説明

絶縁パターンの形成方法および電子部品の製造方法

【課題】多数回の重ね塗りを行っても厚膜高精細パターンが実現可能な絶縁パターンを形成する方法を提供すること。
【解決手段】絶縁ペーストを基板上にパターン印刷して露光する工程を2回以上繰り返した後、焼成する工程を含む絶縁パターンの形成方法であって、絶縁ペーストが絶縁性の無機粉末および感光性有機成分を含み、該絶縁ペースト中の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする絶縁パターンの形成方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイや電子部品等で有用となる高アスペクト比を有する絶縁パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚膜の絶縁パターンを形成する方法としては、ガラスペースト等の無機材料と有機溶剤を含む絶縁ペーストをスクリーン印刷し、乾燥する工程を繰り返し、所定の膜厚になった後、焼成して絶縁パターンを形成する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、一般的に、絶縁ペーストには多量の有機溶剤が含まれており、印刷後の乾燥によってパターンにダレが生じ、高アスペクト比のパターンが得られないという問題があった。また、厚膜化のために印刷/乾燥を繰り返すと上層の絶縁ペースト中の有機溶剤が下層に拡散するなどして下層パターンの裾乱れが大きく、印刷の位置再現性が不良となり、高精細かつ高精度の厚膜パターンが得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166460号公報(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みて、多数回の重ね塗りを行っても厚膜高精細パターンが実現可能な絶縁パターンを形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、絶縁ペーストを基板上にパターン印刷して露光する工程を2回以上繰り返した後、焼成する工程を含む絶縁パターンの形成方法であって、絶縁ペーストが絶縁性の無機粉末および感光性有機成分を含み、該絶縁ペースト中の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする絶縁パターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多数回の重ね塗りを行っても厚膜高精細パターンが実現可能な絶縁パターンを形成する方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で使用する絶縁ペーストは、絶縁性の無機粉末、および感光性有機成分を含むものである。
【0009】
絶縁性の無機粉末は、目的とするペーストによって適宜選択する。例えば、電子部品の絶縁層やディスプレイの隔壁層等を形成するペーストでは、ガラス粉末、セラミックス粉末およびガラス粉末とセラミックス粉末を混合したものを用いることができる。ガラス粉末は、軟化温度が900℃以下、好ましくは、350〜800℃の範囲内のガラス粉末を用いることが好ましい。軟化温度350℃以下のガラスは化学的安定性が低く、また、軟化温度900℃以上になると、基板上で十分な軟化を行うことが困難になる。軟化温度が800℃以下、好ましくは、350〜800℃の範囲内のガラス粉末であれば、特に制限なく用いることができる。セラミック粉末としては、500〜1000℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、アルミナ、チタニア、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコンおよびジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。また、多層化する際に絶縁層の識別のために無機顔料を含んでもよい。黒色にする場合は、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Cu−Mn、Co−Ni−Mn、Co−Ni−Cr−Mn、Co−Ni−Cu−Mnなどの化合物からなる黒色顔料、青色にする場合はCo−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Si、Zr−Si−V、Co−Zn−Si、Co−Zn−Al、Co−Zr−V、Co−Si、緑色にする場合はCa−Si−Cr、Sn−Zr−V、Zr−Si−Pr−V、Zr−Si−Pr−Cr−Fe、Cr−Al、Zr−Si−Pr−Cr、Cr−Co−Al−Zn、Cr−Al−Si、朱色にする場合はAl−Mn、Al−Cr−Zn、Sn−Cr、Zr−Si−Fe等の顔料を用いることができる。顔料の添加量は、顔料の種類にもよるが、通常0.1〜40質量%の範囲である。
【0010】
これら無機粉末の粒子径としては、作製しようとする層の厚みや線幅を考慮して選ばれるが、体積基準分布の中心径が0.05〜5μm、最大粒子サイズが15μm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明における絶縁ペーストは、感光性有機成分を含有することを特徴とする。本発明で用いる絶縁ペーストは後述のように有機溶剤の含有量が5質量%以下であるので、感光性有機成分を含む絶縁ペーストを用いてパターン印刷し、露光することによって、シャープなパターン形状を得ることが出来る。感光性有機成分を含有せず、有機溶剤の含有量が5質量%以下の絶縁ペーストを用いると、粘度が高すぎてパターン印刷できないペーストとなるか、パターン印刷後乾燥しても印刷パターンがべとついてしまい、印刷パターンが乱れやすいという問題を生じる。
【0012】
感光性有機成分としては、分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーを含むものである。本発明における絶縁ペーストを構成する感光性有機成分として、印刷後のパターン形状制御や絶縁ペーストの粘度調整などの役割を果たす成分として分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーを用いる。
【0013】
分子内に重合性不飽和基を有するモノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。具体的な例としては、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0014】
また、本発明の絶縁ペースト中には、25℃における粘度が1〜100mPa・sの範囲内である分子内に重合性不飽和基を有するモノマーを含むことが好ましい。より好ましくは、25℃における粘度が1〜50mPa・sの範囲内である分子内に重合性不飽和基を有するモノマーを含むことである。上記モノマーを含むことで、導電ペーストの粘度調整を容易にすることができる。上記モノマーの具体的な例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0015】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。上記モノマーは、導電ペーストに対し、2〜20質量%の範囲で添加され、より好ましくは、5〜15質量%の範囲内である。上記モノマーの量が少なすぎると絶縁ペーストの室温での流動性がなくなり、パターン印刷が不良となる場合がある。一方、上記モノマーの量が多すぎる場合には絶縁ペーストの粘度が低下し、目的の膜厚が得られない場合がある。
【0016】
さらに、本発明で使用する絶縁ペーストは、パターン印刷後、光硬化させるものであるから、光硬化時間を短縮するために、重合性不飽和基数が2〜6の範囲内にある重合性多官能モノマーを含むことが好ましい。重合性不飽和基数が6を越えるモノマーを用いると相溶性が不良となり、導電ペーストの印刷性が不良となる場合がある。また、重合性不飽和基数が2〜6の範囲内にある重合性多官能モノマーのみを用いた場合、光硬化時の重合収縮により、パターン形状が不良となる場合があるため、重合性不飽和基数が2〜6の範囲内にある重合性多官能モノマーと重合性不飽和基数が1つである重合性単官能モノマーを併用することも有効である。この場合、重合性不飽和基数が2〜6の範囲内にある重合性多官能モノマーと重合性不飽和基数が1つである重合性単官能モノマーの質量比が90:10〜30:70であることが好ましい。質量比が上記範囲内であることで、光硬化時間短縮と光硬化時の重合収縮を抑え、パターン形状の制御が可能となる。
【0017】
さらに、厚膜の絶縁パターンを形成する場合、焼成時の脱バインダー性を向上させるために、熱分解性が良いものが特に好ましく、具体的には2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどのような水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのようなアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げらる。
【0018】
分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーとしては、炭素−炭素2重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られる。このようなオリゴマーもしくはポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーを得ることができる。
【0019】
好ましい重合性不飽和基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0020】
このような側鎖をオリゴマーもしくはポリマーに付加させる方法は、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0021】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル等量付加させることが好ましい。
【0022】
このような分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーは、重量平均分子量(Mw)が2000〜200000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1000〜50000の範囲内であることが好ましく、より好ましくはMwが5000〜100000の範囲内、Mnが1000〜30000の範囲内である。Mw、Mnが上記範囲内であることで、取扱性が良好で、光硬化時に均一な硬化性を得ることができる。
【0023】
本発明における絶縁ペーストは、感光性有機成分として上述の分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーを含有することが好ましいが、これらの成分はいずれも活性光線のエネルギー吸収能力はないため、光硬化を行わせるためには光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤は、光硬化に使用される光源によって選択され、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等が使用できる。
【0024】
光ラジカル重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2ーヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、テトラブチルアンモニウム(+1)n−ブチルトリフェニルボレート(1−)、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等や近紫外に吸収を持つ陽イオン染料とボレート陰イオンとの錯体、近赤外増感色素で増感されたハロゲン化銀と還元剤を組み合わせたもの、チタノセン、鉄アレーン錯体、有機過酸化物、ヘキサアリール、ビイミダゾール、N−フェニルグリシン、ジアリールヨードニウム塩等のラジカル発生剤の少なくとも1種と更に必要に応じて、3−置換クマリン、シアニン色素、メロシアニン色素、チアゾール系色素、ピリリウム系色素等の増感色素等が挙げられる。
【0025】
光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスフェート塩、アンチモネート塩等が挙げられる。
【0026】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、絶縁ペーストに対し、0.05〜10質量%の範囲内で添加され、より好ましくは、0.1〜10質量%である。光重合開始剤の量が少なすぎると光硬化不足となり、光重合開始剤の量が多すぎる場合には相溶性が不良になるおそれがある。
【0027】
光重合開始剤と共に増感剤を使用することで、感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
【0028】
増感剤の具体例としては、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用する絶縁ペーストではこれらを1種または2種以上使用することができる。増感剤を本発明の絶縁ペーストに添加する場合、その添加量は感光性有機成分に対して通常0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。増感剤の量が少なすぎれば光硬化を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば、相溶性が不良になる恐れがある。
【0030】
本発明で使用する絶縁ペーストは、有機溶媒の含有量が5質量%以下であることを特徴とする。有機溶剤の量が多い場合、印刷後に乾燥工程が必要となるため、本発明で使用する絶縁ペーストでは有機溶剤量は、上記範囲内であることが必要となる。また、上記範囲内で有機溶剤を含むことで、光重合開始剤や増感剤の溶解性を向上させ、均質な絶縁ペーストが作製できる。本発明において有機溶剤とは、本発明で使用する導電ペーストは、有機溶媒の含有量が5質量%以下であることを特徴とする。有機溶剤の量が多い場合、印刷後に乾燥工程が必要となるため、本発明で使用する絶縁ペーストでは有機溶剤量は、上記範囲内であることが必要となる。また、上記範囲内で有機溶剤を含むことで、光重合開始剤や増感剤の溶解性を向上させ、均質な絶縁ペーストが作製できる。本発明において有機溶剤とは、常温で液体であり、10〜200℃の温度域で揮発性を有する有機物を指し、分子内に反応性の不飽和結合を有するものを除く。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸等、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、テキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、2種以上混合して用いてもよい。
【0031】
本発明に使用する絶縁ペーストでは、絶縁ペーストの貯蔵安定性のために重合禁止剤を添加することも有効である。具体的な重合禁止剤としては、ヒドロキノン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール等が挙げられる重合禁止剤の添加量は、絶縁ペースト中に0.01〜1質量%の範囲内で添加することができる。
【0032】
本発明の絶縁ペーストでは、無機粉末を多量に含んでいるため、これらを均一に分散させるために分散剤を用いることも有効である。分散剤としては、公知のアニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤等を用いることができるが、本発明においては、無機粉末を多量に含んでいるため、分散剤がイミダゾリニウムカチオンを構成成分とする有機酸塩であることが、特に有効に働く。具体的には、1−メチル−1−タロ−イルアミドエチル−2−タロ−イルイミダゾリニウムメトサルフェート、1−エチルビス(1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリニウムメトサルフェート)、1−オクタデカノイルアミノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン塩酸塩、1−ドコサノイルアミノエチル−2−ヘンエイコシルイミダゾリン塩酸塩等が挙げられる。
【0033】
本発明で使用する絶縁ペーストでは、その他添加物成分として、チキソ剤、可塑剤、染料等の紫外線吸収剤等を目的に応じて適宜用いることができる。
【0034】
本発明で使用する絶縁ペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、プラネタリーミキサー等のミキサーによって予備分散した後、3本ローラーなどの分散機で分散・混練手段によって均質に作製する。
【0035】
次に上記絶縁ペーストを用いた、本発明の絶縁パターンの形成方法について説明する。
【0036】
ガラス板、アルミナ板、シリコンウエハ等の基板上に上記絶縁ペーストをパターン印刷する。パターン印刷の方法としては、例えばスクリーン印刷やブレードコーター、テーブルコーター等による塗布が挙げられる。塗布後、露光装置を用いて露光を行う。この際使用される活性光源は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザ光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は、塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜10分間露光を行う。
【0037】
続いて、目的の膜厚になるまで上記パターン印刷/露光を繰り返す。
【0038】
本発明の絶縁パターンの形成方法では、有機溶剤の含有量が5質量%以下の絶縁ペーストを用いるために乾燥時にパターンにダレが生じず、また、下層の絶縁ペースト塗布膜を露光した後に上層に絶縁ペーストを塗布するため、下層がべとつかず印刷パターンの乱れが生じないため、高アスペクト比の高精細厚膜パターンを得ることができる。
【0039】
最後に焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラーハース式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、500〜1000℃で行うことができる。
【0040】
また、本発明の電子部品の製造方法は、上述の絶縁パターンの形成方法により絶縁パターンを形成する工程を含む電子部品の製造方法であり、高精細かつ高精度な絶縁パターンを有する電子部品を製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
まず、下記絶縁ペーストを作製した。
【0043】
酸化リチウム10質量%、酸化珪素25質量%、酸化硼素30質量%、酸化亜鉛15質量%、酸化アルミニウム5質量%、酸化カルシウム15質量%からなる組成のガラスを粉砕した中心粒径(D50)1.2μmのガラス粉末63質量%、酸化チタン粉末(平均径0.25μm)15質量%、ウレタンアクリレート樹脂(共栄社化学社製 UA−510H)7質量%、ポリプロピレングリコールジアクリレート3質量%、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート7質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1質量%、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォニルフェニル)−ブタノン−1)1.5質量%、分散剤(1−メチル−1−タロ−イルアミドエチル−2−タロ−イルイミダゾリニウムメトサルフェート)0.45質量%、重合禁止剤(p−t−ブチルカテコール)0.05質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート2質量%を計量、撹拌後、3本ローラーで分散して絶縁ペーストを得た。
【0044】
次に、上記絶縁ペーストをスクリーンでパターン印刷した。スクリーン版は、SUS200メッシュ(線径30μm、紗厚60μm)を用いた。スクリーン印刷後、露光を行った。露光機は、大日本スクリーン製露光機(光源:2kW超高圧水銀灯)を用い、露光量は、500mJ/cmで行った。上記印刷と露光を9回繰り返した後、600℃で10分間光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉を用いて焼成した。焼成後、電子顕微鏡(キーエンス社製、VE−7800)を用いてパターン断面部を観察した。
【0045】
パターン形状は、膜厚166μm、頂部幅205μm、底部幅232μmであり、ほぼ矩形で、高アスペクト比のパターン形状であった。
【0046】
(実施例2)
下記絶縁ペーストを用いた他は実施例1と同様に行った。
【0047】
酸化リチウム3質量%、酸化珪素34質量%、酸化硼素5質量%、酸化ビスマス50質量%、酸化ナトリウム2質量%、酸化カリウム1質量%、酸化チタン5質量%からなる組成のガラスを粉砕した中心粒径(D50)1.8μmのガラス粉末63質量%、酸化アルミニウム粉末(平均径0.5μm)15質量%、ウレタンアクリレート樹脂(共栄社化学社製 UA−510H)7質量%、ポリプロピレングリコールジアクリレート3質量%、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート7質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1質量%、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォニルフェニル)−ブタノン−1)1.5質量%、分散剤(1−メチル−1−タロ−イルアミドエチル−2−タロ−イルイミダゾリニウムメトサルフェート)0.45質量%、重合禁止剤(p−t−ブチルカテコール)0.05質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート2質量%を計量、撹拌後、3本ローラーで分散して得られた絶縁ペースト。
【0048】
焼成は、670℃で10分行った。
【0049】
パターン形状は、膜厚198μm、頂部幅215μm、底部幅241μmであり、ほぼ矩形で、高アスペクト比のパターン形状であった。
【0050】
(実施例3)
下記絶縁ペーストを用いた他は実施例1と同様に行った。
【0051】
酸化珪素68質量%、酸化硼素12質量%、酸化マグネシウム16質量%、酸化アルミニウム3質量%、酸化カリウム1質量%、からなる組成のガラスを粉砕した中心粒径(D50)1.5μmのガラス粉末63質量%、シリカ粉末(平均径0.2μm)15質量%、ウレタンアクリレート樹脂(共栄社化学社製 UA−510H)7質量%、ポリプロピレングリコールジアクリレート3質量%、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート7質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1質量%、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォニルフェニル)−ブタノン−1)1.5質量%、分散剤(1−メチル−1−タロ−イルアミドエチル−2−タロ−イルイミダゾリニウムメトサルフェート)0.45質量%、重合禁止剤(p−t−ブチルカテコール)0.05質量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート2質量%を計量、撹拌後、3本ローラーで分散して得られた絶縁ペースト。
【0052】
焼成は、870℃で10分行った。
【0053】
パターン形状は、膜厚184μm、頂部幅211μm、底部幅239μmであり、ほぼ矩形で、高アスペクト比のパターン形状であった。
【0054】
(比較例1)
まず、下記絶縁ペーストを作製した。
【0055】
酸化リチウム10質量%、酸化珪素25質量%、酸化硼素30質量%、酸化亜鉛15質量%、酸化アルミニウム5質量%、酸化カルシウム15質量%からなる組成のガラスを粉砕した中心粒径(D50)1.2μmのガラス粉末63質量%、酸化チタン粉末(平均径0.25μm)15質量%、エチルセルロース樹脂(ダウケミカル社製)3質量%、有機溶剤(ターピネオール)11.5質量%、分散剤(1−メチル−1−タロ−イルアミドエチル−2−タロ−イルイミダゾリニウムメトサルフェート)0.5質量%を計量、撹拌後、3本ローラーで分散して絶縁ペーストを得た。
【0056】
次に、上記絶縁ペーストをスクリーンでパターン印刷した。スクリーン版は、SUS200メッシュ(線径30μm、紗厚60μm)を用いた。スクリーン印刷後、乾燥を行った。乾燥は、タバイ社製熱風乾燥機を用いて100℃で20分乾燥した。上記印刷と乾燥を9回繰り返した後、600℃で10分間光洋サーモテック社製ローラーハース焼成炉を用いて焼成した。焼成後、電子顕微鏡(キーエンス社製、VE−7800)を用いてパターン断面部を観察した。
【0057】
膜厚146μm、頂部幅195μm、底部幅263μmであったが、パターン形状は、各層毎に位置再現性が不良となるため、各層毎に凹凸が見られ、シャープなパターン形状は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ペーストを基板上にパターン印刷して露光する工程を2回以上繰り返した後、焼成する工程を含む絶縁パターンの形成方法であって、絶縁ペーストが絶縁性の無機粉末および感光性有機成分を含み、該絶縁ペースト中の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする絶縁パターンの形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁パターンの形成方法により絶縁パターンを形成する工程を含む電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2012−150894(P2012−150894A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6636(P2011−6636)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】