説明

給紙装置および画像形成装置ならびに画像形成システム

【課題】生産性を低下させることなく、装置を大型化することなく、定着部表面の荒れを効果的に防止する。
【解決手段】記録紙を収容する収容部と、前記収容部に収容された記録紙を吸引し吸着状態で搬送する吸着搬送部と、前記吸着搬送部における前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部と、を備え、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする給紙装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、印刷機、複合機等の画像形成装置に用いられる給紙装置、該給紙装置を備えた画像形成装置、ならびに、給紙装置及び画像形成装置を備える画像形成システムに関し、特に、画像形成に用いる記録紙を吸着して給紙搬送する場合における定着ローラの表面の荒れ防止の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置では、回転する感光体ドラムや感光体ベルトの像担持体上にトナー像を形成し、形成されたトナー像を直接或いは間接に記録紙上に転写し、さらに定着して画像を形成することが行われている。
【0003】
この画像形成にあたっては、記録紙上に静電的に転写されたトナー像を、定着ローラによる熱と圧力とによって記録紙上に安定した状態で定着させるようにしている。
ところで、同一サイズの記録紙で画像形成(定着)を繰り返し、記録紙の端部が定着ローラ表面の同一箇所に接することで、定着ローラ表面に傷がついたり、定着ローラ表面が削れたりといった現象が発生することがある。これにより、定着ローラの寿命が短くなるという不具合が発生することになる。
【0004】
さらに、このような傷や削れが生じた定着ローラを使用し続けた場合、この傷や削れよりも幅広の記録紙を使用する際に、定着ローラの傷や削れの部分で定着にムラが発生し、画像が劣化する問題も生じる。すなわち、この現象は、あるサイズの転写紙を繰り返して使用したことにより定着ローラに傷や削れが生じた後に、その記録紙より大きいサイズの記録紙を使用した場合に顕著にあらわれてくる。
【0005】
また、このような傷や削れに関しては、定着ローラ以外に、感光体に対しても発生しうる問題である。
なお、このような定着ローラ表面の傷や削れ(以下、「荒れ」と呼ぶ)を防止するため、以下の特許文献に各種の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−298925号公報
【特許文献2】特開2006−317881号公報
【特許文献3】特開2008−225276号公報
【特許文献4】特開2007−34068号公報
【特許文献5】特開平07−13450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の特許文献1では、定着器の上流側に、記録紙端部を挟み込むことにより端部を薄くする技術が提案されている。これにより、挟み込まれて薄くされた記録紙端部が定着ローラ表面を傷つける程度が改善される。
【0008】
以上の特許文献2では、定着ベルトの表面を研磨する研磨剤を設けて表面の荒れに対処している。
以上の特許文献3では、定着ローラあるいは定着ベルト表面に押圧力を低減する凹部を設けるようにしている。
【0009】
以上の特許文献4では、上ベルト・下ローラの構成の定着において、ベルトの当接部材を配置して、表面粗さを上ベルトの表面粗さより大きくして対処している。
なお、以上の特許文献1−4では傷を薄くするあるいは研磨するといった手法であり、定着ローラでの傷や削れ発生を根本的に解決するものではない。
【0010】
そこで、定着ローラそのものを、定着ローラ軸方向(副走査方向)に揺動させる構成も考えられる。しかし、揺動させる余裕のために、定着ローラを本来の副走査方向の大きさよりも大きく構成する必要が生じる。また、定着ローラは重く大きいため、揺動させる機構が大がかりになるという問題もある。なお、定着ローラは最大サイズの記録紙の大きさをカバーするように作成されているが、それを揺動させるために周囲が更に大きくするため、装置全体の大きさにも影響を及ぼすことが想定される。
【0011】
そこで、以上の特許文献5で、定着ローラの熱を均等にするために記録紙を副走査方向に移動させているが、これを利用して、定着ローラの傷を分散させられる効果も生じる。すなわち、特許文献5では、記録紙の位置を副走査方向にずらすことにより定着ローラでの傷の位置が分散されるため、一見すると効果的であるように見受けられる。
【0012】
しかし、この特許文献5では、図13のフローチャートに示すように、先行する記録紙が給紙ローラで給紙搬送(図13ステップS01,S02)されて給紙カセットから抜け出た後(図13ステップS03)であって、次の記録紙が給紙ローラによって駆動(図13ステップS01)され始めるまでの間の、極めて短い時間に給紙カセットを副走査方向に移動(図13ステップS04)させて、位置決め(図13ステップS05,S06)をする必要がある。
【0013】
このため、低速な画像形成装置であれば対処可能であるが、高速な画像形成装置では給紙カセットを副走査方向に移動させる時間的な余裕(図13ステップS02〜S05)があまりなく、実現が難しくなっている。また、この給紙カセットの移動時間をとることで、給紙タイミングが遅れ、画像形成の生産性が低下することも予想される。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、生産性を低下させることなく、装置を大型化することなく、定着部表面の荒れを効果的に防止することが可能な給紙装置、画像形成装置、画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、記録紙を収容する収容部と、前記収容部に収容された記録紙を吸引し吸着状態で搬送する吸着搬送部と、前記吸着搬送部における前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部と、を備え、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする給紙装置である。
【0016】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記収容部の搬送直交方向位置を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする。
【0017】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記収容部から前記吸着搬送部に向けて吸引される経路において、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するように導くガイド手段を備える、ことを特徴とする。
【0018】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に、前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記吸着搬送部での搬送速度を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、以上のいずれか一項に記載の給紙装置と、前記給紙装置から給紙された記録紙に画像を形成する画像形成部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。ここで、前記画像形成部は、前記記録紙の前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記記録紙の画像領域に画像を形成する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、記録紙上に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置に前記記録紙を搬送する給紙装置と、各部を制御する制御部と、を有する画像形成システムであって、前記給紙装置は、記録紙を収容する収容部と、前記収容部に収容された記録紙を吸引し吸着状態で搬送する吸着搬送部と、前記吸着搬送部における前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部と、を備え、前記制御部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するよう前記搬送直交方向位置変更部を制御する、ことを特徴とする画像形成システムである。
【0021】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記収容部の搬送直交方向位置を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする。
【0022】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記収容部から前記吸着搬送部に向けて吸引される経路において、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するように導くガイド手段を備える、ことを特徴とする。
【0023】
ここで、前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に、前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記吸着搬送部での搬送速度を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、ことを特徴とする。
【0024】
ここで、前記画像形成部は、前記記録紙の前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記記録紙の画像領域に画像を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明において、収容部に収容された記録紙を吸着搬送部にて吸引して吸着状態で搬送する際に、記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部により、吸着搬送部での吸引中あるいは搬送中に記録紙の搬送直交方向位置を変更する。
【0026】
このような記録紙Pの搬送直交方向位置の変更により、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが拡散されて特定の位置に集中しないようになり、傷や削れの発生が抑制されることになる。また、記録紙Pの搬送直交方向位置の変更により、定着ローラの熱を幅広く均等に使用することが可能になる。
【0027】
この場合、吸着搬送部での記録紙の吸引や分離の動作中、あるいは記録紙の吸着搬送中に、記録紙の搬送直交方向位置を変更すればよく、位置変更を特定の短いタイミングで行う必要がないため、画像形成の生産性を低下させることない。
【0028】
また、吸着搬送部での吸引あるいは搬送の際の記録紙の搬送直交方向位置を変更すればよいため、定着ローラそのものを動かすものと比較して、装置を大型化することなく、定着部表面の荒れを効果的に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図7】本発明の実施形態の構成を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態の動作を示す構成図である。
【図10】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図11】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図12】本発明の実施形態の構成を示す構成図である。
【図13】従来装置における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(実施形態)を詳細に説明する。
〔構成〕
ここで、第一実施形態の画像形成システム300の構成を、図1(ブロック図)と図2(断面構成図)とに基づいて詳細に説明する。
【0031】
なお、この実施形態の画像形成システムとしては、各種のシステムに適用が可能であるが、ここでは、スキャナ,複写機,プリンタ,ファクシミリの機能を備えた複合機(MFP)としての画像形成装置と給紙装置とを接続したシステムを具体例にして説明を続ける。
【0032】
ここでは、画像形成装置や給紙装置として既知であって、本実施形態の特徴的な構成や動作や制御に直接に関係しない一般的な部分についての説明は省略してある。
図1では、本実施形態の画像形成装置100と、該画像形成装置100に対して記録紙の給紙を行う給紙装置200とが接続されて、画像形成システム300を構成している状態を示している。
【0033】
本実施形態の画像形成装置100は、各部を制御する全体制御部としての制御部101、各種データやプログラムなどが格納されたROM(Read Only Memory)102、プログラムなどが展開されるRAM(Random Access Memory)103、操作入力がなされ状態を表示する操作表示部105、画像データに対して画像処理を行う画像処理部110、画像処理された画像データにより画像形成を行う画像形成部130、を備えて構成されている。
【0034】
また、給紙装置200は、給紙装置各部を制御する制御部201、吸着搬送部260の記録紙の吸着状態を検知する用紙吸着検知センサ211、吸着搬送部260での記録紙の搬送状態を検知するフィードセンサ212、給紙トレイ上に積載された記録紙束の高さが上述した吸着を行う最適な高さを維持できるように積載高さを検知する用紙高さ検知センサ213、給紙装置200本体部分に対して挿抜可能な収容部を引き出すグリップ部に設けられた握り検知のためのグリップセンサ214、給紙トレイ上の記録紙Pの有無あるいは残量を検知する用紙残量センサ215、吸着部264の記録紙の吸い上げと2枚目以降の落下を促進する側方風を発生させる側方送風部240、記録紙の重送を防止するために吸い上げられた記録紙の2枚目以降に風を送って分離して落下させる前方送風部250、トレイに積載された記録紙を空気圧で吸い上げて吸着する吸着部264及び吸着部264で吸着された記録紙を搬送して給紙する搬送部263を備える吸着搬送部260、収容部(給紙トレイ)に収容された記録紙Pを吸着搬送部260にて吸引して吸着状態で搬送する際に記録紙Pの搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部280、を備えて構成されている。
【0035】
なお、側方送風部240は、後述するように、搬送直交方向位置変更部と連動して、側部規制部材としての機能を有したり、側方風の強さを左右で異なる風量や風速にすることが可能であってもよい。
【0036】
図2は、給紙装置200が接続された画像形成装置100の全体構成を模式的に示す断面構成図である。
ここでは、大きく分けて、原稿の画像を読み取る画像読取装置SC、画像読取装置SCに原稿を自動的に送る自動原稿送り装置DF、記録紙に画像を形成する画像形成部130、給紙装置200、画像形成装置100に内蔵された給紙装置200’、から構成されている。
【0037】
なお、この図2に示される画像形成部130は、像担持体である感光体1、帯電部2、露光装置3、現像装置4、転写部5、クリーニング部6、定着装置7、を有して構成されている。
【0038】
画像形成装置100内で記録紙を搬送する記録紙搬送部は、第2給紙部12、排紙部14、搬送路切換部15、循環再給紙部16、反転排紙部17などから構成されている。
自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは給紙部により搬送され、画像読取装置SCの光学系により原稿dの片面又は両面の画像が露光され、イメージセンサCCDにより読み込まれる。イメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部110において、アナログ処理、A/D変換、シェーデインク補正、画像圧縮処理等を行った後、露光装置3に画像信号を送る。
【0039】
そして、画像形成部130においては、電子写真方式の画像形成の場合には、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の一連の処理が行われる。
画像形成部130においては、感光体1表面が帯電部2により帯電され、露光装置3からのレーザ光照射により静電潜像が形成され、現像装置4により静電潜像が顕像化されてトナー像となる。次いで、給紙装置200あるいは給紙装置200’に収容された記録紙Pが給紙搬送される。記録紙Pは、レジストローラから成る第2給紙部12でトナー像との同期がとられて搬送される。その後、記録紙Pは、転写部5でトナー像が転写されてから定着装置7により定着される。
【0040】
定着後の記録紙Pは、排紙部14により装置外に排出される。一方、クリーニング部6により感光体1上の転写残のトナーが除去される。なお、両面コピーの場合は、第1面に画像形成された記録紙Pは、循環再給紙部16に送り込まれて反転され、再び画像形成部において第2面に画像形成後、排紙部14により画像形成装置外に排出される。反転排紙の場合は、通常の排紙通路から分岐した記録紙Pは、反転排紙部17においてスイッチバックして表裏反転された後、排紙部14により画像形成装置外に排出される。
【0041】
本実施形態の給紙装置200は、画像形成装置100とは別体に構成され、画像形成装置100に接続されている。また、本実施形態の給紙装置200’は、画像形成装置100内部で画像形成部130に接続されている。
【0042】
給紙装置200あるいは200’は、収容部230、側方送風部240、前方送風部250、吸着搬送部260等を有し、大量の記録紙Pを収容して、画像形成部130に記録紙Pを1枚ずつ吸着しつつ搬送して給送を実行する。
【0043】
〔吸着搬送の動作〕
図3は本実施形態の給紙装置200の要部である収容部230付近の内部構成を示す斜視図である。
【0044】
収容部230は、図3に示すごとく、給紙トレイ231、記録紙の先端を規制する先端規制部材232、記録紙の後端を規制する後端規制部材233、を有する。なお、後述する側方送風部240に、記録紙の側部を規制する側部規制部材241が配置されている。
【0045】
なお、図1においては、給紙装置200として、収容部230が垂直3段に構成されている。また、図1においては、画像形成装置100に内蔵された給紙装置200’として、収容部230が垂直2段に構成されている。
【0046】
これらの図において、積層された記録紙Pは、給紙トレイ231の上に載置され、図示しない機構により昇降可能に収容されている。側部規制部材241は、記録紙幅方向に移動自在になっており、積層された記録紙Pの記録紙幅に対応して、記録紙Pの両側に軽く押圧して記録紙Pの両側位置を規制する。
【0047】
側部規制部材241は、頂部に段差があり、記録紙Pの送り方向の上流側の面241aが高く、下流側の面241bが低くなっている。上流側の面241aには、図示しないが、側部規制部材241の上端を支持する支持部材が取り付けられる。下流側の面241bは、後述する吸着搬送部260と、記録紙搬送方向(図3中の矢印X方向)上で重なっている。
【0048】
そして、後述するように、吸着搬送部260での記録紙の吸引中、あるいは記録紙の搬送中に、記録紙Pの搬送直交方向(図3中のY方向)位置を変更可能に構成されている。なお、この構成と動作については、別の図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
先端規制部材232は、記録紙Pの搬送方向の先端位置を規制している。後端規制部材233は、記録紙Pの搬送方向に移動自在で、記録紙Pの搬送方向の後端位置を規制している。
【0050】
また、給紙トレイ231上に積載された記録紙束の高さが、エアーの吹き付け、及び記録紙Pの吹き付けを行う最適な高さを維持するために、制御部201が、高さ検知センサ213の検知結果に基づいて、図示しない昇降モータを駆動させ、給紙トレイ231上で記録紙Pを上昇させる制御を行う。
【0051】
また、記録紙Pの送り出し方向(X方向)先端近傍には、吸着搬送部260が配置されている。吸着搬送部260は、駆動源に接続する大ローラ261と2個の小ローラ262を巻回して回動し、搬送部263として機能する吸着ベルト263Bを有する。吸着ベルト263Bには多数の小径の貫通孔が穿設されている。吸着ベルト263Bの内方には吸着部として機能する吸着部264が配置されていて、吸着ベルト263Bを介して記録紙Pを吸引力により吸着しながら搬送し、記録紙Pを給紙ローラ265へと送るものである。
【0052】
また、図3に示すように、記録紙Pの搬送方向に直交する側方から給紙トレイ231内に積層された記録紙Pの上部にエアーを吹き付ける側方送風部240を、給紙トレイ231の両側面に配置した。側方送風部240は、記録紙Pの撤送方向に直交する両側方の送風口244から記録紙Pの上部にエアーを吹き付ける送風ファン242を有する。送風口244は、側部規制部材241の下流側の面241bにあって、記録紙搬送方向(矢印X)上で、吸着搬送部260と少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0053】
側方送風部240を側部規制部材241内に取り付けているので、記録紙Pのサイズが変更された場合でも、側部規制部材241を移動することによって、側方送風部240もー諸に移動できることになる。なお、側方送風部240は、この実施例では、記録紙Pの両側に設けられているが、片側だけでもよい。
【0054】
側方送風部240が駆動され、送風口244から吸着搬送部260の下部にエアーが吹き出され、積層された記録紙Pの上部にある数枚にエアーが吹き付けられる。エアーは記録紙Pの一方の端部から記録紙間を通り抜けて他方の端部に向けて吹き付けられる。これによって記録紙Pの上部数枚は1枚ずつに分離される。吸着搬送部260は、こうして分離された記録紙Pから一番上の記録紙Pだけを吸着する。
【0055】
また、吸着ベルト263Bの吸着面の近傍に配置された吸着検知センサPS1は、記録紙Pの最上面が吸着ベルト263Bに吸着されたことを検知する。吸着ベルト263Bは回転を開始し、記録紙Pを搬送し始める。そして、給紙トレイ231の記録紙搬送方向下流側の吸着ベルト263Bの近傍に配置されたフィードセンサPS2は、給送される記録紙Pの通過を検知する。
【0056】
給紙トレイ231の記録紙搬送方向下流側の吸着ベルト263Bの先端近傍には、前方送風部250が収容部230に固定されている。前方送風部250は送風ファン251等により構成されている。なお、前方送風部250は、収容部230に取り付けて、ダクトを介して記録紙束の先端部に送風するように構成してもよい。前方送風部250の送風ファン251は送風口253を上向きにして取り付けられている。上向きに吹き付けられたエアーは、ガイド板252により向きを変えられ、斜め上方に送風口253から吹き出され、吸着搬送部260の吸着ベルト263Bの近傍に送風する。前方送風部250は、記録紙Pの種類に応じて駆動が制御される。即ち、OHPフイルム、トレース記録紙、表面が平滑な塗工紙、ミシン目や筋押し等の加工が施された記録紙、オフセット印刷済みの記録紙に打ち粉が塗布されている場合などで記録紙間にエアーを吹き込んで分離を確実にする。
【0057】
吸着ベルト263Bが記録紙Pを吸引しながら回動を続けると、記録紙束の最上層の記録紙Pが図3中の矢印Xの方向に進み、給紙ローラ265にニップされ、画像形成部130へ送りだされる。
【0058】
図3に示すように、側方送風部240の吸気口は、遮蔽部材245によって遮蔽され、開閉自在である。即ち、板状のシャッタからなる遮蔽部材245は軸246により軸支され、ソレノイドSOLによって開閉される。制御手段は、遮蔽部材245を開閉自在に制御して側方送風部240によるエアー吹き付けを、オン(吹き付け)とオフ(停止)とに切り換えるように制御する。
【0059】
図4は、側方送風部240と前方送風部250による記録紙の吸着搬送過程を示す断面図である。ここで、図4(a)は記録紙の吸着過程を示す。側方送風部240により吹き上げられる側方送風V1(図示の白抜き矢印)によって、給紙トレイ231上に積載された記録紙束の上層の少数枚の記録紙Pが記録紙の自重に抗して持ち上げられ、吸着ベルト263Bの負圧による吸気V3(図示の白抜き矢印)により吸着される。前方送風部250により吹き上げられる前方送風V2(図示の白抜き矢印)は、吸着ベルト263Bの前方底部近傍を吹き付けている。
【0060】
また、図4(b)は、記録紙の分離過程を示す。記録紙束の上層の少数枚が吸着ベルト263Bに吸着されると、遮蔽部材245が側方送風部240の吸気口を遮蔽して送風を停止する。すると、前方送風部250のみによる送風が、最上層の記録紙P1と、その下方の記録紙P2の紙間を通過する。最上層の記録紙P1は吸着搬送部260の吸気V3によって吸着され、最上層の記録紙P1を除く記録紙束の記録紙Pから分離される。分離された最上層の記録紙P1の下方の記録紙P2は、記録紙P2の自重によって矢印方向に下降し、記録紙Pの上に収容される。
【0061】
このように側方送風部240と前方送風部250の送風を繰り返すことにより、記録紙束の上部の数枚の記録紙P2の浮き上がりが送風口244,253のほぼ全面に拡がり、各記録紙間の隙間がほぼ同じ間隔になる。そして、この隙間をエアーが通過していく。これによって、記録紙P1の分離が良くなり、記録紙P1を送り出し易くなる。
【0062】
〔本実施形態の特徴部分の構成(1)〕
図5は収容部230付近の給紙トレイ231と、側方送風部240と、吸着搬送部260の構成を、記録紙搬送方向(矢印X)が紙面垂直方向(手前もしくは奥)となるように示した説明図である。
【0063】
ここで、給紙トレイ231は、画像形成装置の他の部位に対して位置が固定状態である給紙トレイベース部231a上で、Y方向に移動可能な給紙トレイ可動部231bを備えて構成されている。
【0064】
そして、この給紙トレイ可動部231bは、搬送直交方向位置変更部280を構成する駆動部281により、記録紙Pを吸着搬送部260にて吸引して吸着状態で搬送する際に記録紙Pの搬送直交方向位置を変更するよう構成されている。ここでは、図5(a),(b),(c),(d)と3段階のY方向の位置変更を示したが、段階的であってもよいし、連続的な位置変更であってもよい。また、連続的な位置変更も、滑らかな連続的位置変更であっても良いし、多段階の細かなステップ状の位置変更であっても良い。
この駆動部281は、モータ駆動されるネジ棒とナット、ボイスコイルモータ、超音波モータ、ソレノイド、超磁歪素子など、各種の駆動手段を用いて、Y方向に駆動あるいは揺動させることが可能である。なお、この際の駆動や揺動による位置変更の振幅は、記録紙端部により定着ローラ表面に生じる荒れを防止するためであり、数mm〜十数mm程度であればよい。
【0065】
なお、ここでは、画像形成装置の他の部位に対して位置が固定状態である給紙トレイベース部231a上で、Y方向に移動可能な給紙トレイ可動部231bによる二段階構成の例を示したが、給紙トレイベース部231aが画像形成装置の固定部材上で移動する構成であってもよい。
【0066】
〔本実施形態の特徴部分の構成(2)〕
図6は収容部230付近の給紙トレイ231と、側方送風部240と、吸着搬送部260の構成を、記録紙搬送方向(矢印X)が紙面垂直方向(手前もしくは奥)となるように示した説明図である。
【0067】
ここで、側部規制部材241と側方送風部240とを兼ねる上端部付近が、Y方向に規制位置(吸引方向に向けた規制向き)を可変すべく、搬送直交方向位置変更部280を構成する可変側部規制部材282として構成されている。この可変側部規制部材282をガイド手段として使用することにより、記録紙Pを吸着搬送部260にて吸引して吸着状態で搬送する際に、記録紙Pの搬送直交方向位置を変更するよう構成されている。ここでは、図6(a),(b),(c),(d)と3段階のY方向の記録紙位置変更(可変側部規制部材282の傾きの変更)を示したが、段階的な傾きの変更であってもよいし、連続的なY方向位置変更のための傾き変更であってもよい。
【0068】
この可変側部規制部材282は、各種の駆動手段を用いて、Y方向に駆動あるいは揺動させるよう傾きを変更することが可能である。なお、この際の駆動や揺動による記録紙Pの位置変更の振幅は、記録紙端部により定着ローラ表面に生じる荒れを防止するためであり、数mm〜十数mm程度であればよい。
【0069】
〔本実施形態の特徴部分の動作説明〕
以下、図7のフローチャートと図8のフローチャートとを参照して、給紙装置200、画像形成装置100の動作について説明する。
【0070】
なお、ここでは説明の簡略化から、制御部101及び制御部201間における信号の送受信について省略する場合もあるが、制御部201は制御部101からの指示を受けて給紙装置の各部を制御するものとする。また、後述するように、いずれか一方の制御部によって、本実施形態の制御を行うことも可能である。
【0071】
まず、操作表示部105あるいは図示されない外部PCなどから画像形成出力の指示があると(図7中のステップS101でYES)、この指示を受けた制御部101は、指示された画像データに基づいて画像形成すべく、画像処理部110と画像形成部130とを制御する。
【0072】
ここで、制御部101は、帯電,露光,現像,搬送,転写,定着を実行するよう画像形成部130内の各部を制御する(図7中のステップS102)。また、制御部101からの指示を受けた制御部201は、吸着搬送を伴う給紙を実行するよう給紙装置200内の各部を制御する(図7中のステップS102)。なお、この際は、初期状態として、定着ローラ表面荒れ防止の機能はオフ状態で処理を開始する。
【0073】
画像形成を続行する場合(図7中のステップS103でYES)、制御部101は、定着ローラ表面荒れ防止機能がオンであるか否かを確認し(図7中のステップS104)、既にオンであれば(図7中のステップS104でNO)、ステップS102に戻って画像形成が完了するまで(図7中のステップS103)、以上の画像形成処理(ステップS102〜ステップS104)を繰り返す。
【0074】
ここで、定着ローラ表面荒れ防止機能がオフであれば(図7中のステップS104でYES)、制御部101は、定着ローラの通紙枚数を、記録紙サイズ毎にカウントする(図7中のステップS105)。なお、定着装置が複数設けられていて通紙枚数が一致しない可能性のある構成である場合には、このカウントを定着装置毎に独立して行う。
【0075】
画像形成によって、いずれのサイズの記録紙の通紙枚数も予め定められた所定枚数に達していなければ(図7中のステップS106でNO)、ステップS102に戻って画像形成が完了するまで(図7中のステップS103)、以上の画像形成処理(ステップS102〜ステップS106)を繰り返す。
【0076】
ここで、所定枚数とは、そのサイズの記録紙によって画像形成を繰り返して続けることで、記録紙の端部が定着ローラ表面の同一箇所に接することになり、定着ローラ表面に傷がついたり、定着ローラ表面が削れたりといった現象が発生しやすくなる枚数、あるいは、そのような現象が発生しやすい枚数より若干少ない枚数として、予め定められた枚数である。
【0077】
画像形成によって、いずれかのサイズの記録紙の通紙枚数が予め定められた所定枚数に達していれば(図7中のステップS106でYES)、定着ローラ表面荒れ防止機能をオン状態するよう制御部101が制御部201に指示を与える(図7中のステップS107)。
【0078】
制御部101から指示を受けた制御部201は、定着ローラ表面荒れ防止機能をオンとする場合には、記録紙Pを吸着搬送部260にて吸引して吸着状態で搬送する際に、図5(a)〜(d)のように、あるいは、図6(a)〜(d)のように、搬送直交方向位置変更部280により記録紙Pの搬送直交方向位置を変更するよう制御する。このような記録紙Pの搬送直交方向位置の変更により、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが拡散されて、特定の位置に集中しないようにする。なお、この際の位置変更(揺動)の振幅は、記録紙端部により定着ローラ表面に生じる荒れを拡散して防止するためであり、数十枚〜数百枚程度の定着の間に数mm〜十数mm程度を動かすような周期で揺動を制御する。
【0079】
そして、以上のように定着ローラ表面荒れ防止機能をオンした後、制御部101は、ステップS102に戻って画像形成が完了するまで(図7中のステップS103)、以上の画像形成処理(ステップS102〜ステップS104)を繰り返す。
【0080】
操作表示部105あるいは図示されない外部PCなどから画像形成出力の終了の指示があると(図7中のステップS103でNO)、あるいは指示された画像データの画像形成出力が完了すると(図7中のステップS103でNO)、制御部101は画像処理部110や画像形成部130の各部を停止させるよう制御(図7中のステップS108)し、処理を終了する。
【0081】
以上のようにして、記録紙として同一サイズの画像形成が所定数に達した場合に定着ローラ表面荒れ防止機能を動作させることで、定着器の定着ローラ表面の荒れを効果的に防止することが可能になる。
【0082】
なお、給紙装置200から給紙された記録紙Pについて、画像形成部130のいずれかの位置に設けられた記録紙位置検知センサ(図示せず)の検知結果により、記録紙の位置や向きが検知される。そして、記録紙の位置や向きに応じて、制御部101の制御によって、感光体1上にトナー像が形成され、記録紙Pの搬送直交方向位置の違いに応じて記録紙の画像領域内に適切な状態で画像が転写される。したがって、定着ローラ表面荒れ防止機能がオンになって記録紙Pの位置が給紙搬送中の変更されたとしても、記録紙P上で画像がずれることはない。
【0083】
以下、図8を参照して、本実施形態の定着ローラ表面荒れ防止機能としての、搬送直交方向位置変更部280による記録紙Pの搬送直交方向位置変更の制御(図7中のステップS107)について説明する。
【0084】
制御部101から指示を受けた制御部201は、定着ローラ表面荒れ防止機能をオンとする場合には、駆動部281(図5参照)もしくは可変側部規制部材282(図6参照)を動作させる。これにより、駆動部281により駆動される給紙トレイ可動部231b、または、可動側部規制部材282が、上述した所定の振幅で、搬送直交方向に記録紙Pを揺動させる(図8中のステップS201)。
【0085】
そして、制御部201は、吸着搬送部260により給紙カセット231に収容されている記録紙Pの1枚目を吸引し、かつ、記録紙Pの2枚目以降を分離するよう、吸着搬送部260の吸気、側方送風部240からの側方風、前方送風部250からの前方送風、を制御する(図8中のステップS202)。
【0086】
そして、制御部201は、吸着ベルト263に吸引された最上位の記録紙Pを所定の搬送方向に搬送するよう制御する(図8中のステップS203)。
この搬送の際には、次に吸着搬送される給紙カセット231上の記録紙は、駆動部281(図5(b)〜(d)参照)もしくは可変側部規制部材282(図6(b)〜(d)参照)の搬送直交方向位置変更によって、次に搬送されるべき位置に向けて搬送直交方向の位置制御がなされている。
【0087】
このようにして、搬送直交方向位置変更(図8中のステップS201)を実行しつつ、吸引・分離(図8中のステップS202)と吸着搬送(図8中のステップS203)とを、給紙カセット231上の次の記録紙Pについても画像形成が完了するまで繰り返し実行する(図8中のステップS204,S205)。
【0088】
この実施形態の場合、吸着搬送部260での記録紙Pの吸引や分離の動作中、あるいは記録紙の吸着搬送中に、記録紙の搬送直交方向位置を変更すればよく、従来例のように位置変更を特定の短いタイミングで行う必要がないため、画像形成の生産性を低下させることない。
【0089】
このような記録紙Pの搬送直交方向位置の変更により、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが拡散されて特定の位置に集中しないようになり、傷や削れの発生が抑制されることになる。
【0090】
また、吸着搬送部260での吸引あるいは搬送の際の記録紙Pの搬送直交方向位置を変更すればよいため、定着ローラそのものを動かすものと比較して、装置を大型化することなく、定着部表面の荒れを効果的に防止することが可能になる。
【0091】
〔本実施形態の特徴部分のその他の構成(1)〕
なお、図6では、可変側部規制部材282を搬送直交方向位置変更のためのガイド手段として使用していたが、これに限定されるものではない。
【0092】
たとえば、ガイド手段として、可変側部規制部材282に加え、側方送風部240からの側方風を搬送直交方向位置変更に積極的に使用することが可能である。この場合、搬送直交方向位置変更をする側に向けて、反対方向より強い側方風を送るように、制御部201が、側方送風部240の送風ファン242を制御する。
【0093】
図9では、側方送風部240からの側方風の風量あるいは風速を制御している様子を模式的に、灰色の矢印の太さで示している。より太い灰色矢印が、強い側方風の様子を示している。これにより、ガイド手段として、可変側部規制部材282に加え、側方送風部240も連動して動作する。この結果、搬送直交方向位置変更が滑らかに安定して動作することになる。
【0094】
〔本実施形態の特徴部分のその他の構成(2)〕
以上の実施形態では、搬送直交方向位置変更部280として、吸着搬送部260で記録紙Pを吸引する際に搬送直交方向位置変更を行う場合を示していたが、これに限定されるものではない。
【0095】
たとえば、以上の実施形態の具体例に加え、または、以上の実施形態の具体例に代え、以下の手法が可能である。ここでは、図10に示すように、吸着ベルト263を搬送直交方向(図中のY方向)で複数本に分けて構成する。
【0096】
図10(a)の具体例では、3本の吸着ベルト263a〜263cを例示している。このような複数本の吸着ベルト263a〜263cを用いて記録紙Pを吸着搬送中に、搬送直交方向位置の違いに応じて搬送速度を変更する。この図10(b)では、制御部201の制御により、一端の吸着ベルト263aを通常の搬送速度よりも高速に制御し、中央の吸着ベルト263bを通常の搬送速度と等しく制御し、他端の吸着ベルト263cを通常の搬送速度よりも低速に制御する。
【0097】
これにより、記録紙Pは全体としては通常の搬送速度で搬送されつつも、高速側の側端部が進み、低速側の側端部が遅れる状態に、傾くことになる。これにより、記録紙Pの側端部が定着ローラ表面に接する部分が広がることになり、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが拡散されて特定の位置に集中しないようになり、傷や削れの発生が抑制されることになる。
【0098】
なお、吸着ベルト263a〜263cの3本の例を示したが、最低2本で実現することができる。また、図10(b)の状態だけでも、記録紙Pの側端部が定着ローラ表面に接する部分が広がることになるが、高速側と低速側とを交互に入れ替えたり、高速側と低速側の速度差を広げたり縮めたりといった制御を併用することで、記録紙Pの傾き具合が変化して、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが、より一層拡散されて特定の位置に集中しないようになる。
【0099】
また、図10(a)(b)では、吸着ベルト263a〜263cの速度差を利用していたが、これに加えて、図10(c)のように、吸着ベルト263Bを介した記録紙Pの吸引力に差をつけて搬送することも望ましい。
【0100】
ここでは、吸引力をを制御している様子を模式的に、灰色の矢印の太さで示している。より太い灰色矢印が、強い吸引力の様子を示している。この場合、低速側の吸着ベルト263cで吸引力が強く、ブレーキが掛かった状態になる。これにより、記録紙Pは全体としては通常の搬送速度で搬送されつつも、高速側の側端部が進み、低速側の側端部が遅れる状態に、確実に傾くことになる。従って、定着ローラ表面で記録紙端部による傷や削れなどの荒れが拡散されて特定の位置に集中しないようになり、傷や削れの発生が抑制されることになる。
【0101】
〔給紙装置、画像形成装置、画像形成システムのその他の構成(1)〕
以上の実施形態では、画像形成装置100に制御部101が設けられ、給紙装置200側に制御部201が設けられていたが、これに限定されるものではない。
【0102】
たとえば、画像形成装置100と給紙装置200のいずれか一方に存在する制御部が、画像形成装置100と給紙装置200の両方を制御してもよい。図11に示す例では、画像形成装置100側に制御部101’が存在し、画像形成装置100と給紙装置200の両方を制御する構成となっている。
【0103】
〔給紙装置、画像形成装置、画像形成システムのその他の構成(2)〕
また、図12に示すように、ネットワークや制御信号線などを介して画像形成装置100と給紙装置200との少なくとも一方に接続された端末装置400に制御部401が存在し、この制御部401が上述した実施形態の制御を実行するような構成であってもよい。この際には、制御部101や制御部201が存在していてもよいし、存在していなくともよい。いずれにしても、少なくとも、上述した実施形態の制御を制御部401が司ることで実現される。
【0104】
〔給紙装置、画像形成装置、画像形成システムのその他の構成(3)〕
以上の実施形態では、吸着搬送部では空気の吸い込みによる吸引力により記録紙Pを吸着するものとして、説明してきた。しかし、これに限定されず、静電気や磁気など空気の吸い込み以外の各種の吸引力による吸着搬送部であっても、以上の実施形態を適用することで良好な結果を得ることができる。
【0105】
〔給紙装置、画像形成装置、画像形成システムのその他の構成(4)〕
なお、本実施形態の給紙装置としては、画像形成装置100の外部に接続された大容量の給紙装置200であっても、画像形成装置100の内部に設けられた給紙装置200’であってもよい。
【0106】
〔給紙装置、画像形成装置、画像形成システムのその他の構成(5)〕
以上の実施形態において、給紙装置200から画像形成装置100に記録紙が吸着搬送され、画像形成装置100内の定着ローラの表面の荒れや削れを抑止するものとして説明をおこなってきたが、これに限定されるものではない。
【0107】
すなわち、定着ローラ以外、たとえば、感光体ドラムや感光体ベルトなどの表面に対して記録紙Pの端部が荒れや削れを発生させる場合にも抑止効果を得ることができる。同様にして、画像形成装置以外の各種装置に対して記録紙やシートの吸着搬送を行う給紙装置や給紙システムとして構成し、各種装置内の回転体などでの荒れや削れを抑止することも可能である。
【符号の説明】
【0108】
100 画像形成装置
101 制御部
102 ROM
103 RAM
105 操作表示部
110 画像処理部
130 画像形成部
200 給紙装置
201 制御部
240 側方送風部
250 前方送風部
260 吸着搬送部
280 搬送直交方向位置変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を収容する収容部と、
前記収容部に収容された記録紙を吸引し吸着状態で搬送する吸着搬送部と、
前記吸着搬送部における前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部と、
を備え、
前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、
ことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記収容部の搬送直交方向位置を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、
ことを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記搬送直交方向位置変更部は、前記収容部から前記吸着搬送部に向けて吸引される経路において、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するように導くガイド手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
前記搬送直交方向位置変更部は、前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に、前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記吸着搬送部での搬送速度を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、
ことを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項5】
請求項1−4のいずれか一項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置から給紙された記録紙に画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成部は、前記記録紙の前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記記録紙の画像領域に画像を形成する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録紙上に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置に前記記録紙を搬送する給紙装置と、
各部を制御する制御部と、
を有する画像形成システムであって、
前記給紙装置は、
記録紙を収容する収容部と、
前記収容部に収容された記録紙を吸引し吸着状態で搬送する吸着搬送部と、
前記吸着搬送部における前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する搬送直交方向位置変更部と、を備え、
前記制御部は、
前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するよう前記搬送直交方向位置変更部を制御する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記搬送直交方向位置変更部は、
前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に前記収容部の搬送直交方向位置を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、
ことを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記搬送直交方向位置変更部は、
前記収容部から前記吸着搬送部に向けて吸引される経路において、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更するように導くガイド手段を備える、
ことを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記搬送直交方向位置変更部は、
前記吸着搬送部での前記吸引中あるいは前記搬送中に、前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記吸着搬送部での搬送速度を変更することにより、前記記録紙の搬送直交方向位置を変更する、
ことを特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記画像形成部は、
前記記録紙の前記搬送直交方向位置の違いに応じて前記記録紙の画像領域に画像を形成する、
ことを特徴とする請求項7−10のいずれか一項に記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−133808(P2011−133808A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295290(P2009−295290)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】