説明

給湯装置

【課題】施工条件の相違による影響を受けずに温度センサのシフト故障を正確に検出でき、しかも、無駄な捨て水が少ない給湯装置を提供する。
【解決手段】入水温度センサ6と出湯温度センサ9とを備えた給湯装置において、制御部10が、加熱手段に対する加熱要求発生条件が満たされても加熱手段を非加熱状態に保ちながら、この間に入水温度センサ6の検出値が所定の温度範囲内に維持されつつ給湯装置の保有水量相当分の通水が検出されたことを条件として、出湯温度センサ9の検出値と入水温度センサ6の検出値とを比較して、その差が所定値を超える場合に温度センサの異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給湯装置に関し、より詳細には、出湯温度を検出するために設けられた出湯温度センサのシフト故障(いわゆる中途半端故障)を検出する機能を備えた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カランなどの給湯栓に温水を供給できるように構成された給湯装置は、入水管を介して供給される非加熱水等を器具に備えられた熱交換器等の加熱手段で加熱し、加熱後の温水を直接または非加熱水等と混合して出湯管から出湯させることにより、給湯設定温度に応じた温水が給湯栓から給湯されるように構成されている。
【0003】
すなわち、この種の給湯装置には、少なくとも、入水管から供給される入水の温度を検出する入水温度センサと、出湯管から出湯される温水の温度を検出する出湯温度センサとが備えられており、給湯装置の制御手段は、これらの温度センサの検出値に基づいて加熱手段を制御するように構成されている。
【0004】
したがって、この種の給湯装置では温度センサのシフト故障により温度センサの検出温度と実際の水温等にズレが生じると、給湯設定温度に応じた温水を供給できないという問題がある。そのため、この種の給湯装置においては、温度センサのシフト故障を検出するために様々な工夫がなされている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、給湯栓が開かれたときに、前回の給湯器使用時から今回の使用時までの給湯器未使用時間を確認し、この未使用時間が所定時間を経過しているときは、非加熱で通水を行い、入水温度センサと出湯温度センサの検出温度が入水温度に安定するのを待って両温度センサの検出値を比較して温度センサの良否を判定するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−297964号公報の[0015]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような温度センサの故障検出方法では以下のような問題がある。
すなわち、上述した特許文献1に記載の給湯装置では、入水温度センサと出湯温度センサの検出温度が入水温度に安定するのを待ってから両温度センサの検出値を比較するように構成しているが、入水温度センサから出湯温度センサに至るまでの配管内の水温にはバラツキがあることから、仮に出湯温度センサの検出温度と入水温度センサの検出温度とが一致したとしても、それは偶然に同じ温度を検出したに過ぎない場合も含まれるので、温度センサのシフト故障の検出という点では正確性に問題が残る。
【0008】
また、この点に関して、特許文献1の給湯装置では、出湯温度センサと入水温度センサの検出温度の比較に先立って所定の通水量だけ水を流すようにして入水温度の安定を図っているが、給湯装置の入水管と水源となる水道本管とを接続する枝管の施工条件は現場ごとにまちまちであり、所定量の水を流したからといって必ずしも均一な温度の通水が得られる訳ではない。すなわち、施工現場によっては、上記枝管の一部に凍結防止用のヒータが配設されていたり、枝管の一部が直射日光等に晒されて加熱されている場合があり、そのような場合、当該部分の水温が上昇し均一な温度の通水を得ることができない。つまり、所定量の通水を流すように構成したとしても必ずしも入水温度の安定が図られる訳ではなく、この点でも正確な故障検出ができない場合があった。なお、このような施工現場ごとの施工条件の相違を吸収できるようにシフト故障検出前の通水量を設定しようとすると、いきおいその通水量が多くなり、無駄な捨て水が増えるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、施工条件の相違による影響を受けずに温度センサのシフト故障を正確に検出でき、しかも、無駄な捨て水が少ない給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る給湯装置は、少なくとも、入水管からの入水温度を検出する入水温度センサと、出湯管からの出湯温度を検出する出湯温度センサとを備えた給湯装置において、制御手段は、加熱手段に対する加熱要求発生条件が満たされても加熱手段を非加熱状態に保ちながら、この間に上記入水温度センサの検出値が所定の温度範囲内に維持されつつ給湯装置の保有水量相当分の通水が検出されたことを条件として、上記出湯温度センサの検出値と、上記入水温度センサの検出値および/または上記入水温度センサと上記出湯温度センサとの間の管路上に設置された第3の温度センサの検出値とを比較して、その差が所定値を超える場合に温度センサの異常と判定する制御構成を有することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明の給湯装置では、出湯温度センサと他の温度センサ(上記入水温度センサおよび/または上記第3の温度センサ)の検出温度を比較することにより温度センサのシフト故障を検出するにあたり、制御手段は、給湯栓が開かれて器具に通水が発生し、これに伴って加熱手段に対する加熱要求発生条件が満たされた場合でも、加熱手段による入水の加熱は行わずに非加熱状態のまま出湯管に導通させる。そして、この状態で、制御手段は入水温度センサの検出温度を監視し、検出温度が所定の温度範囲内(たとえば、±1℃の範囲内)に収まっているか(安定しているか)を判断する。そして、入水温度センサの検出温度が上記所定の温度範囲内に収まっている状態で給湯装置の保有水量相当分の通水が得られたときに温度センサの検出値の比較を行う。
【0012】
つまり、本発明では、安定した水温の入水が得られ、かつ、この安定した水温の入水によって器具の配管内が満たされたときに出湯温度センサの検出値と他の温度センサの検出値の比較を行って温度センサのシフト故障の判定を行うので、出湯温度センサと他の温度センサにおいて温度検出の対象とされる水の実際の水温はほぼ同一の状態が確保されるので、温度センサのシフト故障の判定を正確に行うことができる。
【0013】
しかも、給湯装置への入水の温度が安定することを故障判定の条件の一つとしているので、水道本管から給湯装置までの枝管に水温にバラツキを発生させるような事情があったとしても、それにはまったく影響されずに温度センサのシフト故障を判定できる。また、入水温度の安定後は、給湯装置の保有水量相当分の通水があれば温度センサのシフト故障の判定を行うので、無駄な捨て水を最小限に抑えることができる。
【0014】
また、本発明はその好適な実施態様として、上記制御手段は、加熱要求発生条件が満たされてから所定期間が経過しても上記入水温度センサの検出値が所定の温度範囲内に維持されない場合には、上記出湯温度センサとその他の温度センサとの検出値の比較は行わずに加熱手段の非加熱状態を解除する制御構成を備えたことを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明のように入水温度の安定を待って温度センサのシフト補正の判定を行う構成を採用すると、入水温度が安定しなければ、その間は非加熱状態での通水が維持され捨て水が多く発生することになるので、本実施態様では、加熱要求発生条件が満たされてから所定期間が経過したにもかかわらず入水温度センサの検出値が安定しない場合には、温度センサのシフト故障の判定を中止する。これにより、その後も器具への通水が継続していれば、加熱手段は加熱状態に制御されるので、捨て水の発生量を少なくすることができる。
【0016】
また、本発明は他の好適な実施態様として、上記制御手段は、上記給湯装置の保有水量相当分の通水の検出を、上記加熱手段への通水量を検出する流量センサの検出値に基づいて行うことを特徴とする。
【0017】
すなわち、本実施態様では、給湯装置の保有水量相当分の通水の検出が加熱手段への通水量を検出する流量センサの検出値に基づいて行われる。具体的には、たとえば、制御手段が流量センサで検出される流量の積算値を測定し、この積算値(積算通水量)が予め設定された給湯装置の保有水量に達した時点で温度センサの温度比較を行うように構成される。また、他の態様としては、給湯栓が開かれた初期段階での流量が変動しないと仮定し、初期段階で検出された流量によって給湯装置の保有水量相当分の通水が得られるまでの所要時間を演算し、入水温度が安定してから当該所要時間が経過した時点で温度センサの温度比較を行うように構成される。
【0018】
また、本発明は他の好適な実施態様として、上記入水管と出湯管との間に上記加熱手段をバイパスするバイパス管が配されるとともに、このバイパス管の通水量を調整する流量調整手段が備えられてなり、上記制御手段は、上記加熱手段を非加熱状態に保っている状態でも、上記出湯温度センサの検出値が給湯設定温度となるように上記流量調整手段を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、この実施態様では、加熱手段が非加熱状態の場合でもバイパス管の流量調整手段が給湯設定温度に応じて制御されるので、たとえば、加熱手段によって加熱された状態の高温の温水が給湯装置に残留しているような場合でも、温度センサのシフト故障の判定における通水時に当該高温の温水がそのまま出湯されることが防止される。つまり、高温の温水が残留する場合、給湯設定温度に調整された温水が出湯される。
【0020】
また、本発明の他の好適な実施態様は、上記所定値が段階的に複数設定され、上記出湯温度センサの検出値とその他の温度センサの検出値との差が、どの段階の所定値を超えるかに応じて、上記温度センサの異常判定を確定させる検出回数を異ならせたことを特徴とする。
【0021】
すなわち、本実施態様では、温度センサのシフト故障の検出に用いられる閾値が数段階(たとえば2段階)設定される。これは、シフト故障の検出を行う温度センサにはそれぞれ固体ごとのバラツキがあり、この固体ごとのバラツキがたとえば±3℃あると仮定すると、故障判定時に比較される温度センサの検出値には最大6℃のずれが生じることとなる。したがって、比較結果として得られた検出値の差がこの個体差のバラツキの範囲(上記例示では6℃)に近い場合、それは固体ごとのバラツキによる可能性があるため、本実施態様では、このような固体ごとのバラツキにより検出値に差が出ることを考慮して、比較結果として得られた検出値の差がこのバラツキによる誤差の範囲に近い場合には直ちに(1回の検出で)シフト故障と判定せず、その検出回数が予め定められた所定回数に達したときに故障と判定する。これに対して、比較結果として得られた検出値の差がこのバラツキによる誤差の範囲よりも相当程度大きい場合(たとえば20℃以上であるような場合)には、固体ごとのバラツキによる可能性は低いので、直ちに(1回の検出で)シフト故障と判定するようにしている。
【0022】
つまり、本実施態様では温度センサの個体差によるバラツキを考慮してシフト故障の検出に用いる閾値(所定値)を数段階設定し、その程度に応じて故障と判定する検出回数を設定しているので、明らかにシフト故障である場合には直ちに故障と判定される一方、個体ごとのバラツキによるものと疑われる場合にはシフト故障の可能性が高いことを確認して故障と判定できるので、温度センサのシフト故障の検出をより正確に行うことができる。
【0023】
また、本発明はその好適な実施態様として、上記制御手段は、温度センサの異常と判定した場合、所定の異常報知および/または所定の安全動作を行う制御構成を備えたことを特徴とする。これにより温度センサの異常を速やかに知らせることができ、また、安全動作により異常出湯の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、入水の水温が安定し、かつ、水温の安定した入水によって給湯装置の配管内が満たされたときに出湯温度センサと他の温度センサの検出値の比較を行って温度センサのシフト故障が判定されるので、温度センサのシフト故障の判定を正確に行うことができる。
【0025】
しかも、請求項2に係る発明によれば、所定期間が経過しても入水温度が安定しなければ、温度センサのシフト故障の判定が中止され、その後は加熱手段による加熱が行われるので、シフト故障判定時の捨て水が多くなるのを回避することができる。
【0026】
また、請求項4に係る発明によれば、加熱手段が非加熱状態の場合でもバイパス管の流量調整手段が給湯設定温度に応じて制御されるので、シフト故障の判定の際の通水時に高温の温水が出湯されるのを防止でき、安全性においても優れている。
【0027】
さらに、請求項5に係る発明によれば、温度センサの個体差によるバラツキを考慮してシフト故障の検出に用いる所定値を数段階設定し、その程度に応じて故障と判定する検出回数を設定することで、温度センサの個体ごとのバラツキによる誤判定が抑制され、温度センサのシフト故障の検出をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1は、本発明に係る給湯装置の概略構成の一例を示す説明図である。図示のように、この給湯装置は、給水源となる水道本管Aから分岐された枝管Bと接続される入水管1と、この入水管1から供給される入水を加熱する加熱手段を構成する熱交換器2と、熱交換器2で加熱された温水を給湯栓Cに接続された給湯配管Dに導出する出湯管3とを主要部として構成されている。
【0029】
そして、本実施形態に示す給湯装置では、さらに上記入水管1と出湯管3との間に熱交換器2をバイパスするバイパス管4が配設されており、このバイパス管4にはその通水量を調整する流量調整手段としてバイパス流量調整弁5が設けられている。このバイパス管4は、熱交換器2で加熱された温水が給湯設定温度よりも高い場合に、当該温水に入水管1からの水を混合して給湯設定温度の出湯が得られるように設けられたもので、上記バイパス流量調整弁5は後述する制御部10によって弁開度(つまりは、バイパス管4の流量)の制御ができるよう構成されている。なお、熱交換器2で加熱された温水が給湯設定温度以下の場合には、上記バイパス流量調整弁5は全閉に制御され、入水管1から出湯管3への通水は遮断される。
【0030】
上記入水管1には、上記枝管Bを介して供給される水の入水温度を検出するための入水温度センサ6と、熱交換器2への通水量を検出するための流量センサ7とが設けられている。上述したように、本実施形態に示す給湯装置は入水管1に供給される入水の一部を出湯管3に導くバイパス管4が備えられているので、熱交換器2への通水量を検出する上記流量センサ7はこのバイパス管4との分岐点よりも下流側(つまり、熱交換器2に近い位置)に設けられている。すなわち、上記バイパス流量調整弁5が開弁しているときでも熱交換器2への通水を検出できるようにされている。なお、入水温度はバイパス管4の有無に影響を受けないので、バイパス管4との分岐点の上流側/下流側のいずれに設けてもよく、図示例では上流側に設けた場合を示している。
【0031】
一方、上記出湯管3には、熱交換器2によって加熱された温水の温度を検出するための缶体温度センサ(第3の温度センサ)8と、出湯管3からの出湯温度を検出するための出湯温度センサ9とが備えられている。本実施形態に示す給湯装置は、上述したように、バイパス管4を備えているので、出湯温度センサ9は、出湯管3とバイパス管4との合流点よりも下流側(つまり、給湯配管D側)に設けられる。つまり、バイパス流量調整弁5が開弁され、入水管1からの通水があるときでも出湯管3からの出湯温度を正確に検出できるようにされている。なお、缶体温度センサ8は、熱交換器2によって加熱された温水の温度を検出することから、バイパス管4との合流点よりも上流側(つまり、熱交換器2に近い位置)に設けられている。
【0032】
ここで、上記入水温度センサ6、缶体温度センサ8および出湯温度センサ9としては、サーミスタ等の公知の温度センサが用いられる。また、上記流量センサ7としも羽根車式の水量センサなどの公知の流量センサが用いられる。さらに、上記熱交換器2は、図示しない燃焼部によって加熱可能に構成された周知の構造を備えた熱交換器で構成される。上記燃焼部は後述する制御部10によって燃焼制御が行われるように構成されており、これによって入水管1から供給される入水が熱交換器2で加熱昇温されるように構成されている。
【0033】
そして、図において10は給湯装置の制御部を示している。この制御部10は、給湯装置各部の動作を制御する制御手段を構成するものであって、その制御中枢としてCPU,ROM,RAM等を備えた周知の態様のマイコンが備えられている。より詳細には、このマイコンは、上述した各種センサ類6〜9と図示しない信号線を介して接続され、これら各種センサ類6〜9からの検出信号が入力されるように構成されるとともに、上記燃焼部やバイパス流量調整弁5の駆動部等とも図示しない信号線で接続され、燃焼制御やバイパス流量調整弁5の弁制御等ができるように構成されている。
【0034】
また、このマイコンは、給湯装置のリモコン11とも通信接続され、該リモコン11での操作情報(たとえば、運転スイッチのON/OFF操作や給湯設定温度の設定操作などの情報)に基づいて、上述した燃焼制御や弁制御ができるように構成されている。
【0035】
11は給湯装置のリモコンであり、このリモコンには図示しない表示部と操作部とが設けられており、操作部での操作情報が上記制御部10に入力できるように構成されている。
【0036】
しかして、このように構成された給湯装置における温度センサのシフト故障の検出手順について図2に基づいて説明する。
【0037】
図2は、温度センサのシフト故障の診断手順の一例を示すフローチャートである。図2ステップS1に示すように、この温度センサのシフト故障の診断は、予め設定された所定条件が満たされたときに開始される。この所定条件は、たとえば、給湯回数が所定回数に達したときや、先の故障検出から一定時間が経過したとき、さらには、これらの条件に加えて、前回の給湯運転(加熱運転)が停止してから所定時間が経過しているなど、シフト故障の検出が所定の間隔で行われるように適宜設定される。したがって、制御部10は、まずこの所定条件が満たされたか否かを判断する(図2ステップS1参照)。
【0038】
なお、上記所定条件として給湯回数を用いる場合には、制御部10は給湯が行われる度にその回数をカウントし所定の記憶手段(たとえば、RAM)に記憶させるように構成される。また、先の故障検出から一定期間の経過が所定条件とされている場合には、制御部10は内部クロックに基づくタイマを用いて上記一定期間が経過したか否かを判定するように構成される。
【0039】
そして、この所定条件が満たされると、次に制御部10は、給湯装置に通水があるかを判断する(図2ステップS2参照)。すなわち、本発明に係る温度センサの故障判定は、出湯初期の段階で行われるものであることから、制御部10は、給湯栓Cの開栓等によって給湯装置に通水が生じたかを判断する。
【0040】
そして、給湯装置に通水があると、制御部10は、加熱手段を非加熱状態に保ちながら、この間に入水温度センサ6の検出値が所定の温度範囲内に維持されつつ給湯装置の保有水量相当分の通水が検出されたかを判定する(図2ステップS3〜6参照)。
【0041】
すなわち、制御部10は、通水によって上記加熱手段に対する加熱要求発生条件が満たされた場合でも、後述する温度センサの正常/異常の判定(図2ステップS8,S9参照)が終了するまで、加熱手段を非加熱状態に維持する(図2ステップS3参照)。
【0042】
ここで、加熱手段に対する加熱要求は、リモコン11の運転スイッチがオンモードにあること、入水温度が所定温度以下(ハイカット条件)であること、給湯装置のエラーが検出されていないことなどの所定の前提条件を満たした状態で、給湯装置に最低作動通水量(加熱手段の燃焼部の燃焼を許容できる量の通水)以上の通水が生じたとき発生する制御処理上の要求を意味する。したがって、温度センサのシフト故障の検出処理を実行していない状態でこの加熱要求を発生させる条件が満たされると、制御部10は燃焼部の燃焼を開始させて熱交換器2による加熱を開始させる。しかし、この温度センサのシフト故障の検出処理の実行中は、この加熱要求を発生させる条件が満たされても、制御部10は燃焼部による燃焼を開始させずに熱交換器2の非加熱状態を維持するように構成されている。
【0043】
そして、制御部10は、このように加熱手段を非加熱状態に維持しながら、次に、入水温度が安定しているか、具体的には、入水温度センサ6の検出値が所定の温度範囲(たとえば±1℃の範囲)に収まっているかを判断する。より詳細には、この判断にあたり、制御部10は、出湯初期の段階における入水温度センサ6の検出値を記憶手段(たとえば、RAM)に記憶させる(図2ステップS4参照)。そして、その後に入水温度センサ6で検出される検出値とこの記憶手段に記憶させた検出値とを比較しながら、その差が所定の温度範囲にあるかを判定する(図2ステップS5参照)。
【0044】
なお、この判定で、入水温度センサ6の検出値が上記所定範囲を超えて変動した場合には、変動後の検出値を新たに記憶手段に記憶させ、再び、この新たに記憶手段に記憶させた検出値と、その後に入水温度センサ6で検出される検出値とを比較して、その差が所定の温度範囲にあるかを判定する。
【0045】
このように、入水温度センサ6の検出値に基づいて、入水温度の変動を制御部10で監視するようにしたことから、たとえば、上記枝管Bに凍結防止ヒータEが設けられているような場合のように、枝管B内に収容された水の水温にバラツキ(温度むら)がある場合においても、入水温度が安定する時点を正確に捉えて後述する故障判定を行うことができるようになる。
【0046】
一方、制御部10は、このような入水温度の安定の検出と並行して、流量センサ7の検出値に基づいて、水温が安定した入水の通水量が給湯装置の保有水量相当分に達したかを判断する(図2ステップS6参照)。具体的には、この判断は、入水温度センサ6の検出値が記憶手段に記憶された時点(図2ステップS4参照)からの通水量が、給湯装置の保有水量相当分に達したかを判断する。したがって、入水温度が安定せずに記憶手段に記憶された入水温度センサ6の検出値が書き換えられた場合には、その書き換えの時点からの通水量を改めて検出し、その通水量が給湯装置の保有水量相当分に達したかを判断することとなる。
【0047】
ここで、給湯装置の保有水量とは、給湯装置内に収容される水の量、すなわち、入水管1から熱交換器2を経て出湯管3に至る配管の容量に相当する水量を意味する。より具体的には、本実施形態の給湯装置はバイパス管4を備えているので、このバイパス管4の配管容量分を加えた水量が給湯装置の保有水量となる。なお、給湯装置の保有水量は給湯装置の機種ごとに相違するものであるので、この値は予め制御部10の記憶手段(たとえばROM)に記憶させておく。
【0048】
また、給湯装置の保有水量相当分の通水の検出は、たとえば、制御部10が流量センサ7で検出される流量(単位時間あたりの流量)の積算値を測定し、この積算値(積算通水量)が記憶手段に記憶された給湯装置の保有水量に達した時点で給湯装置の保有水量相当分の通水があったと判定させたり、あるいは、出湯初期段階で検出された流量が変動しないと仮定して、出湯初期段階で検出される流量によって給湯装置の保有水量相当分の通水が得られるまでの所要時間を演算し、入水温度が安定してから当該所要時間が経過した時点で保有水量相当分の通水があったと判定させるように構成される。
【0049】
このように、本実施形態では、入水温度が安定した状態で、給湯装置の保有水量に相当する分の通水を行うので、通水開始時点の段階で熱交換器2に温水が残留していても、後述する温度センサの検出値の比較時には、このような残留温水は給湯装置の外部に排出されており、給湯装置内の水の温度は均一な状態となっている。
【0050】
そして、このようにして給湯装置内の水の温度を均一な状態とすると、これを条件として、次に制御部10は、出湯温度センサ9の検出値と入水温度センサ6の検出値とを比較して、温度センサに異常がないかを判断する。具体的には、比較結果として得られた差(検出温度差)が予め設定された所定値(たとえば、10℃)未満であるかを判断する(図2ステップS7参照)。
【0051】
そして、その結果、検出値の差が上記所定値未満であれば、比較した温度センサ6,9は正常と判定し(図2ステップS8参照)、反対に、所定値以上の差がある場合には、少なくともいずれか一方の温度センサ6,9はシフト故障であると判定できるので、温度センサ6,9には異常があると判定する(図2ステップS9参照)。
【0052】
そして、制御部10は、温度センサの異常と判定した場合、予め定められた手順に従って、所定の異常報知(たとえば、リモコン11の表示部にエラーを表示)を行い、また、所定の安全動作(たとえば、燃焼部の燃焼運転を禁止)を行うように構成されている。なお、これらの処理は単独で行うこともできるが、異常報知とともに安全動作を行うように構成される。
【0053】
なお、本実施形態では、出湯温度センサ9の検出値と入水温度センサ6の検出値を比較する場合を示したが、たとえば、出湯温度センサ9の検出値と缶体温度センサ8の検出値を比較するように構成したり、あるいはまた、出湯温度センサ9の検出値と入水温度センサ6および缶体温度センサ8の三者の検出値を比較してシフト故障の診断を行うように構成することも可能である。つまり、本発明では、給湯装置内の水の温度を均一な状態としてから温度センサの検出値の比較を行うので、給湯装置内にある温度センサ同士であれば、入水温度センサ6と出湯温度センサ9との間の管路上に設置されたいずれの温度センサと比較してもシフト故障の検出が可能である。
【0054】
そして、本実施形態の給湯装置においては、制御部10は、上述した加熱要求の発生条件が満たされてから所定期間が経過してもなお入水温度センサ6の検出値が所定の温度範囲内に維持されない場合には、出湯温度センサ9とその他の温度センサ6,8との検出値の比較は行わずに、加熱手段の非加熱状態を解除するように構成される。
【0055】
すなわち、上述した構成では、温度センサのシフト故障の判定にあたり、入水温度が安定するまで非加熱状態の通水を維持するようにされているので、入水温度が安定しなければ非加熱状態の通水が継続され、無駄な捨て水が増大するおそれがある。そのため、本実施形態では、このような無駄な捨て水の増大を防止するために、温度センサのシフト故障の判定にあたり、所定期間が経過してもなお入水温度センサ6の検出値が安定しなければ、温度センサのシフト故障の判定を取りやめて、加熱手段の非加熱状態を解除して加熱手段による入水の加熱、すなわち給湯を開始するように構成されている。つまり、判定を取りやめた時点からは通常の給湯運転を行うように構成されている。
【0056】
なお、このようにして判定を取りやめた場合において次の判定を何時行うかは適宜設定される。たとえば、次回の出湯初期段階で行うように構成したり、あるいは、取りやめた分を飛ばして次に上記所定条件が満たされた場合に判定を行うように構成することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の給湯装置においては、制御部10は、加熱手段を非加熱状態に保っている状態でも、出湯温度センサ9の検出値が給湯設定温度となるようにバイパス流量調整弁5を制御するように構成されている。
【0058】
すなわち、上述したように、温度センサのシフト故障の検出にあたり、非加熱状態で通水するように構成した場合、熱交換器2内に残留している高温の温水が給湯栓Cから出湯されるおそれがあるので、本実施形態では、加熱手段を非加熱状態に保っている状態であっても、制御部10は出湯温度センサ9の検出値が給湯設定温度となるようにバイパス流量調整弁5の弁制御を行うように構成される。
【0059】
これにより、たとえば、熱交換器2内に高温の温水が残留していたような場合でも、通水が発生すると、制御部10はバイパス流量調整弁5を開弁させ、給湯栓Cからは給湯設定温度の温水が出湯されることとなる。したがって、故障判定にあたって給湯設定温度を超える高温の温水が出湯されることが回避され、故障判定を安全に行うことができる。なお、この場合、故障判定中は加熱手段が非加熱状態に保たれているので、残存する温水がなくなるに伴って給湯栓Cから出湯される温水の温度も低下し、これに伴ってバイパス流量調整弁5は全閉に制御されることとなる。
【0060】
実施形態2
次に、本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態は、上述した実施形態1における最終的な温度センサの異常の判定手順、すなわち、温度センサの検出値の比較時における故障判定の態様を改変したものであり、その他の構成は共通するので、共通する部部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
具体的には、この実施形態においても温度センサのシフト故障の検出にあたり、予め給湯装置内の水の温度を均一にする処理を行い、その後に温度センサ6,9の検出温度(検出値)を比較してその差を求める点は、上述した実施形態1と同様である。
【0062】
本実施形態では、このようにして得られた温度センサの検出値と比較する所定値として段階的に複数の所定値が設定される。すなわち、シフト故障の検出を行う温度センサにはそれぞれ固体ごとのバラツキがあることから、このバラツキを考慮して、上記所定値として、シフト故障の疑いがあると判定(疑判定)するための所定値と、明らかにシフト故障であると確定的な判定(確定判定)を行うための所定値を設けている。
【0063】
具体的には、上記疑判定のための所定値は、判定対象となる温度センサのバラツキの最大値(バラツキ幅)に基づいて設定される。たとえば、温度センサのバラツキが±3℃であるとすると、バラツキの最大幅は6℃となるので、上記疑判定のための所定値はこの6℃より大きく、かつ、それに近い値(たとえば、10℃)が好適に採用される。
【0064】
すなわち、疑判定のための所定値をバラツキの最大幅よりも狭く設定すると、温度センサが正常であるにもかかわらず疑判定となるおそれがあるので、そのような事態を避けるためにバラツキの最大幅より大きく設定するのが好ましい。また、バラツキの最大幅に近い値に設定するのは、この値があまりに大きすぎるとシフト故障の初期段階を発見できなくなるからである。なお、この疑判定のための所定値は、あくまで疑判定のために設定されるものであるから、バラツキの最大値より僅かに小さく設定しておくことも可能である。
【0065】
一方、確定判定のための所定値は、上記疑判定の所定値よりも大きな値が使用される。また、この所定値としては、少なくとも判定対象となる温度センサのバラツキの最大幅よりも大きな値が設定される(たとえば、バラツキの最大値が6℃の場合、20℃とか30℃に設定される)。
【0066】
しかして、本実施形態では、このように疑判定のための所定値と確定判定のための所定値とが設けられ、温度センサ6,9の検出温度(検出値)を比較して得られた差が上記確定判定の所定値を超える場合には一回の判定で直ちに温度センサのシフト故障と判定する。一方、疑判定の所定値を超える場合には、直ちにシフト故障とは判定せず、疑判定の回数を制御部10の記憶手段に記憶させておき、この回数が所定回数に達したときにシフト故障と判定する。
【0067】
つまり、本実施形態では、上記所定値が段階的に複数設定され、出湯温度センサ9の検出値とその他の温度センサ6,8の検出値との差が、どの段階の所定値を超えるかに応じて、温度センサの異常判定を確定させる検出回数を異ならせている。これにより、温度センサのシフト故障の検出をより正確に行うことができるようになる。
【0068】
なお、本実施形態においても、上述した実施形態1と同様に、出湯温度センサ9の検出値と比較する温度センサとして缶体温度センサ8を用いることも可能である。また、入水温度が所定期間を超えても安定しなければ、温度センサの故障判定を中止して加熱手段の非加熱状態を解除する点、ならびに、加熱手段を非加熱状態に保っている状態でもバイパス流量調整弁5を制御する点、さらには、異常検出時に所定の異常報知や安全動作を行う点も同様である。
【0069】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0070】
たとえば、上述した実施形態では、給湯装置がバイパス管4を備える場合を示したが、本発明はバイパス管を備えていない給湯装置にももちろん適用することができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、給湯装置の保有水量として給湯装置内に収容される水の総量を用いた場合を示したが、たとえば、入水温度センサ6の配設位置から出湯温度センサ9の配設位置までの配管容量を上記給湯装置の保有水量として用いることもできる。すなわち、本発明は、少なくとも入水温度センサ6の配設位置から出湯温度センサ9の配設位置までの配管容量に相当する水の温度が均一になればよいので、給湯装置の保有水量を可能な限り少なく見積もって行わせることも可能である。
【0072】
また、上述した実施形態2では、温度センサのシフト故障の疑判定を行う所定値を1つ設けた場合を示したが、確定判定に至るまでに2以上の疑判定の所定値を設定することも可能である。その場合、所定値が大きくなるにしたがって故障と判定するための検出回数は少なくなるように設定される。また、実施形態2では一度の検出で温度センサのシフト故障と判定する確定判定の所定値を設けた場合を示したが、疑判定の所定値のみを設定することも可能である。つまり、一度の検出で温度センサのシフト故障とは判定しないようにしておくこともできる。
【0073】
なお、上述した実施形態1および2のいずれの場合にも、温度センサのシフト故障またはその疑判定を制御部10がリモコン11の表示部に表示できるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る給湯装置の概略構成の一例を示す説明図である。
【図2】同給湯装置における温度センサのシフト故障の診断手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 入水管
2 熱交換器(加熱手段)
3 出湯管
4 バイパス管
5 バイパス流量調整弁(流量調整手段)
6 入水温度センサ
7 流量センサ
8 缶体温度センサ(第3の温度センサ)
9 出湯温度センサ
A 水道本管
B 枝管B
C 給湯栓
E 凍結防止ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、入水管からの入水温度を検出する入水温度センサと、出湯管から出湯温度を検出する出湯温度センサとを備えた給湯装置において、
制御手段は、加熱手段に対する加熱要求発生条件が満たされても加熱手段を非加熱状態に保ちながら、この間に前記入水温度センサの検出値が所定の温度範囲内に維持されつつ給湯装置の保有水量相当分の通水が検出されたことを条件として、前記出湯温度センサの検出値と、前記入水温度センサの検出値および/または前記入水温度センサと前記出湯温度センサとの間の管路上に設置された第3の温度センサの検出値とを比較して、その差が所定値を超える場合に温度センサの異常と判定する制御構成を有することを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記制御手段は、加熱要求発生条件が満たされてから所定期間が経過しても前記入水温度センサの検出値が所定の温度範囲内に維持されない場合には、前記出湯温度センサとその他の温度センサとの検出値の比較は行わずに加熱手段の非加熱状態を解除する制御構成を備えたことを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記給湯装置の保有水量相当分の通水の検出を、前記加熱手段への通水量を検出する流量センサの検出値に基づいて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記入水管と出湯管との間に前記加熱手段をバイパスするバイパス管が配されるとともに、このバイパス管の通水量を調整する流量調整手段が備えられてなり、
前記制御手段は、前記加熱手段を非加熱状態に保っている状態でも、前記出湯温度センサの検出値が給湯設定温度となるように前記流量調整手段を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の給湯装置。
【請求項5】
前記所定値が段階的に複数設定され、前記出湯温度センサの検出値とその他の温度センサの検出値との差が、どの段階の所定値を超えるかに応じて、前記温度センサの異常判定を確定させる検出回数を異ならせたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の給湯装置。
【請求項6】
前記制御手段は、温度センサの異常と判定した場合、所定の異常報知および/または所定の安全動作を行う制御構成を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−8009(P2010−8009A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170057(P2008−170057)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】