説明

緑化パネルユニット及び緑化資材

【課題】 簡単な構成でもって建物の壁面などを容易に緑化することができる緑化パネルユニットを提供する。
【解決手段】 植物40が植生される緑化パネル8と、緑化パネル8を左右両側より支持するための一対の支柱6と、緑化パネル8に水を供給するための給水手段10と、を備えた緑化パネルユニット2である。緑化パネル8は、透水性を有するパネル本体20を有する。給水手段10は、パネル本体20の内部を通して延びる給水チューブ14から構成され、給水チューブ14には複数の噴出孔が設けられている。給水チューブ14を通して水が流れると、複数の噴出孔から噴出した水がパネル本体20の内部に浸透されるとともに、この浸透された水の一部がパネル本体20の表面から大気中に蒸発される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コケ類などの植物を植生させることにより、建物の壁面や塀などの緑化を図るための緑化パネルユニット及び緑化資材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビルなどが密集する都市部では、温暖化によるヒートアイランド現象が問題となっている。このヒートアイランド現象を解消するために、種々の方法により緑化を行うことが試みられている。例えば、従来の緑化工法では、建物の壁面の前方に立設された2本組の支柱にメッシュ金網が張架され、このメッシュ金網のL型保持枠部には、人工軽量土壌が充填されたメッシュ金網ブロック体が点在又は連接して保持される(特許文献1参照)。この人工軽量土壌に蔓などの植物を植栽することにより、建物の壁面を緑化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−319719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の緑化工法では、人工軽量土壌をメッシュ金網ブロック体に充填するとともに、この人工軽量土壌に植物を植栽しなければならず、施工作業に大変手間が掛かるという問題がある。また、このような人工軽量土壌では保水性が充分であるとは言えず、植物に対する給水管理が難しいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成でもって建物の壁面などを容易に緑化することができる緑化パネルユニットを提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、保水性の優れた緑化資材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の緑化パネルユニットでは、植物が植生される緑化パネルと、前記緑化パネルを左右両側より支持するための一対の支柱と、前記緑化パネルに水を供給するための給水手段と、を備え、
前記緑化パネルは、透水性を有するパネル本体を有し、前記給水手段からの水が前記パネル本体の内部に浸透されるとともに、この浸透された水の一部が前記パネル本体の表面から大気中に蒸発されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の緑化パネルユニットでは、前記給水手段は、前記パネル本体の内部を通して延びる給水チューブから構成され、前記給水チューブには複数の噴出孔が設けられ、前記給水チューブを通して水が流れると、前記複数の噴出孔から噴出した水が前記パネル本体の内部に浸透されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の緑化パネルユニットでは、前記一対の支柱にはそれぞれ支持凹部が設けられ、前記パネル本体の両側端部は前記一対の支柱の支持凹部に収容支持され、前記パネル本体の両側端部の少なくとも一方には、前記給水チューブが挿通される開口部と、前記開口部を通して前記パネル本体の外部に延びる前記給水チューブの一部が収容されるチューブ収容凹部とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の緑化パネルユニットでは、前記一対の支柱にはそれぞれ支持凹部が設けられ、前記パネル本体の両側端部はスペーサを介して前記一対の支柱の前記支持凹部に収容支持され、前記パネル本体の両側端部と前記一対の支柱の前記支持凹部との間にはそれぞれ前記スペーサによってチューブ収容空間が形成され、前記パネル本体の両側端部の少なくとも一方には、前記給水チューブが挿通される開口部が設けられ、前記開口部を通して前記パネル本体の外部に延びる前記給水チューブの一部は、前記チューブ収容空間に収容されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の緑化パネルユニットでは、前記給水手段は、前記緑化パネルの上方に配設された放水チューブから構成され、前記放水チューブには複数の噴出孔が設けられ、前記放水チューブの前記複数の噴出孔より水が前記パネル本体に向けて放出されると、前記パネル本体の表面からその内部に水が浸透されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の緑化パネルユニットでは、前記緑化パネルは、前記一対の支柱の間に上下に間隔を置いて複数配設され、相互に隣接する一対の前記緑化パネルの間には、通気用空間が形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の緑化パネルユニットでは、前記緑化パネルは、前記一対の支柱の間に上下に間隔を置いて複数配設され、また、前記緑化パネルに関連して、植物を植栽するためのプランタボックスが設けられ、前記プランタボックスは、ボックス本体部と、前記ボックス本体部の一側部から延びる水受け部と、を備え、前記水受け部は、相互に隣接する一対の前記緑化パネルの間に挿入支持され、前記ボックス本体部の内部には、植物が植栽される植栽空間が形成され、また前記水受け部の内部には、前記一対の緑化パネルの上側の緑化パネルから滴下する水を受けるための水受け空間が形成され、前記ボックス本体部の一側部には、前記植栽空間及び前記水受け空間を相互に連通するための連通用開口部が設けられており、
前記一対の緑化パネルの上側の緑化パネルから前記水受け空間に水が滴下すると、この水は前記連通用開口を通して前記植栽空間に供給されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8に記載の緑化資材では、植物が植生される緑化資材本体を備え、前記緑化資材本体は、粒状物、可塑材及び焼結材を主成分とする杯土を焼成して形成され、焼成時に前記粒状物間に生成される空隙によって、前記緑化資材本体に微細浸透孔が形成され、また、前記粒状物は、粒径が0.1〜5.0mmであり、杯土100重量%に対して20〜70重量%含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の緑化パネルユニットによれば、植物が植生される緑化パネルは、一対の支柱によって左右両側より支持される。緑化パネルは、透水性を有するパネル本体を有し、給水手段からの水がパネル本体の内部に浸透されるので、パネル本体の片面(又は両面)にコケ類などの植物を植生することができる。従って、比較的簡単な構成でもって、建物の壁面や塀などの緑化を容易に行うことができる。また、パネル本体の内部に浸透された水の一部は、パネル本体の表面から大気中に蒸発されるので、その気化熱によって緑化パネルの周囲の温度が幾分低下するようになり、夏季などには涼をとることができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の緑化パネルユニットによれば、給水手段は、パネル本体の内部を通して延びる給水チューブから構成され、給水チューブには複数の噴出孔が設けられているので、複数の噴出孔から噴出する水によって、パネル本体の内部に水を容易に浸透させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の緑化パネルユニットによれば、パネル本体の両側端部の少なくとも一方には、開口部を通してパネル本体の外部に延びる給水チューブの一部が収容されるチューブ収容凹部が設けられているので、パネル本体の両側端部を一対の支柱の支持凹部に収容支持した際に、給水チューブがパネル本体の両側端部と支持凹部との間に挟まれるなどして、給水チューブを流れる水が遮断されるのを防止することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の緑化パネルユニットによれば、パネル本体の両側端部と一対の支柱の支持凹部との間にはそれぞれスペーサによってチューブ収容空間が形成され、開口部を通してパネル本体の外部に延びる給水チューブの一部は、チューブ収容空間に収容されるので、パネル本体の両側端部を一対の支柱の支持凹部に収容支持した際に、給水チューブがパネル本体の両側端部と支持凹部との間に挟まれるなどして、給水チューブを流れる水が遮断されるのを防止することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の緑化パネルユニットによれば、給水手段は、緑化パネルの上方に配設された放水チューブから構成されているので、放水チューブの複数の噴出孔より水がパネル本体に向けて放出されるという比較的簡単な構成でもって、パネル本体の内部に水を容易に浸透させることができる。
【0020】
また、本発明の請求項6に記載の緑化パネルユニットによれば、相互に隣接する一対の緑化パネルの間には通気用空間が形成されるので、通気用空間を通して空気が流れることにより、パネル本体の周囲の空気が循環されるようになり、パネル本体の表面からの水の蒸発を促進させることができる。
【0021】
また、本発明の請求項7に記載の緑化パネルユニットによれば、一対の緑化パネルの上側の緑化パネルから水受け空間に水が滴下すると、この水は連通用開口部を通して植栽空間に供給されるので、緑化パネルに浸透しきれなかった水を利用してプランタボックスに植栽された植物を栽培することができ、効率良く緑化を行うことができる。
【0022】
また、本発明の請求項8に記載の緑化資材によれば、焼成する杯土が粒状物、可塑材及び焼結材を主成分としているので、焼成した際に、粒状物間に空隙が生成され、この空隙が緑化資材本体の全体に連続して延びる微細浸透孔として機能するようになる。これにより、毛細管現象によって緑化資材本体の全体に水を浸透させることができる。なお、焼結材としては、焼成時に溶融する長石、石灰石、フリットなどを用いることができる。また、粒状物の粒径を調節することによって、微細浸透孔の大きさ及び量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態による緑化パネルユニットを示す概略図である。
【図2】図1の緑化パネルユニットの一部を分解して示す分解斜視図である。
【図3】図1中のA−A線による緑化パネルユニットの断面図である。
【図4】図3中のB−B線による緑化パネルユニットの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による緑化パネルユニットの一部を分解して示す分解斜視図である。
【図6】図5の緑化パネルユニットの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による緑化パネルユニットを示す概略図である。
【図8】本発明の第4の実施形態による緑化パネルユニットの一部を示す概略斜視図である。
【図9】図8のプランタボックスを示す斜視図である。
【図10】図8の緑化パネルユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う緑化パネルユニット及び緑化資材の各種実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
まず、図1〜図3を参照して、第1の実施形態の緑化パネルユニット及び緑化資材について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による緑化パネルユニットを示す概略図であり、図2は、図1の緑化パネルユニットの一部を分解して示す分解斜視図であり、図3は、図1中のA−A線による緑化パネルユニットの断面図であり、図4は、図3中のB−B線による緑化パネルユニットの断面図である。
【0025】
図1を参照して、本実施形態の緑化パネルユニット2は、所定の間隔を置いて地面4に立設された複数の支柱6と、隣接する一対の支柱6の間に支持された複数の緑化パネル8(緑化資材を構成する)と、複数の緑化パネル8に水を供給するための給水手段10と、を備えている。本実施形態では、緑化パネルユニット2は、建物の壁面(図示せず)の前方に配設され、後述するようにしてこの建物の壁面を緑化することができる。以下、緑化パネルユニット2の構成について詳細に説明する。
【0026】
給水手段10は、給水源(図示せず)より延びる給水ライン12と、給水ライン12に配設された給水ポンプ(図示せず)及びバルブ(図示せず)と、給水ライン12から分岐して延びる複数の給水チューブ14と、を有している。給水ライン12は、地中に延びて配設されている。給水チューブ14は可撓性を有し、この給水チューブ14には、その長さ方向及び周方向にそれぞれ間隔を置いて複数の噴出孔16(図4参照)が設けられている。バルブは開閉自在に構成され、バルブが開状態に保持されると、給水源からの水が給水ライン12を通して複数の給水チューブ14にそれぞれ供給され、またバルブが閉状態に保持されると、複数の給水チューブ14への水の供給が遮断される。なお、バルブは制御手段(図示せず)によって制御され、所定の周期で開状態と閉状態とに交互に保持される。
【0027】
支柱6は、断面H字状に構成されて上下に延び、その両側部にはそれぞれ支持凹部18が設けられている(図2及び図3参照)。支持凹部18は断面矩形状に構成され、支柱6の上端から下端まで延びている。なお、支柱6の長さは、例えば約1500mmに構成される。
【0028】
緑化パネル8は、透水性を有するパネル本体20(緑化資材本体を構成する)を有し、このパネル本体20の両側端部にはそれぞれチューブ収容凹部22,24が設けられている。パネル本体20の大きさは、例えば、高さ約200mm、横幅約400mm、奥行き約100mmに構成される。チューブ収容凹部22,24は断面円弧状に構成され、パネル本体20の上端から下端まで延びている。パネル本体20の内部には、断面円形状の一対の収容空間26,28が設けられ、これら一対の収容空間26,28は、パネル本体20の一側端部から他側端部まで直線状に延びている(図4参照)。また、パネル本体20の一側端部(他側端部)には、収容空間26(28)に連通する開口部30,32(34,36)が上下に間隔を置いて設けられている。この収容空間26,28には、給水チューブ14が略コの字状に折り返された状態で収容されている。
【0029】
パネル本体20の両側端部は、例えば接着剤などを用いて一対の支柱6の支持凹部18に収容支持される。これにより、一対の支柱6の間には、複数の緑化パネル8が上下に間隔を置いて複数配設される。なお、相互に隣接する一対の緑化パネル8の間には、通気用空間38が形成されている。各緑化パネル8において、パネル本体20の一側端部の開口部30,32より外部に延びる給水チューブ14の折り返し部は、チューブ収容凹部22に収容され、またパネル本体20の他側端部の開口部34,36より外部に延びる給水チューブ14の引き出し部はそれぞれ、チューブ収容凹部24に収容される(図3参照)。
【0030】
パネル本体20の他側端部の開口部34より外部に延びる給水チューブ14の引き出し部は、上方に延びて上側に隣接するパネル本体20の他側端部の開口部36に挿通され、またパネル本体20の他側端部の開口部36より外部に延びる給水チューブ14の引き出し部は、下方に延びて下側に隣接するパネル本体20の他側端部の開口部34に挿通される。従って、給水チューブ20は全体として、給水ライン12から上方に向かって、各パネル本体20の一対の収容空間26,28及び一対のチューブ収容凹部22,24内を蛇行状に延びるようになる(図1参照)。なお、給水チューブ14の終端部は閉塞されており、最上段の緑化パネル20のチューブ収容凹部22に収容されている。
【0031】
また、パネル本体20は、その全体に渡って微細浸透孔(図示せず)が設けられており、このような微細浸透孔を設けるために、次のようにして焼成して製作される。パネル本体20を焼成する杯土は、粒状物、可塑材及び焼結材を主成分としている。粒状物は、例えば砂などから形成され、その粒径は0.1〜5.0mm程度のものが用いられる。粒状物の粒径が5.0mmを超えると、焼成後のパネル本体20が脆くなって破損しやすく、また0.1mmより小さいと、焼成により形成される微細浸透孔が小さくなって、水の充分な浸透特性が得られなくなる。この粒状物の粒径は1.0〜5.0mmであるのが好ましい。粒状物は、杯土100重量%に対して20〜70重量%含まれるのが好ましく、30〜60重量%含まれるのがより好ましい。粒状物の含有量が70重量%を超えると、焼成後のパネル本体20が脆くなって破損しやすくなり、またその含有量が20重量%より少ないと、焼成により形成される微細浸透孔が少なくなって水の充分な浸透特性が得られなくなる。
【0032】
焼結材は、焼成時に溶融して粒状物を相互に固着するための長石、石灰石、フリットなどから形成され、これらのいずれか一つ又は二つ以上含むものでよく、杯土100重量%に対して10〜40重量%含まれるのが好ましい。このような焼結材の含有量が40重量%を超えると、粒状物の含有量が相対的に少なくなって焼成により形成される微細浸透孔が少なくなり、またその含有量が10重量%より少ないと、焼成後の粒状物が剥がれて落ちやすくなる。
【0033】
可塑材は、粘土、ベントナイト又はこれらの混合物であり、杯土100重量%に対して25〜60重量%含まれるのが好ましい。可塑材の含有量が60重量%を超えると、粒状物の含有量が相対的に少なくなって焼成により形成される微細浸透孔が少なくなり、またその含有量が25重量%より少なくなると、杯土の粘りが少なくなって所定形状の土を焼成するのが難しくなる。
【0034】
粒状物、焼結材及び可塑材を上述した割合で練り込んだ杯土は、1000〜1300℃、好ましくは1150〜1250℃の温度で焼成される。このような高温で焼成すると、焼結材(長石、石灰石、フリットなど)が溶融して粒状物を相互に固着して固め、焼成後のパネル本体20からの粒状物の剥がれなどが防止され、またその脆性を改善して強度を高めることができる。また、このように焼結材が溶解することによって、粒状物間に微細な空隙が生じ、かかる空隙がパネル本体20の全体に渡って連続するように生成される。従って、かかる空隙が、パネル本体20の全体に連続して延びる微細浸透孔を構成し、パネル本体20にはこのような微細浸透孔が多数生成される。
【0035】
次に、上述した緑化パネルユニット2による緑化方法について説明する。バルブが開状態に保持されるとともに給水ポンプが作動されると、給水源からの水が給水ポンプの作用によって給水ライン12を通して各給水チューブ14に供給される。給水チューブ14を通して水が流れると、複数の噴出孔16より水が噴出し(図4参照)、毛細管現象によって水が多数の微細浸透孔を通して流れることにより、水がパネル本体20の内部から表面に渡って全体に浸透される。なお、このような給水は、例えば1時間に1〜2回程度行われ、1回の給水につき約1〜2分間、水が給水チューブ14に供給される。給水が終了すると、バルブが閉状態に保持されるとともに給水ポンプが作動停止される。
【0036】
パネル本体20は、上述のように焼成して形成されることによって高い保水性を有するようになる。従って、上述のように、所定の周期でパネル本体20に水を供給することにより、パネル本体20には常時水が浸透するようになるので、例えば日陰側となるパネル本体20の片面(又は両面)には、コケ類の植物40が自然に植生されるようになる。この植生された植物40によって、建物の壁面を緑化することができる。なお、本実施形態では、建物の壁面を緑化するようにしたが、これに限られず、例えば緑化パネルユニットを建物の塀として用いることにより、建物の塀を緑化することができる。
【0037】
また、パネル本体20の内部に浸透された水の一部は、パネル本体20の表面から大気中に蒸発するようになる。その気化熱によって緑化パネル8の周囲の温度が幾分低下するようになるので、夏季などには涼をとることができる。なお、通気用空間38を通して空気が流れることにより、パネル本体20の周囲の空気が循環されるようになり、パネル本体20の表面からの水の蒸発を促進させることができる。
【0038】
本実施形態では、パネル本体20の片面(又は両面)に植物40が自然に植生される場合について説明したが、パネル本体20の片面(又は両面)に植物40を人工的に植生させるようにしてもよい。なお、パネル本体20に植生させる植物としては、コケ類に限られず、例えば蔦や地衣類、キノコ類など種々のものに適用することができる。
[第2の実施形態]
次に、図5及び図6を参照して、緑化パネルユニット及び緑化資材の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態による緑化パネルユニットの一部を分解して示す分解斜視図であり、図6は、図5の緑化パネルユニットの断面図である。なお、本実施形態において、上記実施形態と実質上同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本実施形態の緑化パネルユニット2Aでは、パネル本体20Aの両側端部には上述のようにチューブ収容凹部は設けられておらず、平坦状に構成されている。パネル本体20Aの両側端部は、スペーサ42,43を介して一対の支柱6の支持凹部18に収容支持される。このスペーサ42,43は断面コの字状に構成され、その長さはパネル本体20Aの高さとほぼ同じ長さに構成されている。スペーサ42,43は、その凹部側がパネル本体20A側を向くようにして、例えば接着剤などにより支持凹部18に固定される。このスペーサ42,43によって、一対の支柱6の支持凹部18とパネル本体20Aの両側端部との間にはそれぞれチューブ収容空間44,46が形成される(図6参照)。各緑化パネル8Aにおいて、パネル本体20Aの一側端部の開口部30,32より外部に延びる給水チューブ14の折り返し部は、チューブ収容空間44に収容され、またパネル本体20Aの他側端部の開口部(図示せず)より外部に延びる給水チューブ14の引き出し部はそれぞれ、チューブ収容空間46に収容される。従って、本実施形態の緑化パネルユニット2Aにおいても、上述したのと同様の作用効果が達成される。
[第3の実施形態]
次に、図7を参照して、緑化パネルユニット及び緑化資材の第3の実施形態について説明する。図7は、本発明の第3の実施形態による緑化パネルユニットを示す概略図である。
【0040】
本実施形態の緑化パネルユニット2Bでは、緑化パネル8Bのパネル本体20Bには上述のように一対の収容凹部及び一対のチューブ収容凹部は設けられていない。また、給水手段10Bは、給水源(図示せず)から延びる放水チューブ48を有している。この放水チューブ48は、複数の支柱6の上端部間に架け渡され、最上段の緑化パネル8Bの上方に配設されている。放水チューブ48の下側部には、その長さ方向に間隔を置いて複数の噴出孔50が設けられているので、給水源からの水が放水チューブ48を通して流れると、複数の噴出孔50から水が最上段の緑化パネル8Bに向けて放出される。このように放出された水は、最上段の緑化パネル8Bから最下段の緑化パネル8Bへと順に滴下していき、各緑化パネル8Bのパネル本体20Bの内部に水が浸透される。従って、本実施形態の緑化パネルユニット2Bにおいても、上述したのと同様の作用効果が達成される。
[第4の実施形態]
次に、図8〜図10を参照して、緑化パネルユニット及び緑化資材の第4の実施形態について説明する。図8は、本発明の第4の実施形態による緑化パネルユニットの一部を示す概略斜視図であり、図9は、図8のプランタボックスを示す斜視図であり、図10は、図8の緑化パネルユニットの断面図である。なお、図8において、一対の支柱及び給水チューブの図示は省略してある。
【0041】
本実施形態の緑化パネルユニット2Cでは、上下に相互に隣接する一対の緑化パネル8a,8bの間には、植物52を植栽するためのプランタボックス54が支持されている。緑化パネルユニット2Cの他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。このプランタボックス54は、例えば陶器などの不透水性の材料から形成され、ボックス本体部56と、ボックス本体部56の一側部から外側に延びるトレイ状の水受け部58と、を備えている。ボックス本体部56の高さH1は、水受け部58の高さH2よりも高く構成され、また水受け部58の奥行きD2は、緑化パネル8a,8bのパネル本体20a,20bの奥行きとほぼ等しく構成されている。
【0042】
ボックス本体部56の内部には植栽空間60が形成され、この植栽空間60には、植物52を植栽するための栽培用土62が充填されている。この栽培用土62は、緑化パネル8a,8bを焼成するときに用いた杯土と同様のものを用い、この杯土を所定形状にして焼成することによって形成され、焼成条件なども上述したのと同様の条件で行うことができる。このように焼成すると、上述したのと同様に、栽培用土62の全体に多数の微細浸透孔(図示せず)が形成され、これら微細浸透孔が水を供給するための送給孔として機能するとともに、水を保持するための保持孔としても機能し、植物52の栽培に適した栽培用土62を提供することができる。
【0043】
また、水受け部58の内部には水受け空間64が形成され、この水受け部58の底部には、複数の貫通孔66が設けられている。この水受け部58は、相互に隣接する一対の緑化パネル8a,8bの間に挿入支持され、固定用金具(図示せず)により水受け部58と下側の緑化パネル8bとが相互に固定されている。ボックス本体部56の一側部には、植栽空間60及び水受け空間64を相互に連通するための連通用開口部68が設けられている。植栽空間60には、透水性を有するプレート部材70が配設されており、このプレート部材70の一端部は、連通用開口部68を通して水受け空間64に横方向に延びている。また、ボックス本体部56の内部においてその一側部側にはプレート部材72が配設されており、このプレート部材72は上下に延びてその下端部は栽培用開口部68の一部を覆っている。これにより、栽培用土62が連通用開口部68を通して水受け空間64に流出するのが防止される。これらプレート部材70,72は、緑化パネル8a,8bを焼成するときに用いた杯土と同様のものを用い、この杯土をプレート状にして焼成することによって形成されている。
【0044】
なお、ボックス本体部56の大きさは、例えば、高さH1が約150mm、奥行きD1が約150mmに構成される。また、水受け部58の大きさは、例えば、高さH2が約50mm、奥行きD2が約100mmに構成される。また、ボックス本体部56及び水受け部58の横幅Wは、緑化パネル8a,8bのパネル本体20a,20bの横幅よりも幾分小さく構成され、例えば約380mmに構成される。
【0045】
次に、上述したプランタボックス54による植物52の栽培方法について説明する。給水チューブ(図示せず)を通して水が流れることにより、緑化パネル8a,8bのパネル本体20a,20bの全体に水が浸透される。上側の緑化パネル8aに浸透しきれなかった水は、水受け部58の水受け空間64に滴下され、プレート部材70に浸透される(図10参照)。更に、プレート部材70に浸透された水は、水受け空間64から連通用開口部68を通して植栽空間60に供給され、植栽空間60内の栽培用土62に浸透される。このように、上側の緑化パネル8aに浸透しきれなかった水をプランタボックス54に植栽された植物52に供給することができ、効率良く緑化を行うことができる。また、プレート部材70に浸透しきれなかった水は、水受け部58に設けられた複数の貫通孔66を通して下側の緑化パネル8bに滴下され、これにより栽培用土62に含まれる水が過剰になることがなく、根腐れを防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態のプランタボックス54は、上記第2及び第3の実施形態の緑化パネルユニットにも適用することができる。
【0047】
以上、本発明に従う緑化パネルユニット及び緑化資材の種々の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0048】
例えば、上記各実施形態では、隣接する一対の支柱6の間には複数の緑化パネル8(8A)(8B)を配設するように構成したが、縦長の1枚の緑化パネルを配設するように構成してもよい。かかる場合には、パネル本体に通気用のスリットを上下に間隔を置いて複数設けるようにしてもよい。
【0049】
また例えば、上記各実施形態では、緑化資材をパネル状に構成したが、これに限られず、例えばブロック状や自然石の如き塊状などの種々の形状に構成することができる。緑化資材を自然石の如き塊状に構成した場合には、緑化資材を庭園の置き石などとして用いることができる。
【0050】
また例えば、上記第1の実施形態では、パネル本体20の両側端部にそれぞれ開口部30〜36及びチューブ収容凹部22,24を設けるように構成し、また上記第2の実施形態では、パネル本体20Aの両側端部にそれぞれ開口部30〜36を設けるように構成しるように構成したが、パネル本体20,20Aの両側端部のうち一方のみにこれらを設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
2,2A,2B,2C 緑化パネルユニット
6 支柱
8,8A,8B,8a,8b 緑化パネル(緑化資材)
10,10B 給水手段
14 給水チューブ
16 噴出孔
18 支持凹部
20,20A,20B,20a,20b パネル本体(緑化資材本体)
22,24 チューブ収容凹部
30,32,34,36 開口部
38 通気用空間
40,52 植物
42,43 スペーサ
44,46 チューブ収容空間
48 放水チューブ
50 噴出孔
54 プランタボックス
56 ボックス本体部
58 水受け部
60 植栽空間
64 水受け空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が植生される緑化パネルと、前記緑化パネルを左右両側より支持するための一対の支柱と、前記緑化パネルに水を供給するための給水手段と、を備え、
前記緑化パネルは、透水性を有するパネル本体を有し、前記給水手段からの水が前記パネル本体の内部に浸透されるとともに、この浸透された水の一部が前記パネル本体の表面から大気中に蒸発されることを特徴とする緑化パネルユニット。
【請求項2】
前記給水手段は、前記パネル本体の内部を通して延びる給水チューブから構成され、前記給水チューブには複数の噴出孔が設けられ、前記給水チューブを通して水が流れると、前記複数の噴出孔から噴出した水が前記パネル本体の内部に浸透されることを特徴とする請求項1に記載の緑化パネルユニット。
【請求項3】
前記一対の支柱にはそれぞれ支持凹部が設けられ、前記パネル本体の両側端部は前記一対の支柱の支持凹部に収容支持され、前記パネル本体の両側端部の少なくとも一方には、前記給水チューブが挿通される開口部と、前記開口部を通して前記パネル本体の外部に延びる前記給水チューブの一部が収容されるチューブ収容凹部とが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の緑化パネルユニット。
【請求項4】
前記一対の支柱にはそれぞれ支持凹部が設けられ、前記パネル本体の両側端部はスペーサを介して前記一対の支柱の前記支持凹部に収容支持され、前記パネル本体の両側端部と前記一対の支柱の前記支持凹部との間にはそれぞれ前記スペーサによってチューブ収容空間が形成され、前記パネル本体の両側端部の少なくとも一方には、前記給水チューブが挿通される開口部が設けられ、前記開口部を通して前記パネル本体の外部に延びる前記給水チューブの一部は、前記チューブ収容空間に収容されることを特徴とする請求項2に記載の緑化パネルユニット。
【請求項5】
前記給水手段は、前記緑化パネルの上方に配設された放水チューブから構成され、前記放水チューブには複数の噴出孔が設けられ、前記放水チューブの前記複数の噴出孔より水が前記パネル本体に向けて放出されると、前記パネル本体の表面からその内部に水が浸透されることを特徴とする請求項1に記載の緑化パネルユニット。
【請求項6】
前記緑化パネルは、前記一対の支柱の間に上下に間隔を置いて複数配設され、相互に隣接する一対の前記緑化パネルの間には、通気用空間が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緑化パネルユニット。
【請求項7】
前記緑化パネルは、前記一対の支柱の間に上下に間隔を置いて複数配設され、また、前記緑化パネルに関連して、植物を植栽するためのプランタボックスが設けられ、前記プランタボックスは、ボックス本体部と、前記ボックス本体部の一側部から延びる水受け部と、を備え、前記水受け部は、相互に隣接する一対の前記緑化パネルの間に挿入支持され、前記ボックス本体部の内部には、植物が植栽される植栽空間が形成され、また前記水受け部の内部には、前記一対の緑化パネルの上側の緑化パネルから滴下する水を受けるための水受け空間が形成され、前記ボックス本体部の一側部には、前記植栽空間及び前記水受け空間を相互に連通するための連通用開口部が設けられており、
前記一対の緑化パネルの上側の緑化パネルから前記水受け空間に水が滴下すると、この水は前記連通用開口を通して前記植栽空間に供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緑化パネルユニット。
【請求項8】
植物が植生される緑化資材本体を備え、前記緑化資材本体は、粒状物、可塑材及び焼結材を主成分とする杯土を焼成して形成され、焼成時に前記粒状物間に生成される空隙によって、前記緑化資材本体に微細浸透孔が形成され、また、前記粒状物は、粒径が0.1〜5.0mmであり、杯土100重量%に対して20〜70重量%含まれることを特徴とする緑化資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−19449(P2011−19449A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167377(P2009−167377)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(506103625)株式会社陶光菴 (2)
【Fターム(参考)】