説明

綿棒の加工装置

【課題】成形後の綿部の先端部に所定形状の切込み部を正確且つ簡単に形成することができる新規な綿棒の加工装置を提供する。
【解決手段】本発明の綿棒の加工装置は、軸部の一端ないし両端に綿部を備えた綿棒の加工装置において、上記綿部の側周面に当接する所定の間隔を隔てて対向配置されている2枚の支持基板を備えたホルダーと、上記綿部の先端面に当接するように上記2枚の支持基板の間に設けられる支持台部と、上記綿部の先端部に作用して所定深さの切込み部を形成するカッター刃と、を具備することによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療現場や家庭において消毒液等を塗布するための治療補助具、耳や鼻の掃除具、化粧の補助具、精密機器等の清掃具等として使用されている綿棒の加工装置に係り、特に綿部の先端部に切込み部を形成する場合に使用される綿棒の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1、特許文献2に示すように、木軸や紙軸によって構成されている軸部の一端ないし両端に綿繊維を丸めて膨らみを持たせた綿部を備えた綿棒が従来から使用されている。上記綿棒は耳や鼻の掃除等に使用されている一般用の他、化粧に使用されている化粧用、細菌検査や患部の消毒等に使用されている医療用、精密機器の細部の清掃等に使用されている工業用等があり、種々の分野で幅広く使用されている。
【0003】
ところで、医療現場においては、身体の表面にできた「イボ」等を効果的に除去する為の様々な取り組みがなされている。この点について詳しく説明する。
皮膚に生じる様々な小腫瘍には、代表的なものとして、ヒトパピローマウイルスによる感染症である疣贅、すなわち尋常性疣贅(いわゆるいぼ)、足底疣贅(足の裏にできるイボ)あるいは尖圭コンジローマ(性器のイボ)、ヒトポックスウイルス感染症である伝染性軟属腫(いわゆる水イボ)、老人性角化症(いわゆる年寄りのイボ)、老人性色素斑、日光角化症、スキンタッグ、色素性母斑(いわゆるほくろ)などがある。
【0004】
感染性の疣贅は、一般に足底・頭・肘・膝・指の関節等、通常時も皮膚への刺激が多い部位にできやすく、治療を行っても治りが悪いのみならず、その表面からウイルスを常時排出しているため、他人の皮膚に感染し、同様の疣贅が生じることがあるため、早急に確実に除去できる治療の必要がある。又、手掌や足底などにできたヒトパピローマウイルスによる疣贅はミルメシアも含め、学童期の子供やスポーツ選手に多く、学校のプールなどで常時ウイルスに感染したり、スポーツにより絶えず皮膚が傷害を受けるため、ウイルスの自家接種がおき、放置しておくと数が飛躍的に増えてくる。又、ウイルスの増殖力が強く、放置しておくと他の皮膚部位に同様の疣贅が現れる。
【0005】
これら良性腫瘍の治療法としては、例えば、凍結療法(クリオテラピー)、電気凝固、レーザー焼痂、手術切除等の治療法が一般的である。その中でも日常診療では簡便な凍結療法が広く行われている。この種の凍結療法では、液体窒素で患部を瞬間的に凍結させ、部分的に火傷の状態を起こすことにより、患部を壊死に陥らせ、あるいは壊死とともに周囲組織に水疱形成を合わせて引き起こし、患部を皮膚から脱落させ、治癒させるものである。処置そのものにかなりの痛みを伴うほか、処置後も患部に激痛が伴うことがある。
【0006】
又、上記したように、凍結療法には痛みを伴うため、例えば、尋常性疣贅の場合、1〜3週の間隔をおいて凍結療法を施す。又、治療回数は1〜4回を要する。又、疣贅の数が多いとそれだけ凍結療法を施す回数が増え、治療が苦痛になる 疣贅の液体窒素療法の場合、通常、治療終了4〜7日後に壊死効果が強くみられ、10〜14日目には、患部が痂皮形成し、自然に脱落することで治癒する。又、効果に個人差こそあるが、疣贅が壊死組織となり脱落するまでに、凡そ、数週から2ヵ月以上と長い日数が必要とされる。
【0007】
又、凍結療法には綿球法、スプレー法、凍結プローベ法がある。綿棒による凍結治療の場合、患部のサイズよりやや大きい綿棒をマイナス196℃の液体窒素に浸漬させ、直ちに患部に圧抵して凍結させる方法であるが、この方法では、比較的小さい、病変の深達度が3mm以下の皮膚表層に限局した病変の凍結療法によい。又、スプレー凍結治療の場合、特殊な噴霧器を使い、その先端を患部表面から1cm離して、ジメチルエーテルなどのガスや液体窒素、液化NOガスを0.1〜0.5kg/cm2の圧力で5〜30秒間噴霧することにより、患部を凍結させる。患部の凍結温度は、ジメチルエーテルでは−57℃、液体窒素では−196℃、液化亜酸化窒素ガスでは−89℃である。
【0008】
又、凍結プローベを用いる場合は、銅製の凍結端子を直接液体窒素に浸漬して十分に冷却した後患部に押し当てたり、特殊な凍結装置の先端に装着した銅製凍結端子に絶えず冷却剤を補給しながら患部に圧抵することにより治療する。
これら凍結療法の内、スプレー法や凍結プローベ法を行う場合、機器が高価であったり、複雑な操作を必要とする。又、スプレー法は深達性あるいは広範囲の病変の治療に用いられるが、冷却ガスの噴霧範囲の制御が困難で、しばしば、予期せぬ低温火傷を起こすことがある。これらの事情のため、凍結療法を施す場合には日常の診療では綿球法がもっとも良く行われている。
【0009】
次に、電気凝固法であるが、高周波を発する機器を用いて、局所麻酔下に病変を蒸散させて除去する。その後、約2週間で痂皮が脱落し、しばらく赤味と凹みがみられ、3ヶ月から半年かけてこれらは徐々に消失していく。治療は、病変部の反応を見ながら、3ヶ月に1回程度のペースで処置を行なう。
【0010】
さらに、レーザー焼痂では、局所麻酔下に炭酸ガスレーザーを用いレーザー光を照射する。レーザー光は約99%が皮膚組織内の水分に吸収され、そのとき発生した熱エネルギーが病変部を気化・蒸散させる。多くの場合、数回の施術を要する。手術切除では、局所麻酔下に病変部をメスなどで切除して、除去する。
【0011】
このように、良性腫瘍の治療として、凍結療法(クリオテラピー)、電気凝固法、レーザー焼痂法、手術切除等の治療法があるが、日常の診療では綿球法を採用した凍結療法(クリオテラピー)がもっとも良く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−349296号公報
【特許文献2】特開2006−167395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、従来の綿球法を採用した凍結療法(クリオテラピー)では、病変部と綿棒の綿球の接触する面積が小さく、かつ液体窒素は常温で容易に気化するため、病変部が冷却される時間が短く、規則的な楕円等温線でみれば、冷却される部分が十分でない。このため、従来の綿球による凍結療法では、皮膚の深部に達する大きな病変に対して十分な効果を発揮できないことがあり、治療抵抗性手掌や足底などにできた疣贅では、凍結療法を行ってもなお、疣贅が拡がってくることがあった。
【0014】
このような現状に対して、本件特許出願人は同日付提出の別の特許願において、新たに綿部の形状に工夫を凝らした新たな面棒を提案している。具体的には、綿部の先端部に所定形状の切り込み部を設けたものである。しかしながら、そのような新たな面棒を加工するに際して有効な加工装置が存在していないという問題があった。
【0015】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、成形後の綿部の先端部に所定形状の切込み部を正確且つ簡単に形成することができる新規な綿棒の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による綿棒の加工装置は、軸部の一端ないし両端に綿部を備えた綿棒の加工装置において、上記綿部の側周面に当接する所定の間隔を隔てて対向配置されている2枚の支持基板を備えたホルダーと、上記綿部の先端面に当接するように上記2枚の支持基板の間に設けられる支持台部と、上記綿部の先端部に作用して所定深さの切込み部を形成するカッター刃と、を具備していることを特徴とするものである。
又、請求項2による綿棒の加工装置は、請求項1記載の綿棒の加工装置において、上記カッター刃の切込み深さは、常に一定の深さに設定されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による綿棒の加工装置は、請求項1記載の綿棒の加工装置において、上記カッター刃は、切込み深さが調節自在に設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4による綿棒の加工装置は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の綿棒の加工装置において、上記2枚の支持基板は、両者の間隔が調節自在に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明による綿棒の加工装置によると、軸部の一端ないし両端に綿部を備えた綿棒の加工装置において、上記綿部の側周面に当接する所定の間隔を隔てて対向配置されている2枚の支持基板を備えたホルダーと、上記綿部の先端面に当接するように上記2枚の支持基板の間に設けられる支持台部と、上記綿部の先端部に作用して所定深さの切込み部を形成するカッター刃と、を具備しているから、上記2枚の支持基板によって綿棒の幅方向の位置決めが実行され、上記支持台部によって綿棒の長さ方向の位置決めが実行される。これにより、所定深さの切込み部を有する綿棒を正確且つ簡単に、効率良く製造できるようになる。
又、上記カッター刃の切込み深さを常に一定の深さに構成した場合には、カッター刃の切込み深さを調節するための構造が不要になるから、綿棒の加工装置の構造が簡単になり、安価で持ち運びが便利な綿棒の加工装置が提供できるようになる。
又、上記カッター刃の切込み深さを調節自在に構成した場合には、綿部の大きさや形状あるいは綿棒の使用対象の違い等に対応してカッター刃の切込み深さを最適な深さに調節することが可能になる。
又、上記2枚の支持基板の間隔を調節自在に設定した場合には、綿部の大きさや形状の違い等に対応して2枚の支持基板の間隔を最適な間隔に調節することが可能になり、適用できる綿部の範囲が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す側断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す側断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を一部判断して示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態を示す図で、綿棒の加工装置を示す側断面図である。
【図12】本発明の綿棒の加工装置によって形成される種々の切込み部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の(1)第1の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その使用方法について説明し、図5を参照して本発明の(2)第2の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その調節方法について説明する。又、図6を参照して本発明の(3)第3の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その調節方法について説明し、図7を参照して本発明の(4)第4の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その調節方法について説明する。
【0020】
又、図8を参照して本発明の(5)第5の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その調節方法について説明し、図9を参照して本発明の(6)第6の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その使用方法について説明する。又、図10を参照して本発明の(7)第7の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その使用方法について説明し、図11を参照して本発明の(8)第8の実施の形態による綿棒の加工装置の構造と、その使用方法について説明する。
【0021】
(1)第1の実施の形態(図1乃至図4、図12(a)参照)
本発明の綿棒の加工装置1は、軸部3の一端ないし両端に綿部5を備えた綿棒Mを加工対象とし、上記綿部5の先端部5aに対して所定の切込み深さ(H)の切込み部7を形成するのに使用される。
具体的には、上記綿部5の側周面6に当接する所定の間隔(B)を隔てて対向・配置されている2枚の支持基板15、17を備えたホルダー19と、上記綿部5の先端面4に当接するように上記2枚の支持基板15、17の間に設けられる支持台部21と、上記綿部5の先端部5aに作用して所定深さ(H)の切込み部7を形成するカッター刃23と、を具備することによって綿棒の加工装置1は構成されている。
【0022】
そして、本実施の形態による綿棒の加工装置1Aにあっては、上記カッター刃23の切込み深さ(H)は、常に一定の深さに設定されており、固定ネジ25を締め付けることによって上記2枚の支持基板15、17と、支持台部21と、カッター刃23とが一体に組み付けられ、上記カッター刃23の切込み深さ(H)が自動的に定まるように構成されている。
【0023】
ホルダー19は、本実施の形態では上記2枚の支持基板15、17のみによって構成されている。支持基板15と支持基板17は、一例として幅(W)が20mm、長さLが100mm、厚さtが2.5mmの矩形平板状の部材で、図示のように設置面27に対して立設された姿勢で使用される。
そして、対向・配置される支持基板15と支持基板17のそれぞれの内壁面が加工対象となる綿部5の側周面6に当接して綿部5を支持する側部支持面15a、17aになっている。
【0024】
又、支持基板15には、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aを受け入れる受入れ穴29が2個設けられており、該受入れ穴29の内径は、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aの外径よりも大きく、上記固定ネジ25の頭部25bの外径よりも小さくなるように形成されている。
一方、支持基板17には、上記支持基板15における受入れ穴29、29と対向する位置に上記固定ネジ25の雄ネジ部25aと螺合する雌ネジが刻設されたネジ穴31が2個設けられている。
【0025】
支持台部21は、幅寸法が上記2枚の支持基板15、17間の間隔(B)を決める綿部5の直径とほぼ同じ寸法の矩形ブロック状の部材で、一例として前後の端面と上下面を接続するコーナー部には円弧状の面取り加工が施されている。
そして、上記支持台部21の上面が加工対象となる綿部5の先端面4に当接して綿部5を支持する底部支持面21aになっている。又、上記底部支持面21aの幅方向の中心には、次に述べるカッター刃23を受け入れるための係合溝37Aが長さ方向に延びるように形成されており、該係合溝37Aの幅寸法は、次に述べるカッター刃23の厚さ(t1)と同じで一例として0.2〜0.5mmであり、係合溝37Aの深さは、カッター刃23を取り付けた時に上記底部支持面21aの上方にカッター刃23が切込み深さ(H)分、突出する深さに設定されている。
【0026】
又、上記支持台部21には、左右の側面を貫くように上記支持基板15の受入れ穴29と上記支持基板17のネジ穴31と対向する位置に、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aを受け入れる貫通穴33が2個設けられている。
尚、上記貫通穴33の内径は、上記支持基板15の受入れ穴29の内径よりも小さく、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aの外径よりも僅かに大きめに形成されている。
【0027】
カッター刃23は、一例として両端面が斜めにカットされた幅(W1)が11.2mm、長さ(L1)が50mm、厚さ(t1)が0.2〜0.5mmのカッター刃で刃先23aには、一例として両刃式の刃面が形成されている。
又、カッター刃23には、左右の側面を厚さ方向に貫くように上記支持台部21の貫通穴33と対向する位置に、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aを受け入れる取付け穴35が2個設けられている。
尚、上記取付け穴35の内径は、上記支持台部21の貫通穴33と同様、上記固定ネジ25の雄ネジ部25aの外径よりも僅かに大きめに形成されている。
【0028】
そして、上記綿棒の加工装置1Aを使用して綿棒Mの綿部5に切込み部7を形成する場合には、綿棒の加工装置1Aを設置面27上に設置した状態で作業者は綿棒Mの軸部3を持って、図4に示すように、綿部5を対向・配置された2枚の支持基板15、17間の前端寄りの開口スペースに挿入し、綿部5の側周面6が側部支持面15a、17aによって支持され、綿部5の先端面4が支持台部21の底部支持面21aに当接して支持された状態にする。
【0029】
この状態で綿棒Mを上記支持基板15、17の後端側に向けて綿棒の加工装置1Aの長さ方向に沿ってスライドさせると、綿部5は上記側部支持面15a、17aと底部支持面21aとによって案内され、一定の姿勢を保って円滑に移動するため、綿部5の先端部5aには、長さ方向Yに亘って一定の切込み深さ(H)の1本の切込み線9が形成される。
次に、上記綿棒Mを上方に引き上げ、軸部3を中心にして90°回転させてから上記動作を繰り返せば、図12(a)に示すように端面視十字形状の切込み部7Aが形成される。
【0030】
(2)第2の実施の形態(図5、図12(a)参照)
第2の実施の形態による綿棒の加工装置1Bは、カッター刃23の切込み深さ(H)が調節自在に設けられている点を除いて、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aと同様の構造を有している。したがって、ここでは上記第1の実施の形態と相違する構造を中心に説明する。
即ち、本実施の形態では、支持台部21に形成されている係合溝37Bが支持台部21の上下面を貫くように貫通状態で形成されており、カッター刃23には、上記第1の実施の形態で設けた取付け穴35に代えて、上下方向に長い取付け長穴39が形成されている。
【0031】
そして、カッター刃23は、上記取付け長穴39と、該取付け長穴39に嵌合する固定ネジ25の雄ネジ部25aとの間に形成される隙間Sの範囲で上下動できるようになっている。
したがって、カッター刃23を上方に移動させた位置で固定ネジ25を締め付ければ、カッター刃23の底部支持面21aからの突出量(D)が大きくなって切込み深さ(H)が深くなる。一方、カッター刃23を下方に移動させた位置で固定ネジ25を締め付ければ、カッター刃23の底部支持面21aからの突出量(D)が小さくなって切込み深さ(H)が浅くなる。
【0032】
尚、本実施の形態による綿棒の加工装置1Bの使用方法は、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aの場合と同様であり、軸部3を中心にして90°回転させて上記動作を2回繰り返せば、図12(a)に示すように端面視十字形状の切込み部7Aが同様に形成される。
又、本実施の形態では、カッター刃23の取付け位置を上下に可変できるから、切込み部7の切込み深さHを自由に調節することが可能となる。
【0033】
(3)第3の実施の形態(図6、図12(a)参照)
第3の実施の形態による綿棒の加工装置1Cは、上記第2の実施の形態と同様、カッター刃23の切込み深さ(H)が調節自在に設けられている点を除いて、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aと同様の構造を有している。したがって、ここでは上記第1の実施の形態と相違する構造を中心に説明する。
即ち、本実施の形態では、支持台部21に形成されている係合溝37Cが支持台部21の前端面21C寄りの部分には形成されておらず、途中の位置から後端面21bにかけて形成されている。又、係合溝37Cの深さは、カッター刃23をすべて収容できるように上記第1の実施の形態における係合溝37Aよりも深めに形成されている。
【0034】
又、カッター刃23は回動ピン41を介して支持台部21に対して回動自在に設けられており、上記カッター刃23を回動ピン41を中心にして回動させることによってカッター刃23の上記底部支持面21aから突出している切込み作用部43の突出量(D)と作用長(E)を調節できるようになっている。
又、上記カッター刃23の固定は、支持台部21の後端面21b側の固定ネジ25を締め付けることによって、係合溝37Cの溝間距離を狭めることにより実行されている。
因みに、図示の実施の形態では、上記切込み作用部43の突出量(D)が2mm、作用長(E)が20mmに一例として設定されている。
【0035】
尚、本実施の形態による綿棒の加工装置1Cとの使用方法は、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aの場合と同様であり、軸部3を中心にして90°回転させて上記動作を2回繰り返せば、図12(a)に示すように端面視十字形状の切込み部7Aが同様に形成される。
又、本実施の形態ではカッター刃23の取付け位置を上下に可変できるから、切込み部7の切込み深さ(H)を自由に調節することが可能となる。
【0036】
(4)第4の実施の形態(図7、図12(a)参照)
第4の実施の形態による綿棒の加工装置1Dは、上記第2、第3の実施の形態において、カッター刃23の突出量(D)の調節を容易に行えるようにする突出量調節手段45を搭載した実施の形態である。したがって、ここでは上記突出量調節手段45の構造を中心に説明する。
即ち、本実施の形態では、図7に示すように係合溝37B、37Cの下方に支持台部21の下面から刻設されている1個又は複数個のネジ穴47が上記係合溝37B、37Cと連通するように設けられている。
【0037】
又、上記ネジ穴47には調整ボルト49が螺合しており、該調整ボルト49の一端面が上記カッター刃23の基端面23bに当接して押圧する押圧面49aになっている。
上記突出量調節手段45は上記ネジ穴47と調整ボルト49とを備えることによって構成されており、調整ボルト49の他端面に刻設されている係合部49bに図示しない締付け工具を係合させて所定の方向に回転させることによってカッター刃23の突出量Dの調節ができるようになっている。
【0038】
尚、上記固定ネジ25による固定は、上記突出量調節手段45による突出量Dの調節後に実行される。又、本実施の形態による綿棒の加工装置1Dの使用方法は、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aの場合と同様であり、軸部3を中心にして90°回転させて上記動作を2回繰り返せば、図12(a)に示すように端面視十字形状の切込み部7Aが同様に形成される。
又、本実施の形態では、カッター刃23の取付け位置を上下に細かく可変できるから、切込み部7の切込み深さHを正確に微調節することが可能となる。
【0039】
(5)第5の実施の形態(図8、図12(a)参照)
第5の実施の形態による綿棒の加工装置1Eは、上記2枚の支持基板15、17の間隔(B)を調節自在にした実施の形態である。即ち、綿棒Mの綿部5の直径は用途によって異なるため、上記第1〜第4の実施の形態を採用した場合には、綿部5の直径に合わせて幅寸法の違う別の支持台部21に交換するか、予め使用が想定される幅寸法の支持台部21が組み付けられている複数種の綿棒の加工装置1を用意しておく必要がある。
【0040】
本実施の形態では、上記支持台部21の交換や複数種の綿棒の加工装置1を予め用意しておかなくても種々の直径の綿部5に対応できるように支持基板15、17間の間隔(B)を調節できるようになっている。
具体的には、ホルダー19Eは、設置面27に設置される支持ベース51と、該支持ベース51に対して幅方向に接近離反するように移動する支持基板15E、17Eとを備えることによって構成されている。
【0041】
又、上記支持ベース51の左右には支持フレーム53、55が立ち上げられており、これらの支持フレーム53、55間には遊転自在に幅調整ボルト57が架け渡されている。尚、上記幅調整ボルト57には、左側の支持基板17Eと螺合する部位に右ネジの雄ネジ部59、右側の支持基板15Eと螺合する部位に左ネジの雄ネジ部61が一例として刻設されている。
又、これに対応して左側の支持基板17Eには、上記右ネジの雄ネジ部59と螺合する右ネジの雌ネジ部63が刻設されており、右側の支持基板15Eには、上記左ネジの雄ネジ部61と螺合する左ネジの雌ネジ部65が一例として刻設されている。
【0042】
又、支持台部21は、左右に分割されており、左側の支持台部21Lは、上記左側の支持基板17Eの側部支持面17aに取り付けられていて、右側の支持台部21Rは、上記右側の支持基板15Eの側部支持面15aに対して上記左側の支持台部21Lと対向するように取り付けられている。
又、カッター刃23は、支持ベース51の中央支持フレーム67に対して取り付けられている。
【0043】
そして、このような綿棒の加工装置1Eを使用して綿棒Mの加工を行う場合には、予め支持基板15Eと支持基板17Eの間隔Bを広めに調節しておき、当該間隔B内に綿棒5を挿入して綿部5の先端面4を左右の支持台部21L、21Rの底部支持面21aに当接させる。
次に、上記幅調整ボルト57を所定の方向に回転させると、上記離間していた支持基板15Eと支持基板17Eが接近するようになり、左右の支持基板15E、17Eのそれぞれの側部支持面15a、17aが綿部5の側周面6に当接したところで幅調整ボルト57の回転を停止させる。
【0044】
以後は、上記第1の実施の形態による綿棒の加工装置1Aの場合と同様であり、軸部3を中心にして90°回転させて上記動作を2回繰り返せば、図12(a)に示すように端面視十字形状の切込み部7Aが同様に形成される。
又、本実施の形態では、支持基板15E、17Eの間隔Bを自由に調節できるから、種々の大きさ、形状の綿部5に対応できるようになる。
【0045】
(6)第6の実施の形態(図9、図12(b)参照)
第6の実施の形態による綿棒の加工装置1Fは、断面V字形状の切込み溝11によって構成される切込み部7Fを形成するのに使用できる綿棒の加工装置である。具体的には、2枚のカッター刃23、23を図9に示すように正面視で山型に配置し、更に前後にずらして配置することで、綿棒Mの前方から後方への一度のスライド動作によって、図示のような断面V字形状の切込み溝11が形成される。
【0046】
そして、例えば軸部3を中心にして45°ずつ4回回転させて上記動作を4回繰り返せば、図12(b)に示すように放射状に4本の切込み溝11、11、11、11が交差した切込み部7Fが形成される。
又、本実施の形態では、綿棒Mの綿部5における先端部5aの表面積を大きく取ることができ、消毒液等の塗布効率に優れた綿棒Mの加工に供することができる。
【0047】
(7)第7の実施の形態(図10、図12(c)参照)
第7の実施の形態による綿棒の加工装置1Gは、切込み部7Gの切込み深さ(H)が切込み線9の長さ方向Yに対して一様でない切込み部7Gを形成するのに使用できる綿棒の加工装置である。具体的には、図10に示すように刃先23aの中央が突出した舌片状のカッター刃23Gを使用し、綿部5の上方から下方への押し込み動作のみで切込み線9を形成する。
したがって、本実施の形態では、切込み部7Gの形成にあたって綿棒Mを前後方向にスライドさせる動作は不要であるから、支持基板15G、17G及び支持台部21Gの長さは短かくて良く、コンパクトな綿棒の加工装置1Gとなる。
【0048】
そして、例えば軸部3を中心にして90°回転させて、上記綿棒Mの押し込み動作を2回繰り返せば、図12(c)に示すように端面視十字形状で切込み線9の切込み深さHが長さ方向Yに対して一様でない切込み部7Gが形成される。
又、本実施の形態では、綿部5の先端部5aの中心部における切込み部7Gの切込み深さ(H)が深く、綿部5の先端部5aの側周面6側の切込み部7Gの切込み深さ(H)が浅くなるから、綿部5を使用対象物に当接させた時、先端部5aの中心部が大きく変形し、使用対象物の形状に良く馴染むんで外方に広がるように作用する。
【0049】
(8)第8の実施の形態(図11、図12(d)参照)
第8の実施の形態による綿棒の加工装置1Hは、切込み線9を綿部5の側周面6に達しさせないで側周面6との間に非切込み部13を形成する場合に使用できる綿棒の加工装置である。具体的には、図11に示すように刃先の中央が鋭利に突出した山型のカッター刃23Hを使用し、綿部5の上方から下方への押し込み動作と、左右方向への所定ストロークのスライド動作によって所定長さの切込み線9を形成する。
【0050】
そして、例えば軸部3を中心にして60°ずつ3回、回転させて、上記綿棒Mの押し込み動作とスライド動作とを3回繰り返せば、図12(d)に示すように3本の切込み線9が放射状に交差し、各切込み線9の両端部に非切込み部13が形成された切込み部7Hが形成される。
又、本実施の形態では、切込み線9が綿部5の側周面6まで形成されていない分、綿部5の剛性が高くなり、切込み線9が形成されている部分では、綿部5の先端部5aが柔軟に変形して使用対象物の形状に良く馴染むように作用する。
【0051】
尚、本発明は、上述した第1〜第8の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の綿棒の加工装置1は、1本1本綿棒Mを手作業で加工する場合に限らず、綿棒Mの製造ラインに組み込んで連続的に製造されてくる綿棒Mに対して自動的に切込み部7を形成するようにすることも可能である。又、本発明の綿棒の加工装置1の構成部材である支持基板15、17と支持台部21は、それぞれ別体に構成する場合に限らず、このうちの一部または全部を一体に構成することも可能である。
【0052】
又、上述した第7の実施の形態のように綿部5の押し込み動作のみによって切込み部7を形成する構造の綿棒の加工装置1の場合には、カッター刃23を予め放射状に複数枚配設しておいて、一度の押し込み動作で同時に複数本の切込み線9を同時に形成するようにすることも可能である。
この他、上述した綿棒の加工装置1における各構成部材の寸法や形状は、上述した寸法や形状に限らず、加工する綿部5の大きさや形状等に応じて種々の寸法、形状のものが採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、一般用、化粧用、医療用、工業用等として広く使用されている綿棒の綿部の先端部に切込み部を形成する場合に利用でき、特に所定形状の切込み部を正確且つ簡単に形成したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
1 綿棒の加工装置
3 軸部
4 先端面
5 綿部
5a 先端部
6 側周面
7 切込み部
9 切込み線
11 切込み溝
13 非切込み部
15 支持基板
15a 側部支持面
17 支持基板
17a 側部支持面
19 ホルダー
21 支持台部
21a 底部支持面
21b 後端面
21c 前端面
23 カッター刃
23a 刃先
23b 基端面
25 固定ネジ
25a 雄ネジ部
25b 頭部
27 設置面
29 受入れ穴
31 ネジ穴
33 貫通穴
35 取付け穴
37 係合溝
39 取付け長穴
41 回動ピン
43 切込み作用部
45 突出量調節手段
47 ネジ穴
49 調整ボルト
49a 押圧面
49b 係合部
51 支持ベース
53 支持フレーム
55 支持フレーム
57 幅調整ボルト
59 雄ネジ部
61 雄ネジ部
63 雌ネジ部
65 雌ネジ部
67 中央支持フレーム
M 綿棒
H (切込み)深さ
Y 長さ方向
B 間隔
W 幅
L 長さ
t 厚さ
W1 幅
L1 長さ
t1 厚さ
S 隙間
D 突出量
E 作用長


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一端ないし両端に綿部を備えた綿棒の加工装置において、
上記綿部の側周面に当接する所定の間隔を隔てて対向配置されている2枚の支持基板を備えたホルダーと、
上記綿部の先端面に当接するように上記2枚の支持基板の間に設けられる支持台部と、
上記綿部の先端部に作用して所定深さの切込み部を形成するカッター刃と、
を具備していることを特徴とする綿棒の加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の綿棒の加工装置において、
上記カッター刃の切込み深さは、常に一定の深さに設定されていることを特徴とする綿棒の加工装置。
【請求項3】
請求項1記載の綿棒の加工装置において、
上記カッター刃は、切込み深さが調節自在に設けられていることを特徴とする綿棒の加工装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の綿棒の加工装置において、
上記2枚の支持基板は、両者の間隔が調節自在に設けられていることを特徴とする綿棒の加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−120625(P2011−120625A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278417(P2009−278417)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(509337458)大村興業株式会社 (2)
【出願人】(503147022)
【Fターム(参考)】