説明

緑化樹木ユニット、及び、緑化システム

【課題】都市空間のヒートアイランド現象を効果的に抑制し、且つ、メンテナンス性に優れた新規な緑化樹木ユニット、及び、緑化システムを提案する。
【解決手段】植物5が生育される緑化パネル3・4にて囲まれた空間8が形成される緑化樹木ユニット1であって、噴霧ノズル23から空間8内に放出される霧24によって、空間8内の空気を冷却する構成とする緑化樹木ユニット1とするものである。また、緑化樹木ユニット1を構成する緑化パネル3・4は、緑化パネル3・4が固定される固定部材(立体枠2、若しくは、設置基礎10)に対して着脱自在に構成される、こととするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の設置によりヒートアイランド現象への対策を図る緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市のヒートアイランド現象は著しくなり、年々その厳しさを増している。このヒートアイランド現象への対策として、屋上緑化によるものが知られており、この屋上緑化に関して開示する文献も存在する(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1では、容器内に形成した植栽ベッドに永年緑化植物(つる植物)の根を定植し、植栽ベッドの上方に設けられた栽培棚に葉部やつる部を絡ませて栽培する構成が開示されている。また、植栽ベッド内に散水パイプが埋設され、この散水パイプから培地に水などが供給される構成としている。
【0004】
また、特許文献2では、骨組材からなる格子状の支持部材に植物を繁殖させる構成が開示されている。そして、骨組材の内部に根部保持材を収容した管体を設置し、根部保持材に植物の種子を播種して植物を繁茂させることで、支持部材の略全面を植物で覆うこととして屋上を緑化するものとしている。
【0005】
上述の特許文献1、2に開示されるような技術では、屋上が緑化されることによる屋上表面が遮光され、屋上表面(コンクリート面)の温度上昇の抑制が図られる。これにより、屋上緑化されたビルなどの建築物について、つまり、その建築物についてだけ、冷房用電力消費削減といった効果が見込まれる。
【特許文献1】特開平6−197649号公報
【特許文献2】特開2006−20542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、地球規模の温暖化が加速する環境において、都市全体のヒートアイランド現象に鑑みると、従来のような、各建築物において個別に屋上緑化を行うだけでは、対策としては不十分であり、温暖化のスピードに対処できないものである。
【0007】
また、緑化による冷房用電力消費削減によれば、温室効果ガスの排出量削減を図ることが可能となるものであるが、京都議定書の取組状況をみてもわかるように、温室効果ガスの更なる排出量削減が求められる状況にあり、都市全体といった広範囲での展開を視野に入れた緑化を図る必要がある。
【0008】
このような状況も踏まえつつ、従来の緑化技術について着目してみると、従来は単に屋上を緑化し、植物によって屋上表面を覆うという単純な思想に基づくものであり、その直接的な効果としては、屋上緑化を施した建築物についてのみ、冷房用電力消費削減が図られるというものに過ぎない。
【0009】
ところが、特に、都市の屋上においては、他のビルとの関係でビル風が吹きやすい環境にあり、また、都市に近い海からの空気が直接的に流れやすい環境にあることに着目すると、ビルの緑化された屋上を空気が通過した際には、この空気が冷却されるという効果が得られるものと考えられる。即ち、屋上緑化によって、都市を流れる空気を冷却する、若しくは、温度上昇を抑えることにより、この空気による冷却効果が得られるという考えである。
【0010】
しかし、特許文献1、特許文献2のような従来の緑化の形態では、単純に、屋上を植物で遮蔽するという思想であるため、都市を流れる空気を冷却するという思想もなく、空気を冷却させる点では、十分な効果が期待できないものである。
【0011】
また、都市の広範囲での緑化の展開を考えた場合には、既設の建築物への設置の容易性、建物補修の容易性、建替時の撤去(回収及びリサイクル)の容易性を考慮する必要がある。
【0012】
また、緑化設備の設置後において植物を成長させるという思想では、その育成時期を要することになり、緑化による効果が出るまで長期間を要してしまうことになる。このようなことでは、加速する地球温暖化に対応できないものとなってしまう。
【0013】
また、植物が枯れてしまった場合や、逆に、繁殖しすぎてしまった場合などでは、撤去(回収)や剪定といったメンテナンスが必要となるが、このメンテナンス性についても、考慮する必要がある。
【0014】
そこで、本発明は以上の問題点に鑑み、都市空間のヒートアイランド現象を効果的に抑制し、且つ、メンテナンス性に優れた新規な緑化樹木ユニット、及び、緑化システムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
即ち、請求項1に記載のごとく、
植物が生育される緑化パネルにて囲まれた空間が形成される緑化樹木ユニットであって、噴霧ノズルから前記空間内に放出される霧によって、前記空間内の空気を冷却する構成とする緑化樹木ユニットとするものである。
【0017】
また、請求項2に記載のごとく、
前記緑化樹木ユニットを構成する前記緑化パネルは、緑化パネルが固定される固定部材に対して着脱自在に構成される、こととするものである。
【0018】
また、請求項3に記載のごとく、
前記空間内への霧の放出は、前記空間の内部の気温の高低、若しくは、外部の気温の高低に応じて実施する構成とするものである。
【0019】
また、請求項4に記載のごとく、
前記空間内への霧の放出は、前記空間の内部を流れる空気の風速の強弱、若しくは、外部を流れる空気の風速の強弱に応じて実施する構成とするものであり、
風速が0m/s以上5.5m/s未満、好ましくは、0m/s以上1.6m/s未満、さらに好ましくは、0m/s以上0.3未満であるときに、前記霧の放出が行われる構成とするものである。
【0020】
また、請求項5に記載のごとく、
前記緑化樹木ユニットの内部、及び/又は、外部について、照光装置による光の照射が行われる構成とするものである。
【0021】
また、請求項6に記載のごとく、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の緑化樹木ユニットを複数設置し、前記各緑化樹木ユニットにより空気の冷却が行われる緑化システムとするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
この緑化樹木ユニットにより、都市空間を流れる空気の冷却が効率よく行われるため、都市空間の広範囲において冷却された空気を送風することが可能となって、都市空間全体としての温度低下を図ることが可能となる。また、単に空気の冷却だけではなく、緑化(屋上であれば、屋上緑化)も行うことができるため、二つの機能を兼ね備えた緑化樹木ユニットを実現することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明においては、
工場や農地において植物を繁茂させた緑化パネルを搬入組み付ける構成とすることにより、施工後において直ちに屋上緑化、及び、冷却した空気の送風を実施することができ、早急な温暖化対策を図ることが可能となる。また、植物が枯れてしまった場合、植物の種類を変えるべく緑化パネルなどを変更する場合、さらには、緑化樹木ユニットを撤去(回収)する場合など、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明においては、
例えば、秋や冬などの気温が低い場合では、ヒートアイランド現象が生じない状況となるため、このような状況での霧の放出を停止することにより水(霧)の浪費を抑えることができ、また、夏の前後期間において昼夜の気温変化が激しい場合においては、気温が高くなって冷却が有効となる時間帯にのみ、水(霧)を効果的に消費することが可能となる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明においては、
例えば、風速が弱いとき(例えば、0m/s以上5.5m/s未満、好ましくは、0m/s以上1.6m/s未満、さらに好ましくは、0m/s以上0.3未満の風速であるとき)には、都市空間の広範囲において空気が移動せずに停滞することが想定され、ヒートアイランド現象が悪化することが考えられるため、風速が弱いときに霧による冷却を行うことにより、都市全体の気温を下げる効果が期待できることになる。また、地域的(緑化樹木ユニットが屋上に設置される建物のエリア)において温度が低下することにより、新たな空気の流れ(風(空気の対流))を発生させる効果も期待でき、ひいては、この空気の流れによる都市全体の気温低下の促進が期待できる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明においては、
夜間において、緑化樹木ユニットのイルミネーションを実施することが可能となる。特に、霧が放出されることにより、夜間において幻想的なイルミネーションを実現することができる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明においては、
緑化システムが設置される各箇所(ビルや広場)において緑化と空気の冷却が可能となるとともに、この緑化システムを都市空間の広範囲に展開することによって、都市空間全体としての温度低下を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる緑化樹木ユニット1の構成について示すものである。
この緑化樹木ユニット1は、図2に示すごとく、立方体形状の立体枠2と、この立体枠2の四つの側部をそれぞれ覆うように立体枠2に取り付けられる緑化パネル3・3と、立体枠2の上部を覆うように立体枠2に取り付けられる緑化パネル4と、を有して構成される。
【0030】
また、図2に示すごとく、立体枠2は、鋼材を加工して組立てることで立方体枠形状に構成されるものである。
【0031】
また、図2に示すごとく、立体枠2の側部を覆う各緑化パネル3は、鋼材を加工して組立てることで四方枠を形成し、この四方枠内に長期耐候性を有する熱処理木材などで形成される格子が配置される構成とするものである。また、この格子に植物5が絡ませられるように繁殖され、この植物5によって格子が覆われることになり、いわゆる、植物5による壁面が形成されるようになっている。また、緑化パネル3の下部には、培地物質が入れられたプラントボックス6が設けられ、この培地物質に植物5が植えつけられるようになっている。
【0032】
また、図2に示すごとく、植物5については、例えば、ヘデラなどの常緑のつる性植物とすることが好ましい。このようにつる性植物とすることで、緑化パネル3が植物5によって完全に覆われることがなく、植物5の隙間を空気が通過できるようになる。また、つる性植物とすることで、植物5の成長による重量の増加が小さいものとなり、緑化樹木ユニット1の重量増加による屋上床面11の負荷の増加が抑えられるようになる。また、緑化パネル3の格子が熱処理木材で形成されることで、植物の絡みつきが良好なものとなる。また、この緑化樹木ユニット1は、いわゆる樹木の代替として機能するものであり、従来行われていた樹木の移設による植樹と比較すると、その移設費用が大きくかかることや、樹木の原生地の荒廃といった問題を低減することができるものとなる。
【0033】
また、図2に示すごとく、立体枠2の上部を覆う緑化パネル4は、側部の緑化パネル3と同様、鋼材を加工して組立てることで四方枠を形成し、この四方枠内に熱処理木材などでなる格子が形成される構成とするものである。また、この格子に植物5が絡ませられるように繁殖され、この植物5によって格子が覆われることになり、いわゆる、植物5による壁面が構成されるようになっている。また、緑化パネル4の下面側には、培地物質が入れられたプラントボックス7が設けられ、この培地物質に植物5が植えつけられるようになっている。
【0034】
そして、図1に示すごとく、立体枠2に緑化パネル3・4を組み付けることで、緑化パネル3・4によって囲まれた空間8が形成されるようになっている。そして、この立体枠2に緑化パネル3・4を組み付けたものを緑化樹木ユニット1とし、この緑化樹木ユニット1が設置基礎10に載置されるようになっている。なお、緑化樹木ユニット1において下面を構成する部位には、緑化パネルが取り付けられずに、緑化樹木ユニット1の空間8の下方が開放されるようになっている。
【0035】
図2及び図3に示すごとく、設置基礎10は、屋上床面11に床束材12・12を設置し、この床束材12・12に大引材13・13が架設されて構成されるものであり、この大引材13・13の上に、立体枠2が載置固定されるようになっている。なお、設置基礎10については、この構成の他、例えば、床束材12・12を長くして柱とし、屋上床面11から略1m〜略3m(これよりも高くてもよい)の高さの位置に大引材13・13を梁として設置することで、緑化樹木ユニット1の下方において人が通行できる空間が形成されることとしてもよい。
【0036】
また、図3に示すごとく、設置基礎10には、緑化樹木ユニット1・1が間隔を開けて載置固定され、緑化樹木ユニット1・1の間において、緑化樹木ユニット1が載置されない箇所においては、緑化パネル4が載置されるようになっている。これにより、屋上床面11の広い範囲が、緑化樹木ユニット1、若しくは、緑化パネル4によって被覆されるようになっている。また、緑化樹木ユニット1・1を間隔を開けて設置することで、各緑化樹木ユニット1・1の間に空気の通り道を確保することができ、各緑化樹木ユニット1・1に対して空気が当たる面積(表面積)を広く確保することができる。また、この他、緑化樹木ユニット1・1を連設して設けることにより、屋上床面11の全てが緑化樹木ユニット1・1で覆われる構成としてもよい。
【0037】
また、図3に示すごとく、緑化樹木ユニット1や緑化パネル4は、図示せぬボルトなどの固定具によって、設置基礎10に連結固定されるものであり、この固定具による連結固定を解除することによれば、再び、緑化樹木ユニット1や緑化パネル4を設置基礎10から取外し、他の緑化樹木ユニット1や緑化パネル4と交換ができるようになっている。これにより、植物5が枯れてしまった場合、植物5の種類を変えるべく緑化パネル3などを変更する場合、さらには、緑化樹木ユニット1を撤去(回収)する場合など、メンテナンスを容易に行うことができるようになっている。また、緑化パネル3・4を緑化樹木ユニット1に設置する代わりに、広告板を設置することや、緑化パネル3・4の面積の一部に広告板を設置することで、広告を行うこととしてもよい。また、植物の色彩を利用して、緑化樹木ユニット1や緑化パネル4の配置によって特定のパターンを形成することも可能である。
【0038】
また、図1及び図2に示すごとく、設置基礎10の床束材12・12の間を通過するように、給水管21が配管されている。また、この給水管21から上方に向けて、散水管22が分岐され、この散水管22の上端部に、噴霧ノズル23が配置されるようになっている。そして、図1に示すごとく、この噴霧ノズル23から、霧24(水の粒子を細かくして霧としたもの)が発生されるようになっている。また、霧24については、噴霧ノズル23のノズル径の設定により、空間8内の広範囲において霧状(ミスト状)に噴霧されるようになっている。なお、本実施形態の他、緑化パネル3・4に給水管21と通じる配水管、及び、散水ノズルを設け、この散水ノズルから霧を噴霧させる構成としてもよい。また、空間8内に放出される霧の状態は、蒸発のし易い霧24(平均粒子径約10μm)とするほか、霧24よりも粒の大きい水滴状のもの(例えば、平均粒子径0.1mm〜1mm程度)としてもよい。
【0039】
そして、図1に示すごとく、空間8に霧が漂うことになり、この霧が蒸発(気化)することで熱が吸収され(気化熱の吸収)、空間8内の温度を低下させることができ、空間8内に存在する空気の冷却が行われる。そして、このような冷却された空間8を形成した緑化樹木ユニット1に吹き込まれる空気30Aは、空間8において冷却された後に空気30Bとして送出されることになる。
【0040】
このようにして、図1に示すごとく、緑化樹木ユニット1にて空気30Aが冷却されることで、屋上を通過する空気を全体として冷却することが可能となる。また、緑化パネル3・4によって囲まれた空間8を形成することで、空間8内を霧24で満たすことができ、空間8内を確実に冷却することができることになる。そして、これにより、緑化樹木ユニット1に吹き込む空気30Aを確実に冷却することが可能となり、各緑化樹木ユニット1の冷却効率を優れたものとすることができる。また、以上の緑化樹木ユニット1においては、吹き込んだ空気について熱交換を行うラジエータの作用が発揮されるものであり、このラジエータの作用が効率よく行われるようになっているのである。
【0041】
また、図1に示す霧24の噴霧は、気温の高低に応じて実施する構成としてもよい。即ち、例えば、緑化樹木ユニット1の外部、若しくは、内部に温度センサ(不図示)を設置するとともに、給水管21、若しくは、散水管22といった配管系に電動バルブを設置し、この電動バルブを温度センサによる外気温の測定値に応じて開閉させるものである。或いは、給水管21に水を供給するポンプ装置を温度センサによる外気温の測定値に応じて駆動/停止させることとするものである。これによれば、例えば、気温が28℃以上であるときには、霧24の噴霧により空気30Aを積極的に冷却させる一方、気温が28℃未満であるときには、霧24の噴霧を行わず、水の使用を控える、といった自動制御を行うことができる。例えば、秋や冬などの気温が低い場合では、ヒートアイランド現象が生じない状況となるため、このような状況での霧24の噴霧を停止することにより水(霧)の浪費を抑えることができ、また、夏の前後期間において昼夜の気温変化が激しい場合においては、気温が高くなって冷却が有効となる時間帯にのみ、水(霧)を効果的に消費することが可能となる。
【0042】
また、図1に示す霧24の噴霧は、緑化樹木ユニット1を流れる空気の風速の強弱に応じて実施する構成としてもよい。即ち、例えば、緑化樹木ユニット1の外部、若しくは、内部に風速センサ(不図示)を設置するとともに、給水管21、若しくは、散水管22といった配管系に電動バルブを設置し、この電動バルブを風速センサによる風速の測定値に応じて開閉させるものである。或いは、給水管21に水を供給するポンプ装置を風速センサによる風速の測定値に応じて駆動/停止させることとするものである。これによれば、例えば、風速が5.5m/s未満であるときには、霧24の噴霧により空気30Aを積極的に冷却させる一方、風速が5.5m/s以上であるときには、霧24の噴霧を行わず、水の使用を控える、といった自動制御を行うことができる。なお、この自動制御においては、周知の風速センサと、この風速センサの検出値に応じて電動バルブの開閉(若しくはポンプの駆動/停止)をさせる信号を出力する制御装置といった周知の構成にて実現することができる。また、風速センサや制御装置については、緑化パネル3・4や設置基礎10に設置することができる。
【0043】
そして、特に風速が弱いとき(例えば、0m/s以上5.5m/s未満、好ましくは、0m/s以上1.6m/s未満、さらに好ましくは、0m/s以上0.3未満の風速であるとき)には、都市空間の広範囲において空気が移動せずに停滞することが想定され、ヒートアイランド現象が悪化することが考えられるため、風速が弱いときに霧による冷却を行うことにより、都市全体の気温を下げる効果が期待できることになる。また、地域的(緑化樹木ユニットが屋上に設置される建物のエリア)において温度が低下することにより、新たな空気の流れ(風(空気の対流))を発生させる効果も期待でき、ひいては、この空気の流れによる都市全体の気温低下の促進が期待できる。
【0044】
なお、風速の基準については気象庁風力階級表(必要であれば参照:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kaze.html#E10)における風力0〜3を想定して設定されることが好ましく、風力(風速)が0に近いほど、本願発明によるヒートアイランド現象に対する効果がより顕著に発揮されるものである。また、霧24を生成するための水は、水道水であってもよいが、水道コストの観点から、雨水や中水を利用することが好ましいと考えられる。
【0045】
さらに、図1に示す霧24の噴霧を、気温の高低と、緑化樹木ユニット1を流れる空気の風速の両方に応じて実施することとしてもよい。即ち、温度センサと風速センサの両方の測定値に基づいて、霧24の噴霧の入り切りを制御するものである。
【0046】
そして、図4及び図5に示すごとく、以上のように構成した緑化樹木ユニット1を複数設置して緑化システム40・40とし、ビル50・50の屋上に設置することで、各ビル50・50の屋上緑化が行われるとともに、各緑化樹木ユニット1・1によって、ビル50・50を通過する空気30Aを冷却し、冷却された空気30Bを送風することが可能となる。
【0047】
また、図2に示すごとく、緑化樹木ユニット1や設置基礎10は、各パーツを組立てて構成できるものであることから、現場施工が容易であり、既設のビルの屋上についての施工も行いやすいものである。このような良好な施工性により、新設ビルの屋上への施工や、既設のビルの屋上への施工の展開が図り易いものとなり、都市空間での広範囲な屋上緑化の実現が可能となるものである。そして、本発明にかかる緑化樹木ユニット1(緑化システム40)によれば、図1、4、5に示すごとく、空気30Aの冷却が効率よく行われるため、都市空間の広範囲において冷却された空気30Bを送風することが可能となって、都市空間全体としての温度低下を図ることが可能となる。
【0048】
また、図4及び図5に示すごとく、都市空間での広い範囲において展開が可能となるため、緑化樹木ユニット1を構成するパーツの大量生産、流通を促進することができ、コスト削減を図ることができる。また、図2に示すごとく、緑化樹木ユニット1を組立て式とすることで、施工においては、工場や農地において植物5を繁茂させた緑化パネル3・4を搬入・組み付ける構成とすることにより、施工後において直ちに屋上緑化、及び、冷却した空気の送風を実施することができ、早急な温暖化対策を図ることが可能となる。
【0049】
また、図6に示すごとく、緑化樹木ユニット1の内部の空間8内に、夜間に光34(例えば、低電圧のLEDを利用した光)を照射するための照光装置35・35を配置することで、空間8内、及び、緑化樹木ユニット1の周囲を光34で照らすこととしてもよい。これによれば、夜間における緑化樹木ユニット1のイルミネーションを行うことができる。また、このイルミネーションにおいては、植物5の隙間から光34が漏れることになるため、緑化樹木ユニット1から漏れる光34を適度に遮断されることになり、やわらかな印象を与えることができる。また、同時に、霧24(図1参照)を噴霧することによれば、この霧24(図1参照)によって、光34が拡散されることになり、幻想的なイルミネーションを実現することができる。また、照光装置35・35は、空間8内に設けるほか、緑化樹木ユニット1の外部に設けることとしてもよい。例えば、緑化パネル4に上方に向かうステーを突設し、このステーの上部から下方に向けて光を照射する構成などである。
【0050】
また、図6に示す照光装置35・35は、図2に示す立体枠2、緑化パネル3、4、設置基礎10、給水管21、散水管22などのいずれかに設置することができる。また、この照光装置35・35の電源としては、一次電池、商用電源、など一般の電源を用いることとするほか、太陽光発電と蓄電池の組み合わせにて日射を利用する形態とすることもできる。特に、屋上に緑化樹木ユニット1が設置される場合には、採光がし易い環境に緑化樹木ユニット1が設置されるため、緑化パネル3・4の上部に発電用太陽光パネルを設けることなどにより、効率よく発電を行うことが可能となる。また、照度センサによって、夜間にのみ自動点灯する構成としてもよい。また、光源としては、白熱灯のほか、低電圧のLEDなど、様々なものを利用することができる。また、緑化パネル4(緑化パネル3でもよい)の外側に照光装置36・36を設け、この照光装置36・36によるイルミネーションを行ってもよい。
【0051】
以上のようにして、本発明を実施することが可能となる。
即ち、図1及び図2に示すごとく、植物5が生育される緑化パネル3・4にて囲まれた空間8が形成される緑化樹木ユニット1であって、噴霧ノズル23から空間8内に放出される霧24によって、空間8内の空気を冷却する構成とする緑化樹木ユニット1とするものである。
【0052】
この緑化樹木ユニット1により、都市空間を流れる空気30Aの冷却が効率よく行われるため、都市空間の広範囲において冷却された空気30Bを送風することが可能となって、都市空間全体としての温度低下を図ることが可能となる。また、単に空気30Aの冷却だけではなく、緑化(屋上であれば、屋上緑化)も行うことができるため、二つの機能を兼ね備えた緑化樹木ユニット1を実現することができる。
【0053】
また、図1及び図2に示すごとく、緑化樹木ユニット1を構成する緑化パネル3・4は、緑化パネル3・4が固定される固定部材(立体枠2、若しくは、設置基礎10)に対して着脱自在に構成される、こととするものである。
【0054】
これにより、工場や農地において植物5を繁茂させた緑化パネル3・4を搬入・組み付ける構成とすることにより、施工後において直ちに屋上緑化、及び、冷却した空気の送風を実施することができ、早急な温暖化対策を図ることが可能となる。また、植物5が枯れてしまった場合、植物5の種類を変えるべく緑化パネル3などを変更する場合、さらには、緑化樹木ユニット1を撤去(回収)する場合など、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0055】
また、図1に示すごとく、空間8内への霧24の放出は、空間8の内部の気温の高低、若しくは、外部の気温の高低に応じて実施する構成としてもよい。
【0056】
これにより、例えば、秋や冬などの気温が低い場合では、ヒートアイランド現象が生じない状況となるため、このような状況での霧24の噴霧を停止することにより水(霧)の浪費を抑えることができ、また、夏の前後期間において昼夜の気温変化が激しい場合においては、気温が高くなって冷却が有効となる時間帯にのみ、水(霧)を効果的に消費することが可能となる。
【0057】
また、図1に示すごとく、空間8内への霧24の放出は、空間8の内部を流れる空気30Aの風速の強弱、若しくは、外部を流れる空気30Aの風速の強弱に応じて実施する構成としてもよい。
【0058】
これにより、特に、風速が弱いとき(例えば、0m/s以上5.5m/s未満、好ましくは、0m/s以上1.6m/s未満、さらに好ましくは、0m/s以上0.3未満の風速であるとき)には、都市空間の広範囲において空気が移動せずに停滞することが想定され、ヒートアイランド現象が悪化することが考えられるため、風速が弱いときに霧による冷却を行うことにより、都市全体の気温を下げる効果が期待できることになる。また、地域的(緑化樹木ユニットが屋上に設置される建物のエリア)において温度が低下することにより、新たな空気の流れ(風(空気の対流))を発生させる効果も期待でき、ひいては、この空気の流れによる都市全体の気温低下の促進が期待できる。
【0059】
また、図6に示すごとく、緑化樹木ユニット1の内部、及び/又は、外部について、照光装置35・35による光の照射が行われる構成としてもよい。
【0060】
これにより、夜間において、緑化樹木ユニット1のイルミネーションを実施することが可能となる。特に、霧が放出されることにより、夜間において幻想的なイルミネーションを実現することができる。
【0061】
また、図3乃至図5に示すごとく、複数の緑化樹木ユニット1を設置し、各緑化樹木ユニット1により空気の冷却が行われる緑化システム40・40とするものである。
【0062】
これにより、図4及び図5に示すごとく、緑化システム40が設置される各箇所(ビル50・50)において緑化と空気の冷却が可能となるとともに、この緑化システム40を都市空間の広範囲に展開することによって、都市空間全体としての温度低下を図ることが可能となる。
【0063】
さらに、図1及び図2に示す構成例では、立方体形状の緑化樹木ユニット1としたが、この他、図7に示すごとく、アーチ状の断面を形成するドーム形状の緑化樹木ユニット70としてもよい。この場合、複数の緑化パネル71・71を組立てることでドーム形状が構成されることとし、各緑化パネル71・71が着脱自在に構成されることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の緑化樹木ユニットは、屋上に設置して屋上緑化に利用する他、地上に並べて設置して、街路を構成するなど、設置箇所に限定されること無く、展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る緑化樹木ユニットの構成について示す図。
【図2】緑化樹木ユニットを構成する各パーツについて示す図。
【図3】緑化樹木ユニットと緑化パネルの設置基礎への設置について説明する図。
【図4】本発明の一実施形態に係る緑化樹木ユニットをビルに設置した例について示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る緑化樹木ユニットをビルに設置した例について示す図。
【図6】照光装置によるイルミネーションについて説明する図。
【図7】ドーム形状の緑化樹木ユニットの例について示す図。
【符号の説明】
【0066】
1 緑化樹木ユニット
2 立体枠
3 緑化パネル
4 緑化パネル
5 植物
6 プラントボックス
7 プラントボックス
8 空間
10 設置基礎
11 屋上床面
23 噴霧ノズル
24 霧
30A 空気
30B 空気
34 光
35 照光装置
40 緑化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が繁茂される緑化パネルにて囲まれた空間が形成される緑化樹木ユニットであって、
噴霧ノズルから前記空間内に放出される霧によって、前記空間内の空気を冷却する構成とする緑化樹木ユニット。
【請求項2】
前記緑化樹木ユニットを構成する前記緑化パネルは、
緑化パネルが固定される固定部材に対して着脱自在に構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の緑化樹木ユニット。
【請求項3】
前記空間内への霧の放出は、前記空間の内部の気温の高低、若しくは、外部の気温の高低に応じて実施する構成とする、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の緑化樹木ユニット。
【請求項4】
前記空間内への霧の放出は、前記空間の内部を流れる空気の風速の強弱、若しくは、外部を流れる空気の風速の強弱に応じて実施する構成とするものであり、
風速が0m/s以上5.5m/s未満、好ましくは、0m/s以上1.6m/s未満、さらに好ましくは、0m/s以上0.3未満であるときに、前記霧の放出が行われる構成とする、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の緑化樹木ユニット。
【請求項5】
前記緑化樹木ユニットの内部、及び/又は、外部について、照光装置による光の照射が行われる構成とする、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の緑化樹木ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の緑化樹木ユニットを複数設置し、
前記各緑化樹木ユニットにより空気の冷却が行われる緑化システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82140(P2009−82140A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−311710(P2008−311710)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(508361678)株式会社アズ・リノベテック (1)
【Fターム(参考)】