説明

給電システム

【課題】コンセントにプラグを接続する場合に、給電の可否を判定して、アーク放電の防止と、トラッキング発生の可能性の有無を判定すること。
【解決手段】プラグが、電力を受電する栓刃と、検知光を反射する反射シートとを備え、コンセントが、電力を入力する入力部と、入力された電力を栓刃に給電する栓刃受部と、検知光を出射する発光部と、反射シートからの反射光を受光する受光部とを有しかつ栓刃が栓刃受部に接続されていることを検出するプラグ検出部と、プラグ検出部の検出の結果に基づいて、電力の出力を制御する給電制御部とを備え、栓刃と栓刃受部とが接続された後に反射光の受光が行われ、かつ栓刃と栓刃受部の接続が離脱される前に反射光の受光ができなくなるように、反射シートがプラグに配置され、給電制御部は、反射光を受光した場合電力を栓刃受部へ出力し、反射光を受光していない場合電力を栓刃受部へ出力しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給電システムに関し、特に供給電源からの電力を電気機器へ出力するプラグとコンセントからなる給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている交流電力を供給するコンセントでは、電気機器のプラグが差し込まれるとプラグ側に交流電力が出力される。
プラグの栓刃がコンセントの栓刃受部に差し込まれた直後からコンセントの栓刃受部から引き抜かれるまで、交流電力を供給するために、コンセントは常に電力の出力可能状態となっている。
【0003】
このような交流用のコンセントを、直流用のコンセントとしても利用することができる。しかし、コンセントが直流電源から供給される直流電力を常時出力可能状態となっている場合、プラグの栓刃がコンセントの栓刃受部に接触するときと、プラグの栓刃が栓刃受部から離れるときに、栓刃と栓刃受部との間で、直流電流によるアークが発生する。
このアークは、栓刃および栓刃受部に熱的な損傷を与えるので、危険である。
そこで、直流電流によるアークを防止するために、コンセントの形状や構成に工夫をした装置が提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1および2では、コンセント側に、コンセントからプラグへの通電を制御するスイッチ機構(電路開閉スイッチ)を設け、プラグをコンセントに差し込む場合、栓刃と栓刃受部(刃受)との接触後に、スイッチ機構が閉状態となってプラグ側への通電を行い、さらにプラグをコンセントから引き抜く(離脱させる)場合、栓刃と栓刃受部とが接触状態において、スイッチ機構が開状態となってプラグ側への通電を遮断し、その後に栓刃と栓刃受部とが離れるような構成が開示されている。
このようなスイッチ機構を設けることにより、直流電力を供給する場合に問題となるアークの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3011428号
【特許文献2】特開2009−146778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、プラグの抜き差しが行われるときに問題となるアークの発生が防止できても、プラグがコンセントに長期間差し込まれたままの状態の場合、トラッキング現象が問題となることがある。
トラッキング現象とは、コンセントとプラグとの接触面であって、プラグの2つの栓刃付近にほこりが蓄積し、湿度が高いためほこりの中に多量の水分が含まれる場合や、ほこりの中に金属成分が含まれている場合に、そのほこりを介して2つの栓刃が短絡し、コンセントとプラグの接触面付近が発熱および発火する現象である。
トラッキング現象は、主としてプラグがコンセントに長期間差し込まれたままの状態のときに発生する現象なので、特許文献1および2のようなスイッチ機構を設けても、トラッキング現象を検出することはできず、トラッキング現象によって生ずる発火を未然に防止することはできない。
【0007】
このようなトラッキング現象を防止するためには、たとえば、プラグとコンセントの間の接触面にほこりが蓄積しにくいような形状とするか、接触面を定期的に手作業でそうじするか、あるいは、電気機器を使用していない場合は、プラグをコンセントから引き抜いておくことで対応していた。
【0008】
そこで、この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、アーク放電の発生を確実に防止し、トラッキング防止のためだけの特別な装置を設けることなく、トラッキング現象の発生の可能性を検出することのできる給電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、プラグとコンセントとからなる給電システムであって、前記プラグが、電力を受電する栓刃と、検知光を反射する反射シートとを備え、前記コンセントが、供給される電力を入力する入力部と、入力された電力を、接続されたプラグの前記栓刃に給電する栓刃受部と、検知光を出射する発光部と、受光部とを有し、前記反射シートが検知光を反射した反射光を該受光部が受光することにより、前記栓刃が前記栓刃受部に接続されていることを検出するプラグ検出部と、前記プラグ検出部の検出結果に基づいて、前記入力された電力の前記栓刃受部への出力を制御する給電制御部とを備え、前記栓刃と前記栓刃受部とが接続された後に、前記受光部による反射光の受光が行われ、かつ、前記栓刃と前記栓刃受部との接続が離脱される前に、前記受光部による反射光の受光ができなくなるように、前記反射シートが前記プラグに配置され、前記給電制御部は、前記プラグ検出部が前記プラグを検出した場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力し、前記プラグ検出部が前記プラグを検出していない場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力しないことを特徴とする給電システムを提供するものである。
【0010】
この発明によれば、プラグに反射シートを備え、コンセントに反射シートからの反射光を受光するプラグ検出部を備え、栓刃と栓刃受部との接続後に反射光の受光が行われ、かつ栓刃と栓刃受部との接続が離脱される前に反射光の受光ができなくなるように、反射シートをプラグに配置し、反射シートからの反射光を受光した場合に入力された電力を出力し、反射光を受光していない場合に入力された電力を出力しないようにしているので、簡易な構成で、プラグをコンセントに抜き差しする際に発生しうるアーク放電を防止できる。
【0011】
また、前記プラグの栓刃と前記コンセントの栓刃受部とが接続された後に、前記発光部と受光部とが前記反射シートと対向し、出射された検知光が反射シートに当たりかつ反射シートからの反射光が受光部に入射するように、前記発光部、受光部およびプラグの反射シートが配置されることを特徴とする。
これによれば、栓刃と栓刃受部とが接続された状態で、検出光が反射シートに当たりかつ反射シートからの反射光が受光部に入射するので、栓刃受部を介した給電が確実に可能となった後に、反射光による接続の有無が検出され、入力された電力を出力できる。
【0012】
前記反射シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートであってもよい。
また、前記感熱シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、その表面の色が黒色へ変化するものでもよい。
前記給電制御部が、前記栓刃受部から電力を出力している状態のときに、前記反射シートの光の反射率が低下し、所定の光強度よりも小さい反射光しか受光されなくなった場合、前記入力された電力を栓刃受部へ出力しないようにすることを特徴とする。
前記給電制御部が、入力された電力を栓刃受部へ出力しないようにした場合、トラッキングの発生の可能性があることを報知する報知部をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記プラグは、2本の栓刃を備え、前記反射シートは、プラグの栓刃が配置される平面上であって、プラグの栓刃とコンセントの栓刃受部とが接続されたときに対向するプラグの接触面の前記2本の栓刃の間に設けられることを特徴とする。
これによれば、反射シートをプラグの接触面の2本の栓刃の間に設けているので、トラッキングの発生の可能性を、きわめて早期に、確実に検出することができる。
【0014】
また、この発明は、コンセントの栓刃受部に挿入することにより電力を受電する栓刃と、光を反射する反射シートとを備え、前記反射シートは、前記栓刃が前記コンセントの栓刃受部に接続された後に、コンセント側から出射された光がコンセント側の受光部に照射されるように配置されることを特徴とするプラグを提供するものである。
このプラグと、反射シートからの反射光を検出するプラグ検出部を備えたコンセントとを組み合わせて用いることにより、簡易な構成で、アーク放電を防止できるようになる。
ここで、トラッキングの発生の可能性を検出するために、前記反射シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートであることが好ましい。
【0015】
また、この発明は、供給される電力を入力する入力部と、入力された電力を、接続されたプラグの栓刃に給電する栓刃受部と、検知光を出射する発光部と、受光部とを有し、該検知光の反射光を受光部が受光することにより、前記栓刃が前記栓刃受部に接続されていることを検出するプラグ検出部と、前記プラグ検出部の検出の結果に基づいて、前記入力された電力を、前記栓刃受部へ出力するか否かを制御する給電制御部とを備え、前記給電制御部は、前記プラグ検出部が前記プラグを検出した場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力し、前記プラグ検出部が前記プラグを検出していない場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力しないことを特徴とするコンセントを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、プラグに反射シートを備え、コンセントに反射シートからの反射光を受光して、栓刃が栓刃受部にすでに接続されていることを検出するプラグ検出部を備え、反射シートからの反射光を受光した場合に入力された電力を出力し、栓刃と栓刃受部との接続が離脱される前に反射光が受光できなくなるようにして、反射光が受光していない場合に入力された電力を出力しないようにしているので、簡易な構成で、アーク放電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明のコンセントおよびプラグからなる給電システムの一実施例の構成ブロック図である。
【図2a】この発明のプラグをコンセントに差し込む場合の検知状態の変化の説明図である。
【図2b】この発明のプラグをコンセントに差し込む場合の検知状態の変化の説明図である。
【図2c】この発明のプラグをコンセントに差し込む場合の検知状態の変化の説明図である。
【図2d】この発明のプラグをコンセントに差し込む場合の検知状態の変化の説明図である。
【図3】この発明の給電制御処理の一実施例のフローチャートである。
【図4】この発明の反射シートを配置する位置の一実施例の説明図である。
【図5】この発明の反射シートを配置する位置の一実施例の説明図である。
【図6】この発明の反射シートを配置する位置の一実施例の説明図である。
【図7】この発明のトラッキング判定を含む給電制御処理の一実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を使用して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
<この発明の給電システムの構成>
図1に、この発明の給電システムの一実施例の構成ブロック図を示す。
【0019】
この発明のコンセント1は、従来のコンセントと同様に、交流電源(AC)や直流電源(DC)などの電源供給部4から供給される電力を出力するインタフェース部分であり、プラグ2を、このコンセント1に差し込むことにより、プラグ2に接続された電気機器3に、電力を供給するものである。
この発明では、電気機器に供給する電力は、交流電源から供給される交流電力でもよく、あるいは直流電源から供給される直流電力でもよい。
また、コンセント1と、光を反射する反射シートを備えたプラグ2により、この発明の給電システムが構成される。
【0020】
図1に示すように、コンセント1は、主として、入力部11、給電制御部12、プラグ検出部13、栓刃受部14、報知部15および記憶部16から構成される。
入力部11は、電源供給部4から供給される電力をコンセントに入力する部分である。通常の電力線と同様に、二極の入力端子から構成される。たとえば、DC10Vの直流電源の場合、一方の端子が+10V端子であり、他方の端子が接地端子である。
栓刃受部14は、従来から一般家庭で用いられるようなコンセントと同様に、入力された電力を、接続される電気機器のプラグの栓刃に給電する部分であり、プラグ2の栓刃21を差し込むことができる形状の凹部部材を有する部分である。
【0021】
給電制御部12は、プラグ検出部13による反射光の検出の有無に基づいて、入力された電力の栓刃受部への出力を制御する部分である。
給電制御部12は、主として、入力部11に入力された電力を、栓刃受部14を介して外部の電気機器に給電する電力出力部121と、プラグ検出部13に備えられた発光部131から出射された光(以下、検知光とも呼ぶ)が、受光部132に受光されたか否かを判定する光検出判定部122とから構成される。
ここで、給電制御部12は、プラグ検出部13の受光部132が反射シート22からの反射光を受光した場合、入力された電力を栓刃受部14へ出力する。一方、プラグ検出部13の受光部132が反射シート22からの反射光を受光していない場合、入力された電力を栓刃受部14へ出力しないように制御する。
【0022】
このような給電制御部12の各機能ブロック(121,122)は、ハードウェアで実現することも可能であるが、主として、CPU、ROM、RAM、I/Oコントローラー、タイマー等を備えたマイクロコンピュータにより実現することができる。また、ROM等に記憶された制御プログラムに基づいて、CPUがハードウェアを有機的に動作させることにより、各機能ブロックの機能を実現する。
【0023】
また、光検出判定部122は、発光部131から、たとえば定期的に、光を発光するようにプラグ検出部13へ指示(発光要求)を送る。その指示を送出した後、一定時間内に、受光部132から、受光した光の強度に対応した電気信号が送信されてくるのを確認する。
この電気信号が検出された場合、反射シートからの反射光が検出されたと判定し、記憶部16の光検出情報161(L)を1に設定する。
この発明では、光検出情報161(L)が1の状態では、プラグの栓刃21がコンセントの栓刃受部14に差し込まれ、かつ、給電を開始してもよい状態となったこと、あるいは、現在給電中であることを意味する。
【0024】
一方、光検出情報161(L)が0の場合、光が受光部132で検出されていない状態を示し、給電不可であること、あるいは給電停止中の状態であることを意味する。
また、後述するように、光検出情報161がL=0の場合、栓刃21が栓刃受部14に接続されていない場合のほか、栓刃21と栓刃受部14との接触が保持されているが、受光部132で光が検出されないような状態、たとえば、プラグがコンセントから引き抜かれようとする途中の状態を含む。
【0025】
プラグ検出部13は、プラグ2がコンセント2に接続されている状態か否かを検出する部分であり、プラグの反射シート22に検知光を出射し、反射シート22からの反射光を受光することにより、プラグの栓刃21が栓刃受部14にすでに接続されていることを検出するための部分である。主として、発光部131と受光部132とから構成される。
発光部131は、検知光を出射する光源であり、たとえば、LEDが用いられる。
検知光は、プラグの反射シート22が挿入されるであろう位置に向かって出射される。
受光部132は、反射シート22からの反射光を受光して、反射光の光強度に対応した電気信号(以下、受光信号とも呼ぶ)を出力する部分である。たとえば、フォトダイオードやフォトトランジスタが用いられる。
この電気信号は、給電制御部12の光検出判定部122に与えられる。
【0026】
この発明では、後述するように、プラグがコンセントの所定の位置まで挿入されたときに、発光部131から出射された検知光が、プラグ12に備えられた反射シート22に当たり、反射シートから反射してきた光(反射光)を受光部132で受光する。
また、プラグ2の栓刃21がコンセント1の栓刃受部14に差し込まれ物理的に接続された後に、プラグ検出部13の発光部と受光部とが、反射シート22と対向する状態となり、発光部131から出射された検知光が反射シートに当たり、かつ反射シート22からの反射光が受光部132に入射するように、発光部131、受光部132およびプラグの反射シート22の相対的な配置が予め設定される。
特に、栓刃21が所定の位置まで(たとえば、栓刃受部14の奥まで)挿入されたときに、最も受光感度が高くなるように、発光部131および受光部132と反射シート22との距離と、発光部131から出射される検知光の出射角度と、受光部に入射する反射光の角度が、予め設定される。
【0027】
報知部15は、外部に、特に電気機器3の使用者に、コンセントの給電状態を知らせる部分である。
報知部15が知らせる報知内容とは、たとえば、現在給電が行われていること、給電停止状態であること、ある特定の原因により給電を中止したこと、トラッキングの発生の可能性があることなどである。
特に、後述するように、栓刃21と栓刃受部14が接続され、かつ反射シート22からの反射光が受光されていた状態であって、電力を出力している状態のときに、所定の光強度(トラッキング判定値)よりも小さい反射光しか受光されなくなった場合、給電制御部12が、入力された電力を栓刃受部14へ出力しないように制御するが、このとき報知部15は、トラッキングの発生の可能性があることを報知する。
報知部15は、これらの報知内容を、視覚的に表示するためにLEDやLCDなどの表示部151や、聴覚的に知らせるための音声出力部152(スピーカ)を備える。表示部とスピーカを両方備えてもよく、またいずれか一方のみを備えてもよい。
【0028】
記憶部16は、受光部132で受光された光に関する情報や、トラッキングの判定に必要な情報を記憶しておく部分である。
記憶部16としては、ROMやRAMなどの半導体メモリが用いられ、変化する情報は書き換え可能なメモリ(RAM)に記憶され、トラッキングの判定のために予め固定的に設定される情報等はROMに記憶される。
【0029】
記憶部16には、主として、光検出情報161、光強度情報162およびトラッキング判定値163が記憶される。
光検出情報161は、プラグ検出部の受光部132で、光が検出されたか否かを示す情報である。
具体的には、発光部131から出射された検知光が反射シート22によって反射され、この反射シート22による反射光が受光部132に受光されたか否かを示す情報である。
以下の実施例では、反射光が検出されている場合は光検出情報161(L)を1に設定し、反射光が検出されていない場合は、L=0に設定するものとする。
この光検出情報161(L)は、報知部15がどのような報知をするかの判断に用いられる。
【0030】
光強度情報162は、受光した光の強度を示す情報である。
受光部132が反射光を受光した場合、受光部132から、その反射光の光強度に対応した電圧を持つアナログ的な電気信号(受光信号)が出力される。
たとえば、反射光が検出されない場合は、ゼロボルト(0V)の電気信号が出力され、最も強い反射光が検出された場合の電気信号の電圧がVmaxボルトとすると、実際に受光される反射光の強度に対応して、0〜Vmaxの間のいずれかの電圧値を持つ電気信号が出力される。
光強度情報162は、このような受光した反射光に対応した電気信号の電圧値を記憶したものである。
【0031】
たとえば、反射シート22の表面上にほこりがたまった場合や、プラグをコンセントに差し込んだままで長年の使用により反射シートそのものが変色して黒くなった場合は、反射シートの光の反射率が低下し、受光部132に受光される反射光の強度は小さくなることが予想される。
特に、トラッキング現象が発生する可能性が高くなっている場合としては、コンセントとプラグの接触面にほこりがたまっている場合があり、このとき、反射シートの光の反射率が低下するので、予め想定される反射光の光強度よりも小さな強度の反射光しか受光されなくなる可能性がある。
そこで、反射光の強度に対応した光強度情報162が、予め想定される光強度のしきい値よりも小さくなっている場合は、十分な光強度の反射光が得られていないので、反射シートがあるコンセントとプラグの接触面に、トラッキング現象のような何らかの異常が発生していると考えられる。
このように、給電中に、所定の光強度よりも小さい反射光しか受光されなくなった場合は、給電制御部12が入力された電力を栓刃受部14へ出力しないようにする。これにより、トラッキングの発生を未然に防止することができる。
【0032】
トラッキング判定値163は、このような想定される光強度のしきい値の1つである。
たとえば、受光した反射光から得た光強度情報162が、予め想定されていたトラッキング判定値163よりも小さければ、トラッキングが発生する可能性があると判断する。
逆に、光強度情報162が、トラッキング判定値163以上であれば、トラッキングは発生しないと判断する。
このトラッキング発生の可能性の判断は、光検出判定部122が行う。
ただし、トラッキング判定を行わない場合は、光強度情報162と、トラッキング判定値163は使用しなくてもよい。
また、トラッキング判定値163は、コンセントやプラグの製造業者が予め固定的に設定するものとする。ただし、コンセントが設置される現場の環境等を考慮して、実際にコンセントを設置した後に設置業者や利用者によって任意の値に変更できるようにしてもよい。この場合は、トラッキング判定値163も、RAM等の書き替え可能なメモリに記憶される。
【0033】
図1において、プラグ2は、コンセント1に差し込むことにより、電気機器3の本体部分に、電力を与える部分である。
プラグ2は主として、2本の栓刃21と、光を反射する反射シート22と、受電部23とから構成される。
ここで、栓刃21は、一般的に二極の凸形状の電極部分であり、栓刃受部14の凹部に挿入することにより、電力を受電する部分である。受電部23は、2本の栓刃21を介して受電された電力を電気機器3の本体に与える部分である。
【0034】
反射シート22は、プラグ2の表面に配置される平面状シートである。
コンセントの発光部131から出射された検知光を受光して、検知光を受光部132の方へ反射できるように、反射シート22の表面は平らであることが好ましい。また、反射シートについては表面に凹凸(小さいプリズム、ビーズなど) を設けたものや、模様の有り無しなど形状は特に問わない。
さらに、反射シート22を容易にプラグ2の表面に貼り付けるために、裏面に接着材を塗布したシールを用いてもよい。
反射シート22の大きさは、プラグ2の表面に貼り付けることのできる程度の大きさであればよく、特に限定されるものではない。
【0035】
反射シート22は、プラグ2がコンセント1に差し込まれたとき、栓刃21が栓刃受部14に完全に挿入された状態で、コンセント1のプラグ検出部13と対向する位置にくるように、配置する。
より具体的には、栓刃21と栓刃受部14とが接続された後に、プラグ検出部13の発光部131から出射された検知光が、反射シート22の表面に照射され、かつ反射シートで反射された光(反射光)が受光部132の方へ進行し、受光部の受光面で反射光の受光ができるように、反射シート22をプラグ2の表面に配置する。
また、栓刃21と栓刃受部14との接続が離脱される前に、受光部132によって反射光の受光ができなくなるように、反射シート22を配置する。
【0036】
図4、図5および図6に、この発明の反射シートを配置する位置について、いくつかの実施例の説明図を示す。
図4には、プラグ2の2本の栓刃21が配置されている平面上であって、プラグの栓刃21とコンセントの栓刃受部14とが接続されたときに、コンセント1と対向するプラグの接触面に、反射シート22を配置した説明図を示している。
ここで、特に、トラッキング現象をできるだけ早期に検出するためには、反射シート22は、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートを用い、接触面のうち2本の栓刃21の間に設けることが好ましい。
コンセントにプラグが差し込まれた状態のままの場合、この接触面の2本の栓刃の間に、ほこりや異物が蓄積されやすく、また湿度が高くなりやすく、この部分にトラッキング現象が発生しやすいからである。
【0037】
図4の場合、プラグ検出部13の発光部131と受光部132は、プラグの接触面と対向するコンセントの表面であって、反射シートと対向する栓刃受部14の2つの凹部の間の領域に設ければよい。
【0038】
図5には、反射シート22を、プラグの接触面の端部に配置した実施例の図面を示している。
すなわち、反射シート22の位置は、図4のような位置に限定するものではなく、図5のような接触面の任意の位置であってもよい。
また、コンセント1に設けられた発光部131と受光部132の位置がすでに固定されている場合、たとえば家の建築時に、プラグ検出部13を備えたコンセント1がすでに設置されているような場合、利用者は、シール状の反射シートの裏紙をはがして、発光部131と受光部132の位置と対向するプラグの接触面の位置に、反射シート22を貼り付ければよい。
すなわち、コンセントのプラグ検出部13の位置がすでに固定されている場合であっても、反射シートをシール状とすれば、固定されたそのプラグ検出部13の位置に対向するように、反射シートを貼る位置を後で変更することができる。
【0039】
図6には、反射シート22を、プラグの接触面とは異なる面に設けた実施例の図面を示している。
図6では、上側の面に反射シート22を設けているが、上下左右のうちどの面に設けてもよい。
この場合は、コンセント1側のプラグ検出部13は、コンセント1の表面ではなく、コンセントに凹部領域を設け、その凹部領域に向かって検知光を出射できるような位置に発光部131を設け、反射シートからの反射光が受光できるような位置に受光部132を設ける。
【0040】
図2(a)〜(d)に、図6のようなプラグ2を用いる場合の、コンセントのプラグ検出部13の配置例の図面を示す。
図2(a)〜(d)は、プラグをコンセントに差し込む場合の検知状態の変化を示した図面であるが、プラグ検出部13の位置はどれも同じである。
図2(d)を用いて説明すると、コンセント1に凹部領域を設け、この凹部領域は、プラグ全体が差し込める程度の大きさとする。凹部領域の奧には、栓刃21を差し込む栓刃受部14を設ける。
凹部領域の上面側に、プラグ検出部13を設ける。
プラグ検出部13の発光部131から出射される検知光は、凹部領域に向かって出射される。
発光部131は、図2(d)のようにプラグの栓刃21が、栓刃受部14に完全に挿入された状態で、発光部131から出射される検知光が反射シート22の表面のどこかに当たるように配置する。反射シートは、図面の左右方向にある程度長い幅を持った平面シートとする。
【0041】
また、プラグ検出部13の受光部132は、図2(d)の状態で、反射シートからの反射光が、受光部の受光面に入射されるような位置に配置する。
この場合、図6のプラグの反射シート22が存在する面が、凹部領域の上面側、すなわち、プラグ検出部13が配置されている面と対向するように、プラグを挿入する必要がある。
プラグ検出部13は、図2(a)〜(d)に示すように凹部領域の上面側に設けるのではなく、凹部領域の下面側に設けてもよい。
あるいは、交流電源の場合でプラグの差し込み方向を限定しないようにするためには、凹部領域の上面側と下面側に、それぞれプラグ検出部13を設けてもよい。この場合は、利用者はプラグを差し込むときに、その上下方向を気にしなくてもよい。
【0042】
次に、図2(a)〜(d)を用いて、プラグ検出部13による反射光検知のタイミングについて説明する。
図2(a)はプラグとコンセントがまだ接続されておらず、かつ反射シートからの反射光も検出されていない状態を示している(プラグ未接続、反射光非検出状態)。
図2(b)は、プラグとコンセントが接続されており、かつ反射シートからの反射光が検出されていない状態を示している(プラグ接続、反射光非検出状態)。
図2(c)と(d)は、プラグとコンセントが接続されており、かつ反射シートからの反射光が検出された状態を示している(プラグ接続、反射光検出状態)。
【0043】
また、図2(c)は、プラグの差し込み途中で、反射光の検出ができるようになった初期的な状態を示している。
図2(d)は、プラグの栓刃21がコンセントの栓刃受部14の奧まで完全に差し込まれた状態を示している。
したがって、図2(c)から図2(d)まで、プラグが図面の左側方向へ徐々に押し込まれるが、この間はずっと、反射光の検出がされている状態であることを意味する。
【0044】
この発明では、特に、直流電源を供給する場合に発生するアーク放電を防止するために、反射光の検出の有無と、実際の給電を行う前の栓刃21と栓刃受部14との接続のタイミングを次のようにする。
(1)プラグをコンセントに差し込む場合
プラグの栓刃21が、コンセント1の栓刃受部14に接触した後に、受光部132による反射光の検出ができるようにする。
栓刃21と栓刃受部14とが所定長さ以上接続されるような位置まで、栓刃21が差し込まれたときに、反射光の検出ができるように、受光部132を配置する。
また、反射光の検出がされた後に、栓刃受部14を介して給電を開始するようにする。
【0045】
図2(a)では、プラグ2がコンセント1の凹部領域に挿入されつつあるが、栓刃21と栓刃受部14とが、まだ接続されていない状態を示している。
このとき、プラグの反射シート22は、まだ凹部領域の入口付近にあり、発光部13から検知光が出射されても、検知光は反射シート22に当たらない。
すなわち、プラグ2が図2(a)のような挿入状態で、プラグ未接続状態では、発光部131から出射された検知光が、反射シート22には当たらないような位置に、発光部131を配置する。
【0046】
また、図2(b)では、栓刃21の先端部分と栓刃受部14とが接続された状態(プラグ接続状態)を示しているが、この状態でも、まだ、検知光は反射シート22に当たらない。
すなわち、図2(a)のみならず、図2(b)のように、栓刃21の先端部分のみが栓刃受部14と接続されたプラグ接続状態でも、検知光が反射シート22には当たらないような位置に発光部131を配置する。あるいは発光部131から出射される光の出射方向、ビーム径、光強度や、発光部131と挿入されるプラグ2の反射シート22の表面との距離を予め設定しておく。
また、図2(b)の状態では、栓刃21と栓刃受部14とが接続されているため、給電可能な状態ではあるが、反射光が検出されないので、給電は行わない。
【0047】
図2(c)は、図2(b)の状態から、プラグの栓刃21が、栓刃受部14にさらに押し込まれた状態を示している。
この状態では、プラグ検出部13の発光部131および受光部132とほぼ対向する位置まで、反射シート22がきている。
反射シート22は、図面の左右方向に幅を持った平面シートであるので、図2(c)では、反射シート22の左端部付近に、検知光が当たるようになった状態を示している。
また、反射シート22に当たった検知光は、反射シート22によって反射され、受光部132の方向へ進行し、受光部132に検出される。
反射光が受光部132によって検出されると、反射シート22を備えたプラグ2がすでにコンセントに接続された状態となっていると判断され、給電してもよい状態になったと判断される。
後述するように、図2(c)のように、反射光が検出された後に、栓刃受部14を介して、栓刃21への給電が開始される。
【0048】
図2(d)は、図2(c)の状態から、さらにプラグの栓刃21が押し込まれ、コンセント1の栓刃受部14の奧まで完全に挿入された状態を示している。
この状態でも、図2(c)と同様に、反射シート22の表面に、検知光が当たっており、かつ、反射シートからの反射光が、受光部132の受光面に進行して、反射光が検出される。
図2(c)の栓刃の挿入状態から図2(d)の栓刃の完全挿入状態までの栓刃の左方向への移動距離が、たとえば1mmであったとすると、反射シート22の図面の左右方向の幅は、たとえば1mm以上2mm以下の長さに設定すればよい。
ただし、幅の上限値は、プラグの大きさによっても制限されるので、これに限るものではない。
また、図2(d)の状態でも、反射光が検出されているので、栓刃受部14を介した給電は、そのまま継続して行う。
【0049】
(2)プラグをコンセントから引き抜く場合
プラグの栓刃21が、コンセント1の栓刃受部14から離脱される前に、先に、受光部132による反射光の受光ができなくなるようにする。
すなわち、プラグの栓刃21が引き抜かれる途中において、栓刃21と栓刃受部14とがまだ接続された状態で、反射シートからの反射光が検出されなくなるような位置に、受光部132を配置する。
また、反射光の検出がされなくなった後であって、栓刃21と栓刃受部14とがまだ接続された状態のときに、今まで実施されていた給電を停止する。
【0050】
図2で説明すると、まず、図2(d)の状態において、現在電気機器への給電中の状態であったとする。
図2(d)の状態から、プラグがわずかに引き抜かれ図2(c)の状態となった場合、プラグ接続状態であるため給電はそのまま継続され、かつ受光部による反射光の検出状態のままである。
プラグが図面の右側へさらに引き抜かれ、図2(c)から図2(b)の状態となった場合、発光部131から出射した検知光が反射シートに当たらなくなったので、反射光の非検出状態となる。
このとき、反射光が検出されなくなったので、栓刃受部14への電力の出力をやめ、給電を停止させる。
この状態では、まだ、栓刃21と栓刃受部14とは接続された状態である。
したがって、栓刃21と栓刃受部14との物理的な接続が保持されたままの状態で、給電が停止される。
【0051】
次に、さらにプラグが引き抜かれると、図2(b)から図2(a)の状態となる。
このとき、栓刃21と栓刃受部14とが物理的に離れた状態となる。また、反射光の検出もできない状態である。
すなわち、図2(b)の状態ですでにプラグ側への給電が行われていないので、図2(a)のように、栓刃21と栓刃受部14とが物理的に離れる瞬間に、アーク放電は発生しない。
【0052】
この発明では、以上のように、プラグに備えられた反射シート22と、コンセントのプラグ検出部13とを用いて、反射シートからの反射光の検出の有無によって給電制御を行い、反射光の検出のタイミングと、栓刃21と栓刃受部14との接続のタイミングとが上記の図2のような関係となるように、反射シート22とプラグ検出部13の相対的な位置関係を設定するので、簡易な構成で、アーク放電の発生を防止できる。
【0053】
<この発明の給電制御処理の説明>
図3に、この発明の給電制御処理の一実施例のフローチャートを示す。
ここでは、アーク放電の防止が可能な給電制御の実施例について説明する。
初期状態としては、コンセント1にプラグ2が接続されておらず、反射シートからの反射光も検出されていない状態(プラグ未接続、反射光非検出状態)とする。
たとえば、図2(a)のような状態である。
このとき、反射光が検出されていない状態なので、光検出情報161(L)は、L=0である。
また、電力出力部121は、栓刃受部14に電力を出力していない状態であるとする。
【0054】
ステップS1において、コンセント1のプラグ検出部13は、反射光(反射シート)の検出動作を行う。
具体的には、反射シートからの反射光の検出処理を行う。
ここでは、まず、給電制御部12が、プラグ検出部13に対して、検知光の発光要求を送る。この発光要求を受信したプラグ検出部13は、発光部131から、検知光を出射(発光)する(発光処理)。
検知光の出射は、一定時間の間(たとえば1秒間)だけ行えばよい。
また、一定時間間隔(たとえば、10秒間隔)で、一定時間の間だけ数回出射するようにしてもよい。ただし、検知を迅速にするためには、連続的に検知光を出射しておいてもよい。
また、検知光を出射した後、所定時間の間(たとえば1秒間)に、光検出判定部122が、受光部132によって反射光が検出されるか否か、確認する(受光確認処理)。
【0055】
受光部132が反射光を検出していないときは、反射光に対応した電気信号(受光信号)は生成されないので、光検出判定部122は受光信号を確認できず、反射光非検出状態と判定する。このときは、たとえば、図2(a)や図2(b)のような状態である。
一方、受光部132によって反射光が検出されたとき、その反射光に対応した電気信号(受光信号)が生成され、光検出判定部122へ送られる。光検出判定部122は、受光信号が送られてきたことを確認すると、反射光検出状態と判定する。このときは、たとえば、図2(c)のような状態である。
ステップS2において、上記のように、光検出判定部122が、反射光(反射シート)の検出の有無をチェックする(反射光検出確認処理)。
反射光が検出されなかった場合、ステップS1へ戻り、再度反射光の検出処理を行う。
【0056】
反射光が検出された場合、ステップS3へ進む。
ステップS3において、電力出力部121が、栓刃受部14に、給電電力を出力する。
上記したように、反射光が検出された場合は、栓刃21と栓刃受部14とがすでに接続状態にあるので、電力を供給してもアーク放電が発生することはない。
また、反射光が検出されたので、光検出情報161(L)を1に設定する。
【0057】
さらに、報知部15が、給電が開始されたことあるいは、現在給電中であることを報知する。報知の内容は、表示部151による報知、あるいは音声出力部152による報知のどちらか一方でもよく、または、両方の報知を行ってもよい。また、給電中であることは異常ではないので、報知処理を行わなくてもよい。
また、光検出情報161(L)の値(0または1)に対応させて、報知する内容を予め設定しておき、報知部15が、光検出情報161(L)の値を常に確認し、そのLの値に対応した報知をするようにしてもよい。
【0058】
ステップS3の状態では、たとえば、図2(c)あるいは図2(d)のような状態となっており、プラグがコンセントに物理的に接続されたプラグ接続状態であって、かつ、プラグ検出部13と反射シート22とが対向した反射光検出状態である。
このステップS3の後、電源供給部4から入力部11へ入力された電力が、電力出力部121によって栓刃受部14を介して、プラグの栓刃21に与えられる。
そして、受電部23から、プラグ2に接続された電気機器3の本体に電力が供給され、電気機器の使用ができる状態となる。
【0059】
ステップS4において、再度プラグ検出部13による反射光の検出動作を行う。
ステップS3の状態では、上記したように、図2(c)や図2(d)のようなプラグが接続された給電状態であるので、ステップS4は反射光が検知されなくなるかどうかを、チェックするためのものである。
言いかえれば、プラグ2がコンセント1から引き抜かれようとしているか否かをチェックするためのものである。
ステップS4の具体的な処理は、ステップS1と同じ処理であり、検知光の出射(発光)と、反射光の受光確認とが行われる。
【0060】
ステップS5において、ステップS2と同様に、光検出判定部122が、反射光(反射シート)の検出確認処理を行う。
ステップS5において、反射光が検出されている場合は、まだ給電中状態のままであることを意味するので、ステップS4へ戻る。このときは、まだ図2(c)や図2(d)のようなプラグ接続状態である。
【0061】
一方、ステップS5において、反射光が検出されなくなった場合、たとえば図2(b)のような状態となっていると考えられるので、プラグがコンセントから引き抜かれようとする途中の可能性がある。この場合、ステップS6へ進む。
ステップS6において、電力出力部121が、栓刃受部14への出力を停止する。
上記したように反射光が検出されなくなるタイミングは、プラグの栓刃21がコンセント2の栓刃受部14から離脱するよりも先であるので、栓刃21と栓刃受部14との物理的な接続がまだされている状態で、給電が停止される。
【0062】
また、その後、給電が停止した状態でプラグが引き抜かれ、栓刃21と栓刃受部14との物理的な接続がなくなり、プラグ未接続状態となるので、アーク放電は発生しない。
さらに、ステップS6において、光検出情報161(L)を、L=0に設定する。
また、報知部15は、光検出情報161がL=0の場合の報知処理を行う。
たとえば、プラグが引き抜かれたので、給電が停止したことを、表示または音声で報知する。ただし、特に異常ではないので、報知しないようにしてもよい。
ステップS6の後、ステップS1へ戻る。
【0063】
以上のように、プラグに備えられた反射シートを用いた光検出の有無を確認することにより、給電の可否の判定と給電制御をしているので、簡易な構成で、アーク放電を防止することの可能な給電制御ができる。
特に、プラグとコンセントの物理的な接続があった後に、反射シートからの反射光を検出して給電を開始し、かつ、プラグとコンセントの物理的な接続がなくなる前に、反射シートからの反射光が検出されなくなることを確認して給電を停止しているので、直流電力の供給時に発生する可能性のあるアーク放電を防止できる。
【0064】
<トラッキング判定処理>
図7に、この発明の給電システムにおいて、トラッキング判定処理を含む給電制御処理のフローチャートを示す。
図7において、ステップS1からステップS6までの各処理は図3に示したものと同じ処理であるが、ステップS2とS3との間に、ステップS11、S12およびS13の処理が追加される点が異なる。
この処理では、図1の記憶部16の光強度情報162と、トラッキング判定値163とを用いる。
【0065】
また、反射シート22としては、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートを用いる。
ここで、感熱シートは、その表面近傍の温度が所定の温度よりも上昇した場合に、その表面の色が主として白から黒へ変化するシートである。
たとえば、日油技研工業(株)の感熱シート(LI−125)を用いることができる。
これは、表面温度が125℃を超えると、表面の色が白色から黒色へ変化するシートであり、黒色へ変化した後は元の白色には戻らない不可逆性示温材である。
【0066】
この他に、表面温度の現在の温度に対応して白色と黒色との間で色が変化する可逆性示温材を用いてもよい。また、表面温度の上昇に伴って、光の反射率が徐々に低下するように変化するものでもよく、色の変化は、必ずしも黒色への変化でなくてもよい。
また、上記したようにトラッキングの発生の可能性を早期に確実に検出するためには、図4に示すような位置に感熱シートを設けることが好ましい。
【0067】
図7において、まず、ステップS1とS2の処理により、反射光が検出されたとする。
すなわち、図2(c)のような状態となり、プラグ接続状態で、かつ反射光検出状態になっているとする。
このとき、ステップS11へ進み、光検出判定部122は、光強度の測定処理を行う。
上記したように、受光部132から、検出した反射光の光強度に対応した電気信号(受光信号)が出力されるので、その電気信号の大きさを、光強度情報162(LR)として記憶する。
【0068】
次に、ステップS12において、トラッキング発生の可能性の判定を行う。
ここでは、記憶した光強度情報162(LR)と、予め記憶されているトラッキング判定値163(TR)との比較を行う。
反射光の強度に対応する光強度情報(LR)が、トラッキング判定値(TR)以上の場合(LR≧TR)、十分な強度の反射光が検出されているので、トラッキングの発生の可能性はないと判定する。このとき、ステップS3へ進み、給電電力の出力を許可する。
【0069】
一方、光強度情報(LR)が、トラッキング判定値(TR)よりも小さい場合(LR<TR)、比較的強度の小さな反射光しか検出されていないので、トラッキングの発生の可能性があると判定する。このとき、ステップS13へ進む。
ステップS13へ進む場合は、感熱シートの表面が所定の温度以上になって、その表面が黒色の方向へ変色したため、光の反射率が低下して、反射光の光量が少なくなった場合が考えられる。
【0070】
ステップS13において、電力出力部121が、栓刃受部14への電力の出力を停止する。
この場合は、まだプラグ接続状態であり、かつ、反射光検出状態でもある。ただし、反射光が検出されてはいるものの、トラッキングの発生の可能性があるので、光検出情報161(L)を、たとえば、L=2に設定する。
このとき、報知部15は、光検出情報161(L)が2の場合に予め設定されている報知処理を行う。
たとえば、トラッキングの発生の可能性があることを示す警告表示(赤LEDの点滅など)や、トラッキングの発生を警告する音声出力を行えばよい。この後、ステップS1へ戻る。
【0071】
以上のように、表面温度の変化に対応して光の反射率が変化する感熱シートを反射シートに用い、感熱シートからの反射光の光強度を測定するようにしているので、トラッキングの発生の可能性を判定することができる。
トラッキングが実際に発生する前に、給電を停止し、かつトラッキングの発生の可能性があることを報知するようにしているので、使用者は給電停止の原因を知ることができ、トラッキング発生の危険性があることに気づかずにプラグを差し込んだままにすることを回避でき、トラッキングの発生の可能性があることを知った使用者がプラグとコンセントの接触面などをそうじすることにより、トラッキングの発生に基づく火災の発生を未然に防止することができる。
【0072】
また、感熱シートは市販のものを使用することができ、プラグ側には感熱シートを貼り付けるだけでよく、トラッキング検出のための他の複雑な構成を設ける必要がないので、簡易に、低コストな構成で、トラッキングの発生の可能性を検出できる。
さらに、トラッキング現象に基づくプラグ接触面の発熱だけではなく、たとえばプラグに接続された電気機器本体側の故障等の原因によって、短縮による過電流がプラグに流れ、プラグが発熱したような場合にも、感熱シートが変色して、光の反射率が低下すれば、同様に給電が停止されるので、火災の発生を未然に防止できる。
【符号の説明】
【0073】
1 コンセント
2 プラグ
3 電気機器
4 電源供給部
11 入力部
12 給電制御部
13 プラグ検出部
14 栓刃受部
15 報知部
16 記憶部
21 栓刃
22 反射シート
23 受電部
121 電力出力部
122 光検出判定部
131 発光部
132 受光部
151 表示部
152 音声出力部(スピーカ)
161 光検出情報
162 光強度情報
163 トラッキング判定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグとコンセントとからなる給電システムであって、
前記プラグが、電力を受電する栓刃と、検知光を反射する反射シートとを備え、
前記コンセントが、供給される電力を入力する入力部と、
入力された電力を、接続されたプラグの前記栓刃に給電する栓刃受部と、
検知光を出射する発光部と、受光部とを有し、前記反射シートが検知光を反射した反射光を該受光部が受光することにより、前記栓刃が前記栓刃受部に接続されていることを検出するプラグ検出部と、
前記プラグ検出部の検出結果に基づいて、前記入力された電力の前記栓刃受部への出力を制御する給電制御部とを備え、
前記栓刃と前記栓刃受部とが接続された後に、前記受光部による反射光の受光が行われ、かつ、前記栓刃と前記栓刃受部との接続が離脱される前に、前記受光部による反射光の受光ができなくなるように、前記反射シートが前記プラグに配置され、
前記給電制御部は、前記プラグ検出部が前記プラグを検出した場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力し、
前記プラグ検出部が前記プラグを検出していない場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力しないことを特徴とする給電システム。
【請求項2】
前記プラグの栓刃と前記コンセントの栓刃受部とが接続された後に、前記発光部と受光部とが前記反射シートと対向し、出射された検知光が反射シートに当たりかつ反射シートからの反射光が受光部に入射するように、前記発光部、受光部およびプラグの反射シートが配置されることを特徴とする請求項1の給電システム。
【請求項3】
前記反射シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートであることを特徴とする請求項1または2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記給電制御部が、前記栓刃受部から電力を出力している状態のときに、前記反射シートの光の反射率が低下し、所定の光強度よりも小さい反射光しか受光されなくなった場合、前記入力された電力を栓刃受部へ出力しないようにすることを特徴とする請求項3に記載の給電システム。
【請求項5】
前記給電制御部が、入力された電力を栓刃受部へ出力しないようにした場合、トラッキングの発生の可能性があることを報知する報知部をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の給電システム。
【請求項6】
前記プラグは、2本の栓刃を備え、前記反射シートは、プラグの栓刃が配置される平面上であって、プラグの栓刃とコンセントの栓刃受部とが接続されたときに対向するプラグの接触面の前記2本の栓刃の間に設けられることを特徴とする請求項3,4または5のいずれかに記載の給電システム。
【請求項7】
前記感熱シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、その表面の色が黒色へ変化することを特徴とする請求項3,4,5または6のいずれかに記載の給電システム。
【請求項8】
コンセントの栓刃受部に挿入することにより電力を受電する栓刃と、光を反射する反射シートとを備え、前記反射シートは、前記栓刃が前記コンセントの栓刃受部に接続された後に、コンセント側から出射された光が該コンセント側の受光部に照射されるように配置されることを特徴とするプラグ。
【請求項9】
前記反射シートは、その表面温度が所定の温度よりも上昇した場合に、光の反射率が低下する感熱シートであることを特徴とする請求項8に記載のプラグ。
【請求項10】
供給される電力を入力する入力部と、
入力された電力を、接続されたプラグの栓刃に給電する栓刃受部と、
検知光を出射する発光部と、受光部とを有し、該検知光の反射光を受光部が受光することにより、前記栓刃が前記栓刃受部に接続されていることを検出するプラグ検出部と、
前記プラグ検出部の検出の結果に基づいて、前記入力された電力を、前記栓刃受部へ出力するか否かを制御する給電制御部とを備え、
前記給電制御部は、前記プラグ検出部が前記プラグを検出した場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力し、
前記プラグ検出部が前記プラグを検出していない場合には入力された電力を前記栓刃受部へ出力しないことを特徴とするコンセント。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249163(P2011−249163A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121777(P2010−121777)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】