説明

給湯装置

【課題】高い機器効率で複数世帯に給湯ができる給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯槽1と、前記貯湯槽1の水を加熱する加熱手段2と、前記貯湯槽1に設けられた第一、第二の給湯回路6、7と、前記第一、第二の給湯回路6、7の各々について使用するか否かを設定する第一、第二の給湯回路使用設定手段15、17と、前記第一、第二の給湯回路使用設定手段15、17で設定された内容に基づいて前記加熱手段2の加熱制御方法を切り換える加熱手段制御手段20を備えたもので、複数世帯に対応したそれぞれの給湯回路毎に、使用するか否かを設定し、その情報に基づいて加熱手段2の制御方法を変えるので、無駄な湯の沸き上げを抑制して機器効率を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽を有し、複数の世帯に給湯をおこなう給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯装置は、例えば、図5のようなものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、上記特許文献1に記載された従来の給湯装置の構成図である。
【0004】
図5に示すように、貯湯槽1と、貯湯槽1の水を加熱する加熱手段2と、貯湯槽1上部の給湯口3から第一の世帯4と第二の世帯5とに分岐してそれぞれに湯を供給する第一の給湯回路6および第二の給湯回路7と、前記第一の給湯回路6には、給湯口3からの湯と給水管8からの給水を混合して所望の温度にする第一の混合弁9と、第一の給湯回路6を流れる湯量を測定する第一の積算流量計10と、この第一の積算流量計10の測定結果が予め設定された湯量に達すると第一の給湯回路6を遮断する第一の遮断弁11とを設け、前記第二の給湯回路7には、給湯口3からの湯と給水管8からの給水を混合して所望の温度にする第二の混合弁12と、第二の給湯回路7を流れる湯量を測定する第二の流量計13と、この第二の流量計13の測定結果が予め設定された湯量に達すると第二の給湯回路7を遮断する第二の遮断弁14とを設けている。
【特許文献1】特開2004−340457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の給湯装置の構成では、複数世帯の使用湯量が不釣合いである状況のうち、いずれかの世帯の使用湯量が多い場合に、全世帯に湯を配分する手段として有効であるが、逆に湯を供給する複数世帯のいずれかの世帯が未入居であるなど、全く使わないというように全世帯合計の使用湯量が少ない状況においての不釣合いについては意味がなく、このような場合には、たとえば深夜に複数世帯分の湯量を貯湯槽に貯えると、その日に使い切れない湯が余る結果、貯湯槽1の表面からの放熱量が増大し、投入エネルギーに対して利用したエネルギーの割合が減って、機器効率が大きく低下するという課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、複数世帯がひとつの貯湯槽に貯えられた湯を使う構成において、想定される世帯数に満たない場合にも高い効率を維持できる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、貯湯槽と、前記貯湯槽の水を加熱する加熱手段と、前記貯湯槽に設けられた複数の給湯回路と、前記複数の給湯回路の各々について使用するか否かを設定する給湯回路使用設定手段と、前記給湯回路使用設定手段で設定された内容に基づいて前記加熱手段の加熱制御方法を切り換える加熱手段制御手段を備えたもので、複数世帯に対応したそれぞれの給湯回路毎に、使用するか否かを設定し、その情報に基づいて加熱手段の制御方法を変えるので、無駄な湯の沸き上げを抑制して機器効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の給湯装置は、複数世帯に対応したそれぞれの給湯回路毎に、使用するか否かを
設定する給湯回路使用設定手段によって、湯を使用する世帯数を把握し、その数に応じて貯湯槽に沸き上げる湯の量や使用中に沸き増しをする場合の加熱手段の運転制御方法を変更するもので、これによって、複数世帯の中に未入居や長期不在などがあったときに、沸き上げた湯が利用されない状況が生じる前に、あらかじめ貯湯槽への沸き上げ湯量や沸き増しの方法を変更できるので、無駄な湯の沸き上げを抑制し、機器効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、貯湯槽と、前記貯湯槽の水を加熱する加熱手段と、前記貯湯槽に設けられた複数の給湯回路と、前記複数の給湯回路の各々について使用するか否かを設定する給湯回路使用設定手段と、前記給湯回路使用設定手段で設定された内容に基づいて前記加熱手段の加熱制御方法を切り換える加熱手段制御手段を備えたもので、複数世帯に対応したそれぞれの給湯回路毎に、使用するか否かを設定し、その情報に基づいて加熱手段の制御方法を変えるので、無駄な湯の沸き上げを抑制して機器効率を向上させることが可能となる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の給湯回路使用設定手段は、複数の給湯回路にそれぞれ対応して設けられ、各々の給湯回路ごとに使用するか否かを設定するもので、各世帯に設置されたリモコンなどを給湯回路使用設定手段として、その世帯の給湯回路の使用不使用を設定できるので、たとえば旅行などで不在にする場合には、その世帯の使用者が自ら設定したり、未入居の場合は住居の管理者などが、利用する場所で設定作業ができ、間違いが起こりにくい。
【0011】
第3の発明は、特に、第1の発明の給湯回路使用設定手段は、複数の給湯回路に対して少なくともひとつ設けられ、任意の給湯回路について使用するか否かを設定するもので、たとえば、集合住宅においては管理室に備えられた制御盤を給湯回路使用設定手段として、一括して設定作業ができるため、管理者にとって利便性に優れる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明のいずれか1つの発明の加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段で設定された複数の給湯回路の使用状況に応じて貯湯槽の貯湯量を変更するもので、そのとき使用している世帯数に見合った量の湯を沸き上げることで、湯余りを少なくでき、貯湯槽からの放熱を低減して、機器効率を高めることが可能となる。
【0013】
第5の発明は、特に、第4の発明の貯湯槽表面に垂直方向に温度検知手段を複数設け、加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段の設定に基づいて、参照する前記温度検知手段を変更して加熱手段を制御するもので、たとえばすべての世帯が湯を使用する場合は、複数の温度検知手段のうち、貯湯槽の最も下方に設置された温度検知手段が湯になるまで加熱手段を動作させて貯湯槽に多くの湯を貯え、仮に湯を利用するのが半分の数の世帯のときには、貯湯槽の中間高さに設けられた温度検知手段が湯を検知した段階で加熱手段の運転を停止して貯湯槽を湯で満たさないようにすることで、お湯を使用する世帯数に見合った湯量を貯湯槽に貯えることになり、湯が余ることによる無駄な放熱を抑制することができる。
【0014】
第6の発明は、特に、第4の発明の貯湯槽表面に少なくともひとつの温度検知手段を設け、加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段の設定に基づいて、加熱手段を制御するための前記温度検知手段による検知温度の閾値を変更するもので、たとえば、すべての世帯が湯を使用する場合は、貯湯槽の最も下方に設置された一個の温度検知手段が高温の湯になるまで加熱手段を動作させて貯湯槽に多くの湯を貯え、仮に湯を利用するのが半分の数の世帯のときには、同温度検知手段が中程度の温度を検知した段階で加熱手段の運転を停止して貯湯槽を高温の湯で満たさないようにすることで、使用する世帯数に見合った湯
量を貯湯槽に貯えることになり、湯が余ることによる無駄な放熱を抑制することができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1〜第6の発明のいずれか1つの発明の加熱手段として、ヒートポンプサイクルを用いるもので、貯湯槽に湯が余った場合、ヒートポンプの特性として、再沸き上げ時に効率が著しく低下する問題点を大幅に軽減でき、機器効率を高めることが可能となる。
【0016】
第8の発明は、第7の発明のヒートポンプサイクルは、圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷媒回路であり、前記臨界圧力以上に昇圧された冷媒により水を加熱するもので、沸き上げ温度を高温にできるので、利用できる熱量の増大と湯切れ防止性を向上することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における給湯装置について、図1〜3を用いて説明する。図1は、本実施の形態における給湯装置の構成図である。
【0019】
図1において、本実施の形態における給湯装置は、貯湯槽1と、ヒートポンプユニットからなり貯湯槽1の水を加熱する加熱手段2と、貯湯槽1上部の給湯口3から第一の世帯4と第二の世帯5とに分岐してそれぞれに湯を供給する第一の給湯回路6および第二の給湯回路7を設けている。
【0020】
第一の給湯回路6には、給湯口3からの湯と給水管8からの給水を混合して所望の温度にする第一の混合弁9を設け、前記第二の給湯回路7には、給湯口3からの湯と給水管8からの給水を混合して所望の温度にする第二の混合弁12を設けている。また、第一の世帯4には、第一の給湯回路使用設定手段15を有する第一の宅内リモコン16が設置され、第二の世帯5には、第二の給湯回路使用設定手段17を有する第二の宅内リモコン18が設置され、給湯装置本体19内には、これら第一の給湯回路使用設定手段15、第二の給湯回路使用設定手段17の設定に基づいて、加熱手段2を制御する加熱手段制御手段20を有する制御装置21が設けられている。
【0021】
さらに、貯湯槽1の表面に、貯湯槽1内の下部の水温検知に対応する第一の温度検知手段22と、貯湯槽1内の中間の高さの水温検知に対応する第二の温度検知手段23を設けている。
【0022】
図2は、本実施の形態における給湯装置の制御のブロック図である。
【0023】
図2において、第一の給湯回路使用設定手段15と第二の給湯回路使用設定手段17の設定内容および第一の温度検知手段22と第二の温度検知手段23の出力に基づいて、加熱手段制御手段20は、加熱手段2の運転を制御する構成である。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態における給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
基本的な沸き上げ動作としては、最初は、貯湯槽1に低温の水が満たされており、運転を開始すると、沸き上げ用循環ポンプ24により、貯湯槽1内の低温の水がヒートポンプ往き口25から加熱手段2に送出され、そこで加熱されて高温の湯がヒートポンプ戻り口
26から貯湯槽1に戻される。これによって、貯湯槽1には上方から順次高温の湯が貯えられていく。
【0026】
高温の湯がどれだけ貯えられたかは、第一の温度検知手段22と第二の温度検知手段23の出力によって検出し、貯湯槽1内に高温の湯を全量貯える場合は、第一の温度検知手段22が高温を検出した段階で、加熱手段制御手段20が、加熱手段2の運転を停止し、貯湯槽1の中ほどまででよい場合は、第二の温度検知手段23が、高温の湯を検出した段階で運転を停止する。沸き上げ後の給湯利用の際には、給湯口3から貯湯槽1の高温の湯が送られ、給湯に使用された湯量相当の水が貯湯槽1下部の給水口27から流入する。
【0027】
ここで、第一の世帯4と第二の世帯5において、それぞれ第一の宅内リモコン16と第二の宅内リモコン18にて、第一の給湯回路使用設定手段15と第二の給湯回路使用設定手段17の設定に応じたそれぞれの動作を説明する。
【0028】
図3に、第一、第二の宅内リモコン16、18の設定画面を示す。「使用する」と「使用しない」のいずれかを画面下部の上・下キー16aで選択することによって設定をおこなう。例えば、第一の世帯4と第二の世帯5の両方とも「使用する」を選択すると、沸き上げるべき湯量は、貯湯槽1の全量とし、したがって、加熱手段制御手段20は、第一の温度検知手段22が高温の湯を検出するまで、加熱手段2の運転をおこなう。
【0029】
たとえば、加熱手段2での沸き上げ温度が85℃とした場合に、第一の温度検知手段22で60℃の温度を検出するまで運転を続けるようにする。
【0030】
また、第二の世帯5のみ「使用しない」が選択されると、沸き上げる湯量は、貯湯槽1の半分とするため、加熱手段制御手段20は、第二の温度検知手段23が高温の湯、たとえば、上記の温度の例では、60℃を検出すると、加熱手段2の運転を停止させる。
【0031】
以上のように、使用する世帯数に応じて貯湯槽1に貯える湯量を変えることができるので、湯余りを抑制でき、その結果、貯湯槽1からの放熱を減少させて、機器の効率を向上させることができる。また、次回の沸き上げに際し、ヒートポンプユニット2の特性上、低温の水を沸き上げるのに比較して、余った湯の再沸き上げは効率が低くなるので、この実施の形態においては、貯湯槽1から放熱に加えて、多大な効果を得ることができる。
【0032】
なお、加熱手段2の冷凍サイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。二酸化炭素を冷媒として用いることで沸き上げ温度を高温にできるので、利用できる熱量の増大と湯切れ防止性を向上することができる。
【0033】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における給湯装置の制御のブロック図、図5は、同給湯装置の給湯回路使用設定手段の設定画面を示した図である。
【0034】
図4、5において、本実施の形態における給湯装置と、上記第1の実施の形態における給湯装置と異なる点は、加熱手段制御手段20が、加熱手段2の停止を判断するために貯湯槽1の水温検知において、第一の温度検知手段22だけを使うことと、給湯回路の使用の設定は、一台の第一の給湯回路使用設定手段30によってのみおこなう点で、その他の構成は、上記第1の実施の形態における給湯装置と同一なので、同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
以上のように構成された給湯装置について動作を説明すると、図5に示すような第一の給湯回路使用設定手段30の画面を用いて、第一の世帯4と第二の世帯5の両方とも「使
用する」設定の場合は、実施の形態1の動作と同様であるが、一方の所帯、例えば、第二の世帯5だけ「使用しない」と設定されると、加熱手段制御手段20は、第一の温度検知手段22の検出温度はより低い温度、たとえば40℃を検出した時点で、加熱手段2の運転を停止する。これによって、貯湯槽1にはより少ない量の湯を貯えることとなり、使用する世帯数に応じた湯量の調節ができることで、実施の形態1と同様の効果を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、複数世帯に対して湯を供給する場合に、実際に利用する世帯数に応じて貯湯量を増減するので、前記したような家庭用の給湯装置に適用できるほか、熱源と貯湯槽を有するシステムにおいて業務用などの規模の大きい用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
【図2】同給湯装置の制御のブロック図
【図3】同給湯装置の給湯回路使用設定手段の設定画面を示した図
【図4】本発明の実施の形態2における給湯装置の制御のブロック図
【図5】同給湯装置の給湯回路使用設定手段の設定画面を示した図
【図6】従来の給湯装置の構成図
【符号の説明】
【0038】
1 貯湯槽
2 加熱手段
6 第一の給湯回路(給湯回路)
7 第二の給湯回路(給湯回路)
15、30 第一の給湯回路使用設定手段(給湯回路使用設定手段)
17 第二の給湯回路使用設定手段(給湯回路使用設定手段)
20 加熱手段制御手段
22 第一の温度検知手段(温度検知手段)
23 第二の温度検知手段(温度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、前記貯湯槽の水を加熱する加熱手段と、前記貯湯槽に設けられた複数の給湯回路と、前記複数の給湯回路の各々について使用するか否かを設定する給湯回路使用設定手段と、前記給湯回路使用設定手段で設定された内容に基づいて前記加熱手段の加熱制御方法を切り換える加熱手段制御手段を備えた給湯装置。
【請求項2】
給湯回路使用設定手段は、複数の給湯回路にそれぞれ対応して設けられ、各々の給湯回路ごとに使用するか否かを設定する構成とした請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
給湯回路使用設定手段は、複数の給湯回路に対して少なくともひとつ設けられ、任意の給湯回路について使用するか否かを設定する構成とした請求項1に記載の給湯装置。
【請求項4】
加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段で設定された複数の給湯回路の使用状況に応じて貯湯槽の貯湯量を変更する構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項5】
貯湯槽表面に垂直方向に温度検知手段を複数設け、加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段の設定に基づいて、参照する前記温度検知手段を変更して加熱手段を制御する構成とした請求項4に記載の給湯装置。
【請求項6】
貯湯槽表面に少なくともひとつの温度検知手段を設け、加熱手段制御手段は、給湯回路使用設定手段の設定に基づいて、加熱手段を制御するための前記温度検知手段による検知温度の閾値を変更する構成とした請求項4に記載の給湯装置。
【請求項7】
加熱手段として、ヒートポンプサイクルを用いた請求項1〜6のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項8】
ヒートポンプサイクルは、圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷媒回路であり、前記臨界圧力以上に昇圧された冷媒により水を加熱する構成とした請求項7に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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