説明

線画露光を行う露光装置及び露光方法

【課題】本発明は、PDP用電磁波防止フィルタに用いられる大きなサイズの線画パターン描画を迅速、かつ効率よく行うことのできる露光方法、及び装置を得ることである。
【解決手段】間欠搬送される感光材料上に線画露光を行う露光装置であって、一つ以上の露光ヘッドを有する露光ユニット1,2を少なくとも2基備え、該露光ユニット1,2は該感光材料を挟んで左右に配置され、該感光材料の搬送方向及び該感光材料の搬送方向及びそれに直交する感光材料幅手方向と直角の方向の2次元平面を移動可能に設置されて線画露光を行うことを特徴とする露光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の電磁波障害(EMI)を低減することのできる高い透明性を有するとともにモアレが防止された電磁波防止フィルタの導電性の線画パターンの描画を感光性材料上に効率よく行うことができる露光装置又その露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の発達により、電子機器から発生する電磁波を遮断し、電磁波障害(EMI)を低減する需要は非常に大きく延びている。機器から放出される電磁波は、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、人体に対しても害を与えることが指摘されている。中でもPDPで用いる電磁波防止フィルタは高い透明性とモアレ防止が要求されるため、非常に細い導電性の線(線画)を透明支持体上に設ける必要がある。
【0003】
従来、このような目的のためにフォトレジストやハロゲン化銀を塗布した支持体にフォトマスクを使用して露光を与え現像処理し電磁波防止フィルタを作製していた(例えば特許文献1、特許文献2参照)。また、近年では写真プリンターや複写機、印刷用セッターなどに使われているレーザー等を光源とする露光装置の原理を応用する検討も行われているが、PDP用のEMI(電磁波障害)に要求される大きなサイズの電磁波防止フィルタを迅速に効率よく描画することが課題となっている。
【0004】
これまで、感光材料フィルムを露光して電磁波防止フィルタ用の線画を描画する方法としては一般的な露光方法が記載されているのみであり、PDP用のEMI(電磁波障害)に要求される大きなサイズの電磁波防止フィルタを得ることができる微細な線画パターンを迅速に効率よく描画するためを露光方法についてはこれまで特に検討がなされた報告はない。
【0005】
本発明ではロール形状のフィルムとフィルムに対し露光ヘッドを2次元的に動作させることにより直線で構成される線画を連続して効率よく迅速に描画することを可能にしている。また、感光材料をロール形状にすることにより現像(物理現像)、メッキといった後工程の迅速化、効率化も同時に達成することができる。
【特許文献1】特開2004−221565号公報
【特許文献2】特開2004−253329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、PDP用電磁波防止フィルタに用いられる大きなサイズの線画パターン描画を精度よく、迅速かつ効率的に行うことのできる露光方法、及び装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は以下の方法により達成される。
【0008】
1.間欠搬送される感光材料上に線画露光を行う露光装置であって、一つ以上の露光ヘッドを有する露光ユニットを少なくとも2基備え、該露光ユニットは該感光材料を挟んで左右に配置され、該感光材料の搬送方向及び該感光材料の搬送方向に直交する感光材料幅手方向の2次元平面を移動可能に設置されて線画露光を行うことを特徴とする露光装置。
【0009】
2.一つの露光ユニットが複数の露光ヘッドを有し該露光ヘッドが千鳥配列されていることを特徴とする前記1に記載の露光装置。
【0010】
3.少なくとも2基の露光ユニットをそれらの総重心が連続搬送される支持体の中心線位置となるように、往復させて線画露光を行うことを特徴とする前記1または2に記載の露光装置。
【0011】
4.前記感光材料がハロゲン化銀感光材料であることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の露光装置。
【0012】
5.線画露光をレーザー光源とDMDデバイスからなる装置を使って行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の露光装置。
【0013】
6.線画露光をレーザー光源とポリゴンミラーからなる装置を使って行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の露光装置。
【0014】
7.間欠搬送される感光材料上に線画露光を行う露光方法であって、一つ以上の露光ヘッドを有する露光ユニットを少なくとも2基備え、該露光ユニットは該感光材料を挟んで左右に配置され、該感光材料の搬送方向及び該感光材料の搬送方向と直角の方向の2次元平面を移動可能に設置されて線画露光を行うことを特徴とする露光方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、PDP用電磁波防止フィルタに用いられる、大きなサイズの線画パターン描画を、感光性材料上に、精度よく、迅速かつ効率的に行うことができる。また、マスク等を使用する場合に比べチリ等の付着による欠陥が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
電磁波防止フィルタに用いられる線画パターンは開口率を大きくした導電性材料例えば金属からなる任意のメッシュパターンであり、透光性と電磁波遮蔽性を備えている。本発明において、メッシュパターンは、線幅1〜20μmの範囲で、ピッチが60〜450μmの矩形格子状のパターンで形成されている。
【0018】
本発明においては、感光材料、例えばハロゲン化銀感光材料を用いてこれを線画露光し、現像することで、電磁波防止フィルタとして必要な電磁波遮蔽性能と透光性とを併せもつ、導電性金属からなる線画パターンを形成して電磁波防止フィルタを製造する。本発明は、導電性金属からなる線画パターンを作製するためのこれら感光材料への前記線画露光方法、描画方法、又露光装置に関するものである。
【0019】
本発明により、ポリエステルフィルム等非導電性のフィルム材からなる連続したるウエブ上に、電磁波防止フィルタ用の導電性金属からなる線画メッシュパターンを精度よく、また連続して効率よく製造することができる。
【0020】
感光材料としては、ハロゲン化銀感光材料が、他の感光材料、例えば、フォトレジスト等に比べ高感度であるため迅速に露光することができることや、また、現像処理等の露光後の処理においてもハロゲン化銀感光材料を用いる方が迅速であり電磁波防止フィルタの生産効率の点で有利であり、微粒子ハロゲン化銀感光材料を用いることで、導電性の高い精密な導電性メッシュパターン(線画)が得られるため、本発明に用いられる感光材料としてはハロゲン化銀感光材料が好ましい。
【0021】
ハロゲン化銀感光材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の各種の透明樹脂フィルム基材(厚さは例えば25〜250μm程度)上に光センサーとしてハロゲン化銀粒子の層を有するもので、銀塩写真フィルムに用いられるハロゲン化銀写真乳剤技術を本発明においても用いることができる。
【0022】
ハロゲン化銀粒子中、ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上を占めるAgBrを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0023】
ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、露光、現像処理後に形成される金属銀からなる線画の品質の観点から、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)で、より好ましくは1nm〜100nm、さらに好ましくは10nm〜100nmである。尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0024】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。
【0025】
ハロゲン化銀は、さらに他の元素を含有していてもよく、例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられるロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンをドープすることができる。
【0026】
ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/又はイリジウム化合物の含有率は、好ましくは、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであり、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0027】
その他、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられており、このPdの含有によって、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波遮蔽材料の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の銀のモル数に対して10-8〜10-4モル/モルAgであることが好ましく、10-6〜10-5モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0028】
ハロゲン化銀は、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、ハロゲン化銀写真乳剤で行われる化学増感を施すことができる。化学増感としては、例えば、金増感などの貴金属増感、イオウ増感などのカルコゲン増感、還元増感等を利用することができる。
【0029】
ハロゲン化銀の塗布銀量として金属換算で、0.1〜10g/m2の範囲の感光材料が用いられる。好ましいのは0.2〜5g/m2、より好ましいのは0.3〜3g/m2の範囲である。
【0030】
本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料としては、例えば、銀38gに対してゼラチン3gを含む球相当径(平均粒径)0.05μmの微粒子AgBrI(I=2mol%)粒子を含むハロゲン化銀乳剤を、金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀量で2g/m2程度となるように下引き済みのPETフィルム(100μm厚)上に塗布したものを用いることができる。
【0031】
本発明に係わる電磁波防止フィルタは、感光材料を線画露光を行った後に、現像処理、また好ましくは捕力処理を行って導電性金属からなる線画パターンを形成し作製する。
【0032】
ハロゲン化銀感光材料は、電磁波防止フィルタ用の線画露光を行ったのち、いわゆる写真用現像処理液により現像処理して、ハロゲン化銀を金属銀パターンに変換する。黒白現像処理されることが好ましく、基本的には写真用黒白現像処理が利用できる。
【0033】
黒白現像液としては特に特定しないがPQ現像液、MQ現像液等を、またリス現像液等を用いることができ、したがって、用いられる黒白現像処理液の現像主薬としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類、及びパラアミノフェノール類、アスコルビン酸類が好ましい。
【0034】
電磁波防止フィルタの線画パターンのは開口部にあたる金属画像に変換されなかったハロゲン化銀は、写真用の定着処理により定着工程において除去されることが好ましい。
【0035】
(補力処理)
ハロゲン化銀感光材料を現像処理後、現像処理によって形成された現像銀による線画パターンを補助し、電磁波遮蔽機能を高めるために補力処理を行うことが好ましい。補力処理は、現像処理中、あるいは処理後に、予め感光材料中に含有されていない導電性物質源を外部から供給し、導電性を高める処理を指し、具体的な方法としては、例えば物理現像、あるいはメッキ処理等が挙げられる。
【0036】
物理現像は、潜像を有するハロゲン化銀乳剤を含有する感光材料を、銀イオンあるいは銀錯イオンと還元剤を含有する処理液に浸漬することで、これを施すことができる。本発明においては、物理現像の現像開始点が潜像核だけでなく、現像銀が物理現像開始点となった場合についても物理現像と定義し、これを好ましく用いることができる。
【0037】
本発明において、補力処理として用いられるメッキ処理には従来公知の種々のメッキ方法を用いることができ、例えば電解メッキ及び無電解メッキを、単独、或いは組み合わせて実施することができる。中でも、線画部の抵抗値が高く電解メッキをうまく行えない場合或いは電流分布ムラによるメッキのムラ発生を防止したい場合等に電流分布ムラによるメッキのムラが発生しない無電解メッキを好ましく用いることができる。無電解メッキに用いることができる金属としては、例えば銅、ニッケル、コバルト、すず、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができるが、メッキ処理が比較的容易であり、かつ高い導電性を得やすいという観点から、銅無電解メッキを用いることが特に好ましい。
【0038】
例えば、無電解銅メッキ液としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてはホルマリンやグリオキシル酸等が用いられ、銅の配位子としてはEDTA等が用いられる。
【0039】
なお、補力処理は現像中、現像後定着前、定着処理後のいずれのタイミングにおいても実施可能であるが、フィルムの透明性を高く維持するという観点から、感光材料を定着処理した後に実施することが好ましい。
【0040】
例えばメッキ液としては、硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.22モル/L,トリエタノールアミン0.12モル/L,およびポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α、α′−ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuメッキ液等が具体例として挙げられ、例えば、該メッキ液を用いて45℃にて無電解銅メッキ処理を行った後、10ppm程度のFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行う。
【0041】
なお、電磁波遮蔽パターンに応じて、現像処理工程および/または補力処理工程の所要時間を調整することが好ましく、特に電磁波遮蔽パターンの開口率データに応じて、前記所要時間が自動的に制御されることが好ましい。
【0042】
電磁波防止フィルタとして用いる場合、電磁波遮蔽メッシュパターンを目視した際に上記導電性金属部の線幅が判別できるようでは問題である。このため、本発明の透光性電磁波防止フィルタでは、導電性金属部の線幅は充分に細くなっている。具体的には本発明の導電性金属部の線幅は3〜18μmであり3〜14μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。
【0043】
導電性金属薄膜の膜厚は、導電性の確保という意味で2.5μm以上であることが好ましい。またモアレ等の観点からは薄い方が望ましいことから、膜厚は2.5から8μm、好ましくは2.5〜5μmである。
【0044】
また、メッシュパターンを構成する線画のピッチは60〜450μmが好ましく、120〜400μmがより好ましい。
【0045】
可視光の透過率の観点からは開口率は85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上である。開口率とはメッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば線幅10μmピッチ200μmの正方形の格子状の場合開口率は90%である。
【0046】
本発明はこのように、感光性材料に、線画露光をすることによってメッシュパターンを描画し、これを現像処理して金属銀からなるメッシュパターンを形成して電磁波防止フィルタを作製する電磁波防止フィルタの製造において、前記感光材料に線画露光を行うための露光方法、また露光装置に関するものである。
【0047】
本発明においては、感光材料を間欠搬送させ、描画時には静置させた状態にある感光材料上へ、一つ以上の露光ヘッドを有する少なくとも2基の露光ヘッドにより、線画露光をを行う露光装置であって、該露光ユニットが該感光性材料を挟んで左右に配置された2基の露光ユニットを、互いに、それらの総重心が移送される感光材料の中心線位置となるように、それぞれ2次元平万内で走査、往復させることで、線画を描画するものである。
【0048】
複数の露光ユニットを2次元平面内を斜めに走査することで、迅速に、かつ精度よく線画パターンの描画(露光)が行うことができる。また、マスクを用いない露光方法のためゴミ付着等による欠陥も少ない。
【0049】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0050】
(発明の実施の形態)
図1は、本発明の露光方法における感光材料及び2つの露光ユニットの配置とその移動方向を模式図で示した。本発明の露光方法において、露光ユニットは搬送方向及びそれに直交する感光材料幅手方向の二次元平面内を斜めに往復移動(走査)する。
【0051】
図1において、2基の露光ユニットは、それぞれ、感光材料の搬送方向に沿って複数の微少ビームの放射点を有するように構成されている。各微少ビームの放射点は、得ようとする線画パターンを構成する各線間の間隔に対応して、等間隔に露光ユニット上に配置されている。また、各露光ユニットの大きさは、任意であるが、少ない走査で、等間隔の線画を間欠搬送される感光材料上に描画するには、感光材料搬送のその搬送方向に所定の長さ分をカバーする大きさであってかつ同じサイズであることが好ましい。各露光ユニットの斜め走査は、感光材料幅方向に一度走査が終わって後、逆方向に走査されるとき、この露光ユニットの分だけ搬送され、これによって各露光ユニットにより描画された線画の各線間が等間隔となるように感光材料は搬送される。各露光ユニットは、感光材料の搬送毎に、図で示される感光材料両端のそれぞれの位置A−B間、位置A’−B’間を鎖線に沿って斜めに往復、移動することでそれぞれ線画露光を行う。
【0052】
また、露光ユニット1および2は、その総重心が連続搬送される感光材料(支持体)の中心線位置となるように、それぞれを往復、走査させて線画露光を行う。
【0053】
図2に、本発明に係わる露光方法を模式図によってより具体的に示す。
【0054】
それぞれの露光ユニットの走査している方向を矢印で示す。走査の角度は感光材料の搬送方向に対して任意の角度θでよいが、45度の場合が、形成される電磁波遮蔽ユニットの透光性の観点で好ましい。図では露光ユニット1によって形成される線画パターンを破線で示し、露光ユニット2による描画を実線で示した。露光ユニット2において各走査毎に形成された複数の斜め方向の線画セットS1、S2、S3・・・を示す。
【0055】
露光ユニット1及び露光ユニット2はその総重心が感光材料の幅両端の中心線位置となるよう移動、走査されるので、露光ユニット1による描画とは対称の線画を形成し、露光ユニット1そして露光ユニット2の両方の走査を受け線画露光されたところにおいて、矩形パターンが連続した形態の線画パターンが形成される。
【0056】
図2では、理解のために、線画を粗く示しているが、実際には電磁波防止フィルタの導電性メッシュパターンにおいてメッシュを形成する線画の線幅としては、1〜20μmの範囲であり、各線画パターンのピッチは60〜450μmの範囲である。このような細線からなるパターンの描画において、本発明に係わる露光方法は、連続して描画する方式であるため精度が出せ、細線の線幅の変化や途切れ等が少ないため、通常のデジタル露光方式に比べ好ましい。
【0057】
各露光ユニットによる2次元平面内の斜め露光を同期させ行い、各走査毎に、露光ユニットのサイズ分だけ感光材料を搬送して、往復で線画露光を行うことで、図2に示されるような、感光材料の幅方向に対する角度θ=45度の角度をもった正方形の線画メッシュパターンとなる。図2は、感光材料を露光後、現像処理した線画パターンを示している。球相当径(平均粒径)0.05μmの微粒子AgBrI(I=2mol%)粒子を含むハロゲン化銀乳剤を、下引き済みのPETフィルム(100μm厚)上に塗布したハロゲン化銀感光材料を用い、露光後、白黒現像処理(含む定着)を行って、前記メッキ処理液で処理した状態を示す。
【0058】
露光ユニットそれぞれは感光性材料の幅手方向に露光ヘッドを一つ以上有し、それにより感光ラインヘッドを構成するが、間欠搬送を行って、線画を露光するため、露光ユニットは、各走査毎に、所定の領域をカバーできることが好ましく、また、所定のサイズに対して各露光ヘッドにより等間隔の線画露光を実施するため、露光ユニット上には、微少ビームの放射点を多数等間隔で有することが好ましい。この為に、露光ユニットは、露光ヘッドを1つ以上有する。一つの露光ヘッドで、感光材料上の所定の領域を充分カバーできる場合には、一つで構わないが、一走査ごとにカバーできる領域は大きい方が好ましく、この為、例えば、後述のDMDデバイス等からなる露光ヘッドは走査毎にカバーする範囲を大きくとるためこれを複数配置することが好ましい。電磁波防止フィルタは大きいサイズが必要とされるため製造の効率をあげる上で好ましい。
【0059】
従って、露光ヘッドは、複数配置することが好ましく、その場合、各露光ヘッドは感光性材料幅手方向に沿って千鳥配列することが好ましい。各露光ヘッドはヘッド毎に素子基板上にメモリセル等、又配線部、駆動回路とのインターフェース等が搭載されており、単に一列に並べても微少ビームの放射点を等間隔に並べることができないため、露光ヘッドを千鳥配列することにより露光ユニット上の微少ビームの放射点が等間隔で並ぶように露光ヘッド同士を連結することができる。
【0060】
次に露光ユニット乃至露光ヘッドについて説明する。
【0061】
感光性材料を各走査毎に間欠搬送して、上記のように連続して線画を描き込む、2基の露光ユニットに用いられる露光ヘッドにおける線画露光のための露光源としての微少ビームは、感光性材料幅方向に並んで配置された露光ユニットを構成する各露光ヘッド上の所定の位置にビーム放射点を等間隔で設定し、これが並んで配置されるようにすればよい。
【0062】
本発明において好ましい露光ヘッドの一つとして、レーザー光源とDMDデバイス(デジタルマイクロミラーデバイス)からなる装置が挙げられる。
これは独立して動く数μm角程度のミラーが複数並置された素子であり、この微少なミラーの向きを電気的に制御して入射したレーザー光の反射方向を所定の方向に反射させるかを決めるものである。即ち、レーザー光を微小なミラーを平面に配したDMDデバイスを介して反射させて、反射光ビームにより露光を行う。
【0063】
またレーザー光源としては感光材料の分光感度に合わせたものを用いる。
【0064】
本発明においては、前記線画露光をレーザー光源とDMDデバイスからなる装置を露光ヘッドとして用いて行うことが好ましい。
【0065】
レーザー光を微小なミラーを平面に配したDMDデバイスを介して所定の位置で反射させ、露光ヘッドと感光材料の双方を同時に走査して感光材料上に露光することで、連続した細線を迅速に感光材料上に描画することができる。
【0066】
DMDを用いた印刷版用露光装置または露光方法については、国際公開第97/21151号、同97/39277号、同98/47042号、同98/47048号、同00/21735号、同00/36470号の各パンフレットおよび米国特許第5,579,240号明細書等に記載がある。
【0067】
これらの方法と異なり、本発明においては、レーザー光を、微小なミラーを平面に配したDMDデバイスを介して、DMDデバイス上の所定の位置で反射させて、露光ヘッド(ユニット)を感光材料の搬送方向及び幅手方向という2次元平面内において移動して、斜めに走査、線画露光を行うため、感光材料上に図2に示したように細線からなる線画パターンが迅速に連続して感光材料上に描画される。
【0068】
図3にこれを説明する。
1はDMDデバイスで複数の数μm角の微少なミラーからなっている。これにレーザー光からの平行光を照射して所定の位置の微少ミラーの向きを制御すれば反射光を感光材料の方向に向けることができる。本発明においては、感光性材料上の線画領域に対応した微少ミラーのみを駆動して感光性材料の線画領域に反射光を向けこれを、露光ユニットを移動させて露光する。図において矢印は、各搬送間において静止した感光材料上に、露光ヘッド(ユニット)が移動(走査)する方向、及びこれにより形成される線画を示している。図では一つの線画について示したが、線画のメッシュパターンのピッチに応じて微少ミラーを複数駆動して複数の線画からなるセットを感光性材料上に線画露光することができる。又線画の各線幅についても各微少ミラーの駆動パターンを変更することで調整が可能である。
【0069】
このようにして、DMDデバイスからなる露光ヘッド(ユニット)の移動(走査)に伴って前記図2におけるように線画露光が行われ感光材料上に線画からなる電磁波防止フィルタ用導電性金属パターン形成のための線画露光が行われる。
【0070】
例えば7μm角の微少ミラーを有するDMDデバイスを用い微少ミラーを駆動させ、露光ユニットと感光材料の移動速度を同期させ両者を走査すれば、感光材料幅方向に45°の角度で線画が描画される。この場合、連続した約10μm幅の線画が得られる。
【0071】
レーザー光をDMDを介して露光する技術は写真プリント等で使用されているが、本発明においては、平面に微小なミラーを配している特徴を生かし、2つの露光ユニット自体を双方同時に動かすことにより繋がりのよい細線パターンを迅速に描画することができる。また、写真プリント等で使用されている通常の感光材料における走査露光の場合には、露光ユニットは移動せず、スキャン幅分感光材料を送って次のスキャンにより再度線画パターンを描き込むことを繰り返すので、電磁波防止フィルタ用等の細線からなる線画パターンの描画においては、各スキャン毎の線画パターンの繋がりが悪くなるため、線画のズレや、線太り、線細り等が起こりやすいが、本発明の方法によれば連続した線画露光となるためこれらの欠点が回避される。
【0072】
また、複数のDMDデバイス等により露光ユニットを構成する場合、DMDデバイスは微少ミラー端を接地させるランディング部や電極等、又その下部のシリコン基板にはRAM等が形成された素子を形成しており、前記のように等間隔のピッチで感光性材料を線画露光するために各DMD露光ヘッドで露光ユニットを構成するにはこれらの露光ヘッド(DMD素子)を千鳥配列することが好ましい。各DMD露光ヘッドは基板の全面に亘って配置されていないため、別のDMD露光ヘッドの微少ミラーと連続して配置できないためである。各DMD露光ヘッドを千鳥配列することで、感光材料の幅手方向からみたとき線画露光位置(ヘッドの微少ビーム放射点)が等間隔となる様に露光ヘッドを配置できる。
【0073】
図4にこのようにDMD露光ヘッドを千鳥配列したところを示す。
【0074】
また本発明において、半導体レーザー、非球面プラスチックレンズ系、ポリゴンミラー、ミラー回転モータ等からなるレーザーユニットを露光ヘッドとして用い露光ユニットを構成することも好ましい。
【0075】
レーザー光をポリゴンミラーを介して露光する技術は写真プリント用等に広く用いられているが、本発明においては、通常のレーザーを用いたデジタル露光方式とは異なり、一つのレーザーユニットで50〜100mmの振り幅を露光するようにし、このレーザーユニットを一つの露光ヘッドとし、これを複数並べて露光ユニットとしたものを用いる。
【0076】
ポリゴンミラーを使ったレーザー露光ユニットは、大きな振り幅(広幅の感光材料等)で使用すると、両端でのビーム径太り等から微細線の一定した露光が難しくなるため、本発明においては、一つのレーザー露光ユニットのビームの振り幅を抑えてこれを露光ヘッドとし複数並べて露光ユニットとする。こうして各露光ヘッドを小さな振り幅でレーザーをON/OFFさせて微少ビームが並んだ様な状態を、前記同様に各露光ヘッドにつくりだし、露光ヘッド(ユニット)自体を移動(走査)して連続した細線を描くようにする。
【0077】
このように露光ユニット2基を、前記のように互いに対称に総重心位置を感光材料の中心線に設定して感光材料に平行な2次元平面内で斜めに走査、往復・移動を繰り返すことにより、それぞれによって描画された細線セットが交差して、線画パターン(メッシュパターン)を感光材料上に描画することができる。
【0078】
レーザー露光ユニットを露光ヘッドとして用いた場合にも、複数の露光ヘッドをもつ露光ユニット自体を動かすことで、微少ビームが並んだような状態にある各露光ヘッドから、やはり移動する感光材料上に連続的に線画を描き込んでゆくので、感光材料上に数μmレベルの細線描画を繋がりよく、精度よく行うことができる。通常のビームのみを振ってスキャン毎に感光材料を副走査して描画する方法では、スキャン毎の細線の繋がりが悪くなり、電磁波防止フィルタに要求される数μmレベルの細線を精度よく描画できない。
【0079】
レーザー露光ユニットにおいても、ポリゴンミラ、レーザー、レンズミラー回転モータ等が基板上に搭載されユニットを形成しているので、振り幅を小さくしてもちいた場合の各露光ユニットは直線的に配列できないので、これを千鳥配列して線画露光を行う微少ビーム間隔が等間隔となるよう配置することが好ましい。
【0080】
このように、搬送方向と直角の方向の2次元平面内を斜めに移動(走査)しつつ、かつ、2基の露光ユニットを同時に、その総重心が一定で、間欠搬送される感光材料の中心線上にあるよう走査する方式によって書きこみを行う方式を採用することで、電磁波遮蔽パターンに要求される細線からなるメッシュパターンの描画を効率的に行うことができると共に、細線の描画において、線画のパターン切れや、線太り、線細り等の描画ムラが少なく、精度高い描画できる。また、線画露光される感光材料の両端部と中心部等全域に亘って変わらない安定した描画が得られる。
【0081】
このようにして線画露光を感光材料に行った後は、感光材料に現像処理を行って金属銀からなる線画とする。そしてメッキ処理等による捕力処理を行って、電磁波防止フィルタを形成する。
【0082】
以上、感光材料から形成する電磁波防止フィルタの製造方法において、導電性の微細な線画パターンを形成するための描画方法、即ち露光方法、また露光装置について説明したが、本発明の、感光性フィルム、及び1つ以上好ましくは複数の露光ヘッド有する露光ユニットの両者を同時に動作させる露光方法は、細線で構成される線画パターンを、感光性フィルム上に連続的に露光できるため、走査間において生じる線画の切れや、線太り、線細り等の描画ムラを少なく、正確に、かつ効率よく描画できると共に、マスクを用いる方法に比べゴミ付着による欠陥も少ない。また、ロール形状の感光材料を用いることで、現像処理、またメッキ処理等の捕力処理もロール ツウ ロールで実施できるので作製工程全体の迅速化ができ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の露光方法において感光材料及び2つの露光ユニットの配置とその移動方向を示す模式図である。
【図2】本発明に係わる露光方法を具体的に示す模式図である。
【図3】DMDデバイスを露光ヘッドとして用い線画露光を行う説明図である。
【図4】DMD露光ヘッドを千鳥配列した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 DMDデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠搬送される感光材料上に線画露光を行う露光装置であって、一つ以上の露光ヘッドを有する露光ユニットを少なくとも2基備え、該露光ユニットは該感光材料を挟んで左右に配置され、該感光材料の搬送方向及び該感光材料の搬送方向に直交する感光材料幅手方向の2次元平面を移動可能に設置されて線画露光を行うことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
一つの露光ユニットが複数の露光ヘッドを有し該露光ヘッドが千鳥配列されていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
少なくとも2基の露光ユニットをそれらの総重心が連続搬送される支持体の中心線位置となるように、往復させて線画露光を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記感光材料がハロゲン化銀感光材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
線画露光をレーザー光源とDMDデバイスからなる装置を使って行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
線画露光をレーザー光源とポリゴンミラーからなる装置を使って行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
間欠搬送される感光材料上に線画露光を行う露光方法であって、一つ以上の露光ヘッドを有する露光ユニットを少なくとも2基備え、該露光ユニットは該感光材料を挟んで左右に配置され、該感光材料の搬送方向及び該感光材料の搬送方向と直角の方向の2次元平面を移動可能に設置されて線画露光を行うことを特徴とする露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−102249(P2008−102249A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283537(P2006−283537)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】