説明

給湯暖房装置

【課題】給湯暖房装置1において、自動保温運転モードにあるときの暖房用循環ポンプP2の消費電力を低減して省エネルギーを図る。
【解決手段】浴槽2に温水を供給するための第1の熱交換器10と、追い焚き用ポンプP1を備えており浴槽2内の温水を第2の熱交換器20との間で循環させて浴槽2内の温水の追い焚きを行う追い焚き用循環路3と、暖房用端末機器40に温水を供給するための第3の熱交換器30と、暖房用循環ポンプP2を備えており第3の熱交換器30と暖房用端末機器40の間で温水を循環させるための暖房用循環路4とを備えた給湯暖房装置1において、制御部80は、使用者が自動保温運転モードを選択したときに、暖房用循環ポンプP2の回転数を予め設定してある回転数よりも低い回転数に制御できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
室内の温風暖房や床暖房のために温水を供給する手段と、浴槽に温水を供給する手段との双方を備えた給湯暖房装置は知られている。特許文献1には、その一例として、ガス燃焼機の燃焼排ガスの持つ熱を利用して、暖房用高温水と暖房用低温水とを作り、高温水は室内暖房に、また低温水は床暖房に使用するとともに、やはり燃焼排ガスの持つ熱を利用して得られる温水を浴槽等に供給するようにした給湯暖房装置が記載されている。前記給湯暖房装置は浴槽内の温水を追い焚きする手段も設けてあり、追い焚きを行うときは、暖房用温水の循環に用いる暖房用循環ポンプとは別に設けた追い焚き用ポンプを運転し、浴槽内の温水を、高温側である暖房用循環路と低温側である追い焚き用循環路との間に配置した液・液熱交換手段で熱交換をすることで、浴槽の温水を所定温度にまで昇温するようにしている。
【0002】
一方、特許文献2には、給湯暖房装置が記載されており、そこでは、温水暖房の効率化と機器の破損を防止するために、暖房用端末機器(温風空調装置や床暖房装置等)の数に応じて、暖房用循環路に備えた暖房用循環ポンプの回転数を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−61677号公報
【特許文献2】特許第3711044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した給湯暖房装置において、温風空調装置や床暖房装置等であるの暖房用端末機器では一般的に大きな熱量を必要とし、かつ給湯暖房装置から暖房用端末機器までの距離も長く管路抵抗が大きくなりがちである。そのために、一般に、暖房用循環ポンプには容量の大きなものが用いられ、かつ高い回転数で運転されるのが普通である。そして、浴槽に張ったお湯を追い焚きするときにも、暖房用循環ポンプはその最大の出力を出すように設定されていて、その状態下で、追い焚き用ポンプを運転し、追い焚き用循環路を流れる浴槽内の低温水と暖房用循環路を流れる高温水との間で熱交換をして、浴槽の温水を例えば40℃程度である所定温度にまで昇温するようになっているのが普通である。
【0005】
室内空調機での暖房や床暖房が必要とされる期間は一年の内で冬期間の比較的に短い期間である。しかし、ふろの追い焚きは通年を通して必要とされる。したがって、暖房用として温水を使用することなく、浴槽への給湯と追い焚きのみで給湯暖房装置を使用する期間は長い(もちろん、その期間でも、温水を台所の温水やシャワーの温水として用いることも行われる)。一般に追い焚きを行うときは、短時間で所定の温度に湯温が上昇することと、浴槽内で温水を撹拌することが必要とされるので、暖房用循環ポンプを最大の出力(回転数)で運転しても、無駄が生じているとはいえない。
【0006】
近年の給湯暖房装置では、コントローラが前記した追い焚き運転モードに加えて、自動保温運転モードを選択できるようになっているものが多い。ここで、自動保温運転モードとは、長時間(例えば30時間程度)に亘って、浴槽内の温水温度を予め設定した温度(例えば40℃)とそこから−2〜−3℃程度の間に維持するようにしたモードであり、ガスバーナによる加熱状態とバーナが停止した非加熱状態とが、使用者によって自動保温運転モードが解除されるまで、反覆して行われる。この点で、追い焚き運転モードが温度降下した温水を一度だけ予め設定した所定温度まで加熱するのとは相違する。
【0007】
追い焚き運転モードを選択するときは、使用者が短時間で湯温を所定温度にまで昇温することを希望している場合であり、一方、自動保温運転モードを選択するときは、湯温が一定温度範囲内に維持されていればよく、短時間で湯温が所定温度にまで昇温することは期待してはいない。にもかかわらず、現在使用されている給湯暖房装置では、自動保温運転モードにおいても、暖房用循環ポンプを最大の出力(回転数)で運転して短時間で所定温度にまで湯温を昇温させるようにしており、暖房用循環ポンプの運転においてエネルギーの無駄が生じているといえる。
【0008】
前記特許文献2には、暖房用端末機器の数に応じて、暖房用循環路に備えた暖房用循環ポンプの回転数を制御することは記載されているが、浴槽中の湯沸かしとの関連で暖房用循環ポンプを運転制御することについては記載がない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、給湯暖房装置において、その自動保温運転モードにおいて暖房用循環ポンプに要するエネルギー(電気エネルギー)を少なくすることで、給湯暖房装置全体として省エネルギー化を可能とした給湯暖房装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による給湯暖房装置は、浴槽に温水を供給するための第1の熱交換器と、追い焚き用ポンプを備えており浴槽内の温水を第2の熱交換器との間で循環させて浴槽内の温水の追い焚きを行う追い焚き用循環路と、暖房用端末機器に温水を供給するための第3の熱交換器と、暖房用循環ポンプを備えており第3の熱交換器と暖房用端末機器の間で温水を循環させるための暖房用循環路と、制御部とを少なくとも備えた給湯暖房装置であって、前記第2の熱交換器は前記追い焚き用循環路と前記暖房用循環路との間での液・液熱交換手段であり、前記制御部は、追い焚き運転モードと自動保温運転モードとを選択可能となっており、使用者が自動保温運転モードを選択したときに、前記暖房用循環ポンプの回転数を予め設定してある回転数よりも低い回転数に制御できるようになっていることを特徴とする。
【0011】
上記の給湯暖房装置では、ふろを沸かすときに使用者が自動保温運転モードを選択した場合には、制御部は、暖房用循環ポンプの回転数を予め設定してある回転数、例えば暖房用端末機器の間で温水を循環させるときの回転数よりも低い回転数に制御できるようになっているので、暖房用循環ポンプの回転数が低下した分だけ、暖房用循環ポンプがフル回転する場合と比較して、電気エネルギーの節約が図られる。自動保温運転モードを選択したときでも、湯槽内の温水を所定温度にまで昇温させるには、追い焚き用ポンプを稼働しかつ第2と第3の熱交換器を用いて、湯槽内の温水と暖房用循環路を流れる高温水との間で熱交換を行うようにするが、そのときの追い焚き用ポンプの回転数は、追い焚き運転モードのときの回転数と同じとされるので、浴槽内での温水の撹拌は支障なく進行する。暖房用循環ポンプの回転数が低下することで、第2の熱交換器での時間当たりの熱交換量は小さくなり、湯槽内の温水の昇温速度は低下するが、自動保温運転モードを選択したときには、使用者は湯槽内の温水の迅速な昇温を求めてはいないので、昇温速度の低下が使用者に不快感を与えることはない。
【0012】
本発明による給湯暖房装置の好ましい態様において、前記制御部は、自動保温運転モードが選択されている環境下で、追い焚き運転モードが選択されたときには、前記暖房用循環ポンプの回転数を少なくする制御を解除できるようになっていることを特徴とする。
【0013】
自動保温運転モードが選択されている環境下であっても、使用者が湯槽内に入ることを希望することが起こり得るが、そのときに湯槽内の湯温が設定温度下限値となっているときに、不快感を持つことが起こり得る。そのようなときに、上記態様の給湯暖房装置では、使用者が追い焚き運転モードを選択することで、暖房用循環ポンプの回転数を初期の高い回転数に復帰させることが可能となり、湯温の迅速な昇温が進行する。
【0014】
本発明による給湯暖房装置の好ましい態様において、前記制御部は、給湯暖房装置が前記暖房用端末機器に温水を循環させる使用環境下にあるときに、自動保温運転モードが選択されても、前記暖房用循環ポンプの回転数を少なくする制御を行わないことを特徴とする。
【0015】
この態様では、ふろを使用する側が自動保温運転モードを選択した場合でも、暖房用端末機器側に送られる温水量が低下するのを回避することができるので、暖房用端末機器を利用している者に対して、温度低下による不快感を与えるのを防止できる。ふろ側を優先するか暖房用端末機器側を優先するかは、使用者側の選択事項となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、給湯暖房装置において、温水の送りに必要なモータの消費エネルギーを低減することが可能となり、給湯暖房装置全体としての省エネルギー化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による給湯暖房装置での温水の循環回路の一例を示す図。
【図2】コントローラを説明する図。
【図3】本発明による給湯暖房装置での運転フローを示す図。
【図4】図3のフロー図に続くフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による給湯暖房装置における温水の循環回路の一実施の形態を示す図である。
【0019】
この実施の形態において、給湯暖房装置1は、浴槽2に温水を供給するための第1の熱交換器10と、浴槽2内の温水を追い焚きするときに用いられる追い焚き用循環路3と、追い焚き用循環路3に備えられた第2の熱交換器20と、暖房用端末機器40に温水を供給するための第3の熱交換器30と、第3の熱交換器30と暖房用端末機器40の間で温水を循環させるための暖房用循環路4とを備え、前記追い焚き用循環路3には追い焚き用ポンプP1が、また前記暖房用循環路4には暖房用循環ポンプP2が、取り付けられている。
【0020】
第1の熱交換器10と第3の熱交換器30は、共に、潜熱をも回収できるタイプのものであり、バーナB1、B2の上方に位置し主に燃焼排気の顕熱を吸熱して熱交換する主熱交換部11、31と、この主熱交換部11、31の上方に位置し主に潜熱を吸熱して熱交換する副熱交換部12、32とを備えている。
【0021】
第1の熱交換器10において、給水管路61からの水道水は、副熱交換部12を通過することで潜熱による加熱を受け、次いで主熱交換部11を通過することで燃焼排気の顕熱を吸熱して昇温し、温水となる。温水は、出湯管路62を通って図示しない台所やシャワー室の出湯栓へ送られる。
【0022】
出湯管路62は分岐管路63を有し、第1の熱交換器10で加熱された温水は分岐管路63を通して浴槽2に送られる。前記追い焚き用循環路3は、前記分岐管路63から分岐して浴槽2に到る循環路であり、浴槽2内の温水は追い焚き用ポンプP1の作動により吸引され、第2の熱交換器20で受熱して昇温した後、再び浴槽2に戻される。
【0023】
前記暖房用循環路4では、暖房用循環ポンプP2が作動することより、シスターン5内の温水が、管路65を通って前記第3の熱交換器30における主熱交換部31に送られ、そこを通過することで燃焼排気の顕熱を吸熱して昇温して高温の温水となる。高温の温水は、高温暖房用出湯管路66を通って高温暖房用端末機器40Aに送られ、そこで所要の熱交換をした後に、暖房用戻り管路67を通って第3の熱交換器30における副熱交換部32側に送られ、そこを通過することで潜熱による加熱を受けた後、シスターン5に戻される。
【0024】
また、シスターン5内の温水は、暖房用循環ポンプP2が作動することにより、低温暖房用出湯管路68を通って低温暖房用端末機器40Bに送られ、そこで所要の熱交換をした後に、暖房用戻り管路67に合流し、第3の熱交換器30における副熱交換部32側に送られて、そこを通過することで潜熱による加熱を受けた後、シスターン5に戻される。
【0025】
上記のように、暖房用循環ポンプP2の作動によって、温水が第3の熱交換器30と暖房用端末機器40A、40Bとの間で循環する管路が、本発明でいう暖房用循環路4を構成する。そして、暖房用循環路4は、高温暖房用出湯管路66と暖房用戻り管路67とを短絡する第1のバイパス管路71と第2のバイパス管路72とをさらに備えており、第2のバイパス管路72は前記した第2の熱交換器20内を放熱源側として通過している。すなわち、第2の熱交換器20は、前記追い焚き用循環路3と前記暖房用循環路4との間での液・液熱交換手段として機能する。
【0026】
給湯暖房装置1は、前記バーナB1、B2や、追い焚き用ポンプP1、暖房用循環ポンプP2を制御する制御部80が備えられており、それらの部材は制御部80と電気的に接続している。また、この制御部80には各暖房用端末機器40と電気的に接続された双方向通信手段81が設けられており、該双方向通信手段81を介して各暖房用端末機器40と双方向での通信が可能とされている。
【0027】
この例において、暖房用端末機器40は、上述したように高温暖房用端末機器40Aと低温暖房用端末機器40Bで構成されている。高温暖房用端末機器40Aは、高温(たとえば80℃)の温水供給を受ける暖房機器であって、浴室乾燥機やパネルヒータ、温水エアコンなどで構成される。また、低温暖房用端末機器40Bは低温(たとえば60℃)の温水供給を受ける暖房機器であって、床暖房パネルなどで構成される。
【0028】
各暖房用端末機器40は、熱交換器41を備えており、各熱交換器41の上流側には機器への入水を制御する熱動弁42が設けられている。この熱動弁42は、たとえば高温暖房用端末機器40Aを例にとって説明すると、図外の操作部によって高温暖房用端末機器40Aの運転開始が指示されると、この運転開始に伴って開弁し、かつ暖房用循環ポンプP2が作動する。つまり、高温暖房用端末機器40Aの運転開始にともなって温水の流れが生じるので、図示しない水量センサがそれを検知し、その情報が制御部80に送られ、制御部80は、バーナB1、B2を着火し、また暖房用循環ポンプP2を駆動するように構成されている。
【0029】
また、これら各暖房用端末機器40には、それぞれ図示しない双方向通信手段が設けられており、この双方向通信手段によって上記制御部80に設けられた双方向通信手段81との間で双方向通信が可能とされている。つまり、給湯側と各端末機器40とが双方向通信を行うことにより、各暖房用端末装置の操作部においてなされる各種設定操作(たとえば、運転の開始/停止の設定操作など)が制御部80に伝達可能とされる。また、出湯栓が開けられると、図示しない水量センサが水の流れを検知し、その情報が制御部80に送られ、制御部80は、バーナB1を着火する。
【0030】
制御部80には、図2に示すようなリモートコントローラ90が接続している。リモートコントローラ90は一般のものと同様に、温度設定部91、表示部92、運転開始スイッチ93、自動保温運転モード選択スイッチ94、追い焚き運転モード選択スイッチ(追い焚きスイッチ)95を備えている。運転開始スイッチ93をONにすると、給湯暖房装置1は立ち上がった状態とされ、前記したように、暖房用端末機器40の操作部によって暖房用端末機器40の運転開始が指示されると、制御部80からは暖房用端末機器40に温水を供給するのに必要な指令が発信される。また、出湯栓が開けられると、出湯管路62の出湯栓からは温水が出るようになる。
【0031】
自動保温運転モード選択スイッチ94がONされると、制御部80は、バーナB1を着火し、分岐管路63を通して、温度設定部91で設定された温度の温水が浴槽2に供給される。図示しない水量センサが設定量の温水が浴槽2に供給されたことを検知すると、温水の供給を停止する。制御部80は、浴槽2内の温水温度を検知しており、湯温が一定温度(例えば2℃程度)低下したことを検知すると、追い焚き用ポンプP1(および作動していない場合には暖房用循環ポンプP2の双方)を駆動する。
【0032】
それにより、浴槽2内の温水は、追い焚き用循環路3を循環し、循環の過程で第2の熱交換器20を通過する。一方、暖房用循環ポンプP2が駆動することで暖房用循環路4内の温水は、第3の熱交換器30によって高温に加熱された後、高温暖房用出湯管路66と第2のバイパス管路72を通過する。第2のバイパス管路72には前記した第2の熱交換器20が配置されており、そこにおいて、第3の熱交換器30によって高温に加熱された温水と浴槽2内の温度低下した温水との間で熱交換が行われ、浴槽2内の温水は所定の温度にまで昇温する。
【0033】
図示しない温度センサが所定の温度にまで昇温したことを検知すると、制御部80は、追い焚き用ポンプP1の作動を停止する。暖房用端末機器40側が作動していない場合には、暖房用循環ポンプP2の作動も停止する。自動保温運転モードでは、上記の浴槽2内の温水を非加熱状態で放置する状態と加熱して昇温させる状態とが所定時間に亘って繰り返されることで、浴槽内の温水の自動保温が図られる。
【0034】
追い焚き運転モード選択スイッチ95がONされると、図示しない温度センサは浴槽2内の温水温度を測定し、設定温度よりも低い場合には、制御部80は、追い焚き用ポンプP1(および作動していない場合には暖房用循環ポンプP2の双方)を駆動する。それにより、浴槽内の温水は、上記したと同様にして設定温度まで昇温する。そして、一旦浴槽2内の湯温が設定温度まで昇温すると、制御部80は追い焚き運転モードを解除する。なお、自動保温運転モード選択スイッチ94がONの状態のときに、さらに追い焚き運転モード選択スイッチ95がONされたときは、制御部80は自動保温運転モードを解除するように設定される場合もある。
【0035】
給湯暖房装置1における上記した自動保温運転モードでの作動態様および追い焚き運転モードでの作動態様は、従来のものと同じである。そして、従来の給湯暖房装置1では、自動保温運転モード中に浴槽内の温水温度を維持するために追い焚き用ポンプP1を駆動して温水の保温を行うときも、また、追い焚き運転モードが選択されたことで追い焚き用ポンプP1が駆動するときも、同時に作動する暖房用循環ポンプP2は予め設定された高い回転数で駆動するように設定されており、暖房用循環ポンプP2を動かすモータは大きな電気エネルギーを消費している。
【0036】
前記したように、追い焚き運転モードを選択するときは、使用者が短時間で湯温を所定温度にまで昇温することを希望している場合であり、一方、自動保温運転モードを選択するときは、湯温が一定温度範囲内に維持されていればよく、短時間で湯温が所定温度にまで昇温することは期待してはいない。現在使用されている給湯暖房装置では、自動保温運転モードにおいても、暖房用循環ポンプを最大の出力(回転数A)で運転して短時間で所定温度にまで湯温を昇温させるようにしており、暖房用循環ポンプP2の運転において電気エネルギーの無駄が生じている。
【0037】
本発明は、その電気エネルギーの無駄をなくそうとするものであり、使用者がリモートコントローラ90で自動保温運転モードを選択したときは、制御部80は、暖房用循環ポンプP2の回転数を、暖房用端末機器40の間で温水を循環させるときの回転数Aよりも小さい回転数Cとする制御を行うようにする。
【0038】
図3および図4の制御フローを参照して、本発明をより詳細に説明する。最初にコントローラ90での運転開始スイッチ93がONされる。制御部80は、暖房用端末機器40のいずれかが使用中がどうかを検知する(S10)。使用中かどうかは暖房用循環路4に設けた図示しない流量センサ等で検知できる。
【0039】
使用されている場合には、S30(図4)に進む。使用されていない場合には、S11において自動保温運転モードが選択されているかどうかを判断する。選択されていない場合には、さらに追い焚きスイッチ95が押し下げられているかどうかを判断する(S12)。押し下げられている場合には、使用者は温水の短時間での昇温を望む場合であり、追い焚き運転は暖房用循環ポンプP2の当初設定された回転数Aで行う(S13)。
【0040】
S11で自動保温運転モードが選択されている場合にも、追い焚きスイッチ95が押し下げられているかどうかを判断する(S14)。押し下げられている場合には、使用者は自動保温運転モードであっても温水の短時間での昇温を望む場合であり、追い焚き運転は暖房用循環ポンプP2の当初設定された回転数Aで行う(S13)。
【0041】
S14で追い焚きスイッチ95が押し下げられていない場合には、ふろ自動による1回目の沸き上げが完了しているかどうかを判断する(S15)。1回目の沸き上げが完了していない場合には、追い焚き運転を暖房用循環ポンプP2の回転数Aで行い(S16)、早く設定温度の湯温とすることで利用者に不快感を与えないようにする。
【0042】
1回目の沸き上げが完了している場合には、下記の自動保温運転をすべき条件(※1)になったかどうかを判断する(S17)。(※1:例えば、ふろ湯温<ふろ設定温度、かつ追い焚き循環流量≧所定値(例えば3L/分)の条件が挙げられる。後者は空焚きを防止するためである)。条件を満たした場合に、さらに、ふろ湯温tがふろ設定温度t1(例えば40℃)から設定値t2(例えば2〜3℃程度)を引いた値よりも高いかどうかを判断する(S18)。もし、t<t1−t2の場合には、何らかの事情により予期していない湯温の降下が生じたことを示しており、早期に湯温を上昇させるために追い焚き運転を暖房用循環ポンプP2の回転数Aで行う(S19)。
【0043】
S18で、ふろ湯温tがふろ設定温度t1(例えば40℃)から設定値t2(例えば2〜3℃程度)を引いた値よりも高い場合には、ふろを沸かした者は、湯温が一定温度範囲内に維持されていればよく、短時間で湯温が所定温度にまで昇温することは期待してはいないと判断することができるので、追い焚き運転を、暖房用循環ポンプP2の当初設定された回転数Aよりも低い例えば70〜90%の回転数Cで行うようにする(S20)。このように、暖房用循環ポンプP2の回転数を低くして追い焚き運転を行うことで、暖房用循環ポンプP2を駆動するモータの消費エネルギー(電力量)を低減することができ、省エネルギー運転が可能となる。
【0044】
暖房用循環ポンプP2の回転数を低くして自動保温運転モードでの追い焚き運転を行いながら、ふろ温度が設置温度になったかどうかを検知する(S21)。設定温度に達したら、追い焚きを停止してS17に戻る。以下、自動保温運転モードが解除されるまで、S17〜S21のステップを繰り返す。なお、上記のフローにおいて、S14、S15を省略して、運転することも可能であり、その場合でも、所期の目的は達成される。
【0045】
S10において、暖房用端末機器40のいずれかが使用中である場合には、S30以下のフローに従うのが好ましい。その場合には、S30において、自動保温運転モードが選択されているかどうかを判断し、選択されていない場合には、前記S12以下のフローに従う。また、選択されている場合には、S31において前記S17と同様に自動保温運転をすべき条件(※1)になったかどうかを判断し、条件を満たした場合であっても、追い焚き運転を暖房用循環ポンプP2の回転数Aで行うにする(S32)。この運転態様を取ることにより、暖房用端末機器40側の温度低下を防止して、暖房用端末機器を使用する者に不快感を与えるのを回避することができる。
【0046】
なお、省エネルギーを優先させたい場合には、暖房用端末機器40のいずれかが使用中である場合でも、S11以下のフローに従うように、制御部80を設定することも可能である。
【0047】
暖房用循環ポンプP2の回転数制御は、従来知られた任意の方法で行うことが可能であり、暖房用循環ポンプP2が直流モータを使用している場合に、例えば、PWM制御のような手段により行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1…給湯暖房装置、
2…浴槽、
3…浴槽内の温水を追い焚きするときに用いられる追い焚き用循環路、
4…第3の熱交換器と暖房用端末機器の間で温水を循環させるための暖房用循環路、
10…浴槽に温水を供給するための第1の熱交換器、
20…追い焚き用循環路に備えられた第2の熱交換器、
30…暖房用端末機器に温水を供給するための第3の熱交換器、
40…暖房用端末機器、
P1…追い焚き用ポンプ、
P2…暖房用循環ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に温水を供給するための第1の熱交換器と、追い焚き用ポンプを備えており浴槽内の温水を第2の熱交換器との間で循環させて浴槽内の温水の追い焚きを行う追い焚き用循環路と、暖房用端末機器に温水を供給するための第3の熱交換器と、暖房用循環ポンプを備えており第3の熱交換器と暖房用端末機器の間で温水を循環させるための暖房用循環路と、制御部とを少なくとも備えた給湯暖房装置であって、
前記第2の熱交換器は前記追い焚き用循環路と前記暖房用循環路との間での液・液熱交換手段であり、前記制御部は、追い焚き運転モードと自動保温運転モードとを選択可能となっており、使用者が自動保温運転モードを選択したときに、前記暖房用循環ポンプの回転数を予め設定してある回転数よりも低い回転数に制御できるようになっていることを特徴とする給湯暖房装置。
【請求項2】
前記制御部は、自動保温運転モードが選択されている環境下で、追い焚き運転モードが選択されたときには、前記暖房用循環ポンプの回転数を少なくする制御を解除できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の給湯暖房装置。
【請求項3】
前記制御部は、給湯暖房装置が前記暖房用端末機器に温水を循環させる使用環境下にあるときに、自動保温運転モードが選択されても、前記暖房用循環ポンプの回転数を少なくする制御を行わないことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233628(P2012−233628A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102072(P2011−102072)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】