説明

線材特殊曲げ加工機

【課題】特殊な形状の曲げ加工を施すことができる線材特殊曲げ加工装置を提供する。
【解決手段】連続して供給される線材Wの曲がり癖を矯正する矯正部1と、線材Wを次の工程へ送る送りローラを有する送り部2と、線材Wを挿通させ、かつ内部に回転駆動部を有する曲げ加工機本体3と、その他端側に突出する加工アーム4で片持ち状に回転自在に支持された切断部5を有する切断ユニットと、曲げ加工部6を有する曲げ加工ユニットとを備えて成り、切断部5はその内部を挿通する線材Wに沿って曲げ加工部6に対して移動して接近離反自在とし、曲げ加工部6による曲げ加工の動作の前、又は後に線材Wの任意の位置で切断し、曲げ端部が向かい合う形状、線材の曲げ端部が短い、或いはU字曲げのような特殊加工形状に線材Wを加工可能に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、向かい合う端部を有する形状やその他特殊形状に線材を立体曲げ加工する特殊曲げ加工の際に、線材を切断した後曲げ加工部から後退する進退動自在な切断部を有し、さらに必要な曲げ加工をする線材特殊曲げ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルレバー等の自動車部品やその他の各種機械の部品として利用される曲げ加工部材は、所定長さの線材に途中に必要な曲げ加工を施して形成され、曲げ加工後は所定長さに切断される。このような装置の一例として、特許文献1の「成形曲げ加工方法及び加工装置」が公知である。この公報の「成形曲げ加工装置」は、線材の送り方向と直交する方向に設けられた曲げ加工装置と切断装置とを備え、棒状、線材等の被加工素材を1段、多段階で曲げ加工し、特に高速で曲げ加工することにより曲げ加工時間を大幅に減少するようにした曲げ加工装置に関している。
【0003】
上記成形曲げ加工装置では、コイル状に巻かれた線材供給部から段階的に線材がその大きな曲がりを矯正する矯正部に送り込まれ、曲がりを矯正された線材はY方向とZ方向又はその間の任意の方向に必要な曲げ加工を施す曲げ部で移動する線材に、それぞれの方向の速度が同時又は異速度で曲げ加工をし、曲げ加工終了後に素材保持部の先端から突出した曲げ加工材を切断押圧体で押し切りして切断するように構成されている。この装置では、曲げ加工は基本的に押し曲げ加工することにより行われ、Y、Zの方向だけでなく全方向に曲げ加工を行うことが出来るとしている。
【0004】
他の例として、本出願人により提案された特許文献2の「線条材曲げ加工機」が公知である。この曲げ加工機は、加工機本体の一側に、片持ち状に突出し、かつ回転自在に設けられた突出アームの先端に線条材を加工する芯金、及びアーム基部に切断部を有する線条材曲げ加工部と、他側に線条材の曲げ癖を矯正する矯正部、及び線条材を送る送り部を移動基盤上に有する矯正・送り部とを備え、上記矯正・送り部と移動基盤を基台上で往復動自在に設け、線条材の先端の前加工時に線条材と移動基盤、矯正・送り部とを共に進退動させ得るように構成されている。また、この加工機では、アーム基部に有する切断部は、アーム基部に対して固定した位置に設けられている。
【0005】
上記加工機では、線条材曲げ加工部を経て突出し得るように送られる線条材を、移動基盤、矯正・送り部と共に進退動自在に設定することにより前方に置かれた前加工機で線条材の先端部を小径、又は大径に前処理した後、線条材を初期位置まで後退させて曲げ加工が行われるが、曲げ加工が終了すると、アーム基部に設けられた切断部で切断される。
【特許文献1】特開平9−295066号公報
【特許文献2】特開2007−125603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の「成形曲げ加工装置」においては、線材の切断カッタは曲げ加工部により線材の曲げ加工処理が終了した後、曲げ加工部を線材に接近させて線材を切断するが、この場合全ての曲げ加工が切断の前に行われるため、例えば切断後に線材の途中に曲げ加工製品に屈曲加工を施すような特殊な形状の線材曲げ加工はできない。特許文献2の「線条材曲げ加工機」では、曲げ加工部に対して切断カッタの位置が固定されて設けられている。このため、この例でも切断の前に全ての屈曲加工が行われ、切断後に線材の途中に曲げ加工を施すことはできない。
【0007】
さらに、この特許文献2の「線条材曲げ加工機」では、線条材の先端に大径部、収縮部のような異形段部を形成するために、曲げツールの前方に別の加工機を設置し、その加工機に線条材の先端を挿入するように前方に送り、異形段部の形成が終了すると再び送り部の送りローラで、所定長さ位置に切断部が位置するように引き戻して切断するが、この際に線条材が矯正部を再び通過することにより線状材に過度の曲げ作用を与え、製品の材質劣化が生じるのを防止するために、矯正部と送り部とを共に共通板に載置して共通板を移動させ、矯正部を線条材が通過することによる過度の矯正作用を防止している。
【0008】
しかし、このような共通板上に矯正部、送り部を載置して移動可能に構成すると、装置が大掛かりとなり、駆動装置を設けるため装置が複雑になる。従って、矯正部を線条材が前進、後退して通過することをできるだけ少なくして、線条材が矯正部を通過する度合いを軽減し、製品の材質の劣化を防止するように切断部を移動可能とする方法があるが、このような線材曲げ加工機は提案されたことがない。
【0009】
この発明は、上記の問題に留意して、線材の曲げ加工をする際に、曲げ加工部による曲げ作用の前、又は後に切断カッタを移動可能として、線材に曲げ加工を施す際に線材を引き戻す距離を可能な限り少なくし、矯正部を通過することにより材質劣化を生じる矯正作用を防止し、かつ曲げツールを特殊加工が可能な曲げ加工ツールとの組み合わせで特殊な形状の曲げ加工を施すことができる線材特殊曲げ加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の線材特殊曲げ加工機は、上記の課題を解決する手段として、連続して供給される線材の曲がり癖を矯正する矯正部と、線材を次の工程へ送る送りローラを有する送り部と、線材を挿通させ、かつ内部に回転駆動部を有する曲げ加工機本体と、その他端側に突出する加工アームで片持ち状に回転自在に支持された切断部を有する切断ユニットと、曲げ加工部を有する曲げ加工ユニットとを備えて成り、切断部はその内部を挿通する線材に沿って曲げ加工部に対して移動して接近離反自在とし、曲げ加工部による曲げ加工の動作の前、又は後に線材の任意の位置で切断し、曲げ端部が向かい合う形状、線材の曲げ端部が短い、或いはU字曲げのような特殊加工形状に線材を加工可能にした構成としたのである。
【0011】
上記の構成としたこの発明の線材特殊曲げ加工機によると、線材に対して所定の曲げ加工、特に曲げ端部が向かい合う形状、曲げ端部が短い、U字曲げ等の従来の曲げ加工装置では加工できなかった特殊曲げ加工を施す際に、切断ユニットの切断部を曲げ加工ユニットの曲げ加工部から前進(線材の送り方向)、後退させる進退動を可能として、進退動の前、後のいずれかの位置において線材を所望の長さ位置で切断する。これにより、線材の送り部で線材が繰り返し進退動されることにより矯正部において、線材が傷を受けることを防止しつつ、所定の長さ位置で切断が行われ、特殊曲げ加工が実施される。この場合、矯正部、送り部は、曲げ加工部に対して固定位置に設定されていることが前提である。
【0012】
上記特殊曲げ加工のうち、曲げ端部が向かい合う形状の製品の場合、曲げ加工を複数回重ね、最後の曲げをした後所望の長さ位置で線材を切断すると、最後の曲げをする際に製品の向かい側の曲げ端部が切断部に重なり、この状態で切断をすると、向かい側曲げ端部が重なった状態で切断をすることとなる。このため、製品の向かい合う端部の中心線がずれて、精度が悪くなる。このため、この発明の加工機では、最後の曲げ加工をする前に線材を所定長さ位置で切断をし、曲げ加工部に線材を残して切断部を曲げ加工部から後退させる。そして、向かい合う端部が曲げられても向かい合う端部が切断部に重ならない位置まで後退して退避すると、最後の曲げ加工を施す。
【0013】
上記最後の曲げ加工を施す前に線材を所定長さ位置で切断し、その後曲げ加工をすることにより、向かい合う端部の重なりによるずれのない製品が得られ、かつ切断部を移動することにより所定の長さ位置付近に切断位置を置くことができ、矯正部、送り部が固定式の加工機であっても、矯正部による線材の矯正作用を繰り返し受ける部分の長さをできるだけ短くし、或いは無くして仕上げ状態の良い製品を得ることができる。曲げ端部が短い、U字曲げ等の特殊曲げ加工をする場合、切断部は曲げ加工部に近接した位置に置かれ、この位置で最後の曲げ加工を施した後切断するが、曲げ端部が極端に短い場合と、U字曲げでは、切断部は曲げ加工部に使用される曲げツールの各種の形式に応じて位置を移動させるため置かれる位置が異なるが、この場合切断部の移動距離は曲げツールに対して僅かな範囲内で移動する。
【発明の効果】
【0014】
この発明の線材特殊曲げ加工機は、線材の曲がり癖を矯正する矯正部と、その送り部と、線材を挿通させ、かつ回転駆動する曲げ加工機本体と、その他端側に突出する加工アームで片持ち状に回転自在に支持された切断部と、曲げ加工部とを備え、切断部はその内部を挿通する線材に沿って曲げ加工部に対して移動して接近離反自在とし、曲げ加工部による曲げ加工の動作の前、又は後に線材の任意の位置で切断し、曲げ端部が向かい合う形状、線材の曲げ端部が短い、或いはU字曲げのような特殊加工形状に線材を加工可能な構成としたから、上記各種の特殊曲げ加工をする際に矯正部、送り部が固定式の加工機であっても、対象の製品の形状により切断部を大きく、又は僅かな距離範囲内で移動させて、最後の曲げ加工の後、あるいは曲げ加工の終了後に切断をすることにより、矯正部による線材の矯正作用を繰り返し受ける部分の長さをできるだけ短くし、或いは無くして仕上げ状態の良い製品を得ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の線材特殊曲げ加工機の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態の線材特殊曲げ加工機の全体外観正面図、図2はその平面図である。この線材特殊曲げ加工機Mは、線材Wの曲がり癖を矯正する矯正部1、線材Wを送る送り部2を一側に備えた、線材Wの曲げ加工をするための曲げ加工機本体3、この本体の他側に片持ち状に突出して設置された加工アーム4に取り付けられた移動式の切断部5、加工アーム4の前壁に取り付けられた曲げ加工部6とを備えている。7は線材Wを供給する線材供給部であり、コイル状に巻かれた状態でセットされた線材Wは送り部2の送りローラ2rでガイド7a、7b、7cを介して矯正部1へ送られる。8は駆動部を制御し、線材Wの送り量等を表示する表示パネルである。
【0016】
矯正部1と送り部2の構成は、基本的に従来の線材曲げ装置と同じであり、従って以下では簡単にその構成について説明する。矯正部1は、図示しない水平方向の矯正ローラ1rの複数本を千鳥状に配置した水平矯正部1aと、垂直方向の矯正ローラ1rの複数本を同じく千鳥状に配置した垂直矯正部1bとから成る。この矯正部1に線材Wが供給される前には、線材Wはターンテーブル7t上にコイル状に巻かれているため、曲がり癖(変形状態)がついており、その曲がり癖を水平、垂直の各矯正ローラ1rで矯正する。送り部2は、複数対の送りローラ2r、2rからなり、各対の送りローラ2r間では互いのニップ圧を、線材Wの径に応じてローラ間の距離を調節する機構に連結されたハンドルにより適切に調整できるように設定されている。なお、図示していないが、上記矯正部1と送り部2にはその駆動部(サーボモータ、ギヤ、連結機構等)が設けられている。
【0017】
曲げ加工機本体3は、その内部にアーム回転の駆動部、駆動機構が内蔵され、他側に片持ち状に突出して設けられた加工アーム4の前端寄り(線材の送り方向の下流側)の上部位置に設けられた切断部5とその駆動部を含む切断ユニット5uと、加工アーム4の前方の垂直壁に曲げ加工部6とその駆動部を含む曲げ加工ユニット6uを備え、両ユニットは本体内の駆動部の動力で回転させるため、線材Wを送る線材送り中心線の周りに両ユニットを回転させて三次元加工することができるように構成している。切断部5は、移動パネル5p上に設けた線材カッタ5a(図3参照)を備え、移動パネル5pの移動により線材の送り方向に進退動自在に設けられている。
【0018】
図3は加工アーム4を含む切断部5、曲げ加工部6の外観斜視図を示す。図示のように、曲げ加工機本体3から突出する回転自在な回転フランジに加工アーム4の一側の端壁4Hが連結、固定され、端壁4Hから水平に延びるケース4B内に後述する駆動部材が取り付けられて形成されている。この加工アーム4の上部位置には突出アーム4T(図4参照)が設けられ、この突出アーム4T上に設置された一対のガイドレール5r上に、スライド自在に嵌合する移動パネル5pが線材Wの送り方向に進退動自在に取り付けられている。線材Wは、この加工アーム4、切断部5、曲げ加工部6に挿通されているが、これら部材に対して曲げ加工前には、回転方向になんら拘束されていないため、加工アーム4が回転しても線材W自身は回転しない。従って、加工アーム4を回転させることにより、後述する曲げツールの回転によるX、Yの二次元方向だけでなく、三次元方向にも曲げ加工可能としている。
【0019】
切断部5は、図4に示すように、線材カッタ5aとこれを駆動するための押圧レバー5b、リンク機構5L、サーボモータ5mとから成る。上記線材カッタ5aは、移動パネル5pの上面の他端側位置付近に設けられており、この線材カッタ5aは移動パネル5pの前端寄りに固定された固定刃5afと、移動パネル5pに対して移動する移動刃5asの一対とからなる。この一対の線材カッタ5aの刃部材の中心には線材Wを通過させるための所定径の挿通孔5hが設けられている。この移動パネル5pの移動は、図4に示すサーボモータ5pmの出力軸をベルト、ねじ軸に伝達し、このねじ軸に螺合する駒部材5pcの上端が移動パネル5pの裏面に固定されているため、駒部材5pcをねじ軸で回転駆動することにより進退動が行われる。
【0020】
上記移動刃5asは移動台5d上に設けられ、この移動台5dは図示しないリニアガイド5ag上に嵌合するガイド部材で移動パネル5pに対し横方向に移動可能とされ、かつ移動台5dはその先端の鈎形部に係合する軸5x1により押圧レバー5bに対して回転自在に係合している。固定刃5afは、移動パネル5pの前端縁付近に固定されている。押圧レバー5bは、上記係合用の軸5x1に隣接して設けられた軸5x0を中心に回転し、その後方の端部に軸5x2を介して駒5cが固定され、この駒5cが縦リニアガイド5Lgに移動自在に嵌合している。線材Wを切断する際には、図4に示すように、可動側の移動刃5asを押圧レバー5bの端で押圧して固定刃5afに対して相対的にずらして線材Wに対する剪断作用により切断する。
【0021】
上記リンク機構5Lは、図4に示すように、押圧レバー5bの端に回転自在に連結された駒5cを線材の送り方向にガイドする縦リニアガイド5Lgを設けた連結板5Cpを、これと直交する方向に移動させ、かつケース4Bの適宜位置に固定した横リニアガイド5Bgで横方向に移動自在に設置し、この連結板5Cpを、リンクアーム5amと偏心板5mpを介してモータ5mの出力軸に連結するように構成している。リンクアーム5amは偏心板5mpにより回転と横移動の混合状態で回転、移動し、このリンクアーム5amの回転、横移動で押圧レバー5bの傾斜状態を調整し、これにより下記の線材カッタ5aの可動側の移動刃5asを押圧して線材カッタ5aを作動させる。
【0022】
図5に示すように、線材Wは送り時には移動刃5as、固定刃5afの中心を通り、実線で示す位置に設定されるが、切断時には一点鎖線で示す位置に駆動され、(b)図に示すように、移動刃5asが相対的にずれることにより切断が行われる。なお、線材Wは線材カッタ5aの位置まで、加工アーム4のケース4Bの一側の端の垂直壁4Hに設けた挿通孔4hを経由して前方に送られ、途中の案内カバー内を通り線材カッタ5aまで送られて来る。また、図示していないが、移動パネル5pの他端側は非曲げ作用時には後述する曲げ加工ユニット6uがオーバーラップする位置まで移動できるように設置されているが、曲げ作用時には曲げ加工ユニット6uから所定距離移動させ、この曲げ加工ユニット6uから離間して設定される。
【0023】
上記曲げ加工ユニット6uは、曲げ加工部6と、この加工部6の位置を線材Wの送り方向の中心線から横方向に所定距離だけオフセット移動させる図示しないオフセット機構とから成る。曲げ加工部6は、内軸6iと外軸6sの2重の軸からなる軸部6xを垂直に設置し、この軸部6xの頂部に曲げツール6T(図示のものは6T1)を備えている。内、外軸6i、6sは、図示省略しているが、それぞれ回転自在に設けられ、駆動部により回転駆動される。曲げツール6Tは、特殊曲げ加工の内容に対応して異なる複数種類の形式のものがあり、そのいずれかを外軸6s又は内軸6iに対して必要に応じて着脱自在に装着、固定される。その形状、機能については、後で説明する。
【0024】
さらに、この曲げ加工部6の軸部6xは、昇降自在に設けられ、曲げ加工時に曲げ加工部6から所定距離後方(線材Wの送り方向の上流側)に退避した移動パネル5p上を送られてくる線材Wの中心高さに応じた位置まで曲げツール6Tを含む軸部が上昇するように駆動され、非曲げ作用時には下降させて、移動パネル5pの他端がその上にオーバーラップする位置に来るようにして曲げツール6Tを保護する(図示の状態は、上昇した状態のみを示す)。上記所定距離の設定は、曲げ加工の種類によって異なり、曲げツール6Tに極接近した位置と、曲げツール6Tとの間に所定の間隔を設定することができるよう移動、設定される。
【0025】
曲げ加工部6には、中央位置の軸部の両側方に図示しない歯車を含む回転伝達機構を介して回転を伝達する回転駆動部のサーボモータ6sm、6imがそれぞれ設置され、回転駆動部の回転が上記内外軸6i、6sに伝達され、内外軸6i、6sを回転させるようになっている。曲げ加工部6の全体は図示しないケース4Bの前端壁(固定壁)に対して水平移動可能に取り付けられた垂直基板を、図示しないオフセット機構により水平方向に所定幅内で移動自在に構成している。さらに、図示省略しているが、この曲げ加工部6は、上記垂直基板の前面にツール昇降機構を備えている。このツール昇降機構は、この垂直基板に対してその前面位置で昇降自在に設けられた昇降板に、上記回転伝達機構やサーボモータを取り付け、昇降板を昇降駆動することにより曲げ加工部6を昇降させるように形成されている。
【0026】
図6A、図6Bに種々の曲げツール6Tの外形形状を示す。なお、曲げツール6Tは外軸6sの上端の大径部6sdの上端から上に突出する軸端部に、例えば図6Aの(a)図の割り溝形状の曲げ溝6mを有する曲げツール6T1として形成され、内軸6iはその上端から少し下方の位置の連結点で図示しない連結手段(例えばねじ部、ロッドを使用)により切り離し可能に形成され、それぞれの形式の曲げツール6Tに交換する際は、連結点で切り離しされ、他の種類のツールに交換される。以下、各種の曲げツール6Tについてそれぞれ説明する。
【0027】
図6Aの(a)図に示すように、曲げツール6T1は、内軸6iの溝形状のツール頂部6pmと外軸6sの上端に設けた曲げピン6p(ローラ)との組み合わせにより形成されている。この例では、頂部の溝形状は1条の直線状であり、溝入口と溝出口は曲線状に形成されている。曲げピン6pは、外軸6sの上端の大径部6sd上に取り付けた取付座6pzに嵌合して取り付けされ、取付座6pzはツールの種類によって取り替え可能にするため、外軸6sにボルトで着脱自在に取り付けられている。この曲げツール6T1は、後述するように、コの字形でその先端がさらに鉤形に曲げられて、端面が互いに向かい合う特殊形状の製品A1を形成するのに用いられる。その作用については後で説明する。
【0028】
図6Aの(b)、(c)図に上記曲げツール6T1の変形例を示す。(b)図の曲げツール6T1’は、溝1列の溝形状の曲げツール頂部6pmに代えて溝を十字状の溝形状のツール頂部6pm’とした例である。この例の曲げツール6T1’は、線材Wをコの字形で先端が鉤形に互いに向かい合っている特殊形状の製品A1を作成する際に、十字の溝を利用することにより、曲げツール6T1の回転を小さくして効率よく速く曲げ処理をすることができる。(c)図の曲げツール6T1”は、溝形状のツール頂部6pmに代えて回転ローラ6pm”を使用した例である。この例でも、曲げ加工処理を速く、効率よく処理ができる。
【0029】
図6Bの(a)、(a’)図に示す曲げツール6T2は、内軸6iの頂部にフランジ状に形成された頂板にセンター芯金6pxが内軸6iの中心で頂板の端面から突出して嵌合、連結され、このセンター芯金6pxから所定距離の偏心位置に曲げピン6pが嵌合、固定されている。従って、曲げピン6pは内軸6iの回転により回転する。また、外軸6sの上端には、上記センター芯金6pxと曲げピン6pの中心位置を通る線上で内軸中心から所定距離位置に堪えピン6pkが取付座6pzを介して取り付けられている。ただし、外軸6sは、内軸と独立に回転自在であるから、3つのピンの中心を直線状に配置した状態で示しているが、曲げ作動時には必ずしも図示の位置に固定されている訳ではない。また、非曲げ作用時には曲げツール6T2は、図示の高さ位置より下降して待機状態とされる。
【0030】
図6Bの(b)、(b’)に示す曲げツール6T3は、曲げツール6T2と同じく内軸6iの頂部にフランジ状に形成された頂板にセンター芯金6pxが内軸6iの中心で頂板の端面から突出して嵌合、連結され、このセンター芯金6pxから所定距離の偏心位置に曲げピン6pが嵌合、固定されている点も同じであるが、さらにその上端に回転ローラ6prを重ねて設けており、かつ移動パネル5p上に切断部5の線材カッタ5aに隣接して設けられたノーズヘッド6nhとの組み合わせで曲げツールが形成されている。ノーズヘッド6nhには、線材の送り方向の中心位置にガイド溝6gが形成されており、特に曲げ加工された先端長さが短い線材Wの曲げ加工をするために設けられている。
【0031】
なお、この例では曲げセンター芯金6pxを図示しているが、このツールによる曲げ加工時には使用されない。さらに、この形式の曲げツール6T3では、図示のように、センター芯金6pxの頂部は、曲げツール6T2の場合より少し下げられ、ノーズヘッド6nhの中心を通り送り出される高さ位置に対応して回転ローラ6prが位置するように形成され、ノーズヘッド6nhの先端出口がセンター芯金6pxの上にオーバーラップする位置まで張り出した位置に置かれ、この先端出口から送り出された線材Wを、回転ローラ6prをオフセット機構で横移動させることにより曲げ加工することができるように構成されている。
【0032】
上記の構成とした実施形態の線材特殊曲げ加工機は、従来の曲げ加工機では曲げ加工できなかった特殊形状の曲げ加工が可能である。この特殊曲げ加工を行う際に、図4の二点鎖線で示すように、曲げ加工部6の曲げツール6Tに対して、移動パネル5pが前後方向に所定ストローク距離S間で移動する。この移動パネル5pの移動は、前述したように、図4に示すサーボモータの出力軸をベルト、ねじ軸に伝達し、このねじ軸に螺合する駒部材の上端が移動パネル5pの裏面に固定されているため、駒部材をねじ軸で回転駆動することにより進退動が行われる。この移動パネル5pの移動は、線材Wに対する曲げ加工の形状の種類、即ち特殊曲げ加工の如何により進退動の距離、設置される位置が異なる。
【0033】
特に鈎型に向かい合う端部を有するコの字型の特殊形状の製品A1を製作する場合は、図7Aに示すように、曲げツール6T1を用い、かつ曲げられる線材Wが移動パネル5p上に設置された線材カッタ5aに当らないように、基準位置(B)(図4参照)から大きく移動、退避して、線材カッタ5aに当るのを防止して曲げ加工を可能としている。図7Aに示すように、この曲げ処理をする際には、線材Wを破線で示す最後の曲げ加工形状に加工する前に、切断部5による切断が行われた後、一点鎖線で示す位置に大きく退避する。そして、その後曲げピン6pの回転により最後の曲げが行われる。このとき、最後の曲げ処理が行われる1つ手前の曲げ処理の後に切断が行われる。
【0034】
なお、この例の曲げツール6T1によれば、センター芯金6pxの周りに曲げピン6pを回転させて押し曲げ(コンプレッションベンド)をすることもできるが、この場合は曲げ位置から延びる線材の長さがセンター芯金6pxの径より所定以上長い場合の一般的な曲げ加工の例であり、この発明の特殊曲げのような先端が短い線材のU字曲げには適さない。
【0035】
特殊曲げ加工の他の例として、図7Bの(a)図の(イ)に示すように、曲げ端部の短いU字曲げを有する特殊形状の製品A2の製作を行う場合、曲げツールを曲げツール6T2に取り替え、移動パネル5pを基準位置(B)に移動させる。そして、まず曲げツール6T2のセンター芯金6pxを、曲げ加工部6のオフセット機能により線材Wの径に相当する距離分僅かに送り方向と直角に移動させて待機させ、そのセンター芯金6pxを中心としてU曲げ加工をする。U曲げ加工を開始する前は内軸6i端の曲げピン6pを線材Wが挿通ずる点線位置に退避させ、外軸6s端の堪えピン6pkは反時計方向に回転させて線材に接する位置に移動させておき、その後図示のように曲げピン6pを、平面図上の実線位置まで時計回りに回転させることによりU曲げ加工を行い、端末の短いU曲げ部を有する製品A2を製作する。この例ではU曲げ加工は引き曲げ(ドローベンド)方式で曲げ加工が行われる。
【0036】
なお、この曲げツール6T2の例では、図(ロ)に示すように、押し曲げ(コンプレッションベンド)方式の曲げ加工を行うこともできる。この場合、センター芯金6pxは、線材Wの径の距離分センター位置を送り方向と直交方向に移動させるが、内軸6i端の曲げピン6pは、上記(イ)の場合と異なり、反時計方向に回転させて堪えピンとして線材Wに接するように設定し、外軸6s端の堪えピン6pkを曲げピンとして時計方向に回転させ、曲げ加工を行う。ただし、この加工方法は端末の長いU曲げ加工をするのに適し、このような使用方法も適用可能であることを示している。
【0037】
特殊曲げ加工のさらに別の例として、図7Bの(b)図の(イ)に示すように、曲げツール6T3により特殊形状の製品A3の製作を行うことも出来る。この場合、ノーズヘッド6nhを切断部5の前端に組み込み、内軸6iの上端のセンター芯金6pxの高さ位置を下げ、外軸6sの上端に回転ローラ6prを取り付けて組み合わせて曲げツール6T3を形成する。線材Wの中心線から回転ローラ6prを少し外側へ退避させた状態で線材Wを回転ローラ6prから先に突き出した状態に設定する。この例では、ノーズヘッド6nhの先端から突出する線材Wに対して、小さな曲げ半径とすることができる。回転ローラ6prから切断部5の線材カッタ5aまでの間の距離内にガイドがないと曲げ作用時に線材Wの途中に不要な曲げが形成されるため、ノーズヘッド6nhにガイド溝6gを設けている。このノーズヘッド6nhと回転ローラ6prによる曲げ作用は、回転ローラ6prをセンター芯金6pxに対して直交する方向にオフセット移動させて線材Wを、センター芯金6pxの送り方向と直交する方向に曲げ加工をする。これにより、線材Wの先端が短い曲げ加工が可能となり、特殊形状の製品A3を製作することができる。
【0038】
また、図7Bの(b)図の(ロ)に示すように、曲げツール6T3’では上記例のノーズヘッド6nhを備えたままで、センター芯金6pxと回転ローラ6prとの組み合わせによる特殊曲げ加工を行うこともできる。この場合、ノーズヘッド6nhは、図示のように、線材カッタ5aが曲げツール6T3’に干渉しない位置まで後退させるが、線材の曲げに対する堪え部材として作用する。そして、曲げツール6T3’を上昇させ、センター芯金6pxの周りに回転ローラ6prを回転させて特殊曲げ加工を行う。図(ハ)に上記(イ)又は(ロ)の曲げツールにより製作された製品A3の外形形状を示す。
【0039】
なお、上記3つの曲げツール6T1〜6T3により種々の特殊曲げ加工ができることを示したが、いずれの特殊曲げ加工においても線材カッタ5aが移動可能であるため、必要長さ位置で切断する際には線材Wを送り部2により矯正部1内を進退動することにより材質の劣化を生じさせる距離が短くなるため、矯正部1で線材Wに対する不要な矯正作用が付加されず、製品の材質劣化作用を最小限に抑制することができる。さらに、上記種々の特殊曲げ加工を二次元で行う以外に、加工アーム4を加工機本体3の駆動部を駆動して回転させることにより三次元加工することも可能である。
【0040】
また、上記実施形態では特殊曲げ加工のための種々の曲げツールの例を示したが、当業者であれば上記以外の図示しない種々の変形例を採用しうるが、この発明の趣旨に沿うものである限り、全てこの発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明の線材特殊曲げ加工機は、線材の曲がり癖を矯正する矯正部と、その送り部と、線材を挿通させ、かつ回転駆動する曲げ加工機本体と、その他端側に突出する加工アームで片持ち状に回転自在に支持された切断部と、曲げ加工部とを備え、切断部はその内部を挿通する線材に沿って曲げ加工部に対して移動して接近離反自在とし、曲げ加工部による曲げ加工の動作の前、又は後に線材の任意の位置で切断し、曲げ端部が向かい合う形状、線材の曲げ端部が短い、或いはU字曲げのような特殊加工形状に線材を加工可能な構成とした曲げ加工機であり、線材の曲げ加工に広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態の線材特殊曲げ加工機の全体概略外観図
【図2】同上の線材特殊曲げ加工機の平面図
【図3】同上の線材特殊曲げ加工機の切断部、曲げ加工部付近の外観斜視図
【図4】同上の線材特殊曲げ加工機の切断部、曲げ加工部付近の平面図
【図5】切断カッタの切断動作の説明図
【図6A】曲げツール6T1の形状の(a)平面図、(a’)断面図、(b)曲げツール6T1の第1変形例の平面図、(c)曲げツール6T1の第2変形例の平面図
【図6B】他の曲げツール6T2の形状の(a)部分平面図、(a’)部分断面図、(b)曲げツール6T3の平面図、(b’)断面図
【図7A】特殊曲げ加工の説明図(鈎型に向かい合う端部を有するコの字型の特殊曲げ加工)
【図7B】特殊曲げ加工の説明図(U字形曲げ加工形状、鋭角な角度の特殊曲げ加工)
【符号の説明】
【0043】
1 矯正部
1a 水平矯正部
1b 垂直矯正部
1t ターンテーブル
1r 矯正ローラ
2 送り部
2r 送りローラ
3 曲げ加工機本体
4 加工アーム
4B ケース
4T 突出アーム
5 切断部
5a 線材カッタ
5af 固定刃
5as 移動刃
5p 移動パネル
5ag リニアガイド
5am リンクアーム
5Bg 横リニアガイド
5Lg 縦リニアガイド
5b 押圧レバー
5c 駒
5pc 駒部材
5Cp 連結板
5d 移動台
5h 挿通孔
5L リンク機構
5m サーボモータ
5r ガイドレール
5u 切断ユニット
5x0 軸
5x1 軸
5x2 軸
6 曲げ加工部
6u 曲げ加工ユニット
6F オフセット機構
6E ツール昇降機構
6i 内軸
6s 外軸
6T1、6T2、6T3 曲げツール
6T1’ 曲げツール
6T1” 曲げツール
6T3’ 曲げツール
6tp ガイド板
6p 曲げピン
6pm ツール頂部
6px センター芯金
6pk 堪えピン
6pr 回転ローラ
6nh ノーズヘッド
6pz 取付座
6sd 大径部
6x 軸部
6nh ノーズヘッド
7 線材供給部
7a、7b、7c ガイド
8 表示パネル
A1、A2、A3 製品
W 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して供給される線材Wの曲がり癖を矯正する矯正部1と、線材Wを次の工程へ送る送りローラを有する送り部2と、線材Wを挿通させ、かつ内部に回転駆動部を有する曲げ加工機本体3と、その他端側に突出する加工アーム4で片持ち状に回転自在に支持された切断部5を有する切断ユニット5uと、曲げ加工部6を有する曲げ加工ユニット6uとを備えて成り、切断部5はその内部を挿通する線材Wに沿って曲げ加工部6に対して移動して接近離反自在とし、曲げ加工部6による曲げ加工の動作の前、又は後に線材Wの任意の位置で切断し、曲げ端部が向かい合う形状、線材の曲げ端部が短い、或いはU字曲げのような特殊加工形状に線材Wを加工可能にした線材特殊曲げ加工機。
【請求項2】
前記曲げ加工部6を内軸6i、外軸6sの2重軸とし、それぞれの軸を互いに回転自在に設け、内軸6iの上端に溝形状の曲げ溝6mを、外軸6sの上端に曲げピン6pをそれぞれ設けて曲げツール6Tを形成し、この曲げツール6Tにより線材Wに必要な複数個所の曲げ加工をし、かつ最終曲げ加工の1つ手前で線材Wの長さを所定長さ位置で切断後に切断部5を曲げツール6Tから、その間に線材Wが最後の曲げ処理の手前の曲げ加工で切断部5に当接するのを回避するために、未処理曲げ加工部材を受け入れるに必要な所定距離離間するように移動させ、線材Wの任意の位置に曲げツール6Tにより曲げ加工を施して曲げ端部が向かい合う製品を形成することを特徴とする請求項1に記載の線材特殊曲げ加工機。
【請求項3】
前記曲げ加工部6を内軸6i、外軸6sの2重軸とし、それぞれの軸を互いに回転自在に設け、内軸6iの上端にセンター芯金6pxと、曲げピン6pを設け、外軸6s上端に堪えピン6pkをそれぞれ設け、曲げピン6pにより線材Wの端部を引き曲げして、曲げ端部長さが短い線材Wに対して引き曲げ加工することを特徴とする請求項1に記載の線材特殊曲げ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−107001(P2009−107001A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283932(P2007−283932)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(501062925)丸昭機械株式会社 (2)
【Fターム(参考)】