説明

線材成形機

【課題】従来よりも線材を成形するためのスペースを広くすることが可能な線材成形機の提供を目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る線材成形機10では、ツール直動駆動機構20が第2可動ベース41を直動させて成形ツールT1の直動位置を制御する。また、ツール回転駆動機構31が成形ツールT1をツール旋回軸J2回りに回転させて、成形ツールT1の線材90に対するツール旋回軸J2回りの相対的な回転位置を制御し、線材回転駆動機構50が線材90を線材送給軸J1回りに回転させて、成形ツールT1の線材90に対する線材送給軸J1回りの相対的な回転位置を制御する。ここで、第2可動ベース41には、ツール回転駆動機構31のみが搭載されているので、従来の線材成形機に比べて、第2可動ベース41周辺をコンパクトにすることができ、線材90を成形するためのスペースを広くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形ツールの線材に対する直動位置、回転位置を変更して線材を任意の形状に成形可能な線材成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の線材成形機として図5に示した線材成形機1は、前後方向に延びた線材送給軸A3に沿って線材7を案内する線材ガイド2の前方で前後、左右、上下の3方向に直動可能な可動ベース3と、可動ベース3に支持されて線材送給軸A3と平行な軸A1回りに回転可能な回転ヘッド4と、回転ヘッド4に支持されて線材送給軸A3と直交する軸A2回りに回転可能なツールテーブル5とを備えている。そして、可動ベース3を直動させることで、ツールテーブル5に取り付けられた成形ツール6の直動位置を制御し、ツールテーブル5を軸A2回りに回転させると共に、回転ヘッド4を軸A1回りに回転させることで、成形ツール6の線材7に対する回転位置を制御するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−290859号公報([0031]、[0032]、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の線材成形機1では、可動ベース3に、回転ヘッド4の回転駆動機構とツールテーブル5の回転駆動機構とが搭載されているため、可動ベース3の周辺が嵩張ってしまい、線材7を成形するためのスペースが狭いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来よりも線材を成形するためのスペースを広くすることが可能な線材成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る線材成形機は、水平に延びた線材送給軸に沿って送給される線材の衝合相手である成形ツールを、複数の直動軸に沿って移動して任意の直動位置に位置制御するツール直動位置制御手段と、成形ツールを、線材送給軸に直交した又は線材送給軸と平行な軸に直交したツール旋回軸回りの任意の回転位置に位置制御するツール回転位置制御手段とを備えて、線材を任意の形状に成形可能な線材成形機において、成形ツールに送給される線材を線材送給軸回りに回転駆動することで、成形ツールを線材に対して相対的に線材送給軸回りの任意の回転位置に位置制御する線材回転駆動機構と、成形ツールをツール旋回軸回りに回転駆動することで、成形ツールを線材に対してツール旋回軸回りの任意の回転位置に位置制御するツール回転駆動機構とで、ツール回転位置制御手段を構成し、ツール回転駆動機構を搭載した可動ベースを有し、その可動ベースを線材送給軸に直交した第1直動軸方向と、その第1直動軸に直交した第2直動軸方向とを含む複数の直動軸で直線駆動しかつそれら直動位置を制御するツール直動駆動機構を、ツール直動位置制御手段として備え、可動ベースには、ツール回転駆動機構が成形ツールをツール旋回軸回りに回転駆動するためのツール旋回用サーボモータのみが駆動源として搭載されると共に、そのツール旋回用サーボモータの回転中心軸がツール旋回軸と一致するように又は平行になるように配置されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の線材成形機において、1対のローラが線材を挟持した状態で対称回転することで線材を線材送給軸に沿って送給可能な線材送給装置が、成形ツールとの間に区画壁を挟むように配置されると共に、区画壁には、線材送給軸に沿って線材が通過可能な線材送給孔が備えられ、線材回転駆動機構は、1対のローラを線材送給軸の回りに回転駆動するように構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の線材成形機において、区画壁には、線材送給孔を有したクイルが回転可能に備えられ、クイルを回転駆動しかつその回転位置を制御するクイル回転駆動機構が設けられたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の線材成形機において、ツール直動駆動機構は、第1直動軸と、第2直動軸と、それらに直交する第3直動軸との3つの直動軸で、可動ベースを直線駆動しかつそれら直動位置を制御可能に構成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の線材成形機において、ツール旋回軸と直交しかつ成形ツールを取り付け可能な複数のツールテーブルをツール旋回軸に間隔を空けて並べて備え、ツールテーブル同士を一体回転可能に連結したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1の発明では、ツール回転駆動機構が成形ツールをツール旋回軸回りに回転させることで、成形ツールを、線材に対してツール旋回軸回りに任意の回転位置に位置制御すると共に、線材回転駆動機構が線材を線材送給軸回りに回転させることで、成形ツールを、線材に対して相対的に線材送給軸回りの任意の回転位置に位置制御する。このように、本発明は、従来の線材成形機において成形ツールを線材送給軸回りに回転させる代わりに、線材を線材送給軸回りに回転させる構成になっているので、従来の線材成形機と同じように、成形ツールの線材に対する回転位置を変更することができる。そして、本発明では、可動ベースに、成形ツールをツール旋回軸回りに回転駆動するためのツール回転駆動機構のみが搭載されているので、従来の線材成形機のように、可動ベースに2つの回転駆動機構が搭載された場合に比べて、可動ベース周辺をコンパクトにすることができ、線材を成形するためのスペースを広くすることができる。しかも、ツール旋回用サーボモータの回転中心軸が線材送給軸に直交するので、線材を成形する際に、線材送給軸方向にスペースを広く取ることができる。
【0012】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、線材が線材送給孔に遊嵌される場合、線材を線材送給軸回りに回転させることが可能になる。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、線材を回転させたときにクイル回転駆動機構によりクイルを回転駆動することにより、線材送給孔内にある線材が線材送給孔の内側面と干渉して捻れることが防がれる。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、互いに直交する3方向に成形ツールを直動させることができる。また、成形ツールが線材送給軸方向に直動するので、成形途中で線材の形状が線材送給軸方向に長くなる場合であっても、その線材の線材送給軸方向の先方にも成形ツールを衝合させ成形することが可能になる。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、線材の成形に多くの成形ツールが必要な場合であっても、成形の途中で成形ツールを付けかえることなく成形を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る線材成形機を部分的に鉛直面で切断した側面図
【図2】線材成形機を部分的に縦断面した正面図
【図3】ベースフレームの線材送給軸を含む水平面による切断面を上方から見た図
【図4】変形例に係るツールテーブルの正面図
【図5】従来の線材成形機を部分的に鉛直面で切断した側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3を用いて説明する。図1に示すように線材成形機10のベースフレーム11には、ツール直動駆動機構20と線材送給装置12とが前後方向に対峙して固定されており、ツール直動駆動機構20と線材送給装置12との間に、ベースフレーム11の前面壁11A(本発明の「区画壁」に相当する)が配置されている。
【0018】
前面壁11Aには、前方に突出したクイル14が備えられている。図3に示すように、クイル14は、前面壁11Aを前後方向に貫通したクイル支持孔15にベアリングを介して回転自在に支持されている。また、クイル14には、線材90の断面形状に対応した、例えば、断面円形の線材送給孔14Aが貫通形成されている。そして、線材送給装置12により送給された線材90は、線材送給孔14Aを通ってクイル14の前方の成形領域R1に送給される。線材90は、水平方向に送給され、クイル14により側方への移動が規制されている。なお、線材送給孔14Aの中心軸が本発明の線材送給軸J1に相当する。
【0019】
図2に示すように、前面壁11Aの前面側には、クイル14の側方に複数の補助ツール駆動機構70が放射状に備えられている。補助ツール駆動機構70は、クイル14側を向いた前面に芯金ツールや切断ツールといった補助ツール74を備え、前面壁11Aに設けられた補助ツール直動部71によって、補助ツール74を補助ツールガイド73Gに沿って往復駆動させる。補助ツール直動部71は、クランク機構72とスライダ機構73とから構成され、クランク機構72のクランクシャフト72Sがサーボモータ71M(図1参照)に連結されている。そして、サーボモータ71Mがクランクシャフト72Sを回転させると、補助ツール74がスライダ機構73のスライダ73Sと一体に補助ツールガイド73Gに沿って移動する。
【0020】
補助ツール駆動機構70は、後述する成形ツールT1〜T3によって線材90が成形されている間は、補助ツール74をクイル14から離れた位置に退避させ、成形が完了すると成形ツールT1〜T3の代わりに補助ツール74をクイル14の前方領域に進入させる。
【0021】
次に、ツール直動駆動機構20について説明する。ツール直動駆動機構20は、複数の成形ツールT1〜T3が取り付け可能なツールテーブル30を、線材送給軸J1と平行なX軸と、水平面内で線材送給軸J1に直交するY軸とに沿って進退移動可能に構成されている。
【0022】
具体的には、ツール直動駆動機構20は、図1に示すように、前面壁11Aの前面に取り付けられて水平な上面を有する架台22に、第1可動ベース40を搭載すると共に、第1可動ベースに第2可動ベース41を搭載し、架台22と第1可動ベース40との間、第1可動ベース40と第2可動ベース41との間にそれぞれ設けられた第1直動機構、第2直動機構によって、第2可動ベース41をY軸、X軸に沿って直動させる構成になっている。そして、第2可動ベース41にツールテーブル30が支持されて、第2可動ベース41と一体に直動可能になっている。ここで、本実施形態では、第2可動ベース41が本発明の「可動ベース」に相当し、X軸、Y軸が本発明の「第2直動軸」、「第1直動軸」にそれぞれ相当する。
【0023】
架台22と第1可動ベース40との間に設けられた第1直動機構の具体的な構成は以下のようになっている。即ち、図2に示すように、架台22の上面には、第1ボールネジ機構21が備えられ、第1ボールネジ機構21の駆動源であるサーボモータ21Mがボールネジ21Aを回転させると、第1可動ベース40から垂下すると共にボールナット(図示せず)を固定して備えたナット支持壁40Aがボールネジ21Aに沿って移動し、第1可動ベース40が線材送給軸J1と平行な軸に直交したY軸方向に直動する。
【0024】
第1可動ベース40と第2可動ベース41との間に設けられた第2直動機構は、上記した第1直動機構と同様な構造をなしている。即ち、図1に示すように、第1可動ベース40の上面には、第2ボールネジ機構23が備えられ、第2ボールネジ機構23の駆動源であるサーボモータ23Mがボールネジ23Aを回転させると、第2可動ベース41から垂下してボールナット(図示せず)を固定して備えたナット支持壁41Aがボールネジ23Aに沿って移動し、第2可動ベース41が線材送給軸J1と平行なX軸方向に直動する。
【0025】
なお、架台22と第1可動ベース40の間、第1可動ベースと第2可動ベース41との間には、直動ガイド24,25が設けられ、これにより、第1可動ベース40、第2可動ベース41をスムーズに直動させることができるようになっている。
【0026】
上述の如く第2可動ベース41には、成形ツールT1〜T3を取り付け可能なツールテーブル30が備えられている。ツールテーブル30は、Y軸方向に直交した板状をなし(図2参照)、外周部に成形ツールT1〜T3が配置されるように構成されている(図1参照)。
【0027】
さて、本実施形態の線材成形機10では、線材90を任意の形状に成形可能とするために、上述したツール直動駆動機構20のほかに、成形ツールT1〜T3の線材90に対する相対的な回転位置を任意に変更可能なツール回転位置制御手段を有している。このツール回転位置制御手段は、線材90を線材送給軸J1回りに回転させることで、成形ツールT1〜T3を線材90に対して相対的に線材送給軸J1回りの任意の回転位置に位置制御する線材回転駆動機構50(図1参照)と、成形ツールT1〜T3をY軸方向に延びたツール旋回軸J2回りに回転させることで、成形ツールを線材90に対してツール旋回軸J2回りの任意の回転位置に位置制御するツール回転駆動機構31(図2参照)とで構成されている。以下、線材回転駆動機構50とツール回転駆動機構31の構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、ツール回転駆動機構31は、第2可動ベース41に搭載され、回転中心軸がツール旋回軸J2に一致するツール旋回用サーボモータ32と、ツール旋回用サーボモータ32の出力回転を減速してツールテーブル30に伝達する減速機33とで構成されている。ツール旋回用サーボモータ32と、減速機33と、ツールテーブル30とは、ツール旋回軸J2に沿って配置されている。詳細には、減速機33の入力軸と出力軸は同軸上に配置されており、ツールテーブル30の回転中心軸は、ツール旋回軸J2に一致している。これにより、ツールテーブル30の成形ツールT1〜T3が、ツール旋回軸J2の回りに回転可能となっている。
【0029】
図1に示すように、線材回転駆動機構50は、ベースフレーム11の前面壁11Aの後方に配置され、線材送給装置12を線材送給軸J1回りに回転可能な構成になっている。
【0030】
以下、線材回転駆動機構50の具体的な構成について説明する。図3に示すように、ベースフレーム11には、線材送給装置12を支持した回転ベース51が線材送給軸J1回りに回転可能に軸支されている。回転ベース51は、ベースフレーム11の後面壁11Bを線材送給軸J1方向に貫通して後面壁11Bに回転自在に支持された後側筒体52と、前面壁11Aに回転可能に支持されて線材送給軸J1方向で後側筒体52に対向配置された前側筒体53とを備え、後側筒体52と前側筒体53の中心軸が、線材送給軸J1に一致している。また、後側筒体52の前端部が回転ベース51の後端壁55に固定されると共に、前側筒体53の後端部が回転ベース51の前端壁56に固定され、それら前端壁56と後端壁55とを、線材送給軸J1からオフセットした位置で連絡壁54が連結している。そして、前端壁56、後端壁55、連絡壁54で囲まれた部分に線材送給装置12が受容されている。
【0031】
線材送給装置12は、線材送給軸J1に直交する軸を中心として連絡壁54に回転可能に支持されて、線材送給軸J1を挟む1対の送りローラ13,13を有している。回転ベース51が図1に示す回転位置にある状態では、送りローラ13,13は線材送給軸J1を挟んで上下方向に並んで配置され、上側の送りローラ13が自由回転可能に軸支されると共に、下側の送りローラ13が後述するローラ駆動用サーボモータ60Mによって駆動されるようになっている。そして、後側筒体52の内側を通ってきた線材90を送りローラ13,13にて挟持し、上下の送りローラ13,13が対称回転することで線材90を線材送給軸J1に沿って前側筒体53の内側へと送る。なお、ローラ駆動用サーボモータ60Mによって、ツール直動駆動機構20側(即ち、前側)に線材90を送給したり、或いは、その逆向き(即ち、後側)に引き戻すことができるようになっている。
【0032】
送りローラー13,13は、ローラ駆動機構60によって回転駆動されるようになっている。ローラ駆動機構60の具体的な構成は以下の通りである。即ち、図3に示すように後側筒体52の内側には、ベアリングによりインナーシャフト61が回転可能に軸支されている。また、後端壁55には、線材送給軸J1と平行な軸回りに回転する第1中継シャフト62が備えられ、連絡壁54には、線材送給軸J1と直交する軸回りに回転する第2中継シャフト63が備えられている。さらに、連絡壁54には、下側の送りローラ13と一体回転可能なローラ支持シャフト64が備えられている。
【0033】
インナーシャフト61と第1中継シャフト62との間は、平ギア61G1,62G1により連結されており、第1中継シャフト62と第2中継シャフト63との間は、ベベルギア62G2,63G2により連結されている。また、第2中継シャフト63とローラ支持シャフト64との間は、平ギヤ63G1,64G1により連結されている。
【0034】
後面壁11Bの後面側には、ローラ駆動機構60の駆動源であるローラ駆動用サーボモータ60Mが取り付けられ、そのローラ駆動用サーボモータ60Mの出力回転軸とインナーシャフト61の後端部に固設したプーリとが連結されている。これらによりローラ駆動機構60が構成され、ローラ駆動用サーボモータ60Mがインナーシャフト61を回転させると、第1中継シャフト62、第2中継シャフト63、ローラ支持シャフト64が連動回転し、これにより、下側の送りローラ13が線材送給軸J1と直交する軸回りに連動回転する。
【0035】
また、後面壁11Bの後面側には、線材回転駆動機構50の駆動源である線材回転用サーボモータ50Mも取り付けられており、その線材回転用サーボモータ50Mの出力回転軸と後側筒体52の後端部に固設したプーリとが連結されている。そして、これらにより線材回転駆動機構50が構成され、線材回転用サーボモータ50Mが後側筒体52を回転させると、回転ベース51と一体になって線材送給装置12が回転し、線材90を線材送給軸J1回りに回転させるようになっている。
【0036】
なお、図3に示すように、前側筒体53は、クイル14の後端部に形成された円柱凹部16の内側に回転可能に軸支され、クイル14は、クイル回転駆動機構65によって線材送給軸J1回りに、前側筒体53とは別個に回転駆動されるようになっている。具体的には、前面壁11Aの後面には、クイル回転用サーボモータ65Mが取り付けられ、そのクイル回転用サーボモータ65Mの出力回転軸とクイル14の後端部とが連結されている。
【0037】
線材成形機10の構成に関する説明は以上である。次に、線材成形機10による線材90の成形について説明する。
【0038】
線材成形機10で線材90を成形するには、まず、ツールテーブル30に備えた各成形ツールT1〜T3と、補助ツール74をクイル14の前方の成形空間R1から退避させておき、ローラ駆動用サーボモータ60Mにより送りローラ13,13を回転駆動して、クイル14の先端から所定長さ分の線材90を成形空間R1に送給する。
【0039】
次に、ツール旋回用サーボモータ32によりツールテーブル30をツール旋回軸J2回りに回転させて、例えば、成形ツールT1をクイル14側へ向ける。そして、線材回転用サーボモータ50Mにより線材送給装置12を線材送給軸J1回りに回転させて、成形ツールT1の線材90に対する相対的な回転位置を調整する。このとき、線材90が線材送給孔14Aにきつく嵌合される場合には、クイル回転駆動機構65によりクイル14を線材送給装置12と同方向に回転させることで線材90の捻れが防がれる。
【0040】
次いで、ツール直動駆動機構20により第2可動ベース41をX軸方向、Y軸方向に直動させ、ツールテーブル30をクイル14の前方に配置する。そして、クイル14から突出した線材90に成形ツールT1を衝合させる。すると、クイル14から突出した線材90が成形ツールT1によって成形される。ここで、ツール旋回用サーボモータ32と減速機33とツールテーブル30とは、線材送給軸J1と直交する方向に並べて配置されているので、成形領域R1を線材送給軸J1方向前方に広くとることができる。
【0041】
続いて、例えば、成形ツールT2にて線材90を成形する場合には、まず、成形ツールT1を成形領域R1から退避させ、必要に応じて、線材90を所定長さだけ成形空間R1に送給する。
【0042】
次に、ツールテーブル30をツール旋回軸J2回りに回転させて成形ツールT2をクイル14側へ向ける。ここで、第2可動ベース41は、ツール旋回軸J2方向(Y軸方向)に直動するので、ツールテーブル30をツール旋回軸J2方向(Y軸方向)に少しずらすだけで、ツールテーブル30を回転させる際の成形ツールT1〜T3と線材90との干渉を避けることができる。しかも、ツールテーブル30が線材送給軸J1と平行な板状になっているので、ツールテーブル30をツール旋回軸J2回りに回転させても、ツールテーブル30が任意の回転位置でクイル14の前方を覆うことがなくなり、成形領域R1を線材送給軸J1方向前方に広く取ることができる。
【0043】
成形ツールT2がクイル14側を向いたら、線材90を線材送給軸J1回りに回転させて、成形ツールT2の線材90に対する回転位置を制御する。このとき、上述したように、ツール旋回用サーボモータ32と減速機33とツールテーブル30とは、線材送給軸J1と直交する方向に並べて配置されているので、成形領域R1内の線材90が線材送給軸J1方向に長くなった場合でも、線材90を回転させることができる。
【0044】
次いで、成形ツールT1のときと同様に、第2可動ベース41をX軸方向、Y軸方向に直動させて、線材90に成形ツールT2を衝合させ、線材90を成形する。このようにして、成形ツールT1〜T3を適宜切り替えて線材90を成形する。そして、線材90の成形が終了したら、第2可動ベースをX軸方向或いはY軸方向に後退させて成形ツールT1〜T3を成形空間R1から退避させ、補助ツール74として切断ツールを取り付けた補助ツール駆動機構70を作動してその切断ツールを成形空間R1に進入させ、線材90のうち成形が完了した部分を後続の線材90から切り離す。これにより、線材90の成形品が得られる。
【0045】
このように、本実施形態の線材成形機10では、従来の線材成形機のように成形ツールT1〜T3を線材送給軸J1回りに回転させる代わりに、線材90を線材送給軸J1回りに回転させる構成になっているので、従来の線材成形機と同じように、成形ツールT1〜T3の線材90に対する相対的な回転位置を変更することができる。ここで、本実施形態によれば、第2可動ベース41に、成形ツールT1〜T3をツール旋回軸J2回りに回転駆動するためのツール回転駆動機構31のみが搭載されているので、従来の線材成形機に比べて、第2可動ベース41周辺をコンパクトにすることができ、線材90を成形するためのスペースを広くすることができる。また、従来の線材成形機よりも第2可動ベース41の積載重量が軽くなるので、第2可動ベース41を俊敏に移動させることができる。
【0046】
また、線材送給装置12を線材送給軸J1回りに回転させるので、線材90が線材送給孔14Aに遊嵌される場合、線材90を回転させることが可能になる。さらに、クイル14が線材送給軸J1回りに回転可能になっているので、線材90を回転させたときに線材送給孔14A内にある線材90が線材送給孔14Aの内側面と干渉して捻れることが防がれる。
【0047】
なお、本実施形態の線材成形機10では、線材90が線材送給孔14Aと嵌合する場合には、線材回転駆動機構50で線材送給装置12を回転させずにクイル回転駆動機構65でクイル14のみを回転させることで、線材90を線材送給軸J1回りに回転させることもできる。
【0048】
[他の実施形態]
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、クイル14が前面壁11Aに回転可能に支持されていたが、回転不能に固定されていてもよい。
【0050】
(2)第2可動ベース41がX軸と、Y軸と、X軸及びY軸に直交するZ軸との3つの軸に沿って直動可能な構成であってもよい。
【0051】
(3)図4に示すツール保持部材30Vのように、ツール旋回軸J2と直交して複数の成形ツールTを取り付け可能なツールテーブル30を、ツール旋回軸J2に沿って複数並べて備え、それらツールテーブル30同士を一体回転可能に連結した構成としてもよい。この構成によれば、線材90の成形に多くの成形ツールが必要な場合であっても、成形の途中でツール保持部材30Vの成形ツールTを付けかえることなく成形を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
10 線材成形機
11A 前面壁(区画壁)
12 線材送給装置
13 送りローラ
14 クイル
14A 線材送給孔
20 ツール直動駆動機構
30 ツールテーブル
31 ツール回転駆動機構
32 ツール旋回用サーボモータ
41 第2可動ベース(可動ベース)
50 線材回転駆動機構
65 クイル回転駆動機構
90 線材
J1 線材送給軸
J2 ツール旋回軸
T1,T2,T3,T 成形ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に延びた線材送給軸に沿って送給される線材の衝合相手である成形ツールを、複数の直動軸に沿って移動して任意の直動位置に位置制御するツール直動位置制御手段と、前記成形ツールを、前記線材送給軸に直交した又は前記線材送給軸と平行な軸に直交したツール旋回軸回りの任意の回転位置に位置制御するツール回転位置制御手段とを備えて、前記線材を任意の形状に成形可能な線材成形機において、
前記成形ツールに送給される前記線材を前記線材送給軸回りに回転駆動することで、前記成形ツールを前記線材に対して相対的に前記線材送給軸回りの任意の回転位置に位置制御する線材回転駆動機構と、前記成形ツールを前記ツール旋回軸回りに回転駆動することで、前記成形ツールを前記線材に対して前記ツール旋回軸回りの任意の回転位置に位置制御するツール回転駆動機構とで、前記ツール回転位置制御手段を構成し、
前記ツール回転駆動機構を搭載した可動ベースを有し、その可動ベースを前記線材送給軸に直交した第1直動軸方向と、その第1直動軸に直交した第2直動軸方向とを含む複数の直動軸で直線駆動しかつそれら直動位置を制御するツール直動駆動機構を、前記ツール直動位置制御手段として備え、
前記可動ベースには、前記ツール回転駆動機構が前記成形ツールを前記ツール旋回軸回りに回転駆動するためのツール旋回用サーボモータのみが駆動源として搭載されると共に、そのツール旋回用サーボモータの回転中心軸が前記ツール旋回軸と一致するように又は平行になるように配置されたことを特徴とする線材成形機。
【請求項2】
1対のローラが線材を挟持した状態で対称回転することで前記線材を前記線材送給軸に沿って送給可能な線材送給装置が、前記成形ツールとの間に区画壁を挟むように配置されると共に、前記区画壁には、前記線材送給軸に沿って前記線材が通過可能な線材送給孔が備えられ、
前記線材回転駆動機構は、前記1対のローラを前記線材送給軸の回りに回転駆動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の線材成形機。
【請求項3】
前記区画壁には、前記線材送給孔を有したクイルが回転可能に備えられ、前記クイルを回転駆動しかつその回転位置を制御するクイル回転駆動機構が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の線材成形機。
【請求項4】
前記ツール直動駆動機構は、前記第1直動軸と、前記第2直動軸と、それらに直交する第3直動軸との3つの直動軸で、前記可動ベースを直線駆動しかつそれら直動位置を制御可能に構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の線材成形機。
【請求項5】
前記ツール旋回軸と直交しかつ前記成形ツールを取り付け可能な複数のツールテーブルを前記ツール旋回軸に沿って間隔を空けて並べて備え、前記ツールテーブル同士を一体回転可能に連結したことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の線材成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107103(P2013−107103A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253896(P2011−253896)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000116976)旭精機工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】