説明

給湯システム

【課題】貯湯タンク内の湯を定期的に沸き上げる設定がなされていない場合であっても、貯湯タンクから雑菌を多く含む湯が供給されることを防止することができる給湯システムを提供する。
【解決手段】タンクコントローラ50は、貯湯サーミスタ42の検出温度が再加熱判定温度以下である状態が再加熱判定時間以上継続したときに、ヒートポンプユニット60により貯湯タンク31内の湯を加熱して滅菌処理を行い、貯湯サーミスタ42の検出温度が貯湯使用禁止判定温度以下である状態が貯湯使用禁止判定時間以上継続したときに、湯量可変弁34を閉弁状態に維持して加熱温調制御のみを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクユニットの下流側に、瞬間加熱式の給湯器を直列に接続した給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプにより加熱する貯湯タンクユニットの下流側に、瞬間加熱式のガス給湯器を直列に接続した給湯システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、貯湯タンク内に貯めた湯を用いて給湯を行う場合、貯湯タンク内の湯の温度が低下した状態が継続したときに、貯湯タンク内の湯中にレジオネラ菌等の雑菌が繁殖し易い状況となる。そのため、貯湯タンク内の湯を深夜時間帯に高温まで沸き上げて湯を滅菌し、雑菌を含む不衛生な湯が供給されることを防止した給湯システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、給湯システムの時刻設定がなされていない場合や、貯湯タンク内の湯を高温まで沸き上げる設定がなされていない場合には、貯湯タンク内の湯水中の雑菌の増殖が進んで、給湯システムから雑菌を多く含む湯水が供給されてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−329401号公報
【特許文献2】特開2003−130452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、貯湯タンク内の湯を定期的に沸き上げる設定がなされていない場合であっても、貯湯タンクから雑菌を多く含む湯が供給されることを防止することができる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、貯湯タンクと、前記貯湯タンクに接続された出湯管と、前記貯湯タンク及び前記出湯管と接続された給水管と、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記給水管への通水を検出する通水センサと、前記出湯管の前記貯湯タンクとの接続部と前記給水管との接続部間に設けられて、前記出湯管の開度を変更する湯量可変弁と、前記給水管の前記貯湯タンクとの接続部と前記出湯管との接続部間に設けられて、前記給水管の開度を変更する水量可変弁と、前記貯湯タンク内の湯水の温度を検出する貯湯温度センサと、前記出湯管と前記給水管との接続部の下流側で前記出湯管の途中に設けられ、前記出湯管を流通する湯水を加熱する給湯器と、目標給湯温度を設定する給湯温度設定手段と、前記通水センサにより通水が検出され、且つ、前記貯湯温度センサの検出温度が前記目標給湯温度に応じて設定された湯切れ判定温度よりも高いときは、前記給湯器による加熱を禁止して、前記出湯管から前記目標給湯温度の湯が供給されるように、前記湯量可変弁と水量可変弁により前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯と前記給水管から前記出湯管に供給される水との混合比を調節する混合温調制御を実行し、前記通水センサにより通水が検出され、且つ、前記貯湯温度センサの検出温度が前記湯切れ判定温度以下であるときには、前記出湯管から前記目標給湯温度の湯が供給されるように、前記給湯器による加熱を行う加熱温調制御を実行する温調制御手段とを備えた給湯システムに関する。
【0008】
そして、前記貯湯温度センサの検出温度が、前記貯湯タンク内の湯で雑菌の繁殖が進む温度を想定して設定された再加熱判定温度以下である状態が所定の再加熱判定時間以上継続したときに、前記加熱手段により、前記貯湯タンク内の湯を雑菌が死滅する温度を想定して設定された滅菌温度以上に加熱する滅菌処理を実行する滅菌処理手段を備え、前記温調制御手段は、前記貯湯タンクの検出温度が、前記再加熱判定温度以下に設定された貯湯使用禁止判定温度以下である状態が、前記再加熱判定時間以上に設定された貯湯使用禁止判定時間以上継続しているときには、前記貯湯温度センサの検出温度に拘わらず、前記湯量可変弁を閉弁状態に維持して、前記加熱温調制御のみを実行することを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、前記貯湯温度センサの検出温度が前記再加熱判定温度以下である状態が前記再加熱判定以上継続して、前記貯湯タンク内の湯中の雑菌が増加した可能性が高まったときに、前記滅菌処理手段により前記滅菌処理が実行される。そのため、前記貯湯タンク内の湯を定期的に沸き上げる設定がなされていない給湯システムにおいて、前記貯湯タンク内の湯が必要以上に加熱されて無駄なエネルギーが消費されることを抑制して、効率良く前記貯湯タンク内の湯水を滅菌することができる。
【0010】
そして、前記温調制御手段は、前記貯湯タンクの検出温度が前記貯湯使用禁止判定温度以下である状態が前記貯湯使用禁止判定時間以上継続して、前記貯湯タンク内の湯水中の雑菌が増殖しているおそれがあるときには、前記貯湯温度センサの検出温度に拘わらず、前記湯量可変弁を閉弁状態に維持して、前記加熱温調制御のみを実行する。そのため、前記貯湯タンクから前記出湯管に雑菌を多く含む湯が供給されることを防止した上で、前記加熱温調制御により前記出湯管からの給湯を継続することができる。
【0011】
また、前記滅菌処理手段は電力供給により作動するコントローラにより構成されて、電力供給の開始により前記コントローラが作動したときに、前記貯湯温度センサの検出温度が、前記再加熱判定時間よりも低い温度に設定された滅菌要否判定温度以上であるか否かを判断し、貯湯温度センサの検出温度が該滅菌要否判定温度よりも低いときは、該判断時に前記滅菌処理を実行することを特徴とする。
【0012】
かかる本発明によれば、電力供給の開始により前記コントローラが作動したときに、前記貯湯温度センサの検出温度が前記滅菌要否判定温度よりも低いときには、前記貯湯タンク内の湯が前記再加熱判定温度以下である状態が継続して、前記貯湯タンク内の湯水中の雑菌が多くなっているおそれがある。そこで、この場合は、前記滅菌処理を実行することによって、前記貯湯タンク内の湯水を速やかに滅菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の給湯システムの構成図。
【図2】図1に示したタンクユニットの作動フローチャート。
【図3】図1に示したタンクユニットの作動フローチャート。
【図4】リフレッシュフラグのON/OFF設定のフローチャート。
【図5】再加熱フラグのON/OFF設定のフローチャート。
【図6】高温貯湯フラグのON/OFF設定のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。図1を参照して、本実施の形態の給湯システムは、瞬間加熱式の給湯器10と、タンクユニット30と、ヒートポンプユニット60(本発明の加熱手段に相当する)とにより構成されている。
【0015】
ヒートポンプユニット60は、圧縮機71、凝縮器72、減圧器73、及び蒸発器74を、冷媒循環路75で接続して構成されたヒートポンプ70を備えている。凝縮器72は、貯湯タンク31の上部及び下部に接続されたタンク循環路64と接続され、冷媒循環路75内の冷媒とタンク循環路64内の湯水とを熱交換させることによって、タンク循環路64内の湯水を加熱する。
【0016】
タンク循環路64には、貯湯タンク31に貯められた湯水をタンク循環路64内に循環させるための循環ポンプ65と、凝縮器72から貯湯タンク31に供給される湯水の温度を検出する往きサーミスタ66と、貯湯タンク31から凝縮器72に供給される湯水の温度を検出する戻りサーミスタ41とが設けられている。
【0017】
そして、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットであるヒートポンプコントローラ80に、往きサーミスタ66による温度検出信号が入力される。また、ヒートポンプコントローラ80から出力される制御信号によって、ヒートポンプ70と循環ポンプ65の作動が制御される。
【0018】
ヒートポンプコントローラ80は、タンクコントローラ50と通信可能に接続され、タンクコントローラ50から加熱指示信号を受信したときに、タンクコントローラ50から送信される貯湯上限温度及び戻りサーミスタ41の検出温度のデータを用いて、往きサーミスタ66の検出温度及び戻りサーミスタ41の検出温度に基づいて、循環ポンプ65とヒートポンプ70を作動させて、貯湯タンク31内の湯水を設定温度(本実施の形態では、45℃又は60℃)付近に維持する。
【0019】
次に、タンクユニット30は、貯湯タンク31と、貯湯タンク31の上部に接続された出湯管2と、貯湯タンク31の下部及び出湯管2に接続された給水管1と、給湯器10をバイパスして出湯管2を給湯器10の上流側と下流側で連通する出湯バイパス管37とを備えている。
【0020】
さらに、タンクユニット30は、貯湯タンク31からヒートポンプユニット60に供給される湯水の温度を検出する戻りサーミスタ41、貯湯タンク31に貯められた湯水の温度を検出する貯湯サーミスタ42(本発明の貯湯温度センサに相当する)と、出湯管2の給水管1との接続箇所Xの上流側の付近に設けられた入湯サーミスタ33と、給水管1の通水流量を検出するタンク水量センサ43(本発明の通水センサに相当する)と、給水管1に設けられた入水サーミスタ44と、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯水の流量を変更する湯量可変弁34と、給水管1から出湯管2に供給される水の流量を変更する水量可変弁35と、給水管1に設けられた逆止弁付きの減圧弁40と、出湯管2と給水管1との接続箇所Xと出湯バイパス管37との間に設けられた混合サーミスタ36と、出湯バイパス管37を開閉するバイパス弁38と、出湯バイパス管37と出湯管2との接続箇所Yの下流側に供給される湯水の温度を検出する給湯出口サーミスタ39とを備えている。
【0021】
そして、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットであるタンクコントローラ50(本発明のコントローラに相当する)に、貯湯サーミスタ42、入湯サーミスタ33と、入水サーミスタ44、混合サーミスタ36、給湯出口サーミスタ39、及び戻りサーミスタ41による温度検出信号と、タンク水量センサ43による給水管1の通水流量の検出信号が入力される。また、タンクコントローラ50から出力される制御信号によって、湯量可変弁34と、水量可変弁35と、バイパス弁38の作動が制御される。
【0022】
タンクコントローラ50は、貯湯サーミスタ42の検出温度を監視し、時間帯に応じて、貯湯タンク31内の湯を45℃又は60℃付近に維持するために、ヒートポンプコントローラ80に対して加熱指示信号を送信する。
【0023】
また、タンクコントローラ50は、貯湯タンク31内の湯中の雑菌(レジオネラ菌等)を滅菌するための処理(滅菌処理)を行う。滅菌処理は、貯湯サーミスタ42の検出温度が58℃(本発明の再加熱判定温度に相当する)以下である状態が、94時間(本発明の再加熱判定時間に相当する)以上継続したときに、ヒートポンプコントーラ80に対して、貯湯加熱指示信号を送信し、貯湯タンク31内の湯を58℃(本発明の滅菌温度に相当する)以上に加熱した状態を15分間維持することにより実行される。
【0024】
なお、このようにタンクコントローラ50が、貯湯タンク31内の湯の滅菌処理を行う構成が、本発明の滅菌処理手段に相当する。
【0025】
また、タンクコントローラ50には、使用者の操作に応じて、希望する給湯温度(給湯設定温度:出湯管2の出口から供給される湯の温度)と風呂温度(風呂設定温度:後述する湯張り管18を経由して浴槽に供給される湯の温度)を設定するための温度スイッチ(図示しない)や、一般給湯モード(後述する湯張り弁19を閉弁して出湯管2の出口から湯を供給するモード)と、湯張りモード(湯張り弁19を開弁して湯張り管18から浴槽に湯を供給するモード)とを切換えるためのモード切換スイッチ(図示しない)等を備えたリモコン51(本発明の目標給湯温度設定手段の機能を含む)が接続されている。
【0026】
ここで、出湯管2は貯湯タンク31の上部に接続され、給水管1は貯湯タンク31の下部に接続されている。そのため、貯湯タンク31から出湯管2に湯水が供給されると、それに応じて、貯湯タンク31の下部に給水管1から水が供給される。そして、貯湯タンク31内では、上部に高温の湯の層ができると共に下部に水の層ができる。
【0027】
貯湯タンク31から湯を供給するに従って上部の高温の湯の層が減少していき、貯湯サーミスタ42の検出温度が、リモコン51により設定された目標給湯温度(一般給湯モードではリモコン51により設定された給湯設定温度、湯張りモードではリモコン51により設定された風呂設定温度)以下となった湯切れ状態となる。
【0028】
なお、貯湯タンク31が湯切れ状態であるか否かの判断は、貯湯サーミスタ42の検出温度が目標給湯温度付近に設定された湯切れ判定温度以下であるときに、貯湯タンク31が湯切れ状態であると判断すればよい。本実施の形態では、目標給湯温度が湯切れ判定温度に設定されている。
【0029】
タンクコントローラ50は、貯湯タンク31内の湯の滅菌処理を行っていないときは、貯湯サーミスタ42の検出温度が目標給湯温度よりも高いとき(湯切れが生じていない状態)に、タンク水量センサ43により所定の下限流量以上の通水が検出されたときに、混合サーミスタ36又は給湯出口サーミスタ39の検出温度が目標温度となるように、湯量可変弁34と水量可変弁35の開度を制御する混合温調制御を行う。このとき、タンクコントローラ50は、一般給湯モードではバイパス弁38を開弁し、湯張りモードではバイパス弁38を閉弁する。
【0030】
一方、貯湯サーミスタ42の検出温度が目標給湯温度以下であるとき(湯切れが生じている状態)に、タンク水量センサ43により下限水量以上の通水が検出されたときには、タンクコントローラ50は、バイパス弁38を閉弁して、貯湯タンク31及び給水管1からの湯水を全て給湯器10に供給する。この場合には、給湯器10において、後述する加熱温調制御が実行される。
【0031】
次に、給湯器10は、出湯管2の途中に設けられた熱交換器11と、熱交換器11を加熱するバーナ12と、熱交換器11をバイパスして、出湯管2を熱交換器11の上流側と下流側で連通する給湯バイパス管13と、出湯管2と給湯バイパス管13の接続箇所Zの下流側で、浴槽(図示しない)と出湯管2を接続した湯張り管18とを備えている。
【0032】
出湯管2には、給湯バイパス管13の開度を変更するバイパスサーボ弁14と、給湯器10に供給される湯水の流量を調節する水量サーボ15と、熱交換器11及び給湯バイパス管13に供給される湯水の流量を検出する給湯水量センサ21と、出湯管2と給湯バイパス管13の接続箇所Zの下流側に供給される湯の温度を検出する給湯器サーミスタ16と、逆止弁17とが設けられている。また、湯張り管18には、湯張り管18の通水流量を検出する湯張り水量センサ22と、湯張り管18を開閉する湯張り弁19とが備えられている。
【0033】
そして、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットである給湯コントローラ20に、給湯器サーミスタ16による温度検出信号と、給湯水量センサ21による通水流量の検出信号と、湯張り水量センサ22による通水流量の検出信号とが入力される。また、給湯コントローラ20から出力される制御信号によって、バイパスサーボ14と、水量サーボ15と、バーナ12と、湯張り弁19の作動が制御される。
【0034】
給湯コントローラ20は、タンクコントローラ50と通信可能に接続され、タンクコントローラ50から加熱許可を指示する信号を受信したときに加熱許可状態となる。そして、給湯水量センサ21により所定の下限流量以上の通水が検出されているときに、給湯器サーミスタ16の検出温度が目標給湯温度となるように、バーナ12の燃焼量を制御する加熱温調制御を実行する。また、タンクコントローラ50から加熱禁止を指示する信号を受信したときに加熱禁止状態となり、加熱温調制御の実行が禁止される。
【0035】
また、給湯コントローラ20は、浴槽(図示しない)に所定量の湯を供給する湯張り運転を行なうとき(湯張りモード)には、湯張り弁19を開弁して、湯張り水量センサ22により検出される浴槽への湯の供給量を累積する。そして、浴槽への湯の供給量の累積値が前記所定量に達したときに、湯張り弁19を閉弁して湯張り運転を終了する。
【0036】
次に、図2〜図6に示したフローチャートに従って、タンクコントローラ50の作動について説明する。
【0037】
図2のSTEP1でタンクユニット30の電源がONされるとSTEP2に進み、タンクコントローラ50は、湯量可変弁34を全閉にすると共に、水量可変弁35を全開とする。そして、タンクコントローラ50は、続くSTEP4で貯湯サーミスタ42の検出温度が35℃(本発明の滅菌要否判定温度に相当する)よりも高いか否かを判断する。
【0038】
ここで、STEP4で貯湯サーミスタ42の検出温度が35℃よりも低いときは、貯湯タンク31内の湯水の温度が低い状態が継続して、湯水中の雑菌が増加している可能性がある。そのため、この場合は直ちに貯湯タンク31内の湯水を滅菌する必要がある。そこで、この場合はSTEP30に分岐し、タンクコントローラ50は、貯湯タンク31内の湯の使用禁止を指示するリフレッシュフラグ(図中、リフレッシュFと記載)と、貯湯タンク31内の湯の再加熱を指示する再加熱フラグ(図中、再加熱Fと記載)をON(セット)する。そして、STEP6に進み、タンクコントローラ50は、貯湯タンク31内の湯水の加熱を停止した状態として、STEP7に進む。
【0039】
一方、STEP4で貯湯ターミスタ42の検出温度が35℃以上であるときには、停電等により、タンクユニット30への電力供給が一時的に遮断され、貯湯タンク31内の湯の温度がさほど低下せずに電力供給が再開されてと想定することができる。そして、この場合には、直ちに貯湯タンク31内の湯水を滅菌する必要はない。そこで、STEP5に進み、タンクコントローラ50は、リフレッシュフラグと再加熱フラグを共にOFF(リセット)する。そして、STEP6に進み、タンクコントローラ50は、貯湯タンク31内の湯水の加熱を停止した状態として、STEP7に進む。
【0040】
STEP7で、タンクコントローラ50は、リフレッシュフラグがON状態であるか否かを判断する。そして、リフレッシュフラグがON状態であるときはSTEP40に分岐し、リフレッシュフラグがON状態でないときにはSTEP8に進む。STEP40で、タンクコントローラ50は、湯量可変弁34を全閉にすると共に、水量可変弁35を全開にし、貯湯タンク31内の湯水の使用が禁止される。
【0041】
STEP8で、タンクコントローラ50は、リモコン51に備えられた運転スイッチ(図示しない)がON状態であるか否かを判断する。そして、運転スイッチがON状態であるときはSTEP9に進み、運転スイッチがON状態でないときにはSTEP6に分岐する。なお、運転スイッチは、給湯システムによる給湯運転が可能な運転状態と、給湯システムによる給湯運転が不能な待機状態との切り替えを指示するためのスイッチであり、運転スイッチがON状態であるときに運転状態となる。
【0042】
運転スイッチがON状態であるときはSTEP9に進み、タンクコントローラ50は、高温(60℃)での貯湯を指示する高温貯湯フラグ(図中、高温貯湯Fと表示)と、再加熱フラグのいずれかがON状態であるか否かを判断する。そして、高温貯湯フラグと再加熱フラグのいずれかがON状態であるときはSTEP50に進み、タンクコントローラ50は、ヒートポンプコントローラ80に対して、60℃での貯湯を指示する加熱指示信号を送信する。
【0043】
これにより、ヒートポンプ70による加熱が行われて、貯湯タンク31内の湯の温度が60℃付近に維持される。この60℃という設定温度は、貯湯タンク31内の湯の滅菌と、大量の湯の使用に対応するためのものである。
【0044】
一方、STEP9で、高温貯湯フラグと再加熱フラグが共にON状態でないときにはSTEP10に進む。そして、タンクコントローラ50は、ヒートポンプコントローラ80に対して、45℃での貯湯を指示する加熱指示信号を送信する。これにより、ヒートポンプ70による加熱が行われて、貯湯タンク31内の湯の温度が45℃付近に維持される。この45℃という設定温度は、貯湯タンク31内の湯の放熱を抑えて効率の良い貯湯を行うためのものである。
【0045】
続くSTEP11で、タンクコントローラ50は、タンク水量センサ43により下限流量以上の通水が検出されている通水状態であるか否かを判断する。そして、通水状態であるときは図3のSTE12に進み、通水状態でないときにはSTEP7に戻る。
【0046】
図3のSTEP12〜STEP15、STEP70〜STEP71、及びSTEP60〜STEP61は、混合温調制御又は加熱温調制御により、目標給湯温度(一般給湯モードでは給湯設定温度、湯張りモードでは風呂設定温度)での給湯を行うための処理である。なお、STEP12〜STEP15、STEP70〜STEP71、及びSTEP60〜STEP61により、混合温調制御と加熱温調制御を実行する構成が、本発明の温調制御手段に相当する。
【0047】
STEP12で、タンクコントローラ50は、リフレッシュフラグがON状態であるか否かを判断する。そして、リフレッシュフラグがON状態であるときはSTEP60に分岐し、タンクコントローラ50は、給湯コントローラ20に対して加熱許可を指示する信号を送信する。また、続くSTEP61で、タンクコントローラ50は、湯量可変弁34を全閉にすると共に、水量可変弁35を全開にしてSTEP16に進む。
【0048】
STEP60とSTEP61の処理により、湯量可変弁34が全閉されて貯湯タンク31内の湯の使用が禁止された状態で、給湯器10による加熱が許可される。そして、給湯コントローラ20により、給湯器サーミスタ16の検出温度が目標給湯温度(一般給湯モードでは給湯設定温度、湯張りモードでは風呂設定温度)となるように、バーナ12の燃焼量とバイパスサーボ弁14の開度が制御される(加熱温調制御)。
【0049】
一方、STEP12でリフレッシュフラグがON状態でなかったときにはSTEP13に進み、タンクコントローラ50は、一般給湯モードあって、且つ、湯切れ(貯湯サーミスタ42の検出温度が目標給湯温度以下の状態)が生じていないか否かを判断する。
【0050】
そして、一般給湯モードであって、且つ、湯切れが生じていないときはSTEP14に進み、タンクコントローラ50は、給湯コントローラ20に対して、加熱禁止を指示する信号を送信する。これにより、給湯器10による加熱が禁止される。
【0051】
また、続くSTEP15で、タンクコントローラ50は、混合サーミスタ36の検出温度が目標給湯温度(給湯設定温度)となるように、湯量可変弁34と水量可変弁35の開度を変更して、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯と給水管1から出湯管2に供給される水の混合比を調節し(混合温調制御)、STEP16に進む。
【0052】
また、STEP13で、湯張りモードであるか、貯湯タンク31の湯切れが生じていないときにはSTEP70に分岐する。そして、タンクコントローラ50は、給湯コントローラ20に対して加熱許可を指示する信号を送信し、これにより、給湯器10による加熱が許可される。
【0053】
また、続くSTEP71で、以下の式(1)により設定された混合設定温度となるように、湯量可変弁34と水量可変弁35の開度を変更して、貯湯タンク31から出湯管2に供給される湯と給水管1から出湯管2に供給される水との混合比を調節し、STEP16に進む。
【0054】
混合設定温度=目標給湯温度−最小能力温度 ・・・・・ (1)
但し、目標給湯温度:一般給湯モードでは給湯設定温度,湯張りモードでは風呂設定温度、最小能力温度:現水量(給湯水量センサ21により検出されている現在の通水流量)の湯水を、給湯器10により最小能力で加熱したときの湯水の上昇温度。
【0055】
この場合は、STEP71で上記式(1)の混合温度に制御された湯が給湯器10に供給され、給湯コントローラ20は、給湯器サーミスタ16の検出温度が目標給湯温度(一般給湯モードでは給湯設定温度、湯張りモードでは風呂設定温度)となるように、バーナ12の燃焼量とバイパスサーボ弁14の開度を制御する(加熱温調制御)。
【0056】
次のSTEP16で、タンクコントローラ50は、タンク水量センサ43により下限流量以上の通水が検出されていない止水状態であるか否かを判断する。そして、止水状態であったときはSTEP17に進み、タンクコントローラ50は、湯量可変弁34を停止(現時点の開度を保持)し、続くSTEP18で水量可変弁35を停止(現時点の開度を保持)する。また、タンクコントローラ50は、次のSTEP19で、給湯コントローラ20に対して加熱禁止を指示する信号を送信し、図2のSTEP7に戻る。
【0057】
次に、図4に示したフローチャートに従って、リフレッシュフラグのON/OFF(セット/リセット)の処理について説明する。なお、図4〜図6に示したフローチャートによる処理は、図2〜図3に示したフローチャートによる処理と並行して実行される。
【0058】
タンクコントローラ50は、STEP80で、リフレッシュフラグがON状態であるか否かを判断する。そして、リフレッシュフラグがON状態でないときはSTEP81に進む。STEP81で、タンクコントローラ50は、貯湯温度(貯湯サーミスタ42の検出温度)が53度(本発明の貯湯使用禁止判定温度に相当する)よりも低い状態が96時間(本発明の貯湯使用禁止判定時間に相当する)以上継続したときに、STEP82に進んでリフレッシュフラグをONし、STEP80に進む。
【0059】
なお、STEP81における、貯湯温度が53℃よりも低い状態が96時間以上継続したときという条件は、貯湯タンク31内に低温の湯水が長時間貯まっていたために、貯湯タンク31内の湯水中の雑菌の存在率が予め設定された許容レベルを超えているおそれがあると想定される条件である。
【0060】
一方、STEP80でリフレッシュフラグがON状態であるときには、STEP90に進む。そして、タンクコントローラ50は、貯湯温度(貯湯サーミスタ42の検出温度)が58℃(本発明の滅菌温度に相当する)以上である状態が1時間以上継続したときに、STEP91に進んでリフレッシュフラグをOFFし、STEP80に進む。
【0061】
なお、STEP90における、貯湯温度が58℃以上である状態が1時間以上継続したとき、という条件は、貯湯タンク31内の湯中の上記許容レベルを超えた雑菌が加熱により死滅すると想定される条件である。
【0062】
次に、図5に示したフローチャートに従って、再加熱フラグのON/OFF(セット/リセット)の処理について説明する。
【0063】
タンクコントローラ50は、STEP100で、再加熱フラグがON状態であるか否かを判断する。そして、再加熱フラグがON状態でないときはSTEP101に進む。STEP101で、タンクコントローラ50は、貯湯温度(貯湯サーミスタ42の検出温度)が58℃(本発明の再加熱判定温度に相当する)よりも低い状態が94時間(本発明の再加熱判定時間に相当する)以上継続したときに、STEP102に進んで再加熱フラグをON(セット)し、STEP100に進む。
【0064】
なお、STEP101における、貯湯温度が58℃よりも低い状態が94時間以上継続したときという条件は、貯湯タンク31内に低温の湯水が長時間貯まっていたために、貯湯タンク31内の湯水中の雑菌の増殖がある程度進み、雑菌の存在率が上記許容レベルに近付いていると想定される条件である。
【0065】
一方、STEP100で再加熱フラグがON状態でないときには、STEP110に進む。そして、タンクコントローラ50は、貯湯温度(貯湯サーミスタ42の検出温度)が58℃以上である状態が15分以上継続したときに、STEP102に進んで再加熱フラグをOFFし、STEP100に進む。
【0066】
なお、STEP110における、貯湯温度が58℃以上である状態が15分以上継続したとき、という条件は、貯湯タンク31内の湯中の上記許容レベル付近の雑菌が加熱により死滅すると想定される条件である。
【0067】
次に、図6に示したフローチャートに従って、高温貯湯フラグのON/OFF(セット/リセット)の処理について説明する。
【0068】
タンクコントローラ50は、STEP120で計時部(図示しない)から現在時刻のデータを取得する。そして、続くSTEP121で、タンクコントローラ50は、現在時刻が高温設定時間帯であるか否かを判断する。ここで、高温設定時間帯は、湯の使用量が増加すると想定される夕方から就寝時(例えば18時〜22時)に設定される。なお、高温設定時間帯は、リモコン51により設定される。
【0069】
現在時刻が高温設定時間帯であるときはSTEP130に分岐し、タンクコントローラ50は、高温貯湯フラグをON(セット)してSTEP120に戻る。また、現在時刻が高温設定時間帯でないときにはSTEP122に進み、タンクコントローラ50は、湯張り運転の実行中であるか否かを判断する。
【0070】
そして、湯張り運転の実行中であるときはSTEP130に分岐し、タンクコントローラ50は、高温貯湯フラグをON(セット)してSTEP120に戻る。また、湯張り運転の実行中でないときにはSTEP123に進み、タンクコントローラ50は、高温貯湯フラグをOFFしてSTEP120に戻る。
【0071】
図6の処理により、湯の使用量が増加する時間帯と湯張り運転の実行時に、貯湯タンク31内の湯が高温(60℃)で貯湯されるため、貯湯タンク31の湯切れが生じることを抑制して、混合温調制御を実行することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、給湯器10をバイパスする出湯バイパス管37と出湯バイパス管37を開閉するバイパス弁38を備えた給湯システムを示したが、出湯バイパス管及びこれを開閉するバイパス弁を備えていない給湯システムに対しても、本発明を適用してその効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、本発明の再加熱判定時間(94時間)を貯湯使用禁止判定時間(96時間)よりも短い時間に設定したが、両者を同一の時間に設定してもよい。また、本実施の形態では、本発明の貯湯使用禁止判定温度(53℃)を再加熱判定温度(58℃)よりも低い温度に設定したが、両者を同一の温度に設定してもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、湯張り管18と湯張り弁19を備えて、一般給湯モード及び湯張りモードでの給湯を行う給湯システムを示したが、湯張り管を備えずに一般給湯モードによる給湯のみを行う場合にも、本発明の適用が可能である。
【0075】
また、本実施の形態では、貯湯タンク31内の湯水の加熱手段としてヒートポンプを使用する給湯システムを示したが、ソーラーシステム等の他の加熱手段を用いてもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、図1のSTEP4,STEP5及びSTEP30の処理により、電源がONされたときに、貯湯サーミスタ42の検出温度が低いときには、直ちに貯湯タンク31内の湯水の滅菌処理を行うようにしたが、この処理を行わない場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…給水管、2…出湯管、10…給湯器、14…バイパスサーボ弁、20…給湯コントローラ、30…タンクユニット、31…貯湯タンク、33…入湯サーミスタ、34…湯量可変弁、35…水量可変弁、36…混合サーミスタ、37…出湯バイパス管、38…バイパス弁、42…貯湯サーミスタ、44…入水サーミスタ、50…タンクコントローラ、51…リモコン、60…ヒートポンプユニット、70…ヒートポンプ、80…ヒートポンプコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに接続された出湯管と、
前記貯湯タンク及び前記出湯管と接続された給水管と、
前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、
前記給水管への通水を検出する通水センサと、
前記出湯管の前記貯湯タンクとの接続部と前記給水管との接続部間に設けられて、前記出湯管の開度を変更する湯量可変弁と、
前記給水管の前記貯湯タンクとの接続部と前記出湯管との接続部間に設けられて、前記給水管の開度を変更する水量可変弁と、
前記貯湯タンク内の湯水の温度を検出する貯湯温度センサと、
前記出湯管と前記給水管との接続部の下流側で前記出湯管の途中に設けられ、前記出湯管を流通する湯水を加熱する給湯器と、
目標給湯温度を設定する給湯温度設定手段と、
前記通水センサにより通水が検出され、且つ、前記貯湯温度センサの検出温度が前記目標給湯温度に応じて設定された湯切れ判定温度よりも高いときは、前記給湯器による加熱を禁止して、前記出湯管から前記目標給湯温度の湯が供給されるように、前記湯量可変弁と水量可変弁により前記貯湯タンクから前記出湯管に供給される湯と前記給水管から前記出湯管に供給される水との混合比を調節する混合温調制御を実行し、前記通水センサにより通水が検出され、且つ、前記貯湯温度センサの検出温度が前記湯切れ判定温度以下であるときには、前記出湯管から前記目標給湯温度の湯が供給されるように、前記給湯器による加熱を行う加熱温調制御を実行する温調制御手段とを備えた給湯システムにおいて、
前記貯湯温度センサの検出温度が、前記貯湯タンク内の湯で雑菌の繁殖が進む温度を想定して設定された再加熱判定温度以下である状態が所定の再加熱判定時間以上継続したときに、前記加熱手段により、前記貯湯タンク内の湯を雑菌が死滅する温度を想定して設定された滅菌温度以上に加熱する滅菌処理を実行する滅菌処理手段を備え、
前記温調制御手段は、前記貯湯タンクの検出温度が、前記再加熱判定温度以下に設定された貯湯使用禁止判定温度以下である状態が、前記再加熱判定時間以上に設定された貯湯使用禁止判定時間以上継続しているときには、前記貯湯温度センサの検出温度に拘わらず、前記湯量可変弁を閉弁状態に維持して、前記加熱温調制御のみを実行することを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の給湯システムにおいて、
前記滅菌処理手段は電力供給により作動するコントローラにより構成されて、電力供給の開始により前記コントローラが作動したときに、前記貯湯温度センサの検出温度が、前記再加熱判定時間よりも低い温度に設定された滅菌要否判定温度以上であるか否かを判断し、貯湯温度センサの検出温度が該滅菌要否判定温度よりも低いときは、該判断時に前記滅菌処理を実行することを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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