説明

緑化装置

【課題】植物がより絡みつき易くなる緑化装置を提供する。
【解決手段】複数の面を有する緑化装置であって、植物を生育する植生基盤と、前記植生基盤が充填され、前記複数の面のうち少なくとも一つの側面が植物を植生する植生面となる枠体とを備え、前記枠体は、前記植生面となる側面の横方向に延出する波状の横部材であって、縦方向に複数配置される横部材と、前記横部材と直交するように該横部材と接続される縦部材とを有し、前記複数の横部材は、前記枠体の側面と直交する方向において波状であり、波の周期が縦方向において一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種植物を植生する鉢容器として、多種多様の形状や寸法のものが提案されている。例えば、特許文献1には、多数の面に植物を立体的に植生するための多面緑化体用容器が開示されている。この容器は、四角形の複数の側面を有している。また、容器の複数の側面に、基盤マットに植物を予め植生した植生ブロックマットが収容されている。また、植生ブロックマットの内側には、軽量土壌が充填され、容器の複数の側面と天面には、植物が植えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種植物を植生する鉢容器として、多種多様の形状や寸法のものが提案されている。例えば、上記した多面緑化体用容器は、側面の縦方向が凹凸状の網体で形成されることにより、植生ブロックマットの表面から網体の凸部までの間に空間が形成され、植生ブロックマットに植生された蔦等の蔓植物が該網体に絡みつき易くなる技術が開示されている。本発明は、より植物が絡みつき易くなる緑化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために、植物を植生する植生面となる枠体の側面の横方向に延出する横部材を波状に形成し、且つ、波の周期が縦方向において一致する構成とした。
【0006】
詳細には、本発明に係る緑化装置は、複数の面を有する緑化装置であって、植物を生育する植生基盤と、前記植生基盤が充填され、前記複数の面のうち少なくとも一つの側面が植物を植生する植生面となる枠体とを備え、前記枠体は、前記植生面となる側面の横方向に延出する波状の横部材であって、縦方向に複数配置される横部材と、前記横部材と直交するように該横部材と接続される縦部材とを有し、前記複数の横部材は、前記枠体の側面と直交する方向において波状であり、波の周期が縦方向において一致している。
【0007】
本発明に係る緑化装置は、複数の面のうち少なくとも一つの側面が植物を植生する植生面を有する。植生面に植生された植物は、枠体の横部材や縦部材に絡みながら成長する。本発明に係る緑化装置では、横部材が波状に形成される。つまり、横方向において、凹部と凸部が交互に配置される。また、波は縦方向において周期が一致している。つまり、凹部や凸部が縦方向において直線状に並んでいる。換言すると、凹部や凸部内に形成される空間が、縦方向において、直線状に形成される。その結果、空間が形成されることで、植物がより絡みやすくなり、また、その空間が縦方向に直線状に形成されることで、絡まった植物の上方が開放され、植物の育成方向が妨げられることもない。よって、本発明に係る緑化装置は、植物が絡みやすく、生育するうえで良好な環境を提供することができる。更に、本発明に係る緑化装置は、植物が絡みやすいことから、植生面が均一にむらなく植物により被覆され、美観が向上する。
【0008】
植生基盤とは、緑化装置に植えられる植物を生育するための土台を意味する。植生基盤は、保水性の高い軽量土壌を用いることが好ましいが、植物を生育できるものであればよい。枠体の面数は、限定されない。例えば、緑化装置が6面の場合、枠体は6面体となる。この場合、枠体の側面は4面となる。また、緑化装置が、三角柱状、換言すると、底面、天面、及び3つの側面によって構成される場合、緑化装置の側面は3面である。この場合、枠体の側面も3面となる。
【0009】
また、本発明に係る緑化装置は、前記植生面となる前記枠体の側面のうち、少なくとも一つの側面の前方に所定間隔を空けて設けられ、該植生面に植生された植物の生育方向を規制する外枠体を更に備える構成としてもよい。
【0010】
植生面において成長した植物が更に成長すると、植物が枠体の側面から大きく乱雑に飛び出すことが想定される。本発明に係る緑化装置では、枠体の側面から飛び出た植物が外枠体と接触、又は外枠体に絡み付く。つまり、外枠体により、植生面に植生された植物の生育方向が規制される。その結果、植生面において成長した植物が枠体の側面から大きく乱雑に飛び出すこともなく、緑化装置の側面は、均一にむらなく植物により被覆され、美観が向上する。外枠体の面は、格子状又は線状のどちらでもよい。
【0011】
また、本発明に係る緑化装置は、前記植生基盤の下方に配置され、植生用の水を緑化装置の外に排出する排水基盤を更に備え、前記外枠体は、少なくとも前記排水基盤と対応する前記植生面の前方に設けられるようにしてもよい。
【0012】
緑化装置は、排水基盤を備えることで植生用の水を排出することができる。また、外枠体を排水基盤の前方に設けることで、排水基盤の前方を外枠体で覆うことができる。その結果、排水基盤が直接人目に触れるのを抑制することができる。すなわち、排水基盤は植物の植生ができないことから、仮に外枠体を設けない場合、緑化装置の側面の下方部分では、排水基盤が露出してしまうことが懸念される。しかしながら、本発明では、外枠体が排水基盤の前方に設けられることで、排水基盤のすぐ上に位置する植生基盤に植生された植物が重力によって一旦下方に向けて生育し始め、その後生育方向が排水基盤の前方に設けられた外枠体の方へ誘導される。そして、排水基盤のすぐ上に位置する植生基盤に植生された植物が外枠体に絡み付き、排水基盤の前方を植物で覆うことができる。その結果、排水基盤が直接人目に触れるのを抑制することができる。換言すると、外枠体により、排水基盤が設けられた、植物を植生できない領域を隠すことが可能となり、美観が向上する。なお、本発明に係る緑化装置を視線より高い位置に設置すると、緑化装置の下方が人目に付きやすい。従って、本発明に係る緑化装置は、視線よりも高い位置に設置する場合に特に有用である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、植物がより絡みつき易くなる緑化装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態に係る緑化装置の斜視図を示す。
【図2】第一実施形態に係る緑化装置のうち、枠体の分解斜視図を示す。
【図3】第一実施形態に係る緑化装置の正面から背面へ垂直に切断した断面図を示す。
【図4】第二実施形態に係る緑化装置の斜視図を示す。
【図5】第二実施形態に係る緑化装置のうち、枠体及び外枠体の分解斜視図を示す。
【図6】第二実施形態に係る緑化装置の正面から背面へ垂直に切断した断面図を示す。
【図7】第三実施形態に係る緑化装置が壁に設置された設置例を示す。
【図8】第四実施形態に係る緑化装置の平面図を示す。
【図9】図8におけるA−A断面図を示す。
【図10】第五実施形態に係る緑化装置の枠体の正面図を示す。
【図11】図10におけるA−A断面図を示す。
【図12】図10におけるB−B断面図を示す。
【図13】第六実施形態に係る緑化装置を設置する競技場の平面図を示す。
【図14】図13におけるA−A断面図を示す。
【図15】図14に示す複数の枠体の断面図を示す。
【図16】図14に示す複数の枠体の分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を基づいて説明する。なお、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0016】
[第一実施形態]
<構成>
図1から図3に示すように、第一実施形態に係る緑化装置1は、4つの側面(正面、背面、右側面、左側面)、天面、底面の6面からなる箱型形状(6面体)である。第一実施形態に係る緑化装置1は、上方が開放された箱形の枠体3の内側に植生マット2が設けられ、植生マット2の内側に軽量土壌7が充填され、各側面及び天面に植物8(各側面に植生された植物81、天面に植生された植物82)が植生されている。植物8は、各側面に植生される植物81として、蔓性植物としてのテイカカズラが例示される。また、天面に植生される植物82には、シラカシやアオダモなど主木となる木と、コナラ、ウツギ、ヤマブキ、ヤマツツジ、ツバキなどの中・低木、ヒメヤブラン、キチジョウソウ、チゴユリ、ゲンノショウコなどの草木が例示される。なお、植物8は、上記を混植してもよい。なお、本実施形態では、各面の平面形状を四角形としたが、各面の平面形状は、四角形以外の多角形としてもよい。また、緑化装置1は、6面体以外の多面体構造としてもよい。
【0017】
図2に示すように、枠体3は、上方が開放されたC型網4と、側網5を有し、接続部材17によってC型網4と側網5が互いに接続されている。C型網4は、底面部41と、底面部41の正面側の辺及び背面側の辺にそれぞれ接続され、互いに平行な正面部42、背面部43を有する。底面部41と正面部42、底面部41と背面部43は直交している。なお、第一実施形態では、正面部42、背面部43、底面部41の枠体を一体型としたが、正面部42、背面部43、底面部41を別構成とし、接続部材17で接続するようにしてもよい。また、C型網4は、正面部42と底面部41の一部からなるL型網と、背面部43と底面部41の他部からなるL型網を組み合わせるようにしてもよい。
【0018】
側網5は、C型網4の開放されている面に配置される。具体的には、側網5は、左面部51と右面部52によって構成されている。側網5の下端部には、内側斜め上方に突出した鉤部10が設けられている。鉤部10は、底面部41の左側の辺と右側の辺に引っ掛ける引っ掛け部として機能する。また、鉤部10は、C型網4と側網5との位置決めを補助する位置決め部としても機能する。
【0019】
C型網4及び側網5は、平板状の金網に対して折り曲げ加工と溶接が施されることで形成されている。金網の材質は、例えば、亜鉛とアルミニウム合金メッキの鉄線である。また、C型網4及び側網5は、エキスパンドメタルや、複数の孔(例えば、格子状に形成された孔)を有する鋼板を用いてもよい。C型網4及び側網5の材質は、通気性を確保でき、かつ、軽量土壌7を充填した際の内圧に耐えうる強度を有していればよく、特に限定されない。
【0020】
更に、C型網4及び側網5では、格子の横方向を構成する横部材11が、折り曲げ加工が施され、波状に形成されている。これに対し、格子の縦方向(底面部41では、正面から背面方向)を構成する縦部材12は、直線状である。また、横部材11の波状のうち、外側に向けて突出した突出部13が縦方向に直線状に並ぶように、突出部13と突出部13との間において、縦部材12と横部材11とが溶接されている。突出部13と突出部13との間の領域は、換言すると凹部である。横部材11が突出部13を有することによって、枠体3の内側に設けられた植生マット2の表面と、横部材11の突出部13との間に空間が形成され、各側面に植生された植物81が横部材11に対して絡み易くなる。また、突出部13が縦方向に直線状に並んでいるため、植生マット2の表面と突出部13との間に形成された空間が直線状となっている。そのため、植物81が成長して上方に向かって伸びる際、植物81の生育方向が開放されており、植物81が生育するうえで良好な環境となる。また、底面部41では、突出部13を有することで、枠体3の底面の通気性が確保される。
【0021】
接続部材17は、C型網4と、側網5とを接続する。接続部材17は、C型網4及び側網5と同素材であり、螺旋形状を有する。C型網4の辺と側網5の辺とが接する状態で、接続部材17の軸方向を中心に接続部材17を回転させ、接続部材17の先端を網に順次通していくことで、C型網4と側網5との接続が可能となる。なお、接続部材17は、C型網4と側網5とを接続できればよく、螺旋形状を有する接続部材17に代えて、挟み込んで固定するクリップや結束する結束クリップなどを用いてもよい。
【0022】
植生マット2は、枠体3の内側に配置され、充填される軽量土壌7が外部に漏れるのを抑制する。植生マット2は、枠体3の各面の形状に合わせて設計されている。植生マット2は、通気性と軽量土壌7を保持する強度を有していればよく、第一実施形態では植生マット2にファイバーマットが用いられている。ファイバーマットは、ポリエステルシートと天然椰子繊維からなるシートを張り合わせることで構成されている。なお、ファイバーマットに代えてリサイクルPETからなるシートやフェルトを用いてもよい。植生マット2には、植物81の植え付けが可能である。具体的には、植生マット2に複数の切り込みを設け、この切り込みから植物81の根を植生基盤71に植え付けることが可能である。なお、植生マット2に植え付ける植物81は、同種植物の組み合わせでもよいし、異種植物の組み合わせの何れでもよい。また、枠体3において植物81を植え付ける面は、緑化装置1の配置場所の状況に応じて適宜変更することが可能である。また、緑化装置1は、予め植物81が植生された植生マット2を用いてもよい。これにより、設置された直後から緑化効果を与え、美観を向上させることができ、設置場所において植物8を植える手間を省くことができ、施行性が向上する。また、植物の植えつけは、作業者の熟練度によって完成後の見栄えや植物の生育に影響を与えることが懸念されるが、予め植物81が植生された植生マット2を用いることで、そのような懸念が解消される。
【0023】
図3に示すように、軽量土壌7は、植生基盤71と排水基盤72を有する。植生基盤71は、植物が必要とする微量要素が混合され、保水性に優れた無機質の軽量土壌であり、植生マット2に植えられる植物81に対して水分を供給する。排水基盤72は、水を排水する無機質の軽量土壌である。枠体3内の底面に、排水基盤72が充填され、排水基盤72の上から枠体3の天面まで植生基盤71が充填される。なお、植生基盤71としては、例えば市販されている無機質100%の排水用及び育成用のアクアソイル(株式会社イケガミ社製)が好適であるが、これに限定されない。軽量土壌に代えて既存の他の土壌を用いてもよい。
【0024】
また、第一実施形態に係る緑化装置1は、底面にキャスター等の走行輪(不図示)を設け、緑化装置1を移動可能に構成してもよい。これにより、緑化装置1の運搬移動性が向
上する。
【0025】
<組み立て方法>
次に、上述した緑化装置1の組み立て方法(以下、単に組み立て方法ともいう)について説明する。以下に示す組み立て方法の工程順序は一例であり、工程順序は適宜入れ替えることが可能である。
【0026】
先ず、C型網4と側網5の接続が行われる。C型網4と側網5は、接続する辺同士が接した状態で、接続部材17の軸方向を中心に接続部材17を回転させ、接続部材17の先端を網に順次通していくことで接続する。その結果、C型網4と側網5とを接続する辺(二つの辺)が、螺旋形状を有する接続部材17の軸上に位置し、接続部材17によって拘束される。側面の4つの角部に位置する辺が全て拘束されると、天面が開いた箱型形状の枠体3が完成する。
【0027】
次に、枠体3の内側に植生マット2が設置される。各側面に設置される植生マット2には、予め植物8が植えられたものが用いられる。次に、底面の植生マット2の上に排水基盤72が充填される。充填される排水基盤72の量は、緑化装置1の大きさに応じて適宜調整される。続いて、排水基盤72の上に、植生基盤71が枠体3の天面近傍まで充填される。
【0028】
次に、排水基盤72と植生基盤71の充填が完了すると、枠体3の天面に植物82が植えられる。枠体3の天面は、植生マット2を水平に設置してもよいし、植生基盤71に植物82を直接植生してもよい。なお、緑化装置1における植物8の植生面は、任意に設定することができる。
【0029】
以上により、緑化装置1の組み立ての作業工程が完了する。第一実施形態に係る緑化装置1は、全側面及び天面に植物8が植え付けられていることから、設置場所には、公園、オフィス街、屋上等、緑化が望まれる種々の場所が例示される。
【0030】
<効果>
以上説明した第一実施形態に係る緑化装置1によれば、枠体3の横部材11が、波状に形成され、突出部13を有することにより、突出部13と植生マット2の表面との間に空間が形成され、植物81が横部材11に対して絡み易くなる。また、突出部13が縦方向に直線状に並んでいるため、植生マット2の表面と突出部13との間に形成された空間が直線状となっている。そのため、植物81が成長して上方に向かって伸びる際、植物81の生育方向が開放されており、植物81が生育するうえで良好な環境となる。すなわち、緑化装置1は、植物81が絡みやすいことにより、側面の植生面が均一にむらなく植物81により被覆され、美観が向上する。
【0031】
[第二実施形態]
第二実施形態に係る緑化装置1は、第一実施形態に係る緑化装置1の構成に加えて、外枠体6を更に有する。以下、第二実施形態に係る緑化装置1aについて図面に基づいて説明する。なお、第一実施形態に係る緑化装置1と同様の構成については、同一符号を付すことで詳細な説明は割愛する。
【0032】
図4は、第二実施形態に係る緑化装置1aの斜視図を示す。図5は、第二実施形態に係る緑化装置1aのうち、枠体3a及び外枠体6の分解斜視図を示す。図6は、第二実施形態に係る緑化装置1aの正面から背面へ垂直に切断した断面図を示す。
【0033】
枠体3aは、第一実施形態のC型網4の正面に更にL字状の外枠体6が付加された形状
のE型網4aと、側網5を有し、接続部材17によってE型網4aと側網5が互いに接続されている。第二実施形態のE型網4aは、L字状の外枠体6とC型網4の正面部42を除く部分(底面部41及び背面部43)が一体的に形成され、C型網4の正面部42が底面部41に溶接されることで構成されている。外枠体6は、正面部61と底面部62からなり、外枠体6の正面部61は、C型網4の正面部42と所定の間隔を空けて、C型網4の正面部42と平行である。
【0034】
第二実施形態においても、枠体3aは、外枠体6の正面部61を除いて、格子の横方向を構成する横部材11が、折り曲げ加工が施されることによって、波状に形成されている。換言すると、外枠体6の正面部61のみ、横部材11aが縦部材12と同じく直線状である。なお、E型網4aは、C型網4の正面側に、L字状の外枠体6を接続する構成でもよい。これにより、既存のC型網4を用いて、第二実施形態の緑化装置1aを構成することができる。E型網4aと、側網5は、接続部材17によって連結される。
【0035】
<効果>
第二実施形態に係る緑化装置1aは、外枠体6を更に備えることで、C型網4の正面部42に絡まった植物81の植生方向が規制される。すなわち、C型網4の正面部42から飛び出た植物81が、外枠体6の正面部61と接触し、外枠体6の正面部61に絡み付く。その結果、成長した植物81がC型網4の正面部42から大きく乱雑に飛び出すこともなく、緑化装置1aの正面は、均一にむらなく植物により被覆され、美観が向上する。また、植物81が成長し、横方向にも成長することで、C型網4の正面部42と外枠体6の正面部61との間に形成される空間内が植物81で満たされ、植物81の層(壁)が形成される。その結果、緑化装置1aの正面の植物のボリューム感が増し、より美観が向上する。また、外枠体6が排水基盤72の前方に設けられることで、排水基盤72のすぐ上に位置する植生基盤71に植生された植物81の生育方向が排水基盤72の前方に設けられた外枠体6の正面部61へ誘導される。そして、排水基盤72のすぐ上に位置する植生基盤71に植生された植物81が外枠体6の正面部61に絡み付き、排水基盤72の前方を植物81で覆うことができる。その結果、排水基盤72が直接人目に触れるのを抑制することができる。換言すると、外枠体6により、排水基盤72が設けられた、植物81を植生できない領域を隠すことが可能となり、美観が向上する。
【0036】
なお、第二実施形態に係る緑化装置1aは、図4及び図6に示すように、正面のみ、外枠体6を設けているが、枠体3aの複数の側面(背面、左面、右面)に外枠体6を設けるようにしてもよい。この場合、L字状の外枠体6を用意し、接続部材17を用いて、C型網3や側網5と適宜接続すればよい。
【0037】
[第三実施形態]
第三実施形態では、上述した第二実施形態に係る緑化装置1aの適用例について説明する。図7は、建物の屋上付近の壁22に設置された第一の緑化装置1a−1と、第二の緑化装置1a−2を示す。壁22は、断面がL字形であり、第一の段23と、第一の段23よりも高い第二の段24とが連結された形状である。第一の緑化装置1a−1は、第一の段23の天面25に設けられている。第一の緑化装置1a−1は、第一の段23の奥行きに合わせて設計されており、第二実施形態に係る緑化装置1aよりも薄く設計されている。また、外枠体6の正面部61が第二の段24の天面26まで上方に延出しており、上端が第二の緑化装置1a−2の外枠体6の正面部61の下端と接続されている。
【0038】
第二の緑化装置1a−2は、第二の段24及び第一の緑化装置1a−1の外枠体6の正面部61に支持されている。第一の緑化装置1a−1の外枠体6の正面部61と第二の緑化装置1a−2の外枠体6の正面部61とが同一平面にくるように、第一の緑化装置1a−1及び第二の緑化装置1a−2が設置されている。なお、第一の緑化装置1a―1は、
枠体3aの正面部42と天面にのみ植物8が植生されている。第一の緑化装置1a−1の背面は、第一の段23の壁に奥の壁28と接している。横部材11が波状であることで、植生マット2と奥の壁28との間に空間が形成され、通気性が確保されている。なお、第一の緑化装置1a−1及び第二の緑化装置1a−2の植生基盤71の天面付近には、灌水チューブ32が設けられている。灌水チューブ32から水が放出されることで、植生基盤71内に水が浸透し、植物8に水が供給される。
【0039】
<効果>
第三実施形態では、第一の緑化装置1a−1及び第二の緑化装置1a−2が視線よりも高い位置に設置されるが、排水基盤72の前方が植物81で覆われることで、排水基盤72が直接人目に触れるのを抑制することができる。換言すると、外枠体6により、排水基盤72が設けられた、植物81を植生できない領域を隠すことが可能となり、美観が向上する。
【0040】
[第四実施形態]
第四実施形態においても、上述した第二実施形態に係る緑化装置1aの適用例について説明する。図8は、第四実施形態に係る緑化装置の平面図を示す。図9は、図8におけるA−A断面図を示す。
【0041】
緑化装置1bが大型になると、領域によって植生基盤の水分量に差が生じる。具体的には、側面は、空気に触れる面積が多いため水分量が少なく乾燥し易いが、植生基盤71の中央付近や下部は逆に水分量が多くなりすぎることがある。このように、領域によって水分量の差が生じると、植物8の生育にも差が生じてしまう。また、水分量が多すぎると、植物8の根が腐ってしまうことも想定される。
【0042】
第四実施形態に係る緑化装置1bは、上記課題を解決するため、集排水管110、腐敗抑制材112を備える。第四実施形態に係る緑化装置1bは、平面視長方形であり、側面の全てに外枠体6が設けられている。集排水管110は、透水性のパイプからなり、植生基盤71の中央付近2か所に縦方向に設けられている。集排水管110は、周囲の水を集水し、下方へ排水する。集排水管110の上端は、植生基盤71の天面に位置し、集排水管110の下端は、植生基盤71の高さ方向の中心付近に位置する。また、集排水管110の下方には、集排水管110からの排水を受ける受け皿111が設けられている。この受け皿111には、更に腐敗抑制材112が設けられている。腐敗抑制材112は、集排水管110から排水される水や、周囲の水の腐敗を抑制する。腐敗抑制材112には、クリノゼオライトが例示される。
【0043】
また、第四実施形態に係る緑化装置1bでは、外枠体6と、各側面部(正面部42、背面部43、左面部51、右面部52)との間にも軽量土壌7(植生基盤71、排水基盤72)が充填され、外枠体6と、各側面部との間の天面に植物81が植生されている。
【0044】
<効果>
第四実施形態に係る緑化装置1bによれば、全ての側面に外枠体6を備えることで、緑化装置1bの全ての側面が、均一にむらなく植物により被覆され、美観が向上する。また、集排水管110及び腐敗抑制材112を備えることで、緑化装置1bに充填される植生基盤71の水分量を均一化することができ、また水分量が多い領域における水の腐敗を抑制することができる。その結果、植物8の生育のばらつきを抑制することができる。更に、水分量が多すぎる場合に懸念される植物8の根腐りの発生を抑制することができる。
【0045】
また、外枠体6と各側面部との間の天面に植物81を植生することで、植生や灌水が容易になる。すなわち、側面の植栽と比較すると、天面の植栽の方が容易に行うことができ
る。また、水の管理は、側面植栽よりも天面植栽の方が容易である。外枠体6と各側面部との間の天面に植物81を植生する場合、例えば、側面の植物82を減らして、外枠体6と各側面部との間の天面の植物81で補うこともできる。その結果、植生の手間や灌水の手間を軽減することができる。
【0046】
[第五実施形態]
第五実施形態においても、上述した第二実施形態に係る緑化装置1aの適用例について説明する。図10は、第五実施形態に係る緑化装置の枠体3cの正面図を示す。図11は、図10におけるA−A断面図を示す。図12は、図10におけるB−B断面図を示す。
【0047】
第五実施形態に係る緑化装置1cは、中央に灰皿120が設けられ、さらにこの灰皿120の側面を支持する側面の支持部63と、灰皿120の底面を支持する底面の支持部64を有する。第五実施形態に係る緑化装置1cは、全ての側面に外枠体6が設けられている。外枠体6は上部が延出して緑化装置1cの内側にC字状に折り返されている。折り返された部分が、四角柱の灰皿120の側面を支持する側面の支持部63として機能している。また、枠体3cの底面41には、枠体3cの底面41から上方に突出した底面の支持部64が設けられている。第五実施形態では、灰皿120を安定的に支持できるよう、底面の支持部64に支持プレートがねじ止めされている。
【0048】
第五実施形態に係る緑化装置1cでは、植生マット2が灰皿120の側面を覆うように配置される(図示せず)。そして、軽量土壌7は、灰皿120が収容される以外の領域に充填される(図示せず)。
【0049】
<効果>
第五実施形態に係る緑化装置1cによれば、全ての側面に外枠体6を備えることで、緑化装置1cの全ての側面が、均一にむらなく植物81により被覆され、美観が向上する。また、従来、緑化とは無縁であった灰皿120の周囲を緑化することができる。なお、第五実施形態では、一例として緑化装置と灰皿の組み合わせについて説明したが、緑化装置1cは、灰皿120以外に自動販売機、傘立てなど種々ものものと組み合わせることができる。
【0050】
[第六実施形態]
第六実施形態においても、上述した第二実施形態に係る緑化装置1aの適用例について説明する。図13は、第六実施形態に係る緑化装置を設置する競技場の平面図を示す。図14は、図13におけるA−A断面図を示す。図15は、図14に示す複数の枠体の断面図を示す。図16は、図14に示す複数の枠体の分解斜視図を示す。
【0051】
第六実施形態では、複数の緑化装置1dが競技場におけるフィールドとスタンドとの境界の擁壁200(外構)として用いられている。複数の緑化装置1dが階段状に積み重ねられ、また、競技場におけるにフィールドとスタンドとの境界ラインに沿うように配置されている。境界ラインが直線の場合には、緑化装置1dは直線状に配置され、境界ラインが曲線の場合には、緑化装置1dは曲線状に配置されている。
【0052】
図14から図16に示すように、擁壁200は、複数の緑化装置1dが積み重ねられることで構成されている。最上段の緑化装置1d−1(最上段の枠体3d−1)は、フィールド側(紙面右側)とスタンド側(紙面左側)の両側面に外枠体6が設けられている。2段目の緑化装置1d−2(2段目の枠体3d−2)は、最上段の緑化装置1d−1よりも奥行が一回り大きく形成され、フィールド側のみ外枠体6が設けられている。スタンド側の側面は、外枠体なしで植物81が植生され、更に3段目の緑化装置1d−3の天面に植生された植物82によって覆われている。3段目の緑化装置1d−3(3段目の枠体3d
−3)は、2段目の緑化装置1d−2よりも奥行が一回り大きく形成され、フィールド側のみ外枠体6が設けられている。スタンド側の側面は、外枠体なしで植物81が植生され、更に4段目の緑化装置1d−4の天面に植生された植物82によって覆われている。
【0053】
4段目の段目の緑化装置1d−4(4段目の枠体3d−4)は、3段目の緑化装置1d−3よりも奥行が一回り大きく形成されている。4段目の緑化装置1d−4には外枠体は設けられておらず、フィールド側には裏込め砕石202が充填され、裏込め採石202の上には盛り土203がされている。一方、スタンド側の側面は、外枠体なしで植物81が植生され、更に5段目の緑化装置1d−5の天面に植生された植物82によって覆われている。5段目の緑化装置1d−5(5段目の枠体3d−5)は、4段目の緑化装置1d−4よりも奥行が一回り大きく形成されている。5段目の緑化装置1d−5には外枠体は設けられておらず、フィールド側には裏込め砕石202が充填されている。一方、スタンド側の側面は、外枠体なしで上部に植物81が植生され、更にスタンド側の盛り土203に植生された植物によって覆われている。6段目の緑化装置の枠体と同じ材質で構成されたメッシュカゴ201であり、内部には砕石が充填され、緑化装置の基礎部として機能している。
【0054】
<効果>
第五実施形態に係る緑化装置1dによれば、複数の緑化装置を適宜組み合わせることで、競技場の擁壁を構成することができる。その結果、競技場の擁壁を緑化することができる。最上段の緑化装置1d−1、2段目の緑化装置1d−2、及び3段目の緑化装置1d−3は、外枠体6を備えることで、外枠体を備える側面がより均一にむらなく植物により被覆され、美観が向上する。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る緑化装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組み合わせを含むことができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・緑化装置
2・・・植生マット
3・・・枠体
4・・・C型網
5・・・側網
6・・・外枠体
7・・・軽量土壌
8・・・植物
10・・・鉤部
11・・・横部材
12・・・縦部材
13・・・突出部
17・・・接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面を有する緑化装置であって、
植物を生育する植生基盤と、
前記植生基盤が充填され、前記複数の面のうち少なくとも一つの側面が植物を植生する植生面となる枠体とを備え、
前記枠体は、前記植生面となる側面の横方向に延出する波状の横部材であって、縦方向に複数配置される横部材と、前記横部材と直交するように該横部材と接続される縦部材とを有し、
前記複数の横部材は、前記枠体の側面と直交する方向において波状であり、波の周期が縦方向において一致している、
緑化装置。
【請求項2】
前記植生面となる前記枠体の側面のうち、少なくとも一つの側面の前方に所定間隔を空けて設けられ、該植生面に植生された植物の生育方向を規制する外枠体を更に備える、
請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記植生基盤の下方に配置され、植生用の水を緑化装置の外に排出する排水基盤を更に備え、
前記外枠体は、少なくとも前記排水基盤と対応する前記植生面の前方に設けられる、
請求項2に記載の緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−106571(P2013−106571A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254830(P2011−254830)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(504417445)株式会社アネックス (6)
【Fターム(参考)】