説明

給糸ボビン供給装置及び自動ワインダ

【課題】省スペースで、かつ作業者の負担を低減した給糸ボビン供給装置を提供する。
【解決手段】給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン投入部22と、個別化部23と、を備える。給糸ボビン投入部22には、精紡機で紡糸された糸が巻かれた給糸ボビン群が投入される。個別化部23は、給糸ボビン投入部22に投入された給糸ボビン群を個別化する。また、給糸ボビン投入部22は、滞留部28と、案内部30と、定量搬送部29と、を有する。滞留部28は、投入された前記給糸ボビン群を一時的に滞留させる。案内部30は、個別化部23まで給糸ボビン9を案内する。定量搬送部29は、滞留部28と案内部30との間に設けられる。そして定量搬送部29は、揺動することにより、滞留部28に滞留している給糸ボビン群のうち所定の量だけを案内部30に送り出す揺動部材31を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、自動ワインダ等の糸巻取機に対して給糸ボビンを供給するための給糸ボビン供給装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動ワインダが備える各ワインダユニットに給糸ボビンを供給するための、ボビン供給装置が知られている。このようなボビン供給装置は、例えば特許文献1に記載れている。
【0003】
特許文献1に記載の管糸供給装置は、管糸(給糸ボビン)をワゴンにばら積みして管糸供給装置まで搬送し、当該ワゴンを荷あけ装置で反転、傾倒して、ワゴン内の管糸をコンベア装置上に段階的に荷あけし、荷あけされた山積みの管糸をコンベア装置によって切り崩しながら振動式パーツフィーダのフィーダボール内に供給する構成である。そして、上記パーツフィーダとそれに続く分離コンベアにより、フィーダボール内の管糸を一個ずつ分離して天尻判別部に供給し、整列シュートの下方に停止されている空トレイのペグに挿している。
【0004】
一方、特許文献2は、数10本の給糸ボビンを挿入可能なマガジン装置を有し、当該マガジンを順次回転させて給糸ボビンをトレイに供給するボビン供給システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−337317号公報
【特許文献2】特開平9−100067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の管糸供給装置において、フィーダボールは給糸ボビンを一本ずつ分離して次工程に供給するためのものであるが、その分離機構上水平方向に大きなスペースが必要である。また、フィーダボールに供給される給糸ボビンの量を事前に調整するためのコンベア装置も必要である。それゆえ、大型で、大きな設置エリアを必要とする装置となっていた。また、特許文献1の構成は、順番に給糸ボビンを落としながら分離させる機構であるため、荷あけ装置による給糸ボビン投入作業を含め高い位置での作業が多く、視認性、作業性ともによくなかった。
【0007】
一方、特許文献2が開示するマガジン式の給糸ボビン供給装置は小型であり、あまり大きなスペースを必要としない。しかし、特許文献2の構成は、作業者が給糸ボビンを一本ごとにマガジンの給糸ボビン挿入口にセットする必要があり作業者の手間がかかっていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、省スペースで、かつ作業者の負担を低減した給糸ボビン供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の給糸ボビン供給装置が提供される。即ち、この給糸ボビン供給装置は、給糸ボビン投入部と、個別化部と、を備える。前記給糸ボビン投入部には、精紡機で紡糸された糸が巻かれた給糸ボビン群が投入される。前記個別化部は、前記給糸ボビン投入部に投入された給糸ボビン群を個別化する。また、前記給糸ボビン投入部は、滞留部と、案内部と、定量搬送部と、を有する。前記滞留部は、投入された前記給糸ボビン群を一時的に滞留させる。前記案内部は、前記個別化部まで給糸ボビンを案内する。前記定量搬送部は、前記滞留部と前記案内部との間に設けられる。そして前記定量搬送部は、揺動することにより、前記滞留部に滞留している給糸ボビン群のうち所定の量だけを前記案内部に送り出す揺動部材を有する。
【0011】
このように、揺動部材を揺動させるという簡単な構成で、滞留されているボビン群を個別化部に対して所定量だけ送ることができるので、コンベアによって定量搬送していた従来の構成に比べて、省スペース化を実現することができる。
【0012】
上記の給糸ボビン供給装置において、前記案内部には、当該案内部内の給糸ボビンの量を検知する検知部が設けられ、前記揺動部材は、前記検知部の検知結果に基づいて揺動駆動されることが好ましい。
【0013】
このように、案内部内の給糸ボビン量に応じて、揺動部材を駆動させることで、案内部内の給糸ボビンの量を、常に所定の範囲内とすることができる。これにより、個別化部に対して、給糸ボビンを適切に供給することができる。
【0014】
上記の給糸ボビン供給装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記揺動部材は、その上面に給糸ボビンを乗せる搬送板と、出没可能に設けられた流入阻止壁と、を有している。そして、当該揺動部材は、前記搬送板に給糸ボビンを乗せた状態で揺動することにより、所定量の給糸ボビンを前記滞留部から前記案内部へと送り出すとともに、前記滞留部から前記案内部へと給糸ボビンが流れ込むことを前記流入阻止壁によって阻止する。
【0015】
即ち、搬送板の上に乗った給糸ボビンだけを、案内部に送り出すことができる。このように、簡単な機構で給糸ボビンの定量搬送ができるので、コンベアのような複雑かつ大スペースの装置が不要となる。
【0016】
上記の給糸ボビン供給装置において、前記搬送板の上面には、一方向に沿って形成された溝部が複数並んで形成されていることが好ましい。
【0017】
搬送板の上面に乗った給糸ボビンは、溝部に嵌まりこむことにより、当該溝の長手方向に沿って整列される。これにより、定量搬送部から案内部に送られるときの給糸ボビンの方向を揃えることができる。
【0018】
上記の給糸ボビン供給装置において、前記搬送板の一側端部には、給糸ボビンから解舒された糸を切断するためのカッタが設けられていることが好ましい。
【0019】
これにより、給糸ボビンの糸引きを防止することができるので、案内部や個別化部において給糸ボビンの糸が絡みあうことを防止できる。
【0020】
上記の給糸ボビン供給装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記滞留部は、前記定量搬送部に向けて傾斜した底面を有する。前記底面の一部には、当該底面から突出した状態と、当該底面と略面一の状態と、の間で駆動されるボビン崩し部材が設けられている。
【0021】
即ち、滞留部に大量のボビンが投入されると、定量搬送部へと向かう途中の給糸ボビンが詰まってしまう場合が考えられる。そこで、底面から突出するボビン崩し部材を設け、当該ボビン崩し部材を駆動して給糸ボビンに対して衝撃を与えることにより、詰まったボビンを崩すことができる。
【0022】
上記の給糸ボビン供給装置において、前記個別化部は、前記案内部によって案内されてきた給糸ボビンを、前記案内部の設置面に対して垂直方向に取り出して搬送しつつ個別化することが好ましい。
【0023】
このように給糸ボビンを垂直方向に搬送する構成とすることにより、例えば給糸ボビンを水平方向に搬送する構成と比べて設置スペースを小さくすることができる。
【0024】
上記の給糸ボビン供給装置は以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記個別化部は、前記案内部内の給糸ボビン群を、当該案内部の一側側面から取り出すように配置される。前記案内部は、当該案内部内の給糸ボビン群を前記個別化部が取り出すことができる位置に寄せる給糸ボビン寄せ部を備えている。
【0025】
このように、案内部内の給糸ボビンを個別化部に向けて寄せることにより、当該案内部内の給糸ボビンを、個別化部によって適切に取り出すことができる。
【0026】
上記の給糸ボビン供給装置において、前記給糸ボビン寄せ部は、前記個別化部へ向けて傾斜する底面であることが好ましい。
【0027】
これにより、簡単な構造で、給糸ボビンを個別化部に向けて寄せることができる。また、給糸ボビン寄せ部を傾斜面とすることにより、個別化部で取り出せなかった給糸ボビンが何度も個別化部に向けて寄せられる。従って、一回で取り出すことができなかった給糸ボビンであっても、個別化部に向けて何度も寄せられるうちに姿勢が変更され、個別化部によって取り出すことができるようになる。
【0028】
上記の給糸ボビン供給装置は、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、このボビン供給装置は、前記個別化部により個別化された給糸ボビンを搬送トレイに乗せるトレイ載置部を有する。前記個別化部と前記トレイ載置部との間には、個別化された給糸ボビンを一時的にとどめる保留部が設けられている。
【0029】
このように、トレイ載置部の直前に保留部(バッファエリア)を設けておくことで、個別化部で個別化が遅れた場合(ボビン皿にボビンがうまくのらなかった場合など)であっても、ボビンバッファ部51の給糸ボビンをトレイ載置部24に供給することができる。従って、前記トレイ載置部が遊ぶことがない。これにより、トレイ載置部の処理効率を向上させることができる。
【0030】
上記の給糸ボビン供給装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記個別化部は、給糸ボビンを乗せることができるように長方形状に形成されたボビン受け部材を備える。当該ボビン受け部材は、前記案内部の設置面に対して垂直方向に駆動される。
【0031】
この構成で、案内部内の給糸ボビンを、ボビン受け部材に乗せて垂直方向に搬送しつつ個別化することができる。
【0032】
上記の給糸ボビン供給装置は、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、この給糸ボビン供給装置は、前記ボビン受け部材に乗せられた給糸ボビンに対して、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能な接触部材を有する。前記接触部材は、前記ボビン受け部材による給糸ボビンの搬送方向に沿って配置されるとともに、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有する。
【0033】
この構成で、ボビン受け部材に乗った給糸ボビンは、当該ボビン受け部材によって搬送されることにより、押出部の部分にさしかかったときに、接触部材によってボビン受け部材の取り上げ側端部に向けて押される。このとき、給糸ボビンに揺さぶり作用が与えられるので、例えば複数の給糸ボビンが重なっているような場合に、不要な給糸ボビンをボビン受け部材から落とすことができる。
【0034】
本発明の別の観点によれば、上記の給糸ボビン供給装置と、当該給糸ボビン供給装置によって個別化された給糸ボビンから糸を解舒して巻き返すことによりパッケージを形成する複数のワインダユニットと、前記給糸ボビン供給装置によって個別化された給糸ボビンを各ワインダユニットまで搬送する給糸ボビン搬送装置と、を備えた自動ワインダが提供される。
【0035】
この自動ワインダは、本発明の給糸ボビン供給装置を備えているので、省スペースで、かつ作業者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る給糸ボビン供給装置の構成を示す正面断面図。
【図2】給糸ボビン供給装置の斜視図。
【図3】個別化部の斜視図。
【図4】個別化部の拡大側面断面図。
【図5】個別化部の拡大斜視図。
【図6】給糸ボビン供給装置の平面図。
【図7】揺動部材の斜視図。
【図8】揺動板を滞留部側に向けたときの様子を示す正面断面図。
【図9】揺動板によって給糸ボビンを案内部に搬送したときの様子を示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態に係る自動ワインダ10は、複数のワインダユニット(図略)と、給糸ボビン搬送装置11と、給糸ボビン供給装置12と、を備えている。
【0038】
ワインダユニットは、給糸ボビン9に巻かれた紡績糸を解舒して、巻取ボビンに巻き返すことにより、パッケージを形成するように構成されている。
【0039】
給糸ボビン搬送装置11は、コンベア等によって構成されたボビン搬送経路20と、ボビン搬送経路20上を搬送される多数の搬送トレイ21と、を有している。図1に示すように、この搬送トレイ21は、給糸ボビン9を略直立状態で載置することができるように構成されている。ボビン搬送経路20は、給糸ボビン9を乗せた搬送トレイ21を各ワインダユニット(図略)まで搬送することができるように構成されている。これにより、各ワインダユニットに対して自動的に給糸ボビン9を供給することができる。
【0040】
ところで前記給糸ボビン9は、精紡機等で紡出された紡績糸が巻かれたものである。精紡機で製造された給糸ボビン9は、コンテナ8等に入れられて自動ワインダ10まで運ばれる。このコンテナ8内の給糸ボビン9を、オペレータが手作業で一本ずつ搬送トレイ21に載置しなければならないようでは、オペレータの負担が大きくなる。そこで、本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン9を一本ずつ分離して(個別化して)、搬送トレイ21に載置していくように構成されている。
【0041】
図1及び図2に示すように、本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン投入部22と、個別化部23と、トレイ載置部24と、を有している。
【0042】
コンテナ8に入れられて運ばれてきた給糸ボビン9は、給糸ボビン投入部22内に投入される。給糸ボビン投入部22内に投入された給糸ボビン群は、個別化部23によって一本ずつ取り上げられ、個別化される。
【0043】
個別化部23は、上下方向に配設されたコンベアとして構成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、個別化部23は、無端環状帯体25と、無端環状帯体25の外側面において、当該無端環状帯体25の長手方向で等間隔に取り付けられた複数のボビン皿(ボビン受け部材)26と、を備えている。
【0044】
無端環状帯体25は、上下に配置された2つの回転ローラ37,37の間にループ状に掛け渡された帯状(シート状)の部材である。上側の回転ローラ37は、駆動源38によって回転駆動される。本実施形態において、駆動源38はステッピングモータとされている。当該ステッピングモータの出力軸の回転は、駆動伝達ベルト等を介して回転ローラ37に伝達される。これにより、無端環状帯体25が循環駆動され、当該無端環状帯体25に取り付けられたボビン皿26が垂直方向に駆動される。また、ボビン皿26を無端環状帯体25に取り付ける構成とすることにより、例えば無端チェーンにボビン皿を取り付ける構成に比べて、ボビン皿26を安定して支持することができる。
【0045】
ボビン皿26は、給糸ボビン9を乗せることができるように長方形の面を有している(なお、図5に示すように、この長方形のボビン皿26にはスリット40が形成されているが、この点については後述する)。この長方形のボビン皿26は、その長手方向が、無端環状帯体25の幅方向に沿うようにして、無端環状帯体25に取り付けられている。また、ボビン皿26の奥行き(前記長方形の面のうち、長手方向に直交する方向の長さ)は、給糸ボビン9が2つ並んで乗ることができない程度とされる。この構成で、無端環状帯体25を循環駆動することにより、給糸ボビン投入部22内の給糸ボビン9をボビン皿26の上に一本ずつ乗せて、装置設置面に対して垂直方向上向きに搬送するようになっている。このようにして、給糸ボビン投入部22内の給糸ボビン群を一本ずつ取り上げる(個別化する)ことができる。
【0046】
ここで、例えば特許文献1に記載の管糸供給装置では、フィーダボールによってボビンの個別化を行っていた。このフィーダボールは、その構成上、水平方向に大きなスペースが必要であった。この点、本実施形態の給糸ボビン供給装置12が備える個別化部23は、給糸ボビン9を垂直方向に搬送することにより個別化するものであるから、水平方向でのスペースをあまり必要としない。従って、従来の構成に比べて給糸ボビン供給装置12を小型化することができる。
【0047】
また、特許文献1に記載の管糸供給装置は、給糸ボビンを下に落としながら個別化を行う構成であったので、荷あけ装置によってボビンを荷あけする位置は、高い位置とならざるを得なかった。このようにボビンの投入位置が高い位置になるため、特許文献1の管糸供給装置は、視認性、作業性が悪かった。この点、本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン9を上方に向けて搬送することにより個別化する構成であるから、給糸ボビン9の投入位置を低い位置とすることができる。これにより、視認性、作業性が大幅に向上する。
【0048】
個別化部23によって上方に搬送された給糸ボビン9は、トレイ載置部24に供給される。トレイ載置部24は、個別化部23から受けとった給糸ボビン9の解舒側端部と支持側端部とを判別するとともに、支持側端部が下になるように回転させたうえで、当該給糸ボビン9をボビンシュート27から落下させる。ボビンシュート27の下には搬送トレイ21が待機しており、ボビンシュート27からの給糸ボビン9が搬送トレイ21に載置される。なお、このようなトレイ載置部の構成は公知であり、例えば特開平8−169525号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0049】
以上のように、本実施形態の給糸ボビン供給装置12により、給糸ボビン投入部22に投入された給糸ボビン群から、給糸ボビン9をボビン皿26の取り上げ側端部(無端環状帯体25に取り付けられた端部とは反対側の端部)ですくい上げることにより取り上げる。そして当該給糸ボビン9を搬送しつつ個別化して、搬送トレイ21に載置していくことができる。
【0050】
なお、以上の説明では、ボビン皿26に給糸ボビン9を一本ずつ乗せて取り上げることができるとしたが、実際には、1つのボビン皿26の上に、給糸ボビン9が上下方向に2本以上重なった状態で乗ってしまう場合がある。
【0051】
そこで本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、ボビン皿26によって搬送される給糸ボビン9に接触可能な接触部材41を有している。この接触部材41は、ボビン皿26による給糸ボビン9の搬送方向(垂直方向)に沿って配置された金属製のワイヤである。図5に示すように、ボビン皿26には、その奥行き方向に沿ってスリット40が形成されており、接触部材41はスリット40を通るように配置されている。また、前記スリット40は、ボビン皿26の長手方向で複数形成されており、接触部材41は各スリット40に対応して複数配置されている。この構成で、接触部材41は、ボビン皿26に乗った給糸ボビン9に対して、ボビン皿の奥行き方向で無端環状帯体25側から(ボビン皿26の取り上げ側端部とは反対方向から)接触することが可能となっている。
【0052】
そして、この接触部材41は、ボビン皿26の長手方向に直交する平面(図4の紙面に平行な面)内で屈曲する形状となっている。より具体的には、接触部材41は、ボビン皿26の取り上げ側端部側に向けて凸形状になる押出部42を有している。これにより、ボビン皿26に乗って搬送される給糸ボビン9は、押出部42の位置にさしかかると、接触部材41によってボビン皿26の取り上げ側端部に向かって押される。
【0053】
例えば図4のように、一つのボビン皿26に2本の給糸ボビン9が重なって乗っている場合、当該ボビン皿26が押出部42の位置にさしかかると、前記2本の給糸ボビン9は、接触部材41によって押されることにより揺さぶり作用が与えられ、上に重なっている給糸ボビン9がボビン皿26の取り上げ側端部から下方に落とされる。このように、押出部42を有する接触部材41を、給糸ボビン9の搬送方向に沿って配置するという簡単な構成で、ボビン皿26に乗っている余分な給糸ボビン9を、当該ボビン皿26から落とすことができる。即ち、接触部材41によって、ボビン皿26に乗る給糸ボビン9の数を1本に制限することができるので、給糸ボビン9を確実に個別化することができる。なお、接触部材41は、前記押出部42を、ボビン皿26による給糸ボビン9の搬送方向で複数(本実施形態では4箇所)有している。これにより、前記揺さぶり作用が複数箇所で与えられるので、給糸ボビン9をより確実に個別化することができる。
【0054】
ところで、給糸ボビン投入部22に投入された大量の給糸ボビン群が、個別化部23に対して一度に供給されてしまうと、当該個別化部23において給糸ボビン9を1本ずつ取り上げることが難しくなる。そこで本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン投入部22に投入された大量の給糸ボビン群から、給糸ボビン9を少量ずつ切り崩して、個別化部23に供給するように構成されている。
【0055】
具体的には図1、図2、図6に示すように、給糸ボビン投入部22は、滞留部28と、定量搬送部29と、案内部30と、を備えている。滞留部28と、案内部30は連通している。また、定量搬送部29は、滞留部28と案内部30との間に配置されている。
【0056】
精紡機等からコンテナ8によって運ばれてきた給糸ボビン9は、滞留部28に投入される。図1に示すように、滞留部28の底面43は、案内部30に向けて下向きに傾斜するように形成されている。これにより、滞留部28内の給糸ボビン群は、案内部30に向けて流入しようとする。
【0057】
定量搬送部29は、揺動部材31を有している。図1に示すように、揺動部材31は、滞留部28内の給糸ボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めることができるように構成されている。これにより、投入された給糸ボビン群を、滞留部28内で一時的に滞留させることができるので、大量の給糸ボビン9が案内部30へ一度に流入することを防いでいる。
【0058】
次に、定量搬送部29の構成について詳しく説明する。
【0059】
揺動部材31は、揺動軸33を中心に揺動することが可能に構成されている。また揺動部材31は、その上面に搬送板32を有している。定量搬送部29は、揺動部材31を揺動駆動するための図略の駆動源(例えば空気圧シリンダ)を有している。この駆動源は、搬送板32の上面が案内部30側を向いた姿勢(図1の状態)と、滞留部28側を向いた姿勢(図8の状態)と、の間で揺動部材31を揺動駆動することができるように構成されている。
【0060】
揺動部材31は、搬送板32の上面が案内部30側を向いた姿勢(図1の状態)においては、滞留部28内の給糸ボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めることができるように構成されている。より具体的には、揺動部材31は、流入阻止壁34を有している。流入阻止壁34は、搬送板32の滞留部28側の端部近傍から下向きに延伸され、揺動軸33の軸線を中心とした円柱の外周面の一部を構成するように形成されている。また、流入阻止壁34は、滞留部28側を向いている。この構成で、揺動部材31が揺動軸33を中心に揺動することにより、流入阻止壁34が出没可能になっている。滞留部28の底面43の傾斜によって案内部30に流れ込もうとする給糸ボビン群は、出現した流入阻止壁34に接触することにより、堰き止められる。
【0061】
なお、滞留部28は、当該滞留部28内の給糸ボビン群が流入阻止壁34を乗り越えて案内部30に流入してしまわないようにするため、定量搬送部29に向かう給糸ボビン9の通路の高さを制限する高さ制限プレート36を有している。また、図6に示すように、滞留部28は、定量搬送部29に向かう給糸ボビン9の通路の幅(装置奥行き方向の幅)を徐々に狭くするように形成されている。以上のように、定量搬送部29に向かう給糸ボビン9の通路が狭くなるように構成されているので、滞留部28内の大量のボビン群を堰き止めるための流入阻止壁34は、比較的小さくても良い。これにより、揺動部材31をコンパクトに構成することができる。
【0062】
次に、定量搬送部29によって、滞留部28内の給糸ボビンを案内部30へと搬送する様子について説明する。案内部30へと給糸ボビンを搬送する際には、定量搬送部29は、搬送板32の上面が滞留部28側を向いた状態(図8)となるように揺動部材31を揺動させる。これにより、流入阻止壁34で堰き止められていた給糸ボビン9が、搬送板32の上面に接触する。
【0063】
この状態で、定量搬送部29は、揺動部材31を再度揺動させ、搬送板32の上面が案内部30側を向いた状態(図9)とする。これにより、一定量の給糸ボビン9が搬送板32の上に乗った状態で揺動部材31が揺動するので、当該搬送板32に乗った給糸ボビン9だけが、案内部30に導入される。このように、揺動部材31を揺動させるだけという簡単な構成で、滞留部28内の大量の給糸ボビン群から、所定量の給糸ボビン9のみを切り崩して案内部30へと搬送することができる。
【0064】
また、揺動部材31は、搬送板32の滞留部28側の端部において、当該搬送板32の上面よりも上方に突出する突出部44を有している。この突出部44により、搬送板32の上面に乗った給糸ボビン9が滞留部28側へ滑り落ちてしまうことを阻止することができる。これにより、揺動部材31を揺動させて給糸ボビン9を搬送する際に、搬送板32に乗った給糸ボビン9を確実に案内部30へと導入できるので、定量搬送部29によって搬送する給糸ボビン9の量を安定させることができる。
【0065】
また前述のように、滞留部28から定量搬送部29へと給糸ボビン9が流入する通路が狭く形成されているので、滞留部28内の給糸ボビン群を揺動部材31によって少量ずつ切り崩すことが容易になっている。
【0066】
なお上記のように、滞留部28においては、定量搬送部29へと向かう通路が狭くなるように構成されているので、当該通路に給糸ボビン9が詰まってしまうことも考えられる。そこで、滞留部28の底面43には、高さ制限プレート36の下方の位置において、ボビン崩し部材45が設けられている。このボビン崩し部材45は、揺動軸46を中心に回動することにより、その上面が底面43と略面一の状態(図1及び図9の状態)と、底面43から突出した状態(図8の状態)と、の間で姿勢を変更することができるように構成されている。また、滞留部28は、このボビン崩し部材45を揺動駆動するための図略の駆動源(例えば空気圧シリンダ)を有している。
【0067】
なお、このボビン崩し部材45の揺動軸46は、当該ボビン崩し部材45の下端寄りの位置に配置されている。これにより、揺動軸46を中心にボビン崩し部材45を揺動させてボビン崩し部材45を底面43から突出されたときに、当該ボビン崩し部材45の上面によって、傾斜した底面43の下側へ向けて(即ち、定量搬送部29に向けて)、滞留部28内の給糸ボビン9を押し出すように衝撃を与えることができるようになっている。これにより、定量搬送部29に向かう給糸ボビン9が詰まっていたとしても、当該給糸ボビン9の詰まりを崩すことができる。
【0068】
なお図7に示すように、搬送板32は、蛇腹状に折り曲げ加工されることにより、その上面に、波状の溝部47が複数平行に形成されている。この構成で、搬送板32に乗せられた給糸ボビン9は、溝部47に嵌まり込む。このとき、当該給糸ボビンの長手方向は、溝部47の長手方向に一致した姿勢となる。従って、上記のように搬送板32の上面に溝部47を平行に複数形成することにより、搬送板32によって搬送される給糸ボビン9の長手方向の向きが揃い易くなる。なお、前記溝部47は、1つであっても給糸ボビン9の向きを揃えることは可能である。
【0069】
以上のように、本実施形態の構成によれば、揺動部材31を揺動させるという簡単な構成により、給糸ボビン群を切り崩して所定量の給糸ボビン9のみを案内部30へと搬送することができる。従って、特許文献1のように、給糸ボビン群を切り崩すために水平方向に配設されたコンベアが必要ないので、給糸ボビン供給装置12の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0070】
次に、案内部30について説明する。案内部30は、定量搬送部29から搬送されてきた給糸ボビン9を、個別化部23へと案内するように構成されている。
【0071】
より具体的には、案内部30の装置奥側の側壁(図6の図面上側の側壁)は開放されており、当該開放部分が個別化部23の前記コンベア(無端環状帯体25及びボビン皿26が配置された空間)に連通している。そして、案内部30の底面48は、個別化部23へ向けて下向きに傾斜するように構成されている。これにより、定量搬送部29によって案内部30へと搬送されてきた給糸ボビン9は、個別化部23へ向けて寄せられる。従って、案内部30の底面48は、給糸ボビン寄せ部であるということができる。
【0072】
底面48の傾斜によって個別化部23へと寄せられた給糸ボビン9は、当該個別化部23の前記ボビン皿26によってすくい上げられる。これにより、給糸ボビン9を1つずつ、装置設置面に対して垂直方向上向きへと搬送することができる。即ち、給糸ボビン9を個別化することができる。
【0073】
案内部30は、当該案内部30内の給糸ボビン9の量を検出するためのボビンセンサ(検知部)49を備えている。具体的には、このボビンセンサは、案内部30の側壁が個別化部23へと開放されている部分(個別化部23のコンベアへの入口部分)の給糸ボビン9の有無を検出する非接触式のセンサとして構成されている。そして、本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、ボビンセンサ49の出力に基づいて、揺動部材31を揺動駆動するように構成している。
【0074】
即ち、ボビンセンサ49で給糸ボビン9が検出されている場合は、案内部30内に給糸ボビン9が残っている状態なので、搬送板32の上面を案内部30側に向けた状態となるように揺動部材31の姿勢を維持することで、滞留部28内の給糸ボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めておく。一方、ボビンセンサ49で給糸ボビン9が検出されなくなった場合は、案内部30内の給糸ボビン9がなくなった状態であるから、定量搬送部29によって所定量の給糸ボビン9を案内部30に搬送させる。より具体的には、ボビンセンサ49で給糸ボビン9が検出されなくなった場合は、搬送板32の上面を滞留部28側に向けるように揺動部材31を揺動させ、搬送板32の上に給糸ボビン9を乗せて、再び揺動部材31を揺動させて搬送板32の上面を案内部30側へと向ける。これにより、所定量の給糸ボビン9を案内部30へと搬送する。
【0075】
以上のように、案内部30内のボビンセンサ49の出力によって揺動部材31を制御駆動することにより、案内部30内の給糸ボビン9の量を、常に所定の範囲内とすることができるので、個別化部23によって、案内部30内の給糸ボビン9を適切にすくい上げることができる。
【0076】
なお、前記搬送板32の上面の溝部47は、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向と平行になるように形成されている。従って、搬送板32に乗せられて案内部30へと搬送されてきた給糸ボビン9は、前記溝部47に嵌まり込むことにより、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向に平行な姿勢となっている。従って、案内部30の底面48の傾斜によって個別化部23へと寄せられた給糸ボビン9は、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向と一致している可能性が高い。これにより、案内部30内の給糸ボビン9を、ボビン皿26によってすくい上げ易くなっている。
【0077】
なお、必ずしもこのように、給糸ボビン9の長手方向とボビン皿26の長手方向とが一致した状態で、個別化部23に給糸ボビン9が案内されるとは限らない。給糸ボビン9の長手方向が、ボビン皿26の長手方向に対して斜めになっていると、当該ボビン皿26に給糸ボビン9が乗らず、落ちてしまうことがある。しかしながら、落ちてしまった給糸ボビン9は、落ちる前とは姿勢が変化するので、案内部30の底面48の傾斜によって再び個別化部23へと寄せられたときには、ボビン皿26に乗る可能性がある。このように、案内部30の底面48が斜面として形成されているので、ボビン皿26に乗らずに落ちてしまった給糸ボビン9は何度でも個別化部23へと寄せられる。この度に給糸ボビン9の姿勢は変化するので、最終的には、給糸ボビン9を確実にボビン皿26に乗せることができる。
【0078】
ところで上記のように、案内部30内の給糸ボビン9は、ボビン皿26によって何度も姿勢を変化させられる。即ち、案内部30内の給糸ボビン9は、ボビン皿26によってかき混ぜられるような状態となるので、給糸ボビン9の糸が出てしまっている場合(糸引きがある場合)は、糸同士が絡み合い易い。給糸ボビン9の糸が絡み合ってしまうと、個別化部23による個別化を適切に行えないという状況が発生し得る。そこで本実施形態では、図1等に示すように、揺動部材31の案内部30側の端部に、糸をカットするためのカッタ50を設けている。このカッタ50は、ハサミ状に構成されており、図略の駆動源によって駆動されることにより、給糸ボビン9から出た糸を切断することができるように構成されている。これにより、定量搬送部29から案内部30へと給糸ボビン9を搬送する際に、予め、給糸ボビン9から出ている糸を切断しておくことができる。これにより、給糸ボビン9がボビン皿26によってかき混ぜられたとしても、糸の絡みつきなどの発生を防止し、個別化を適切に行うことができる。
【0079】
また上記のように、ボビン皿26には必ずしも給糸ボビン9が乗るとは限らない(即ち、ボビン皿26は空の場合がある)。従って、個別化部23からトレイ載置部24に対して給糸ボビン9を供給できないときがあることになる。すると、トレイ載置部24から搬送トレイ21に対して給糸ボビン9を供給できないことになるので、トレイ載置部24がいわば遊んでいる状態となってしまう。そこで、本実施形態では、個別化部23とトレイ載置部24との間に、給糸ボビン9を一時的にストックしておくことができるボビンバッファ部(保留部)51を有している。そして、ボビン皿26に給糸ボビン9が乗っていない場合には、ボビンバッファ部51にストックされた給糸ボビンをトレイ載置部24へ供給するように構成されている。これにより、トレイ載置部24が遊んでしまうことを防止し、装置の効率を向上させることができる。
【0080】
以上で説明したように、本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、給糸ボビン投入部22と、個別化部23と、を備える。給糸ボビン投入部22には、精紡機で紡糸された糸が巻かれた給糸ボビン群が投入される。個別化部23は、給糸ボビン投入部22に投入された給糸ボビン群を個別化する。また、給糸ボビン投入部22は、滞留部28と、案内部30と、定量搬送部29と、を有する。滞留部28は、投入された前記給糸ボビン群を一時的に滞留させる。案内部30は、個別化部23まで給糸ボビン9を案内する。定量搬送部29は、滞留部28と案内部30との間に設けられる。そして定量搬送部29は、揺動することにより、滞留部28に滞留している給糸ボビン群のうち所定の量だけを案内部30に送り出す揺動部材31を有する。
【0081】
このように、揺動部材31を揺動させるという簡単な構成で、滞留されているボビン群を個別化部23に対して所定量だけ送ることができるので、コンベアによって定量搬送していた従来の構成に比べて、省スペース化を実現することができる。
【0082】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12において、案内部30には、当該案内部30内の給糸ボビン9の量を検知するボビンセンサ49が設けられ、揺動部材31は、ボビンセンサ49の検知結果に基づいて揺動駆動される。
【0083】
このように、案内部30内の給糸ボビン9の量に応じて、揺動部材31を駆動させることで、案内部30内の給糸ボビン9の量を、常に所定の範囲内とすることができる。これにより、個別化部23に対して、給糸ボビン9を適切に供給することができる。
【0084】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、以下のように構成される。即ち、揺動部材31は、その上面に給糸ボビン9を乗せる搬送板32と、出没可能に設けられた流入阻止壁34と、を有している。そして、当該揺動部材31は、搬送板32に給糸ボビン9を乗せた状態で揺動することにより、所定量の給糸ボビン9を滞留部28から案内部30へと送り出すとともに、滞留部28から案内部30へと給糸ボビン9が流れ込むことを流入阻止壁34によって阻止する。
【0085】
即ち、搬送板32の上に乗った給糸ボビン9だけを、案内部30に送り出すことができる。このように、簡単な機構で給糸ボビン9の定量搬送ができるので、コンベアのような複雑かつ大スペースの装置が不要となる。
【0086】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12において、搬送板32の上面には、一方向に沿って形成された溝部47が複数並んで形成されている。
【0087】
搬送板32の上面に乗った給糸ボビン9は、溝部47に嵌まりこむことにより、当該溝部47の長手方向に沿って整列される。これにより、定量搬送部29から案内部30に送られるときの給糸ボビン9の方向を揃えることができる。
【0088】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12において、搬送板32の一側端部には、給糸ボビン9から解舒された糸を切断するためのカッタ50が設けられている。
【0089】
これにより、給糸ボビン9の糸引きを防止することができるので、案内部30や個別化部23において給糸ボビン9の糸が絡みあうことを防止できる。
【0090】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、以下のように構成される。即ち、滞留部28は、定量搬送部29に向けて傾斜した底面43を有する。前記底面43の一部には、当該底面43から突出した状態と、当該底面43と略面一の状態と、の間で駆動されるボビン崩し部材45が設けられている。
【0091】
即ち、滞留部28に大量のボビンが投入されると、定量搬送部29へと向かう途中の給糸ボビン9が詰まってしまう場合が考えられる。そこで、底面43から突出するボビン崩し部材45を設け、当該ボビン崩し部材45を駆動して給糸ボビン9に対して衝撃を与えることにより、詰まったボビンを崩すことができる。
【0092】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12において、個別化部23は、案内部30によって案内されてきた給糸ボビン9を、案内部30の設置面に対して垂直方向に取り出して搬送しつつ個別化する。
【0093】
このように給糸ボビン9を垂直方向に搬送する構成とすることにより、例えば給糸ボビン9を水平方向に搬送する構成と比べて設置スペースを小さくすることができる。
【0094】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は以下のように構成されている。即ち、個別化部23は、案内部30内の給糸ボビン群を、当該案内部30の一側側面から取り出すように配置される。案内部30は、当該案内部30内の給糸ボビン群を個別化部23が取り出すことができる位置に寄せる底面48を備えている。
【0095】
このように、案内部30内の給糸ボビン9を個別化部23に向けて寄せることにより、当該案内部30内の給糸ボビン9を、個別化部23によって適切に取り出すことができる。
【0096】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置において、前記底面48は、個別化部23へ向けて傾斜している。
【0097】
これにより、簡単な構造で、給糸ボビン9を個別化部23に向けて寄せることができる。また、底面48を傾斜面とすることにより、個別化部23で取り出せなかった給糸ボビン9が何度も個別化部23に向けて寄せられる。従って、一回で取り出すことができなかった給糸ボビン9であっても、個別化部23に向けて何度も寄せられるうちに姿勢が変更され、個別化部23によって取り出すことができるようになる。
【0098】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、以下のように構成されている。即ち、この給糸ボビン供給装置12は、個別化部23により個別化された給糸ボビン9を搬送トレイ21に乗せるトレイ載置部24を有する。個別化部23とトレイ載置部24との間には、個別化された給糸ボビン9を一時的にとどめるボビンバッファ部51が設けられている。
【0099】
このように、トレイ載置部24の直前にボビンバッファ部51を設けておくことで、個別化部23で個別化が遅れた場合(ボビン皿26にボビンがうまくのらなかった場合など)であっても、ボビンバッファ部51の給糸ボビンをトレイ載置部24に供給することができる。従って、前記トレイ載置部24が遊ぶことがない。これにより、トレイ載置部24の処理効率を向上させることができる。
【0100】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、以下のように構成されている。即ち、個別化部23は、給糸ボビン9を乗せることができるように長方形状に形成されたボビン皿26を備える。当該ボビン皿26は、案内部30の設置面に対して垂直方向に駆動される。
【0101】
この構成で、案内部30内の給糸ボビン9を、ボビン皿26に乗せて垂直方向に搬送しつつ個別化することができる。
【0102】
また本実施形態の給糸ボビン供給装置12は、以下のように構成されている。即ち、この給糸ボビン供給装置12は、ボビン皿26に乗せられた給糸ボビン9に対して、前記ボビン皿26の取り上げ側端部とは反対側から接触可能な接触部材41を有する。接触部材41は、ボビン皿26による給糸ボビン9の搬送方向に沿って配置されるとともに、ボビン皿26の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部42を有する。
【0103】
この構成で、ボビン皿26に乗った給糸ボビン9は、当該ボビン皿26によって搬送されることにより、押出部42の部分にさしかかったときに、接触部材41によってボビン皿26の取り上げ側端部に向けて押される。このとき、給糸ボビン9に揺さぶり作用が与えられるので、例えば複数の給糸ボビン9が重なっているような場合に、不要な給糸ボビン9をボビン皿26から落とすことができる。
【0104】
また本実施形態の自動ワインダは、上記の給糸ボビン供給装置12と、当該給糸ボビン供給装置12によって個別化された給糸ボビン9から糸を解舒して巻き返すことによりパッケージを形成する複数のワインダユニットと、給糸ボビン供給装置12によって個別化された給糸ボビン9を各ワインダユニットまで搬送する給糸ボビン搬送装置11と、を備えている。
【0105】
この自動ワインダは、本発明の給糸ボビン供給装置12を備えているので、省スペースで、かつ作業者の負担を低減することができる。
【0106】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0107】
上記実施形態では、個別化部は、給糸ボビン9を垂直方向に搬送するコンベアであるとしたが、これに限らない。例えば、個別化部として、特許文献1に記載のパーツフィーダを利用することもできる。
【0108】
検知部は、非接触式のボビンセンサ49に限らず、接触式のセンサによって案内部30内の給糸ボビン9の量を検出する構成であっても良い。
【0109】
ボビンセンサ49で給糸ボビン9が検出されている場合は、搬送板32の上面を案内部30側に向けた状態で揺動部材31の姿勢を維持するとして説明したが、これに代えて、搬送板32に給糸ボビン9を乗せた状態で、当該搬送板32が略水平状態となるように揺動部材31を待機させていても良い。このように揺動部材31に給糸ボビン9を乗せて待機させておけば、案内部30の給糸ボビン9が無くなったことをボビンセンサ49が検知した際に、直ちに案内部30へ給糸ボビン9を搬送することができる。
【0110】
給糸ボビン寄せ部は、案内部30の傾斜底面であるとしたが、これに限らない。例えば、給糸ボビン9を個別化部23に向けて押す押し部材を設け、当該押し部材によって給糸ボビン9を個別化部23に向けて寄せる構成としても良い。
【0111】
接触部材は金属製のワイヤであるとしたが、これに限らない。例えば、板状の部材によって接触部材を構成することもできる。
【0112】
給糸ボビン供給装置12は、自動ワインダに限らず、他の種類の繊維機械に対して給糸ボビンを供給する用途にも利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
9 給糸ボビン
11 給糸ボビン搬送装置
12 給糸ボビン供給装置
22 給糸ボビン投入部
23 個別化部
26 ボビン皿(ボビン受け部材)
28 滞留部
29 定量搬送部
30 案内部
31 揺動部材
32 搬送板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機で紡糸された糸が巻かれた給糸ボビン群が投入される給糸ボビン投入部と、
前記給糸ボビン投入部に投入された給糸ボビン群を個別化する個別化部と、
を備えた給糸ボビン供給装置であって、
前記給糸ボビン投入部は、
投入された前記給糸ボビン群を一時的に滞留させる滞留部と、
前記個別化部まで給糸ボビンを案内する案内部と、
前記滞留部と前記案内部との間に設けられる定量搬送部と、
を有し、
前記定量搬送部は、揺動することにより、前記滞留部に滞留している給糸ボビン群のうち所定の量だけを前記案内部に送り出す揺動部材を有することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記案内部には、当該案内部内の給糸ボビンの量を検知する検知部が設けられ、前記揺動部材は、前記検知部の検知結果に基づいて揺動駆動されることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記揺動部材は、その上面に給糸ボビンを乗せる搬送板と、
出没可能に設けられた流入阻止壁と、
を有し、
当該揺動部材は、前記搬送板に給糸ボビンを乗せた状態で揺動することにより、所定量の給糸ボビンを前記滞留部から前記案内部へと送り出すとともに、前記滞留部から前記案内部へと給糸ボビンが流れ込むことを前記流入阻止壁によって阻止することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記搬送板の上面には、一方向に沿って形成された溝部が複数並んで形成されていることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記搬送板の一側端部には、給糸ボビンから解舒された糸を切断するためのカッタが設けられていることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記滞留部は、前記定量搬送部に向けて傾斜した底面を有し、
前記底面の一部には、当該底面から突出した状態と、当該底面と略面一の状態と、の間で駆動されるボビン崩し部材が設けられていることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記個別化部は、前記案内部によって案内されてきた給糸ボビンを、前記案内部の設置面に対して垂直方向に取り出して搬送しつつ個別化することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記個別化部は、前記案内部内の給糸ボビン群を、当該案内部の一側側面から取り出すように配置され、
前記案内部は、当該案内部内の給糸ボビン群を前記個別化部が取り出すことができる位置に寄せる給糸ボビン寄せ部を備えていることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記給糸ボビン寄せ部は、前記個別化部へ向けて傾斜する底面であることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記個別化部により個別化された給糸ボビンを搬送トレイに乗せるトレイ載置部を有し、
前記個別化部と前記トレイ載置部との間には、個別化された給糸ボビンを一時的にとどめる保留部が設けられていることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記個別化部は、給糸ボビンを乗せることができるように長方形状に形成されたボビン受け部材を備え、
当該ボビン受け部材は、前記案内部の設置面に対して垂直方向に駆動されることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記個別化部は、前記ボビン受け部材に乗せられた給糸ボビンに対して、当該ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能な接触部材を有し、
前記接触部材は、前記ボビン受け部材による給糸ボビンの搬送方向に沿って配置されるとともに、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の給糸ボビン供給装置と、
当該給糸ボビン供給装置によって個別化された給糸ボビンから糸を解舒して巻き返すことによりパッケージを形成する複数のワインダユニットと、
前記給糸ボビン供給装置によって個別化された給糸ボビンを各ワインダユニットまで搬送する給糸ボビン搬送装置と、
を備えることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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