説明

給湯装置

【課題】複数世帯が共用するのに適し、かつ、エネルギーロスを抑えることができる給湯装置を提供する。
【解決手段】複数世帯用の給湯装置100は、貯湯タンク20と、加熱体としてヒートポンプユニット1を有する湯生成手段15と、貯湯タンク20内に貯えられた湯を各世帯に導くための複数の給湯路3A,3Bと、各給湯路3A,3Bに配設され、貯湯タンク20からの湯を所定の給湯温度となるように水と混合する混合弁71〜74と、世帯ごとに設けられ、対応する世帯における給湯温度を各々で独立して設定可能な操作端末6A,6Bと、湯生成手段15および混合弁71〜74を制御する制御手段8と、を備えている。制御手段8は、世帯の総数のうちの給湯すべき世帯数を取得し、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて貯湯タンク20に貯えられる湯の量が少なくなるように湯生成手段15を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクから給湯を行う給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯タンクを備えた給湯装置が知られている。例えば特許文献1には、図4に示すような給湯装置200が開示されている。この給湯装置200は、給水管109から下部に水が供給される貯湯タンク102を有する貯湯タンクユニット101と、貯湯タンク102内の水を加熱する加熱体としてのヒートポンプユニット103とを備えている。ヒートポンプユニット103は、圧縮機131、高圧側熱交換器132、膨張弁133、および低圧側熱交換器134が順に接続された冷媒回路130を有している。貯湯タンク102とヒートポンプユニット103の高圧側熱交換器132とは、送水管110および送湯管111でループ状に接続されている。また、送水管110の途中には、ポンプ135が設けられている。そして、ポンプ135の稼働によって、貯湯タンク102内の水は、送水管110を介して下部から抜き出されて高圧側熱交換器132に送られ、ここで加熱されて高温の湯となる。生成された高温の湯は、送湯管111を介して貯湯タンク102の上部に戻される。このようにして、貯湯タンク102内には、上側から高温の湯が貯えられる。
【0003】
貯湯タンク102は、配管により、蛇口やシャワーなどの給湯端末104および浴槽106と接続される。貯湯タンク102内に貯えられた高温の湯を給湯端末104で利用する場合、その湯は、出湯管108、中間混合弁114、中継管115、第1混合弁116、および第1給湯管117を経由して、貯湯タンク102の上部から給湯端末104に供給される。給湯端末104に供給される湯は、第1混合弁116で所定の第1給湯温度となるように給水管109からの水と混合される。第1給湯温度は、台所もしくは洗面所などに設置される台所リモコン105または浴室内に設置される風呂リモコン107で、ユーザーが所望の温度に設定することができる。
【0004】
一方、貯湯タンク102内に貯えられた高温の湯を浴槽106への湯張りに利用する場合、その湯は、出湯管108、中間混合弁114、中継管115、第2混合弁118、第2給湯管119を経由して、貯湯タンク102の上部から浴槽106に供給される。浴槽106に供給される湯は、第2混合弁118で所定の第2給湯温度となるように給水管109からの水と混合される。第2給湯温度は、風呂リモコン107で、ユーザーが所望の温度に設定することができる。
【0005】
さらに、給湯装置200では、貯湯タンク102内の湯を用いて、浴槽106内の湯水を再び加熱する追い焚き運転が可能となっている。すなわち、給湯装置200は、貯湯タンク102内の上側に貯えられた高温の湯と浴槽106内の湯水とで熱交換を行う風呂熱交換器120を備えている。
【特許文献1】特開2005−274132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示すような給湯装置200を、二世帯住宅または集合住宅などに居住する複数世帯で共用できれば、設備コストを大幅に削減することが可能である。しかしながら、従来の給湯装置は、複数世帯での共用を想定したものではない。
【0007】
そこで、本発明者らは、複数世帯が共用するのに適した複数世帯用の給湯装置を考え出した。この給湯装置では、貯湯タンク内に貯えられた湯を各世帯に導くための複数の給湯路が設けられ、各給湯路には、貯湯タンクからの湯を所定の給湯温度となるように水と混合する混合弁が配設されている。そして、世帯ごとに操作端末が設けられ、各々の操作端末では、対応する世帯における給湯温度を独立して設定可能となっている。
【0008】
ところで、複数世帯で給湯装置を共用する場合、使用する湯の量も当然に多くなる。これに対応するためには、貯湯タンクに多くの湯を貯えておくことが好ましい。しかし、例えば、二世帯住宅の場合にはどちらかの世帯が旅行に出かけたり、あるいは集合住宅の場合には未入居の住居があったりして、複数世帯のうちの一部の世帯しか湯を使用しないことがある。この場合にも、複数世帯の全てで使用可能な量の湯を貯湯タンクに貯えるようにすると、大きなエネルギーロスが生じることになる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、複数世帯が共用するのに適し、かつ、エネルギーロスを抑えることができる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数世帯用の給湯装置であって、下部に水が供給される貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部から抜き出した水を加熱して湯とし、その湯を前記貯湯タンクの上部に戻す湯生成手段と、前記貯湯タンク内に貯えられた湯を前記世帯のそれぞれに導くための複数の給湯路と、前記給湯路のそれぞれに配設され、前記貯湯タンクからの湯を所定の給湯温度となるように水と混合する混合弁と、前記世帯ごとに設けられ、対応する世帯における前記給湯温度を各々で独立して設定可能な操作端末と、前記湯生成手段および前記混合弁を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記世帯の総数のうちの給湯すべき世帯数を取得し、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて前記貯湯タンクに貯えられる湯の量が少なくなるように前記湯生成手段を制御する、給湯装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、前述したのと同様に、複数の給湯路、各給湯路に配設された混合弁、および世帯ごとに設けられた操作端末によって、複数世帯が共用するのに適した給湯装置となっている。
【0012】
さらに、本発明の構成では、制御手段が行う制御により、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて貯湯タンクに貯えられる湯の量が少なくなるようになっているので、使用されない湯の放熱量を低減させてエネルギーロスを抑えることができる。これにより、エネルギーの利用効率が向上し、ランニングコストが抑えられるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る給湯装置100を示す。本実施形態では、二世帯住宅向けの二世帯用の給湯装置100について説明するが、本発明は、例えば集合住宅向けの三世帯以上の複数世帯用の給湯装置にも適用可能である。なお、本明細書では、説明の便宜のために、図1の左側の世帯を左世帯、右側の世帯を右世帯という。
【0015】
給湯装置100は、貯湯タンク20を有する貯湯タンクユニット2と、加熱体としてのヒートポンプユニット1と、ヒートポンプユニット1などを制御する制御手段8と、世帯ごとに設けられた操作端末6A,6Bとを備えている。
【0016】
貯湯タンク20は、下部に供給される水によって湯を上部から押し出し可能に貯えるものであり、貯湯タンク20内では、比重差によって高温の湯が上側に低温の水が下側に片寄って温度分布が形成される。具体的には、貯湯タンク20の下部には、水道管などの水源(図示せず)から延びる給水管10が接続されている。給水管10には、上流側から順に、給水加圧ポンプ11、減圧弁12が設けられていて、貯湯タンク20の下部には、貯湯タンク20内の圧力が減圧弁12で設定された圧力に保たれるように水源からの水が供給されるようになっている。貯湯タンク20の容量は、例えば二世帯用であれば450〜600Lである。なお、水源から送られる水の圧力が十分に高い場合には給水加圧ポンプ11を省略してもよい。
【0017】
ヒートポンプユニット1は、図2に示すように、冷媒回路1aを有している。この冷媒回路1aは、冷媒を圧縮する圧縮機1bと、圧縮された冷媒を貯湯タンク20内の水と熱交換させて放熱させる高圧側熱交換器1cと、放熱した冷媒を膨張させる膨張手段1dと、膨張した冷媒をファン1fによって送風される空気と熱交換させて蒸発させる低圧側熱交換器1eとが順に接続されて構成されている。冷媒としては、代替フロンまたはアンモニアなどを用いることも可能であるが、二酸化炭素を用いることが好ましい。二酸化炭素を用いれば、圧縮された冷媒が超臨界状態となるため、高いエネルギー効率で高温(例えば90℃)の湯を生成できるからである。なお、膨張手段1dとしては、単なる膨張弁であってもよいし、膨張する冷媒から動力を回収するための膨張機であってもよい。
【0018】
貯湯タンク20とヒートポンプユニット1の高圧側熱交換器1cとは、送水管21および送湯管22でループ状に接続されている。具体的には、貯湯タンク20の下部と高圧側熱交換器1cの被加熱流体流入口とが送水管21で接続され、貯湯タンク20の上部と高圧側熱交換器1cの被加熱流体流出口とが送湯管22で接続されている。また、送水管21の途中には、沸き上げポンプ23が貯湯タンクユニット2内に位置するように設けられている。そして、沸き上げポンプ23の稼働によって、貯湯タンク20内の水は、送水管21を介して下部から抜き出されて高圧側熱交換器1cに送られ、ここで加熱されて高温の湯となる。生成された高温の湯は、送湯管22を介して貯湯タンク20の上部に戻される。このようにして、貯湯タンク20内には、上側から高温の湯が貯えられる。すなわち、送水管21、ヒートポンプユニット1、送湯管22、および沸き上げポンプ23は、貯湯タンク20の下部から抜き出した水を加熱して湯とし、その湯を貯湯タンク20の上部に戻す湯生成手段15を構成する。なお、沸き上げポンプ23は、ヒートポンプユニット1内に位置するように設けられていてもよいし、送湯管22の途中に設けられていてもよい。
【0019】
さらに、送湯管22の高圧側熱交換器1cの近傍には、生成された湯の温度を検出する沸き上げ温度センサ97が設けられている。また、貯湯タンク20には、図1に示すように、当該貯湯タンク20の表面温度を検出する複数(図例では8つ)の貯湯温度センサ90が上下方向に並んで配設されている。貯湯タンク20内では上述したような温度分布が形成されるので、貯湯温度センサ90で検出された温度から貯湯タンク20内にどれだけの量の湯が貯えられているかを把握することができる。
【0020】
貯湯タンクユニット2は、貯湯タンク20の他に、貯湯タンク20内に貯えられた湯を各世帯に導くための2つの給湯路3A,3Bを有している。左世帯に湯を導く給湯路3Aは、貯湯タンク20内に貯えられた湯を、左世帯の蛇口、シャワーなどの給湯端末4Aに供給する端末給湯路(第1給湯路)3aと、貯湯タンク20内に貯えられた湯を左世帯の浴槽5Aに供給する風呂給湯路(第2給湯路)3bとを含んでいる。右世帯に湯を導く給湯路3Bは、貯湯タンク20内に貯えられた湯を、右世帯の蛇口、シャワーなどの給湯端末4Bに供給する端末給湯路(第1給湯路)3cと、貯湯タンク20内に貯えられた湯を右世帯の浴槽5Bに供給する風呂給湯路(第2給湯路)3dとを含んでいる。また、端末給湯路3a,3cの途中には、端末混合弁(第1混合弁)71,73がそれぞれ配設されており、風呂給湯路3b,3dの途中には、風呂混合弁(第2混合弁)72,74がそれぞれ配設されている。各混合弁71〜74には、給水管10の減圧弁12より下流側の位置から分岐した分岐管13が接続されている。そして、端末混合弁71,73によって貯湯タンク20からの湯が給湯端末4A,4B用の所定の端末給湯温度(第1給湯温度)となるように水源からの水と混合され、風呂混合弁72,74によって貯湯タンク20からの湯が浴槽5A,5B用の所定の風呂給湯温度(第2給湯温度)となるように水源からの水と混合されるようになっている。
【0021】
具体的には、端末給湯路3a,3cは、貯湯タンク20と端末混合弁71,73とをつなぐ第1出湯管31,35と、端末混合弁71,73と給湯端末4A,4Bとをつなぐ第1給湯管32,36とを有している。第1給湯管32,36には、当該第1給湯管32,36内を流れる湯の温度を検出する端末温度センサ91,93と、当該第1給湯管32,36を通じて供給される湯の流量を計測する端末流量計32a,36aとが上流側から順に設けられている。
【0022】
一方、風呂給湯路3b,3dは、貯湯タンク20と風呂混合弁72,74とをつなぐ第2出湯管33,37と、風呂混合弁72,74と浴槽5A,5Bとを後述する二次流通路51,53を介してつなぐ第2給湯管34,38とを有している。第2給湯管34,38には、当該第2給湯管34,38内を流れる湯の温度を検出する風呂温度センサ92,94と、当該第2給湯管34,38を通じて供給される湯の流量を計測する風呂流量計34a,38aとが上流側から順に設けられている。また、第2給湯管34,38には、風呂流量計34a,38aより下流側に電磁弁75,76が設けられている。
【0023】
なお、図1に示す例では、貯湯タンク20の近傍では、左世帯側の第1出湯管31と第2出湯管33とが合流して一本の管となり、右世帯側の第1出湯管35と第2出湯管37とが合流して一本の管となっているが、第1出湯管31,35同士が合流して一本の管となり、第2出湯管33,37同士が合流して一本の管となっていてもよい。あるいは、全ての出湯管31,33,35,37が合流して一本の管となっていてもよい。また、図1に示す例では、左世帯側の第2出湯管33から分岐する枝管28に、圧力逃がし弁29が設けられているが、圧力逃がし弁29を設ける位置は適宜変更可能である。
【0024】
さらに、貯湯タンクユニット2は、浴槽5A,5B内の湯水を循環させながら再び加熱する追い焚き運転を行うための構成を有している。具体的には、貯湯タンクユニット2は、貯湯タンク20内の高温の湯を流通させる一次流通路24,26と、浴槽5A,5B内の湯水を流通させる二次流通路51,53と、一次流通路24,26を流れる高温の湯と二次流通路51,53を流れる湯水とで熱交換させる風呂熱交換器55,56とを備えている。
【0025】
一次流通路24,26の一端は給湯路3A,3Bを介して貯湯タンク20の上部に接続され、他端は貯湯タンク20の下部に直接接続されており、一次流通路24,26の途中には、追い焚きポンプ25,27が設けられている。一方、二次流通路51,53の両端は、浴槽5A,5Bに接続されており、二次流通路51,53の途中には、風呂ポンプ52,54が設けられている。また、二次流通路51,53には、風呂ポンプ52,54より上流側に当該二次流通路51,53を流れる湯水の温度を検出する追い焚き温度センサ95,96が設けられているとともに、風呂ポンプ52,54より下流側に前述した第2給湯管34,38が接続されている。
【0026】
制御手段8は、マイクロコンピュータまたはDSP(digital signal processor)などで構成されている。そして、制御手段8は、予め記憶されたプログラムに従って、上述した各種の温度センサ90〜97で検出された温度などに基づいて、ヒートポンプユニット1、混合弁71〜74、および上述した各種のポンプ11,23,25,27,52,54の制御を行う。制御手段8には、操作端末6A,6Bが有線または無線で通信可能に接続されている。
【0027】
操作端末6A,6Bは、対応する世帯における端末給湯温度および風呂給湯温度を各々で独立して設定可能なものである。すなわち、左世帯の操作端末6Aでは、左世帯における端末給湯温度および風呂給湯温度が設定可能となっており、右世帯の操作端末6Bでは、右世帯における端末給湯温度および風呂給湯温度が設定可能となっている。各操作端末6A,6Bは、台所もしくは洗面所などに設置される台所リモコン6aと、浴室内に設置される風呂リモコン6bで構成されている。そして、端末給湯温度は、台所リモコン6aと風呂リモコン6bのどちらでも設定可能となっており、風呂給湯温度は、風呂リモコン6bで設定可能となっている。なお、風呂給湯温度を台所リモコン6aでも設定できるようにすることも可能である。
【0028】
具体的には、台所リモコン6aは、図3(a)に示すように、表示部61と、メニューボタン62a、変更ボタン62b、および確定ボタン62cからなる入力部62とを有している。また、台所リモコン6aには、浴槽5A,5Bへの湯張りを開始する風呂自動スイッチ63aが設けられている。
【0029】
ユーザーは、メニューボタン62aを押すことにより、台所リモコン6aを、端末給湯温度を設定可能な状態にすることができ、この状態で変更ボタン62bを操作することにより、端末給湯温度を所望の温度(通常は、最高60℃)に設定することができる。設定された端末給湯温度は、表示部61および後述する風呂リモコン6bの表示部65に表示される。
【0030】
さらに、ユーザーは、例えば旅行などで長期間湯を使用しない場合には、メニューボタン62aを押すことにより、台所リモコン6aを、給湯の不要な休止期間(例えば、日数)を設定可能な状態にすることができ、この状態で変更ボタン62bを操作することにより、それぞれの台所リモコン6aで個別に所望の休止期間を設定することができる。すなわち、入力部62は、給湯の不要な休止期間を設定可能な休止設定手段を構成する。ここで、休止期間の設定は、いつまで湯を使用し、次にいつ湯を使用するかを考えて行う。例えば、4泊5日の旅行に出かける場合であって出発日および帰宅日に湯を使用したい場合は、給湯の全く不要な日数は3日間である。そこで、ユーザーは、休止期間として、予め出発日の翌日から3日間を設定しておいてもよいし、あるいは出発する際に出発日から4日間を設定してもよい。
【0031】
また、休止期間が設定されていないということは、その世帯には給湯が必要であるということを意味する。すなわち、各台所リモコン6aの入力部62は、それぞれの世帯で給湯すべきか否かを選択可能な選択手段をも構成する。
【0032】
さらには、全体的に見れば、双方の台所リモコン6aで休止期間が設定されていなければ、給湯の必要な世帯数は世帯の総数の2であり、いずれか一方の台所リモコン6aで休止期間が設定されれば、給湯の必要な世帯数は1であり、双方の台所リモコン6aで休止期間が設定されれば、給湯の必要な世帯数は0である。すなわち、双方の台所リモコン6aの入力部62は、世帯の総数のうちで給湯すべき世帯数を選定可能な選定手段を構成する。
【0033】
設定された休止期間は表示部61に表示され、ユーザーが給湯すべきか否かを選択した結果が表示部61によって分かるようになっている。なお、一旦休止期間を設定したとしても、ユーザーは、入力部62を操作することにより、休止を解除することができる。
【0034】
さらに、表示部61には、制御手段8が貯湯温度センサ90で検出された温度から把握した貯湯タンク20内の残湯量も表示されるようになっている。
【0035】
一方、風呂リモコン6bは、図3(b)に示すように、台所リモコン6aと同様に、表示部65と、メニューボタン66a、変更ボタン66b、および確定ボタン66cからなる入力部66とを有している。また、風呂リモコン6bには、浴槽5A,5Bへの湯張りを開始する風呂自動スイッチ67aと、追い焚きを開始する追い焚きスイッチ67bとが設けられている。
【0036】
ユーザーは、メニューボタン66aを押すことにより、風呂リモコン6bを、端末給湯温度を設定可能な状態にすることができ、この状態で変更ボタン66bを操作することにより、台所リモコン6aと同様に端末給湯温度を所望の温度に設定することができる。設定された端末給湯温度は、表示部65および前述した台所リモコン6aの表示部61に表示される。
【0037】
また、ユーザーは、メニューボタン66aを押すことにより、風呂リモコン6bを、風呂給湯温度を設定可能な状態にすることができ、この状態で変更ボタン66bを操作することにより、風呂給湯温度を所望の温度(通常は、32〜48℃程度)に設定することができる。設定された風呂給湯温度は、表示部65に表示される。
【0038】
さらに、ユーザーは、メニューボタン66aを押すことにより、風呂リモコン6bを、追い焚き温度を設定可能な状態にすることができ、この状態で変更ボタン66bを操作することにより、それぞれの風呂リモコン6bで個別に追い焚き温度を所望の温度(通常は、32〜48℃程度)に設定することができる。設定された追い焚き温度は、表示部65に表示される。
【0039】
次に、制御手段8が行う主な制御について詳しく説明する。
【0040】
<沸き上げ運転>
制御手段8は、貯湯温度センサ90で検出された温度から貯湯タンク20内に必要な量の湯が残っているか否かを判定する。具体的には、制御手段8は、時間帯に応じて貯湯温度センサ90のうちの1つを貯湯量判定用のセンサとして特定し、特定した貯湯温度センサ90で検出された温度と所定の第1判定温度(例えば45℃)とを比較する。そして、特定した貯湯温度センサ90で検出された温度が所定の第1判定温度を下回っている場合、すなわち貯湯タンク20内に必要な量の湯が残っていない場合には、制御手段8は、適切なタイミングでヒートポンプユニット1および沸き上げポンプ23を稼働させる。沸き上げポンプ23については、沸き上げ温度センサ97で検出される温度が所定の沸き上げ温度(例えば85℃)となるように回転数を調整する。これにより、貯湯タンク20内には、所定の沸き上げ温度の湯が上側から貯えられる。その後、制御手段8は、特定した貯湯温度センサ90で検出される温度が所定の第2判定温度(例えば50℃)となった時、すなわち貯湯タンク20内に必要な量の湯が貯えられた時に、ヒートポンプユニット1および沸き上げポンプ23を停止させて湯生成手段15による湯の生成(沸き上げ)を終了する。
【0041】
<端末給湯運転>
給湯端末4A,4Bの給湯栓が開かれると、制御手段8は、端末温度センサ91,93で検出される温度が台所リモコン6aまたは風呂リモコン6bで設定された端末給湯温度となるように端末混合弁71,73を制御して、貯湯タンク20からの湯と水源からの水との混合比率を調整する。これにより、左世帯の給湯端末4Aには、貯湯タンク20からの湯が左世帯の操作端末6Aで設定された端末給湯温度に調節されて供給され、右世帯の給湯端末4Bには、貯湯タンク20からの湯が右世帯の操作端末6Bで設定された端末給湯温度に調節されて供給される。給湯栓が閉じられると、給湯端末4A,4Bへの給湯が終了する。
【0042】
<湯張り運転>
台所リモコン6aまたは風呂リモコン6bの風呂自動スイッチ63a,67aが押されると、制御手段8は、電磁弁75,76を開くとともに、風呂温度センサ92,94で検出される温度が風呂リモコン6bで設定された風呂給湯温度となるように風呂混合弁72,74を制御して、貯湯タンク20からの湯と水源からの水との混合比率を調整する。これにより、左世帯の浴槽5Aには、貯湯タンク20からの湯が左世帯の操作端末6Aで設定された風呂給湯温度に調節されて供給され、右世帯の浴槽5Bには、貯湯タンク20からの湯が右世帯の操作端末6Bで設定された風呂給湯温度に調節されて供給される。その後、制御手段8は、二次流通路51,53に設けられた図略の水位センサで検出される水位が所定の浴槽水位となった時に、電磁弁75,76を閉じて浴槽5A,5Bへの湯張りを終了する。
【0043】
<追い焚き運転>
風呂リモコン6bの追い焚きスイッチ67bが押されると、制御手段8は、追い焚きポンプ25,27および風呂ポンプ52,54を稼働させる。その後、制御手段8は、追い焚き温度センサ95,96で検出される温度が風呂リモコン6bで設定された追い焚き温度となった時に、追い焚きポンプ25,27および風呂ポンプ52,54を停止させて追い焚きを終了する。
【0044】
<休止運転>
制御手段8は、双方の台所リモコン6aで休止期間が設定されていない場合、すなわち二世帯使用の場合には、前記の沸き上げ運転において、例えば電気料金の安い深夜時間帯では貯湯温度センサ90のうちの一番下の貯湯温度センサ90を貯湯量判定用のセンサとして特定する。しかし、いずれか一方の台所リモコン6aで休止期間が設定された場合、すなわち一世帯使用の場合には、制御手段8は、前記の沸き上げ運転において、同じ深夜時間帯でも貯湯温度センサ90のうちの例えば下から5番目の貯湯温度センサ90を貯湯量判定用のセンサとして特定する。すなわち、制御手段8は、台所リモコン6aから世帯の総数のうちの給湯すべき世帯数を取得し、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて貯湯温度センサ90のうちのより上側の貯湯温度センサ90を貯湯量判定用のセンサとして特定する。このような特定をすることで、制御手段8は、ヒートポンプユニット1および沸き上げポンプ23の停止のタイミングを早めて、貯湯タンク20に貯えられる湯の量を二世帯使用の場合よりも一世帯使用の場合の方が少なくなるようにする。換言すれば、制御手段8は、台所リモコン6aで選定された給湯すべき世帯数に応じて、選定された世帯数が少なくなるにつれて貯湯タンク20に貯えられる湯の量が少なくなるように、湯生成手段15を制御する。
【0045】
また、双方の台所リモコン6aで休止期間が重複するように設定された場合、すなわち全ての世帯において休止期間が重複するように設定された場合には、制御手段8は、いずれかの世帯の休止期間が終了するまで、またはいずれかの世帯で休止が解除されるまでヒートポンプユニット1および沸き上げポンプ23を稼働させないようにして、湯生成手段15による湯の生成を停止する。このようにすることにより、無駄な沸き上げ運転を防止することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の給湯装置100では、制御手段8が行う制御により、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて貯湯タンク20に貯えられる湯の量が少なくなるようになっているので、使用されない湯の放熱量を低減させてエネルギーロスを抑えることができる。これにより、エネルギーの利用効率が向上し、ランニングコストが抑えられるようになる。
【0047】
ここで、各台所リモコン6aに、給湯の要否をオン・オフで切り替え可能な入切スイッチを設け、この入切スイッチによってそれぞれの世帯で給湯すべきか否かを選択可能な選択手段を直接的に構成することも可能である。これらの入切スイッチは、本実施形態の入力部62と同様に、全体的に見れば、世帯の総数のうちで給湯すべき世帯数を選定可能な選定手段をも構成する。ただし、本実施形態のように、入力部62によって選択手段を構成すれば、既製の台所リモコン6aをそのまま利用することができ、コストアップを抑えることができる。
【0048】
また、例えば親世帯と子世帯とで給湯装置100を共有する場合は、子世帯の台所リモコン6aに、二世帯使用か一世帯使用かを切り替える切り替えスイッチを設けてもよい。この切り替えスイッチは、世帯の総数のうちで給湯すべき世帯数を選定可能な選定手段を直接的に構成する。このようにすれば、操作の確実な子世帯が選定状況を管理することができ、安全性および利便性が向上する。
【0049】
さらに、制御手段8は、端末流量計32a,36aおよび風呂流量計34a,38aを利用すれば、給湯すべき世帯数を自動的に取得することもできる。すなわち、給湯路3A,3Bごとに端末流量計32a,36aと風呂流量計34a,38aの双方が計測を終了してからの時間をタイマーで計るようにする。そして、給湯路3A,3Bのうちで所定時間以上湯が流れない(端末流量計と風呂流量計のどちらもが所定時間以上計測を行わない)未使用の給湯路がある場合には、制御手段8が、世帯の総数から未使用の給湯路の数を引いた数を給湯すべき世帯数として得るようにすればよい。
【0050】
また、貯湯タンク20内の湯量を制御する方法としては、貯湯量判定用のセンサとして用いる貯湯温度センサ90を給湯すべき世帯数に応じて変更する以外の方法も採用可能である。例えば、貯湯量判定用のセンサとして、給湯すべき世帯数が異なっていても同じ位置の貯湯温度センサ90を用い、世帯数が少なくなるほど前述した第1判定温度および第2判定温度を低くするようにしてもよい。ただし、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれてより上側の貯湯温度センサ90を用いるようにすれば、湯量をより正確に制御することができる。なお、給湯すべき世帯数に応じて異なる位置の貯湯温度センサ90を用いる場合でも、貯湯温度センサ90の位置に応じて第1判定温度および第2判定温度を若干変更するようにしてもよい。
【0051】
前記実施形態では、二世帯住宅向けの二世帯用の給湯装置100を示したが、集合住宅向けの三世帯以上の複数世帯用の給湯装置とするには、給湯路3A,3Bおよび操作端末6A,6Bの数を世帯数に合わせて増やせばよい。
【0052】
さらに、集合住宅の場合には、全ての操作端末の構成が前記実施形態と同様となっていてもよいが、操作端末のうちの1つ、例えば管理人の操作端末に、世帯の総数のうちで給湯すべき世帯数を選定可能な選定手段として、テンキー入力式の世帯数入力部または世帯の総数と同数の入切スイッチを設けてもよい。このようにすれば、管理人が自分の住居で世帯数を選定することができるようになる。
【0053】
あるいは、集合住宅の場合には、上記のような選択手段を操作端末とは別に設けてもよい。選択手段を操作端末に設けると、日々の操作端末の操作の際に選択手段を誤操作してしまうおそれがあるが、選択手段を操作端末とは別に設ければそのような誤操作を防ぐことができる。この場合の選択手段は、管理人の住居に設置してもよいし、貯湯タンクユニット2内に設置してもよい。
【0054】
また、貯湯タンク20内の水を加熱する加熱体としては、ヒートポンプユニット1以外にも、電気ヒータ、ガス燃焼機器などを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る給湯装置の概略構成図である。
【図2】図1の給湯装置におけるヒートポンプユニットの概略構成図である。
【図3】(a)は台所リモコンの正面図、(b)は風呂リモコンの正面図である。
【図4】従来の給湯装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ヒートポンプユニット
1a 冷媒回路
1b 圧縮機
1c 高圧側熱交換器
1d 膨張手段
1e 低圧側熱交換器
15 湯生成手段
2 貯湯タンクユニット
20 貯湯タンク
21 送水管
22 送湯管
23 沸き上げポンプ
3A、3B 給湯路
3a,3c 端末給湯路(第1給湯路)
3b,3d 風呂給湯路(第2給湯路)
4A,4B 給湯端末
5A,5B 浴槽
6A,6B 操作端末
6a 台所リモコン
6b 風呂リモコン
62,66 入力部
71,73 端末混合弁(第1混合弁)
72,74 風呂混合弁(第2混合弁)
8 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数世帯用の給湯装置であって、
下部に水が供給される貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部から抜き出した水を加熱して湯とし、その湯を前記貯湯タンクの上部に戻す湯生成手段と、
前記貯湯タンク内に貯えられた湯を前記世帯のそれぞれに導くための複数の給湯路と、
前記給湯路のそれぞれに配設され、前記貯湯タンクからの湯を所定の給湯温度となるように水と混合する混合弁と、
前記世帯ごとに設けられ、対応する世帯における前記給湯温度を各々で独立して設定可能な操作端末と、
前記湯生成手段および前記混合弁を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記世帯の総数のうちの給湯すべき世帯数を取得し、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて前記貯湯タンクに貯えられる湯の量が少なくなるように前記湯生成手段を制御する、給湯装置。
【請求項2】
前記貯湯タンクには、当該貯湯タンクの表面温度を検出する複数の温度センサが上下方向に並んで配設されており、
前記制御手段は、給湯すべき世帯数が少なくなるにつれて前記温度センサのうちのより上側の温度センサを特定し、特定した温度センサで検出される温度が所定温度となった時に、稼働させた前記湯生成手段を停止させる、請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記世帯の総数のうちで給湯すべき世帯数を選定可能な選定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記選定手段で選定された世帯数に応じて前記湯生成手段を制御する、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記選定手段は、前記操作端末とは別に設けられている、請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記選定手段は、前記操作端末のうちの1つに設けられている、請求項3に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記選定手段は、前記操作端末のそれぞれに設けられた、それぞれの世帯で給湯すべきか否かを選択可能な選択手段で構成されている、請求項3に記載の給湯装置。
【請求項7】
前記選択手段は、給湯の不要な休止期間を設定可能な休止設定手段である、請求項6に記載の給湯装置。
【請求項8】
前記制御手段は、全ての世帯において前記休止期間が重複するように設定された場合は、いずれかの世帯の休止期間が終了するまで、またはいずれかの世帯で休止が解除されるまで前記湯生成手段による湯の生成を停止する、請求項7に記載の給湯装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記給湯路のうちで所定時間以上湯が流れない未使用の給湯路がある場合には、前記世帯の総数から未使用の給湯路の数を引いた数を給湯すべき世帯数として得る、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項10】
前記湯生成手段は、圧縮機、高圧側熱交換器、膨張手段、および低圧側熱交換器が順に接続された冷媒回路を有するヒートポンプユニットと、前記高圧側熱交換器と前記貯湯タンクの下部とを接続する送水管と、前記高圧側熱交換器と前記貯湯タンクの上部とを接続する送湯管と、前記送水管または前記送湯管に設けられたポンプと、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の給湯装置。
【請求項11】
前記ヒートポンプユニットは、冷媒として二酸化炭素が用いられたものである、請求項10に記載の給湯装置。
【請求項12】
前記給湯路のそれぞれは、前記貯湯タンク内に貯えられた湯を給湯端末に供給する第1給湯路と、前記貯湯タンク内に貯えられた湯を浴槽に供給する第2給湯路とを含み、
前記混合弁は、前記第1給湯路のそれぞれに配設され、前記貯湯タンクからの湯を前記給湯端末用の所定の第1給湯温度となるように水と混合する第1混合弁と、前記第2給湯路のそれぞれに配設され、前記貯湯タンクからの湯を前記浴槽用の所定の第2給湯温度となるように水と混合する第2混合弁とで構成されており、
前記操作端末は、対応する世帯における前記第1給湯温度および前記第2給湯温度を各々で独立して設定可能なものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−168391(P2009−168391A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8760(P2008−8760)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】