説明

緊急情報配信システム及びこのシステムに使用される送信機並びに受信機

【課題】緊急通信情報を配信することを可能とする緊急情報配信システム及びこのシステムに使用される送信機並びに受信機を提供する。
【解決手段】広範囲に配布される時刻情報を配信する緊急情報配信システム1は、緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急情報配信システム及びこのシステムに使用される送信機並びに受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急情報配信システムは、多数の対象に対して重大な影響を及ぼす情報を緊急かつ迅速に提供する際に用いられるシステムである。緊急情報配信システムを適用例を示すと、地震波の到来を予測して、その到来前に警告を行う緊急地震速報を通知するシステムがあげられる。この緊急情報配信システムでは、テレビやラジオなどを用いて提供する手法があるが、短時間に通知が必要とされる場合でも、要求される時間を満足することが困難であった。例えば、緊急地震速報などでは、数秒以内の情報提供が必要とされる。緊急地震速報のように数秒以内に情報提供を行う場合には、要求される時間を満たした情報提供が行えないことが問題となる。
また、さまざまな状況にあってテレビやラジオを視聴していない人が生じるため、テレビやラジオを用いた配信ではその効果が薄くなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】独立行政法人情報通信研究機構(NICT:National Institute of Information and Communications Technology)、標準電波の運用状況、(http://www2.nict.go.jp/w/w114/jst/jjy/trans/index.html、平成21年10月19日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯可能な小型装置に、共通の時刻情報を標準電波を用いて配信する方法がある。標準電波による同報通信は、腕時計のように小型な装置でも受信が可能であり、特に受信端末の携行性が優れている。
しかしながら、標準電波を用いた時刻情報の提供は、定められたプロトコルにより所定の間隔で繰り返して送信を行うことが必要である。また、受信する端末設備は、標準とされるプロトコルに基づいたものが広く普及していることから、定められたプロトコルを変更することは困難である。
このように、緊急情報配信システムにおける緊急通信情報を速やかに通知できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、緊急通信情報を配信することを可能とする緊急情報配信システム及びこのシステムに使用される送信機並びに受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、広範囲に配布される時刻情報を配信する緊急情報配信システムであって、緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、前記時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する送信機を備えることを特徴とする緊急情報配信システムである。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記送信機は、通常時に前記標準電波を用いて前記時刻情報を送信する標準電波送信部と、前記緊急通信情報より先に送信され、該緊急通信情報の開始を示す符号を付加し、該緊急通信情報の後に該緊急通信情報の誤り検出又は誤り訂正を目的とする符号を付加して、時刻情報を送信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する緊急情報送信部と、前記標準電波送信部から送信される信号と前記緊急情報送信部から送信される信号とを切り替える切替部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記緊急情報送信部は、前記通常時に前記時刻情報を送信する際のプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記緊急通信情報、及び、前記誤り検出符号又は誤り訂正符号を組み合わせて複数回繰り返して送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記通常時に前記時刻情報を送信する際に用いられるプロトコルは振幅変調方式であり、前記緊急通信情報を送信する際に用いられるプロトコルは、周波数偏移変調方式であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記送信された信号を参照して緊急通信情報であるか否かを判定する受信機を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記受信機は、周波数偏移変調方式で変調された信号を受信した場合には、前記緊急通信情報を含む信号であると判定する判定部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記受信機は、前記付加された符号に基づいて前記緊急通信情報が正当に受信されたか否かを判定して、前記受信した緊急通信情報に対応する情報を出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記緊急通信情報には、予め定められた種類及び適用される対象を示す情報が含まれることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、広範囲に配布される緊急用の情報を配信する緊急情報配信システムの送信機であって、該緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、広範囲に配布される時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信することを特徴とする送信機である。
【0015】
また、本発明は、広範囲に配布される緊急用の情報を配信する緊急情報配信システムの信号を受信する受信機であって、上記に記載の前記送信機から送信された緊急通信情報を受信することを特徴とする受信機である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、広範囲に配布される時刻情報を配信する緊急情報配信システムの送信機は、緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する。
これにより、標準電波を用いる無線設備を共有して構成することができ、無線設備を簡素化することができる。すなわち、標準電波の送信設備では、長波長の電波を用いる通信において必要とされる大型の送信用アンテナに既存の送信用アンテナを用いることが可能となる。
さらに、標準電波と同じ周波数を含む周波数帯を用いることにより、受信機の受信回路を共通化することができ、回路規模を削減することができ、携帯性を損なうことなく受信機能を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による緊急情報配信システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態による緊急情報配信システムで用いられるデジタル符号のフレーム構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態による受信機の判別機能の処理を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態による緊急情報出力システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態による緊急通信情報を検出しない受信機が緊急通信情報を受信した際の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による緊急情報配信システムの構成を示す概略ブロック図である。
この図に示される、緊急情報配信システム1は、送信機10と受信機20を備える。
なお、併せて示される受信機30は、緊急情報配信システム1による緊急通信情報の検出を行わず、送信機10が送信する時刻情報を受信する。受信機30は、受信機20と互いに独立して機能する。
【0020】
送信機10は、標準時送信装置11、緊急情報送信装置12、切替装置13及びアンテナ14を備える。
標準時送信装置11は、標準時刻及び標準周波数を予め定められた周波数を用いた信号を用いて送信する。例えば、電波形式は、振幅変調方式のA1B型式として規定される形式である。
緊急情報送信装置12は、接続される他の設備から提供される緊急通信情報に基づいて、電波を用いて報知する信号を生成し送信する。生成される信号は、予め定められる構造のフレームを形成し、誤り訂正又は誤り検出を行う符合と併せて送信される。緊急情報送信装置12は、周波数偏移変調方式で変調された電波を用いて緊急通信情報を送信する。
また、緊急情報送信装置12は、報知が必要とされるときに、緊急通信情報を送信するための制御信号を切替装置13に出力し、アンテナ14を介して出力させる。緊急通信情報には、通知する内容の種類に応じて定められる種類の情報、及び、地域や目的に応じて定められる適用される範囲の情報が含まれる。
切替装置13は、標準時送信装置11と緊急情報送信装置12とから提供される信号を選択してアンテナ14に供給する。
アンテナ14は、切替装置13から供給される信号に応じた電力の電波を放出する。
【0021】
受信機20は、判別部21、誤り制御部22、解析部23、出力部24、アンテナ25及び校正部29を備え、判別部21、誤り制御部22、解析部23及び出力部24を含んで受信部26を形成する。
判別部21は、受信する電波の電力がアンテナ25によって変換された受信信号を検出し、受信した信号に含まれる情報を判別する。判別部21は、通常時には、受信した受信信号に含まれる時刻情報を判別し、判別した時刻情報を校正部29に供給する。判別部21は、緊急通信情報を受信した場合には、受信した情報から予め定められたフレームを用いて送信された緊急通信情報を抽出する。判別部21は、緊急通信情報を抽出する際に、同じ伝送フレームを用いて一緒に送信された誤り訂正又は誤り検出を行う符合も抽出する。
誤り制御部22は、判別部21によって抽出された誤り訂正又は誤り検出を行う符号を用いて、誤り訂正又は誤り検出を行う。
解析部23は、受信信号に含まれる緊急通信情報の解析を行う。解析部23は、誤り制御部22によって誤り訂正又は誤り検出された結果に基づいて、受信した情報に緊急通信情報が含まれていることを検出する。緊急通信情報の検出は、予め定められた情報のパターンに基づく比較処理などにより行われる。
出力部24は、解析部23によって検出された緊急通信情報を出力する。
アンテナ25は、受信した電波を受信信号に変換して供給する。
上記の構成を含んで形成される受信部26は、アンテナ25によって変換された受信信号を検出して出力する。
なお、校正部29は、図示されない計時部に保持される時刻情報を判別部21から供給される時刻情報に基づいて校正する。
【0022】
受信機30は、判別部31、アンテナ35及び校正部39を備える。
判別部31は、受信する電波の電力がアンテナ35によって変換された受信信号を検出し、受信した信号に含まれる時刻情報を判別し、判別した時刻情報を校正部39に供給する。判別部21は、緊急通信情報を受信した場合には、校正部39に対して図示されない計時部への校正を要求する時刻情報を提供する。
校正部39は、図示されない計時部に保持される時刻情報を判別部31から供給される時刻情報に基づいて校正する。
【0023】
緊急情報送信システム1における基本動作を整理する。
送信機10において、通常時は標準時送信装置11がアンテナ14に接続され、標準周波数のプロトコルにより時刻情報が送信される。また、送信機10において、緊急通信情報を送信することが、検出された要求信号により必要と判定された場合は、緊急情報送信装置12が切替装置13を介してアンテナ14に接続されて緊急通信情報を送信する。
【0024】
受信機20においては、通常時には標準電波を受信する。緊急通信情報を受信した際には、判別部21が緊急通信情報であることを判別し、誤り判別部22による誤り制御が行われ、解析部23が内容を判別する。受信機20が対応する内容である場合に出力部24による出力が行われる。また、受信機20においては、緊急通信が行われていない間は緊急情報送信システムの判別部21が緊急通信情報ではないことを判別し、情報出力までの以後の処理を中断し繰り返し検出を行うため、出力は行われない。また、受信した受信情報に通信誤りが生じた場合や、受信機20が対応しない種別を示す受信情報を受信した場合にも緊急通信情報を受信したことを出力しない。
【0025】
上記に示した各構成要素を組み合わせて形成される緊急情報送信システム1で用いられる緊急通信情報を送信する情報のフレーム構成について示す。
図2は、本実施形態に示す緊急情報配信システムで用いられるデジタル符号のフレーム構成の一例を示す図である。このフレーム構成に基づいて送信される符号が周波数偏移変調されることで、緊急通信情報の送信が行われる。この図に示されるフレーム構成の最小単位は通信開始情報領域FL1_h、緊急通信情報領域FL1_m、誤り検出符号領域FL1_crcの三つの部分からなるフレームFL1で構成される。このフレームFL1では、緊急通信情報の開始を示す符号を送信する通信開始情報領域FL1_hに10bit(ビット)、緊急通信情報領域FL1_mに16bit、及び、緊急通信情報の誤り検出又は誤り訂正を目的とする誤り検出(訂正)符号を送信する誤り検出符号領域FL1_crcに16bitを用いている。また、この最小単位として示したフレームFL1と同じ構成のフレームFL2からFL6まで、6回繰り返すことにより、計252bitで一回の送信が行われる。仮に45bps(ビット毎秒)で通信を行った場合、1フレーム(最小単位)の送信に0.9秒、全体の送信に約5.5秒を要する。この45bps(ビット毎秒)の通信速度を用いるシステムは、110Hz(ヘルツ)の周波数偏移で通信を行うラジオテレタイプ(RTTY :Radioteletype)があり、実現することは容易である。
これにより緊急通信情報の配信を行うのに十分な通信速度を確保できると同時に仮に通信エラーが発生したとしても、繰り返し送信される次の情報を受信することで、エラー発生後に再送要求を送る処理をすることなく必要な対応をとることが可能になる。これによる1秒程度の通信遅れは、緊急通信情報を通知する時間遅れとして許容されうる範囲である。
【0026】
図3は、本実施形態における受信機の判別機能の処理を示すフローチャートである。
受信機20(図1)は、受信した信号に、通信開始情報が含まれていたか否かを常時検出する。受信機20では、判別部21が受信した信号から開始符号の検出を行う(ステップSa1)。判別部21が、開始符号を検出したか否かを判定する。判定の結果、開始符合が検出されるまでステップSa1の処理を繰り返す(ステップSa2)。
【0027】
ステップSa2における判定の結果、開始符号が検出されると、誤り判別部22は、判別部21によって判別された開始符号に基づいてフレームから、それぞれ緊急通信情報と誤り検出符号を抽出し、誤り検出処理を行う(ステップSa3)。誤り判別部22は、緊急通信情報と誤り検出符号を用いて誤り判定の結果、緊急通信情報がエラーなく受信できたか否かを判定する。判定の結果、途中でエラーがあったと判定されれた場合は、ステップSa1からの通信開始を示す開始符合の検出に戻り、これを繰り返す(ステップSa4)。ステップSa4において、緊急通信情報がエラーなく受信できたと判定された場合は、解析部23が緊急通信情報を解析して、受信した緊急通信情報に対して該当する情報か否かを判定する。受信した緊急通信情報に対して該当するか否かの判定は、予め記憶領域に記憶されていた設定情報に基づいて行われ、例えば受信機20が配置された場所を示す位置情報、扱う情報の種別を示す識別情報などを判定対象とする。判定の結果、途中でエラーがあったと判定されれた場合は、ステップSa1からの通信開始を示す開始符合の検出に戻り、これを繰り返す(ステップSa6)。
【0028】
解析部23によって判定された結果、受信した緊急通信情報が該当する情報であると判定された場合は、出力部24は、その緊急通信情報に基づいて出力を行う(ステップSa7)。
なお、緊急通信に対応した受信機20は、最初の緊急通信情報を検出したことにより、必ずしも緊急通信情報を外部への出力を行う必要はない。受信機20は、複数回繰り返される緊急通信情報を所定の回数繰り返して検出した場合に外部への出力を行ってもよい。この緊急通信情報の検出処理は、図中のステップSa7の処理を所定の回数繰り返す状態遷移の判定処理を付加し、複数回の検出が行われた後に出力するという処理に代えることにより容易に実現可能である。このように、緊急通信情報の検出処理は、緊急通信情報を出力した場合の影響度に応じて、対応する受信機20に適宜組み込むことを選択できる。
【0029】
図4は、本実施形態における緊急情報出力システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。
この図に示される送信機10における緊急情報送信装置12は、切替機13に接続される。図1に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付す。
緊急情報送信装置12は、発信要請入力部12a、信号作成部12b、周波数偏移変調部12c、増幅部12d及び送信切替要請部12eからなる。
発振要請入力部12aは、緊急通信情報を送信させることの要求とその情報を受け、送信切替要請部12eに対して制御信号を送り、標準電波の送信から緊急通信情報の送信に切り替えるために、アンテナの接続を切り替えを行わせる。併せて、発振要請入力部12aは、送信する緊急通信情報を信号作成部12bに供給して送信のための信号を作成させる。信号作成部12bは、発振要請入力部12aから供給された緊急通信情報に基づいて誤り検出符号等を作成し、図2に示したフレーム構造を有する通信信号を作成し、周波数偏移変調部12cに供給する。周波数偏移変調部12cは、信号作成部12bから供給された通信信号に基づいて標準電波の周波数において周波数偏移変調を行い、増幅部12dが変調信号を増幅して出力する。送信切替要請部12eは、発振要請入力部12aから供給される制御信号指示にしたがって、通常時に標準電波を出力する標準時送信装置11(図1)に接続されるアンテナ14への接続を、緊急通信情報を送信する際に緊急情報送信装置12との接続に切り替えるべく切替装置13を制御する。
【0030】
図5は、本実施形態に示した緊急通信情報を検出しない受信機が緊急通信情報を受信した際の動作を示すフローチャートである。
標準電波は、主に時計などの計時機能を有する機器が保持する時刻情報を校正するために用いられ、それぞれ20%、50%、80%のデューティのパルスを組み合わせて送信されることが知られている。すなわち、パルスのデューティに応じて受信電界強度が変化する(非特許文献1参照)。
ここで、緊急通信情報を検出しない受信機30(図1)は、判別部31が受信した受信パルスを検出する(ステップSb1)。判別部31は、受信した情報が時刻情報であるか否かを判別するため、受信したパルスが示すデューティが、定められたプロトコルに規定されているものか否かを判定する。そのパルスのデューティの判別は、内部に備える計時機能を用いたパルス幅の検出によって行われる(ステップSb2)。
判別部31は、受信したパルスが定められたプロトコルに規定されているものと判定すると、抽出したパルスが示す情報に従ってデジタル値に変換する(ステップSb3)。
一方、ステップSb2の判定により、定められたプロトコルに規定されなかったと判定した場合や、ノイズ等の影響によりデューティを誤って検出した場合には、受信機30は、検出したパルスを破棄(リセット)して、再度受信処理を行う(ステップSb4)。
【0031】
判別部31は、緊急通信情報を標準電波に含まれないパルスの特徴を検出する。つまり、緊急通信情報が周波数偏移変調で変調されるので、受信機30は、緊急通信情報を受信すると、デューティが標準電波が示すデューティ(20%、50%、80%)と異なるパルス列(例えば、80%を超えるデューティを含むパルス列)として検出され、その振幅が一定の値を示すパルス列として検出される。マーカー(デューティ20%)を含んで送信されない、このようなパルス列は、標準電波では定義されていない情報を示すことになるので、受信機30はこのパルスを破棄する。すなわち、受信機30は、検出した緊急通信情報のことを、単に数秒の間ノイズが発生したものと等価に判定する。そして、受信機30は、標準電波を改めて受信するまで、パルスを破棄して新たに受信を開始する動作を繰り返し行う。
また、受信機30では、標準電波が検出されない状態では、校正部39は、図示されない計時部に保持される時刻情報の校正を行わない。これにより、受信機30が、緊急通信情報を受信したことによって誤った時刻の校正を行うことはない。この間、受信機30は、計時部が保持する時刻情報に基づいて時刻情報を更新して表示し、数秒の緊急情報配信が終了した後に、標準電波を再度受信してあらためて正しい時刻に校正する。あるいは、時刻の校正に失敗したことをユーザに通知することとしてもよい。
【0032】
本実施形態に示したように、緊急情報配信システム1では、携帯性の優れる受信機20によって緊急通信情報の受信が可能となる。また、緊急通信情報の受信機能を備えない受信機30であっても、緊急通信情報を配信する割込み放送が行われても実質的な影響が無く標準電波を用いた時刻補正を行うことが可能となる。
このように標準電波と同じ周波数を用いる緊急情報配信システム1では、次に示す効果も実現できる。送信機10と受信機20間の通信状態を標準電波を常時受信することにより、受信機20では、判定部21により電波を十分に受信できない地域に配置された場合や、設備に障害が発生した場合などの状態を監視することができる。
すなわち、緊急通信情報を検出できない場合や、誤って伝達される場合などに生じうる重大な問題を未然に回避するために上記の監視情報を用いることができる。電波を用いる通信の場合、ノイズや伝搬状況変化の影響などにより誤った情報が受信される場合があるが、そのような状態において、受信機20は、通信障害が発生していることを表示するので通信状態を特定できる。
通信障害が発生している受信機20を特定することができれば、一範囲に対して大部分の受信機が一斉に誤受信を起こして混乱が発生する場合や、一部の受信機が緊急通信情報を誤受信し受信していない別の受信機を持つ集団の中で急激に別行動を起こして混乱が発生する場合などの、問題を回避するための情報提供を行うことができる。
【0033】
通常の電波時計などでは空電などによるノイズが発生した場合は判断を保留して次回以降の情報で時計の校正を行えばよく、数分をかけて時計の校正を行うことを前提とすれば特に問題とはならない。しかし、緊急通信の場合にはノイズなどの影響により誤受信及びそれに伴う混乱の発生を回避することが重要であり、本実施形態に示した緊急情報配信システム1は、それらの問題を回避することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態に示す緊急情報配信システム1では、送信機10が、緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する。
これにより、送信機10は、標準電波を用いる無線設備を共有して構成することができ、無線設備を簡素化することができる。すなわち、送信機10では、標準電波の配信に用いる長波長の電波を用いる通信に必要とされる大型のアンテナ14を共有することができる。
受信機20は、緊急通信情報を受信することが可能になり、数秒単位の遅延が問題になる緊急通信情報を広範囲に配布することが可能となる。
さらに、標準電波と同じ周波数を含む周波数帯を用いることにより、受信機20の受信回路を共通化することができ、回路規模を削減することができ、携帯性を損なうことなく受信機能を容易に実現することができる。
【0035】
また、本実施形態において、送信機10は、標準電波送信装置11が、通常時に標準電波を用いて時刻情報を送信する。緊急情報送信装置12は、緊急用の情報を含んで送信される緊急通信情報より先に送信され、緊急通信情報の開始を示す符号を付加し、緊急通信情報の後に緊急通信情報の誤り検出又は誤り訂正を目的とする符号を付加して、時刻情報を送信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する。切替装置13は、標準電波送信装置11から送信される信号と、緊急情報送信装置12から送信される信号とを切り替える。
これにより、ノイズが存在する標準電波の伝搬環境においても、緊急通信情報を誤報なく送信することが可能となり、緊急情報配信システム1の信頼性を従来技術よりも改善することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態において、緊急情報送信装置11は、通常時に時刻情報を送信する際のプロトコルと異なるプロトコルを用いて、緊急通信情報、及び、誤り検出符号又は誤り訂正符号を組み合わせて複数回繰り返して送信する。
これにより、受信機20は、受信した信号が時刻情報を送信する際のプロトコルと異なるプロトコルであることを、容易に検出することができる。
【0037】
また、本実施形態において、通常時に時刻情報を送信する際に用いられるプロトコルは振幅変調方式であり、緊急通信情報を送信する際に用いられるプロトコルは、周波数偏移変調方式である。
これにより、通常時に送信される標準電波の変調方式と異なる変調方式を用いて、緊急通信情報を送信することができる。
【0038】
また、本実施形態において、受信機20は、送信された信号を参照して緊急通信情報であるか否かを判定する。
これにより、標準電波と同じ周波数の変調波を用いて送信される緊急通信情報を受信することができる。
【0039】
また、本実施形態において、受信機20は、判定部21が、周波数偏移変調方式で変調された信号を受信した場合には、緊急通信情報を含む信号であると判定する。
これにより、標準電波と異なる特徴を変調方式とすることにより、標準電波との判別を容易とすることができる。従来の標準電波を時刻校正にのみ用いている電波時計等の装置に対してその時点における時刻修正が不能になる以上の悪影響を与えることなく単純にエラーと処理することが可能となり、緊急情報配信システムとの共存が容易となる。また、ノイズによりエラーと判定された緊急通信情報も連続して送信されることにより、一回のみの情報伝達よりも通信送達の確実性が増す。
或いは、判定部21が、周波数偏移変調方式で変調された信号の振幅が一定である場合には、緊急通信情報を含む信号であると判定してもよい。
これにより、標準電波と異なる特徴を変調信号の振幅が一定であることを特徴とすることにより、標準電波との判別を容易とすることができる。
【0040】
また、本実施形態において、受信機20は、付加された符号に基づいて緊急通信情報が正当に受信されたか否かを判定して、受信した緊急通信情報に対応する情報を出力することを特徴とする。
これにより、ノイズによる緊急通信の誤報は事実上無視できる確率となる。また、従来技術よりもより確実かつ迅速な緊急通報通信を可能とすることができる。
【0041】
また、本実施形態において、緊急通信情報には、予め定められた種類及び適用される対象を示す情報が含まれることを特徴とする。
これにより、複数の緊急通信を複数の場所や複数の種別によって分類される対象に配信することが可能となり、緊急情報配信システム1が多岐にわたる緊急情報配信に用いることが可能となる。さらに、緊急通信の確実かつ迅速な緊急通信情報通信を可能とすることができ、災害時など緊急通信の有用度を大きく増すことが可能となる。
なお、本緊急情報配信システム1によって情報提供を行う対象は、緊急通信情報を必要とする場所(地域)、システム、情報の種別などを分類する情報を定義することにより、共通の送信設備を用いて複数の目的に応じた緊急通信情報の配信が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 緊急情報配信システム
10 送信機
20、30受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲に配布される時刻情報を配信する緊急情報配信システムであって、
緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、前記時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する送信機
を備えることを特徴とする緊急情報配信システム。
【請求項2】
前記送信機は、
通常時に前記標準電波を用いて前記時刻情報を送信する標準電波送信部と、
前記緊急通信情報より先に送信され、該緊急通信情報の開始を示す符号を付加し、該緊急通信情報の後に該緊急通信情報の誤り検出又は誤り訂正を目的とする符号を付加して、時刻情報を送信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する緊急情報送信部と、
前記標準電波送信部から送信される信号と前記緊急情報送信部から送信される信号とを切り替える切替部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報配信システム。
【請求項3】
前記緊急情報送信部は、
前記通常時に前記時刻情報を送信する際のプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記緊急通信情報、及び、前記誤り検出符号又は誤り訂正符号を組み合わせて複数回繰り返して送信する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緊急情報配信システム。
【請求項4】
前記通常時に前記時刻情報を送信する際に用いられるプロトコルは振幅変調方式であり、前記緊急通信情報を送信する際に用いられるプロトコルは、周波数偏移変調方式である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の緊急情報配信システム。
【請求項5】
前記送信された信号を参照して緊急通信情報であるか否かを判定する受信機
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の緊急情報配信システム。
【請求項6】
前記受信機は、
周波数偏移変調方式で変調された信号を受信した場合には、前記緊急通信情報を含む信号であると判定する判定部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の緊急情報配信システム。
【請求項7】
前記受信機は、
前記付加された符号に基づいて前記緊急通信情報が正当に受信されたか否かを判定して、
前記受信した緊急通信情報に対応する情報を出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の緊急情報配信システム。
【請求項8】
前記緊急通信情報には、予め定められた種類及び適用される対象を示す情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の緊急情報配信システム。
【請求項9】
広範囲に配布される緊急用の情報を配信する緊急情報配信システムの送信機であって、
該緊急用の情報を含んで配信される緊急通信情報を、広範囲に配布される時刻情報を配信するプロトコルと異なるプロトコルを用いて、前記時刻情報を配信する標準電波の周波数を含む周波数帯を用いて送信する
ことを特徴とする送信機。
【請求項10】
広範囲に配布される緊急用の情報を配信する緊急情報配信システムの信号を受信する受信機であって、
請求項9に記載の前記送信機から送信された緊急通信情報を受信する
ことを特徴とする受信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−103041(P2011−103041A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257234(P2009−257234)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】