説明

絶縁電線とその製造方法

【課題】絶縁電線に端子を容易に形成できる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電着槽8内を導体1を通過させて、その外面に電着層を付着させ、その次に、電着層を焼付工程にて焼付ける。電着槽8にて付着した未硬化状態の電着層を噴出流体にて吹き飛ばして、導体露出部を形成する。
【効果】導体露出部を、わざわざ機械的に削り取って形成する作業が必要がないので、全体として製造能率が改善でき、かつ、作業のばらつきによる品質不良の問題も発生しない。かつ、機械的手段にて絶縁層を削り取る作業では、超微細な粉塵を発生して、機密機器・電子部品名等へ悪影響を与えるが、このような問題も確実に防止できる利点もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁電線として、例えば、マグネットワイヤの製造方法として、その耐熱性や、可撓性(絶縁層の剥がれ難さ)や、占積率の改善について、多くの提案がなされている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−174561号公報
【特許文献2】特開2003−317547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、マグネットワイヤや高電圧トランスコイルや非接触型ICカードアンテナコイル等の用途に於て、必ず端子が必要である。この端子加工に関しては、旧態然として、機械的に絶縁層を削り取る方法が用いられている。
【0004】
そこで、本発明は、機械的に絶縁層を削り取る作業が省略可能な絶縁電線を、安価に製造することを目的とする。さらに、コンパクト化が要望される前記用途に於て、コイル状に巻設したり、多層に重ねた状態で、一層のコンパクト化を図り得る絶縁電線を提供することを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る絶縁電線は、導体に電着・焼付けした絶縁層を被覆して成る絶縁電線に於て、上記絶縁層を形成するための焼付け前の電着層の部分的な非形成又は部分的な除去によって形成された導体露出部を具備する。
【0006】
また、本発明は、電着槽内を連続的に通過させつつ導体の外面に電着層を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体の外面に付着した電着層を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体の外面に絶縁層を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、上記電着層付着工程と上記焼付工程の間にて、上記導体の外面に付着した未硬化状態の上記電着層を、噴出流体にて吹き飛ばして、部分的に上記電着層を除去し、上記焼付工程を経て上記導体が部分的に露出状の導体露出部を形成する方法である。
【0007】
あるいは、本発明は、電着槽内を連続的に通過させつつ導体の外面に電着層を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体の外面に付着した電着層を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体の外面に絶縁層を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、上記電着層付着工程中に、上記電着槽内にて導体の外面に接触しつつ導体の通過走行方向と同一方向に移動する可動マスキング部材によって、導体を部分的にマスキングし、導体の外面に部分的に電着層を形成させずに、その後の上記焼付工程にて、導体露出部を形成する方法である。
【0008】
また、本発明は、電着槽内を連続的に通過させつつ導体の外面に電着層を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体の外面に付着した電着層を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体の外面に絶縁層を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、上記電着層付着工程中に、上記電着槽内を通過走行中の導体の外面に摺接する摺動マスキング部材によって、導体を部分的にマスキングし、導体の外面に部分的に電着層を形成させずに、その後の上記焼付工程にて、導体露出部を形成する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る絶縁電線によれば、導体露出部を、わざわざ機械的に削り取って形成する作業が必要がないので、全体として製造能率が改善でき、かつ、作業のばらつきによる品質不良の問題も発生しない。かつ、機械的手段にて絶縁層を削り取る作業では、超微細な粉塵を発生して、機密機器・電子部品名等へ悪影響を与えるが、このような問題も確実に防止できる利点もある。また、機械的加工によって導体に傷を付けて、折損や破断の原因となることも有効に防ぎ得る。
【0010】
本発明に係る絶縁電線の製造方法によれば、連続的に長尺の絶縁電線を製造する途中で、部分的に絶縁層の存在しない導体露出部が、能率的に、かつ、粉塵を発生させずに、かつ、高品質を保ちつつ、容易かつ確実に製造できる。特に、モータやトランス等のコイルの小型化と高性能化の要望に応えて、コンパクト化を図ることが可能となり、大量生産も実現容易となる。また、放熱性の良好なモータやトランス等のコイルの実現にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
【0012】
図1と図2に於て、絶縁電線3として、横断面が平角状(つまり、矩形状乃至一文字状)であって、その幅寸法Wが、長手方向に渡って、大小変化する各種のものを例示する。なお、図示省略したが、厚さ寸法は、幅寸法Wの大きい部位が小さく、幅寸法Wの小さい部位は大きくなっている。
【0013】
図1(a)〜(d)に於て、点々にて示した部位は、絶縁層5が導体1に被覆されている部位を示し、点々の存在しない部位は導体露出部7を示す。
【0014】
図7(a)は図1(c)のA−A断面であり、図7(b)は図1(c)のB−B断面である。このように、部分的に導体1が露出状の導体露出部7が、長手方向に所定ピッチにて、かつ、平面視幅方向に横切って配設(形成)されている。
【0015】
この絶縁電線3は、導体1の外面2に、電着・焼付けにて絶縁層5が被覆されているが、焼付け工程前に部分的に電着層を非形成とすることによって、導体露出部7を形成するか、あるいは、焼付け工程前に部分的に電着層を除去することによって、導体露出部7を形成する。
【0016】
図4に於て、製造方法の全体を簡略化して示し、8は電着槽であり、繰出しローラ9から、導体を繰出して、例えば、円形断面の導体を平角線に圧延する圧延機、及び水洗槽等の加工装置10(詳細図示省略して2点鎖線にて示した)を通過させ、方向変換ローラ11を介して、導体1を矢印Gの如く下方から上方へ走行させつつ、電着液12を貯留した電着槽8の底壁を通して下から上へ連続的に導体1は電着槽8内を通過し、導体1の外面に電着液12中の(後述の)樹脂微粒子を付着させて電着層を形成する。これを電着層付着工程と呼ぶ。
【0017】
図5は、この電着層付着工程の概要説明のための簡略平面図であり、図4と合わせて説明すれば、電着槽8内にはマイナス電極13が差し込まれており、矢印G方向に走行通過する平角線(導体1)はプラス極となるように、(図示省略の)電源と接触される。電着液12としては、エポキシ系水分散(エマルジョン)型電着ワニス、あるいは、ポリイミド系やポリアミドイシド系の電着ワニスが、好適である。模式的に小さな円にて示したのは、上述のエポキシ系等の樹脂微粒子14であって、泳動中の樹脂微粒子14は、マイナスに帯電しており、プラス極としての導体1の外面2に効率良く次々と付着して電着層15を形成する。
【0018】
そして、図4に示すように、導体1の外面に付着した電着層15を連続的に焼付ける焼付工程を行うために、焼付炉16が設けられており、この焼付炉16を通過することで、導体1の外面2(図2(b)参照)に、絶縁層5が被覆形成される。その後、図外の巻取ローラに巻取られてゆく。
【0019】
この電着槽8と焼付炉16の間に導体露出部形成装置17が付設される。即ち、電着層付着工程と焼付工程の間にて、導体1の外面2に付着した、図6(a)に示すような未硬化状態の電着層15を、図6(b)に示すように、噴出流体Hにて吹き飛ばすことで、部分的に電着層15を除去(図6(b)の矢印J参照)する。この電着層15が部分的に導体1の外面2から除去された部分70は、その後の焼付工程を経て、図1(a)〜(d)等に示したような導体露出部7を構成する。
噴出流体Hとしては、エアー(空気)が望ましいが、これ以外のガス(気体)や、水等の液体、若しくは水蒸気等が使用できる。
【0020】
図6に於て、平角線状の導体1の上面と下面に向かって2本のノズル18,18が対応し、図示省略の位置検出手段にて、極微小時間にわたり、流体Hを噴出することで、図6(a)から(b)の如く、未硬化(未焼付)の電着層15は吹き飛ぶ。この図6のノズル18,18の配置は、図1と図2に示したように、平角線状の導体1の幅方向に、除去部分70(導体露出部7)を形成するのに好適である。上記位置検出手段としては、図1(a)〜(d)のように幅寸法Wが大小変化する場合には、その幅寸法Wを検出すれば良く、あるいは、近接センサにて山と谷の位置を検出させても良く、さらには、連続的に送られてくる導体1の長さを計測する計尺装置を使用しても良い。そして、図6に於て、ノズル18を同図の左右方向に進退させる往復手段を付設して、導体1の幅寸法Wの大小変化に対応して、側端縁の山と谷の位置変動に対応させるも、好ましい(図示省略)。
なお、図6に於て、ノズル18,18を一方のみとして、導体1の一面にのみ除去部分70(導体露出部7)を形成するも好ましい。
【0021】
次に、図7は(図6に代わる)他の実施の形態を示す。即ち、図7(a)に示すように、横断面形状矩形の短辺19に付着した未硬化(未焼付)の電着層15を、図7(b)に示す如く、ノズル18からの噴出流体Hにて部分的に吹き飛ばして、電着層15を短辺19のみから除去(矢印J参照)し、この除去部分70は、その後の焼付工程を経て、例えば、図3に示すように、導体露出部7を形成する。図3(b)(c)は各々図3(a)のB−B,C−C断面を示し、図1と図2では横断面矩形の長辺20に於て導体露出部7が形成されているのに対し、図3では短辺19に於て導体露出部7が形成される。なお、図7に示すように、流体遮蔽部材21を設けて、噴出流体Hが短辺19以外の部分から電着層15を吹き飛ばさないようにすることも望ましい。
【0022】
次に、図8と図9は別の実施の形態を示す。即ち、前述の図4と比較すれば明らかなように、図4に示した導体露出部形成装置17の代わりに、可動マスキング部材22が電着槽8内に設けられる。
【0023】
図8に於て、繰出しローラ9から、導体を繰出し、例えば、円形断面の導体を平角線に圧延する圧延機、及び、水洗槽等の加工装置10を通過させ、方向変換ローラ11を経て、電着液12の入った電着槽8を下から上へ(矢印Gのように)通過させて、導体1の外面に電着液12中の樹脂微粒子14を(図5のように)付着させるが、その際、可動マスキング部材22によって、図9では、横断面矩形の(導体1の)長辺20,20の内の一方には樹脂微粒子14の接近を阻止し、図13に示すように、一方の長辺20を電着層非形成部72として、その後の焼付工程にて、導体露出部7が構成される。電着層非形成部72及びこれに対応した導体露出部7は、部分的に設けられるといえども、前述の図1〜図7の実施の形態の除去部分70及び対応した導体露出部7と比較すると、導体1の外面2に占める割合は大きい。つまり、図9と図13では、長手方向全体に渡って、横断面矩形の長辺20,20の内の一方に、電着層非形成部72(導体露出部7)が形成されている。
【0024】
図8に戻って説明すると、電着槽8から上方へ走行しつつ連続的に送り出される電着層付着導体1は、焼付炉16に送り込まれ、この焼付炉16内で焼付けられて(焼付工程を経て)、絶縁層5が被覆形成され、巻取ローラ23に巻取られる。
【0025】
このように、図9及び図13にて示した実施の形態では、絶縁電線3の構成は次のように言える。即ち、絶縁層5を形成するための焼付け前の電着層15の部分的な非形成によって、(その後の焼付工程を経て)導体露出部7が形成される。
【0026】
図9についてさらに追加説明すれば、水平軸心廻りに遊転自在な(少なくとも)上下一対のローラ24,25間に、ベルト26を懸架して、これを下から上へ走行する導体1に押圧すると、ベルト26はその押圧(接触)に伴って、導体1の走行方向Gと同方向へ自走する。このように、ベルト26が、導体1の一つの長辺20に接触してマスキング作用をなす。なお、上下一対のローラ24,25の間に、一本乃至複数本の押圧ローラを追加して、導体1に対して一層密にベルト26を接触させて、マスキング作用を確実とするも好ましい(図10参照)。また、上下一対のローラ24,25の内の少なくとも一方を、駆動ローラとして、回転駆動させるも、自由である。また、導体1の幅寸法Wが、例えば、図1(a)〜(d)のように大小変化する場合、ベルト26の幅寸法は、導体1の幅寸法Wの最大部位に対応して、十分に大きく設定しておく。また、導体1は(図9では簡略化して同一断面にて示したが)、厚さ寸法も大小変化する場合、ローラ24,25を水平方向に前進後退自在として弾発部材にて押圧する等によって、厚さ寸法の大小変化に、追随し易くするのが望ましい。
【0027】
図8と図9と図13に示した製造方法をまとめると、次のように言うことができる。即ち、電着層付着工程中に、電着槽8内にて導体1の外面2に接触しつつ導体1の通過走行方向Gと同一方向に移動する可動マスキング部材22によって、導体1を部分的に(長辺20,20の一方のみを)マスキングし、導体1の外面2に部分的に電着層15を形成させず、その後の焼付工程にて、導体露出部7を形成する方法である。このように、電着層非形成部72を、まず形成し、次工程(焼付工程)にて導体露出部7とする方法である。
【0028】
次に、図10に示すさらに別の実施の形態に於て、(図9に2点鎖線にて示した電着槽8を図10では省略して示しているが、)上下一対のローラ24,25の間に上下所定ピッチにて複数本のローラ27…を平行に配設し、これに(2点鎖線にて示すように)ベルトを懸架してマスキング部材22としているが、このマスキング部材22としてのベルトは、(図9とは相違して、)横断面矩形の導体1の短辺19,19の少なくとも一方に押圧(接触)されている。この図10に示した製造方法によって得られる中間製品・完成製品の横断面図を図15に例示した。図15と図13に於て、同一符号は同様の構成であり、電着層非形成部72、及びこれに対応してその後の焼付工程にて形成される導体露出部7が、短辺19側に存在している点が、図13の長辺20側に存在している点と、相違する。
【0029】
図10に於て図9と同一の符号は同様の構成であるので、詳細説明は省略する。なお、図10では導体1は同一横断面にて簡略化して示しているが、この導体1が図1(a)〜(d)のように、幅寸法Wが大小変化する場合、複数本のローラ24,25,27…を水平方向に前進後退自在に弾発部材にて押圧する等によって、追随させるのが好ましい。このとき、図10では、いわゆるキャタピラ構造であるので、追随し易い。なお、ベルト26は、合成樹脂やゴム等の絶縁材質のものが使用される。
【0030】
次に、図11又は図12は、各々別の実施の形態を示す。即ち、図8に示した可動マスキング部材22の代わりに、摺動マスキング部材42を、電着槽8内に設けている。
【0031】
詳しく説明すると、電着層付着工程中に、電着槽8内を通過走行中の導体1の外面2に摺接する摺動マスキング部材42によって、導体1を部分的にマスキングし、導体1の外面2に部分的に電着層15を形成させず、その後の焼付炉16での焼付工程にて、導体露出部7を図13又は図15のように形成する方法であり、図13は図11に示した方法により、図15は図12に示した方法によって、製造される。摺動マスキング部材42は、合成樹脂やゴム等の絶縁材から成る。なお、図11又は図12に於ては、一枚の摺動マスキング部材42を使用しているが、これを、複数枚に分割して、各々を独立進退自在として、走行中の導体1に弾発的に押付けることで、図1(a)〜(d)等に例示した幅寸法W又は厚さ寸法の(長手方向に渡っての)大小変化に、容易に追随して、確実にマスキング作用をなさしめるも望ましい(図示省略)。なお、図11又は図12に於て、摺動マスキング部材42は、電着槽8内に於て、(図示省略の)保持部材にて支持されており、そのとき弾発部材にて押圧して導体1に対して弾発力をもって接触させるのが望ましい。
【0032】
そして、図9又は図11の製造方法によって製造された、図13に例示した絶縁電線3は、横断面矩形の一長辺20が、導体露出部7であるが、図14に示したように、積重ね状に巻いた状態で、隣り合う(下位の)導体1の絶縁層5に、(上位の)導体1の導体露出部7が接触して、相互の絶縁状態が確保できる。
【0033】
従って、電気・電子機器の小型化・高性能化・高能率化の要望に応えて、図14に示すように、その積重ねた高さ(厚さ)寸法Yは、従来よりも十分に小さくできて、電気・電子機器のコンパクト化に貢献できる。
【0034】
また、上述の小型化の要望により、近年、絶縁層5の肉厚が極端に薄くなっているが、それに伴って、絶縁層5内に製造時に形成されるピンホールが、絶縁不良を起こすという問題が発生している。このような対策として、図13と図14に示した本発明に係る絶縁電線3は有効であり、絶縁層5の肉厚を(2倍未満ではあるが)増大させることによって、ピンホールが製造時に形成しにくくでき、しかも、コイル状等に巻いて積重ね状としたときの全体の厚さ(高さ)寸法を増加させずに済む。
【0035】
次に、図10又は図12の製造方法によって製造された、図15に例示した絶縁電線3は、横断面矩形の一短辺19が導体露出部7であるが、この図15に示した絶縁電線3を、左右方向と上下方向に重ねて巻いた(積み重ね状とした)状態(図示省略)では、相互の絶縁状態が確保できると共に、その上下に積み重ねた寸法が、従来よりも十分に小さくできて、電気・電子機器のコンパクト化に貢献できる。
【0036】
また、図1に於て、符号Pは、最終製品として使用される際に切断される1ピッチを示し、用途によって、切断位置を変更したり、ピッチPを2倍以上にとるも、自由である。そして、いずれにせよ、図4〜図7に於て説明した製造方法によって、絶縁電線3の長手方向の任意の(所望の)位置に接点(端子部)を容易に形成可能となり、その実用的な応用範囲は広大であるといえる。
【0037】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、それ以外にも設計変更自由であって、導体1の横断面形状は、平角状(つまり、矩形や一文字状や正方形)以外に、丸形や六角形状等とであっても良く、また、図1と図3に例示した幅寸法や厚さ寸法の長手方向に渡っての変化の他に、勾配(傾斜)的と段階的の両変化を組み合わせたものであっても、それ以外、種々のものに適用自由である。(勿論、同一断面形状の導体1にも適用可能である。)
【0038】
また、焼付炉16及び電着槽8として、図4に示したように、各々1個のみを設ける場合の他に、各々2個以上を配設するも好ましい場合もあり、そのときには、各々の電着槽8と焼付炉16の間に、導体露出部形成装置17を配設して、導体露出部7の予定箇所へは絶縁層5が被覆しないようにする。あるいは、図8に於て、焼付炉16と電着槽8が各々1個の場合を示したが、2点鎖線34にて示した部位に、別の焼付炉16と電着槽8内を配設しても自由であって、そのときには、各電着槽8内に、可動マスキング部材22又は摺動マスキング部材42を設ける。
なお、乾燥装置を、焼付炉16の手前に配設しても自由である。
【0039】
以上のように、本願発明に係る絶縁電線3は、導体1に電着・焼付けした絶縁層5を被覆して成る絶縁電線に於て、絶縁層5を形成するための焼付け前の電着層15の部分的な非形成又は部分的な除去によって形成された導体露出部7を具備する構成であるので、従来のように機械的に焼付後の絶縁層5を削り取る手間が省かれて容易に端子を形成できる。また、従来のように、機械的に削り取る際に発生する微粉塵が本発明のものでは、全く発生せず、電気・電子機器や精密機器の製造工程中の不良発生を防いで、極めて好ましい。
【0040】
次に、本発明は、電着槽8内を連続的に通過させつつ導体1の外面2に電着層15を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体1の外面2に付着した電着層15を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体1の外面2に絶縁層5を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、電着層付着工程と焼付工程の間にて、導体1の外面2に付着した未硬化状態の電着層15を、噴出流体Hにて吹き飛ばして、部分的に電着層15を除去し、焼付工程を経て導体1が部分的に露出状の導体露出部7を形成する方法であるので、長手方向の所望の位置に容易かつ簡単に能率良く、端子を形成できる。
【0041】
また、電着槽8内を連続的に通過させつつ導体1の外面2に電着層15を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体1の外面2に付着した電着層15を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体1の外面2に絶縁層5を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、電着層付着工程中に、電着槽8内にて導体1の外面2に接触しつつ導体1の通過走行方向Gと同一方向に移動する可動マスキング部材22によって、導体1を部分的にマスキングし、導体1の外面2に部分的に電着層15を形成させずに、その後の焼付工程にて、導体露出部7を形成する方法によれば、図13や図15に示すように、横断面に於て一部分のみであって、かつ、全長にわたって導体露出部7を形成するのが容易であって、大量生産に好適であり、コイル等として、図14のように全体寸法Yのコンパクト化を図ることができる。かつ、導体1の幅寸法や厚さ寸法が大小変化する場合にも、可動マスキング部材22は追随して、動くことで、高品質の製品が得られる。
【0042】
また、電着槽8内を連続的に通過させつつ導体1の外面2に電着層15を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体1の外面2に付着した電着層15を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体1の外面2に絶縁層5を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、電着層付着工程中に、電着槽8内を通過走行中の導体1の外面2に摺接する摺動マスキング部材42によって、導体1を部分的にマスキングし、導体1の外面2に部分的に電着層15を形成させずに、その後の焼付工程にて、導体露出部7を形成する方法によれば、図13や図15に示すように、横断面に於て一部分のみであって、かつ、全長にわたって導体露出部7を形成するのが容易であって、大量生産に好適であり、コイル等として、図14のように全体寸法Yのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る絶縁電線の各種の実施形態を示す平面図である。
【図2】要部拡大断面図である。
【図3】絶縁電線の他の実施の形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は、(a)のB−B拡大断面図、(c)は、(a)のC−C拡大断面図である。
【図4】本発明に係る製造方法を説明する簡略構成説明図である。
【図5】電着の原理の概要説明図である。
【図6】作用説明のための要部拡大図である。
【図7】作用説明のための要部拡大図である。
【図8】本発明の製造方法の別の実施の形態を説明する簡略構成説明図である。
【図9】要部説明斜視図である。
【図10】他の実施の形態を示した要部説明斜視図である。
【図11】別の実施の形態を示した要部説明斜視図である。
【図12】さらに別の実施の形態を示した要部説明斜視図である。
【図13】本発明に係る絶縁電線の別の実施の形態を示す断面図である。
【図14】使用状態と作用を説明するための断面図である。
【図15】本発明に係る絶縁電線のさらに別の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 導体
2 外面
3 絶縁電線
5 絶縁層
7 導体露出部
8 電着槽
12 電着液
15 電着層
16 焼付炉
17 導体露出部形成装置
22 可動マスキング部材
42 摺動マスキング部材
70 除去部
72 電着層非形成部
H 噴出流体
G 通過走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体(1)に電着・焼付けした絶縁層(5)を被覆して成る絶縁電線に於て、上記絶縁層(5)を形成するための焼付け前の電着層(15)の部分的な非形成又は部分的な除去によって形成された導体露出部(7)を具備することを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
電着槽(8)内を連続的に通過させつつ導体(1)の外面(2)に電着層(15)を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体(1)の外面(2)に付着した電着層(15)を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体(1)の外面(2)に絶縁層(5)を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、
上記電着層付着工程と上記焼付工程の間にて、上記導体(1)の外面(2)に付着した未硬化状態の上記電着層(15)を、噴出流体(H)にて吹き飛ばして、部分的に上記電着層(15)を除去し、上記焼付工程を経て上記導体(1)が部分的に露出状の導体露出部(7)を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項3】
電着槽(8)内を連続的に通過させつつ導体(1)の外面(2)に電着層(15)を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体(1)の外面(2)に付着した電着層(15)を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体(1)の外面(2)に絶縁層(5)を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、
上記電着層付着工程中に、上記電着槽(8)内にて導体(1)の外面(2)に接触しつつ導体(1)の通過走行方向(G)と同一方向に移動する可動マスキング部材(22)によって、導体(1)を部分的にマスキングし、導体(1)の外面(2)に部分的に電着層(15)を形成させずに、その後の上記焼付工程にて、導体露出部(7)を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
電着槽(8)内を連続的に通過させつつ導体(1)の外面(2)に電着層(15)を付着形成させる電着層付着工程の後に、導体(1)の外面(2)に付着した電着層(15)を連続的に焼付ける焼付工程を経て、導体(1)の外面(2)に絶縁層(5)を被覆形成する絶縁電線の製造方法に於て、
上記電着層付着工程中に、上記電着槽(8)内を通過走行中の導体(1)の外面(2)に摺接する摺動マスキング部材(42)によって、導体(1)を部分的にマスキングし、導体(1)の外面(2)に部分的に電着層(15) を形成させずに、その後の上記焼付工程にて、導体露出部(7)を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−177068(P2008−177068A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9754(P2007−9754)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】