説明

緑化装置

【課題】 液肥を貯留した管の垂直上方に、蔓性植物を植栽し、簡単な構造で、当該管内の液肥を循環させることを可能とすることにより、軽量、小型、安価な緑化装置の提供にある。
【解決手段】 両端面が閉口し、内部の所定の高さまで液肥3が貯留され、且つ、垂直上方の周壁には蔓性植物を植栽するための複数の孔2cが形成された水平方向に所定の長さ延在する第一の管2と、第一の管2の内部に設置され、第一の管2の両端面付近まで延在した第二の管7と、第二の管7の一端部に接続され、液肥3を第二の管7の他端部に向けて圧送するためのポンプ8と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建造物の屋上や側壁を緑化することを目的として、蔓性植物の栽培を行うための緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、建造物の屋上や側壁を緑化することを目的としては、土壌を屋上に敷設する形態が主流であった。また、特に屋上緑化の場合には、当該屋上の耐荷重の問題から、軽量化土壌を利用したり、全体としての重量が軽くなるような工夫がなされていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3285201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球規模で温暖化が問題視される中、とりわけ人間活動の活発な都市部においては、ヒートアイランド現象による気温の上昇が著しい。ヒートアイランド現象には数々の要素が絡み合っているが、主要な原因の一つは路面のアスファルトや、ビルのコンクリートに代表される地表面被覆の人工化である。これらに対する有効な策の一つとして、建造物の屋上緑化に注目がされており、自治体による援助等も行われ、推進が図られている。
【0005】
屋上緑化をはじめとする建造物緑化には、昼間の建造物表面からの対流顕熱を抑制すると同時に断熱効果があるため、建造物の最上階の室内温度の低減に寄与し、冷房の使用を抑制することができる。しかし、屋上緑化施設を導入するにあたり、土壌を主とする各種設備が屋上部分へ掛かる荷重を考慮しなければならないことに加え、頻繁な水遣りの手間、排水の管理や、根が屋上面に入り込んでしまう点など、付随する問題点も少なくなく、簡単に設置することができるものではなかった。さらに、コスト面での負担が大きいことも、都市全体規模で屋上緑化を実現する上での障壁となっていた。
【0006】
そこで、上記のような問題点を解決するため、建造物の緑化を目的として植栽される植物には、少量の土壌しか必要なく、また軽量で手間が掛かりにくく、且つ、少量の水分で生育するもの、例えば、セダム類などを用いた屋上緑化方法が採用されてきた。
【0007】
セダムに代表される、屋上緑化に用いられる植物の多くは、水分を蓄えることができ乾燥にも強いという利点を生かすことができる。ところが、土壌に水分が不足している場合には蒸発散量が少なくなるため、蒸発散作用に基づく蒸発潜熱による大気冷却能力が低下する。その上、乾燥した土壌内部に日中の熱が蓄えられてしまうため、建造物内部に熱をこもらせてしまう結果になることもある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決する為になされたものであり、建造物の屋上や側壁に設置され、液肥を循環させることにより植物を栽培する緑化装置の提供にある。特に、液肥を貯留した管の垂直上方の周壁に、蔓性植物を植栽し、簡単な構造で、当該管内の液肥を循環させることを可能とすることにより、軽量、小型、安価な緑化装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、両端面が閉口し、内部の所定の高さまで液肥が貯留され、且つ、垂直上方の周壁には蔓性植物を植栽するための複数の孔が形成された水平方向に所定の長さ延在する第一の管と、前記第一の管の内部に設置され、前記第一の管の前記両端面付近まで延在した第二の管と、前記第二の管の一端部に接続され、前記液肥を前記第二の管の他端部に向けて圧送するためのポンプと、を具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緑化装置において、前記第二の管の前記他端部からは、前記液肥の液面の垂直上方に向けて垂設された管部が形成され、当該管部の端部から、前記ポンプにより圧送された前記液肥が、前記液面に向けて放出されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1或いは請求項2に記載の緑化装置において、前記第一の管の両端部には、垂直上方に開口部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載の緑化装置において、前記第一の管に形成された前記複数の孔の垂直下方領域と前記ポンプとの間には、前記液肥の流路となる孔が形成された遮断壁が設置され、当該遮断壁により、前記蔓性植物の根が前記ポンプ周囲まで延出することを防止することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4の何れかに記載の緑化装置において、前記第一の管に形成された前記複数の孔の垂直下方領域と前記管部との間には、前記液肥の流路となる孔が形成された遮断壁が設置され、当該遮断壁により、前記蔓性植物の根が前記管部から前記液肥が放出される位置の垂直下方領域まで延出することを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記の構成としたことにより、以下の効果を奏する。
【0015】
請求項1の発明によれば、液肥を貯留した第一の管の垂直上方の周壁に、蔓性植物を植栽し、且つ、第一の管内に設置した第二の管との間において、液肥を循環させることが可能であるため、例えば、2つの槽を接続し、互いの槽の間にて液肥を循環させる必要がなく、軽量、小型、安価な緑化装置を提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、第一の管及び第二の管の間を液肥が循環する過程において、第二の管から液肥が液面に向けて放出される際に曝気されるため、酸素(空気)を含んだ液肥の循環が可能となり、蔓性植物の生長を促進できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、第一の管の両端部には、垂直上方に開口部が形成されているため、当該開口部から、第一の管内にポンプを設置したり、当該ポンプのメンテナンスをしたりすることが可能となり、利便性が向上する。
【0018】
請求項4の発明によれば、ポンプ周囲まで蔓性植物の根が延出(生長)することを防止できるため、例えば、ポンプ吸い込み口に根がつまったりすることを回避でき、緑化装置の品質が向上する。
【0019】
請求項5の発明によれば、蔓性植物の根が管部から液肥が放出される位置の垂直下方領域まで延出(生長)することを防止できるため、例えば、管部から液面に向けて液肥が曝気される際に、根の影響を受けず、良好に液肥に酸素(空気)を取り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態.
以下、本発明に係る緑化装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る一実施形態の緑化装置の上面図である。図2は、図1に示すI−I断面図である。図3は、図1に示すII−II断面図であり、生長した蔓性植物を併せて図示している。
【0022】
図1〜図3において、1は緑化装置である。以下、緑化装置1の構成について、詳細に説明する。
【0023】
2は第一の管であり、両端面が閉口した筒状の管である。なお、本実施の形態では、第一の管は、図3に示す通り、断面が円形となっているが、これに限らず、矩形でもよく、その形状は限定されない。また、例えば、第一の管が断面矩形の場合、少なくともその一側面(周壁)は、蓋として機能する別部材とし、第二の管を内部に設置した後に、当該一側面(周壁)を接合させる構成でも良い。
【0024】
第一の管2は、長手方向の縦断面がコの字に形成(図2参照)され、両端部には、所定の長さ垂直上方に延出した開口部2a、2bが形成されている。また、長手方向の中央部の垂直上方の周壁には、蔓性植物を植栽するための孔2cが形成されている。なお、蔓性植物としては、サツマイモ、ヒョウタン、ヘチマ、キュウリ、カボチャ、ニガウリなどが好ましく、その中でも、サツマイモがより好ましい。
【0025】
3は第一の管2の内部に所定の高さまで貯留された液肥である。液肥3の貯留量(液面高さ)は、フロート4により制御されており、フロート4の浮き沈みに応じ、液肥タンク5から圧送ポンプ6を介し、適宜、第一の管2に液肥3が補充される。すなわち、第一の管2に貯留された液肥3は、蔓性植物に吸収される分、その貯留量が減少するが、本実施形態では、フロート4、液肥タンク5、圧送ポンプ6により、貯留量が一定になるように制御している。なお、このようなフロート4、液肥タンク5、圧送ポンプ6は必須の構成要件ではなく、これに換えて、手動で液肥3を補充しても良い。
【0026】
7は第二の管であり、その一部が液肥3に浸水するように、第一の管2の内部に設置されている。第二の管7は、液肥3に浸水している圧送ポンプ8に接続され、液肥3の液面より垂直上方に延在した管部7a、当該管部7aと接続され、液肥3の液面より垂直上方にて水平方向に延在した管部7b、液肥3に浸水した状態、すなわち、第一の管2の底部付近において、水平方向に延在した管部7dと管部7bを接続するための管部7c、管部7dの圧送ポンプ8設置位置と対向する側の端部から液肥3の液面より垂直上方に延在した管部7eから形成されている。
【0027】
すなわち、液肥3は、第一の管2の一端面付近から、当該第一の管2の内部に設置された圧送ポンプ8により吸入されることにより、第二の管7(管部7a、管部7b、管部7c、管部7d、管部7e)の内部を流れ、第一の管2の他端面付近にて、液肥3の液面に向け、垂直上方から放出され、さらに、第一の管2の内部を圧送ポンプ8の設置方向に向け流れることにより、循環している。なお、図2に示す矢印Aは、このような液肥3の循環を示している。
【0028】
9aは管部7bに設けられたバルブであり、圧送ポンプ8により、管部7bにおける矢印B方向に流れる液肥の流量を制御するものである。矢印B方向に流れる液肥3は、液肥3の液面に向け、垂直上方から放出される。
【0029】
9bは管部7eに設けられたバルブであり、圧送ポンプ8により、管部7bにおける矢印A方向から、管部7c、7d、7eへと流れる液肥の流量を制御するものである。したがって、バルブ9bを調整することにより、矢印A方向に流れる液肥3の流量、すなわち、循環する液肥3の流量を制御することができる。
【0030】
以上を纏めると、バルブ9a及び9bを調整することにより、圧送ポンプ8から汲み上げられた液肥3の一部は管部7aから管部7bを通る矢印A方向に、残りは管部7aから管部7bを通る矢印B方向に流れることになる。
【0031】
10は遮断壁であり、液肥3の流路となる孔10aが形成され、液肥3の流路を確保しつつ、第一の管2を遮断している。同様に、11も遮断壁であり、液肥3の流路となる孔11aが形成され、液肥3の流路を確保しつつ、第一の管2を遮断している。
【0032】
なお、遮断壁10(或いは遮断壁11)は、近接した2枚を一組として設けることが好ましく、この場合、液肥3の流路となる孔10a(或いは孔11a)は、液肥3の液面高さ以下の高さにおいて、互いに異なる高さに孔10a(或いは孔11a)が形成された2枚の遮断壁を一組とする。これにより、根の延在を一組の遮断壁10(或いは遮断壁11)により確実に防止することができる。
【0033】
以下、上述した構成の緑化装置1の動作について説明する。
【0034】
まず、第一の管2に、液肥タンク5から圧送ポンプ6により、開口部2aから液肥3を供給し、所望の高さまで貯留する。
【0035】
次に、孔2cに蔓性植物を植栽する。なお、蔓性植物の根は、孔2cから第一の管2の内部に延出し、液肥3にその一部が浸水した状態とする。また、本実施形態では、根の生長の妨げとならないように、第二の管7を第一の管2の底部に設置しており、根が生長するための空間を確保している。
【0036】
一般に、蔓性植物は、その根を液肥に浸水させた状態に植栽する場合、液肥を循環させた方が、その生長が促進されることが知られている。また、液肥に取り込まれた酸素が多いほど、その生長が促進されることが知られている。
【0037】
したがって、本実施形態では、上述した通り、液肥3を第一の管2と第二の管7との間で循環させると共に、当該循環過程において、管部7b及び管部7eから液肥3の液面に向け、垂直上方から液肥3を放出(すなわち、曝気)することにより、液肥3に酸素を取り込む工夫をしている。
【0038】
また、蔓性植物の根が生長していくにつれ、第一の管2の両端面方向に向けて、根が延出していくことになるが、本実施形態では、遮断壁10及び11により、根の延出を防止している。これにより、圧送ポンプ8の吸い込み口に根がつまることを防止でき、また、管部7eから液肥3を放出(曝気)させる際に、根の影響を受けず、良好に酸素を取り込むことができる。
【0039】
以上に説明した緑化装置1は、建造物の屋上や地表側壁に設置され、当該屋上や側壁を緑化するために利用される。このような緑化装置1は、液肥3を貯留するひとつの槽(第一の管2)のみを有し、当該槽(第一の管2)に蔓性植物を植栽するとともに、当該槽内において、液肥3を循環させることにより、蔓性植物の生長を促進するものである。
【0040】
したがって、非常に小型、軽量となり、設置が容易である。また、地表側壁に設置する場合には、長手方向に連ねて設置することにより、幅広の地表側壁においても有効に緑化することができる。
【0041】
以上の通り、本実施形態の緑化装置1について、適宜、奏する効果も含め説明したが、以下、緑化装置1の奏する主な効果について、纏めて説明する。
【0042】
液肥3を貯留した第一の管2の垂直上方の周壁に形成された孔2cに、蔓性植物を植栽し、且つ、第一の管2の内部に設置した第二の管7との間において、液肥3を循環させることが可能であるため、例えば、2つの槽を接続し、互いの槽の間にて液肥を循環させる必要がなく、軽量、小型、安価な緑化装置を提供することができる。
【0043】
第一の管2及び第二の管7の間を液肥3が循環する過程において、第二の管7から液肥3が液面に向けて放出される際に曝気されるため、酸素(空気)を含んだ液肥3の循環が可能となり、蔓性植物の生長を促進できる。
【0044】
第一の管2の両端部には、垂直上方に開口部2a、2bが形成されているため、当該開口部2a、2bから、第一の管2の内部にポンプ8を設置したり、当該ポンプ8のメンテナンスをしたりすることが可能となり、利便性が向上する。
【0045】
遮断壁10を設けることにより、ポンプ8の周囲まで蔓性植物の根が延出(生長)することを防止できるため、例えば、ポンプ8の吸い込み口に根がつまったりすることを回避でき、緑化装置の品質が向上する。
【0046】
遮断壁11を設けることにより、蔓性植物の根が管部7eから液肥3が放出される位置の垂直下方領域まで延出(生長)することを防止できるため、例えば、管部7eから液面に向けて液肥3が曝気される際に、根の影響を受けず、良好に液肥3に酸素(空気)を取り込むことができる。
【0047】
ポンプ8の設置位置と第一の管2の端面近くとの間において、液肥3を循環させることができるため、ポンプ8の設置位置を第一の管2の端面近くに設置できない場合においても、当該第一の管2の端面近くに液肥3が滞留してしまうことを防止できる。
【0048】
また、バルブ9bを調整することにより、第一の管2と第二の管7との間を循環する液肥3の流量を制御できるため、蔓性植物の生長に適した環境を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る一実施形態の緑化装置の上面図である。
【図2】図1に示すI−I断面図である。
【図3】図1に示すII−II断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 緑化装置
2 第一の管
2a、2b 開口部
2c 孔
3 液肥
7 第二の管
7a、7b、7c、7d、7e 管部
8 ポンプ
10、11 遮断壁
10a、11a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面が閉口し、内部の所定の高さまで液肥が貯留され、且つ、垂直上方の周壁には蔓性植物を植栽するための複数の孔が形成された水平方向に所定の長さ延在する第一の管と、
前記第一の管の内部に設置され、前記第一の管の前記両端面付近まで延在した第二の管と、
前記第二の管の一端部に接続され、前記液肥を前記第二の管の他端部に向けて圧送するためのポンプと、
を具備した
ことを特徴とする緑化装置。
【請求項2】
前記第二の管の前記他端部からは、前記液肥の液面の垂直上方に向けて垂設された管部が形成され、当該管部の端部から、前記ポンプにより圧送された前記液肥が、前記液面に向けて放出される
ことを特徴とする請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記第一の管の両端部には、垂直上方に開口部が形成された
ことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記第一の管に形成された前記複数の孔の垂直下方領域と前記ポンプとの間には、前記液肥の流路となる孔が形成された遮断壁が設置され、
当該遮断壁により、前記蔓性植物の根が前記ポンプ周囲まで延出することを防止する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の緑化装置。
【請求項5】
前記第一の管に形成された前記複数の孔の垂直下方領域と前記管部との間には、前記液肥の流路となる孔が形成された遮断壁が設置され、
当該遮断壁により、前記蔓性植物の根が前記管部から前記液肥が放出される位置の垂直下方領域まで延出することを防止する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の緑化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−253181(P2008−253181A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97962(P2007−97962)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000162515)協和株式会社 (7)
【Fターム(参考)】