説明

絶縁電線およびその端末処理方法

【課題】導体上にウレタン系樹脂を被覆した絶縁電線であり、容易に被覆除去が可能な絶縁電線およびその端末処理方法を提供する。
【解決手段】ゲル分率が80%以上、ガラス転移温度が50℃以上、130℃以下、ヤング率が100MPa以上、700MPa以下の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線である。前記絶縁電線は有機溶剤に浸漬し被覆材料1を除去することができ、端末処理作業が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系樹脂の絶縁被覆を有する絶縁電線およびその端末処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電機、電動機、トランス等のコイルに使用されている、導体上に薄膜絶縁被覆を有した絶縁電線を得る手段として、液状材料を塗布し、硬化させる方法がよく知られている。
【0003】
前記液状材料は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型などがあり、その中で熱硬化型材料を用いた絶縁電線がよく使用されている。
【0004】
しかし、熱硬化型樹脂を被覆した絶縁電線は、塗布、焼付け工程を必要な厚さになるまで複数回繰り返し行うため生産性が悪いこと、使用する液状樹脂は有機溶剤を50%以上含有しているため、焼付け工程で発生する気化した有機溶剤を回収するための設備が必要となるという問題がある。
【0005】
一方、紫外線硬化型樹脂を用いた製造方法は、樹脂の硬化速度が速く、1回の塗布で必要な厚さが得られるため生産性がよい。
【0006】
ところで、これらの絶縁電線を用いたコイルの端末は、主に半田付けによって接合するため、あらかじめ絶縁電線の被覆材料を除去しなければならない。
【0007】
熱硬化型樹脂を被覆した絶縁電線の被覆除去方法として、(A)金属製ブラシ、ワイヤストリッパーによる機械除去、(B)酸、アルカリ溶液などによる除去剤による除去、(C)半田浴に直接浸漬する除去がある。紫外線硬化型樹脂を被覆した絶縁電線の被覆除去に関しても同様な方法がとられ、特許文献1にはワイヤストリッパーによる被覆除去可能な電線、特許文献2には塩素系有機溶剤を用いた被覆除去方法、特許文献3には低温度半田除去可能な絶縁電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−192213号公報
【特許文献2】特開平07−238273号公報
【特許文献3】特開平07−057548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、(A)金属製ブラシやワイヤストリッパーによる機械除去は、導体を傷付けやすい。(B)除去剤による除去は、腐食性の高い酸、アルカリ溶液を使用するため、導体上に除去剤が残ると被覆材料および導体を劣化させる要因となりうる。また被覆材料の分解物が導体上に残り、洗浄工程を設けなければならない。(C)半田浴に直接浸漬する除去は、高温の半田浴に浸漬するため、被覆材料の熱分解物が導体上に残りやすく、また半田浸漬周辺部の被覆材料の熱劣化や溶融による導体細りを引き起こすという、それぞれ問題点がある。
【0010】
また、絶縁電線を複数本よりあわせた絶縁被覆集合線の端末処理では、絶縁被覆集合線のよりを戻し、よりの癖をとり除いた状態で1本づつ前記被覆除去方法のいずれかで被覆除去を行い、被覆除去を終えた絶縁被覆集合線は、結線するために、元の状態に戻さなければならず、非常に手間がかかるという問題がある。
【0011】
本発明の目的とするところは、容易に被覆除去可能な紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線およびその端末処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
(1)導体上に紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線であり、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂はゲル分率が80%以上、ガラス転移温度が50℃以上、130℃以下、ヤング率が100MPa以上、700MPa以下の範囲であることを特徴とする絶縁電線。(2)前記導体は銅またはアルミニウムであることを特徴とする(1)項記載の絶縁電線。(3)(1)項記載の絶縁電線を溶解性パラメータ(SP値)が8.0〜14.5の範囲の有機溶剤に浸漬させて被覆除去をする端末処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明による紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線を有機溶剤に浸漬し、絶縁電線を有機溶剤より取り出し、浸漬部を布などで挟持し引き抜くと、被覆材料は鞘状で簡単に引き抜くことができ、また導体上には被覆材料が残らない。
【0014】
また、溶解性パラメータ(SP値)が8.0〜14.5の有機溶剤を使用することで、室温において、浸漬後300秒以内で被覆除去ができる。
【0015】
さらに、本発明による絶縁電線を複数本よりあわせた絶縁被覆集合線では、絶縁電線間に隙間を設ける程度、よりを戻した状態で有機溶剤に浸漬し、プラスチックブラシによる除去、または被覆材料の吸引による被覆除去が可能であり、よりの癖を残こしているので結線時の絶縁被覆集合線の復元作業も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の絶縁電線の断面図である。
【図2】本発明の絶縁電線をより合わせた絶縁被覆集合線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。被覆材料の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーおよび光開始剤から得られる。前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、ジイソシアネートにヒドロキシアクリレートとポリオールを反応させることによって得られる。
【0018】
前記ジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)などが挙げられ、一種または二種以上のジイソシアネートが使用される。
【0019】
前記ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどや、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、クオドロールなどの3価以上の多価アルコールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテル化合物との付加反応により得られるポリエーテルポリオール、上記多価アルコールとカプロラクトンとを反応させることにより得られるポリカプロラクトンポリオール、上記多価アルコールと2塩基酸とジオールからなるポリエステルと反応させることにより得られるポリエステルポリオールなど、挙げることができ、一種または二種以上のポリオールが使用される。
【0020】
前記ヒドロキシアクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリシジルメタアクリレートなどであり、一種または二種以上のヒドロキシアクリレートが使用される。
【0021】
前記エチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能性モノマー、または1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーが使用される。
【0022】
前記単官能性モノマーとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0023】
また、前記多官能性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
これらの単官能性および多官能性モノマーを複数組み合わせて使用することができる。
【0025】
前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、周知の光開始剤が使用できる。例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾインエステル、ベンゾインエーテルなどであり、一種または二種以上の光開始剤が使用される。
【0026】
実施に際しては、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂に酸化防止剤、光重合助剤、充填剤、可塑剤、非反応性ポリマー、着色剤、軟化防止剤、潤滑剤、分散剤、帯電防止剤、静電防止剤、ブロッキング防止剤、密着助剤などの配合剤を組み合わせて含有させることができる。
【0027】
本発明の絶縁電線は、導体上に紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を塗布し、ダイスを用いて過剰な液状樹脂を絞り落とし、紫外線を照射し、液状樹脂を硬化させる工程により得られる。紫外線照射手段は、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプなどの紫外線光源より紫外線を導体全周方向から照射する方法などが挙げられる。
【0028】
本発明に係る紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂のゲル分率としては、80%以上のものが好ましい。ゲル分率が80%以上のものは有機溶剤浸漬後の樹脂強度が十分保たれ、被覆除去の際、被覆材料は途中で切れることなく除去できる。
【0029】
本発明に係る紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂のヤング率としては、100MPa以上、700MPa以下の範囲にあるものが好ましい。この範囲内の樹脂は、絶縁電線として必要な適度な柔軟性を確保することができる。低ヤング率の樹脂は軟らかいため、絶縁電線の被覆材料として適度な硬さが得られない。また被覆除去の際、浸漬部の被覆材料が途中で切れ、導体上に被覆材料が残りやすい。一方、高ヤング率の樹脂では、自己径巻付試験で評価する可とう性や、急激伸張試験で評価する密着性において、導体と被覆材料の剥離、または被覆材料の亀裂が発生じやすい。
【0030】
本発明に係る紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂のガラス転移温度としては、50℃以上、130℃以下の範囲にあるものが好ましい。低いガラス転移温度の樹脂は、耐熱軟化性に劣るため、コイルの通電時の使用温度において、軟らかくなり、適度な硬さが得られない。また高いガラス転移温度の樹脂は、有機溶剤が浸透しにくく、室温において、浸漬後300秒以内では被覆除去できない。
【0031】
前記有機溶剤は、溶解性パラメータ(SP値)が8.0〜14.5の範囲にあるものが好ましい。例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ブタノールなどのアルコール系溶剤、またはアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、またピリジン、またジメチルホルムアミドなどの窒素系溶剤、またはこれらの混合溶剤が挙げられる。さらに溶解性パラメータ(SP値)が8.5〜12.0の範囲にあるものは、室温において、浸漬後120秒以内で被覆除去できるため好ましい。被覆除去は、加熱または冷却下のいずれかの条件でも実施可能である。しかし安全衛生上、塩素系溶剤に代表される毒性の高いハロゲン系溶剤は好ましくなく、毒性が低く、揮発性の少ない有機溶剤が好ましい。挙げた有機溶剤の中では窒素系溶剤を好適に用いることができる。
【0032】
前記導体の材質は金属であればよく、銅、アルミニウム、鉄、白金、銀、その他の合金などが挙げられる。また、前記導体上に銀、錫、亜鉛、ニッケルなどのメッキを施したものもでもよい。前記材質の中でも導電性のよい銅や軽量化対策の導体として採用されるアルミニウムが好適である。
【実施例】
【0033】
本発明の絶縁電線の実施例および比較例について説明する。
【0034】
実施例1〜6、比較例1〜5は導体径φ1.8mmのアルミニウムおよび導体径φ1.2mm銅上にゲル分率、ガラス転移温度、ヤング率の異なる紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を塗布し、ダイスで過剰な樹脂を絞り落とし、紫外線を照射し絶縁電線を作製した。各試験の結果を表1に示す。実施例、比較例に用いた紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、実施例1:型名KF2757(JSR社製)、実施例2:型名KF2753(JSR社製)、実施例3:型名KF2758(JSR社製)、実施例4:型名KF2754(JSR社製)、実施例5:型名KF2756(JSR社製)、実施例6:型名KF2757(JSR社製)、比較例1:型名R3201(JSR社製)、比較例2:型名FC5Y34(大日本インキ化学工業社製)、比較例3:型名KF2751(JSR社製)、比較例4:型名R2088(JSR社製)、比較例5:型名F2713(JSR社製)である。
【0035】
表1に記載した試験方法は以下の通りである。
【0036】
1.ゲル分率の測定方法:被覆材料の抽出前の質量(W1)を測定し、この試料をソックスレー抽出器に入れ、メチルエチルケトン(沸点80℃)で5時間、抽出を行った。加熱速度は、1時間に10〜20回循環する速度とした。抽出後の質量(W2)を測定し、被覆材料のゲル分率は以下の式に従って算出した。
ゲル分率(%) =抽出後の質量(W2)/抽出前の質量(W1)×100
【0037】
2.ガラス転移温度測定:エーアンドディ社製剛体振り子型物性試験機RPT−3000により測定した。試験機は予め0℃に温調しておき、試料をセットした後、10℃/分の速度で200℃まで昇温した。試料を昇温しながら振り子の振動の対数減衰率を測定し、その対数減衰率ピークの温度をガラス転移温度として読み取った。
【0038】
3.ヤング率:厚さが200μmとなるよう回転速度が調整されたスピンコータで紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を塗布し、窒素気流下、1 J/cm2の紫外線を照射し、得られた樹脂フィルムをJIS K 7113記載の2号ダンベルで打ち抜き、試験温度23℃、湿度50%の環境で、引張速度1mm/minで、2.5%伸び時のヤング率を算出した。
【0039】
4.可とう性:JISC3003記載の試験方法B法に基づき、自己径巻付け試験を行った。作成した絶縁電線と同一径のマンドレルに10回巻付つけて、被覆材料に割れ、亀裂がないか拡大鏡により確認した。亀裂のないものを良、あるものを否とした。
【0040】
5.密着性:JISC3003記載の試験方法に基づき、急激伸長試験を行った。拡大鏡にて亀裂、絶縁被膜の浮きの有無を確認し、破断部から被覆材料の剥離状態の確認を行った。被覆材料の浮きがないものを良とし、あるものを否とした。
【0041】
6.絶縁破壊:JISC3003記載の2個より法に基づき試験を行った。
【0042】
7.被覆除去試験:試験温度は23℃で行い、絶縁電線300mmの試験片を表1の有機溶剤中に100mm浸漬し、300秒後取り出した絶縁電線の浸漬部を布で挟持し被覆除去を行った。除去できたものを○、できなかったものを×とし、除去できるが被覆材料が導体上に残るものを△とした。また、被覆除去できた試料は最短浸漬時間を調べた。
【0043】
【表1】

【0044】
被覆除去試験において、溶解性パラメータ(SP値)が8.0〜14.5の有機溶剤に浸漬することにより、実施例1〜6は浸漬時間300秒以内で被覆材料を除去することが可能であり、被覆材料は鞘状で引き抜くことができ、導体上に被覆材料が残らない。一方、比較例1、2よりヤング率の高い樹脂の場合では、自己径巻付試験や急激伸張試験において導体から被覆材料が浮く。また比較例2よりガラス転移温度が高いと浸漬時間300秒では被覆除去できなかった。比較例3、4、5ではゲル分率、ガラス転移温度、ヤング率の何れかの特性が範囲内から外れると、被覆除去可能であるが、被覆除去時に被覆材料が途中で切れ、被覆材料が導体上に残る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線において、容易に被覆除去が可能な絶縁電線およびその端末処理方法であり、コイルなどの端末処理作業が容易になる。
【符号の説明】
【0046】
1:被覆材料
2:導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を被覆した絶縁電線であり、前記紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、ゲル分率が80%以上、ガラス転移温度が50℃以上、130℃以下、ヤング率が100MPa以上、700MPa以下の範囲であることを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記導体は、銅またはアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
【請求項3】
請求項1記載の絶縁電線を溶解性パラメータ(SP値)が、8.0〜14.5の範囲の有機溶剤に浸漬させて被覆除去をする端末処理方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−14510(P2011−14510A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160175(P2009−160175)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】