説明

絶縁型双方向DC−DCコンバータ

【課題】より実用的なフライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】この絶縁型双方向DC−DCコンバータ1は、1次巻線21と2次巻線22を絶縁してコア23に巻いたトランス2と、トランス2の1次巻線21に接続された第1のスイッチング素子3と、第1のスイッチング素子3に並列に接続された第1の整流素子4と、トランス2の2次巻線22に接続された第2のスイッチング素子5と、第2のスイッチング素子5と並列に接続された第2の整流素子6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1次巻線と2次巻線を絶縁してコアに巻いたトランスを用いて、直流電力を1次巻線側と2次巻線側の双方向に供給し合うことができる絶縁型双方向DC−DCコンバータが知られている。このような絶縁型双方向DC−DCコンバータを介することで、2つの独立した装置は、どちらの方向からでも電力を送受でき、融通し合うことができる。
【0003】
絶縁型双方向DC−DCコンバータは、必要とされる構成が一般に比較的簡易であるフライバック方式のものも提案されている。例えば、特許文献1には、無瞬断電源装置に含まれる複数の絶縁型双方向DC−DCコンバータの一つにフライバック方式のものが含まれている。また、非特許文献1では、フライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータの基本的な特性が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109627号公報(段落0022〜0023、第4図)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】井上正一、外2名、“絶縁形双方向DC―DCコンバータ”、電学論D、平成4年、第112巻、第1号、p.81−82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のフライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、実用に十分な程には具体的ではなく、より実用的な構成にする余地がある。特に、フライバック方式で用いられるスイッチング素子には、オンからオフになる瞬間に漏れインダクタンスに蓄積されたエネルギーにより生じる過渡的な高電圧がかかる。そのため、絶縁型双方向DC−DCコンバータの電力変換効率が余り低くならないようにしつつ、スイッチング素子が破壊されてしまわないように、高電圧のピーク電圧を下げる必要がある。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、より実用的なフライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、1次巻線と2次巻線を絶縁してコアに巻いたトランスと、該トランスの1次巻線に接続された第1のスイッチング素子と、該第1のスイッチング素子に並列に接続された第1の整流素子と、前記トランスの2次巻線に接続された第2のスイッチング素子と、該第2のスイッチング素子と並列に接続された第2の整流素子と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子に接続される前記1次巻線の極性と、前記第2のスイッチング素子に接続される前記2次巻線の極性とは、互いに逆になっていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1又は2に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子は相補にオンオフすることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアにはフェライト系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアにはフェライト系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアにはアモルファス系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアにはアモルファス系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアには積層鋼板系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記トランスは、前記コアには積層鋼板系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、IGBTであることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、シリコン系MOSFETであることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、SiC系MOSFETであることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1の整流素子及び/又は前記第2の整流素子は、SiC系ダイオードであることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項1〜13のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスイッチング素子の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する第1のスナバ回路及び/又は前記第2のスイッチング素子の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する第2のスナバ回路を備えていることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータは、請求項14に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、前記第1のスナバ回路及び前記第2のスナバ回路はそれぞれ、少なくとも整流器とコンデンサと抵抗器を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の絶縁型双方向DC−DCコンバータによれば、より実用的なフライバック方式の絶縁型双方向DC−DCコンバータを提供することが可能になる。また、1次巻線と2次巻線の結合度を上げられるトランスにして漏れインダクタンスを減らすことで、電力変換効率が良好でありながら、スイッチング素子にかかる過渡的な高電圧のピーク電圧を下げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る絶縁型双方向DC−DCコンバータの概略回路図である。
【図2】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータのトランスの一つの例を示す模式的な断面図である。
【図3】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータのトランスの他の例を示す模式的な断面図である。
【図4】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータのトランスの更に他の例を示すものであって、(a)が概略外観図、(b)が回路図の例、(c)が回路図の他の例である。
【図5】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータの動作波形図である。
【図6】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータの過渡的な高電圧を示す波形図である。
【図7】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータの電力変換効率を示す波形図である。
【図8】同上の絶縁型双方向DC−DCコンバータの別の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る絶縁型双方向DC−DCコンバータ1は、図1に示すように、端子T1と端子T2の間に入力した直流電力を変換して端子T3と端子T4の間に出力でき、かつ、端子T3と端子T4の間に入力した直流電力を変換して端子T1と端子T2の間に出力できるように、1次巻線21と2次巻線22を絶縁してコア23に巻いたトランス2と、トランス2の1次巻線21に接続された第1のスイッチング素子3と、第1のスイッチング素子3に並列に接続された第1の整流素子4と、トランス2の2次巻線22に接続された第2のスイッチング素子5と、第2のスイッチング素子5と並列に接続された第2の整流素子6と、を備えている。
【0026】
また、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1は、第1のスイッチング素子3の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路として第1のスナバ回路7を、第2のスイッチング素子5の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路として第2のスナバ回路8を備えている。また、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1は、端子T1と端子T2の間の電圧を安定化するコンデンサ9と、端子T3と端子T4の間の電圧を安定化するコンデンサ10と、を備えている。
【0027】
トランス2は、1次巻線21と2次巻線22が互いに絶縁されてコア23に巻かれている。この実施形態では、1次巻線21の一端は端子T1に、1次巻線21の他端は第1のスイッチング素子3に接続されており、2次巻線22の一端は端子T3に、2次巻線22の他端は第2のスイッチング素子5に接続されている。
【0028】
第1のスイッチング素子3に接続される1次巻線21の極性と、第2のスイッチング素子5に接続される2次巻線22の極性とは、互いに逆になっている。
【0029】
トランス2は、1次巻線21と2次巻線22の結合度を上げて漏れインダクタンスを減らすように、以下のような構成にするのが好ましい。その1つ目は、図2に示すように、1次巻線21と2次巻線22がバイファイラ巻きになっているものである。バイファイラ巻きは、絶縁した電線からなる1次巻線21(図2では黒丸で示す)と絶縁した電線からなる2次巻線22(図2では白丸で示す)とが組になって交互にコア23の周りに巻き回されたものである。
【0030】
2つ目は、図3に示すように、1次巻線21と2次巻線22がサンドイッチ巻きになっているものである。サンドイッチ巻きは、絶縁した電線からなる1次巻線21(図3では黒丸で示す)がコア23の周りに巻き回され、その上に絶縁した電線からなる2次巻線22(図3では白丸で示す)が巻き回され、更にその上に絶縁した電線からなる1次巻線21(図3では黒丸で示す)が巻き回されたものである。
【0031】
また、コア23を図4(a)に示すようなU字コアとして、2箇所に1次巻線21と2次巻線22を巻いて、1次巻線21、21同士と2次巻線22、22同士を図4(b)に示すように直列に接続したり、図4(c)に示すように並列に接続したりすることも可能である。
【0032】
コア23には、酸化鉄を主成分とするフェライト系材料、アモルファス金属を主成分とするアモルファス系材料、又は、電磁鋼板を積層にした積層鋼板系材料を用いることができる。
【0033】
次に、第1のスイッチング素子3と第2のスイッチング素子5を説明する。第1のスイッチング素子3と第2のスイッチング素子5は、IGBT、又はMOSFETなどが用いられる。MOSFETには、シリコンを主材料とするシリコン系MOSFET、又はSiCを主材料とするSiC系MOSFETなどが用いられる。
【0034】
第1のスイッチング素子3と第2のスイッチング素子5は、入力端子(すなわち、IGBT及びMOSFETの場合ではゲート端子)に入力されるそれぞれの制御信号である第1の制御信号A、第2の制御信号Bに応じて、相補にオンオフ、すなわち交互にオンオフする。本実施形態では、図5(a)に示すような第1の制御信号Aがハイレベルのときに第1のスイッチング素子3はオンし、第1の制御信号Aがローレベルのときに第1のスイッチング素子3はオフする。また、図5(b)に示すような第2の制御信号Bがハイレベルのときに第2のスイッチング素子5はオンし、第2の制御信号Bがローレベルのときに第2のスイッチング素子5はオフする。第1の制御信号Aがローレベルになってから第2の制御信号Bがハイレベルになり、第2の制御信号Bがローレベルになってから第1の制御信号Aがハイレベルになる。これらの第1の制御信号A及び第2の制御信号Bは、マイコンなどの制御部11が生成する。
【0035】
第1の整流素子4と第2の整流素子6は、シリコンを主材料とするシリコン系ダイオード、又はSiCを主材料とするSiC系ダイオードなどが用いられる。
【0036】
第1のスナバ回路7は、1次巻線21と第1のスイッチング素子3との接続点Cに接続されて、その接続点Cにおいて第1のスイッチング素子3のオンからオフになる瞬間に生じる過渡的な高電圧を吸収する。本実施形態では、第1のスナバ回路7は、1次巻線21と第1のスイッチング素子3との接続点Cにアノードが接続される整流器71と、整流器71のカソードに一端が接続されるコンデンサ72と、整流器71のカソードに一端が接続される抵抗器73を含んでいる。また、スナバ回路8は、2次巻線22と第2のスイッチング素子5との接続点Dに接続されて、その接続点Dにおいて第2のスイッチング素子5のオンからオフになる瞬間に生じる過渡的な高電圧を吸収する。本実施形態では、第2のスナバ回路8は、2次巻線22と第2のスイッチング素子5との接続点Dにアノードが接続される整流器81と、整流器81のカソードに一端が接続されるコンデンサ82と、整流器81のカソードに一端が接続される抵抗器83を含んでいる。
【0037】
次に、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1の動作を、端子T1と端子T2の間に電力が供給されている場合は図5に基づいて、端子T3と端子T4の間に電力が供給されている場合は図8に基づいて、それぞれ説明する。
【0038】
端子T1と端子T2の間に電力が供給されている場合は、以下のようにして、1次巻線側から2次巻線側に電力が送られて、端子T3と端子T4の間から電力が出力される。
【0039】
すなわち、図5(a)に示すように、制御部11からの第1の制御信号Aがハイレベルになって第1のスイッチング素子3がオンすると、1次巻線21に電流Iが流れ、発生する磁束によりコア23が磁化されエネルギーが蓄えられる。そのとき、第2のスイッチング素子5はオフしており、かつ、第2の整流素子6に印加される電圧は逆方向になるので、2次巻線22には電流Iは流れない。第1の制御信号Aがローレベルになって第1のスイッチング素子3がオフすると、コア23に蓄えられていたエネルギーが放出されることにより、第2の制御信号Bがハイレベルになってオンした第2のスイッチング素子5及び第2の整流素子6を通って電流が流れ、2次巻線22に電流Iが流れる。2次巻線22に流れる電流Iは、コンデンサ10に蓄積され安定化されて、端子T3と端子T4の間から所定の電圧の電力が出力される。このように、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1はフライバック方式の動作となっている。
【0040】
また、第1のスイッチング素子3のオンからオフになる瞬間に、1次巻線21と第1のスイッチング素子3との接続点Cには、図6(c)に示すように過渡的な高電圧が生じるが、そのピーク電圧は、1次巻線21と2次巻線22の結合度を上げて漏れインダクタンスを減らすことと、第1のスナバ回路7で吸収することと、により下げられている。それにより、第1のスイッチング素子3の破壊が防止される。ここで、1次巻線21と2次巻線22の結合度を上げて漏れインダクタンスを減らすことにより、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1の電力変換効率が良好であり、かつ、第1のスナバ回路7において吸収する必要のある高電圧を抑えてそこで発生する熱の量を抑えることができる。熱の量を抑えることで、放熱が容易になり、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1を大出力にすることも可能になる。
【0041】
図7は、結合度を上げるために1次巻線21と2次巻線22をバイファイラ巻きにしたもの(曲線a)と、1次巻線21と2次巻線22を通常に巻いたもの(曲線b)と、について、1次巻線側から2次巻線側への電力変換効率を測定し、比較して示したものである。バイファイラ巻きにしたものは、約95%の電力変換効率が得られている。また、それより、このトランス2は結合度が高く、漏れインダクタンスが低いことを示している。
【0042】
この絶縁型双方向DC−DCコンバータ1では、第1のスイッチング素子3がオフしたときに2次巻線22に流れる電流Iは、端子T3と端子T4の間に接続される外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合は、図5(d)に示すような、正の値から負の値まで、最後までとぎれず、徐々に連続して減少するものとなる。この電流Iは、外部の負荷が重負荷の状態の場合は、図5(f)に示すような、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合の波形を正の方向に平行移動したような波形で、正の値のままで徐々に連続して減少するものとなる。なお、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合の1次巻線21に流れる電流I及び外部の負荷が重負荷の状態の場合の1次巻線21に流れる電流Iは、それぞれ図5(c)、図5(e)に示すとおりである。
【0043】
このように、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態或いは重負荷の状態であっても、2次巻線22に流れる電流Iは、最後までとぎれずに徐々に連続して減少する連続モードとなっている。
【0044】
また、この絶縁型双方向DC−DCコンバータ1では、第1のスイッチング素子3がオンする時間に従ってコア23にエネルギーが蓄え、第1のスイッチング素子3がオフする時間に従ってエネルギーが放出される。それにより、第1のスイッチング素子3がオンする時間の割合(デューティ比)に忠実に対応した電圧が端子T3と端子T4の間に発生する。これは、重負荷の状態でも軽負荷の状態でも変わらない。1次巻線21と2次巻線22の巻数が等しく、第1のスイッチング素子3がオンする時間と第1のスイッチング素子3がオフする時間が同じ(デューティが50%)ならば、端子T3と端子T4には、端子T1と端子T2に印加される電圧とほぼ等しい電圧が発生する。従って、負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合でも、重負荷の状態の場合でも、第1のスイッチング素子3がオンする時間と第1のスイッチング素子3がオフする時間の割合を変えることにより、端子T3と端子T4に発生する電圧を容易に調整できることとなる。
【0045】
また、端子T3と端子T4の間に電力が供給されている場合は、以下のようにして、2次巻線側から1次巻線側に電力が送られて、端子T1と端子T2の間から電力が出力される。なお、下記の電流I’は1次巻線21に流れる電流であって上記の電流Iとは逆向きである。また、下記の電流I’は2次巻線22に流れる電流であって上記の電流Iとは逆向きである。
【0046】
すなわち、図8(a)に示すように、制御部11からの第2の制御信号Bがハイレベルになって第2のスイッチング素子5がオンすると、2次巻線22に電流I’が流れ、発生する磁束によりコア23が磁化されエネルギーが蓄えられる。そのとき、第1のスイッチング素子3はオフしており、かつ、第1の整流素子4に印加される電圧は逆方向になるので、1次巻線21には電流I’は流れない。第2の制御信号Bがローレベルになって第1のスイッチング素子5がオフすると、コア23に蓄えられていたエネルギーが放出されることにより、第1の制御信号Aがハイレベルになってオンした第1のスイッチング素子3及び第1の整流素子4を通って電流が流れ、1次巻線21に電流I’が流れる。1次巻線21に流れる電流I’は、コンデンサ9に蓄積され安定化されて、端子T1と端子T2の間から所定の電圧の電力が出力される。このように、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1はフライバック方式の動作となっている。
【0047】
また、第2のスイッチング素子5のオンからオフになる瞬間に、2次巻線22と第2のスイッチング素子5との接続点Dには、上述した第1のスイッチング素子3のオンからオフになる瞬間の接続点Cと同様に、過渡的な高電圧が生じるが、そのピーク電圧は、1次巻線21と2次巻線22の結合度を上げて漏れインダクタンスを減らすことと、第2のスナバ回路8で吸収することと、により下げられている。それにより、第2のスイッチング素子5の破壊が防止される。ここで、1次巻線21と2次巻線22の結合度を上げて漏れインダクタンスを減らすことにより、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1の電力変換効率が良好であり、かつ、第2のスナバ回路8において吸収する必要のある高電圧を抑えてそこで発生する熱の量を抑えることができる。熱の量を抑えることで、放熱が容易になり、絶縁型双方向DC−DCコンバータ1を大出力にすることも可能になる。
【0048】
この絶縁型双方向DC−DCコンバータ1では、第2のスイッチング素子5がオフしたときに1次巻線21に流れる電流I’は、端子T1と端子T2の間に接続される外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合は、図8(d)に示すような、正の値から負の値まで、最後までとぎれず、徐々に連続して減少するものとなる。この電流I’は、外部の負荷が重負荷の状態の場合は、図8(f)に示すような、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合の波形を正の方向に平行移動したような波形で、正の値のままで徐々に連続して減少するものとなる。なお、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合の2次巻線22に流れる電流I’及び外部の負荷が重負荷の状態の場合の2次巻線22に流れる電流I’は、それぞれ図8(c)、図8(e)に示すとおりである。
【0049】
このように、外部の負荷が無負荷か軽負荷の状態或いは重負荷の状態であっても、1次巻線21に流れる電流I’は、最後までとぎれずに徐々に連続して減少する連続モードとなっている。
【0050】
また、この絶縁型双方向DC−DCコンバータ1では、第2のスイッチング素子5がオンする時間に従ってコア23にエネルギーが蓄え、第2のスイッチング素子5がオフする時間に従ってエネルギーが放出される。それにより、第2のスイッチング素子5がオンする時間の割合(デューティ比)に忠実に対応した電圧が端子T1と端子T2の間に発生する。これは、重負荷の状態でも軽負荷の状態でも変わらない。2次巻線22と1次巻線21の巻数が等しく、第2のスイッチング素子5がオンする時間と第2のスイッチング素子5がオフする時間が同じ(デューティが50%)ならば、端子T1と端子T2には、端子T3と端子T4に印加される電圧とほぼ等しい電圧が発生する。従って、負荷が無負荷か軽負荷の状態の場合でも、重負荷の状態の場合でも、第2のスイッチング素子5がオンする時間と第2のスイッチング素子5がオフする時間の割合を変えることにより、端子T1と端子T2に発生する電圧を容易に調整できることとなる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る絶縁型双方向DC−DCコンバータについて説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 絶縁型双方向DC−DCコンバータ
2 トランス
21 1次巻線
22 2次巻線
23 コア
3 第1のスイッチング素子
4 第1の整流素子
5 第2のスイッチング素子
6 第2の整流素子
7 第1のスナバ回路
8 第2のスナバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線を絶縁してコアに巻いたトランスと、
該トランスの1次巻線に接続された第1のスイッチング素子と、
該第1のスイッチング素子に並列に接続された第1の整流素子と、
前記トランスの2次巻線に接続された第2のスイッチング素子と、
該第2のスイッチング素子と並列に接続された第2の整流素子と、
を備えることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子に接続される前記1次巻線の極性と、前記第2のスイッチング素子に接続される前記2次巻線の極性とは、互いに逆になっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子は相補にオンオフすることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアにはフェライト系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアにはフェライト系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアにはアモルファス系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアにはアモルファス系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアには積層鋼板系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はバイファイラ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記トランスは、前記コアには積層鋼板系材料が用いられ、前記1次巻線と前記2次巻線はサンドイッチ巻きになっていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、IGBTであることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、シリコン系MOSFETであることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子及び/又は前記第2のスイッチング素子は、SiC系MOSFETであることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1の整流素子及び/又は前記第2の整流素子は、SiC系ダイオードであることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスイッチング素子の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する第1のスナバ回路及び/又は前記第2のスイッチング素子の遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する第2のスナバ回路を備えていることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。
【請求項15】
請求項14に記載の絶縁型双方向DC−DCコンバータにおいて、
前記第1のスナバ回路及び前記第2のスナバ回路はそれぞれ、少なくとも整流器とコンデンサと抵抗器を含んでいることを特徴とする絶縁型双方向DC−DCコンバータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−70539(P2013−70539A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208301(P2011−208301)
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(511231654)株式会社滋賀設計 (1)
【Fターム(参考)】