説明

給送装置、記録装置および液体噴射装置

【課題】 給送ローラと搬送ローラ対との間の被記録媒体送り経路において、空間を有効に利用して被記録媒体を十分に撓ませることができる給送装置を提供すること。
【解決手段】 給送装置200は、給送ローラ231と分離手段232との接点234と搬送ローラ対240のニップ点243との間において、前記給送ローラ231と前記分離手段232との接点234における第1接線Qは、前記搬送ローラ対240のニップ点243における第2接線Rと交わらないように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された被記録媒体をピックアップし下流側に給送する給送ローラと、給送された被記録媒体を記録部へ搬送する搬送ローラ対とを備えた給送装置、該給送装置を備えた記録装置および液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。また、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
従来の給送装置は、特許文献1に示す如く、用紙が積層されるホッパーと、積層された用紙のうち最上位の用紙をピックアップし下流側へ給送する給送ローラと、給送された用紙を記録部へ搬送する搬送ローラ対とを備えている。具体的には、ホッパーは、上部を支点に揺動し給送ローラに対して接離移動するように設けられている。そして、ホッパーが給送ローラに接近したとき、給送ローラが回動して前記最上位の用紙をピックアップするように設けられている。このとき、複数の用紙がピックアップされた場合であっても、分離手段によって分離され、一枚の用紙のみが搬送ローラ対へ給送されるように設けられている。
【0004】
従来の給送装置の一例を図5(A)(B)に示す。図5(A)(B)は、従来の給送装置の即断面図である。このうち、図5(A)は給送ローラとリタードローラとの接点における接線、および搬送ローラ対のニップ点における接線を示す。一方、図5(B)は給送ローラと搬送ローラ対との間において給送される用紙の状態を示す。
【0005】
図5(A)(B)に示す如く、従来の給送装置500は、側視D型の給送ローラ501と、給送ローラ501と外接可能に設けられた分離手段としてのリタードローラ508と、下流側の記録部(図示せず)へ用紙P1を搬送する搬送ローラ対504とを備えている。搬送ローラ対504は、駆動力によって駆動する搬送用駆動ローラ505と、搬送用駆動ローラ505の回動に従動回転する搬送用従動ローラ506とを備えている。
また、給送ローラ501と搬送ローラ対504との間において、基体部側には、給送される用紙P1を下方から支持して搬送ローラ対504へ案内する案内部509が設けられている。一方、ホルダ部502側には、案内部509と対向する位置に経路天井部503が設けられている。
【0006】
そして、従来は図5(A)に示す如く、給送ローラ501とリタードローラ508との接点510および搬送ローラ対504のニップ点511の間において、給送ローラ501とリタードローラ508との接点510における第1接線Uが、搬送ローラ対504のニップ点511における第2接線Wと、交差するように設けられていた。
従って、図5(B)に示す如く、用紙P1が給送ローラ501から搬送ローラ対504へ給送される際、用紙P1は、給送ローラ501とリタードローラ508との接点510および搬送ローラ対504のニップ点511の間において、接点510とニップ点511とを結ぶ線Fを境界に前記交差する点側に膨らむように撓む。そして、所謂、スキュー取りの際、給送ローラ501とリタードローラ508との接点510および搬送ローラ対504のニップ点511の間において、用紙P1をさらに撓ませるので、鎖線で示すように用紙P1’は、前記交差する点側である案内部509に形成され、下方へあるいは上流側へ退避する退避部512の形状に沿って撓むように構成されていた。
【0007】
【特許文献1】特開2000−318881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、案内部509の退避部512に沿って撓むように構成されているので、スキュー取りの際に撓む量を確保するために、案内部509は、退避部512の退避の程度を大きく設ける必要がある。そして、退避部512の退避の程度を大きく設けると、基体部513の剛性が下がる虞が生じる。
また、案内部509の機能である用紙P1を搬送ローラ対504へ案内する機能を保ちつつ、退避の程度を大きくするのは限界がある。従って、用紙P1の撓み量を大きく取れないため、十分なスキュー取りを実行することができない虞が生じる。
またさらに、案内部509と対向する位置の経路天井部側の空間が所謂、デッドスペース507となっていた。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、給送ローラと搬送ローラ対との間の被記録媒体送り経路において、空間を有効に利用して被記録媒体を十分に撓ませることができる給送装置、該給送装置を備えた記録装置および液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、積層された被記録媒体をピックアップし下流側に給送する給送ローラと、給送された被記録媒体を記録部へ搬送する搬送ローラ対とを備えた給送装置であって、前記給送ローラは、重なって給送されようとする被記録媒体を分離する分離手段と外接可能に設けられ、前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記給送ローラと前記分離手段との接点における第1接線は、前記搬送ローラ対のニップ点における接線と交わらないように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記給送ローラと前記分離手段との接点における第1接線は、前記搬送ローラ対のニップ点における第2接線と交わらないように構成されている。例えば、所謂、スキュー取りを実行して、前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、被記録媒体を撓ませる際、被記録媒体面の上面(表)側および下面(裏)側に膨らませるように側視S字状に撓ませることが可能である。従って、本発明において、限られた空間を有効に利用して被記録媒体を十分に撓ませることができる。そして、従来技術において、一方向のみに撓ませる場合に必要であった撓み空間である退避部(512、図5参照)を大きく設ける必要がない。従って、給送装置の基体部の剛性が低下する虞がない。
【0012】
また、スキュー取りを実行しない場合であっても、給送される被記録媒体は、側視S字状に撓む。その結果、両方向に撓むので、被記録媒体が、一方向にカールするのを低減することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、被記録媒体が記録部へ搬送される前に、前記給送ローラと前記搬送ローラ対とが協働して、前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、被記録媒体を側視S字状に撓ませてスキュー取りを実行するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、被記録媒体が記録部へ搬送される前に、前記給送ローラと前記搬送ローラ対とが協働して、前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、被記録媒体を側視S字状に撓ませてスキュー取りを実行するように構成されている。従って、限られた空間で十分な撓み量を確保する必要があるスキュー取りを実行するように構成されている場合に非常に有効である。
【0015】
ここで、「スキュー取り」は、被記録媒体の先端部を搬送ローラ対に食い付かせた後に、搬送ローラ対を逆転して該先端部を吐き出すことによって被記録媒体を撓ませる、所謂、「食い付き吐き出し方式」、あるいは、被記録媒体の先端部を搬送ローラ対に突き当てることによって被記録媒体を撓ませる、所謂、「突き当て方式」のどちらの方式でもよい。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記記録部は、被記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録ヘッドと対向する位置に設けられ被記録媒体を案内するプラテンとを備え、前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記第2接線が、前記記録ヘッドおよび前記プラテンが設けられ対向する方向において、前記第1接線より前記記録ヘッド側に設けられ、前記搬送ローラ対の前記記録ヘッド側の第1搬送ローラの軸が、前記プラテン側の第2搬送ローラの軸より搬送方向下流側に配設されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記第2接線が、前記記録ヘッドおよび前記プラテンが設けられ対向する方向において、前記第1接線より前記記録ヘッド側に設けられ、前記搬送ローラ対の前記記録ヘッド側の第1搬送ローラの軸が、前記プラテン側の第2搬送ローラの軸より搬送方向下流側に配設されていることを特徴とする。従って、被記録媒体を側視S字状に撓ませる構成を保ちつつ、被記録媒体をプラテンに押し付ける力を増加させることができる。プラテン上において、被記録媒体の浮き上がり防止効果を強めたい場合に有効である。例えば、搬送ローラ対と記録部下流側の排出ローラ対とが協働して被記録媒体をU字状に反らせてプラテン上に押し付ける、所謂、「逆ぞり効果」を強めたい場合に有効である。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、給送装置の基体部に前記分離手段が設けられ、分離手段側の基体部には、被記録媒体を前記搬送ローラ対へ案内する第1案内部が設けられ、前記給送ローラ側の前記第1案内部と対向する位置には、前記搬送ローラ対の従動ローラを回動自在に保持すると共に、被記録媒体を前記搬送ローラ対へ案内する第2案内部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記第1案内部および前記第2案内部が設けられている。従って、被記録媒体が側視S字状に撓む際、前記第1案内部および前記第2案内部に規制されながら撓むことができる。即ち、被記録媒体は前記第1案内部および前記第2案内部と当接することができるので、前記第1案内部または前記第2案内部のいずれか一方のみと当接する場合において当接しない側に生じる無駄な空間、所謂、デッドスペース(507、図5参照)が殆ど生じない。
【0020】
本発明の第5の態様は、積層された被記録媒体をピックアップし記録部側へ給送する給送部と、該給送部側から送られた被記録媒体に対してインクを吐出して記録を実行する記録部と、を備えた記録装置であって、前記給送部は、上記第1から第4のいずれか一の態様の給送装置を備えていることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、記録装置は、上記第1から第4のいずれか一の態様の給送装置を備えているので、記録装置において、上記第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、積層された被液体噴射媒体をピックアップし下流側に給送する給送ローラと、給送された被液体噴射媒体を液体噴射部へ搬送する搬送ローラ対とを備えた給送部と、該給送部側から送られた被液体噴射媒体に対して液体を噴射する液体噴射部と、を備えた液体噴射装置であって、前記給送ローラは、重なって給送されようとする被液体噴射媒体を分離する分離手段と外接可能に設けられ、前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記給送ローラと前記分離手段との接点における第1接線は、前記搬送ローラ対のニップ点における第2接線と交わらないように構成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明に係る給送装置及び該給送装置を適用した液体噴射装置の一例である記録装置について説明する。最初に本願発明の液体噴射装置、そしてその一例である記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すのは、本発明に係るインクジェットプリンタの内部を示す全体斜視図である。また、図2に示すのは、図1から記録部を除いた全体斜視図である。
図1および図2に示す如く、インクジェットプリンタ100は、被液体噴射媒体の一例である被記録媒体P(以下単に用紙Pともいう)を給送する給送部110と、給送部110から給送された用紙Pに対して記録を実行する記録部120とを備えている。給送部110としての給送装置200は、用紙Pを積層する積層部としてのホッパー220と、ホッパー220から用紙Pをピックアップする側視D型の給送ローラ231と、給送ローラ231から送られた用紙Pを記録部120へ搬送する搬送ローラ対240とを備えている。
【0024】
ホッパー220は、インクジェットプリンタ100の背面上部を支点に、下部が給送ローラ231に接離可能の揺動するように構成されている。具体的には、図示しない付勢力によって、ホッパー220の下部が給送ローラ側へ常に付勢されている。一方、図示しない動力装置によって、給送ローラ231が設けられている支軸部133が回動するように設けられている。そして、支軸部133に設けられた第2カム部132が、支軸部133の回動に伴って回動し、ホッパー220の下部と当接しホッパー220を揺動させるように設けられている。
ここで、用紙Pは、ホッパー220のおいて主走査方向Xに一対設けられた側端規制部221、221によって主走査方向Xに規制されている。また、符号Yは、用紙Pが送られる副走査方向である。
【0025】
ホッパー220が揺動するタイミングについては、側視D型の給送ローラ231が図2において反時計方向に1回転する際、給送ローラ231におけるホッパー220と対向する位置がD型の弦部から弧部なるときに、ホッパー220の下部が給送ローラ側へ接近する。従って、ホッパー220に積層された最上位の用紙Pは、給送ローラ231によってピックアップされ下流側である搬送ローラ対側へ給送される。そして、給送ローラ231が所定量回動すると、ホッパー220は、第2カム部132によって給送ローラ231から離間する方向へ移動する。
【0026】
また、基体部210における給送ローラ231と対向する位置には、分離手段232の一例である回動するために一定の負荷を必要とするリタードローラ233が設けられている。そして、給送ローラ231と用紙Pとの摩擦係数をμ1、リタードローラ233と用紙Pとの摩擦係数をμ2、用紙Pと用紙Pとの摩擦係数をμ3とすると、
μ1 > μ3
μ2 > μ3
の関係が成り立つように設けられている。従って、給送ローラ231およびリタードローラ233の近傍の間口開口部245(図3参照)に複数の用紙が入り込む、所謂、雪崩込み現象が生じた場合であっても、給紙ローラの回動によって給送ローラ231と接する一枚の用紙Pのみが搬送ローラ対240へ給送され、その他の用紙は、リタードローラ233によって、搬送ローラ対側への移動が規制される。
【0027】
続いて、ホッパー220が給送ローラ231から離間した元の位置へ戻ると、支軸部133に設けられた第1カム部131が、カムフォロア134と当接する。カムフォロア134には、図示しない用紙戻しレバーが一体に設けられており、カムフォロア134の回動に伴って用紙戻しレバーも回動するように設けられている。用紙戻しレバーは、給送ローラ231によって用紙Pが給送される際に余分に給送されそうになった用紙をホッパー220へ押し戻すように設けられている。従って、リタードローラ233によって規制された用紙は、用紙戻しレバーによって、ホッパー220へ戻される。
【0028】
そして、搬送ローラ対240まで送られた用紙Pに対して、所謂、スキュー取りを実行する。
ここで、「スキュー取り」は、用紙Pの先端部を搬送ローラ対240に食い付かせた後に、搬送ローラ対240を逆転して該先端部を吐き出すことによって用紙Pを撓ませる、所謂、「食い付き吐き出し方式」、あるいは、用紙Pの先端部を搬送ローラ対240に突き当てることによって用紙Pを撓ませる、所謂、「突き当て方式」のどちらの方式でもよい。
【0029】
搬送ローラ対240は、動力装置からの動力によって駆動する搬送用駆動ローラ241と、搬送用駆動ローラ241に従って回動する搬送用従動ローラ242とを備えている。搬送用従動ローラ242は、ホルダ部244によって回動自在に保持されると共に、搬送用駆動ローラ側へ付勢されている。
搬送用駆動ローラ241の回動によって用紙Pが記録部120へ搬送されると共に、記録部120で用紙Pに対して記録が実行される。
【0030】
記録部120は、用紙Pにインクを吐出する記録ヘッド123と、用紙Pを下方から支持して記録ヘッド123と対向する位置に用紙Pを案内するプラテン124と、記録ヘッド123を備え主走査方向Xへ移動するキャリッジ121と、基体部210に取り付けられキャリッジ121を主走査方向Xへ案内するキャリッジガイド部122とを備えている。
用紙Pが搬送用駆動ローラ241の回動によって送られると共に、キャリッジ121が主走査方向Xへ走査して記録ヘッド123がインクを吐出することによって記録が実行される。
【0031】
尚、給送装置200の用紙Pの送り経路109において、用紙Pを下方から支持して搬送ローラ対240に案内する側には、主走査方向Xにおいて、給送ローラ231が設けられた1桁側に第1案内部112と、80桁側に第1案内部112より下方へ退避した退避案内部111とが設けられている。ここで、給送ローラ231は、主走査方向Xにおいて、送り経路109の全幅の中心に対して1桁側に偏倚している。従って、給送ローラ231の押さえつけ力が及ばないため用紙Pの80桁側に所謂、浮き上がりが発生すると、80桁側の送り経路109が1桁側の送り経路109より短くなる虞がある。退避案内部111は、短くなる分第1案内部112より退避することで80桁側の送り経路109を長くするように設けられている。従って、80桁側の送り経路109と1桁側の送り経路109との差を低減して、該差によるスキューが生じることを低減することができる。
また、給送ローラ231の支軸部133の80桁側は、キャリッジガイド部122の背面に設けられた図示しない軸受け部によって支持されている。
【0032】
図3(A)(B)に示すのは、本発明に係る給送装置の送り経路を示す側断面図である。このうち、図3(A)は給送ローラとリタードローラとの接点における接線、および搬送ローラ対のニップ点における接線を示す。一方、図3(B)は給送ローラと搬送ローラ対との間において給送される用紙の状態を示す。
図3(A)(B)に示す如く、給送装置200は、給送ローラ231がピックアップした用紙Pを搬送ローラ対240へ案内する送り経路109を備えている。主走査方向1桁側の給送ローラ近傍の送り経路109は、給送装置200の基体部210に設けられた第1案内部112、およびホルダ部側に設けられた第2案内部113によって構成されている。
【0033】
また、図3(A)に示す如く、給送ローラ231とリタードローラ233との接点234における第1接線Qは、搬送ローラ対240のニップ点243における第2接線Rと、接点234とニップ点243との間において交差しないように構成されている。さらに、第1接線Qは、接点234とニップ点243との間において第2接線Rより上方に位置するように構成されている。
【0034】
またさらに、給送ローラ231の上流側には、用紙Pが積層されるホッパー220が設けられており、用紙Pの先端部は、土手部211によって下方から支持されている。そして、ホッパー220の揺動と給送ローラ231の回動によって、給送ローラ231が用紙Pをピックアップすると、用紙Pは、送り経路109の入り口であり、第1案内部112および給送ローラ231によって構成される間口開口部245を介して接点234まで送られる。そして、前述したように、余分に間口開口部245に進入した用紙は、リタードローラ233によって分離され、図示しない用紙戻しレバーによって余分に進入した用紙をホッパー220まで戻すように構成されている。
【0035】
図3(B)に示す如く、用紙Pが給送ローラ231およびリタードローラ233によって給送される際、用紙Pは、給送ローラ231およびリタードローラ233によって挟持された状態となるので、接点234の近傍における用紙Pの姿勢は、第1接線Qと同じ姿勢となる。さらに、用紙Pが給送されると、用紙Pの先端部が、第2案内部113と当接する。そして、用紙Pの先端部は、第2案内部113に案内されて搬送ローラ対240のニップ点243まで到達する。用紙Pの先端部がニップ点243まで到達すると、用紙Pの先端部は、搬送用駆動ローラ241の時計方向の駆動によって搬送ローラ対240に挟持された状態となる。このとき、ニップ点243の近傍における用紙Pの姿勢は、第2接線Rと同じ姿勢となる。
【0036】
従って、用紙Pが接点234およびニップ点243の2カ所おいて挟持された状態では、接点234とニップ点243との間において、用紙Pは、側視S字型に撓んだ状態となる。このとき、所謂、「食い付き吐き出し方式」によるスキュー取りを実行する。具体的には、搬送ローラ対240が用紙Pを挟持した状態、即ち、食い付いた状態で、給送ローラ231および搬送用駆動ローラ241の駆動を停止させる。そして、給送ローラ231を停止させたままで、搬送用駆動ローラ241を反時計方向へ逆転駆動させる。従って、搬送ローラ対240は、用紙Pの先端部を上流側へ吐き出すことができる。このとき、用紙Pは、鎖線で示す符号P’の如くさらに大きくS字型に撓むと共に、第1案内部112および第2案内部113と当接する。従って、限られた空間内を有効に利用して用紙P’を撓ませることができる。即ち、デッドスペースが殆ど生じない。
【0037】
また、用紙P’の先端部は、ニップ点243の主走査方向Xである所謂、ニップラインに倣う。従って、スキューを除去することができる。その後、給送ローラ231を反時計方向へ正転駆動、および搬送用駆動ローラ241を反時計方向へ正転駆動させて、スキュー取りした用紙P’を下流側の記録部120へ搬送する。
【0038】
尚、スキュー取りの方法については、「食い付き吐き出し方式」を実行したが、停止している搬送ローラ対240に用紙Pの先端部を突き当てる、所謂、「突き当て方式」を実行させた場合であっても、「食い付き吐き出し方式」を実行した場合と同様に鎖線で示す用紙P’の如くS字型に撓ませることができる。
また、接点234とニップ点243との間において、第1接線Qを第2接線Rと交差させないようにするには、従来技術における給送装置の構成(図5(A)(B)参照)においてリタードローラ(508)の位置を下流側へ移動させるだけで可能である。従って、大きな変更を要せずに前述したように用紙をS字型に撓ませることができる。
【0039】
本実施形態の給送装置200は、積層された被記録媒体としての用紙Pをピックアップし下流側に給送する給送ローラ231と、給送された用紙Pを記録部120へ搬送する搬送ローラ対240とを備えた給送装置200であって、給送ローラ231は、重なって給送されようとする用紙Pを分離する分離手段232であるリタードローラ233と外接可能に設けられ、給送ローラ231と分離手段232であるリタードローラ233との接点234と搬送ローラ対240のニップ点243との間において、給送ローラ231と分離手段232であるリタードローラ233との接点234における第1接線Qは、搬送ローラ対240のニップ点243における第2接線Rと交わらないように構成されていることを特徴とする。
【0040】
また、本実施形態の給送装置200は、用紙Pが記録部120へ搬送される前に、給送ローラ231と搬送ローラ対240とが協働して、給送ローラ231と分離手段232であるリタードローラ233との接点234と、搬送ローラ対240のニップ点243との間において、用紙Pを側視S字状に撓ませてスキュー取りを実行するように構成されていることを特徴とする。
【0041】
さらに、本実施形態の給送装置200は、給送装置200の基体部210に分離手段232であるリタードローラ233が設けられ、分離手段側の基体部210には、用紙Pを搬送ローラ対240へ案内する第1案内部112が設けられ、給送ローラ側の第1案内部112と対向する位置には、搬送ローラ対240の従動ローラである搬送用従動ローラ242を回動自在に保持すると共に、用紙Pを搬送ローラ対240へ案内する第2案内部113が設けられていることを特徴とする。
【0042】
また、本実施形態の記録装置100は、積層された用紙Pをピックアップし記録部側へ給送する給送部110と、給送部側から送られた用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する記録部120と、を備えた記録装置100であって、給送部110は、上記給送装置200を備えていることを特徴とする。
【0043】
[他の実施形態]
図4(A)(B)に示すのは、本発明に係る給送装置の送り経路を示す側断面図である。このうち、図4(A)は給送ローラとリタードローラとの接点における接線、および搬送ローラ対のニップ点における接線を示す。一方、図4(B)は給送ローラと搬送ローラ対との間において給送される用紙の状態を示す。
尚、第1接線S、第2接線T、搬送ローラ対440、搬送用駆動ローラ441、搬送用従動ローラ442およびニップ点443以外については、前述した実施形態と略同様であるので、符号は同じものを使用すると共に、その説明は省略する。
【0044】
図4(A)に示す如く、給送ローラ231とリタードローラ233との接点234における第1接線Sは、搬送ローラ対440のニップ点443における第2接線Tと、接点234とニップ点443との間において交差しないように構成されている。さらに、第1接線Sは、接点234とニップ点443との間において第2接線Tより下方に位置するように構成されている。また、搬送ローラ対440の搬送用従動ローラ442の軸は、搬送用駆動ローラ441の軸より搬送方向下流側へ位置するように設けられている。
【0045】
図4(B)に示す如く、用紙Pが給送ローラ231およびリタードローラ233によって給送される際、用紙Pは、給送ローラ231およびリタードローラ233によって挟持された状態となるので、接点234の近傍における用紙Pの姿勢は、第1接線Sと同じ姿勢となる。さらに、用紙Pが給送されると、用紙Pの先端部が、第1案内部112と当接する。そして、用紙Pの先端部は、第1案内部112に案内されて搬送ローラ対440のニップ点443まで到達する。用紙Pの先端部がニップ点443まで到達すると、用紙Pの先端部は、搬送用駆動ローラ441の時計方向の駆動によって搬送ローラ対440に挟持された状態となる。このとき、ニップ点443の近傍における用紙Pの姿勢は、第2接線Tと同じ姿勢となる。
【0046】
従って、用紙Pが接点234およびニップ点443の2カ所おいて挟持された状態では、接点234とニップ点443との間において、用紙Pは、側視S字型に撓んだ状態となる。そして、所謂、食い付き吐き出し方式によるスキュー取りを実行する。このとき、用紙Pは、鎖線で示す符号P’の如くさらに大きくS字型に撓むと共に、第1案内部112および第2案内部113と当接する。即ち、図3(A)(B)に示す実施形態と比較して、突出方向を逆方向に撓ませた側視S字を形成することができる。
【0047】
また、前述したように、搬送ローラ対440の搬送用従動ローラ442の軸は、搬送用駆動ローラ441の軸より搬送方向下流側へ位置するように設けられている。従って、スキュー取りを実行した後に用紙Pを記録部120のプラテン124まで搬送し、記録ヘッド123によって記録を実行する際、搬送ローラ対440および記録部下流側の排出ローラ対(図示せず)による用紙Pの「逆ぞり効果」を強めることができる。係る場合、プラテン上における用紙Pの浮き上がりを防止する効果を高めることができる。
尚、接点234とニップ点443との間において、第1接線Sを第2接線Tと交差させないようにするには、従来技術における給送装置の構成(図5(A)(B)参照)において搬送用従動ローラ(506)の位置を下流側へ移動させるだけで可能である。従って、大きな変更を要せずに前述したように用紙をS字型に撓ませることができる。
【0048】
他の実施形態における給送装置200は、記録部120は、用紙Pに対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッド123と、記録ヘッド123と対向する位置に設けられ用紙Pを案内するプラテン124とを備え、給送ローラ231と分離手段232であるリタードローラ233との接点234と、搬送ローラ対440のニップ点443との間において、第2接線Tが、記録ヘッド123およびプラテン124が設けられ対向する方向において、第1接線Sより記録ヘッド側に設けられ、搬送ローラ対440の記録ヘッド側の第1搬送ローラである搬送用従動ローラ442の軸が、プラテン側の第2搬送ローラである搬送用駆動ローラ441の軸より搬送方向下流側に配設されていることを特徴とする。
【0049】
尚、上記実施形態において、分離手段として回動するリタードローラを採用したが、回動するものに限られるものではなく、回動しない分離パッドでもよいのは勿論である。
また、上記実施形態において、第1搬送ローラを従動側、第2搬送ローラを駆動側としたが、逆の構成であってもよいのは勿論である。
またさらに、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る記録装置の内部を示す全体斜視図。
【図2】図1から記録部を除いた全体斜視図。
【図3】(A)(B)は本発明に係る給送装置の送り経路を示す側断面図。
【図4】(A)(B)は他の実施形態に係る給送装置の送り経路を示す側断面図。
【図5】(A)(B)は従来の給送装置の送り経路を示す側断面図。
【符号の説明】
【0051】
100 (インクジェットプリンタ)記録装置、109 送り経路、110 給送部、
111 退避案内部、112 第1案内部、113 第2案内部、120 記録部、
121 キャリッジ、122 キャリッジガイド部、123 記録ヘッド、
124 プラテン、131 第1カム部、132 第2カム部、
133 (給送ローラの)支軸部、134 カムフォロア、200 給送装置、
210 基体部、211 土手部、220 ホッパー、221 側端規制部、
231 給送ローラ、232 分離手段、233 リタードローラ、234 接点、
240 搬送ローラ対、241 搬送用駆動ローラ、242 搬送用従動ローラ、
243 ニップ点、244 ホルダ部、245 間口開口部、440 搬送ローラ対、
441 搬送用駆動ローラ、442 搬送用従動ローラ、443 ニップ点、
500 (従来技術の)給送装置、501 給送ローラ、502 ホルダ部、
503 経路天井部、504 搬送ローラ対、505 搬送用駆動ローラ、
506 搬送用従動ローラ、507 デッドスペース、508 リタードローラ、
509 案内部、510 接点、511 ニップ点、512 退避部、513 基体部、
P1 用紙、P 用紙、P’ (スキュー取りを実行の際の)用紙、Q 第1接線、
R 第2接線、S (他の実施形態の)第1接線、T (他の実施形態の)第2接線、
U (従来技術の)第1接線、W (従来技術の)第2接線、X 主走査方向、
Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された被記録媒体をピックアップし下流側に給送する給送ローラと、給送された被記録媒体を記録部へ搬送する搬送ローラ対とを備えた給送装置であって、
前記給送ローラは、重なって給送されようとする被記録媒体を分離する分離手段と外接可能に設けられ、
前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記給送ローラと前記分離手段との接点における第1接線は、前記搬送ローラ対のニップ点における第2接線と交わらないように構成されていることを特徴とする給送装置。
【請求項2】
請求項1において、被記録媒体が記録部へ搬送される前に、前記給送ローラと前記搬送ローラ対とが協働して、前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、被記録媒体を側視S字状に撓ませてスキュー取りを実行するように構成されていることを特徴とする給送装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記記録部は、
被記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、
記録ヘッドと対向する位置に設けられ被記録媒体を案内するプラテンとを備え、
前記給送ローラと前記分離手段との接点と、前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記第2接線が、前記記録ヘッドおよび前記プラテンが設けられ対向する方向において、前記第1接線より前記記録ヘッド側に設けられ、
前記搬送ローラ対の前記記録ヘッド側の第1搬送ローラの軸が、前記プラテン側の第2搬送ローラの軸より搬送方向下流側に配設されていることを特徴とする給送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、給送装置の基体部に前記分離手段が設けられ、
分離手段側の基体部には、被記録媒体を前記搬送ローラ対へ案内する第1案内部が設けられ、
前記給送ローラ側の前記第1案内部と対向する位置には、前記搬送ローラ対の従動ローラを回動自在に保持すると共に、被記録媒体を前記搬送ローラ対へ案内する第2案内部が設けられていることを特徴とする給送装置。
【請求項5】
積層された被記録媒体をピックアップし記録部側へ給送する給送部と、
該給送部側から送られた被記録媒体に対してインクを吐出して記録を実行する記録部と、を備えた記録装置であって、
前記給送部は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された給送装置を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
積層された被液体噴射媒体をピックアップし下流側に給送する給送ローラと、給送された被液体噴射媒体を液体噴射部へ搬送する搬送ローラ対とを備えた給送部と、
該給送部側から送られた被液体噴射媒体に対して液体を噴射する液体噴射部と、を備えた液体噴射装置であって、
前記給送ローラは、重なって給送されようとする被液体噴射媒体を分離する分離手段と外接可能に設けられ、
前記給送ローラと前記分離手段との接点と前記搬送ローラ対のニップ点との間において、前記給送ローラと前記分離手段との接点における第1接線は、前記搬送ローラ対のニップ点における第2接線と交わらないように構成されていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−331899(P2007−331899A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166572(P2006−166572)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】