説明

線状オレフィンからイソオレフィンへの異性化のためのゼオライト触媒の製造方法

【課題】改良された安定性、効率及び/又は収率を有する、線状オレフィンからその対応するメチル分枝イソオレフィンへの構造的異性化のための中孔ゼオライトを提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の前記線状オレフィンを含む炭化水素供給流を一定の範囲の温度において、
(a)(i)特定の大きさの細孔径を有する少なくとも1種の1次元細孔構造を有する少なくとも1種のゼオライトを含有するゼオライト粉末、
(ii) アルミナ含有結合剤、
(iii)水及び
(iv) 少なくとも1種のポリカルボン酸を含有する有効量の酸を混合して混合物を生成し;
(b)前記混合物から1個以上の圧縮粒子を形成し;
(c)前記粒子を一定の範囲の温度においてか焼すること、
を含む方法により製造された異性化触媒と接触させることを含有する、少なくとも4個の炭素原子を有する線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンへ構造的に異性化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線状オレフィンからメチル分枝イソオレフィンへの異性化のための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオクタンブースタ(booster)及び補助燃料のような、低級脂肪族アルキルエーテルをブレンドした高オクタンガソリンの増大する需要は、イソアルキルエーテル、特に、例えばメチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル及びt−アミルエチルエーテルのような、C−Cメチル、エチル及びイソプロピル−t−アルキルエーテルの有意な需要を生じている。したがって、例えばイソブテン、イソアミレン及びイソヘキセンのような、対応イソオレフィン出発物質の需要も増大している。
【0003】
イソオレフィンを得るには、オレフィン又はアルケン(例えば、n−ブテン)を、例えば構造異性化のような機構によって、メチル分枝アルケン(例えば、イソブチレン)に転化させることが望ましい。このような転化イソオレフィンを次に例えば重合、エーテル化又は酸化によって、さらに反応させて、有用な生成物を形成することができる。炭素数4のn−オレフィン(1−ブテン、トランス−2−ブテン及びシス−2−ブテン)と、炭素数5のn−オレフィン(1−ペンテン、トランス−2−ペンテン及びシス−2−ペンテン)とは比較的安価な出発化合物である。軽度にイソブチレン及びイソアミレンを含む、ブテン及びアミレンは通常、例えば接触クラッキング及び熱クラッキング装置のような、製油所及び石油化学プロセスからの副生成物として得られる。ブテンは通常、ブタジエンから選択的水素化を介しても得られる。
【0004】
ゼオライト物質(天然と合成の両方)は多くの炭化水素プロセスに対する触媒性質を有することが知られる。ゼオライトは典型的に、チャンネルによって相互連絡したキャビティを含む、明確な構造を有する規則的な多孔質結晶性アルミノシリケートである。結晶性物質中の空隙とチャンネルは一般に、炭化水素の選択的な分離を可能にするような大きさであることができる。結晶性アルミノシリケートによる、このような炭化水素分離は、分子大きさの間の相違に本質的に依存する。その結果、これらの物質は当該技術分野で“モレキュラーシーブ”として知られ、触媒的性質の他に、ある一定の選択的吸着プロセスに用いられる。ゼオライトモレキュラーシーブはD.W.Breck,ゼオライト モレキュラーシーブ,Robert,E.Krieger Publishing Company,フロリダ州,マラバール(1984)に非常に詳細に考察されている。
【0005】
一般に、“ゼオライト”なる用語は、天然及び合成の両方の、非常に多様な正イオン含有結晶性アルミノシリケート物質(モレキュラーシーブを含む)を包含する。これらは一般に、ケイ素原子とアルミニウム原子とが酸素原子を共有することによって三次元骨組で架橋されるSiOとAlOの四面体のネットワークを含む結晶性アルミノシリケートとして特徴づけられる。この骨組構造は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、水素、マグネシウム、カルシウム及び水分子によって占められる、キャビティとチャンネル又は相互連絡した空隙とを含む。この水は例えば加熱によるように、可逆的に除去されて、触媒活性のために有効な結晶性ホスト(host)構造を残すことができる。本明細書で用いるかぎり、“ゼオライト”なる用語は結晶性アルミノシリケートに限定されない。本明細書で用いるかぎり、この用語はシリコアルミノホスフェート(SAPO)、金属組込み(metal integrated)アルミノホスフェート(MeAPOとELAPO)及び金属組込みシリコアルミノホスフェート(MeAPSOとELAPSO)をも含む。MeAPO、MeAPSO、ELAPO及びELAPSO類はそれらの骨組に含まれた付加的な元素を有する。例えば、Meは元素、Co、Fe、Mg、Mn又はZnを表し、ELは元素、Li、Be、Ga、As又はTiを表す。代替え定義は、本発明に有用な物質を包含する“ゼオライト型モレキュラーシーブ”である。
【0006】
当該技術分野の発達は多くの合成ゼオライト結晶性物質の形成を生じている。結晶性アルミノシリケートは最も一般に用いられており、文字又は他の便利な記号によって表示される。固有に名付けられ、述べられている種々なゼオライトはゼオライトA(米国特許A第2,882,243号)、ゼオライトX(米国特許A第2,882,244号)、ゼオライトY(米国特許A第3,130,007号)、ゼオライトZSM−5(米国特許A第3,702,886号)、ゼオライトZSM−11(米国特許A第3,709,979号)、ゼオライトZSM−12(米国特許A第3,832,449号)、ゼオライトZSM−23(米国特許A第4,076,842号)、ゼオライトZSM−35(米国特許A第4,016,245号と米国特許第5,190,736号)、ゼオライトZSM−48(米国特許A第4,375,573号)、ゼオライトNU−1(米国特許第4,060,590号)等である。フェリエライトの水素形を含む種々なフェリエライトゼオライトが米国特許A第3,933,974号、第4,000,248号及び第4,942,027号と、これらに引用された特許に述べられている。SAPO型触媒は米国特許A第4,440,871号に述べられている。MeAPO型触媒は米国特許A第4,544,143号と第4,562,029号に述べられており;ELAPO型触媒は米国特許A第4,500,651号に述べられており;ELAPSO型触媒はヨーロッパ特許出願第159,624号に述べられている。
【0007】
2種類の一般的な触媒が、線状オレフィンを対応メチル分枝イソオレフィンに異性化するために、特に有用であると開示されている。これらは多孔質非結晶質耐火性酸化物ベース触媒とゼオライトベース触媒とを含む。
【0008】
多孔質非結晶質耐火性酸化物触媒の具体例は、米国特許A第4,434,315号、第5,043,523号、第3,531,542号、第3,381,052号、第3,444,096号、第4,038,337号、第3,663,453号、英国特許A第2,060,424号、及びV.R.ChoudharyとL.K.Doraiswamy,「n−ブテンからイソブテンへの異性化、I.グループスクリーニングによる触媒の選択」,Journal of Catalysis,23巻,54〜60頁,1971に開示される例である。これらの触媒の全ては迅速に不活化する。英国特許A第2,060,424号における例によると、ラン寿命(run life)は1〜2時間程度に短い可能性がある。しばしば、触媒のラン寿命を長くするために、水蒸気及びハロゲン化合物を加えることが必要である。ドイツ特許A第3,000,650号は、これらの方法によって触媒ラン寿命を約50時間に高めることができると述べているが、これでもまだ望ましいラン寿命より短い。
【0009】
ゼオライトベース触媒に関して、最も有意な使用は大孔(large pore)ゼオライト又は二次元以上の相互連絡チャンネルを有するゼオライトに関係している。これらの物質は、米国特許A第4,503,282号、第5,227,569号、第4,435,311号及び第4,392,003号に例示されている。
【0010】
さらに最近では、ヨーロッパ特許出願第523,838号は、触媒として、孔構造内での副生成物ダイマー化とコークス形成とを遅延させるほど小さく、線状オレフィンの侵入とメチル分枝イソオレフィンの形成とを可能にするほど大きい孔サイズを有する1つ以上の一次元孔構造を含むゼオライト(すなわち、メジウム又は中孔ゼオライト)を用いる線状オレフィンからその対応するメチル分枝イソオレフィンへの構造的異性化方法を開示している。これらの触媒は、微粉状結晶性ゼオライトと結合剤物質とをブレンドし、ブレンド(blended)混合物を水及び酢酸を添加して混練することによって形成することができる。得られる混合物を次に造形し、乾燥させ、か焼して、触媒組成物を形成する。
【0011】
しかし、効率又は所望のイソオレフィンの総収量を高めるためにより大きく活性でかつ安定な触媒組成物を得ることが望ましい。このような増強は、オレフィン異性化プロセスに用いる触媒の連続使用長さの延長、高い選択性及び/又は高い活性によって得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故、改良された安定性、効率及び/又は収率を有する、線状オレフィンからその対応するメチル分枝イソオレフィンへの構造的異性化のための中孔ゼオライトを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、少なくとも炭素数4の線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンに構造的に異性化するための触媒の製造方法を提供する。この方法は、次の工程:
(a)(i)孔構造内での副生成物ダイマー化とコークス形成とを遅延させるほど小さく、線状オレフィンの侵入とメチル分枝イソオレフィンの形成とを可能にするほど大きい孔サイズを有する1つ以上の一次元孔構造を含む、少なくとも1種のゼオライトを含むゼオライト粉末と、(ii)一般的なアルミナ含有粉末と、(iii)水と、(iv)少なくとも1種のモノカルボン酸又は無機酸と、(v)少なくとも2個のカルボン酸基を有する、少なくとも1種の有機酸とを混合して、混合物を形成する工程と;
(b)前記混合物のペレットを成形する工程と;
(c)前記ペレットを約200℃〜約700℃の温度においてか焼する工程とを含む。
【発明の効果】
【0014】
【発明の実施するための最良の形態】
【0015】
微粉状結晶性ゼオライトと結合剤物質とをブレンドし、ブレンド済み混合物に通常の解膠性(peptizing)モノカルボン酸又は無機酸と、少なくとも2個のカルボン酸基を有する促進性有機酸とを完全に混合して、触媒組成物を製造することによって、得られる触媒組成物が、成形及びか焼後に、線状オレフィンをイソオレフィンに構造的に異性化するために優れた活性、選択性及び連続使用長さを有することが判明している。触媒の製造に2種類の酸の組合せを用いることによって、一層活性で安定である触媒組成物が得られる。
【0016】
触媒
この方法に用いる異性化触媒は以下で定義するゼオライトと結合剤とを含む。 本発明の異性化触媒に用いるゼオライトは、典型的に約0.42nmより大きく、約0.7nmより小さい孔サイズを有する一次元孔構造を含む。この指定孔サイズは典型的にメジウム又は中孔ゼオライトと呼ばれ、典型的に一次元において10員(又はパッカード(puckered)12員)環チャンネル構造を有し、他の次元(有るとすれば)では9員以下(小孔)を有する。本発明のために、一次元孔構造は、好ましい孔サイズを有するチャンネルが同様な又はそれ以上の次元の他のチャンネルと相互連絡しない孔構造と考えられる;或いは、チャンネル孔構造(米国特許A第3,864,283号を参照)又は単方向シーブとも考えられる。 ゼオライト触媒は好ましくは、一次元に指定孔サイズを有する実質的に唯一のゼオライトを含む。0.7nmを越える孔サイズを有するゼオライトは好ましくない着香(aromatization)、オリゴマー化、アルキル化、コークス化及び副生成物形成を被り易い。さらに、二次元以上で0.42nmより大きい孔サイズを有する二次元又は三次元ゼオライトはアルケンのダイマー化又はトリマー化を可能にする。このため、任意の次元において約0.7nmより大きい孔直径を有するゼオライト、又は次元の任意の2つが約0.42nmを越える孔サイズを有する二次元又は三次元孔サイズを有するゼオライトは一般に排除される。小孔(約0.42nm未満)のみを含むゼオライトはメチル分枝イソオレフィン生成物の拡散を可能にしない。
【0017】
約0.42nm〜0.7nmの孔サイズを有する一次元孔構造を含む、本発明の方法に使用可能であるゼオライトの例は、フェリエライトの水素形、AlPO−31、SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、FU−9、NU−10、NU−23、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−50、ZSM−57、MeAPO−11、MeAPO−31、MeAPO−41、MeAPSO−11、MeAPSO−31、MeAPSO−41、MeAPSO−46、ELAPO−11、ELAPO−31、ELAPO−41、ELAPSO−11、ELAPSO−31、ELAPSO−41、ローモンタイト(laumontite)、カンクリナイト(cancrinite)、オフレタイト(offretite)、スチルバイト(stilbite)の水素形、モルデナイト及びパルサイト(partheite)のマグネシウム形又はカルシウム形を含む。他の名称で知られる、これらの骨組の同形(isotypic)構造は等価であると考えられる。これらのゼオライトの多くの骨組組成物を述べる概要は、ゼオライト サイエンス テクノロジーの新しい開発,「アルミノホスフェート モレキュラーシーブと周期律表」,Flanigen等(講談社,日本,東京,1986年1月)に与えられる。
【0018】
例えば、フェリエライト、ヒューランダイト及びスチルバイトのような、多くの天然ゼオライトは約0.42nm又はこれよりやや小さい孔サイズを有する一次元孔構造を特徴とする。これらの同じゼオライトは、例えばアンモニウムイオン交換のような、技術上周知の方法によって付随するアルカリ金属又はアルカリ土類金属を除去し、その後に、任意にか焼することによって、所望の大きい孔サイズを有するゼオライトに転化させて、実質的にその水素形のゼオライトを得ることができる、例えば米国特許A第4,795,623号及び第4,942,027号を参照のこと。付随するアルカリ金属又はアルカリ土類金属を水素形と置換すると、孔直径は対応して拡大される。本明細書で用いるかぎり、孔直径又は“サイズ”は拡散のために有効な孔直径又はサイズを意味する。或いは、例えばモルデナイトのような、大きすぎる孔サイズを有する天然ゼオライトは、アルカリ金属を例えば大きいアルカリ土類金属のような大きいイオンと置換することによって、孔サイズを減ずるように変えることができる。
【0019】
特に好ましいゼオライトはフェリエライト同形骨組構造(又はホモタイプ(homotypic))を有するゼオライトである。W.M.MeierとD.H.Olsonによる,ゼオライト構造タイプのアトラス,Butterworth−Heinemannによって発行,第3改訂版,1992,98頁を参照のこと。X線結晶学によって判明したフェリエライトの主要な構造特徴は、横断面において大体楕円形であるアルミノシリケート骨組中の平行チャンネルである。フェリエライト同形骨組構造を有するこのようなゼオライトの例は、天然又は合成のフェリエライト(斜方晶系又は単斜晶系)、Sr−D、FU−9(ヨーロッパ特許B第55,529号)、ISI−6(米国特許A第4,578,259号)、NU−23(ヨーロッパ特許A第103,981号)、ZSM−35(米国特許A第4,016,245号)及びZSM−38(米国特許A第4,375,573号)を含む。フェリエライトのH形(H−フェリエライト)は最も好ましいゼオライトであり、線状オレフィンの侵入とメチル分枝イソオレフィンの拡散とを可能にするほど大きく、コークス形成を遅延させるほど小さい楕円形状孔サイズ(<0.54nmかつ>0.42nm)を有する一次元構造から実質的に構成されると考えられる。種々なH−フェリエライトの製造方法は米国特許A第4,251,499号、第4,795,623号及び第4,942,027号に述べられている。 本発明の方法に有用ではないゼオライトの具体例は、ZSM−5、ZSM−20、べーた(Beta)、エリオナイト(erionite)、ゼオライトY、モルデナイトのH形、及びフォージャサイトを含む。
【0020】
本発明に用いるゼオライトは、結合剤として役立つ耐火性酸化物と組合せられる。適当な耐火性酸化物には、例えばベントナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト及びカオリンのような天然粘土;アルミナ;シリカ;シリカーアルミナ;水和アルミナ;チタニア;ジルコニア;及びこれらの混合物がある。ゼオライト対結合剤物質の重量比は適切には約60:40から約99.5:0.5まで、より好ましくは約80:20から約98:2まで、最も好ましくは約85:15から約95:5までの範囲(無水基準)である。好ましくは、結合剤はアルミナである。
【0021】
触媒の製造に有用な結合剤は触媒の製造のために技術上周知の任意の慣習的なアルミナ含有結合剤でよく、例えば、アルミナ、シリカーアルミナ及び粘土を含む。本発明のために、“アルミナ含有結合剤”は、か焼時にアルミナ(Al)に転化される、例えばバイヤライト、ベーマイト及びジブサイトのような、アルミナの水和形を含めたアルミナ先駆物質のいずれをも含む。好ましいシリカーアルミナは、例えばアルミノシリケートゲル及びゾルのような非晶質シリカーアルミナである。適当な粘土の非限定的例は、ベントナイト、ヘクトライト、カオリン及びアタパルジャイトを含む。結合剤は例えば粉末、スラリー、ゲル又はゾルのような、任意の慣習的形状で提供される。結合剤がスラリー、ゲル又はゾルとして提供される場合には、混練工程に用いられる水の少なくとも一部はスラリー、ゲル又はゾルの一部として見い出される。
【0022】
好ましい結合剤は例えばシュードベーマイトと、γ−アルミナと、バイヤライトアルミナとを含む。これらの結合剤は容易に商業的に入手可能である。LaRoche Chemicalsは、そのVERSAL(登録商標)アルミナファミナリーを通して、またVista Chemical Companyは、そのCATAPAL(登録商標)アルミナを通して、本発明の触媒の製造に結合剤として使用可能である、適当なアルミナ粉末を提供する。触媒の製造に使用すべき好ましいアルミナ結合剤は、特に押出成形を用いる場合に、高分散性アルミナ粉末である。このような高分散性アルミナ粉末(例えば、CATAPAL D)は一般に、Al 1gにつき0.4mg当量(equivalent)の酸(酢酸)の酸含量を有する酸水性分散液中50%を越える分散度を有する。
【0023】
少なくとも1種類のモノカルボン酸又は無機酸と、少なくとも2個のカルボン酸基を有する少なくとも1種類の有機酸(“ポリカルボン酸”)とを触媒の製造に用いる。好ましいモノカルボン酸は、脂肪族、環式又は芳香族のいずれでもよく、炭素数1〜20の置換(例えばヒドロキシル置換)ヒドロカルビル基又は非置換ヒドロカルビル基を有するモノカルボン酸を含む。好ましいモノカルボン酸は酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシル酪酸、ヒドロキシシクロペンタン酸、サリチル酸、マンデル酸、安息香酸、及び他の脂肪酸を含む。好ましい無機酸は例えば硝酸、リン酸、硫酸及び塩酸を含む。好ましい第1酸は酢酸、ギ酸、グリコール酸又は硝酸である。
【0024】
好ましいポリカルボン酸は、炭素−炭素結合を介してヒドロカルビルセグメント(segment)に結合した2個以上、例えば3個のカルボン酸基を有する有機酸である。この結合はヒドロカルビルセグメントの任意の部分に存在することができる。ポリカルボン酸は、脂肪族、環式又は芳香族のいずれでもよく、好ましくは炭素数0〜10のヒドロカルビルセグメントを有する。ヒドロカルビルセグメントは炭素−炭素結合を介して結合した2個のカルボン酸基を有する蓚酸では炭素数0を有する。このようなポリカルボン酸の例は酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、アジピン酸、マロン酸、ガラクタル酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、テレフタル酸、フェニルマロン酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフマル酸、トリカルバリル酸(tricarballylic acid)、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、イソクエン酸、粘液酸、及びグルカル酸を含む。ポリカルボン酸は上記酸の任意の異性体又は上記酸の任意の立体異性体であることができる。少なくとも2個のカルボン酸基と少なくとも1個のヒドロキシル基とを有するポリカルボン酸がより好ましい。最も好ましいポリカルボン酸はクエン酸、酒石酸及びリンゴ酸である。
【0025】
容器又はコンテナー内で、本明細書で定義する少なくとも1種類のゼオライトと、結合剤と、水と、少なくとも1種類のモノカルボン酸又は無機酸と、少なくとも1種類のポリカルボン酸とを混合し、混合した混合物のペレットを形成し、ペレットを高温においてか焼することによって、触媒を製造することができる。好ましい1実施態様では、ゼオライト粉末及びアルミナ含有粉末を水と、1種類以上のモノカルボン酸又は無機酸(第1酸)と、1種類以上のポリカルボン酸(第2酸)と混合し、得られる混合物(ペースト)をペレットに成形する。ペレットを押出成形によって形成することが好ましいが、ダイ又は型に押し入れることによって静水圧的に又は機械的に圧縮して、触媒的に有用な形状に成形することもできる。押出成形を用いる場合には、例えばセルロース誘導体(例えば、METHOCEL(登録商標)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース)のような、任意の押出成形助剤を用いることができる。本明細書で用いる“ペレット”なる用語は、物質が固められるかぎり、任意の形状又は形であることができる。形成されたペレットを約200℃から、好ましくは約300℃から、より好ましくは約450℃からの下限から、約700℃まで、好ましくは約600℃まで、さらに好ましくは約525℃までの上限までの温度においてか焼する。
【0026】
第1酸対第2酸の比は好ましくは約1:60から約60:1まで、より好ましくは1:10から約10:1までの範囲である。第1酸の使用量は混合物を解膠させるために有効であるべきである。第1酸の使用量はゼオライトとアルミナ含有結合剤との複合重量に基づいて(無水固体基準)好ましくは約0.1重量%〜約6重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約4重量%である。Vista catapal Dよりも低い分散度を有するアルミナは、それらを解膠させるためにより多量の酸を必要とする。第2酸の使用量は触媒の触媒活性を促進するために有効であるべきであり、ゼオライトとアルミナ含有結合剤との複合重量に基づいて(無水固体基準)好ましくは約0.1重量%〜約6重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約4重量%である。
【0027】
混合物は、混合物が均質な外観を示すまで、完全に又は激しく混合すべきである。混合は混合物の成分の全てを一度に一緒にすることによって、又は混合物の成分を異なる混合段階で加えることによって実施することができる。濃厚なペーストを形成するために充分な水を加えた粉末の混練すなわち混合によって、混合を達成することができ、ペーストの剪断によって混合が達成される。例えば、Lancaster Mix Muller及びSimpson Mix Mullerのような、商業的に入手可能なマラー(muller)を用いて、混合を実施することができる。例えばリボンブレンダー及び/又はパウダーミル(powder mill)のような、商業的ブレンダーを用いて、混合を実施することもできる。
【0028】
炭化水素供給流
本発明に有用な炭化水素供給材料は、少なくとも炭素数4、好ましくは炭素数4〜10の少なくとも1種類の線状オレフィンを含む。また、本発明のために考えられる線状オレフィンは炭素数4〜10の線状アルケンセグメントを含む化合物である。長鎖線状アルケンと、長鎖線状アルケンセグメントを含む化合物とが異性化を可能にするために有効な距離にわたってゼオライト触媒に浸透することができると考えられる。したがって、分子全体が触媒の孔構造内に完全に嵌合するほど小さい必要はない。好ましい供給材料はブチレン及び/又はアミレンを含む。
【0029】
本明細書で用いるかぎり、n−ブチレンはあらゆる形のn−ブチレン、例えば1−ブテン及び2−ブテン(トランス−2−ブテン若しくはシス−2−ブテン)、又はこれらの混合物を含む。本明細書で用いるかぎり、n−アミレン又はn−ペンテンは1−ペンテン、シスー若しくはトランスー2−ペンテン、又はこれらの混合物を含む。本発明の方法に用いられるn−ブチレン又はn−アミレンは一般に例えば他の炭化水素のような、他の物質の存在下で用いられる。したがって、本発明の方法に用いられるn−ブチレン又はn−アミレンを含む供給流は、例えばアルカンのような炭化水素、他のオレフィン、例えばブタジエンのようなジオレフィン、芳香族、水素及び不活性ガスをも含むことができる。典型的には、本発明に用いられるn−ブテン供給流は約10〜約100重量%のn−ブテンを含む。例えば、流体接触クラッキング流出流(effluent stream)からの分別炭化水素供給流は、一般に約20〜約60重量%のn−ブテンを含み、例えばメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)のような、エーテル処理ユニット(processing unit)からの炭化水素流出流(effluent)は一般に40〜約100重量%のn−ブチレンを含む。水蒸気クラッカー及び触媒クラッカーからの供給流は実質的な量(すなわち、約80重量%まで)のアルカンを含むこともできる。例えばブタジエンのような、ジエンの選択的水素化によって得られるオレフィンも使用可能である。
【0030】
本明細書で用いるかぎり“オレフィン”なる用語は代替え的に“アルケン”と呼ぶこともできる;“線状”なる用語は代替え的に“直鎖(normal)”と呼ぶこともできる;“イソオレフィン”なる用語は代替え的に“メチル分枝イソオレフィン”と呼ぶこともできる。同様に、ブテンとブチレンは同じ炭素数4オレフィンを意味し;ペンテンとアミレンは同じ炭素数5オレフィンを意味する。
【0031】
異性化条件
本発明の方法では、少なくとも1種類の線状オレフィンを含む炭化水素流を触媒ゼオライトと異性化条件下で接触させる。一般に、炭化水素流を蒸気相において上記ゼオライト触媒と、適当な反応温度、圧力及び空間速度で接触させる。一般に、適当な反応条件は約200℃〜約650℃、好ましくは約320℃〜約600℃の温度、約0.5気圧を越えるオレフィン分圧、及び約0.5〜約10.0気圧以上の全体圧、0から約30以上までの水素/炭化水素モル比(すなわち、水素の存在は任意である)、実質的に水分を含まない(すなわち、供給材料の約2.0重量%未満)、並びに約0.5〜約100時−1の炭化水素重量毎時空間速度(WHSV)を含む。これらの反応器流は例えばアルカンのような非反応性希釈剤を含むことができる。異性化帯に導入する前の供給流に、水素を直接加えることができる、又は異性化帯に直接、水素を加えることができる。
【0032】
好ましい反応温度は例えば圧力、重量毎時空間速度及び供給材料の組成のような、幾つかの要素に依存する。例えばブテンのような低分子量オレフィンは約200℃〜650℃の温度において最も良く異性化され、高分子量オレフィンはこれより低い温度において最も良く異性化される。ペンテンは約200℃〜550℃の温度において最も良く異性化され、ヘキサンは約200℃〜500℃の温度において最も良く異性化される。ブテンとペンテンとの混合物は約200℃〜600℃の温度において最も良く異性化され、ペンテンとヘキサンとの混合物は約200℃〜525℃の温度において最も良く異性化される。オレフィンが高温では好ましくない軽量種にクラッキングされ易い場合に、低温の使用は有利である。低温では分枝オレフィンの高い平衡濃度が可能であると言う事実のために、低温では所望の生成物の高濃度に達することもできる。
【0033】
典型的なブテン異性化プロセススキームでは、ブテン蒸気流をこのような触媒と、反応器内で約320℃〜約650℃の温度、約5psia〜約50psiaのオレフィン分圧、約15〜約100psiaの全体圧、及び約0.5〜約50時−1のオレフィン基準(olefin based)WHSVにおいて接触させる。好ましい異性化条件は約320℃〜約450℃の温度、大気圧及び約2〜約25時−1、より好ましくは約2〜約15時−1のオレフィン基準WHSVにおいて実施される。
【0034】
典型的なペンテン異性化プロセススキームでは、ペンテン蒸気流をこのような触媒と、反応器内で約250℃〜約550℃の温度、約3psia〜約100psiaのオレフィン分圧、約15〜約100psiaの全体圧、及び約1〜約100時−1のオレフィン基準WHSVにおいて接触させる。好ましい異性化条件は約300℃〜約425℃の温度、大気圧及び約2〜約40時−1のオレフィン基準WHSVにおいて実施される。
【0035】
混合供給流に関しては、ペンテン異性化プロセスとブテン異性化プロセスとの間の反応条件を、所望の生成物ミックスに依存して、用いることができる。
【0036】
本発明の方法は、孔構造内での副生成物ダイマー化とコークス形成とを遅延させるほど小さく、線状オレフィンの侵入とメチル分枝イソオレフィンの形成とを可能にするほど大きい孔サイズを有する1つ以上の一次元孔構造を含むゼオライトの組合せを用いることができる。これらの組合せは混合ゼオライトのペレットと、例えばフェリエライト上のZSM−22及び/又はZSM−23、ZSm−22及び/又はZSM−23上のフェリエライト、及びZSM−23上のZSM−22のような、触媒の堆積床(stacked bed)配置を含むことができる。堆積触媒は同じ形状及び/又はサイズ、又は例えば1/32インチ円筒形上の1/8インチ トリローブ(trilobes)のような、異なる形状及び/又はサイズであることもできる。
【0037】
特に好ましい実施態様では、少なくとも炭素数4の線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンに構造的に異性化する方法であって、約200℃〜約650℃の温度において、少なくとも1種類の前記線状オレフィンを含む炭化水素供給流を、下記工程:
(a)(i)孔構造内での副生成物ダイマー化とコークス形成とを遅延させるほど小さく、線状オレフィンの侵入とメチル分枝イソオレフィンの形成とを可能にするほど大きい孔サイズを有する1つ以上の一次元孔構造を含む、少なくとも1種のゼオライトを含むゼオライト粉末と、
(ii)アルミナ含有結合剤と、
(iii)水と、
(iv)ゼオライト粉末、結合剤又はこれらの混合物を解膠させるための有効量の、少なくとも1種のポリカルボン酸を含む酸とを混合して、混合物を製造する工程と;
(b)前記混合物のペレットを形成する工程と;
(c)前記ペレットを約200℃〜約700℃の温度においてか焼する工程とを含む方法によって製造される異性化触媒と接触させることを含む方法を提供する。好ましくは、ポリカルボン酸は、(i)と(ii)とに基づいて約0.1重量%〜約6重量%の量で存在する。さらに好ましくは、酸は成分(1)1種類以上のモノカルボン酸又は無機酸と、成分(2)1種類以上のポリカルボン酸とを含む。
【0038】
再生
プロセス中に、触媒の表面上に若干のコークスが形成される。コークスが付着する触媒表面は、触媒の外面上及び/又は、内部チャンネル及び/又は孔の内面上であることができる。それ故、30重量%のコークスが付着するときに(非コークス化触媒基準)、触媒を再生することが有利である。
【0039】
触媒上のコークス付着が再生が必要であるような点に達する場合に、触媒への炭化水素供給流を停止し、触媒上の剥離可能な炭化水素を高温ガス(例えば、窒素及び/又は水素)でストリッピングし、次に、触媒を酸素含有ガスによる熱処理にさらして再生する。ストリッピングは高圧において、真空下で、又は加圧と減圧によって反応器を循環することによって実施することができる。
【0040】
再生は、コークス付着触媒の表面上のコークスを実質的に焼き取ることによって実施する。
【0041】
異性化及び/又は再生プロセスは充填床反応器、固定床、流動床反応器又は移動床反応器で実施することができる。触媒床は上方又は下方に移動することができる。異性化プロセスと再生プロセスとは同じ床でも異なる床でも実施することができる。
【実施例】
【0042】
本発明をさらに説明するために、下記具体的実施態様を提供する。
【0043】
触媒の調製
下記実施例は触媒の製造方法を説明する。62:1のシリカ対アルミナ モル比と、369m/gの表面積(P/Po=0.03)と、480ppmのソーダ含量と、7.3g/100gゼオライトのn−ヘキサン収着容量とを有するアンモニウム−フェリエライトを出発ゼオライトとして用いた。
【0044】
触媒成分をLancaster ミックスマラーを用いて混練した。混練した触媒材料を1インチ又は2.25インチBonnetピンバレル押出機を用いて押出成形した。
【0045】
用いた結合剤はCATAPAL(登録商標)Dアルミナであり、METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロースを押出成形助剤として用いた。酸はAldrich Chemical Companyから入手した。
【0046】
触媒A
触媒Aは比較例として、触媒製造に1重量%の酢酸を用いて、ポリカルボン酸を用いずに製造した。
【0047】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(強熱減量“LOI”3.4%)632gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 26.2%)92gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水156mlを加えた。アルミナを解膠させるために、氷酢酸6.8gと脱イオン水156mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混合−混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水156g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.20gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース10gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を2.25インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0048】
触媒B
触媒Bは比較例として、触媒製造に2重量%の酢酸を用いて、ポリカルボン酸を用いずに製造した。
【0049】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(LOI5.4%)64.5gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 25.7%)9.1gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水15mlを加えた。アルミナを解膠させるために、氷酢酸1.4gと脱イオン水15mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混合−混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水15g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.02gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を1.0インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0050】
触媒C
この実施例は親出願の発明の製造法を説明する。触媒Cは1重量%酢酸と1重量%クエン酸とを用いて製造した。
【0051】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(LOI5.4%)645gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 25.7%)91gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水152mlを加えた。アルミナを解膠させるために、氷酢酸6.8gと、クエン酸7.0gと、脱イオン水152mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水153g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.20gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース10gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を2.25インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0052】
触媒D
触媒Dは本発明として、2重量%クエン酸を用いて、触媒製造にモノカルボン酸又は無機酸を用いずに製造した。
【0053】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(LOI5.4%)645gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 25.7%)91gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水155mlを加えた。アルミナを解膠させるために、クエン酸14.0gと脱イオン水154mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混合−混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水155g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.20gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース10gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を2.25インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0054】
触媒E
この実施例は1重量%酢酸と1重量%グリコール酸とを用いる触媒製造を説明する。
【0055】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(LOI14.9%)598gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 25.7%)76gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水107mlを加えた。アルミナを解膠させるために、氷酢酸5.7gと、グリコール酸5.7gと、脱イオン水107mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水107g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.167gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース10gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を2.25インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0056】
触媒F
この実施例は本発明の製造法を説明する。触媒Fは1重量%酢酸と1重量%酒石酸とを用いて製造した。
【0057】
Lancasterミックスマラーにアンモニウムーフェリエライト(LOI14.9%)598gと、CATAPAL(登録商標)Dアルミナ(LOI 25.7%)76gとを負荷した。アルミナにフェリエライトを5分間ブレンドし、この間に脱イオン水107mlを加えた。アルミナを解膠させるために、氷酢酸5.7gと、D,L−酒石酸5.7gと、脱イオン水107mlとの混合物を徐々にマラーに加えた。混合物を10分間、混合−混練した。混合物をさらに5分間混練しながら、脱イオン水107g中の硝酸パラジウムテトラアミン0.167gを徐々に加えた。METHOCEL(登録商標)(R)F4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース10gを加え、ゼオライト/アルミナ混合物をさらに15分間混練した。この押出成形混合物は43.5%のLOIを有した。90:10のゼオライト/アルミナ混合物を2.25インチBonnet押出機に移して、1/16”孔を含むステンレス鋼ダイプレートを用いて押し出した。
【0058】
押出物乾燥とか焼
上記の湿った押出物の全て(触媒A〜F)を125℃において16時間乾燥させた。乾燥後に、押出物を手でロング破砕した(longsbroken)。押出物を流動空気中で200℃において2時間か焼し、500℃の最大温度において2時間か焼した。押出物を窒素充填デシケータ中で冷却してから、反応器に装入した。
【0059】
試験方法
異性化
反応器として、ステンレス鋼管(1インチOD、0.6インチID及び26インチ長さ)を用いた。サーモウェルは管の頂部から20インチに達した。この反応器に負荷するために、管を最初、逆にし、グラスウールの小プラグを反応管のサーモウェル上に、管の底に達するまですべり入れた。炭化ケイ素(20メッシュ)を約6インチの深さまで加えた。グラスウールの小プラグはこの上に置かれた。約60gの新鮮な炭化ケイ素(60〜80メッシュ)と混合した、約4gの触媒粒子(6〜20メッシュ)を2回に分けて加えて、触媒を一様に分配した。触媒床は典型的に約10インチ長さであった。グラスウールの他のピース(piece)を触媒の頂部に加え、反応器を20メッシュ触媒で覆い、その後にグラスウールの最終プラグを施した。マルチポイント(multipoint)熱電対をサーモウェル中に挿入し、触媒床中の異なる3箇所の上方、下方及びこれらの3箇所の位置における温度を監視することができるように、配置した。反応器を逆にして、炉を装備した。
【0060】
用いた供給材料は99.2重量%より大きい1−ブテン含量を有する、Scott Specialty Gasesから得られた1−ブテンであった。1−ブテンを反応器に気相として供給した。
【0061】
反応器を始動させるために、反応器を最初に所望の操作温度にまで4時間かけて加熱し、この操作温度に2時間維持し、これらの全ては流動窒素下で実施した。この前処理後に、窒素流を遮断し、1−ブテンを36g/時の供給速度、9.0時−1の重量毎時空間速度を与えるような速度で加えた。反応器は3psigの出口圧力と、430℃の温度とにおいて操作した。
【0062】
計算
試験ラン中の各サンプルに関して、転化率と選択度とを算出する。それ故、転化率と選択度とはブテン−1(B1)と、ブテン−2(B2)と、イソブチレン(IB1)との供給材料(FD)濃度と流出流(EFF)濃度とを表す。転化率は次のように算出する:
転化率%=[{(B1重量%+B2重量%)FD-(B1重量%+B2重量%)EFF}/(B1重量%+B2重量%)FD]x100
選択度は次のように算出する:
選択度%=[{(IB1重量%)EFF-(IB1重量%)FD}/{(B1重量%+B2重量%)FD-(B1重量%+B2重量%)EFF}]
x100
収率は次のように算出する:
収率%=[{(IB1重量%)EFF-(IB1重量%)FD}/(B1重量%+B2重量%)FD]x100
表1は、上記のように製造した種々な触媒の試験結果を示す。この表は異性化プロセスにおける触媒のラン寿命(run life)の時間を提供する。”ラン寿命”は本明細書ではラン開始から、生成物中のメチル分枝イソオレフィン濃度がそのピークに達した後に33重量%に低下する時までの時間として定義する。この表は40%転化率、45%転化率及び50%転化率における触媒の選択度と、試験中の生成物中のメチル分枝イソオレフィン(イソブチレン)の最高濃度(重量%)とを提供する。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から知ることができるように、触媒製造に酢酸とクエン酸との両方を用いた触媒(触媒C)は、酢酸のみを用いた触媒(触媒AとB)によって得られるよりも約3時間長いラン長さを示した。触媒Cがクエン酸のみを用いた触媒(触媒D)よりも有意に長いラン長さと高いイソブチレン収率(すなわち、生成物中高いイソブチレン濃度)とを示すことも知ることができる。さらに、触媒Cに関する測定転化率レベルにおけるイソブチレンへの選択度は、触媒AとBに比べた場合に高いことが判明した。例えば、触媒Cは40%転化率において、触媒AとBによって得られた80〜83%に比べて、88%のイソブチレンへの選択度を示した。例えば、触媒EとFの製造に用いたような、他の酸組合せも、触媒Bの酸組合せに比べた場合に、改良された構造オレフィン異性化を生じた。
【0065】
触媒性質
上記実施例で用いた触媒は全て90重量%ゼオライトと10重量%アルミナであった(無水固体基準)。触媒の物理的性質の一部を表2に示す。
【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4個の炭素原子を有する線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンへ構造的に異性化する方法であって、少なくとも1種の前記線状オレフィンを含む炭化水素供給流を約200℃〜約650℃の温度において、
(a)(i)副生成物の2量化とコークスの形成とを遅らせるに充分小さく且つ該線状オレフィンの侵入を許し、該メチル分枝イソオレフィンを形成させるのに充分大きい細孔径を有する少なくとも1種の1次元細孔構造を有する少なくとも1種のゼオライトを含有するゼオライト粉末、
(ii) アルミナ含有結合剤、
(iii)水及び
(iv) 該ゼオライト粉末、該結合剤またはその混合物を解膠させるための少なくとも1種のポリカルボン酸を含有する有効量の酸を混合して混合物を生成し;
(b)前記混合物から1個以上の圧縮粒子を形成し;そして
(c)前記粒子を約200℃〜約700℃の温度においてか焼すること
を含む方法により製造された異性化触媒と接触させることを含む、
少なくとも4個の炭素原子を有する線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンへ構造的に異性化する方法。
【請求項2】
該ポリカルボン酸がトリカルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ポリカルボン酸が酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、アジピン酸、マロン酸、ガラクタル酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、テレフタル酸、フェニルマロン酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフマル酸、トリカルバリル酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、イソクエン酸、粘液酸及びグルカル酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該結合剤がアルミナ、シリカアルミナ又は粘土である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該結合剤が高分散度アルミナである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該触媒が60〜99.5重量%のゼオライトと0.5〜40重量%のアルミナとを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該ゼオライトが約0.42nmより大きく、約0.7nmより小さい細孔径を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該ゼオライトがフェリエライト同形立体網構造を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも4個の炭素原子を有する線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンへ構造的に異性化する方法であって、少なくとも1種の前記線状オレフィンを含む炭化水素供給流を約200℃〜約650℃の温度において、
(a)(i)副生成物の2量化とコークスの形成とを遅らせるに充分小さく且つ該線状オレフィンの侵入を許し、該メチル分枝イソオレフィンを形成させるに充分大きい細孔径を有する少なくとも1種の1次元細孔構造を有する少なくとも1種のゼオライトを含むゼオライト粉末、
(ii) 結合剤、
(iii)水、
(iv)(i)及び(ii)に基づいて約0.1重量%〜約6重量%の少なくとも1種のモノカルボン酸又は無機酸及び
(v) (i)及び(ii)に基づいて約0.1重量%〜約6重量%の少なくとも1種のポリカルボン酸を混合し;
(b)得られた混合物から1個以上の圧縮粒子を形成し;そして
(c)前記粒子を約200℃〜約700℃の温度においてか焼すること
を含む方法により製造された異性化触媒と接触させることを含む、
少なくとも4個の炭素原子を有する線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンへ構造的に異性化する方法。
【請求項10】
少なくとも炭素数4の線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンに構造的に異性化する方法であって、少なくとも1種の前記線状オレフィンを含む炭化水素供給流を、下記(1)〜(13)のいずれかに記載の方法によって製造される異性化触媒と、200℃〜650℃の温度において接触させることを含む前記方法:
(1)少なくとも炭素数4の線状オレフィンをその対応するメチル分枝イソオレフィンに構造的に異性化するための触媒の製造方法であって、次の工程:
(a)(i)0.42nmより大きく、0.7nmより小さい孔サイズを有する1つ以上の一次元孔構造を含む、少なくとも1種のゼオライトを含むゼオライト粉末と、
(ii)結合剤と、
(iii)水と、
(iv)(i)と(ii)とに基づいて0.1重量%〜6重量%の少なくとも1種のモノカルボン酸又は無機酸と、
(v)(i)と(ii)とに基づいて0.1重量%〜6重量%の少なくとも1種のポリカルボン酸と
を混合する工程と;
(b)得られる混合物から1個以上の圧縮粒子を形成する工程と;
(c)前記粒子を200℃〜700℃の温度において焼成する工程と
を含む前記方法。
(2)成分(v)がC−C10ヒドロカルビルセグメントと、少なくとも2個のカルボン酸基とを有する有機酸である、(1)記載の方法。
(3)成分(v)が少なくとも2個のカルボン酸基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを有する有機酸である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)成分(v)が酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、アジピン酸、マロン酸、ガラクトル酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、テレフタル酸、フェニルマロン酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフマル酸、トリカルバリル酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、イソクエン酸、粘液酸又はグルカル酸である、(1)記載の方法。
(5)成分(iv)が置換又は非置換のC−C20ヒドロカルビル基を有するモノカルボン酸又は無機酸である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)成分(iv)がギ酸、酢酸、グリコール酸又は硝酸である、(5)記載の方法。
(7)成分(iv)が酢酸であり、成分(v)がクエン酸である、(1)記載の方法。
(8)工程(a)における成分(iv)対成分(v)の比が1:60から60:1までである、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)成分(iv)が混合物に基づいて0.5〜4重量の量で存在し、成分(iv)対成分(v)の比が1:10から10:1までである、(8)記載の方法。
(10)結合剤がアルミナ、シリカアルミナ又は粘土である、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)結合剤が高分散性アルミナである、(10)記載の方法。
(12)最終触媒が60〜99.5重量%のゼオライトと、0.5〜40重量%のアルミナとを含む、(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)ゼオライトがフェリエライト同形骨組構造を有する、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2006−225399(P2006−225399A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85950(P2006−85950)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【分割の表示】特願平7−518153の分割
【原出願日】平成6年12月23日(1994.12.23)
【出願人】(592000864)シェル オイル カンパニー (1)
【Fターム(参考)】