説明

線材切断装置

【課題】駆動部の所要駆動力を低減し、装置のコンパクト化を実現した線材切断装置を提供する。
【解決手段】線材Mを所定長ずつ間欠に移送する移送部と、固定刃21及び可動刃22を有して移送された線材Mを切断するカッター部2と、カッター部2の可動刃22を駆動する駆動部3と、を備える線材切断装置1であって、カッター部2の可動刃22と駆動部3との間に、複数組のカム及びカムフォロアからなり駆動部3の駆動力により前記可動刃22を往復駆動する確動カム機構4を備えた。さらに、確動カム機構4は、駆動部3により往復駆動される主スライドカム5及び従スライドカム6と、主スライドカム5に摺接する主カムフォロア73及び従スライドカム6に摺接する従カムフォロア76を有して揺動するカムレバー7と、カムレバー7と可動刃22とを連結する連結レバー8と、を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線などの線材を所定長に切断する線材切断装置に関し、より詳細には、固定刃及び可動刃を有するカッター部の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチとダイスを有して圧造加工を行う圧造機は、線材を所定長に切断してワークを製作する線材切断装置を備える場合が多い。線材切断装置は、金属線などの線材を所定長ずつ間欠に移送する移送部と、線材を切断するカッター部とを備え、圧造機構と共通の駆動源または独立した駆動源により駆動されるのが一般的である。移送部の機構としては、往復送り機構及びローラ送り機構が知られている。カッター部は、円筒状の固定刃及び可動刃を有し、両刃の軸心を揃えて線材を挿通させた後、可動刃が線材に交差しながら往復動して線材を剪断する構造が採用されている。
【0003】
この種の線材切断装置の一例が特許文献1の圧造成形機に開示されている。この圧造成形機は、棒状素材を供給するクイル部と、素材を切断するナイフを有するカッターロッドと、高速切断用の副駆動源とを備えている。また、実施形態の説明及び図2等には、副駆動源の具体的構成が例示されている。すなわち、副駆動源は、サーボモータの駆動軸にカムを設けてなるカム駆動機構と、一端がカッターロッドに対向し他端にガイドローラが設けられてカムに当接する揺動体とを備えている。さらに、ガイドローラを確実にカムに当接するために、揺動体をカム側に付勢する付勢ばねを備えている。これにより、主駆動源による成形機側の駆動速度に関係なく、ナイフで素材を高速剪断でき、切断ブランクの切口面の直角度が得られる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−220443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の線材切断装置では、カムとガイドローラの当接により揺動体が駆動され、カムとガイドローラを確実に当接させるために付勢ばねが設けられている。このため、副駆動源は、付勢ばねに抗して揺動体を駆動することになり、付勢ばねの分だけ余分な駆動力が必要となる。これは、特許文献1に限らず、主駆動源に連動駆動される線材切断装置や、付勢ばねに代えてエアシリンダを用いた線材切断装置にも共通する問題点である。また、付勢ばねやエアシリンダを配設することは、線材切断装置ひいては圧造機をコンパクト化する際の阻害要因となっている。
【0006】
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、駆動部の所要駆動力を低減し、装置のコンパクト化を実現した線材切断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の線材切断装置は、線材を所定長ずつ間欠に移送する移送部と、固定刃及び可動刃を有して移送された前記線材を切断するカッター部と、前記カッター部の前記可動刃を駆動する駆動部と、を備える線材切断装置であって、前記カッター部の前記可動刃と前記駆動部との間に、複数組のカム及びカムフォロアからなり前記駆動部の駆動力により前記可動刃を往復駆動する確動カム機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記確動カム機構は、前記駆動部により往復駆動される主スライドカム及び従スライドカムと、前記主スライドカムに摺接する主カムフォロア及び前記従スライドカムに摺接する従カムフォロアを有して揺動するカムレバーと、前記カムレバーと前記可動刃とを連結する連結レバーと、を有することが好ましい。
【0009】
さらに、前記カムレバーは、揺動軸心から互いに逆方向に延在する2つのアーム部をもち、一方のアーム部に前記主カムフォロアを有し、他方のアーム部に前記従カムフォロアを有してもよい。
【0010】
また、前記主スライドカム及び前記主カムフォロアは前記従スライドカム及び前記従カムフォロアよりも厚く形成され、前記主スライドカムが前記主カムフォロアを押動するタイミングで前記カッター部が前記線材を切断するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の線材切断装置では、カッター部の可動刃は、複数組のカム及びカムフォロアからなる確動カム機構を介して駆動部により往復駆動される。このため、1組のカム及びカムフォロアを用いた従来の装置と異なり、付勢ばねやエアシリンダなどの付勢手段を必要としない。したがって、付勢手段に抗するための駆動力が不要となり、駆動部の所要駆動力を低減できる。また、付勢手段を配設するスペースが不要となり、装置のコンパクト化を実現できる。
【0012】
さらに、前記確動カム機構が往復駆動される主スライドカム及び従スライドカム、主カムフォロア及び従カムフォロアを有するカムレバー、及び連結レバーを有する態様では、主スライドカム及び従スライドカムを同一の部材に設けて共通に駆動できる。したがって、装置の構成が簡素化され、コンパクト化を実現できる。
【0013】
さらに、カムレバーの逆方向に延在する2つのアーム部の一方に主カムフォロアを有し他方に従カムフォロアを有する態様では、カムレバーが揺動軸心から離れた2箇所で駆動される。したがって、カムレバーの揺動が安定し、可動刃による線材の切断動作が確実になる。
【0014】
また、主スライドカム及び主カムフォロアが従スライドカム及び従カムフォロアよりも厚く形成された態様では、可動刃が往動して線材を切断するときに必要となる大きな駆動力を確実に伝達でき、可動刃による線材の切断動作が確実になる。一方、可動刃が復動するときは小さな駆動力でよく、これに対応して従スライドカム及び従カムフォロアを薄くでき、その分だけ装置をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の線材切断装置を説明する平面図である。
【図2】図1の矢印A方向からみた線材切断装置の正面図である。
【図3】図1の矢印B方向からみた線材切断装置の左側面断面図である。
【図4】図2の矢印C方向からみた確動カム機構の平面断面図である。
【図5】図1の矢印D方向からみた確動カム機構の正面断面図である。
【図6】図1及び図2の矢印E方向からみた確動カム機構の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、図1〜図6を参考にして説明する。図1は本発明の実施形態の線材切断装置1を説明する平面図である。また、図2は図1の矢印A方向からみた線材切断装置1の正面図、図3は図1の矢印B方向からみた線材切断装置1の左側面断面図である。実施形態の線材切断装置1は、圧造機の共通の基部91に組み付けられており、図略の移送部、カッター部2、駆動部3、確動カム機構4などで構成されている。
【0017】
カッター部2は、円筒状の固定刃21及び可動刃22を有している。固定刃21は、図略の支持体により基部91に固定されている。一方、可動刃22はホルダ23に交換可能に取り付けられている。可動刃22及びホルダ23は、後述の連結レバー8により、図1及び図3の矢印P方向に往復駆動される。図略の移送部は、固定刃21及び可動刃22の軸心が揃えられた状態で、線材Mを所定長ずつ間欠に移送して、両刃21、22の中央に挿通させる。この後、可動刃22が往動して、線材Mに交差しながら剪断する。剪断が終了すると、可動刃22が復動して両刃21、22の軸心が揃えられ、再度線材Mが移送され、以下繰り返されるようになっている。
【0018】
駆動部3は、クランクシャフト31、コネクティングロッド32、及びスライドブロック33で構成されている。クランクシャフト31は、圧造機の駆動源により回転駆動される主軸92の端部に偏心して立設されている。クランクシャフト31には、コネクティングロッド32の一端321が遊嵌されて係合している。さらに、コネクティングロッド32の他端322は、スライドブロック33の一端に遊嵌されて係合している。スライドブロック33は、基部91に形成されたスライド溝93に往復動可能に保持されている。主軸92が回転駆動されると、クランクシャフト31は輪転し、コネクティングロッド32の一端321が回動して他端322が往復動し、すなわち回転運動が往復運動に変換されて、スライドブロック33が図1及び図2の矢印Q方向に往復動するようになっている。
【0019】
確動カム機構4は、主スライドカム5、従スライドカム6、主カムフォロア73及び従カムフォロア76を有するカムレバー7、連結レバー8などにより構成されている。図4は、図2の矢印C方向からみた確動カム機構4の平面断面図である。また、図5は図1の矢印D方向からみた確動カム機構4の正面断面図、図6は図1及び図2の矢印E方向からみた確動カム機構4の側面断面図である。
【0020】
図4に示されるように、主スライドカム5は、2本のねじ59、59によりスライドブロック33のコネクティングロッド32に近い位置に固定されている。主スライドカム5は、図中左側に肉厚の小さな薄肉部51、図中右側に肉厚の大きな厚肉部53、中央に薄肉部51から厚肉部53へと滑らかに変化する傾斜部52を有している。主スライドカム5の薄肉部51から厚肉部53に至る表面が、後述の主カムフォロア73を押動する主カム面55となっている。同様に、従スライドカム6も、図略の2本のボルトによりスライドブロック33のコネクティングロッド32から離れた位置(主スライドカム5よりも図中左方)に固定されている。従スライドカム6は、図中左側に厚肉部61、図中右側に薄肉部63、中央に厚肉部61から薄肉部63へと滑らかに変化する傾斜部62を有している。従スライドカム6の厚肉部61から薄肉部63に至る表面が、後述の従カムフォロア76を押動する従カム面65となっている。
【0021】
主スライドカム5の図4中の紙面表裏方向の厚さ(図6中の厚さT)は、従スライドカム6よりも厚く形成されている。また、主スライドカム5は、従スライドカム6よりも高い位置(図4の紙面手前側)に配置されている。
【0022】
カムレバー7は、図4及び図5に示されるように、基部91側の固定軸94の中心を揺動軸心AXとして、揺動可能に支承されている。カムレバー7は、固定軸94を周回する支承部71と、支承部71から互いに逆方向に延在する第1及び第2アーム部72、75とで形成されている。図5に示されるように、支承部71は、固定軸94に設けられた上下のオサエ95、96に上下動を規制され、固定軸94の周りの回動のみが許容されている。
【0023】
第1アーム部72は、支承部71から主スライドカム5に向かって延び、その先端付近に筒状の主カムフォロア73を回転自在に保持している。一方、第2アーム部75は、第1アーム部72と概ね逆方向に第1アーム部72よりも長く延びている。第2アーム部75は、その先端付近に連結孔78を有し、長さ方向の中間付近に筒状の従カムフォロア76を回転自在に保持している。
【0024】
主カムフォロア73の図4中の紙面表裏方向の厚さは、主スライドカム5の厚さTに相応して厚く形成され、従カムフォロア76の紙面表裏方向の厚さは、従スライドカム5の厚さに相応して薄く形成されている。また、図6に示されるように、主カムフォロア73は主スライドカム5と同じ高さに配置され、主カム面55に常に摺接している。同様に、従カムフォロア76も従スライドカム6と同じ高さに配置され、従カム面65に常に摺接している。したがって、カムレバー7は、2箇所での摺接により、常に揺動位置が確定している。
【0025】
図4及び図5に示されるように、カムレバー7の第2アーム部75の連結孔78には、連結ピン85を用いてリンク部材86が連結されている。さらに、リンク部材86は、別の連結ピン87を用いて連結レバー8の一端81に連結されている。つまり、カムレバー7と連結レバー8がリンク部材86を介して連結されている。連結レバー8は略棒状の部材であり、その他端82は、図1及び図3に示されるように、可動刃22を取り付けたホルダ23に結合されている。また、連結レバー8の他端82付近は、基部91に設けられた軸受け部97に支承されて、軸長方向に移動できるようになっている。
【0026】
次に、上述のように構成された実施形態の線材切断装置1の動作、作用、及び効果について説明する。まず、図1及び図3に示されるように、クランクシャフト31が上死点位置Xにあるとき、スライドブロック33は図中右方に駆動されている。このため、主カムフォロア73は主スライドカム5の薄肉部51の主カム面55に摺接し、従カムフォロア76は従スライドカム6の厚肉部61の従カム面65に摺接している。したがって、カムレバー7は図1で反時計回りに揺動しており、連結レバー8は図1で下方(図3で右方)に駆動され、このとき固定刃21及び可動刃22の軸心が揃っている。ここで、移送部により線材Mが固定刃21及び可動刃22に挿通される。
【0027】
次に、主軸92が180°回転して、クランクシャフト31が図2に点線の矢印Rで示されるように上死点位置Xから下死点位置Yまで駆動されると、スライドブロック33は図中左方に駆動される。これにより、主スライドカム5が主カムフォロア73を押動し、主カムフォロア73は主スライドカム5の薄肉部51から傾斜部52を経て厚肉部53へと主カム面55を摺動する。同時に、従カムフォロア76が従スライドカム6の厚肉部61から傾斜部62を経て薄肉部63へと従カム面65を摺動する。したがって、カムレバー7は図1に一点鎖線で示される位置まで時計回りに揺動し、連結レバー8は図1で上方(図3で左方)に往動され、固定刃21から可動刃22が変位して、線材Mを切断する。
【0028】
この後、さらに主軸92が180°回転して、クランクシャフト31が下死点位置Yから上死点位置Xまで駆動されると、スライドブロック33は図中右方に駆動される。これにより、従スライドカム6が従カムフォロア76を押動し、従カムフォロア76は従スライドカム6の薄肉部63から傾斜部62を経て厚肉部61へと従カム面65を摺動する。同時に、主カムフォロア73は主スライドカム5の厚肉部53から傾斜部52を経て薄肉部51へと主カム面55を摺動する。したがって、カムレバー7は図1の実線で示される位置まで反時計回りに揺動し、連結レバー8は図1で下方(図3で右)に復動され、固定刃21及び可動刃22の軸心が再び揃う。
【0029】
本実施形態によれば、主従2組のスライドカム5、6からなる確動カム機構4を用いるので、従来の装置と異なり、付勢ばねやエアシリンダなどの付勢手段を必要としない。したがって、付勢手段に抗するための駆動力が不要となり、駆動部3の所要駆動力を低減できる。また、付勢手段を配設するスペースが不要となり、加えて主スライドカム5及び従スライドカム6を同一のスライドブロック33に設けて共通に駆動しているので、線材切断装置1のコンパクト化を実現できる。
【0030】
さらに、カムレバー7の逆方向に延在する第1アーム部72に主カムフォロア73を有し、第2アーム部73に従カムフォロア76を有するので、カムレバー7が揺動軸心AXから離れた2箇所で安定して駆動され、可動刃22による線材Mの切断動作が確実になる。
【0031】
また、主スライドカム5及び主カムフォロア73が従スライドカム6及び従カムフォロア76よりも厚く形成されているので、可動刃22が往動して線材Mを切断するときに必要となる大きな駆動力を確実に伝達でき、可動刃22による線材Mの切断動作が確実になる。一方、可動刃22が復動するときは小さな駆動力でよく、これに対応して従スライドカム6及び従カムフォロア76を薄くでき、その分だけ線材切断装置1の高さを低減してコンパクト化できる。
【符号の説明】
【0032】
1:線材切断装置
2:カッター部 21:固定刃 22:可動刃 23:ホルダ
3:駆動部 31:クランクシャフト 32:コネクティングロッド
32:スライドブロック
4:確動カム機構
5:主スライドカム 51:薄肉部 52:傾斜部 53:厚肉部
55:主カム面
6:従スライドカム 61:厚肉部 62:傾斜部 63:薄肉部
65:従カム面
7:カムレバー 71:支承部
72:第1アーム部 73:主カムフォロア
75:第2アーム部 76:従カムフォロア 78:連結孔
8:連結レバー 81:一端 82:他端
85:連結ピン 86:リンク部材 87:連結ピン
91:基部 92:主軸 93:スライド溝 94:固定軸
95、96:オサエ 97:軸受け部
M:線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を所定長ずつ間欠に移送する移送部と、固定刃及び可動刃を有して移送された前記線材を切断するカッター部と、前記カッター部の前記可動刃を駆動する駆動部と、を備える線材切断装置であって、
前記カッター部の前記可動刃と前記駆動部との間に、複数組のカム及びカムフォロアからなり前記駆動部の駆動力により前記可動刃を往復駆動する確動カム機構を備えたことを特徴とする線材切断装置。
【請求項2】
前記確動カム機構は、前記駆動部により往復駆動される主スライドカム及び従スライドカムと、前記主スライドカムに摺接する主カムフォロア及び前記従スライドカムに摺接する従カムフォロアを有して揺動するカムレバーと、前記カムレバーと前記可動刃とを連結する連結レバーと、を有する請求項1に記載の線材切断装置。
【請求項3】
前記カムレバーは、揺動軸心から互いに逆方向に延在する2つのアーム部をもち、一方のアーム部に前記主カムフォロアを有し、他方のアーム部に前記従カムフォロアを有する請求項2に記載の線材切断装置。
【請求項4】
前記主スライドカム及び前記主カムフォロアは前記従スライドカム及び前記従カムフォロアよりも厚く形成され、前記主スライドカムが前記主カムフォロアを押動するタイミングで前記カッター部が前記線材を切断する請求項2または3に記載の線材切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−55900(P2012−55900A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198670(P2010−198670)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】