線材の剥離装置
【課題】少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離することができる線材の剥離装置を提供する。
【解決手段】カッタ刃11A,11B、11C、11Dが、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するように駆動されるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線や平角線などのように断面が矩形状の線材Wに被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【解決手段】カッタ刃11A,11B、11C、11Dが、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するように駆動されるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線や平角線などのように断面が矩形状の線材Wに被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルの端子に絡げられる線材の端部が絶縁材により被覆されている場合、そのままであると端子との非導通状態を招く恐れがあるが、通常はハンダ付けを行うべく、溶融したハンダを接触させることによって絶縁材が溶けるので、端子との導通が確保される。しかしながら、線材の被覆には耐熱性が高いものもあり、主に自動車等の高温になる環境や特に高信頼性を要求されるような場合に使用されるが、その様な線材はハンダ付けにより被覆を破壊し導通させる事が出来ない。そこで、線材から絶縁材を被覆する剥離装置が開発されている。
【0003】
特許文献1には、線材の被覆に先端を食い込ませたカッタを、線材の周囲に回転させつつ軸線方向に移動させることで、線材の被覆を除去する剥離装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−315801号公報
【特許文献2】特開平8−186917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常ボビンなどに巻回されてコイルを形成する被覆銅線は、長手方向に直交する方向の断面が円形であることが多い。これに対し、真四角線と呼ばれる線材が近年開発されるに至った。真四角線とは、その断面の縦横比がほぼ1:1での正方形状に非常に近い線材を言う。このような真四角線を巻回してコイルを形成すると、極めて優れた特性のコイルが得られることが分かっている。
【0005】
しかるに、特許文献1の剥離装置の場合、線材の断面が円形であることを前提として、カッタを線材の周囲に回転させることで絶縁材の剥離を行っているが、真四角線は、その断面が矩形状であるので、真四角線の外周に被覆された絶縁材を、カッタを回転させることで除去するのは困難である。
【0006】
一方、特許文献2には、対向するカッタの間に線材を配置し、カッタを接近させた上で線材に対して相対移動させる剥離装置が開示されている。しかるに、特許文献2の剥離装置によれば、真四角線の絶縁材を剥離する場合、同じ箇所を2度往復させなくてはならず、手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離することができる線材の剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成すべく、本発明の線材の剥離装置は、少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置において、
複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃を、前記平行な外周面に対して近接又は離隔するように駆動する第1駆動部と、
前記複数のカッタ刃を前記線材に沿って駆動する第2駆動部と、
前記カッタ刃を、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドするガイド部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の線材の剥離装置によれば、前記ガイド部により、前記カッタ刃が、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドされるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線などのように断面が矩形状の線材の外周に対して、そのサイズに関わりなく隙間なく接触できるので、線材の外周に被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【0010】
前記線材が、真四角線や平角線の場合など、前記カッタ刃は4つ設けられていると、一度の動作で4面の被覆を除去できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による実施の形態を、図面を参照して説明する。図1、2は、本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。図において、フレーム1にモータ2が固定されている。第2駆動部であるモータ2の回転軸2aには、プーリ3が取り付けられている。又、フレーム1に、プーリ4が回転自在に支持されている。プーリ3,4間には、タイミングベルト5が張り渡されている。タイミングベルト5には、一体的に移動するようにホルダ6が取り付けられている。ホルダ6を挟んで両側には、保持装置7,8がフレームに取り付けられている。保持装置7,8は、線材Wを保持可能な保持部7a、8aを有している。
【0012】
ホルダ6は、ベース9を支持している。図3は、ベース9を線材Wの軸線方向に見た図である。図2において、アーム9a、9aを有し略コ字状のベース9は、アーム9a、9aに沿った方向にベースガイド(リニアガイド等)9b、9bを設けている。
【0013】
図4は、カッタベース10,10を、ベース9に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。ベースガイド9b、9bに沿って、カッタベース10、10が移動可能に配置されている。カッタベース10,10は、それぞれ第1アクチュエータAT1,AT1により駆動され、ベースガイド9b、9bに沿って移動可能となっている。
【0014】
互いの同一形状を有するカッタベース10は、第1の側縁10aと、それと平行に延在する第2の側縁10bと、両側縁10a、10bに直交しこれらを連結する直交縁10cとを有する。図4に示すように、一方のカッタベース10の第1の側縁10aと第2の側縁10bを、他方のカッタベース10の第2の側縁10bと第1の側縁10aとを互いに係合させると、両カッタベース10,10間には、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された矩形状の空間が生じることとなる。図4に示す状態は、真四角線の絶縁材を剥離する際の配置である。一方のカッタベース10には、第1のガイド(リニアガイド等)10dと、それに直交する第2のガイド(リニアガイド等)10eが配置されている。又、他方のカッタベース10には、第1のガイド10dに平行な第3のガイド(リニアガイド等)10fと、それに直交する第4のガイド(リニアガイド等)10gが配置されている。ガイド部を構成するガイド10d〜10gに沿ってカッタ刃11A,11B、11C、11Dが移動可能に配置されている。
【0015】
図5は、カッタベース11A,11B、11C、11Dを、カッタベース10,10に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。図6は、カッタ刃の斜視図である。互いに同一の矩形板状であるカッタ刃11A,11B、11C、11Dは、一辺の端部よりにテーパ部11aを形成している。図6に示すように、テーパ部11aは先端の角度が45度程度であり、厚さ方向に対照的な形状を有している。
【0016】
図5に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dは、隣接するカッタ刃のテーパ部11aを交差させるように配置されており、それぞれ第2アクチュエータAT2により駆動され、ガイド10d〜10gに沿って移動可能となっている。アクチュエータAT1,AT2が第1駆動部を構成する。
【0017】
本実施の形態の動作について、絶縁材を剥離する線材Wとして真四角線を例にとり説明する。図7は、線材Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示し、図8は、線材Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示している。
【0018】
まず、図4に示すように、第1アクチュエータACT1を駆動制御して、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された正方形状の空間が生じるようにする。更に図6に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dで囲われた正方形状の空間Sに、絶縁材で被覆された線材Wが挿通されているものとする。ここで、線材Wの絶縁材を剥離しない場合、図6に示すように、対向するテーパ部11a同士が離れるように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが第2アクチュエータACT2により駆動され、従って空間S内を通過する線材Wにテーパ部11aが接触しないため、絶縁材の剥離は行われない。
【0019】
一方、線材Wの絶縁材を剥離する必要が生じたときは、図1において、保持装置7,8の保持部7a、8aを線材Wに接近させ、これにより線材Wを移動しないように保持する。
【0020】
更に、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして駆動し、対向するテーパ部11aを近接させる(図8参照)。これにより、テーパ部11aの先端が、線材Wの外周における各面の絶縁材に当接した状態となる。かかる状態から、図2に示すように、モータ2を往復駆動することで、プーリ3によりタイミングベルト5が移動し、それによりホルダ6,ベース9,カッタベース10,10,カッタ刃11A,11B、11C、11Dが線材Wの軸線方向に高速で往復移動するので、線材Wに対して相対移動したテーパ部11aにより、任意の距離にわたって絶縁材を被覆することができる。その後、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして逆方向に駆動し、対向するテーパ部11aを離隔させることができる(図7参照)。なお、テーパ部11aは、線材Wに直交する面に対して対称な形状を有するので、いずれの軸線方向に相対移動させても、同様に剥離を行える。
【0021】
続いて、本実施の形態の動作について、絶縁材を剥離する線材Wとして平角線を例にとり説明する。平角線とは、軸線方向に直交する断面が長方形状の線材をいう。図9は、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間が生じるように、第1アクチュエータAT1を駆動した状態を示す図である。図10は、平角線Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示し、図11は、平角線Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示している。
【0022】
まず、図9に示すように、第1アクチュエータACT1を駆動制御して、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間(平角線Wの断面に相似)が生じるようにする。このとき、図10に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dで囲われた空間Sは長方形状になる。かかる空間Sに、絶縁材で被覆された線材Wが挿通されているものとする。ここで、線材Wの絶縁材を剥離しない場合、図10に示すように、対向するテーパ部11a同士が離れるように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが第2アクチュエータACT2により駆動され、従って空間S内を通過する線材Wにテーパ部11aが接触しないため、絶縁材の剥離は行われない。
【0023】
一方、絶縁材の剥離を行う場合、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして駆動し、対向するテーパ部11aを近接させる(図11参照)。これにより、テーパ部11aの先端が、線材Wの外周における各面の絶縁材に当接した状態となる。かかる状態から、図2に示すように、モータ2を往復駆動することで、プーリ3によりタイミングベルト5が移動し、それによりホルダ6,ベース9,カッタベース10,10,カッタ刃11A,11B、11C、11Dが線材Wの軸線方向に高速で往復移動するので、平角線Wに対して相対移動したテーパ部11aにより、任意の距離にわたって絶縁材を被覆することができる。その後、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして逆方向に駆動し、対向するテーパ部11aを離隔させることができる(図10参照)。
【0024】
本実施の形態によれば、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するように駆動されるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線や平角線などのように断面が矩形状の線材Wに被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【0025】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。
【図3】ベース9を線材Wの軸線方向に見た図である。
【図4】カッタベース10,10を、ベース9に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。
【図5】カッタベース11A,11B、11C、11Dを、カッタベース10,10に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。
【図6】カッタ刃の斜視図である。
【図7】線材Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図8】線材Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図9】両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間が生じるように、第1アクチュエータAT1を駆動した状態を示す図である。
【図10】平角線Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図11】平角線Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フレーム
2 モータ
2a 回転軸
3 プーリ
4 プーリ
5 タイミングベルト
6 ホルダ
7,8 保持装置
7a、8a 保持部
9 ベース
9a アーム
9b ベースガイド
10 カッタベース
10a 第1の側縁
10b 第2の側縁
10c 直交縁
10d ガイド
10e ガイド
10f ガイド
10g ガイド
11A〜11D カッタ刃
11a テーパ部
AT1 第1アクチュエータ
AT2 第2アクチュエータ
S 空間
W 線材
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルの端子に絡げられる線材の端部が絶縁材により被覆されている場合、そのままであると端子との非導通状態を招く恐れがあるが、通常はハンダ付けを行うべく、溶融したハンダを接触させることによって絶縁材が溶けるので、端子との導通が確保される。しかしながら、線材の被覆には耐熱性が高いものもあり、主に自動車等の高温になる環境や特に高信頼性を要求されるような場合に使用されるが、その様な線材はハンダ付けにより被覆を破壊し導通させる事が出来ない。そこで、線材から絶縁材を被覆する剥離装置が開発されている。
【0003】
特許文献1には、線材の被覆に先端を食い込ませたカッタを、線材の周囲に回転させつつ軸線方向に移動させることで、線材の被覆を除去する剥離装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−315801号公報
【特許文献2】特開平8−186917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常ボビンなどに巻回されてコイルを形成する被覆銅線は、長手方向に直交する方向の断面が円形であることが多い。これに対し、真四角線と呼ばれる線材が近年開発されるに至った。真四角線とは、その断面の縦横比がほぼ1:1での正方形状に非常に近い線材を言う。このような真四角線を巻回してコイルを形成すると、極めて優れた特性のコイルが得られることが分かっている。
【0005】
しかるに、特許文献1の剥離装置の場合、線材の断面が円形であることを前提として、カッタを線材の周囲に回転させることで絶縁材の剥離を行っているが、真四角線は、その断面が矩形状であるので、真四角線の外周に被覆された絶縁材を、カッタを回転させることで除去するのは困難である。
【0006】
一方、特許文献2には、対向するカッタの間に線材を配置し、カッタを接近させた上で線材に対して相対移動させる剥離装置が開示されている。しかるに、特許文献2の剥離装置によれば、真四角線の絶縁材を剥離する場合、同じ箇所を2度往復させなくてはならず、手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離することができる線材の剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成すべく、本発明の線材の剥離装置は、少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置において、
複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃を、前記平行な外周面に対して近接又は離隔するように駆動する第1駆動部と、
前記複数のカッタ刃を前記線材に沿って駆動する第2駆動部と、
前記カッタ刃を、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドするガイド部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の線材の剥離装置によれば、前記ガイド部により、前記カッタ刃が、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドされるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線などのように断面が矩形状の線材の外周に対して、そのサイズに関わりなく隙間なく接触できるので、線材の外周に被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【0010】
前記線材が、真四角線や平角線の場合など、前記カッタ刃は4つ設けられていると、一度の動作で4面の被覆を除去できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による実施の形態を、図面を参照して説明する。図1、2は、本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。図において、フレーム1にモータ2が固定されている。第2駆動部であるモータ2の回転軸2aには、プーリ3が取り付けられている。又、フレーム1に、プーリ4が回転自在に支持されている。プーリ3,4間には、タイミングベルト5が張り渡されている。タイミングベルト5には、一体的に移動するようにホルダ6が取り付けられている。ホルダ6を挟んで両側には、保持装置7,8がフレームに取り付けられている。保持装置7,8は、線材Wを保持可能な保持部7a、8aを有している。
【0012】
ホルダ6は、ベース9を支持している。図3は、ベース9を線材Wの軸線方向に見た図である。図2において、アーム9a、9aを有し略コ字状のベース9は、アーム9a、9aに沿った方向にベースガイド(リニアガイド等)9b、9bを設けている。
【0013】
図4は、カッタベース10,10を、ベース9に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。ベースガイド9b、9bに沿って、カッタベース10、10が移動可能に配置されている。カッタベース10,10は、それぞれ第1アクチュエータAT1,AT1により駆動され、ベースガイド9b、9bに沿って移動可能となっている。
【0014】
互いの同一形状を有するカッタベース10は、第1の側縁10aと、それと平行に延在する第2の側縁10bと、両側縁10a、10bに直交しこれらを連結する直交縁10cとを有する。図4に示すように、一方のカッタベース10の第1の側縁10aと第2の側縁10bを、他方のカッタベース10の第2の側縁10bと第1の側縁10aとを互いに係合させると、両カッタベース10,10間には、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された矩形状の空間が生じることとなる。図4に示す状態は、真四角線の絶縁材を剥離する際の配置である。一方のカッタベース10には、第1のガイド(リニアガイド等)10dと、それに直交する第2のガイド(リニアガイド等)10eが配置されている。又、他方のカッタベース10には、第1のガイド10dに平行な第3のガイド(リニアガイド等)10fと、それに直交する第4のガイド(リニアガイド等)10gが配置されている。ガイド部を構成するガイド10d〜10gに沿ってカッタ刃11A,11B、11C、11Dが移動可能に配置されている。
【0015】
図5は、カッタベース11A,11B、11C、11Dを、カッタベース10,10に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。図6は、カッタ刃の斜視図である。互いに同一の矩形板状であるカッタ刃11A,11B、11C、11Dは、一辺の端部よりにテーパ部11aを形成している。図6に示すように、テーパ部11aは先端の角度が45度程度であり、厚さ方向に対照的な形状を有している。
【0016】
図5に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dは、隣接するカッタ刃のテーパ部11aを交差させるように配置されており、それぞれ第2アクチュエータAT2により駆動され、ガイド10d〜10gに沿って移動可能となっている。アクチュエータAT1,AT2が第1駆動部を構成する。
【0017】
本実施の形態の動作について、絶縁材を剥離する線材Wとして真四角線を例にとり説明する。図7は、線材Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示し、図8は、線材Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示している。
【0018】
まず、図4に示すように、第1アクチュエータACT1を駆動制御して、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された正方形状の空間が生じるようにする。更に図6に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dで囲われた正方形状の空間Sに、絶縁材で被覆された線材Wが挿通されているものとする。ここで、線材Wの絶縁材を剥離しない場合、図6に示すように、対向するテーパ部11a同士が離れるように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが第2アクチュエータACT2により駆動され、従って空間S内を通過する線材Wにテーパ部11aが接触しないため、絶縁材の剥離は行われない。
【0019】
一方、線材Wの絶縁材を剥離する必要が生じたときは、図1において、保持装置7,8の保持部7a、8aを線材Wに接近させ、これにより線材Wを移動しないように保持する。
【0020】
更に、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして駆動し、対向するテーパ部11aを近接させる(図8参照)。これにより、テーパ部11aの先端が、線材Wの外周における各面の絶縁材に当接した状態となる。かかる状態から、図2に示すように、モータ2を往復駆動することで、プーリ3によりタイミングベルト5が移動し、それによりホルダ6,ベース9,カッタベース10,10,カッタ刃11A,11B、11C、11Dが線材Wの軸線方向に高速で往復移動するので、線材Wに対して相対移動したテーパ部11aにより、任意の距離にわたって絶縁材を被覆することができる。その後、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして逆方向に駆動し、対向するテーパ部11aを離隔させることができる(図7参照)。なお、テーパ部11aは、線材Wに直交する面に対して対称な形状を有するので、いずれの軸線方向に相対移動させても、同様に剥離を行える。
【0021】
続いて、本実施の形態の動作について、絶縁材を剥離する線材Wとして平角線を例にとり説明する。平角線とは、軸線方向に直交する断面が長方形状の線材をいう。図9は、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間が生じるように、第1アクチュエータAT1を駆動した状態を示す図である。図10は、平角線Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示し、図11は、平角線Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示している。
【0022】
まず、図9に示すように、第1アクチュエータACT1を駆動制御して、両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間(平角線Wの断面に相似)が生じるようにする。このとき、図10に示すように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dで囲われた空間Sは長方形状になる。かかる空間Sに、絶縁材で被覆された線材Wが挿通されているものとする。ここで、線材Wの絶縁材を剥離しない場合、図10に示すように、対向するテーパ部11a同士が離れるように、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが第2アクチュエータACT2により駆動され、従って空間S内を通過する線材Wにテーパ部11aが接触しないため、絶縁材の剥離は行われない。
【0023】
一方、絶縁材の剥離を行う場合、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして駆動し、対向するテーパ部11aを近接させる(図11参照)。これにより、テーパ部11aの先端が、線材Wの外周における各面の絶縁材に当接した状態となる。かかる状態から、図2に示すように、モータ2を往復駆動することで、プーリ3によりタイミングベルト5が移動し、それによりホルダ6,ベース9,カッタベース10,10,カッタ刃11A,11B、11C、11Dが線材Wの軸線方向に高速で往復移動するので、平角線Wに対して相対移動したテーパ部11aにより、任意の距離にわたって絶縁材を被覆することができる。その後、第2アクチュエータAT2により、カッタ刃11A,11B、11C、11Dを、隣接するカッタ刃側縁に沿うようにして逆方向に駆動し、対向するテーパ部11aを離隔させることができる(図10参照)。
【0024】
本実施の形態によれば、カッタ刃11A,11B、11C、11Dが、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するように駆動されるので、隣接するカッタ刃同士が離隔することがなく、例えば真四角線や平角線などのように断面が矩形状の線材Wに被覆された絶縁材を、一度の動作で効果的に除去することができる。
【0025】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる剥離装置を示す側面図である。
【図3】ベース9を線材Wの軸線方向に見た図である。
【図4】カッタベース10,10を、ベース9に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。
【図5】カッタベース11A,11B、11C、11Dを、カッタベース10,10に搭載した状態で線材Wの軸線方向に見た図である。
【図6】カッタ刃の斜視図である。
【図7】線材Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図8】線材Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図9】両カッタベース10,10間に、それぞれ対向する第2の側縁10bと直交縁10cとで形成された長方形状の空間が生じるように、第1アクチュエータAT1を駆動した状態を示す図である。
【図10】平角線Wの絶縁材を被覆しないときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【図11】平角線Wの絶縁材を被覆するときのカッタ刃11A,11B、11C、11Dの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フレーム
2 モータ
2a 回転軸
3 プーリ
4 プーリ
5 タイミングベルト
6 ホルダ
7,8 保持装置
7a、8a 保持部
9 ベース
9a アーム
9b ベースガイド
10 カッタベース
10a 第1の側縁
10b 第2の側縁
10c 直交縁
10d ガイド
10e ガイド
10f ガイド
10g ガイド
11A〜11D カッタ刃
11a テーパ部
AT1 第1アクチュエータ
AT2 第2アクチュエータ
S 空間
W 線材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置において、
複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃を、前記平行な外周面に対して近接又は離隔するように駆動する第1駆動部と、
前記複数のカッタ刃を前記線材に沿って駆動する第2駆動部と、
前記カッタ刃を、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドするガイド部と、を有することを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
前記カッタ刃は4つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の剥離装置。
【請求項3】
前記線材は、断面が矩形状の真四角線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離装置。
【請求項1】
少なくとも二面が平行な外周面を有する線材に被覆された被膜を剥離する剥離装置において、
複数のカッタ刃と、
前記複数のカッタ刃を、前記平行な外周面に対して近接又は離隔するように駆動する第1駆動部と、
前記複数のカッタ刃を前記線材に沿って駆動する第2駆動部と、
前記カッタ刃を、隣接するカッタ刃の側縁に沿って相対移動するようにガイドするガイド部と、を有することを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
前記カッタ刃は4つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の剥離装置。
【請求項3】
前記線材は、断面が矩形状の真四角線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−189857(P2007−189857A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7262(P2006−7262)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000217284)田中精機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000217284)田中精機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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