説明

給紙装置および画像形成装置

【課題】検知に要する時間を短縮できると共に、ロール紙の径変化や重さ変化による搬送負荷変化が生じた場合でも誤検知を生じることなく終端状態の判別を可能にする構成を備えた給紙装置を提供する。
【解決手段】トルクリミッタ54の駆動側および従動側にそれぞれ伝達される、戻し駆動可能な駆動モータDM側からの回転およびロール紙牽引によるロール紙30側からの回転に基づく差動作用により通常搬送時にはロール紙にバックテンションを付与する構成54を備えた給紙装置において、前記駆動モータDMの回転量および電流値の変化を入力されて該駆動モータDMの動作態位を設定する制御部100を備え、制御部100は、回転量の低下状態に応じてロール紙終端の接着状態を判別し、接着状態に応じたロール紙の搬送条件を設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、ロール紙を繰り出し制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置においては、たとえば、電子写真方式を用いる画像形成装置の場合、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像が現像装置から供給される現像剤によって可視像処理される。可視像処理された画像は、記録紙などに転写され、定着されることで複写出力とされる。
【0003】
画像形成装置の一つである、インクジェットプリンタでは、A0版やA1版などの大サイズの記録紙への印字処理を行えるものがある。
このような印字処理に用いられる記録紙には、給紙カセットに積載されている状態ではなく、所望する長さを繰り出せる利便性からロール紙を用いることが多い。
【0004】
ロール紙を用いた給紙装置の構成としては、ロール紙を印字部に向けて繰り出し、印字部にて印字処理が行われた後に、印字画像を担持した部分を裁断し、未印字部部分のロール紙をロール紙側に巻き戻すようにした構成が知られている
【0005】
ロール紙を巻き戻すのは、繰り出し方向における未印字端部を印字部に向け給紙する際の繰り出し開始位置に位置決めし、印字部に対する繰り出し量を割り出す基準とすることが理由の一つである。
【0006】
一方、ロール紙には、その繰り出し後端、つまり終端が紙管などの巻芯軸に接着されている場合や、これとは逆に非接着とされている場合がある。また、接着されている場合においても、剥がれない状態で接着されている場合と印字部前に配置されている挟持搬送部材であるレジストローラによる牽引搬送時に生じるテンションによって剥がれる程度の強度を持たせて接着されている場合とがある。
【0007】
印字部に向けて繰り出されるロール紙は、その繰り出し方向後端が巻芯軸に接着されていると、印字が後端までの領域を対象としてできなくなることや搬送不良を生じる虞があることから、後端の状態、つまり、接着されているかあるいは、されていないかを判断することが必要となる。
【0008】
従来、ロール紙の後端検知のための構成としては、レジストローラの駆動モータにおいて終端の状態により負荷が変化するのを検知するモータ異常検知手段を備え、モータへの設定駆動量と実際の回転量をエンコーダから割り出した結果において差がある場合にレジストローラの駆動速度を変更し、この状態で終端が接着状態にあるときの搬送不能状態を判別して終端の接着状態を割り出すようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されている構成では、レジストローラでの搬送負荷変動に基づき、ロール紙終端の接着状態を割り出すため、ロール紙が巻芯軸からレジストローラに向け搬送されるまでの搬送時間が必要となる。従って、ロール終端の接着状態判別までの検知時間が長大化する虞がある。
【0010】
一方、ロール紙の終端が接着されている場合を検知したときには、レジストローラを停止させるに止まり、搬送系路中にロール紙を残したままにしている。このため、例えば、複数のロール紙からの給紙が行える構成を対象とした場合には、搬送路中に残されたロール紙によって新たに繰り出されるロール紙の搬送が阻害されてしまう虞がある。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の給紙装置における問題、特に、ロール紙の終端状態を検知する構成における問題に鑑み、検知に要する時間を短縮できると共に、ロール紙の径変化や重さ変化による搬送負荷変化が生じた場合でも誤検知を生じることなく終端状態の判別を可能にする構成を備えた給紙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)少なくとも一つ設けられているロール紙の繰り出し方向および戻し方向にそれぞれ回転可能なロール紙の挟持搬送用ローラと、
該挟持搬送用ローラの繰り出し方向に順じた方向および前記ロール紙をロール紙側に戻す方向に回転可能であり、戻す際の駆動に用いられる駆動モータと、
該駆動モータの出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力をロール紙の巻芯軸に設けられている従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、前記駆動モータの戻し方向への回転伝達が可能な一方向クラッチにより回転方向を制御されるクラッチ側ギヤと、駆動側および従動側の回転部を備えて所定トルク以上で従動側を空転させることが可能な滑り回転手段の従動側に設けられた滑り回転手段側ギヤと、前記クラッチ側ギヤを支持するとともに前記滑り回転手段の駆動側に設けられた仲介回転軸と、を備え、
前記回転力伝達機構に伝達される前記ロール紙側からの回転および前記駆動モータ側からの回転の状態に応じて前記一方向クラッチおよび滑り回転手段での回転伝達を規定する給紙装置において、
前記駆動モータの回転数変化を検知可能な回転検知手段および前記駆動モータの電流値変化を検知可能な電流値検知手段が入力側に接続され、該駆動モータおよび前記挟持搬送ローラの駆動部が出力側に接続されている制御部を備え、
前記制御部は、前記回転検知手段からの情報により、前記駆動モータの回転量が所定の回転量未満に変化した時をロール紙からの繰り出しが終了したと判断し、前記電流値検知手段からの情報により前記駆動モータへの供給電流量が所定値以上である場合に前記ロール紙の終端が接着されていると判断することを特徴とする給紙装置。
【0013】
(2)前記制御部は、前記ロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着されていると判断した場合には、前記ロール紙の繰り出しを停止し、接着状態にないと判断した場合には前記ロール紙の繰り出しを継続させることを特徴とする(1)記載の給紙装置。
【0014】
(3)前記制御部は、前記ロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着状態にないと判断した場合に、前記ロール紙の繰り出し量を補正することを特徴とする(1)または(2)記載の給紙装置。
【0015】
(4)前記制御部は、前記ロール紙が複数個装備されている場合に、検知対象のロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着されていると判断した場合に、検知対象となったロール紙を巻き戻し、接着状態にないと判断した場合には繰り出した後、排出され、繰り出し過程でのロール紙に対する処理を行わないようにすることを特徴とする(1)乃至(3)のうちの一つに記載の給紙装置。
【0016】
(5)前記制御部は、前記回転検知手段において前記駆動モータの回転量が所定の回転量未満に達した時点から所定時間経過後の回転量の検知を再度行い、その時点での電流値検知手段からの情報と合わせてロール紙の繰り出し状態を設定することを特徴とする(1)記載の給紙装置。
【0017】
(6)(1)乃至(5)のうちの一つに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロール紙の戻し動作に用いられる駆動モータを対象としてロール紙の終端検知を行えることにより検知結果の割り出しが迅速に行える。しかも、挟持搬送ローラではなく駆動モータを検知対象として用いることにより挟持搬送時に生じるロール紙の径変化や重さなどによる搬送負荷変動の影響を受けることが少ないので検知誤差を低減することができる。
【0019】
また、検知の際に駆動モータの電流値変化を用いることで終端での接着状態も同時に検出することができ、この結果に応じてロール紙の繰り出し状態を設定できるので、接着されていない場合にはロール終端までの画像記録を可能にし、接着されている場合、特に複数のロール紙を用いる場合には、迅速に戻せるようにすることで新たなロール紙の繰り出しを阻害しないようにできる。
【0020】
さらに、一旦、駆動モータの回転量変化を検知した後、再度その回転量変化を検知できるようにしているので、当初は接着されていた後端が剥がれたような場合をも対象として検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による給紙装置を用いる画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置における給紙経路を説明するための模式図である。
【図3】本発明による給紙装置に用いられる回転力伝達機構の構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した回転力伝達機構の一態様を説明するための図である。
【図5】本発明による給紙装置に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】本発明による給紙装置における通常搬送時の状態を説明するための模式図である。
【図7】給紙装置におけるロール紙終端が非接着時での搬送状態を説明するための模式図である。
【図8】給紙装置におけるロール紙終端が接着時での搬送状態を説明するための模式図である。
【図9】図5に示した制御部での特徴を説明するための特性図である。
【図10】図5に示した制御部の作用を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による給紙装置を備えた画像形成装置の模式図であり、同図に示されている画像形成装置1は、インクなどの液滴を吐出することで印字を行うインクジェット記録装置を対象としているが、本発明では、これに限ることなく、電子写真方式あるいは印刷機なども対象とすることができる。
インクジェット記録装置1の本体内部には、画像形成部2、用紙吸引搬送部3、ロール紙収納部4などが配置されている。
【0023】
画像形成部2は、図示しない両側板にガイドロッド13およびガイドレール14が掛け渡され、これらのガイドロッド13およびガイドレール14にキャリッジ15が矢示A方向に摺動可能に保持されている。
キャリッジ15は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドには図示しないが、各記録ヘッドにインクを供給するサブタンクが一体的に備えられている。
【0024】
キャリッジ15を移動走査する主走査機構は、主走査方向の一方側に配置される駆動モータ21と、駆動モータ21によって回転駆動される駆動プーリ22と、主走査方向他方側に配置された従動プーリ23と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に掛け回されたベルト部材24とを備えている。なお、従動プーリ23は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ22に対して離れる方向)にテンションが付与されている。
【0025】
ベルト部材24は、キャリッジ15の背面側に設けたベルト固定部に一部分が固定保持されていることで、主走査方向(矢示A方向)にキャリッジ15を牽引する。また、キャリッジ15の主走査方向に沿ってキャリッジの主走査位置を検知するためのエンコーダシート(図示されず)が配置され、キャリッジに設けたエンコーダセンサ(図示せず)によってエンコーダシートが読取られる。
【0026】
このキャリッジ15における主走査領域のうち、記録領域では、ロール紙30が用紙吸引搬送部3によってキャリッジ15の主走査方向と直交する方向(副走査方向:矢示B方向)に間欠的に搬送される。
【0027】
また、主走査領域のうち一方の端部側領域には、記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構18が配置されている。さらに、主走査方向のキャリッジ移動領域外または、上記主走査領域のうち他方の端部側領域には、記録ヘッドのサブタンクに供給する各色のインクを収容したメインカートリッジ19が記録装置本体1に対して着脱自在に装着される。
【0028】
図中、ロール紙収容部4は給紙手段であり、図2に示すように、ロール紙(用紙)30がセットされているが、幅方向(矢示A方向)のサイズが異なるロール紙がセット可能である。ロール紙30は、その紙軸に両側からフランジ31、およびスプール軸32を装着し、図示しない受け部に載置する。
【0029】
ロール紙30の駆動部には、後述する回転力伝達機構5が設けられており、その機構5に装備されているトルクリミッタ54を用いてロール紙30にバックテンションを付与しながらロール紙30を給送できるようになっている。
【0030】
図1に示したインクジェット記録装置1では、ロール紙収容部4から搬送されたロール紙30は、記録装置本体1の後方から前方に向けて、搬送手段(ローラ対33、ロール紙の挟持搬送部材として用いられるレジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35など)により記録領域へ搬送される。
レジストローラ34および加圧ローラ35は、ロール紙の繰り出し方向および戻し方向にそれぞれ回転できる構成とされている。
ロール収容部4には、1個のロール紙30に限らず、挟持搬送ローラであるレジストローラ34,加圧ローラ35に至る搬送経路を共通に用いる複数のロール紙30,30’およびこれに付設されるローラ対33,33’(図中、二点鎖線で示す)を準備することも可能である。
【0031】
そして、キャリッジ15を主走査方向に移動し、レジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35によってロール紙(用紙)30を間欠的に送りながら、記録ヘッドを画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、ロール紙30上に所要の画像が形成される。さらに、画像形成後の用紙は、所定の長さにカットされ、装置本体1の正面側に配置された図示しない排紙トレイへ排出される。
【0032】
このとき、ローラ対33はレジストローラ34およびレジスト加圧ローラ35まで搬送を行ったあとは、ニップを開放する構成となっており、印字間欠搬送中は用紙搬送を行っていない。
【0033】
図3は、本発明による給紙装置における駆動部に用いられる回転力伝達機構を示す斜視図である。
本実施例において、回転力伝達機構5は、駆動部には、レジストローラ34および加圧ローラ35によるロール紙の繰り出し方向に順じた正転および繰り出し方向と逆方向の戻し方向への逆転が可能な駆動モータDMが設けられている。駆動モータDMは、上述した回転方向のうちで、ロール紙を戻す際には逆転駆動されるようになっている。
【0034】
さらに、回転力駆動機構5は、駆動モータDMの出力軸に設けられている駆動ギヤ42とロール紙30の巻芯軸、いわゆるスプール軸32(巻芯軸に装着されている)に設けられている従動ギヤ32Aとの間で駆動ギヤ42の駆動力を従動ギヤ32Aに伝達するようになっている。
【0035】
そして、回転力伝達機構5には、駆動ギヤ42に噛み合うアイドルギヤ50および同軸上に支持されている伝達ギヤ51と、駆動モータDMの戻し方向、つまり、逆転を伝達する方向に被伝達側となる仲介回転軸52を回転させることが可能な一方向クラッチ53と、一方向クラッチの伝達側に位置するクラッチ側ギヤ53Aと、トルクリミッタ54(駆動側と従動側との回転部を有し両者間をコイルバネなどの弾性体による巻締め時に摩擦結合が可能な構成を備えた滑り回転手段として用いられる)における従動側に位置する滑り回転手段側ギヤ54Aと、 トルクリミッタ54における駆動側に位置する仲介回転軸52と、クラッチ側ギヤ53Aと従動ギヤ32Aとの間に配置されて伝達関係を設定されているアイドルギヤ55,56とを備えている。
【0036】
伝達ギヤ51を支持する回転軸51Aおよび仲介回転軸52には、駆動モータDMの回転数検知が可能な回転量センサS1およびロール紙の残量を繰り出し履歴により検知可能な残量センサS2が設けられている。
【0037】
図4は、ロール紙30の通常搬送時の態様を示す図であり、この場合には、駆動モータDMが仲介回転軸52の回転数よりも高回転数、つまり高速で回転する状態とされている。なお、図4において一部に示されている一点鎖線はギヤの回転方向を示し、矢印の長さは回転速度(矢印が長い方が高速)を回転方向に関係づけて示してある。
【0038】
図4において、レジストローラ34および加圧ローラ35により挟持搬送によりロール紙30が繰り出されると、従動ギヤ32Aを介してクラッチ側ギヤ53Aに回転が伝達される。クラッチ側ギヤ53Aの回転方向は一方向クラッチ53の回転伝達状態であるが、駆動モータDM側からクラッチギヤ53Aを介した仲介回転軸52の回転よりも速い回転がトルクリミッタ54の従動側に位置する滑り回転手段側ギヤ54Aに伝達される。
【0039】
これにより、トルクリミッタ54では、駆動側に位置する仲介回転軸52が従動側と摩擦係合して滑り回転手段側ギヤ54Aを回転させようとするが、従動側の滑り回転手段側ギヤ54Aの回転速度が仲介回転軸52よりも速く、かつ同じ方向に回転していることにより、摩擦係合に用いられるコイルバネに巻締め作用が得られない、滑りが生じる状態となることで仲介回転軸52が空転し、クラッチ側ギヤ53Aは従動ギヤ32Aの回転伝達を受けて回転する状態となる。
【0040】
このような状態においてロール紙30には、従動ギヤ32Aに噛み合うクラッチギヤ53Aおよび仲介回転軸52を介した滑り回転手段側ギヤ54Aの回転負荷が従動ギヤ32Aに作用することで、レジストローラ34による牽引力による弛みのない状態となるバックテンションが付与されることになる。
【0041】
以上のように、通常搬送時には、トルクリミッタ54に対する駆動モータDM側からの回転とロール紙側からの回転とを用いてトルクリミッタ54内での駆動側と従動側との間での差動条件により、ロール紙には駆動モータDM側の回転部材で生じる回転抵抗を利用してロール紙の牽引に対するバックテンションを与えるようになっている。
【0042】
以上のような構成を対象として本発明の特徴を説明する。
本発明の特徴は、駆動モータの回転量変化および駆動モータへの供給電流値の変化を検知してロール紙後端の接着状態を検知すると共に、接着状態に応じてロール紙の繰り出しあるいは戻し設定を行うようにしたことにある。
【0043】
図5は、この特徴を達成するために用いられる制御部の構成を示すブロック図である。
同図において制御部100には、駆動モータDMの回転量センサS1、残量検知センサS2および駆動モータDMに対する供給電流値を検知する電流値センサS3が入力側に接続され、出力側には駆動モータDMの駆動部(便宜上、駆動モータDMと表示する)が接続されている。
【0044】
制御部100では、通常搬送時での回転量を基準として回転量検知を行うと共に、その回転量が変化した場合の電流値を検知することにより、ロール紙の終端検知を行うと共に終端の接着状態の判別を行い、その結果に応じて繰り出しを継続する場合と停止する場合および戻す場合とを選択するようになっている。
【0045】
以下、制御部で判断されるロール紙終端の接着状態に関して、接着状態と搬送状態との関係を説明する。
図6は、通常搬送時の搬送状態を示す図であり、同図においては、図4において説明した作用により、レジストローラ34および加圧ローラ35による挟持搬送時に生じる牽引力とトルクリミッタ54での差動作用によるバックテンションの付与が行われてロール紙30が繰り出される。
【0046】
一方、図7は、ロール紙の終端が巻芯軸に接着されていないときの搬送状態を示す図であり、同図においてロール紙の終端が巻芯軸から離れると、繰り出し時に作用していた牽引力がなくなることでトルクリミッタ54での差動作用がなくなり、結果として、ロール紙30の巻芯軸が空転することで駆動モータDM側での回転量が変化し、さらにはこの変化に伴い駆動モータDM側での印加電流値、つまり一定回転数を維持するために印加されていた電流値が変化する。
【0047】
図8は、ロール紙終端が巻芯軸に接着されている時の搬送状態を示す図であり、同図においてロール紙終端がレジストローラ34および加圧ローラ35により牽引されると、終端とレジストローラ34との間で搬送が停止する。この状態においてレジストローラ34,加圧ローラ35での挟持は継続されているので、巻芯軸側からの回転と駆動モータDM側との間に速度差が生じ、トルクリミッタ54での差動作用は継続される。従って、図4に示した状態と同じとなり、駆動モータDMでの回転量変化はあるものの、電流値の変化は見られないことになる。
【0048】
図9は、上述した接着状態による駆動モータDMの回転量および電流値の変化を示す図であり、同図(A)は、図8に示した非接着状態の時を示し、同図(B)は、図9に示した接着状態の時を示している。
図においては、ロール紙の回転数は、巻径が小さくなるに従って上昇する状態が示されている。
(A)に示すように、ロール紙終端が非接着状態では、終端が巻芯軸から離れた際の慣性回転により徐々に回転量が少なくなると共に、終端が離れた時点で駆動モータDMへの電流値も回転量低下に合わせて低くなる。
【0049】
一方、(B)に示すように、ロール紙終端が接着状態にあるときには、終端がレジストローラ34および加圧ローラ35により巻芯軸との間で牽引されて引っ張られた状態となるのに合わせてロール紙の回転数低下が急峻となる一方、上述したように駆動モータDMはトルクリミッタ54からの差動作用による負荷を継続して受けることで電流値の変化がない。なお、牽引力によっては、牽引力が通常搬送時よりも強くなることも有り、この場合には、電流値が高くなるので、この現象を接着状態にあると判断する根拠とすることもできる。
【0050】
制御部100では、上述した搬送状態の変化に応じて次の設定が選択される。
(一)終端が接着されていない場合には、一般に知られているカット紙給送と同じように、終端を印字部に向けて搬送する。
(二)(一)の設定を実行するに際して、駆動モータの回転量が変化した時点から後に実行される挟持搬送ローラであるレジストローラ34および加圧ローラ35によるロール紙の搬送量を補正する。
(三)終端が接着されている場合には、ロール紙の搬送を停止するとともに、ロール紙が複数個準備されている場合には、停止状態にあるロール紙を巻き戻す。
(四)接着状態であることを判断した後、所定時間の間、ロール紙の牽引繰り出しを継続し、継続した期間内で再度駆動モータでの回転量変化および電流値変化を監視し、回転量変化および電流値変化がある場合には、接着状態にあった終端が巻芯軸から剥がれたと判断して上記(二)の設定を実行する。この場合の回転量変化と電流値変化の状態は、図9(C)に示されている。なお、図9(C)では回転量変化のみが示されている。図9(C)において終端が巻芯軸から剥がれた場合の回転量の変化を判断する設定値(N1)は、終端検知の際に停止した状態から僅かに回動することを考慮して繰り出し開始時よりも低い値とされている。
【0051】
本実施例は、以上のような構成であるから、制御部の作用を説明すると図10に示すフローチャートの通りである。
駆動モータDMの回転量を回転量センサS1からの情報により判別し、通常搬送時での回転量未満である場合にはロール紙の終端であることを判断する(ST1,2)。
このときの電流値変化を判別し(ST3)、電流値が通常搬送時の電流値未満出る場合には接着状態にないと判断し、電流値の変化がない場合には接着状態であると判断する(ST4,5)。
ステップST4において非接着状態であること判断すると、挟持搬送ローラであるレジストローラ34および加圧ローラ35での搬送量を補正したうえで、搬送動作を継続する(ST6)。
この場合にいう搬送量の補正は、終端が巻芯軸から離れた際、用紙のバックテンションが無くなることにより、レジストローラ34から繰り出される搬送量が変化するのを防止するためのものであり、レジストローラ34からの繰り出し量が正規搬送量と異なるのを防止できるようになっている。しかも、非接着状態では、終端まで印字に供することができるので、ロール紙の使用効率が低下するのを防止することにもなる。
【0052】
一方、ステップST5において終端が巻芯軸に接着されている判断した場合には、図9(C)に示したように、監視時間を設定し、監視時間内での回転量の変化を監視する。この場合、回転量がステップST1に用いた閾値に近い状態まで上昇復帰した場合には、接着されていた終端が巻芯軸から剥がれたと判断できるので、ステップ6の処理に移行する。
ステップST9において回転量が復帰しない場合には、終端が巻芯軸に接着されたままであると判断し、ロール紙を巻き戻すように駆動モータDMを逆転駆動する。
【0053】
ロール紙の巻き戻しに合わせて、図2に示したように、複数のロール紙が準備されている場合を対象として、別ロール紙があるかどうかを判別し、別ロール紙がある場合には、別ロール紙の繰り出しを開始する(ST11,12)。
このような処理においては、別ロール紙が準備されている場合にそのロール紙を繰り出す際に、終端が接着されているロール紙が搬送経路に残らないようにして別ロール紙の繰り出しを阻害しないようにできる。
【0054】
以上のような実施例においては、ロール紙の搬送挟持に用いられるレジストローラの駆動モータではなく、ロール紙の繰り出し部に設けられてロール紙を戻す方向に回転駆動する駆動モータを対象として終端の接着状態を割り出せるようになっている。このため、レジストローラ側においてロール紙の重さや外径変化によりレジストローラの搬送負荷に変化が生じた場合を接着状態の判別に用いるという誤判断を生じることがない。
【0055】
しかも、終端の非接着状態を判断した場合にロール紙の繰り出しを継続させることでロール紙の使用効率を低下させないようにできる。
また、終端の接着状態を判断した場合には、終端の接着状態によって強固に接着されている場合、あるいは牽引力によって剥がれるような製品仕様の場合の両方を判断でき、剥がれるような製品仕様である場合には、非接着状態の時と同様に、ロール紙の使用効率を低下させないようにできる。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェット記録装置
5 回転力伝達機構
30 ロール紙
32 スプール軸
32A 従動ギヤ
34 レジストローラ
35 加圧ローラ
42 駆動ギヤ
52 仲介回転軸
53 一方向クラッチ
53A クラッチ側ギヤ
54 トルクリミッタ
54A 滑り回転手段側ギヤ
100 制御部
S1 回転量センサ
S2 残量センサ
S3 電流値センサ
T 監視時間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2009−269713号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ設けられているロール紙の繰り出し方向および戻し方向にそれぞれ回転可能な挟持搬送用ローラと、
該挟持搬送用ローラの繰り出し方向に順じた方向および前記ロール紙をロール紙側に戻す方向に回転可能であり、戻す際の駆動に用いられる駆動モータと、
該駆動モータの出力軸に設けられた駆動ギヤの駆動力を、ロール紙の巻芯軸に装着されている回転支持部材上の従動ギヤに伝達する回転力伝達機構として、前記駆動モータの戻し方向への回転伝達が可能な一方向クラッチにより回転方向を制御されるクラッチ側ギヤと、駆動側および従動側の回転部を備えて所定トルク以上で従動側を空転させることが可能な滑り回転手段の従動側に設けられた滑り回転手段側ギヤと、前記クラッチ側ギヤを支持するとともに前記滑り回転手段の駆動側に設けられた仲介回転軸とを備え、
前記回転力伝達機構に伝達される前記ロール紙側からの回転および前記駆動モータ側からの回転の状態に応じて前記一方向クラッチおよび滑り回転手段での回転伝達を規定する給紙装置において、
前記駆動モータの回転数変化を検知可能な回転検知手段および前記駆動モータの電流値の変化を検知可能な電流値検知手段が入力側に接続され、該駆動モータおよび前記挟持搬送ローラの駆動部が出力側に接続されている制御部を備え、
前記制御部は、前記回転検知手段からの情報により、前記駆動モータの回転量が所定の回転量未満に変化した時をロール紙からの繰り出しが終了したと判断し、前記電流値検知手段からの情報により前記駆動モータへの供給電流量が所定値以上である場合に前記ロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着されていると判断することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着されていると判断した場合には、前記ロール紙の繰り出しを停止し、接着状態にないと判断した場合には前記ロール紙の繰り出しを継続させることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着状態にないと判断した場合に、前記ロール紙の繰り出し量を補正することを特徴とする請求項1または2記載の給紙装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロール紙が複数個装備されている場合に、検知対象のロール紙の終端がロール紙の巻芯軸に接着されていると判断した場合に、検知対象となったロール紙を巻き戻し、接着状態にないと判断した場合には繰り出した後、排出され、繰り出し過程でのロール紙に対する処理を行わないようにすることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の給紙装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転検知手段において前記駆動モータの回転量が所定の回転量未満に達した時点から所定時間経過後の回転量の検知を再度行い、その時点での電流値検知手段からの情報と合わせてロール紙の繰り出し状態を設定することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの一つに記載の給紙装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193032(P2012−193032A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59591(P2011−59591)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】