説明

統合されたプロピレン生成

プロピレンの生成のための処理であって、n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含有する炭化水素流れを、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンおよびパラフィンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップと、重質C4分別物の少なくとも一部を複分解触媒と接触させることにより、エチレン、プロピレン、C4+オレフィン、およびパラフィンを含む複分解生成物を形成するステップと、複分解生成物を、エチレン分別物と、プロピレン分別物と、C4オレフィンおよびパラフィンを含むC4分別物と、C5+分別物とを含む少なくとも4つの分別物に分別するステップと、軽質C4分別物およびC5+分別物を分解することにより、エチレン、プロピレンおよびより重質の炭化水素を含む分解生成物を生成するステップと、分解生成物を、プロピレンを含む軽質分別物とC5〜C6炭化水素を含む分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される実施の形態は、一般に、主に複分解を介するCオレフィンのプロピレンへの転化のための、蒸気または流動接触分解などのような、分解処理からカットされたC〜C炭化水素の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なオレフィンプラントでは、米国特許第7,223,895号に示されるように、メタンおよび水素の除去のためのフロントエンド脱メタン化部の後にエタン、エチレンおよびCアセチレンの除去のための脱エタン化部が続く。この脱エタン塔からのボトムは、C〜Cの炭素数の範囲の化合物の混合物からなる。この混合物は、典型的には分別法によって、異なる炭素数に分離される。
【0003】
カット、主にプロピレンは、生成物として除去され、究極的には、ポリプロピレンの生成のために、またはプロピレン酸化物、クメン、もしくはアクリロニトリルなどの化学合成のために用いられる。メチルアセチレンおよびプロパジエン(MAPD)不純物は、分別法または水素添加のいずれかによって除去されなければならない。水素添加の方が好ましく、なぜならば、これらの非常に不飽和のC化合物の一部は、最終的にはプロピレンとなり、それによって、収量を増加させるからである。
【0004】
カットは、Cアセチレン、ブタジエン、イソブテンおよびノルマルブテン、ならびにイソブタンおよびノルマルブタンからなり、多くの態様で処理できる。典型的な蒸気分解器Cカットは、重量%で、以下の成分を含む。
【0005】
【表1】

【0006】
精製所またはFCCに基づくCカットの成分は、同様であるが、ただし、パラフィンの百分率はかなりより大きい。
【0007】
典型的には、ブタジエンおよびCアセチレンが最初に除去される。これは水素添加または抽出により達成できる。ブタジエンおよびCアセチレンからの生成物は抽残物Iに指定される。抽出が用いられる場合には、残りの1−ブテンおよび2−ブテンは、最初の供給原料の比と本質的に同じ比で残る。水素添加が用いられる場合には、ブタジエン水素添加からの最初の生成物は、1−ブテンである。その後、水素異性化が同じ反応系内で生じ、1 −ブテンを2−ブテンに変える。この反応の程度は、水素添加系内の触媒条件および反応条件による。しかしながら、慣例的には、「過剰水素添加」およびブテンからのブタンの生成を回避するため、水素異性化の程度を制限する。これは、下流作業のためのブテン供給原料の損失を表すであろう。混合物内に残るブテンは、ノルマルオレフィン(1−ブテン、2−ブテン)およびイソオレフィン(イソブチレン)からなる。混合物のバランスは、元の供給からのイソブタンおよびノルマルブタンの両方に、水素添加ステップから生成されたものおよび任意の少量の未転化または未回収のブタジエンを加えたものからなる。
【0008】
抽残物I流れは、さらに、数多くの態様で処理できる。抽残物II流れは、定義上は、イソブチレン除去に続く流れである。イソブチレンは数多くの態様で除去できる。それは分別法で除去できる。分別法では、イソブタンが、イソブチレンとともに除去されることになる。加えて、1−ブテンの一部も失われることになる。結果として得られる抽残物IIは、主に、ノルマルオレフィンおよびパラフィンならびに最小限のイソオレフィンおよびイソパラフィンを含むことになる。イソブチレンは、さらに、反応を介しても除去できる。反応は、MTBEを形成するメタノールとの反応、第3ブチルアルコールを形成する水との反応、またはC8ガソリン成分を形成するそれ自体との反応を含む。すべての反応の場合において、パラフィンは除去されず、したがって、混合物はノルマルパラフィンおよびイソパラフィンの両方を含むことになる。抽残物IIのパラフィン含有量および組成は下流の処理選択肢に影響を与える。
【0009】
ブテンには数多くの用い方がある。1つのそのような用い方は、複分解を介したプロピレンの生成に対してである。別の用い方は、複分解を介したエチレンおよびヘキセンの生成に対してである。従来の複分解は、ノルマルブテン(1−ブテンおよび2−ブテンの両方)のエチレン(主には、プロピレンを形成する2−ブテンのエチレンとの反応)との反応を伴う。これらの反応は、担持または非担持のVIAまたはVIIA族金属酸化物触媒の存在下で生ずる。反応供給物のパラフィン成分は本質的に不活性であり、反応せず、典型的には、複分解反応器が後に続く分離系におけるパージ流れを介して処理から除去される。複分解のための典型的な触媒は、シリカ上に担持されるタングステン酸化物、またはアルミナ上に担持されるレニウム酸化物である。オレフィンの複分解に対して好適な触媒の例はたとえば米国特許第6,683,019号に記載されている。イソブチレン(イソブテン)は、複分解反応ステップに先立って供給原料から除去してもよい。イソブチレンのエチレンとの反応は非生成的であり、それ自体および/または他のC4との反応は過剰エチレンの存在下において制限される。非生成的な反応は、本質的に、触媒部位を占めるが、どのような生成物も生成しない。複分解ユニットへの供給物内に残ることが許される場合には、この非反応性の種の濃度は蓄積し、容量の制限をもたらす。1−ブテンのエチレンとの反応も非生成的である。しかしながら、通常は、二重結合異性化触媒を複分解反応器内で用いて、1−ブタンを2−ブタンにシフトさせ、反応継続を可能にする。典型的な二重結合異性化触媒は、担持または非担持の塩基性金属酸化物(IIA族)を含む。酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムは、物理的に複分解触媒と混和してもよいそのような二重結合異性化触媒の例である。ノルマルブテンに対するイソブチレンの骨格異性化に対する等価な共触媒は存在しない。複分解触媒およびともに混合された(co-mixed)二重結合異性化触媒の両方を用いる従来の複分解系の場合においては、ブタジエンを500ppm未満のレベルまで除去して、二重結合異性化触媒の急速な付着を回避しなければならない。複分解触媒それ自体は、ブタジエンレベルを10,000ppmまで耐えることができる。
【0010】
ある場合においては、イソブチレン除去ステップを複分解の前に用いる。選択肢には、それをメタノールと反応させてメチル第3ブチルエーテル(MTBE)を生成すること、またはイソブチレンを分別法によってブテンから分離することが含まれる。米国特許第6,358,482号には、複分解の前にイソブチレンをC4混合物から除去することが開示されている。この機構は、さらに、米国特許第6,075,173号および5,898,091号に反映されている。米国特許第6,580,009号には、限られたエチレン分別物からプロピレンおよびヘキセンを生成する処理が開示されている。0.05〜0.60のエチレン対ブテンモル比(n−ブテンで表現される)に対して、本発明者らは抽残物II流れをC4供給原料として利用する。
【0011】
典型的な複分解処理は、抽残物I供給原料を取り、上記のようにイソブチレンの大部分を分別法を介して除去することにより、抽残物IIを形成する。このステップにおいては、イソブテンも、いくらかの量のノルマルブテンに加えて、分別法条件に依って、除去される。次いで、抽残物IIをエチレンと混和し、保護層(guard bed)を通過させ、気化し、予熱し、そして複分解反応器に供給する。操作条件は、典型的には、300℃および20〜30バール圧力である。熱回収に続く反応器排出物を、次いで、分別系において分離する。まず、エチレンを第1の塔においてオーバヘッドで回収し、反応器系に再循環させる。塔のボトムを、次いで、第2の塔に送り、そこで、プロピレンをオーバヘッドで回収する。未転化のC4成分の大部分を含んでサイドドローを取り、反応器に再循環させる。C5およびより重質の生成物にC4オレフィンおよびパラフィンを加えたものを含む塔のボトムをパージするよう送る。このパージ速度は、典型的には、十分なC4パラフィンを含むよう固定され、それらの反応器再循環流れにおける蓄積を回避する。ある場合においては、第3の塔を塔ボトム流れにおいて用いることにより、C4成分をオーバヘッドで分離し、C5およびより重質の成分をボトム流れとして分離する。
【0012】
米国特許第6,271,430号には、プロピレンの生成のための2ステップ処理が開示されている。第1のステップは、1−ブテンおよび2−ブテンを抽残物II流れにおいて自動複分解(auto-metathesis)反応で反応させることによりプロピレンおよび2−ペンテンを形成することからなる。生成物を、次いで、第2のステップにおいて分離する。第3のステップは、特に、2−ペンテンをエチレンと反応させることにより、プロピレンおよび1−ブテンを形成する。この処理は、イソブチレンのない抽残物II流れを利用する。再循環されエチレンと反応させるペンテンはノルマルペンテン(2−ペンテン)である。
【0013】
4流れからのイソブチレン除去は、さらに、組合された触媒蒸留水素異性化脱イソブチレン化部系を用いることにより、高い効率でのイソブチレンの除去およびn−ブテンの回収の両方を、1−ブテンを2−ブテンに公知の異性化触媒を用いて異性化し、したがって、揮発性差を増大させることにより行ない得る。この技術は、触媒蒸留塔内において、イソブチレン除去のための従来の分別法を、水素異性化と組合せる。Arganbrightに対する米国特許第5,087,780号においては、分別が生ずる中、2−ブテンを1−ブテンに水素異性化する。これは、混合物が分離されるにつれ、平衡量を超える1−ブテンが形成されることを可能にする。同様に、1−ブテンは、触媒蒸留塔において2−ブテンに水素異性化できる。イソブチレン、1−ブテン、および2−ブテン(にパラフィンを加えたもの)を含有するC4流れを分離する際、イソブチレンを1−ブテンから分離することは困難であり、なぜならば、それらの沸点は非常に近いからである。イソブチレンの分別で1−ブテンの2−ブテンへの同時水素異性化を用いることにより、イソブチレンをノルマルブテンから効率よく分離できる。
【0014】
上に記載の複分解反応は等モルであり、つまり、1モルのエチレンが1モルの2−ブテンと反応して2モルのプロピレンを生成する。しかしながら、商業的には、多くの場合、利用可能なエチレンの量は、利用可能なブテンの量に関して限られている。加えて、エチレンは高価な供給原料であり、使用されるエチレンの量を制限することが望まれる。エチレンのブテンに対する比が小さくされるにつれ、ブテンがそれら自体と反応する傾向がより大きくなり、それはプロピレンに対する全体的な選択性を低減する。
【0015】
複分解触媒および二重結合複分解触媒は触媒作用阻害物質に対して非常に敏感である。触媒作用阻害物質は、水、CO2、オキシジェネート(oxygenate)(たとえばMTBEなど)、硫黄化合物、窒素化合物、および重金属を含む。複分解反応系の上流において保護層を用いることにより、これらの触媒作用阻害物質の除去を確実にすることが慣例である。触媒作用阻害物質が除去され、かつ新たな触媒作用阻害物質がその後導入されなければ、これらの保護層は複分解反応系の直前にあるかまたはさらに上流にあるかは関係ない。
【0016】
複分解反応は、オレフィン二重結合の場所および個々の分子の三次元構造に対して非常に感度が高い。反応中、オレフィンの各対上の二重結合は相互に表面上においてもとのまま吸収し、二重結合位置を二重結合の両側の炭素基で交換する。複分解反応は、生成的、半生成的、または非生成的に分類される。上記のように、非生成的反応の結果は、本質的に、どのような反応も生じない。二重結合が複分解反応とともにシフトするとき、新たな分子は、当初吸収された分子と同じであり、したがって、生成的反応は生じない。これは、対称性オレフィン間の反応、またはエチレンとアルファオレフィンとの間における反応に対して典型的である。十分に生成的な反応が生じる場合、どのような配向で分子が部位を占めようとも、新たな生成物が生成される。2つのプロピレン分子を形成するエチレンと2−ブテンとの間の反応は十分に生成的な反応である。半生成的な反応は立体的に阻害される。オレフィンの対が1つの配向(典型的には、付着したR基に関するcis位置)において吸収する場合、二重結合がシフトすると、新たな生成物が形成される。代替的に、それらが異なる立体構成(trans位置)で吸収する場合には、結合がシフトすると、同一のオレフィンが形成され、したがって、新たな生成物は形成されない。さまざまな複分解反応がさまざまな速度で進行する(十分に生成的な反応は通常は半生成的な反応よりも速い)。表2には、エチレンとさまざまなブテンとの間の反応、およびブテンとそれら自体との間の反応がまとめられる。
【0017】
表2に挙げられる反応は、エチレンとのベース反応(反応1、4および5)ならびにさまざまなC4オレフィン間の反応を表わす。(イソブチレンを含む)全C4オレフィンからのプロピレンに対する選択性と、反応に関与するノルマルC4オレフィンからのプロピレンに対する選択性との間における区別をなすことが必要不可欠に重要である。イソブチレンの2−ブテンとの反応(反応6)は、プロピレンおよび枝分かれC5分子を生成する。この反応に関しては、プロピレンは、全C4からは50モル%の選択性で生成される(反応2と同様)が、ノルマルC4(2−ブテン)からは100モル%の選択性で生成される。定義のため、通常の複分解は、C4オレフィン流れのエチレンとの反応として定義する。しかしながら、C4流れは、エチレンが供給原料として存在しなくても反応できる。この反応は自動または自己複分解と呼ばれる。この場合、反応2、3、6および7が唯一可能な反応であり、供給原料組成に依存した速度で生ずることになる。
【0018】
【表2】

【0019】
通常の複分解では、焦点となるのは、反応1を最大限にしてプロピレンを生成することである。これはプロピレンに対する選択性を最大限にすることになる。したがって、過剰なエチレンを用いて、ブテンのそれら自体との反応の程度を低減する(反応2、3、6および7)。理論比はエチレン対n−ブテンの1/1モルまたは0.5重量比であるが、従来の複分解では、有意により大きな比、典型的には1.3以上のモル比を用いて反応2、3、6および7を最小限にすることが通常である。過剰なエチレンの条件下、ならびにイソブチレンおよび1−ブテンの両方がエチレンと反応しないという事実のため(反応4および5を参照のこと)、2つの処理手順を用いる。まず、イソブチレンを複分解の前に除去する。イソブチレンが除去されない場合、それは、ブテンが高い収量を達成するよう再循環されるにつれ、蓄積することになる。次に、複分解触媒と混和された酸化マグネシウムなどのような二重結合異性化触媒を含むことにより、1−ブテンを2−ブテンに異性化する。この触媒は(イソブチレンをノルマルブチレンに)骨格異性化を引起すことはなく、ノルマルブテンに対して二重結合を1位から2位にシフトするのみである。したがって、過剰なエチレンで操作を行ない、反応前にイソブチレンを複分解供給物から除去し、二重結合異性化触媒を用いることにより、反応1を最大限にする。しかしながら、イソブチレンを除去することにより、プロピレンまたは他の生成物の生成の可能性が失われることに注目されたい。
【0020】
新鮮なエチレンが限られているかまたは全くないとき(または利用可能なエチレンに対して過剰なブチレンがある場合)、現在では、プロピレン生成に関して利用可能な2つの選択肢がある。これらの場合において、第1の選択肢は、まずイソブチレンを除去し、次いで、どのようなエチレンが利用可能であれ、それとともにノルマルブテンを処理することになる。n−ブテンのみの混合物全体を、利用可能なエチレンを用いて複分解する。究極的には、利用可能な新鮮なエチレンがない場合には、C4がそれら自体と反応する(自動複分解)。低いエチレン条件下では、反応2、3、6および7が生ずることになり、すべて、より低いプロピレン選択性へと至る(反応1に対する100%に対し50%以下)。このより低い選択性の結果、より低いプロピレン生成がもたらされる。反応6および7は、イソブチレンの除去の結果、最小限とされることになる(低レベルではあるが必ずしも0ではない)。代替的に、エチレンおよびブテンのモル流れの一致が、ブテンの流れを制限することにより行なわれて、反応1を介したノルマルブテンのプロピレンに対する高い選択性がある状態を生じさせることができる。n−ブテンの流れをエチレンに一致するように制限することにより、プロピレンの生成は、低減されたブテンの流れにより制限される。
【0021】
ペンテンおよび一部のヘキセンが、従来の複分解の場合において、低いエチレンを用い、反応2および3を介して、ある程度まで形成される。これらの成分の量は、エチレン/n−ブテン比に依存することになり、より小さな比で、より多くのC5およびC6成分を生成する。イソブチレンが複分解前に除去される従来の先行技術例では、これらのC5およびC6オレフィンはノルマルオレフィンであり、なぜならば、骨格異性化は生じないからである。これらのオレフィンを再循環させて複分解ステップに戻し、そこにおいて、たとえば、エチレンおよび2−ペンテンの反応が生じて、プロピレンおよび1−ブテンを産生することが可能である。1−ブテンは回収され再循環される。しかしながら、エチレンが限られていると、反応1はエチレンの利用可能性の限度までにのみ生じ得ることに注意されたい。究極的には、これらの非選択的副産物、ペンテンおよびヘキセンは、系からパージされなければならない。
【0022】
米国特許第6,777,582号には、プロピレンおよびヘキセンを生成するオレフィンの自動複分解のための処理が開示されている。そこにおいては、複分解触媒の存在下において、混合されたノルマルブテン供給物の自動複分解を、複分解反応器に対する供給混合においてエチレンを伴わない状態で行なう。2−ブテン供給物の一部を1−ブテンに異性化してもよく、その形成された1−ブテンに供給物における1−ブテンを加えたものが2−ブテンと急速に反応して、プロピレンおよび2−ペンテンを形成する。反応器への供給物は、さらに、反応器で形成された2−ペンテンの、未反応のブテンとの再循環を含み、同時に、追加のプロピレンおよびヘキセンを形成する。反応において形成された3−ヘキセンは1−ヘキセンに異性化してもよい。
【0023】
米国特許第6,727,396号では、ブテン−1の複分解およびそこにおいて生成されたヘキセン−3のヘキセン−1への異性化によって、エチレンおよびヘキセン−1をブテン−1から生成する。最初の開始材料は、混合されたブテン流れであり、そこにおいては、ブテン−1はブテン−2に異性化され、イソブチレンはそれからは分離されており、それに続いて、ブテン−2のブテン−1への異性化が続き、ブテン−1は複分解への供給物である。
【0024】
米国特許第7,214,841号では、炭化水素分解処理からのC4カットは、プロピレンおよびペンテンを生成する反応を好み、イソブチレン除去前に、かつエチレンを添加することなく、まず、自動複分解を受ける。次いで、生成されたエチレンおよびプロピレンを除去して、C4およびより重質の成分の流れを残す。次いで、C5およびより重質の成分を除去して、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ならびにイソブタンおよびノルマルブタンの混合物を残す。次に、イソブチレンの除去を、好ましくは、触媒蒸留水素異性化脱イソブチレン化部によって行なう。次いで、イソブチレンのないC4流れと、自動複分解生成物から除去された生成物エチレンとの混合を、必要な任意の新鮮な外部のエチレンとともに行ない、従来の複分解を受けさせて、追加のプロピレンを生成する。
【0025】
4オレフィン流れの別の使用は、オレフィン分解処理に対する供給原料としてであり、そこにおいては、オレフィンをそれら自体と沸石触媒を介して反応させることにより、エチレン、プロピレンおよび芳香族化合物(ベンゼンなど)を含む混合物を生成する。複分解処理と同様に、パラフィンはこの分解処理においては不活性であり、パージ流れを介して当該処理から除去しなければならない。米国特許第6,307,117号および米国特許出願公開第20050080307号は双方ともそのような処理を記載している。典型的にはC4〜C6オレフィンおよびパラフィンの混合物を蒸発させて、結晶性沸石触媒を充填された反応器に供給して、450℃と600℃との間の温度で、10psiaと70psiaとの間の圧力にて動作させる。反応器排出物をまず圧縮ステップに送る。分解反応器系は、比較的低い圧力で動作し、分解反応器における触媒の付着を回避する。後の分離系における冷蔵によるエネルギコストを低減するため、圧力は、典型的には、12〜25bargの大きさの圧力に増大される。これにより、後の分別塔は、オーバヘッド凝縮ステップにおいて、冷蔵の代わりに冷却水を利用することができる。次いで、圧縮排出物を分離系に送り、そこにおいて、エチレンおよびプロピレンを芳香族化合物流れとともに回収する。エチレンおよびプロピレンはオーバヘッドで第1の塔において回収される。複分解とは異なり、これらの生成物は、十分な量のエタンおよびプロパンを含有し、この流れのさらなる精製が必要である。これは、さらなる分別によるか、またはオレフィンプラントなどのような近接する設備の回収系を利用することにより、達成できる。塔のボトムはC4、C5およびC6+パラフィンおよび芳香族化合物を含有する。これは第2の塔に送られる。オーバヘッドはC4/C5流れであり、高い芳香族C6+流れはボトム生成物である。未転化のC4およびC5生成物は典型的には再循環される。分解処理は、イソオレフィンおよびノルマルオレフィンの両方を等価な効率で取扱うことができる。プロピレン生成を最大限にするのに、イソブチレンをたとえば供給物から除去する必要はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上に記載されるように、C4、C5およびより重質のオレフィン流れを処理することによりプロピレンなどのようなより軽質のオレフィンを生成することにおいてはかなりの関心がある。したがって、そのようなオレフィン含有流れから低コストおよび低エネルギで高純度プロピレンを生成する結果となるであろう処理に対し、大きなニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
1つの局面において、ここに開示される実施の形態は、プロピレンの生成のための処理に関し、この処理は、n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含有する炭化水素流れを、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンおよびパラフィンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップと、重質C4分別物の少なくとも一部を複分解触媒と接触させることにより、エチレン、プロピレン、C4+オレフィン、およびパラフィンを含む複分解生成物を形成するステップと、複分解生成物を、エチレン分別物と、プロピレン分別物と、C4オレフィンおよびパラフィンを含むC4分別物と、C5+分別物とを含む少なくとも4つの分別物に分別するステップと、軽質C4分別物およびC5+分別物を分解することにより、エチレン、プロピレンおよびより重質の炭化水素を含む分解生成物を生成するステップと、分解生成物を、プロピレンを含む軽質分別物とC5〜C6炭化水素を含む分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップとを含む。
【0028】
別の局面において、ここに開示される実施の形態は、プロピレンの生成のための処理に関し、この処理は、n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含む混合されたC4流れを複分解触媒と接触させ、それによって、イソブチレンのn−ブテンとの反応を含む自動複分解が生ずることにより、エチレン、プロピレン、ならびに未反応のイソブチレンおよびパラフィンを含むより重質のオレフィンを含む自動複分解生成物を形成するステップと、自動複分解生成物を、エチレン分別物、プロピレン分別物、C5+分別物、ならびにn−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含むC4分別物を含む少なくとも4つの分別物に分別するステップと、C4分別物を、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンおよびパラフィンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップと、重質C4分別物の少なくとも一部およびエチレンを複分解触媒と接触させることにより、エチレン、プロピレン、C4+オレフィン、およびパラフィンを含む複分解生成物を形成するステップと、複分解生成物を、自動複分解生成物を分別するステップに供給するステップと、C5+分別物を分解することにより、エチレン、プロピレン、およびより重質の炭化水素を含む分解生成物を生成するステップと、分解生成物を、プロピレンを含む軽質分別物とC5〜C6炭化水素を含む分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップとを含む。
【0029】
他の局面および利点は以下の記載および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ここに開示される実施の形態に従ってプロピレンを生成するための処理の単純化された処理流れ図である。
【図2】ここに開示される実施の形態に従ってプロピレンを生成するための処理の単純化された処理流れ図である。
【図3】ここに開示される実施の形態に従ってプロピレンを生成するための処理の単純化された処理流れ図である。
【図4】比較複分解処理の流れ図である。
【図5】比較分解処理の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1つの局面において、ここに開示される実施の形態は、エチレンおよびプロピレンなどのようなより軽質のオレフィンを形成するC4〜C6炭化水素の処理に関する。別の局面において、ここに開示される実施の形態は、統合された複分解および分解処理を介したC4〜C6オレフィンのエチレンおよびプロピレンへの転化に関する。より具体的には、ここに開示される実施例は、混合されたC4流れを分別して、イソブチレンを含む軽質C4分別物および2−ブテンを含む重質C4分別物を形成し、2−ブテンをその重質C4分別物において複分解し、そして、その後、軽質C4分別物およびC5+複分解生成物を含む組合された流れを分解することにより、プロピレンを高収量で生成することに関する。
【0032】
別の局面では、ここに開示される実施の形態は、C4供給原料をエチレンを伴わずに自動複分解することにより、エチレン、プロピレン、未反応のC4オレフィン、C4パラフィンならびにC5/C6のノルマルオレフィンおよびイソオレフィンを含む反応排出物を形成することに関する。いくつかの実施の形態では、イソブチレンは、自動複分解反応への供給原料からは除去されない。反応器排出物をまず分別して、軽質エチレンおよびプロピレン生成物を回収する。残りの排出物は、継続される分別を受け、C4生成物がオーバヘッドで回収され、ならびにC5およびより重質の流れが回収される。C4オーバヘッド流れを分別することにより、イソブチレンおよびイソブテンを含む軽質C4分別物、ならびにほとんどノルマルブテンおよびノルマルブタンを含む重質C4流れを形成する。重質C4流れを、エチレンと混和し、複分解を受けさせる。この複分解反応の生成物を最初の自動複分解反応の生成物と混合して、通常の分離系に進む。C5およびより重質の流れの一部またはすべてを、C4分別塔からのオーバヘッドの一部またはすべてとともに、分解反応器に供給する。分解反応器からの排出物は、エチレン、プロピレンおよび芳香族化合物を含有する。
【0033】
他の実施の形態では、分解反応からの軽質ガスを、複分解反応系の分離領域に送ってもよい。この態様では、分解反応部において生成されたエチレンを用いて、複分解反応のために追加のエチレンを提供してもよく、必要とされる供給エチレンを低減または最小限にしてもよい。
【0034】
ここに開示される処理への混合されたC4供給物は、蒸気分解器または流動接触分解(FCC)ユニットからなどのような、C4、C4〜C5、およびC4〜C6分解器排出物を含む、C3〜C6+炭化水素を含んでもよい。さらに、C4オレフィンの混合物を含有する他の精製所炭化水素流れを用いてもよい。C3、C5および/またはC6成分が供給物に存在する場合、流れを予め分別することにより、その結果、一次C4カット、C4〜C5カット、またはC4〜C6カットをもたらしてもよい。
【0035】
供給物流れに含まれるC4成分は、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、およびブタジエンを含んでもよい。いくつかの実施の形態では、混合されたC4供給物を前処理することにより、複分解反応のための1−ブテン供給物を提供する。たとえば、ブタジエンがC4供給物に存在する場合、ブタジエンを水素添加または抽出を介して除去してもよい。他の実施の形態では、ブタジエン水素添加に続くかまたはそれと関連する混合されたブテン供給物を水素異性化条件の対象として、1−ブテンを2−ブテンに転化し、イソブチレンを分別により2−ブテン流れから分離してもよい。次いで、2−ブテン流れを、ここに開示される処理の複分解部に対する供給物として用いるために、後のステップにおいて異性化して1−ブテンに戻してもよい。
【0036】
次いで、1−ブテンを複分解触媒と接触させることにより、1−ブテンの少なくとも一部を、エチレン、プロピレン、およびC5〜C6複分解生成物に転化してもよい。いくつかの実施の形態では、1−ブテンに自動複分解を受けさせてもよく、他の実施の形態では、従来の複分解を受けさせてもよく、その場合、エチレンが複分解反応器に1−ブテンと共に供給される。
【0037】
複分解反応器は、ある実施の形態においては2気圧と40気圧との間の圧力で動作してもよく、他の実施の形態では5気圧と15気圧との間で動作してもよい。複分解反応器は、反応温度が約50℃〜約600℃の範囲内;他の実施例では約200℃〜約450℃の範囲内;およびさらに他の実施の形態では約250℃〜約400℃の範囲内であるように動作させてもよい。複分解反応は、ある実施の形態では約3〜約200の範囲、他の実施の形態では約6〜約40の範囲の重量空間速度(WHSV)で実行されてもよい。
【0038】
反応は、オレフィンを、オレフィンの構造および分子量に依って、液相または気相において複分解触媒と接触させることにより行なってもよい。反応が液相で実行される場合、反応のための溶剤または希釈剤を用いることができる。脂肪族飽和炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカンならびにベンゼンおよびトルエンのような芳香族炭化水素が好適である。反応が気相において行なわれる場合、飽和脂肪族炭化水素、たとえば、メタン、エタン、および/または実質的に不活性の気体、たとえば窒素およびアルゴンなどのような希釈剤が存在してもよい。高い生成物収量のために、反応を、水や酸素などのような非活性化材料が有意な量で存在しない状態で行なってもよい。
【0039】
複分解反応生成物の所望の収量を得るために必要とされる接触時間は、触媒の活性度、温度、圧力、および複分解されるべきオレフィンの構造などのようないくつかの要因に依存する。オレフィンを触媒と接触させる時間の長さは、0.1秒と4時間との間、好ましくは約0.5秒〜約0.5時間で、都合よく変動し得る。複分解反応は、バッチ状で行なってもよく、または固定された触媒床、スラリー化された触媒、流動化された床で連続的に行なってもよく、または任意の他の従来の接触技法を用いて行なってもよい。
【0040】
複分解反応器内に含まれる触媒は、VIA族およびVIIA族金属の酸化物を担持物上に含む、任意の公知の複分解触媒であってもよい。触媒担持物は任意の種類のものであり得、アルミナ、シリカ、それらの混合物、ジルコニア、およびゼオライトを含み得る。複分解触媒に加えて、複分解反応器に含まれる触媒は、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムなどのような二重結合異性化触媒を含んでもよい。ある実施の形態では、触媒は、酸性度を低減する促進剤;たとえばアルカリ金属(ナトリウム、カリウムまたはリチウム)、セシウム、希土類などを含んでもよい。
【0041】
複分解反応器からの排出物を分離系に送って、複分解排出物を、当該技術分野において周知の技術により、炭素数のグループに分離してもよい。たとえば、分離系の生成物は、エチレン流れ、プロピレン流れ、C4流れ、およびC5+流れを含んでもよい。プロピレン流れは生成物流れとして回収されてもよく、それは、さらに、さらなる精製ステップを経て、高純度プロピレン生成物を得てもよい。C4流れを再循環させて、複分解反応器または前処理段、たとえば異性化または分別などに戻してもよい。エチレン流れは、生成物流れとして回収してもよく、または再循環させて、従来の複分解反応のためのエチレン供給原料としての使用のために複分解反応器に戻してもよい。
【0042】
複分解反応器排出物の分離から回収されたC5+分別物は、混合されたC4カットの前分離の結果からの軽質C4分別物に含まれるようなイソブテンと組合され、そして分解ユニットに供給されて、追加のエチレンおよびプロピレンを生成してもよい。ある実施の形態では、C4〜C6カットの前分別の結果もたらされて複分解ブテン供給物をもたらす結果となるような追加のC5および/またはC6分別物を、さらに、分解ユニットに供給してもよい。分解ユニットでは、混合された供給物を、C4〜C6炭化水素を分解して特にエチレンおよびプロピレンを形成するのに十分な、150℃〜約1000℃の範囲の温度に加熱してもよい。分解は、熱分解、蒸気分解、接触分解、またはそれらの組合せを用いて行なってもよい。ある実施の形態では、分解は触媒によるものであり、結晶性沸石触媒の存在下で行なわれる。
【0043】
分解反応器は、ある実施の形態では1気圧と20気圧との間の圧力で動作してもよく、他の実施例では2気圧と110気圧との間の圧力で動作してもよい。分解反応器の動作は、反応温度が約150℃〜約1000℃の範囲内;他の実施例では約300℃〜約800℃の範囲内;およびさらに他の実施の形態では約450℃〜約600℃の範囲内であるように動作させてもよい。分解反応器は、ある実施例では結晶性沸石触媒の存在下で行なってもよく、他の実施例ではZSM−5沸石触媒の存在下で行なってもよく、ある実施例ではZSM−5沸石触媒が、Si/Al比が50を超える状態で存在する状態で行なってもよく、他の実施の形態では、Si/Al比が200を超える状態で行なってもよい。
【0044】
分解反応器からの排出物を分離系に送って、複分解排出物を、当該技術分野において周知の技術により、炭素数のグループに分離してもよい。たとえば、分解ユニットの生成物は、エチレン、プロピレン、C4流れ、C5およびCならびにさまざまな芳香族化合物を含んでもよい。エチレンは、分離系から生成物として回収してもよく、または従来の複分解反応のためのエチレン供給原料として複分解反応器に再循環させてもよい。プロピレンは、生成物流れとして回収されてもよく、それは、さらに、複分解プロピレン流れとともにさらなる精製ステップを経て、高純度プロピレン生成物を得てもよい。C4流れを再循環させて、複分解反応器、複分解反応器の上流側の前処理段、または分解ユニットに戻してもよい。同様に、C5およびC6分別物を、前分別、複分解ユニット、または分解ユニットに再循環させてもよい。
【0045】
上記のような複分解と分解との統合の結果、分解または複分解単独と比較して、追加的なプロピレンの収量をもたらす結果となり得る。たとえば、ここに開示される実施の形態に従う処理は、複分解単独と比較して10%以上の追加のプロピレンを、他の実施の形態においては追加的な15%のプロピレンを、さらに他の実施の形態では複分解単独と比較して追加的な20%のプロピレンを産し得る。代替的に、複分解および分解の統合の結果、低減された量のエチレン供給原料を用いながらも、同様の量のプロピレン生成物をもたらし得る。
【0046】
ある実施の形態では、自動複分解および従来の複分解の両方を行なってもよい。たとえば、最初の自動複分解ステップを意図的に利用してもよく、そこにおいては、イソブチレンをノルマルブテンと反応させてもよく、イソブチレン転化は50%または60%に達し得る。イソブチレンと1−ブテンとの反応からの生成物はエチレンおよび2−メチル2−ペンテンを含んでもよく、一方、2−ブテンとの生成物はプロピレンおよび2−メチル2−ブテンを含んでもよい。これらの自動複分解反応を、第2の従来の複分解反応系および修正された分別/イソブチレン除去手順との組合せで用い、その結果、全ブテン流れから所望のエチレンおよびプロピレン生成をもたらしてもよい。
【0047】
ある実施の形態では、従来の複分解反応器へのオレフィン供給物は、本質的に純粋なノルマルブテンを含んでもよい。これは、1−ブテンと2−ブテンとの任意の混合物であり得、さらに、C4パラフィンを供給物希釈剤として含んでもよい。ある実施の形態では、供給物混合物における組合されたオレフィン量に基づいたイソブテン含有量は、10%未満であってもよく、他の実施の形態では5%未満であってもよく、他の実施の形態では2%未満であってもよく、さらに他の実施の形態では1%未満であってもよい。
【0048】
他の実施の形態では、前分別段におけるイソブテン分離規格を緩和してもよく、それによって、複分解反応器に対するエチレン供給物に対してなんらかの柔軟性を可能にしてもよい。たとえば、混合されたC4供給物における約15%までのイソブテン濃度のような、あるイソブテンを複分解反応器に供給することは、分別要件が低減されるにつれ、全体のエネルギコストにおける低減を可能にする。この柔軟性は、緩和された分離要件のため、より少ない資本コストを可能にし、およびここに開示される実施の形態に従う統合された複分解−分解処理が、低い正味エチレン消費量で、または正味エチレン消費量が全くない状態で行なわれる可能性を可能にする。ある実施の形態では、従来の複分解反応器供給物におけるエチレン対ブテン比は約0.1〜約2.5の範囲であってもよい。他の実施の形態では、従来の複分解反応器供給物におけるエチレン対ブテン比は、約0.8〜約2.0の範囲であってもよく、さらに他の実施の形態では約1.5〜約2.0の範囲であってもよい。
【0049】
ここで図1を参照して、ここに開示される実施の形態に従ってプロピレンを生成するための処理の単純化された処理流れ図が示される。n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含有する混合されたC4流れを、フローライン10を介して分別器12に供給してもよく、そこで、C4を、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別してもよい。軽質C4分別物は分別器12からオーバヘッド分別物としてフローライン14を介して回収されてもよい。分別器12は、従来の分別塔であってもよく、または触媒蒸留分別塔であってもよく、そこにおいては、触媒を利用して1−ブテンを2−ブテンに異性化し、ブタジエンを1−ブテンまたは2−ブテンに水素化し、一方で、同時に、C4流れを軽質C4分別物および重質C4分別物に分離する。
【0050】
重質C4分別物は、ボトム分別物としてフローライン16を介して回収され、複分解反応器18に供給されてもよい。使用の際、エチレンを、フローライン20および/または22を介して反応器18にともに供給してもよい。複分解反応器18は、ともに供給されるエチレンがある状態またはない状態で、重質C4分別物における線状ブテンの少なくとも一部をエチレンおよびプロピレンに転化することに対して好適な、異性化機能を伴うかまたは伴わない従来の複分解または自動複分解触媒からなる1つ以上の床24を含んでもよい。
【0051】
複分解反応器18からの排出物は、フローライン26を介して分離系28に供給されてもよく、分離系28は、たとえば、排出物を炭素数のグループに分離するための蒸留装置を含んでもよい。示されるように、分離系28は、複分解生成物を、フローライン30を介して回収されるエチレン含有分別物と、フローライン32を介して回収されるプロピレン含有分別物と、フローライン34を介して回収されるC4分別物と、フローライン36を介して回収されるC5+分別物とを含む、少なくとも4つの分別物に分別してもよい。C5分別物36は、C5およびより重質の成分に加えて、C4成分を含有してもよい。
【0052】
フローライン30を介して回収されるC2分別物の一部はフローライン38を介して系からパージされてもよい。ライン38からのパージを利用して、主に、水素、メタンおよび/またはエタンを含むがそれには限定されない、エチレン流れに存在するかもしれない微量の成分をパージする。所望される場合には、フローライン30を介して回収されるエチレンの一部を、エチレン供給物としてフローライン22を介して複分解反応器18に再循環させてもよい。
【0053】
フローライン34を介して回収されるC4分別物は、フローライン40を介して複分解反応器18に再循環させてもよい。ある実施の形態では、C4分別物の少なくとも一部を、フローライン41を介して分別器12に再循環させてもよい。ある実施の形態では、C4分別物の一部を、必要であればフローライン42を介してパージしてもよい。ライン42を介するパージは、再循環が増大するに伴い実質的なレベルにまで蓄積するかもしれないC4パラフィンを系からパージするよう働いて、C4オレフィンの高い全体的な転化を可能にしてもよい。典型的には、流れ34は、系内におけるパラフィンの再循環蓄積の結果として、30%と60%との間のパラフィンを含んでもよい。
【0054】
示されてはいないが、フローライン34を介して回収されるC4分別物は、代替的に、以下に記載されるように、下流側の分別ユニットに供給されてもよい。
【0055】
イソブチレンを含む、フローライン14における軽質C4分別物、およびフローライン36を介して回収されるC5+分別物は、分別ユニット44に供給されてもよい。加えて、C4〜C6カット(図示せず)の前分別からなどのような、追加のC5および/またはC6成分を、フローライン46を介して分解ユニット44に供給してもよい。分解ユニット44では、炭化水素に、上記のように、上昇した温度を受けさせることにより、炭化水素を分解して、特に、プロピレンおよびエチレンを形成する。
【0056】
分解ユニット44からの排出物は、フローライン48を介して分離系50に供給されてもよく、分離系50は、たとえば、排出物を炭素数のグループに分離するための蒸留装置を含んでもよい。分離系50は、分解生成物を、たとえば、プロピレンを含む軽質分別物、ならびにC5およびC6炭化水素を含む重質分別物など、少なくとも2つの分別物に分別してもよい。示されるように、分離系50は、分解生成物を、フローライン52から回収されるエチレン含有分別物と、フローライン54から回収されるプロピレン含有分別物と、フローライン56から回収されるC4+分別物とを含む、少なくとも3つの分別物に分別してもよい。必要であれば、C4+分別物は、さらに、C4分別物、C5〜C6分別物、および芳香族化合物分別物に分離されてもよい。C4+分別物の一部は分別器12に再循環されてもよい。代替的に、C5〜C6炭化水素のようなC4+分別物の一部を、フローライン60を介して分解ユニットに再循環させてもよく、ある実施の形態では、芳香族化合物のようなC4+分別物の一部を、フローライン62を介してパージしてもよい。
【0057】
ある実施の形態では、エチレン含有流れ52は、複分解反応器18におけるC4オレフィンとの反応のために、複分解反応系に対してでもよい。他の実施の形態では、流れ54におけるプロピレンを、流れ32におけるプロピレンと混和することにより、プロピレン生成物を形成してもよい。さらなる実施の形態では、分離系50は、混合されたエチレン/プロピレン流れを、別々の流れ52および54の代わりに生成してもよい。混合されたエチレン/プロピレン流れは、次いで、複分解反応器排出物26と混和することにより、通常のエチレンおよびプロピレン分別系を分離系28内において利用し、したがって、資本コストおよび用役コストを低減できるかもしれない。
【0058】
ここで図2を参照して、この図においては、同様の参照符号は同様の部分を表わしており、ここに開示される実施の形態に従ってプロピレンを生成するための処理の単純化された処理流れ図が示される。この実施の形態では、ノルマルブテンおよびイソブチレンの両方をパラフィンとともに含有する混合されたC4供給原料70が、自動複分解触媒からなる少なくとも1つの床74を含む自動複分解反応器72に供給される。ブテンおよびイソブチレンの自動複分解触媒との接触によって、プロピレンならびにn−ペンテン/ヘキセンおよびイソペンテン/ヘキセンの両方を生成してもよい。重要なことに、イソブチレンが存在する程度まで、n−ブテンからのプロピレンの選択性は、表2に示されるように、100%と同じぐらい高くてもよい。さらに、自動複分解から生成される程度にまで、自動複分解排出物におけるエチレンは、従来の複分解ユニット18における使用に関して、フローライン30を介する再循環に対して利用可能であってもよい。
【0059】
自動複分解反応に続いて、自動複分解反応器72からの排出物は、フローライン76を介して、反応器18からフローライン26を介して回収された従来の複分解排出物とともに、分離ユニット28に供給されて、表1に関して記載されるような炭素数分別物を生成してもよい。
【0060】
分離系28においては、C4分別物は、未反応のC4オレフィンおよび混合された供給物70において見出されるすべてのC4パラフィンを含有する。組成は、自動複分解反応器72におけるオレフィンの反応のため、かなり変化している。この流れは分別器12に送られる。分別器12では、C4流れは、ライン14を介して回収され、未反応のイソブチレン、イソブテンならびにノルマルブテンおよびノルマルブタンのいくらかの分別物を含有する軽質C4分別物と、ライン16を介して回収され主にノルマルブテンおよびノルマルブタンを含有する重質C4分別物とに分離される。流れ77は、複分解系からのパラフィンのパージを可能にし得る。分別器12からの重質C4分別物は、ライン16を介して複分解反応器18に向けられる。この流れは、ライン20またはライン22を介してエチレンと混和されてもよい。大量のC4オレフィンが自動複分解反応器72において反応しているので、複分解反応器18に対する等価なエチレン/ブテン比を維持するのに、かなり低減された量のエチレンがライン20または22を介して添加されるよう必要とされる。
【0061】
分離ユニット28から回収されるC5分別物は、ペンテンおよびヘキセン(イソおよびノルマルの両方)を含有することになる。この分別物は、図1に対して記載されるように、ライン36を介して分解反応器44に供給されてもよい。この流れは、ライン34に対する場合のように実質的な量のC4パラフィンを含まないことになる。複分解反応を用いることにより、ならびにC5およびC6オレフィンをC4オレフィンの反応から生成することにより、処理は、反応を用いて、パラフィンを、分解反応系44に入る前に、オレフィンから分離している。上で論じられるように、分解反応系は、低圧で動作し、圧縮ステップを用いて、反応器に続く生成物の経済的な分離を達成しなければならない。パラフィンが供給原料に含まれる程度にまで、これらは、圧縮用役および資本コストを大きく増大させることになる。未反応のオレフィンはライン60を介して分解反応器に再循環して戻されるので、パラフィンの濃度は蓄積され、圧縮は劇的に増大する。複分解反応系を分解反応器系と統合することによって、パラフィンを、圧縮器に対向するものとしてのポンプを用いながら、複分解系のより高い圧力で効果的に除去することができ、したがって、系の全体の用役が劇的に減じられる。これは、図1の統合および図2の統合の両方にいえることである。
【0062】
図1に対して記載されるように、分離系28からのエチレン流れ52および/またはプロピレン流れ54は、自動複分解/複分解反応器系に対する分離系と統合できる。
【0063】
ある実施の形態では、ライン70を介して系に入るC4供給物のすべてに対向するものとして、追加の新鮮な混合されたC4供給物が、系に対して、分別器12において、フローライン78を介するなどして導入されてもよい。反応器18および分離系28に入る前にライン77を介してこのようにパージされるであろう高濃度のパラフィンを含有することは、この流れの特徴であろう。
【0064】
ある実施の形態では、C5およびより重質の成分は、分別器12に供給される混合されたC4分別物とともに残るよう許されてもよい。自己複分解ステップにおいて形成されるイソペンテンを、その後、従来の複分解反応器においてエチレンと反応させることが考えられる。イソブチレンは、供給物エチレンおよび/または生成物プロピレンとの反応によって、再形成されるであろう。しかしながら、ノルマルペンテンが従来の複分解へと通過することを許される程度にまで、それらは反応してプロピレンおよびノルマルブテンを形成し、それは望ましい反応である。この時点において、n−ブテン、イソブチレン、ならびにイソブタンおよびノルマルブタンの両方およびいくらかのC5およびより重質の材料の混合物がある。
【0065】
図3に示されるように、ある実施の形態では、未反応のノルマルブテン(1−ブテンおよび2−ブテン)および任意の未反応のイソブチレンを含有する混合されたC4流れ40を脱イソブチレン化部80に供給してもよい。脱イソブチレン化部80は、たとえば、ここに引用により援用される米国特許第5,080,780号および第7,045,669号に記載されるように、1−ブテンの2−ブテンへの水素異性化および2−ブテンのイソブチレンからの分離を同時に行なうための反応性蒸留コラム82を含んでもよい。
【0066】
以下の実施例は、複分解反応器系と分解反応器系との統合が有する独自で予期せぬ利点を示す。この統合は、反応を介してC4パラフィンをC4オレフィンから分離することにより、分解反応器系の用役を低減してもよい。さらに、この統合は、同様の量またはより大量のプロピレンが、同様の量またはより少ない量の高価なエチレン供給原料で、混合されたC4流れから生成されることを可能にしてもよい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、技法をモデル化することから導き出される。作業は既に行なわれたものであるが、本発明者らは、適用可能な規則に従うべく、これらの実施例を過去時制では表現しない。
【0068】
各シミュレーション研究について、オレフィン供給物は100kg/hである。混合されたブテン供給物組成は、n−ブテンと混合された15%イソブテンを含み、n−ブタンは、シミュレーションされる供給物には含まれない。分解シミュレーションのため、イソブテンをC4イソ−オレフィンとして用い、2−メチル2−ブテンをイソ−ペンテンに対するモデル供給物として用い、2−メチル2−ペンテンをイソ−ヘキセンに対するモデル供給物として用い、1−ヘキセンをn−C6供給物に対するモデル供給物として用いる。
【0069】
分解器のシミュレーションのため、転化反応器を用いる。オレフィン分解に対する生成物分布は、"Cracking of pentenes to C2-C4 light olefins over zeolites and zeotypes: Role of topology and acid site strength and concentration," Bortnovsky et al., Applied Catalysis A: General, 287, 2005, 203-213)から得られる。ZSM−5を触媒として用いる分解反応に対する典型的な生成物分布を表3に示す。与えられる実施例は、2−メチル2−ブテンの分解に対する。表3は、さらに、分解器をシミュレーションする転化反応器において用いられるであろう対応の反応化学量論を与える。
【0070】
【表3】

【0071】
比較例1:ベースライン従来複分解
ある従来の複分解処理をシミュレーションする。C4供給物402におけるイソブテン400を分離器404を介して除去した後、該供給物を従来の複分解反応器406に送る。エチレン408を複分解反応器406に或る割合で供給することにより、従来の複分解反応器406への入口におけるエチレン対n−ブテンモル比を1.8(38.5kg/hエチレン供給)に維持する。96%の全体C4利用率および94%の全体C2利用率を用いて複分解反応器排出物410をシミュレーションし、それを、次いで、C2およびC4パージならびに再循環流れ420、422、424、および426を伴う状態で、C2412、C3414、C4416およびC5+418に分離する。シミュレーションの詳細および結果を表4に示す。従来の複分解、自動複分解および分解で生成されたプロピレンは、112.4kg/hである。
【0072】
【表4】

【0073】
実施例1
図1に示されるものと同様の処理を示す。エチレン対n−ブテン比は1.79に保たれた。それぞれ96%および94%のC4利用率およびC2利用率を用いて複分解反応器18をシミュレーションする。フローライン46を介する分解器44に対しての追加のC4+供給物は供給されず、分解器C4を分別器12に再循環させる。このシミュレーションの詳細および結果を表5に示す。従来の複分解および分解で生成されたプロピレンは、128.2kg/hである。
【0074】
【表5】

【0075】
実施例1は、比較例1の従来の複分解処理を超えて追加の14%のプロピレンを生成し得ることを示す。分解および複分解を含む統合された処理は、従来の複分解において生成されるイソブチレンおよびC5/C6生成物の追加処理を可能にして、追加のプロピレンを生成し、その結果、処理からのC5/C6材料のパージの低減をもたらす。分解器は、少量の芳香族化合物を追加的に生成する(1.7kg/h)。
【0076】
実施例2
実施例2も、図1に示される処理と同様の処理をシミュレーションし、そこにおいては、分解器からの再循環流れをフローライン60を介して分解器に送り戻し、分解器からの再循環は分別器12には送られない。エチレン対n−ブテン比は1.79に維持される。それぞれ96%および94%のC4利用率およびC2利用率を用いて複分解反応器18をシミュレーションする。フローライン46を介する分解器44に対しての追加のC4+供給物は供給されず、分解器C4を分別器12に再循環させる。このシミュレーションの詳細および結果を表6に示す。従来の複分解および分解で生成されたプロピレンは、124.6kg/hである。
【0077】
【表6】

【0078】
実施例2は、比較例1の従来の複分解処理を超えて追加の11%のプロピレンを生成し得ることを示す。実施例1のフロースキームと比較して、分解器再循環が分解器に戻されるとき、プロピレン生成割合には3%の減少がある。
【0079】
実施例3
この実施例に対する処理構成は、実施例1と同じであるが、以下の相違点を伴う。エチレン対n−ブテン比は、実施例1の1.8と比較して1.0に維持され、混合されたC4供給物におけるイソブテンの約50%が、分別器12を通過して従来の複分解反応器18に到達することを許される。これらの供給物変更は、複分解反応器の上流側の脱イソブチレン化部における規格を緩和する。加えて、イソブテンは、複分解によるプロピレン生成において、エチレンの半分ほどの生産性であり、結果として得られる枝分かれC5オレフィン(2−メチル2−ブテン)を、フローライン36を介して分解器44に送ることにより、追加的な軽質オレフィンを生成してもよい。このシミュレーションの詳細および結果を表7に示す。従来の複分解および分解で生成されたプロピレンは、117.1kg/hである。
【0080】
【表7】

【0081】
実施例3の処理条件は、実施例1および実施例2と比較して、プロピレン生成においてわずかな減少をもたらす結果となる。しかしながら、エチレン消費の減少およびより厳密でないC4分離という追加の恩恵を認識することは重要である。
【0082】
実施例4
この実施例の処理構成は実施例1と同じであるが、ただし以下の相違点がある。従来の複分解反応器18の入口におけるエチレン対n−ブテン比は、処理における正味のエチレン消費がないよう、つまり従来の複分解反応器に供給されるエチレンの量が分解器において生成されるエチレンと同じであるよう調整される。加えて、実施例3におけるように、抽残物におけるイソブテンの約50%を、従来の複分解反応器18に通過させる。このシミュレーションの詳細および結果を表8に示す。従来の複分解および分解で生成されたプロピレンは、83.3kg/hである。
【0083】
【表8】

【0084】
実施例4は、より低いプロピレン生成をもたらす結果となる一方、実施例4は、エチレン供給流れに対する必要性を伴わず、かつより厳密でないイソブチレン分離規格を伴って動作するという利点を提供する。実施例3および実施例4は、統合された精製装置および非統合精製装置の両方に対して好適な変動した供給要件に対応するようここに開示される実施の形態に従って処理の柔軟性を示す。
【0085】
比較例2:独立型分解器
異なる供給物を用いながら、図5に示されるそれと同様に、独立型分解器に対してシミュレーションを行なう。用いられる供給物は:
a) C4抽残物(n−ブテンおよびイソブテンを代表する)、
b) 2−メチル2−ブテン(イソペンテンを代表する)、
c) 1−ヘキセン(n−ヘキセンを代表する)、および
d) 2−メチル2−ペンテン(イソヘキセンを代表する)、を含む。
【0086】
分解器500への供給物はフローライン502を介して供給され、排出物504を上記のように計算する。結果として得られる排出物504を次いで分離することにより、C2/C3分別物506、C4〜C6分別物508、および芳香族化合物分別物510を生成する。C4〜C6分別物の一部は、フローライン512を介してパージしてもよい。上記供給物a〜dのシミュレーションの結果を表9に示す。
【0087】
【表9】

【0088】
これらの結果は、異なるオレフィンからのプロピレン生成の割合は非常に類似していることを示す。各分解器例における有意な相違点は、分解器再循環割合は実質的である、という点である。ケースa〜dの各々において、分解器再循環割合は、供給物流量の約3.9倍である。対照的に、実施例1〜4に示されるような、ここに開示される実施の形態に従う処理に対する再循環割合は8〜52kg/hの分解器再循環割合を示し、比較例2a〜2dの2〜13%再循環の範囲である。
【0089】
実施例5
自動複分解および従来の複分解の両方を含む、図3に示されるものと同様の処理をシミュレーションする。エチレン対n−ブテン比は、上記の実施例4と同様に、0の正味のエチレン消費をもたらす結果となるよう調整される。それぞれ96%および94%のC4利用率およびC2利用率を用いて複分解反応器18をシミュレーションする。このシミュレーションの詳細および結果を表10に示す。従来の複分解、自動複分解および分解で生成されたプロピレンは、83.4kg/hである。
【0090】
【表10】

【0091】
上に記載されるように、ここに開示される実施の形態は、C4〜C6供給物の統合された複分解および分解を可能にする。分解器の複分解処理への統合は、明らかに、プロピレン収量利点を示す。処理変形例を利用して、他の利点も認識され、その場合においては、ここに開示される処理の柔軟性により、限られたエチレン供給を有する精製装置に対して、大きなコスト面での利点が与えられるであろう。加えて、ここに開示される実施の形態に従う処理は、低コストおよび低エネルギ消費で高純度プロピレンをC4オレフィンから生成することを可能にするだろう。
【0092】
本開示はある限られた数の実施の形態を含むが、この開示の恩恵を受ける当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施の形態が工夫されてもよいことを理解する。したがって、範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンの生成のための処理であって、
n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含有する炭化水素流れを、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンおよびパラフィンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップと、
前記重質C4分別物の少なくとも一部を複分解触媒と接触させることにより、エチレン、プロピレン、C4+オレフィン、およびパラフィンを含む複分解生成物を形成するステップと、
前記複分解生成物を、エチレン分別物と、プロピレン分別物と、C4オレフィンおよびパラフィンを含むC4分別物と、C5+分別物とを含む少なくとも4つの分別物に分別するステップと、
前記軽質C4分別物および前記C5+分別物を分解することにより、エチレン、プロピレンおよびより重質の炭化水素を含む分解生成物を生成するステップと、
前記分解生成物を、プロピレンを含む軽質分別物とC5〜C6炭化水素を含む分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップとを含む、処理。
【請求項2】
4オレフィンおよびパラフィンを含む前記C4分別物の少なくとも一部を、混合されたC4流れを前記分別するステップおよび前記接触させるステップのうちの少なくとも一方に再循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記接触させるステップは、エチレンおよび前記重質C4分別物を前記複分解触媒と接触させるステップを含む、請求項1に記載の処理。
【請求項4】
前記複分解触媒は、VIA族金属酸化物およびVIIA族金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の処理。
【請求項5】
前記複分解触媒は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、およびゼオライトの少なくとも1つ上に担持される、請求項4に記載の処理。
【請求項6】
前記複分解触媒は、シリカ支持物上のタングステン酸化物を含む、請求項1に記載の処理。
【請求項7】
前記複分解触媒は異性化触媒と混和される、請求項1に記載の処理。
【請求項8】
前記異性化触媒はIA族金属酸化物およびIIA族金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項7に記載の処理。
【請求項9】
前記異性化触媒は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の処理。
【請求項10】
前記複分解触媒は、複分解反応機能および二重結合異性化機能の両方を有するよう公式化される、請求項1に記載の処理。
【請求項11】
前記n−ブテンは1−ブテンおよび2−ブテンを含み、前記処理は、さらに、混合されたC4流れおよび前記重質C4分別物の少なくとも一方を前記異性化触媒と接触させることにより、前記1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化するステップを含む、請求項7に記載の処理。
【請求項12】
前記複分解生成物を分別することから回収されるエチレンの少なくとも一部を前記接触させるステップに再循環させるステップと、
前記分解生成物から回収されるエチレンを前記接触させるステップに再循環させるステップと、
エチレンを含有する炭化水素流れを前記接触させるステップに供給するステップとのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項13】
エチレンおよび前記重質C4分別物を接触させるステップに対する供給物におけるエチレン対n−ブテン比は、約0.5〜約2.5の範囲にある、請求項1に記載の処理。
【請求項14】
エチレンおよび前記重質C4分別物を接触させるステップに対する供給物におけるエチレン対n−ブテン比は、約0.1〜約2.0の範囲にある、請求項13に記載の処理。
【請求項15】
前記炭化水素流れはブタジエンをさらに含み、前記処理は、さらに、前記ブタジエンの少なくとも一部を水素化するステップをさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項16】
5〜C6炭化水素を含む前記分別物の少なくとも一部を前記分解するステップに再循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項17】
前記分解するステップは、結晶性ゼオライト触媒の存在下で行なわれる、請求項1に記載の処理。
【請求項18】
前記結晶性ゼオライト触媒の少なくとも一部はZSM−5を含む、請求項17に記載の処理。
【請求項19】
前記ZSM−5はシリカ対アルミナ比が少なくとも50である、請求項18に記載の処理。
【請求項20】
5炭化水素およびC6炭化水素の少なくとも1つを前記分解するステップに供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の処理。
【請求項21】
プロピレンの生成のための処理であって、
n−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含む混合されたC4流れを複分解触媒と接触させ、それによって、イソブチレンのn−ブテンとの反応を含む自動複分解が生ずることにより、エチレン、プロピレン、ならびに未反応のイソブチレンおよびパラフィンを含むより重質のオレフィンを含む自動複分解生成物を形成するステップと、
前記自動複分解生成物を、エチレン分別物、プロピレン分別物、C5+分別物、ならびにn−ブテン、イソブチレンおよびパラフィンを含むC4分別物を含む少なくとも4つの分別物に分別するステップと、
前記C4分別物を、イソブチレンを含む軽質C4分別物と、n−ブテンおよびパラフィンを含む重質C4分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップと、
前記重質C4分別物の少なくとも一部およびエチレンを複分解触媒と接触させることにより、エチレン、プロピレン、C4+オレフィン、およびパラフィンを含む複分解生成物を形成するステップと、
前記複分解生成物を、前記自動複分解生成物を前記分別するステップに供給するステップと、
前記C5+分別物を分解することにより、エチレン、プロピレン、およびより重質の炭化水素を含む分解生成物を生成するステップと、
前記分解生成物を、プロピレンを含む軽質分別物とC5〜C6炭化水素を含む分別物とを含む少なくとも2つの分別物に分別するステップとを含む、処理。
【請求項22】
前記軽質C4分別物を前記分解するステップに供給するステップをさらに含む、請求項21に記載の処理。
【請求項23】
前記C5〜C6炭化水素を含む分別物の少なくとも一部を前記分解するステップに再循環させるステップをさらに含む、請求項21に記載の処理。
【請求項24】
前記自動複分解触媒は、VIA族金属酸化物およびVIIA族金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項21に記載の処理。
【請求項25】
前記自動複分解触媒は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、およびゼオライトの少なくとも1つ上に担持される、請求項24に記載の処理。
【請求項26】
前記自動複分解触媒は、シリカ支持物上のタングステン酸化物を含む、請求項21に記載の処理。
【請求項27】
前記複分解触媒はVIA族金属酸化物およびVIIA族金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項21に記載の処理。
【請求項28】
前記複分解触媒は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、およびゼオライトの少なくとも1つ上に担持される、請求項27に記載の処理。
【請求項29】
前記複分解触媒は、シリカ支持物上のタングステン酸化物を含む、請求項21に記載の処理。
【請求項30】
前記複分解触媒は異性化触媒と混和される、請求項21に記載の処理。
【請求項31】
前記異性化触媒はIA族金属酸化物およびIIA族金属酸化物の少なくとも一方を含む、請求項30に記載の処理。
【請求項32】
前記異性化触媒は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の処理。
【請求項33】
前記複分解触媒は、複分解反応機能および二重結合異性化機能の両方を有するよう公式化される、請求項21に記載の処理。
【請求項34】
前記n−ブテンは1−ブテンおよび2−ブテンを含み、前記処理は、さらに、前記C4分別物および前記重質C4分別物の少なくとも一方を前記異性化触媒と接触させることにより、前記1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化するステップを含む、請求項33に記載の処理。
【請求項35】
前記エチレン分別物の少なくとも一部を前記複分解接触ステップに再循環させるステップと、
エチレンを前記分解生成物から前記複分解接触ステップに再循環させるステップと、
エチレンを含有する炭化水素流れを前記複分解接触ステップに供給するステップとのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項21に記載の処理。
【請求項36】
前記複分解接触ステップに対する供給物におけるエチレン対n−ブテン比は、約0.5〜約2.5の範囲にある、請求項21に記載の処理。
【請求項37】
前記複分解接触ステップに対する供給物におけるエチレン対n−ブテン比は、約0.1〜約2.0の範囲にある、請求項36に記載の処理。
【請求項38】
前記混合されたC4分別物はブタジエンをさらに含み、前記処理は、さらに、前記ブタジエンの少なくとも一部を水素化するステップをさらに含む、請求項21に記載の処理。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−500304(P2012−500304A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523103(P2011−523103)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053432
【国際公開番号】WO2010/019595
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(508055995)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】LUMMUS TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】