらず、適切に運転される場合には、たとえば図4〜図8に示すような制御がなされるように構成されている。
【0034】
図4に示すフローチャートは、湯水混合ユニット2の制御部20の動作処理手順の例を示している。制御部20は、給湯栓6A〜6Cのいずれかが開かれて給湯が開始された際には(S20:YES)、その給湯先が予め設定されている優先給湯先であるか否かを判断するように構成されている(S21)。優先給湯先の設定は、たとえばリモコン3を利用して行なわれている。制御部20は、前記給湯先が優先給湯先であると判断した場合には、その優先給湯先に対する湯の供給量が予め定められた最大設定量に達しているか否かを判断する(S21:YES,S22)。前記湯の供給量が最大設定量に達している場合(S22:YES)、制御部20は供給湯量についての特別な制御を行なうことはない。ところが、前記とは異なり、前記湯の供給量が最大設定量に達していない場合には(S22:NO)、制御部20は他の給湯先にも湯が供給されているか否かを判断する(S24)。そして、他の給湯先にも湯が供給されている場合には、制御部20は前記他の給湯先への湯の供給量を減少させる制御を実行する(S24:YES,S25)。湯の供給量の減少は、過流出防止弁72を駆動させることにより行なうことができる。
【0035】
前記した構成によれば、複数の給湯先に湯が同時供給される場合に、優先給湯先への供給湯量が確保されることとなる。たとえば、シャワーを優先給湯先に設定して使用している場合に、これと同時に他の給湯先で湯が使用されても、前記シャワーの湯量には不足を生じない。
【0036】
図5は、リモコン3Aの制御部30Aが実行する動作処理手順の例を示している。ただし、図5に示す制御がなされる前提として、各リモコン3には、ユーザが操作スイッチ32A〜32Cを操作することによって、複数の給湯栓6A〜6Cのいずれを優先給湯先にするのかを時間を指定して入力設定できるように構成されている。具体例を挙げると、各リモコン3では、午前6時から午後5時までの時間帯は、台所の給湯栓6Aを優先給湯先とし、かつそれ以外の時間帯は、浴室の給湯栓6Bを優先給湯先にするといった設定が可能となっている。好ましくは、そのような時間指定は、たとえば日付によっても変更可能とされ、たとえば冬季と夏季とでは、優先給湯先の切り換え時刻を相違させることができるようになっている。制御部30Aは、そのような設定に対応する制御を実行し得るように、現時刻および日付を判断可能な機能を備えている。
【0037】
制御部30Aは、その起動時には、この制御部30Aにおいて優先給湯先を自動変更するための設定がなされているか否かを判断するように構成されている(S30)。前記設定がなされている場合、制御部30Aは、現時刻および日付を判断してから、その時刻および日付に対応して設定されている給湯先を判別し、この給湯先を優先給湯先に設定する(S30:YES,S31,S32)。制御部30Aは、前記した制御を適当な時間間隔で繰り返し実行するようになっている(S33:NO,S31〜S33)。
【0038】
前記した構成によれば、予め設定された時間帯になると、制御部30Aがその時間帯に対応した優先給湯先を判断し、その給湯先を優先給湯先に設定変更することとなる。したがって、ユーザが優先給湯先を変更するためのスイッチ操作を逐一行なう必要がなくなり便利となる。また、時刻だけではなく、日付をも参照する構成によれば、優先給湯先の切り換えがきめ細かく行なうことができるためにより便利となる。
【0039】
図6は、リモコン3の制御部30A〜30Cの動作処理手順の例を示している。まず、これらの制御部30A〜30Cは、給湯栓6A〜6Cのうち、所定時間以上継続して湯が供給されていない不使用の給湯栓があれば、その旨を判断できるように構成されている(S40)。この判断は、湯水混合ユニット2の制御部20からの給湯に関する通信内容などに基づいて行なう。制御部30A〜30Cは、所定時間以上不使用の給湯栓があると判断した場合、その給湯栓に対応するリモコン3については省電力モードとする(S41)。この省電力モードは、たとえば表示部31A〜31Cの表示点灯をオフにするなどして、電力消費量を抑制するモードである。次いで、制御部30A〜30Cは、その後給湯が開始された場合には、その給湯先のリモコン3のみを省電力モードから通常のモードに復帰させる制御を行なう(S42:YES,S43:YES,S44)。なお、前記省電力モードから通常モードに復帰させる条件としては、給湯機1の制御部10から燃焼運転中である旨の通信をリモコン3の制御部が受信し、かつ湯水混合ユニット2の制御部20から対応する給湯先への通水がある旨の通信を受けた場合とすることもできる。
【0040】
このような構成によれば、たとえば給湯栓6A〜6Cのいずれに対しても一定時間以上にわたって湯が供給されず、リモコン3A〜3Cの全てが省電力モードに設定されている際に、湯の供給が開始されると、その給湯先の特定のリモコン3のみが省電力モードを解除することとなる。したがって、そのリモコン3を適切に使用することができる。一方、他のリモコン3は、省電力モードのまま維持される。したがって、給湯システムAの省電力化を徹底することができる。
【0041】
図7は、制御部20の動作処理手順の例を示している。制御部20は、この給湯システムAにおいて給湯開始があると(S50;YES)、その給湯先を判断し、かつその給湯継続時間を計測するためのタイマをオン設定にするように構成されている(S51)。タイマの設定は、給湯先ごとに個別に行なうようになっている。制御部20は、その後前記の給湯が終了すると、前記タイマをオフとする(S52:YES,S55)。ただし、前記の場合とは異なり、前記タイマによる計測時間が予め設定された時間に達すると、給湯機1の制御部10に出湯の停止を指示するなどして給湯システムAの運転を強制的に終了させる(S54)。
【0042】
このような構成によれば、1つの給湯先に対する給湯が、予め設定された時間(たとえば1時間)にわたって連続してなされると、給湯システムAの運転が強制的に終了する。たとえば、洗面所への給湯が1時間も連続して行なわれた場合には、洗面所の給湯栓6Cを閉め忘れているなどの何らかの異変が発生していると考えられるが、このような場合には給湯システムAの運転が強制的に終了し、前記異変に好適に対処可能である。とくに、前記制御では、給湯先ごとにタイマ設定がなされ、同一の給湯先についての給湯が所定時間継続した場合にのみ給湯システムAの運転が終了するために、給湯先が順次切り換えられた結果、トータルの給湯時間がたとえば1時間となっても、給湯システムAの運転は終了されない。たとえば、台所への給湯途中で浴室への給湯も開始された結果、それらトータルの給湯時間が1時間に達する場合があるが、このような湯の使用状況は異常とはいえない。前記制御によれば、そのように異常とはいえない場合には、給湯システムAの運転が強制的に終了されないようにすることができる。給湯機1の制御部10には、複数の給湯先のいずれに給湯が行なわれているかの判断機能が具備されていない。給湯機1を制御するための従来の手法としては、給湯機1が連続して一定時間以上燃焼運転されたときには安全を考慮してその運転を停止させるという制御手法があるが、この従来の手法では、個々の給湯先での湯の使用がラップするなどして給湯機1における給湯運転が一定以上連続するような場合、すなわち本来、異常とは言えないような場合にまで給湯機1の運転が停止される不具合を生じる。これに対し、前記構成によれば、そのような不具合を適切に解消することができる。
【0043】
図8は、給湯システム全体の制御内容を示している。この制御では、まずリモコン3A〜3Cのいずれかにおいて、給湯機1の運転をオフする旨のスイッチ操作がなされると、制御部10,20の少なくとも一方は、その時点においてシャワー給湯がなされているか否かを判断する(S60:YES,S61)。図1においては、浴室に設置される給湯栓6Bが1つしか示されていないが、好ましくは、配管60Bはシャワー用の配管と浴槽用の配管とに分岐しており、かつシャワー用の配管には流量センサまたは水流センサが設けられている。このセンサからの検出信号に基づいてシャワー給湯がなされているか否かを判断可能である。もちろん、このようにシャワーと浴槽とを区別することなく、給湯栓6Bに対応する流量センサ73によって流量検出がなされているときには、シャワーが使用されていると見做すようにしてもかまわない。
【0044】
前記判断の結果、シャワー給湯がなされていれば、その後制御部10,20の少なくとも一方は、前記した給湯機1の運転をオフとする操作が浴室に設置されたリモコン3Bによって行なわれたか否かを判断する(S61,S62)。そして、そうであれば、前記操作を有効として、給湯機1の運転を停止させる(S62:YES,S64,S65)。これに対し、他のリモコン3A,3Cによって前記操作がなされていた場合には、前記操作を無効とし、給湯機1の運転を継続させる(S62:NO,S63)。
【0045】
前記した構成によれば、ユーザがシャワーを使用している最中に、他者がリモコン3A,3Cを操作して給湯機1の運転をオフにしようとしても、この操作は無効とされ、給湯機1の運転は停止されない。したがって、シャワー使用時に、シャワーの湯が冷たい水に突然切り換わることが適切に防止される。一方、浴室に設置されたリモコン3Bを操作すれば、シャワー給湯中であっても給湯機1の運転を適切に停止させることが可能であるため、給湯機1の運転停止に苦慮するといった不具合もない。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る給湯システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0047】
給湯機としては、ガス燃焼式に代えて、オイル燃焼式のものなどを用いることができることは勿論のこと、給湯機の種類は、瞬間式のものに限定されない。たとえば、ヒートポンプや太陽光などを利用して湯を生成して貯湯タンクに貯留し、必要に応じてその排出を行なう貯湯式の給湯機を用いることもできる。
【0048】
湯水混合ユニットの湯水混合手段としては、前記した湯水混合弁23とは異なる構造の湯水混合手段を用いることが可能である。この湯水混合手段は、複数設けられていればよく、その具体的な数も限定されない。リモコンとしては、本発明が意図する機能をもつものが少なくとも1つ具備されていればよく、サブのリモコン3B,3Cに相当するリモコンは具備しなくてもよい。給湯機とリモコンとの間、および給湯機と湯水混合ユニットとの間などの通信方式は、重畳2芯方式に限定されず、たとえばワイヤレス通信方式(赤外線通信などの光通信を含む)などの他の通信方式にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る給湯システムの一例を示す説明図である。
【図2】図1に示す給湯システムに用いられている湯水混合ユニットの説明図である。
【図3】図1に示す給湯システムに用いられているリモコンの制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る給湯システムで実行される制御の例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る給湯システムで実行される制御の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る給湯システムで実行される制御の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る給湯システムで実行される制御の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る給湯システムで実行される制御の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
A 給湯システム
1 給湯機
2 湯水混合ユニット
3(3A〜3C) リモコン
6A〜6C 給湯栓
10 制御部(判断手段)
23 湯水混合弁(湯水混合手段)
30A 制御部(判断手段、出湯温度指示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出湯温度を変更可能な給湯機と、
前記給湯機から出湯した湯に水を混合させてその温度調整を行なうための複数の湯水混合手段を有する湯水混合ユニットと、
複数の給湯先のそれぞれに対応させて目標給湯温度を設定可能であり、かつ前記給湯機との間でデータ通信が可能なリモコンと、を備えており、
前記湯水混合ユニットは、前記給湯機との間でデータ通信を行なう機能を有しているとともに、前記リモコンで設定された複数の目標給湯温度のデータに基づいて前記給湯機に出湯温度の指示データを送信可能とされている、給湯システムであって、
前記リモコンおよび前記給湯機の少なくとも一方は、前記湯水混合ユニットの通信接続が正常であるか否かを判断する判断手段を備えており、
前記リモコンは、前記判断手段が前記通信接続は正常でないと判断したときに、前記湯水混合ユニットの代替として、予め定められた出湯温度の指示データを前記給湯機に送信する出湯温度指示手段を備えていることを特徴とする、給湯システム。
【請求項2】
前記リモコンの出湯温度指示手段は、前記判断手段が前記通信接続は正常でないと判断した場合、前記給湯機に設定されている出湯温度のデータを参照し、かつこのデータが所定温度を超えているときには、そのデータを前記所定温度以下に下げるように前記指示データを出力する構成とされている、請求項1に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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