説明

線路特性演算装置および線路特性演算方法

【課題】人工地絡試験を行うことなく高精度かつ的確に地絡継電器の整定が行えるように線路特性を求めることができる線路特性演算装置および線路特性演算方法を提供する。
【解決手段】線路特性演算装置10は、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗RGPTと並列に接続されたかつ直列接続された測定用抵抗Rmおよび切替スイッチSWと、切替スイッチSWの切替前後の接地形計器用変圧器3の三次電圧V3に基づいてωC値(YCまたはYC−YL)を測定するためのωC測定部11と、ωC測定部11によって測定されたωC値に基づいて地絡事故時の電力系統全体の地絡電流I0を算定し、算定した地絡電流I0に基づいて地絡事故時に第1乃至第nの配電線f1〜fnを流れる第1乃至第nの配電線地絡電流を算定して、第1乃至第nの配電線f1〜fnの線路特性を算定する線路特性演算部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に設置された地絡継電器の整定用のデータである線路特性を得るのに好適な線路特性演算装置および線路特性演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統に設置されている地絡過電圧継電器(OVG)や地絡方向継電器(DGR)などの地絡継電器の整定(感度調整)は、整定すべき動作点を人工地絡試験によって確認することにより行っている。
【0003】
たとえば、本出願人による下記の特許文献1には、相ごとの地絡抵抗に対して発生する零相電圧の特性(母線地絡特性)および電力系統の配電線(フィーダ)ごとに1相が任意の抵抗またはコンダクタンスで地絡した場合の各配電線に設けた零相変流器(ZCT)の一次電流値と零相電圧に対する位相の特性(線路特性)を算出し、かつ、対地静電容量不平衡を評価するようにした配電線地絡保護リレー試験方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、人工地絡試験では、以下に示すような問題が生じていた。
(1)人工地絡試験は活線作業であるため、作業員の危険を伴う。
(2)人工地絡試験は大掛かりな作業であるため、費用が高い。
(3)人工地絡試験を行うと電力系統全体に地絡の影響が及ぶため、電力系統に接続された顧客に継電器のロックをしてもらう必要がある。
【0005】
そこで、人工地絡試験を行うことなく地絡継電器の動作点決定用のデータである対地静電容量を測定する手法として、下記の特許文献2には、非接地電力系統に接続された接地変圧器(本明細書でいう接地形計器用変圧器(GPT)3であるため、以下では「接地形計器用変圧器3」と称する。)の三次側に測定用アドミッタンス(本明細書でいう測定用抵抗Rmであるため、以下では「測定用抵抗Rm」と称する。)を接続して、測定用抵抗Rmの接続前後の接地形計器用変圧器の三次電圧(残留零相電圧)から三相一括の対地静電容量C(以下、「対地静電容量C」と称する。)を求めるようにした、電力系統の対地静電容量の測定装置が開示されている。
下記の特許文献3には、検出すべき地絡抵抗値を整定しておくだけで、上述した電力系統の対地静電容量の測定装置における測定原理を用いた対地静電容量Cの測定から地絡継電器の動作電圧の最適化までを自動的に行えるようにした地絡保護装置が開示されている。
【0006】
また、計算のみで地絡継電器の整定を行う手法として、電力系統の線路の架空線およびケーブルの延長などから一線地絡時の地絡電流を計算する手法(以下、「第1の整定手法」と称する。)や、線路の線種および施設条件などから対地静電容量を計算によって求めて地絡時の零相電圧および零相電流を計算する手法(以下、「第2の整定手法」と称する。)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3312172号公報
【特許文献2】特公平06−92997号公報
【特許文献3】特許第2904748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された配電線地絡保護リレー試験方法では、母線地絡特性および線路特性を多数回の人工地絡操作(人工的に地絡を起こす操作)をして測定していたものを、地絡していないときの残留電圧および残留電流と1回の母線の1相地絡時の零相電圧および零相電流の測定に基づいて算出しているが、1回の人工地絡操作は必要でなくすことはできず、この人工地絡操作には安全に対する十分な配慮が必要であると同時に大掛かりで労力を要するという問題があった。
【0009】
上記の特許文献2,3に開示された電力系統の対地静電容量の測定手法では、測定した対地静電容量Cから母線地絡特性を求めて地絡継電器の動作電圧を設定することはできるが、線路特性を求めることはできないため、地絡継電器の動作電流および位相の整定を測定に基づいて線路ごとに適確に行うことができないという問題があった。
【0010】
上記の第1の整定手法では、地絡継電器の動作電流の整定を線路ごとの一線地絡電流の計算値に基づいて行うことになるが、この方法では任意の目標とする動作地絡抵抗に対する一線地絡電流および地絡継電器の入力電流値を算定することはできず、残留電流分の影響も加味できないという問題があった。また、相ごとの地絡電流の残留電圧による位相のばらつきを算定することができないために位相の整定根拠が乏しく、また、相ごとに地絡時に発生する零相電圧を残留電圧を加味して求められないために地絡継電器の動作電圧の整定根拠が乏しいなど、適確に整定を行うことができないという問題があった。
【0011】
上記の第2の整定手法では、上記の第1の整定手法での問題に加え、実際の対地静電容量Cを厳密に算定することは困難で誤差要因となり、また、計算および計算に必要な膨大な諸元の把握・管理にも多大な労力を要するという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、人工地絡試験を行うことなく高精度かつ適確に地絡継電器の整定が行えるように線路特性を求めることができる線路特性演算装置および線路特性演算方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の線路特性演算装置は、電力系統の線路特性を得るための線路特性演算装置(10)であって、前記電力系統に接続された接地形計器用変圧器(3)のGPT三次制限抵抗(RGPT)と並列に接続された、かつ、直列接続された測定用抵抗(Rm)および切替スイッチ(SW)と、該切替スイッチの切替前後の前記接地形計器用変圧器の三次電圧(V3)に基づいて前記電力系統全体の対地静電容量(C)による対地アドミッタンス(YC)または合成対地アドミッタンス(YC−YL)を測定するためのωC測定部(11)と、該ωC測定部によって測定された前記対地アドミッタンスまたは前記合成対地アドミッタンスに基づいて地絡事故時の前記電力系統全体の地絡電流(I0)を算定し、該算定した電力系統全体の地絡電流に基づいて地絡事故時に該電力系統の第1乃至第nの配電線(f1〜fn)を流れる第1乃至第nの配電線地絡電流を算定して、該第1乃至第nの配電線の線路特性を算定する線路特性演算部(12)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記線路特性演算部が、第1乃至第3の相残留電圧補償後零相電圧(V0sa〜V0sc)と第1乃至第3の相平衡時零相電圧(V0a〜V0c)との成す角度(θV0sa−θV0a,θV0sb−θV0b,θV0sc−θV0c)だけ前記第1乃至第nの配電線地絡電流の位相を補正し、該位相補正後の第1乃至第nの配電線地絡電流に常時の第1乃至第nの入力残留電流(i00f1〜i00fn)を加算して、前記第1乃至第nの配電線の線路特性を算定してもよい。
前記線路特性演算部が、前記常時の第1乃至第nの入力残留電流を加算した前記位相補正後の第1乃至第nの配電線地絡電流から該常時の第1乃至第nの入力残留電流を除いた電流の前記第1乃至第nの配電線に設置された第1乃至第nの配電線零相変流器(51〜5n)の1次換算値を試験電流として求めてもよい。
前記電力系統が、対地間抵抗(Ro)の小さい電力系統であり、前記ωC測定部が、前記電力系統に接続された接地用変圧器(4)の中性点接地抵抗の抵抗分(RNGR)を前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗(RGPT)と前記電力系統の零相等価回路上で別要素にするとともに、該電力系統に接続された第1乃至第nの配電線補償リアクトル(Lf1〜Lfn)の抵抗分(RL-f1〜RL-fn)の合成抵抗を前記GPT三次制限抵抗と該零相等価回路上で別要素にして、前記合成対地アドミッタンスを求めてもよい。
前記接地形計器用変圧器以外の他の接地形計器用変圧器が前記電力系統に存在する場合には、前記ωC測定部が、該他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にして、前記合成対地アドミッタンスを求めてもよい。
前記ωC測定部が、前記零相等価回路の3線一括対地アドミッタンス(Y00)において前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成リアクトル分(L’)と該第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分および前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗(R3)とを前記対地静電容量と並列に接続して、前記合成対地アドミッタンスを求めてもよい。
前記ωC測定部が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“RGPT”、前記測定用抵抗を“Rm”、前記接地形計器用変圧器の零相内部インピーダンスを“R0+jωL0”、前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成リアクトル分を“L’”、前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分、前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗を“R3”および前記切替スイッチの切替前後の前記三次電圧の位相差を“θ”とすると、以下のωC演算二次方程式を用いて、
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/β)+(1/R3
B=(R02/γ)+(1/R3
D=−(ωL0/β)
E=−(ωL0/γ)
β=R012+(ωL02
γ=R022+(ωL02
01=R0+RGPT
02=R0+(RGPT・Rm)/(RGPT+Rm
前記合成対地アドミッタンスを求めてもよい。
前記切替スイッチを切替制御し、前記ωC測定部に前記対地アドミッタンスまたは前記合成対地アドミッタンスを求めるとともに、前記線路特性演算部に前記線路特性を算出するように制御する制御部(13)をさらに具備してもよい。
前記線路特性演算装置をパーソナルコンピュータ(30)に接続して前記制御部の機能を該パーソナルコンピュータに行わせてもよい。
前記線路特性演算装置を持ち運び可能な線路特性演算装置(20)とし、該持ち運び可能な線路特性演算装置を変圧器盤に接続して前記線路特性を算出してもよい。
本発明の線路特性演算方法は、本発明の線路特性演算装置を用いて電力系統の第1乃至第nの配電線の線路特性を算定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の線路特性演算装置および線路特性演算方法は、以下に示す効果を奏する。
(1)ωC測定による電力系統全体の地絡電流の算定値に基づいて配電線ごとの地絡電流を算定できるため精度が高く、残留電圧による配電線地絡電流の位相の補正ができ、残留電流の影響分を加味して線路特性を算定できるため、計算のみによる手法に比べて地絡継電器の適確な整定を行うことができる。
(2)人工地絡試験に比べて作業の安全性を向上させることができる。
(3)人工地絡試験と同等な精度で適確に地絡継電器の整定を行うことができる。
(4)人工地絡試験と比較して作業が省力化でき、また、誰でもが容易に測定できる。
(5)地絡継電器の整定および最小動作試験のための模擬出力電圧および模擬出力電流を算定または出力したり、他の試験装置の出力制御を行ったりすることができ、容易に試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による線路特性演算装置10について説明するための図であり、(a)は線路特性演算装置10の構成を示すブロック図であり、(b)はωC測定部11の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したωC測定部11における電力系統全体の対地静電容量Cの測定方法について説明するための図であり、(a)は非接地電力系統の零相等価回路を示す図であり、(b)はリアクトル系統の零相等価回路を示す図である。
【図3】地絡抵抗Rgで一線地絡したときの電力系統全体の地絡電流I0の計算について説明するための零相等価回路を示す図である。
【図4】一線地絡事故計算に「鳳−テブナンの定理」を適用した場合の零相等価回路を示す図である。
【図5】第xの外部事故時入力配電線地絡電流i0fx-outおよび第xの内部事故時入力配電線地絡電流i0fx-inの平衡時の残留電圧補償前零相電圧V0を基準とした特性図を示す図である。
【図6】実際の地絡電流について説明するための図である。
【図7】地絡継電器の整定時の試験電流および試験電圧(模擬出力)の計算について説明するための図である。
【図8】分散リアクトル接地系統における測定回路を説明するための図である。
【図9】上記の特許文献2,3に示された零相等価回路を示す図である。
【図10】改良したωC演算二次方程式を導くために使用した零相等価回路を示す図である。
【図11】図1に示した線路特性演算装置10を持ち運び可能な線路特性演算装置20としたときの線路特性試験時の接続状態を示す図である。
【図12】図1に示した線路特性演算装置10を持ち運び可能な線路特性演算装置20としたときの外形図の一例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は蓋の上面図であり、(c)は正面図であり、(d)は側面図であり、(e)はパネル面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の目的を、ωC測定部によって測定された対地アドミッタンスまたは合成対地アドミッタンスに基づいて地絡事故時の電力系統全体の地絡電流を算定し、算定した電力系統全体の地絡電流に基づいて地絡事故時に電力系統の第1乃至第nの配電線を流れる第1乃至第nの配電線地絡電流を算定して、第1乃至第nの配電線の線路特性を算定することにより実現した。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の線路特性演算装置および線路特性演算方法の実施例について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、地絡とは地絡抵抗Rgでの一線地絡をいう。
【0018】
本発明の一実施例による線路特性演算装置10は、図1(a)に示すように、電力系統の母線bus(図4参照)に接続された接地形計器用変圧器(GPT)3のオープンデルタ接続された三次巻線出力である三次電圧V3に基づいて電力系統全体の対地静電容量Cによる対地アドミッタンスYC(ωC値)または合成対地アドミッタンスYC−YL(ωC値)を測定するためのωC測定部11と、ωC測定部11によって求められた対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YLに基づいて地絡事故時の電力系統全体の地絡電流I0を算定し、算定した電力系統全体の地絡電流I0に基づいて地絡事故時に電力系統の第1乃至第nの配電線f1〜fn(図4参照)を流れる第1乃至第nの配電線地絡電流を算定して、第1乃至第nの配電線f1〜fnの線路特性を算定するための線路特性演算部12と、ωC測定部11によって求められた対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YLおよび線路特性演算部12によって求められた線路特性などを表示するための表示部13と、ωC測定部11、線路特性演算部12および表示部13を制御する制御部14とを具備する。
また、線路特性演算装置10は、図1(b)に示すように、直列接続された測定用抵抗Rmおよび切替スイッチSWを内蔵する。測定用抵抗Rmおよび切替スイッチSWは、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗RGPT(接地形計器用変圧器3の3次巻線に接続された制限抵抗)と並列に接続されている。切替スイッチSWは、制御部14によって切替制御される。
【0019】
ここで、ωC測定部11は、図1(b)に示すように、二次電圧V2の位相を基準として切替スイッチSWの切替前後の三次電圧V3の位相を求めてその差(位相差θ)を算出する位相差算出部11aと、位相差算出部11aで算出された位相差θに基づいて対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YL(ωC値)を算出するωC算出部11bとを備える。
【0020】
ωC測定部11は、以下に示す手順1に従って対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YL(ωC値)を求める。
(手順1)電力系統全体のωC値の測定(ωC測定)
図2(a)に零相等価回路を示す非接地電力系統については、上記の特許文献2,3に開示された電力系統の対地静電容量の測定手法と同様にして、電力系統に接続された接地形計器用変圧器3(図4参照)の三次側に測定用抵抗Rm(不図示)をGPT三次制限抵抗RGPTと並列に接続し、切替スイッチSWによる測定用抵抗Rmの接続前後の接地形計器用変圧器3の三次電圧V3の位相差θを計測し、電力系統全体の対地静電容量CのアドミッタンスωCを変数として位相差θについて成立する(1)式に示すωC演算二次方程式の解(ωC値)を求めることにより、電力系統全体の対地静電容量Cによる対地アドミッタンスYC(ωC値)を測定する。
GPT×Rm×tanθ×(ωC)2−(RGPT−Rm)×ωC+tanθ=0 (1)
【0021】
図2(b)に零相等価回路を示すリアクトル系統についても、同様にしてωC値を求めることにより、電力系統全体の対地静電容量Cによる対地アドミッタンスYCが電力系統全体の補償リアクトルLによる対地アドミッタンスYLで補償された後の合成対地アドミッタンスYC−YL(ωC値)を測定する。
ここで、リアクトル系統とは、電力系統に対地静電容量Cによる充電電流を補償リアクトルLにより打ち消して低減する目的で中性点接地リアクトルを設置した以下に示す電力系統などをいう。
(a)中性点接地リアクトルを線路に分散して設置した電力系統(分散リアクトル接地系統)
(b)変電所の母線に集中して設置した電力系統(集中リアクトル接地系統)
この2つの電力系統では、地絡電流が小さくなるため、地絡方向継電器の動作電流を補うために、接地変圧器(GTR)4(図4参照)に中性点接地抵抗(NGR)が設置される。
(c)中性点接地抵抗を設置せずに、充電電流の一部を補償する目的で中性点接地リアクトルのみを設置した電力系統
【0022】
手順1により、人工地絡試験を行うことなく母線地絡特性が求まり、地絡継電器の動作電圧の整定を行うことができるとともに、電力系統の相ごとの地絡抵抗Rgに対する電力系統全体の地絡電流を求めることができる。
【0023】
線路特性演算部12は、以下に示す手順2〜9に従って線路特性を求める。
(手順2)地絡事故時(地絡抵抗Rgで一線地絡(本明細書では、「一線地絡」と「地絡」とは同意である。)した時)の電力系統全体の地絡電流I0の算定
電力系統全体の対地アドミッタンスY0(ベクトル)は、対地間抵抗(対地静電容量Cに並列な抵抗成分)を“Ro”とすると、(2−1)式で表される(図3参照)。
0=jωC+1/Ro (2−1)
したがって、地絡事故時の零相電圧(以下、「残留電圧補償前零相電圧」と称する。)を“V0”(ベクトル)とすると、地絡事故時の電力系統全体の地絡電流I0(ベクトル)は、(2−2)式で表される
0=V0×Y0
=V0×(jωC+1/Ro) (2−2)
(=I0C+I0R
ここで、
0C(ベクトル):地絡事故時の電力系統全体の対地静電容量Cによる地絡電流
0R(ベクトル):地絡事故時の対地間抵抗Roによる地絡電流
線路特性演算部12は、(2−2)式を用いて地絡電流I0を算定する。
なお、対地間抵抗Roとしては、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗RGPT(一次換算値)、接地変圧器4の中性点接地抵抗の抵抗分RNGR(接地変圧器抵抗、一次換算値)、補償リアクトルLの抵抗分RL(一次換算値)などが挙げられる。
また、本明細書では、「残留電圧」および「残留電流」とは、電力系統に地絡事故が発生していない健全状態において、常時、電力系統に存在している零相電圧および零相電流をという。
【0024】
(手順3)地絡事故時の電力系統全体の対地静電容量Cによる地絡電流I0Cの算定
地絡事故時の電力系統全体の対地静電容量Cによる地絡電流I0C(ベクトル)は、(2−3)式で表される。
0C=V0×jωC (2−3)
線路特性演算部12は、(2−3)式を用いて地絡電流I0Cを算定する。
【0025】
(手順4)地絡事故時の第1乃至第nの配電線対地静電容量Cf1〜Cfnによる第1乃至第nの配電線対地静電容量地絡電流I0C-f1〜I0C-fnおよび母線対地静電容量Cbusによる母線対地静電容量地絡電流I0C-busの算定
図4に示す一線地絡事故計算に「鳳−テブナンの定理」を適用した場合の零相等価回路で示されるように、地絡事故時に第1乃至第nの配電線f1〜fnの第1乃至第nの配電線対地静電容量Cf1〜Cfnによって流れる第1乃至第nの配電線地絡電流I0C-f1〜I0C-fn(ベクトル)と母線busの母線対地静電容量Cbusによって流れる母線対地静電容量地絡電流I0C-bus(ベクトル)とは、第1乃至第nの配電線f1〜fnおよび母線busの対地充電電流分担率(上記の第1または第2の整定手法およびこれらを併用するなどの適当な方法により求めた第1乃至第nの配電線対地静電容量Cf1〜Cfnおよび母線対地静電容量Cbusの電力系統全体の対地静電容量Cに対する割合)を“kf1〜kfn”および“kbus”とすると、(2−4)式および(2−5)式で表される。
0C-fx=I0C×kfx (2−4)
0C-bus=I0C×kbus (2−5)
ここで、
x=1〜n(以下、同様)
f1+kf2+・・・+kfn+kbus=1
線路特性演算部12は、(2−4)式および(2−5)式を用いて第1乃至第nの配電線対地静電容量地絡電流I0C-f1〜I0C-fnおよび母線対地静電容量地絡電流I0C-busを算定する。
【0026】
上述した手順2〜4により、地絡電流I0Cは測定により求められるため、上記の第1および第2の整定手法の計算のみによる場合よりも十分に精度よく第1乃至第nの配電線対地静電容量地絡電流I0C-f1〜I0C-fnおよび母線対地静電容量地絡電流I0C-busを求めることができる。
【0027】
(手順5)地絡事故時の対地間抵抗Roによる地絡電流I0Rの算定(図4参照)
地絡事故時の対地間抵抗Roによる地絡電流I0Rは、(2−6)式で表される。
0R=V0/Ro
=V0×(1/RGPT+1/RNGR+1/RL
=V0/RGPT+V0/RNGR+V0/RL (2−6)
(=I0R-GPT+I0R-NGR+I0R-L
ここで、
0R-GPT=V0/RGPT:GPT三次制限抵抗RGPTによる地絡電流
0R-NGR=V0/RNGR:接地変圧器4の中性点接地抵抗の抵抗分RNGRによる地絡電流
0R-L=V0/RL:補償リアクトルLの抵抗分RLによる地絡電流
線路特性演算部12は、(2−6)式を用いて対地間抵抗Roによる地絡電流I0Rを算定する。
なお、非接地電力系統の場合には、I0R-NGR=I0R-L=0となり、中性点接地リアクトルのみを設置した電力系統の場合にはI0R-NGR=0となる。
また、補償リアクトルLの抵抗分RLによる地絡電流I0R-Lは、第1乃至第nの配電線f1〜fnに設置されている第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分(一次換算値)を“RL-f1〜RL-fn”とすると、(2−7)式で表される。
0R-L=V0/RL
=V0×(1/RL-f1+1/RL-f2+・・・+1/RL-fn) (2−7)
(=I0R-RL-f1+I0R-RL-f2+・・・+I0R-RL-fn
ここで、
0R-RL-f1〜I0R-RL-fn:第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnによる地絡電流
線路特性演算部12は、(2−7)式を用いて補償リアクトルLの抵抗分RLによる地絡電流I0R-Lを算定する。
【0028】
(手順6)地絡事故時の第1乃至第nの配電線f1〜fnに流れる第1乃至第nの配電線地絡電流の算定
地絡事故時に第1乃至第nの配電線f1〜fnに流れる第1乃至第nの配電線地絡電流は、電力系統全体および全ての配電線内での各相対地静電容量が完全に等しい場合(平衡時)の地絡電流(電力系統全体の対地静電容量Cによる地絡電流I0)と残留電流成分との和として得られる(論文、北川 稔、「高圧配電線系統の地絡保護継電方式に関する研究」参照)。
(a)平衡時の配電線地絡電流(図4参照)
(a−1)外部事故時(第1乃至第nの配電線f1〜fnの自身の配電線以外での地絡事故時)
第1乃至第nの配電線f1〜fnに設置された第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側には、第1乃至第nの配電線f1〜fnの第1乃至第nの配電線対地静電容量Cf1〜Cfnによる第1乃至第nの配電線対地静電容量地絡電流I0C-f1〜I0C-fnと第1乃至第nの配電線f1〜fnの第1乃至第nの配電線対地間抵抗Ro-f1〜Ro-fnによる第1乃至第nの配電線対地間抵抗地絡電流I0R-f1〜I0R-fnとが母線busに向かって流れるため、第1乃至第nの配電線f1〜fnを流れる第1乃至第nの外部事故時配電線地絡電流I0f1-out〜I0fn-out(ベクトル)は、(2−8)式で表される。
0fx-out=−(I0C-fx+I0R-fx) (2−8)
ここで、
符号は、母線busと反対側に向かって流れる地絡電流の向きを正とする(以下、同様)。
(a−2)内部事故時(第1乃至第nの配電線f1〜fnの自身の配電線での地絡事故時)
たとえば第1の配電線f1で地絡事故が発生した場合には、第1の配電線f1に設置された第1の配電線零相変流器51の1次側には、電力系統全体の地絡電流I0が母線busと反対側に向かって流れるとともに、第1の配電線対地静電容量Cf1による第1の配電線対地静電容量地絡電流I0C-f1と第1の配電線対地間抵抗Ro-f1による第1の配電線対地間抵抗地絡電流I0R-f1とが母線busに向かって流れるため、第1の配電線f1を流れる第1の内部事故時地絡電流I0f1-in(ベクトル)は、(2−9)式で表される。
0f1-in=I0−(I0C-f1+I0R-f1
=(I0C+I0R)−(I0C-f1+I0R-f1
=(I0C−I0C-f1)+(I0R−I0R-f1) (2−9)
第2乃至第nの内部事故時配電線地絡電流I0f2-in〜I0fn-inについても同様である。
(b)残留電流成分
地絡事故時の第1乃至第nの配電線f1〜fnの第1乃至第nの残留電流成分I00f1’〜I00fn’は、地絡継電器の地絡検出感度程度の地絡抵抗Rgでは第1乃至第nの配電線f1〜fnの常時の第1乃至第nの残留電流I00f1〜I00fnとほとんど変化しないため、I00fx’=I00fx(x=1〜n)として取り扱うことができる(論文、北川 稔、「高圧配電線系統の地絡保護継電方式に関する研究」参照)。
よって、第1乃至第nの配電線f1〜fnについて、常時の第1乃至第nの残留電流I00f1〜I00fnを計測する。
なお、常時の第1乃至第nの残留電流I00f1〜I00fnは、通常、微小電流であるため、ベクトルとして計測することは困難である。そこで、第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの2次電流(以下、「常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fn」と称する。)の大きさのみをクランプ式電流計で測定し演算できる容易な手法を考案した。
以下ではこの手法について説明するが、常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnの位相も測定して演算するようにしてもよい。
【0029】
(手順9)第1乃至第nの配電線f1〜fnの線路特性の算定
第1乃至第nの配電線f1〜fnに設置された地絡継電器には、平衡時の配電線地絡電流の第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの2次電流と常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnとを加算した電流が入力されるため、線路特性演算部12は、以下の手順で線路特性を描画する。
(a)平衡時の入力配電線地絡電流(平衡時の残留電圧補償前零相電圧V0を基準とした特性図を示す図5参照)
第1乃至第nの外部事故時入力配電線地絡電流i0f1-out〜i0fn-out(ベクトル)および第1乃至第nの内部事故時入力配電線地絡電流i0f1-in〜i0fn-in(ベクトル)は、(2−10)式および(2−11)式で表される。
0fx-out=I0fx-out/nzctfx (2−10)
0fx-in=I0fx-in/nzctfx (2−11)
ここで、
zctfx:第xの配電線零相変流器5xの変流比(=1次電流/2次電流)
(b)実際の地絡電流(図6参照)
(b−1)各相の地絡電流の位相補正
線路特性図は、赤相、白相および青相(第1乃至第3の相)の赤相、白相および青相残留電圧補償後零相電圧V0sa〜V0scを基準に(0°として)描画する。赤相、白相および青相残留電圧補償後零相電圧V0sa〜V0scは、赤相、白相および青相平衡時零相電圧V0a〜V0cと残留電圧V00との和になる。よって、(2−12)式に示すように、赤相、白相および青相位相補正値θa〜θc(赤相、白相および青相残留電圧補償後零相電圧V0sa〜V0scと赤相、白相および青相平衡時零相電圧V0a〜V0cとの成す角度分(θV0sa−θV0a,θV0sb−θV0bおよびθV0sc−θV0c))だけ、第1乃至第nの外部事故時入力配電線地絡電流i0f1-out〜i0fn-outの位相および第1乃至第nの内部事故時入力配電線地絡電流i0f1-in〜i0fn-inの位相を補正する。
θa=θV0sa−θV0a
θb=θV0sb−θV0b (2−12)
θc=θV0sc−θV0c
その結果、第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nから各地絡継電器に入力される第1乃至第nの赤相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-a’〜i0fn-out-a’(ベクトル)、第1乃至第nの白相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-b’〜i0fn-out-b’(ベクトル)および第1乃至第nの青相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-c’〜i0fn-out-c’(ベクトル)は、第1乃至第nの外部事故時入力配電線地絡電流i0f1-out〜i0fn-outの位相を“θi0f1-out〜θi0fn-out”とすると、(2−13)式で表わされる。
0fx-out-a’=i0fx-out∠(θi0fx-out−θa
0fx-out-b’=i0fx-out∠(θi0fx-out−θb) (2−13)
0fx-out-c’=i0fx-out∠(θi0fx-out−θc
また、第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nから各地絡継電器に入力される第1乃至第nの赤相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-in-a’〜i0fn-in-a’(ベクトル)、第1乃至第nの白相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1in-b’〜i0fn-in-b’(ベクトル)および第1乃至第nの青相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-in-c’〜i0fn-in-c’(ベクトル)は、第1乃至第nの内部事故時入力配電線地絡電流i0f1-in〜i0fn-inの位相を“θi0f1-in〜θi0fn-in”とすると、(2−14)式で表わされる。
0fx-in-a’=i0fx-in∠(θi0fx-in−θa
0fx-in-b’=i0fx-in∠(θi0fx-in−θb) (2−14)
0fx-in-c’=i0fx-in∠(θi0fx-in−θc
(b−2)常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnの加算
上記(2−13)式で表わされる第1乃至第nの赤相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-a’〜i0fn-out-a’、第1乃至第nの白相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-b’〜i0fn-out-b’および第1乃至第nの青相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-c’〜i0fn-out-c’に第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nから各地絡継電器に入力される常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnを加算した第1乃至第nの赤相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-a〜i0fn-out-a(ベクトル)、第1乃至第nの白相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-b〜i0fn-out-b(ベクトル)および第1乃至第nの青相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-c〜i0fn-out-c(ベクトル)は、常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnの位相を“α”とすると、(2−15)式で表わされる。
0fx-out-a=i0fx-out-a’ +i00fx∠α
=i0fx-out∠(θi0fx-out−θa)+i00fx∠α
0fx-out-b=i0fx-out-b’ +i00fx∠α
=i0fx-out∠(θi0fx-out−θb)+i00fx∠α (2−15)
0fx-out-c=i0fx-out-c’ +i00fx∠α
=i0fx-out∠(θi0fx-out−θc)+i00fx∠α
また、上記(2−14)式で表わされる第1乃至第nの赤相内部事故時位相補正後配電線地絡電流i0f1-in-a’〜i0fn-in-a’、第1乃至第nの白相内部事故時位相補正後配電線地絡電流i0f1-in-b’〜i0fn-in-b’および第1乃至第nの青相内部事故時位相補正後配電線地絡電流i0f1-in-c’〜i0fn-in-c’に常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnを加算した第1乃至第nの赤相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-a〜i0fn-in-a(ベクトル)、第1乃至第nの白相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-b〜i0fn-in-b(ベクトル)および第1乃至第nの青相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-c〜i0fn-in-c(ベクトル)は、(2−16)式で表わされる。
0fx-in-a=i0fx-in-a’+i00fx∠α
=i0fx-in∠(θi0fx-in−θa)+i00fx∠α
0fx-in-b=i0fx-in-b’+i00fx∠α
=i0fx-in∠(θi0fx-in−θb)+i00fx∠α (2−16)
0fx-in-c=i0fx-in-c’+i00fx∠α
=i0fx-in∠(θi0fx-in−θc)+i00fx∠α
(2−15)式および(2−16)式と図6とは、第1乃至第nの赤相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-a〜i0fn-out-a、第1乃至第nの白相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-b〜i0fn-out-b、第1乃至第nの青相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-c〜i0fn-out-c、第1乃至第nの赤相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-a〜i0fn-in-a、第1乃至第nの白相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-b〜i0fn-in-bおよび第1乃至第nの青相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-c〜i0fn-in-ccが、第1乃至第nの赤相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-a’〜i0fn-out-a’、第1乃至第nの白相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-b’〜i0fn-out-b’、第1乃至第nの青相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-out-c’〜i0fn-out-c’、第1乃至第nの赤相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-in-a’〜i0fn-in-a’、第1乃至第nの白相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1in-b’〜i0fn-in-b’および第1乃至第nの青相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流i0f1-in-c’〜i0fn-in-c’と大きさが“i00f1〜i00fn”で位相が“α(0°≦α<360°)”のベクトルとの和の集合として、円で表されることを示す。
このようにして、線路特性演算部12は、第1乃至第nの配電線f1〜fnの各相での外部事故時および内部事故時の実際の地絡電流の特性図である線路特性を算定する。
【0030】
制御部14は、線路特性演算を行う際に、切替スイッチSWを切替制御し、ωC測定部11に対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YLを測定するように制御し、線路特性演算部12に線路特性を算定するように制御するとともに、ωC測定部11によって求められた対地アドミッタンスYCまたは合成対地アドミッタンスYC−YLおよび線路特性演算部12によって求められた線路特性などを表示するように表示部13を制御する。
【0031】
次に、線路特性演算部12における地絡継電器の整定時の試験電流および試験電圧(模擬出力)の計算について説明する(図7参照)。
以下に示すようにして、線路特性演算部12は、整定の目標動作地絡抵抗など任意の地絡抵抗Rgに対する試験電流および試験電圧(模擬出力電流および模擬出力電圧)を計算する。
(1)試験電流
常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnとしては、実際に第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの2次側に流れている電流を使い、また、上述したようにして求めた線路特性から得られる第1乃至第nの赤相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-a〜i0fn-out-a、第1乃至第nの白相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-b〜i0fn-out-b、第1乃至第nの青相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-out-c〜i0fn-out-c、第1乃至第nの赤相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-a〜i0fn-in-a、第1乃至第nの白相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-b〜i0fn-in-bおよび第1乃至第nの青相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流i0f1-in-c〜i0fn-in-ccから常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnを除いた電流の第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次換算値を第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側に出力したものを、試験電流とする。
すなわち、(3−1)式で表わされる第1乃至第nの赤相外部事故時試験電流Itestf1-out-a〜itestfn-out-a(地絡抵抗Rgで他の配電線の赤相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)、第1乃至第nの白相外部事故時試験電流Itestf1-out-b〜itestfn-out-b(地絡抵抗Rgで他の配電線の白相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)および第1乃至第nの青相外部事故時試験電流Itestf1-out-c〜itestfn-out-c(地絡抵抗Rgで他の配電線の青相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)を外部事故時の試験電流とする。
testfx-out-a=i0fx-out-a’×nzctfx
testfx-out-b=i0fx-out-b’×nzctfx (3−1)
testfx-out-c=iofx-out-c’×nzctfx
また、(3−2)式で表わされる第1乃至第nの赤相内部事故時試験電流Itestf1-in-a〜itestfn-in-a(地絡抵抗Rgで自配電線の赤相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)、第1乃至第nの白相内部事故時試験電流Itestf1-in-b〜itestfn-in-b(地絡抵抗Rgで自配電線の白相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)および第1乃至第nの青相内部事故時試験電流Itestf1-in-c〜itestfn-in-c(地絡抵抗Rgで自配電線の青相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電流)を内部事故時の試験電流とする。
testfx-in-a=i0fx- in -a’×nzctfx
testfx- in -b=i0fx- in -b’×nzctfx (3−2)
testfx-out-c=iofx- in -c’×nzctfx
これにより、常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnは、通常、微小電流であり、ベクトルとして計測して、第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの2次回路に同量を模擬出力することは困難であるが、この手法によれば、計算した平衡時の地絡電流分のみを第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側に模擬出力し、常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnは実在する電流により試験できるため、簡単に試験を行うことができる。
(2)試験電圧(各配電線共通)
(3−3)式で表わされる赤相試験電圧Vtest-a(地絡抵抗Rgで赤相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電圧)、白相試験電圧Vtest-b(地絡抵抗Rgで白相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電圧)および青相試験電圧Vtest-c(地絡抵抗Rgで青相が一線地絡した場合を模擬した模擬出力電圧)を、地絡継電器の電圧入力回路に入力する試験電圧とする。
test-a=V0sa∠0°
test-b=V0sb∠0° (3−3)
test-c=V0sc∠0°
なお、この試験電圧の計算は、整定の目標動作地絡抵抗から行っているが、整定したい動作電圧値や動作電流値に基づいて行ってもよい。
【0032】
制御部14は、線路特性演算部12によって求められた試験電流および試験電圧を表示するように表示部13を制御する。
【0033】
次に、分散リアクトル接地系統に対して線路特性演算装置10を使用する場合におけるωC測定部11の動作について、図8乃至図10を参照して詳しく説明する。
分散リアクトル接地系統における測定回路は、図8に示すように、非接地高圧電力系統における測定回路に、分散リアクトル接地系統特有の設備である接地変圧器4および第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnを加えたものとなる。
したがって、上記の特許文献2,3に開示された測定原理を応用して分散リアクトル接地系統での対地静電容量Cの測定を行う場合には、測定原理上影響する諸元として、接地用変圧器4の中性点接地抵抗の抵抗分RNGRと第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnとがある。
【0034】
そこで、中性点接地抵抗の抵抗分RNGRは零相回路の抵抗分であるため、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗RGPTに並列に接続されるものとして、従来のωC演算二次方程式にGPT三次制限抵抗RGPTと中性点接地抵抗の抵抗分RNGRとの合成抵抗を求めて代入して計算してみた。具体的には、上記の特許文献2,3に示された図9に示す零相等価回路においてGPT三次制限抵抗RGPTに中性点接地抵抗の抵抗分RNGRが並列に接続されるものとして、対地静電容量Cの対地アドミッタンス(ωC値)を計算してみた。
また、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnについては、ωC測定を行う場合以外には通常取り扱う必要がないため、認識がなく単にリアクタンス分のみ(リアクタンス分については、静電容量分と相殺されて電力系統の対地静電容量となるため、計算上特に取り扱う必要はない)として考えて、対地アドミッタンス(ωC値)を計算してみた。
しかし、この計算方法では、対地アドミッタンス(ωC値)の誤差が大きくなり、ωC測定できなかった。
【0035】
そのため、この計算方法ではωC測定できなかった原因を計算結果に基づいて検討したところ、中性点接地抵抗の抵抗分RNGRの抵抗値が小さく、また、ωC測定中の接地形計器用変圧器3の内部インピーダンス(抵抗分およびリアクタンス分)の影響から、単にGPT三次制限抵抗RGPTと中性点接地抵抗の抵抗分RNGRとを並列として合成して取り扱うことができなくなっていることが原因であると判明した。
この解決策として、接地形計器用変圧器3を介して電力系統に存在する零相回路の抵抗分(すなわち、中性点接地抵抗の抵抗分RNGR)をGPT三次制限抵抗RGPTと対地アドミッタンス(ωC値)を計算する零相等価回路上で別の要素にして計算する方法を開発した。
【0036】
また、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnについては、当初計算上取り扱っていなかったが、実電力系統で測定した結果、ωC測定値に実用上無視できない程度大きな誤差を生じた。そこで、測定した電力系統の電気回路の構成機器と計算条件の整合を再確認・照合して、ωC測定結果に影響を与えるものを検証した結果、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnが影響していることが判明した。
これは、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnの影響は1台当たりではωC測定における計算に影響を与えない程度に十分小さいが、実電力系統では多数の配電線補償リアクトルが分散して並列接地されているため、これが合成されると想定以上に影響が大きくなり計算に影響を与えていることが原因であった。
このため、使用されている配電線補償リアクトルの1台当りの抵抗分の値を調査し、これを並列接地された台数分だけ合成し、上述した中性点接地抵抗の抵抗分RNGRの場合と同様にGPT三次制限抵抗RGPTと対地アドミッタンス(ωC値)を計算する零相等価回路上で別の要素にして計算するように改良した。
【0037】
さらに、たとえば変電所構内の測定する電力系統に接地形計器用変圧器が複数台存在する場合は、ωC測定時に零相電圧を計測する接地形計器用変圧器3以外の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も上述した中性点接地抵抗の抵抗分RNGRおよび第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnと同様に計算するように改良した。
【0038】
図10に、改良したωC演算二次方程式を導くために使用した零相等価回路を示す。
この零相等価回路は、図9に示した零相等価回路の3線一括対地アドミッタンスY00において、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの合成リアクトル分L’と、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの合成抵抗分、中性点接地抵抗の抵抗分RNGRおよび他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗R3とを追加(対地静電容量Cと並列に接続)したものである。
この零相等価回路を用いて導出した3線一括対地アドミッタンスY00(接続前アドミッタンス)と切替スイッチSWをオンすることにより並列接続される既知のアドミッタンスY01(測定用抵抗Rm)を3線一括対地アドミッタンスY00に加えたときの合成アドミッタンスY02(接続後アドミッタンス)とは、(4−1)式および(4−2)式でそれぞれ表される。
00=j(ωC−1/ωL’)+1/R3+1/(jωL+R0+RGPT) (4−1)
02=j(ωC−1/ωL’)+1/R3+1/{jωL+R0+(RGPT・Rm)/(RGPT+Rm)} (4−2)
したがって、相電圧を“E”とし、Y00’を3線一括対地アドミッタンスの不平衡分とすると、切替スイッチSWをオフしているときの接続前残留電圧V0’と切替スイッチSWをオンしたときの接続後残留電圧V0”とは(4−3)式および(4−4)式でそれぞれ表される。
0’=−E・Y00’/Y00 (4−3)
0”=−E・Y00’/Y02 (4−4)
(4−3)式および(4−4)式より、3線一括対地アドミッタンスY00は、合成アドミッタンスY02、接続前残留電圧V0’および接続後残留電圧V0”を用いて(4−5)式で表される。
00=(V0”/V0’)Y02 (4−5)
その結果、切替スイッチSWをオンすることによって接地形計器用変圧器3に接続されるアドミッタンスを3線一括対地アドミッタンスY00から合成アドミッタンスY02に切り換えたときに接地形計器用変圧器3の三次側に生じる残留電圧の位相差θ(=φ”−φ’)はこのアドミッタンスの切換前後のアドミッタンスの位相角の差と一致するため、ωC測定部11は(4−6)式に示すωC演算二次方程式を用いてωC値を求める。
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0 (4−6)
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/β)+(1/R3
B=(R02/γ)+(1/R3
D=−(ωL0/β)
E=−(ωL0/γ)
β=R012+(ωL02
γ=R022+(ωL02
01=R0+RGPT
02=R0+(RGPT・Rm)/(RGPT+Rm
【0039】
なお、この場合の零相等価回路の回路定数は、接地形計器用変圧器3の零相内部インピーダンスの抵抗分R0およびリアクトル分L0と、GPT三次制限抵抗RGPTと、測定用抵抗RMと、第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの合成抵抗分、中性点接地抵抗の抵抗分RNGRおよび他のGPT三次制限抵抗の合成抵抗R3となる。
【0040】
配電線補償リアクトル抵抗分の補正による効果の一例を以下に示す。
配電線補償リアクトルによる補償電流の合計が2.5Aタップ×1箇所および2.0Aタップ×2箇所の計6.5Aで、2.0Aタップの一次抵抗および一次リアクタンスが156Ωおよび1899Ωであり、2.5Aタップの一次抵抗および一次リアクタンスが142Ωおよび1470Ωであるとする。
2.0Aタップの一次抵抗=156Ωを直並列変換(RL直列回路をRL並列回路に変換)すると、約23.3kΩ(=18992/156+156=23273Ω)となり、2.5Aタップの一次抵抗=142Ωを直並列変換すると、約15.4kΩ(=14702/142+142=15360Ω)となる。
したがって、配電線補償リアクトルの抵抗分の合成抵抗は、約23.3kΩと約23.3kΩと約15.4kΩとの並列抵抗となるため、約6.63kΩとなる。
接地変圧器4の一次−三次変圧比をnとし、n2=109.3{=(6900/31/2/381)2}とすると、配電線補償リアクトルの抵抗分の合成抵抗の三次換算値は60.66Ω(=6630/109.3(Ω))となる。
配電線補償リアクトルの抵抗分の合成抵抗は、中性点接地抵抗の抵抗分RNGRと並列になるので、中性点接地抵抗の抵抗分RNGR=5.53Ωとすると、その合成抵抗値は5.07Ωとなる。
この合成抵抗値(=5.07Ω)をR3に代入して対地アドミッタンスωCを計算すると、2.578mSとなり、人工地絡試験の算定値=2.523mSに対する誤差が0.055mS(誤差率=2.2%)となった。一方、配電線補償リアクトル抵抗分の補正をしない場合のωCの計算値は2.761mSとなり、人工地絡試験の算定値=2.523mSに対する誤差が0.238mS(誤差率=9.4%)となった。
このように、配電線補償リアクトル抵抗分の補正を行うことにより誤差が大幅に改善した。
【0041】
ここで、集中リアクトル接地系統の場合には、分散リアクトルの抵抗分が1台のみであるとして取り扱うことで、分散リアクトル接地系統の場合と同様に実施することができる。
また、線路に中性点接地リアクトルのみを複数台設置した電力系統の場合には、接地変圧器4の中性点接地抵抗RNRGがないため、中性点接地抵抗RNRGが無限大であるとして取り扱うことで、分散リアクトル接地系統の場合と同様に実施することができる。
【0042】
なお、線路特性演算装置10をパーソナルコンピュータ(パソコン)に接続して制御部14の機能をパーソナルコンピュータに行わせるようにしてもよい。
【0043】
また、線路特性演算装置10を持ち運び可能な線路特性演算装置20とすることにより、図11に示すように、持ち運び可能な線路特性演算装置20を変圧器盤に接続するとともに、持ち運び可能な線路特性演算装置20をパーソナルコンピュータ30に接続して制御部14の機能をパーソナルコンピュータ30に行わせるようにすれば、操作性の向上を図ることができるとともに、多量の測定条件などのデータの保存・管理を可能とすることができる。
【0044】
図12(a)〜(e)に、線路特性演算装置10を持ち運び可能な線路特性演算装置20としたときの外形図の一例を示す。
この例に示すように、持ち運び可能な線路特性演算装置20の外形の寸法は横422.5mm、縦370.5mmおよび高さ216.5mm(蓋の高さが45mm)であり、小型にすることができる。
【0045】
なお、電力系統によっては接地変圧器4の付加電流回路により第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側に付加電流I0R-NGR-fを付加するものがあるが、このような電力系統では、上記(2−8)式および(2−9)式の代わりに以下に示す(5−1)式および(5−2)式を用いることにより、同様にして線路特性を算定することができる。
0fx-out=−(I0C-fx+I0R-NGR-f+I0R-fx) (5−1)
0f1-in=(I0C−I0C-f1)+(I0R−I0R-NGR-f−I0R-f1) (5−2)
ここで、
0R-NGR-f(=I0R-NGR/nCT):接地変圧器4の付加電流回路により第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側に付加される付加電流
CT 接地変圧器4の付加電流回路用変流器の変流比
【符号の説明】
【0046】
3 接地形計器用変圧器
4 接地変圧器
1〜5n 第1乃至第nの配電線零相変流器
10 線路特性演算装置
11 ωC測定部
11a 位相差算出部
11b ωC算出部
12 線路特性演算部
13 表示部
14 制御部
20 持ち運び可能な線路特性演算装置
30 パーソナルコンピュータ
SW 切替スイッチ
bus 母線
1〜fn 第1乃至第nの配電線
ZCTf1〜nZCTfn 第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの変流比
CT 接地変圧器4の付加電流回路用変流器の変流比
f1〜kfn 第1乃至第nの配電線f1〜fnの対地充電電流分担率
bus 母線busの対地充電電流分担率
C 電力系統全体の対地静電容量
00 不平衡分対地静電容量
bus 母線対地静電容量
f1〜Cfn 第1乃至第nの配電線対地静電容量
ωC 測定する対地静電容量Cの対地アドミッタンス
C 対地静電容量Cによる対地アドミッタンス
0 電力系統全体の対地アドミッタンス
L 補償リアクトルLによる対地アドミッタンス
00 3線一括対地アドミッタンス
00’ 3線一括対地アドミッタンスの不平衡分
01 既知のアドミッタンス
02 合成アドミッタンス
m 測定用抵抗
GPT GPT三次制限抵抗
g 地絡抵抗
o 対地間抵抗
NGR 中性点接地抵抗の抵抗分
L 補償リアクトルLの抵抗分
o-f1〜Ro-fn 第1乃至第nの配電線対地間抵抗
L-f1〜RL-fn 第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分
0+jωL0 接地形計器用変圧器3の零相内部インピーダンス
3 合成抵抗
L 電力系統全体の補償リアクトル
f1〜Lfn 第1乃至第nの配電線補償リアクトル
L’ 合成リアクトル分
E 相電圧
n 残留電圧
2 二次電圧
3 三次電圧
0 地絡事故時の残留電圧補償前零相電圧
0a〜V0c 赤相、白相および青相平衡時零相電圧
0sa〜V0sc 赤相、白相および青相残留電圧補償後零相電圧
00 残留電圧
test-a 赤相試験電圧
test-b 白相試験電圧
test-c 青相試験電圧
V0’ 接続前残留電圧
V0” 接続後残留電圧
0 地絡事故時の電力系統全体の地絡電流
0C 地絡事故時の対地静電容量Cによる地絡電流
0C-f1〜I0C-fn 地絡事故時の第1乃至第nの配電線対地静電容量Cf1〜Cfnによる第1乃至第nの配電線対地静電容量地絡電流
0C-bus 地絡事故時の母線対地静電容量Cbusによる母線対地静電容量地絡電流
0R 地絡事故時の対地間抵抗Roによる地絡電流
0R-GPT GPT三次制限抵抗RGPTによる地絡電流
0R-NGR 接地変圧器4の中性点接地抵抗の抵抗分RNGRによる地絡電流
0R-RL 補償リアクトルLの抵抗分RLによる地絡電流
0R-RL-f1〜I0R-RL-fn 第1乃至第nの配電線補償リアクトルLf1〜Lfnの抵抗分RL-f1〜RL-fnによる地絡電流
0R-f1〜I0R-fn 第1乃至第nの配電線対地間抵抗Ro-f1〜Ro-fnによる第1乃至第nの配電線対地間抵抗地絡電流
0f1-out〜I0fn-out 第1乃至第nの外部事故時配電線地絡電流
0f1-in〜I0fn-in 第1乃至第nの内部事故時配電線地絡電流
00f1〜I00fn 常時の第1乃至第nの残留電流
00f1’〜I00fn’ 地絡事故時の第1乃至第nの残留電流成分
0R-NGR-f 接地変圧器4の付加電流回路により第1乃至第nの配電線零相変流器51〜5nの1次側に付加される付加電流
0f1-out〜i0fn-out 第1乃至第nの外部地絡事故時入力配電線地絡電流
0f1-in〜i0fn-in 第1乃至第nの内部地絡事故時入力配電線地絡電流
00f1〜i00fn 常時の第1乃至第nの入力残留電流
0f1-out-a’〜i0fn-out-a’ 第1乃至第nの赤相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1-out-b’〜i0fn-out-b’ 第1乃至第nの白相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1-out-c’〜i0fn-out-c’ 第1乃至第nの青相外部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1-in-a’〜i0fn-in-a’ 第1乃至第nの赤相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1in-b’〜i0fn-in-b’ 第1乃至第nの白相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1-in-c’〜i0fn-in-c’ 第1乃至第nの青相内部事故時位相補正後入力配電線地絡電流
0f1-out-a〜i0fn-out-a 第1乃至第nの赤相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
0f1-out-b〜i0fn-out-b 第1乃至第nの白相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
0f1-out-c〜i0fn-out-c 第1乃至第nの青相外部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
0f1-in-a〜i0fn-in-a 第1乃至第nの赤相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
0f1-in-b〜i0fn-in-b 第1乃至第nの白相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
0f1-in-c〜i0fn-in-c 第1乃至第nの青相内部事故時残留電流加算後入力配電線地絡電流
testf1-out-a〜itestfn-out-a 第1乃至第nの赤相外部事故時試験電流
testf1-out-b〜itestfn-out-b 第1乃至第nの白相外部事故時試験電流
testf1-out-c〜itestfn-out-c 第1乃至第nの青相外部事故時試験電流
testf1-in-a〜itestfn-in-a 第1乃至第nの赤相内部事故時試験電流
testf1-in-b〜itestfn-in-b 第1乃至第nの白相内部事故時試験電流
testf1-in-c〜itestfn-in-c 第1乃至第nの青相内部事故時試験電流
θ 位相差
θV0a〜θV0c 第1乃至第3の赤相、白相および青相平衡時零相電圧V0a〜V0cの位相
θV0sa〜θV0sc 第1乃至第3の赤相、白相および青相残留電圧補償後零相電圧V0sa〜V0scの位相
θa〜θc を赤相、白相および青相位相補正値
θi0f1-out〜θi0fn-out 第1乃至第nの外部事故時入力配電線地絡電流i0f1-out〜i0fn-outの位相
θi0f1-in〜θi0fn-in 第1乃至第nの内部事故時入力配電線地絡電流i0f1-in〜i0fn-inの位相
α 常時の第1乃至第nの入力残留電流i00f1〜i00fnの位相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の線路特性を得るための線路特性演算装置(10)であって、
前記電力系統に接続された接地形計器用変圧器(3)のGPT三次制限抵抗(RGPT)と並列に接続された、かつ、直列接続された測定用抵抗(Rm)および切替スイッチ(SW)と、
該切替スイッチの切替前後の前記接地形計器用変圧器の三次電圧(V3)に基づいて前記電力系統全体の対地静電容量(C)による対地アドミッタンス(YC)または合成対地アドミッタンス(YC−YL)を測定するためのωC測定部(11)と、
該ωC測定部によって測定された前記対地アドミッタンスまたは前記合成対地アドミッタンスに基づいて地絡事故時の前記電力系統全体の地絡電流(I0)を算定し、該算定した電力系統全体の地絡電流に基づいて地絡事故時に該電力系統の第1乃至第nの配電線(f1〜fn)を流れる第1乃至第nの配電線地絡電流を算定して、該第1乃至第nの配電線の線路特性を算定する線路特性演算部(12)と、
を具備することを特徴とする、線路特性演算装置。
【請求項2】
前記線路特性演算部が、
第1乃至第3の相残留電圧補償後零相電圧(V0sa〜V0sc)と第1乃至第3の相平衡時零相電圧(V0a〜V0c)との成す角度(θV0sa−θV0a,θV0sb−θV0b,θV0sc−θV0c)だけ前記第1乃至第nの配電線地絡電流の位相を補正し、
該位相補正後の第1乃至第nの配電線地絡電流に常時の第1乃至第nの入力残留電流(i00f1〜i00fn)を加算して、前記第1乃至第nの配電線の線路特性を算定する、
ことを特徴とする、請求項1記載の線路特性演算装置。
【請求項3】
前記線路特性演算部が、前記常時の第1乃至第nの入力残留電流を加算した前記位相補正後の第1乃至第nの配電線地絡電流から該常時の第1乃至第nの入力残留電流を除いた電流の前記第1乃至第nの配電線に設置された第1乃至第nの配電線零相変流器(51〜5n)の1次換算値を試験電流として求めることを特徴とする、請求項2記載の線路特性演算装置。
【請求項4】
前記電力系統が、対地間抵抗(Ro)の小さい電力系統であり、
前記ωC測定部が、前記電力系統に接続された接地用変圧器(4)の中性点接地抵抗の抵抗分(RNGR)を前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗(RGPT)と前記電力系統の零相等価回路上で別要素にするとともに、該電力系統に接続された第1乃至第nの配電線補償リアクトル(Lf1〜Lfn)の抵抗分(RL-f1〜RL-fn)の合成抵抗を前記GPT三次制限抵抗と該零相等価回路上で別要素にして、前記合成対地アドミッタンスを求める、
ことを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の線路特性演算装置。
【請求項5】
前記接地形計器用変圧器以外の他の接地形計器用変圧器が前記電力系統に存在する場合には、前記ωC測定部が、該他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にして、前記合成対地アドミッタンスを求めることを特徴とする、請求項4記載の線路特性演算装置。
【請求項6】
前記ωC測定部が、前記零相等価回路の3線一括対地アドミッタンス(Y00)において前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成リアクトル分(L’)と該第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分および前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗(R3)とを前記合成対地アドミッタンスと並列に接続して、前記対地静電容量を求めることを特徴とする、請求項4または5記載の線路特性演算装置。
【請求項7】
前記ωC測定部が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“RGPT”、前記測定用抵抗を“Rm”、前記接地形計器用変圧器の零相内部インピーダンスを“R0+jωL0”、前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成リアクトル分を“L’”、前記第1乃至第nの配電線補償リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分、前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗を“R3”および前記切替スイッチの切替前後の前記三次電圧の位相差を“θ”とすると、以下のωC演算二次方程式を用いて、
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/β)+(1/R3
B=(R02/γ)+(1/R3
D=−(ωL0/β)
E=−(ωL0/γ)
β=R012+(ωL02
γ=R022+(ωL02
01=R0+RGPT
02=R0+(RGPT・Rm)/(RGPT+Rm
前記合成対地アドミッタンスを求めることを特徴とする、請求項6記載の線路特性演算装置。
【請求項8】
前記切替スイッチを切替制御し、前記ωC測定部に前記対地アドミッタンスまたは前記合成対地アドミッタンスを求めるとともに、前記線路特性演算部に前記線路特性を算出するように制御する制御部(13)をさらに具備することを特徴とする、請求項1乃至7いずれかに記載の線路特性演算装置。
【請求項9】
前記線路特性演算装置をパーソナルコンピュータ(30)に接続して前記制御部の機能を該パーソナルコンピュータに行わせることを特徴とする、請求項8記載の線路特性演算装置。
【請求項10】
前記線路特性演算装置を持ち運び可能な線路特性演算装置(20)とし、該持ち運び可能な線路特性演算装置を変圧器盤に接続して前記線路特性を算出することを特徴とする、請求項9記載の線路特性演算装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかに記載の線路特性演算装置を用いて電力系統の第1乃至第nの配電線の線路特性を算定することを特徴とする、線路特性演算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−209030(P2011−209030A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75540(P2010−75540)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】