説明

線要素

【課題】流体の凍結は体積の増加の結果となり、線上の圧力負荷の結果となる。最悪の場合、線の損傷または線の接続要素の損傷が結果として発生する。実施形態は流体凍結のときに生じる損傷の危険性を減少する。線要素と線要素を形成するための方法。
【解決手段】線要素1は、流体線2と、半径方向に流体密封の手法で前記流体線2を囲むために構成および配置された筐体3とを含む。環状の空間4が前記流体線2と前記筐体3の間に形成され、少なくとも一部は圧縮性の媒体で満たされ、前記流体線2は前記環状の空間4の内部に少なくとも1つの開口13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体線と筐体を有する線要素に関する。
【背景技術】
【0002】
この型の線要素は、例えばエンジン冷却液を運ぶため、またはいわゆる尿素線として、自動車の中で使用される。例えば、ディーゼルエンジン内で清浄燃焼に寄与するため、尿素を供給するために使用される線は、尿素線として言及される。
【0003】
流体で満たされる流体線の場合、特に冬期の自動車で、自動車のより長い停止時間で線の中に置かれた流体が凍るという問題がある。例えば尿素は−11℃で凍る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体の凍結は体積の増加の結果となり、線上の圧力負荷の結果となる。最悪の場合、線の損傷または線の接続要素の損傷が結果として発生する。
【0005】
凍結を防ぐため、線を熱することが知られている。しかしなから、熱することは、自動車が止まったまま、長い期間維持されることはできない。このように、凍結は熱で防ぐことはできない。
【0006】
本発明の実施形態は流体凍結のときに生じる損傷の危険性を減少する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、冒頭に言及されたこの型の線要素は、半径方向に流体密封の手法で流体線を囲む筐体を含む。流体線と筐体との間に形成された環状の空間は、圧縮性の媒体で少なくとも一部が満たされる。流体線は、環状の空間の内部に少なくとも1つの開口を有する。
【0008】
筐体の内部に圧力補償空間を提供することで、流体の凍結の間に流体線の中で生成された圧力は、環状の空間の中に逃げることができる。これにより、圧縮性の媒体の体積の減少が起こる。流体線それ自身は圧力が減らされる。環状の空間は、流体の液化状態での圧縮性の媒体の手段によって、流体で完全に満たされることが防がれる。流体の凍結による線要素上に働く圧力は減少され、この実施形態により、流体線または線要素に損傷を起こさない。特に、最大の圧力が減少される。圧縮性の媒体は、もちろん通常の氷点下の温度で望ましい圧縮率を維持する必要がある。このように、線要素は、圧力を補償する要素として、実装または形成される。
【0009】
好ましくは、開口は環状の空間の軸方向の境界から離れて位置される。特に、それぞれの境界から等しい距離を有するように、開口は軸方向の境界の間の中心に配置される。線要素の位置独立性は、これにより達成される。線要素の位置にかかわらず、環状の空間は完全に流体で満たされることはない。
【0010】
好ましくは、圧縮性の媒体は、筐体の中に閉じこめられた空気によって形成される。この空気は、線要素が満たされる前に、環状の空間を通して全て置かれる。流体が流体線の中に導入されるとき、流体は、環状の空間内の開口を通り過ぎる。このように環状の空間内に入れられた空気は、この開口を通して逃げることができる。流体線が満たされ、開口が完全に覆われたとき、筐体は流体密封手段で流体線に接続されているため、環状の空間の中にまだ残っている空気はもはや逃げることはできない。この閉じこめられた空気は、圧縮性の媒体を形成する。この実施形態は線要素を非常にコスト効果がある生産を可能とする。さらに、流体は圧縮性の媒体によって、汚染されない。
【0011】
他の好ましい実施形態の中で、圧縮性の媒体は発泡体として、特に閉じた純粋な発泡体として実装される。環状の空間は発泡体によって完全に実装または形成される。発泡体の圧縮は、圧力のもとで発生し、流体線の中の圧力減少が発生する。閉じた純粋の発泡体で、流体の吸収は発生しない。この実施形態により、媒体の圧縮率は比較的良く調節される。
【0012】
さらなる好ましい実施形態の中で、圧縮性の媒体は、圧縮性の流体、特に空気が閉じこめられた弾性容器を有する。この容器は環状の空間の中に配置される。流体線の圧力の増加で、この圧力は、押される弾性容器上の開口を通して移動される。流体線の中に広がる圧力の減少が発生する。
【0013】
好ましくは、筐体は環状のスリーブとして実装または形成され、軸方向の境界は、輪フランジとして実装または形成される。選択的に、輪フランジは、粘着性の力によって流体線に接続され、その結果これらは流体線と特にひとつなぎで実装または形成される。環状のスリーブの製造は比較的簡単である。環状のスリーブの周辺方向の表面は完全に閉じ、つまり、どんな場合でも流体密封の手法で閉じられる。流体線への輪フランジの密封は、粘着性の力による接続またはひとつなぎの接続によって確かにされる。スリーブは、圧入によって輪フランジ上に押されることができる。これによって、十分な堅さが達成される。特にこれは、輪フランジまたは環状スリーブが比較的柔らかい材料から作成される場合である。
【0014】
1つの個別の密封要素が、筐体と輪フランジのそれぞれの間に配置されることは効果がある。環状のスリーブと輪フランジの間の流体密封接続はこの密封要素によって確実にされる。
【0015】
好ましくは、開口は環状の割れ目として実装または形成される。したがって、流体線は2つの部分であり、両部分は環状の割れ目によって分けられる。しかしながら、流体線は筐体によって一緒に保持される。もし必要なら、さらなる固定要素が筐体から流体線の部分の軸方向の移動を妨げるために提供される。環状の割れ目の実施形態は比較的簡単である。例えば、流体線は、2つの輪フランジ間を簡単に切られることができ、筐体はその後に取り付けられる。
【0016】
他の好ましい実施形態の中で、3つ、4つまたはそれ以上の開口が提供され、これらは、流体線の中、軸方向に同じ高さで実装または形成される。開口は、流体線の周囲上に選択的に一様に配置される。いくつかの開口の使用により、比較的大きい全断面が、流体線が分割されることなく、環状の空間の中に流体を流すために提供される。これらの開口は全て同じ高さで配置されているため、特に流体線の周囲上に一様に配置されるとき、流体による環状の空間の一様な注入が、位置に関係なく、確実にされる。均等な大きさの空気の量が環状の空間の中に常に閉じこめられる。4つの開口の場合、それぞれ2つの開口はお互いに直径方向反対側にある。
【0017】
好ましくは、流体線は、特に挿入領域において、少なくとも1つの端で接続形状を有する。線要素は比較的容易に他の線要素に接続することができる。接続形状は筐体の軸方向外に突き出ることができる。流体線の両方の端は、同じに実装される。もし、流体線の両方の端が、それぞれ筐体の軸方向外に突き出る挿入領域として実装または形成された場合、線要素は2つのホース端の間の接続要素として挿入されることができる。このホース端は、挿入領域を通して簡単に導かれ、選択的にホースクランプの助けで堅牢にされる。線要素は、その後比較的容易に補完されることが可能である。
【0018】
本発明の実施形態は、線要素に向いている。線要素は、流体線と、半径方向に流体密封の手法で流体線を囲むために構成および配置された筐体を含む。環状の空間が流体線と筐体の間に形成され、少なくとも一部は圧縮性の媒体で満たされ、流体線は環状の空間の内部に少なくとも1つの開口を有する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、環状の空間はさらに軸方向の境界の間に形成される。少なくとも1つの開口が軸方向の境界から離れて位置する。
【0020】
他の実施形態によれば、圧縮性の媒体は筐体の中に閉じこめられた空気を含む。
【0021】
本発明のさらなる他の実施形態によれば、圧縮性の媒体は発泡体であることもできる。さらに発泡体は閉じた純粋な発泡体であることもできる。
【0022】
他の実施形態によれば、筐体は圧縮可能な流体を含むために構成された弾性の容器を含む。圧縮可能な流体は空気であることができる。
【0023】
さらに、筐体は環状のスリーブを含み、軸方向の境界は、輪フランジを含む。輪フランジは、粘着性の力によって流体線に接続される。さらに、輪フランジは流体線と特にひとつなぎで接続される。さらに、1つの密封要素が、それぞれ筐体と輪フランジの間に配置される。
【0024】
他の実施形態によれば、少なくとも1つの開口は環状の割れ目として実装される。
【0025】
さらに、少なくとも1つの開口は、流体線に沿い軸方向に同じ高さで形成された少なくとも3つの開口を含む。少なくとも3つの開口は、流体線の周囲に一様に配置された4つ又は5つの開口のいずれかを含む。
【0026】
本発明のさらなる他の実施形態によれば、流体線は少なくとも1つの端で、接続形状を有する。接続形状は挿入領域を含む。
【0027】
本発明の実施形態は線要素を形成するための方法に向いている。方法は、筐体と流体線の間に環状の空間を形成するため、流体線上で筐体を引くことを含む。少なくとも1つの開口が、環状の空間と連絡するため流体線の中に形成される。
【0028】
本発明のさらなる他の実施形態によれば、流体線は、環状の空間をさらに形成する軸方向の境界を含む。さらに方法は、軸方向の境界と筐体との間にそれぞれの密封をおくことを含む。
【0029】
他の例示的実施形態と本発明の効果は、本開示と添付の図によって確かめられる。
【0030】
本発明は、本発明の例示的実施形態の非制限例により、複数の図を参照することによって、以下の詳細な記述により記載される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】線要素を通る断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、詳細は例示の方法で示され、本発明の実施形態の図示的議論の目的のためのみに、本発明の原理と概念的な面をすぐに理解でき、最も効果的と信じられることを提供するために表される。このことについて、本発明の基本的理解のために必要なもの以上に、本発明のいくつかの形状が実際にどのように実装され、形成されるかを当業者に明らかにさせる、図を伴った記載以上に、本発明の構造的詳細を開示することを意図していない。
【0033】
図の中で、流体線2を有する線要素1が示される。筐体3は環状の手法で流体線2を囲み、環状の空間4が、筐体3と流体線2の間に実装または形成される。環状の空間4はそれぞれ輪フランジ5、6によって、軸方向に制限される。輪フランジ5、6は流体線2とひとつなぎに実装される。
【0034】
筐体3は環状のスリーブとして実装または形成され、完全に閉じた円周の表面を有する。1つの密封要素7、8が、それぞれ輪フランジ5、6と筐体3の間に配置される。密封要素7、8はリングシールとして実装または形成される。
【0035】
流体線2は、軸方向に筐体3を貫通し、近似的に同じ大きさで筐体3の両側に突き出る。例示的な実施形態の中で、流体線2のこの突き出る領域は、完全に同じように実装された接続形状9、10を有し、両側に提供される。接続形状9、10は、接続領域として実装または形成され、例えばホース端に挿入される。筐体3は軸方向に流体線2上に押される。さらに、輪フランジ5と筐体3の間、留め輪11が、筐体3と流体線2の間の摩擦接続を保証するために配置される。筐体3は、内部に突き出るフランジ12の正面上に提供され、これは、挿入制限の役目を行い、組み立ての状態で輪フランジ5の軸方向外側を支える。筐体3の位置は、これにより流体線2に関して正確に定められる。筐体3の動作は所定の方向のみに可能である。突発的に変化はあり得ない。
【0036】
流体線2は、計4つの開口13を伴い提供され、これは流体線2の内部14を環状の空間4に接続する。開口13は、すべて流体線2に関して同じ軸方向の高さで配置される。開口13は、環状の空間4の軸方向の制限又は境界を形成する輪フランジ5、6の両方から離れて位置する。線要素1の位置にかかわらず、環状の空間4は、内部14と開口13を通して環状の空間4に到達する流体で完全に満たされることはない。
【0037】
出荷された状態で、内部14と環状の空間4は空気で満たされる。もし、線要素1が今、線の中で使用され、流体で満たされた場合、内部14は満たされ、流体は、開口13を介して環状の空間4に届く。開口13が流体によって完全に覆われない限り、内部14の中におかれた空気の量は開口13を通して逃げることができる。しかしながら、環状の空間の中に閉じこめられた空気の完全な脱出は不可能である。代わりに、環状の空間4の中の空気は、筐体3の流体密封接続と流体線2の間に保持され、流体は流体線2の中に配置される。
【0038】
もし、流体が今、凍ることを開始した場合、その体積は増加する。環状の空間4の中に置かれた空気は圧縮性の媒体であるため、圧力の均一化が空気の圧縮で開口13を通して起こる。流体の凍結による線要素1上に作用する圧力の負荷は、したがって減少する。
【0039】
例示的な実施形態で示されたように、筐体の中に閉じこめられた空気は圧縮性の媒体として用いられる。追加または空気の代わりに、例えば、発泡体または気体もしくはゴム構造が満たされた弾性容器が用いられる。これらは環状の空間4の中に配置される。これは、また線要素1を通して導かれた流体の凍結による線要素1内の圧力の危険な増加を避けることを可能とする。
【0040】
流体線2の他の接続形状は同様に考えられる。筐体が流体線より軸方向に短く実装または形成されることは必ずしも必要としない。例えば、代わりに筐体は接続形状を超えて突き出ることができ、環境影響に対する保護となることもできる。
【0041】
示された4つの開口の代わりに、例えば、異なった数の開口、3つまたは5つの開口を用いることができる。開口の代わりに、環状の割れ目を提供することもできる。しかしながら、この場合、対応する軸方向の流体線の部分の位置を確実にすることが、筐体の中に必要になる。
【0042】
本発明による実施形態を通して、流体密封の環状空間は流体線2と筐体3の間に提供され、これが流体線2を通して導かれた流体が凍る際の圧力の均一化のために用いられる。流体の凍結による線要素上に働く圧力の負荷はこれにより減少され、その結果、圧力の負荷は、線要素に対する損傷が予想されない、危機的でない範囲に留まる。隣接した要素への損傷も、これにより防がれる。
【0043】
上記の例は、単に例示の目的のために提示されたものであり、本発明の制限として構成されるものではないことに注意すべきである。本発明は例示的な実施形態を参照し記載されたが、ここで用いられた言葉は、制限の言葉ではなく、記載と例示の言葉と理解すべきである。添付の請求項の範囲内で、本発明の範囲と概念から、その態様を逸脱することなく、ここで述べられたようにおよび補正によって、変形は可能である。本発明は、特定の手段、材料および形態に関して、ここで記載されたが、本発明は、ここで開示された特別なものに制限されない。むしろ、本発明は、添付された請求項の範囲内で機能的に同等な構成、方法および用途に拡張される。
【符号の説明】
【0044】
1 線要素
2 流体線
3 筐体
4 環状の空間
5、6 輪フランジ
7、8 密封要素
9、10 接続形状
11 留め輪
12 フランジ
13 開口
14 内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体線2と、
半径方向に流体密封の手法で前記流体線2を囲むために構成および配置された筐体3と、
を含み、環状の空間4が前記流体線2と前記筐体3の間に形成され、少なくとも一部は圧縮性の媒体で満たされ、前記流体線2は前記環状の空間4の内部に少なくとも1つの開口13を有する線要素1。
【請求項2】
前記環状の空間4は、さらに軸方向の境界の間に形成される請求項1に記載の線要素1。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口13が、前記軸方向の境界から離れて位置する請求項2に記載の線要素1。
【請求項4】
前記圧縮性の媒体は、前記筐体3の中に閉じこめられた空気を含む請求項1に記載の線要素1。
【請求項5】
前記圧縮性の媒体は、発泡体を含む請求項1に記載の線要素1。
【請求項6】
前記発泡体は、閉じた純粋な発泡体である請求項5に記載の線要素1。
【請求項7】
前記筐体3は、圧縮可能な流体を含むために構成された弾性の容器を含む請求項1に記載の線要素1。
【請求項8】
前記圧縮可能な流体は、空気である請求項7に記載の線要素1。
【請求項9】
前記筐体3は、環状のスリーブを含み、前記軸方向の境界は、輪フランジ5、6を含む請求項2に記載の線要素1。
【請求項10】
前記輪フランジ5、6は、粘着性の力によって前記流体線2に接続される請求項9に記載の線要素1。
【請求項11】
前記輪フランジ5、6は、前記流体線2とひとつなぎで接続される請求項9に記載の線要素1。
【請求項12】
1つの密封要素7、8が、それぞれ前記筐体3と前記輪フランジ5、6の間に配置される請求項9に記載の線要素1。
【請求項13】
前記少なくとも1つの開口13は、環状の割れ目として形成される請求項1に記載の線要素1。
【請求項14】
前記少なくとも3つの開口13は、前記流体線2の周囲に一様に配置された4つ又は5つの開口13のいずれかを含む請求項1に記載の線要素1。
【請求項15】
前記少なくとも3つの開口13は、前記流体線2の周囲に一様に配置される請求項14に記載の線要素1。
【請求項16】
前記流体線2は、少なくとも1つの端で、接続形状を有する請求項1に記載の線要素1。
【請求項17】
前記接続形状は、挿入領域9、10を含む請求項16に記載の線要素1。
【請求項18】
筐体3と流体線2の間に環状の空間4を形成するため、前記流体線2上で前記筐体3を引くことを含み、
少なくとも1つの開口13が、前記環状の空間4と連絡するため前記流体線2の中に形成される線要素1を形成するための方法。
【請求項19】
前記流体線2は、前記環状の空間4をさらに形成する軸方向の境界を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記軸方向の境界と前記筐体3との間にそれぞれの密封をおくことをさらに含む請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67915(P2012−67915A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−201672(P2011−201672)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(591044393)ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】