説明

線量測定装置用相対校正

【課題】 特別の装置を必要とせず、最小限の時間を要する、次の取得画像のための校正情報を提供するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】 画像取得装置110の線量応答校正は、第1の自己校正曲線114aを少なくとも1つの第2の自己校正曲線114bと比較して前記曲線の間の関係を判別し、少なくとも1つの差に基づいて取得画像112を変更し、取得画像112に初期校正を適用する、ことを備え、これらにより、画像取得装置110の線量応答が校正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月27日に受理され、「放射線検出媒体の校正システムまたは方法」という名称であって、2000年9月22日に受理された米国仮出願60/234,745、及び2000年11月22日に受理された米国仮出願60/252,705の優先権を主張して2001年6月1日に受理された米国特許第6,675,116号の継続出願であり、現在係属中の米国特許出願10/445,587に関連する。また、本出願は、2000年1月21日に受理された米国特許第6,528,803号の出願に関連する。本出願は、また、2004年12月10日に受理され、「画像配置の最適化」という名称で、係属中の米国特許出願、及び2003年7月30日に受理され、「画像配置システム及び方法」という名称で、係属中の米国特許出願10/630,015に関連する。上記の関連出願のすべては、ここに、参照により組み入れられる。
【0002】
本発明は、放射線線量測定、より詳細には、放射線療法に関連する放射線線量校正を効率的に実行するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
放射線療法の、特に強度変調放射線療法(IMRT,intensity-modulated radiation therapy)の重要な利用は、腫瘍細胞の破壊である。イオン化放射線の場合、腫瘍破壊は、「吸収線量」、すなわち組織塊内に蓄積されたエネルギー量に依存する。放射線物理学者は、通常、cGy単位またはセンチグレイで吸収線量を表す。1cGyは、0.01J/kgと等しい。
【0004】
放射線線量測定は、通常、放射線療法を受ける患者の種々の組織に吸収された線量を測定または予測する方法を説明する。吸収線量を予測及び測定する際の精度は、効果的な処置及び過剰または過少な放射線曝露による複雑さの防止に重要である。多くの方法が、吸収線量を測定し予測するために存在するが、多くは、検出媒体の吸収線量に対する応答に関する校正−校正曲線、ルックアップテーブル、式等の開発に依存する。有効な検出媒体は、当業者に知られており、放射線感応性フィルム、及び放射線曝露時に暗化または変色する三次元ゲル(例えば「BANG」及び「BANANA」ゲル)を含む。他の有効な検出媒体は、電子携帯画像装置、コンピュータ放射線(CR)装置、デジタル放射線(DR)装置、及び放射線曝露に応じて信号を生成するアモルファスシリコン検出器配列を含む。
【0005】
校正曲線を作成する種々の知られた方法が存在する。例えば、本出願の出願人に付与され、ここで参照により完全に組み入れられる特許文献1は、イオン化放射線への曝露に応答する検出媒体を用意し、検出媒体の予め定められた領域を異なるイオン化放射線線量レベルに曝露することにより、校正線量応答パターンを作成することを開示する。特許文献1は、さらに、予め定められた領域の検出媒体の応答を測定してイオン化放射線線量に対する次の応答に関連する校正を生成する。例えば、マルチリーフコリメータ、二次コリメータ、または減衰ブロックを用いて、検出媒体の部分をイオン化放射線から選別的に遮蔽することによって、異なる線量レベルが取得される。異なる線量レベルは、また、曝露の間に検出媒体を移動することによっても取得可能である。特許文献1は、さらに、イオン化放射線線量に対する検出媒体の応答に関する校正を生成するように構成されたコンピュータ読取可能な媒体上に固定されたソフトウェアルーチンを開示する。
【特許文献1】米国特許第6,675,116号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国特許第6,675,116号に開示されるような方法は、校正曲線やルックアップテーブルを作成するために、線形加速器または類似装置を用いて、検出媒体の別個の部分を異なる既知の放射線量に曝露することを必要とする。典型的には12の、しばしば25もの、異なる放射線線量レベルが、校正曲線やルックアップテーブルを作成するために測定される。通常、測定される放射線線量レベルの数が増加するに伴って、校正の精度は増加する。しかし、測定数が多くなると、校正処理は、より費用がかかり、時間を消費するようになる。そのため、放射線療法計画を品質保証装置に適用し、放射線強度分布を捕捉することにより得られる「取得画像」を分析することによって校正情報を提供するシステム及び方法を有することが望ましいであろう。
【0007】
一旦校正された線量測定取得システムが再校正される必要がないように取得画像を変更する方法が知られている。例えば、本出願の出願人に付与され、ここで参照により完全に組み入れられる米国特許第6,528,803号は、試験フィルムの部分を標準光源の配列に曝露して、その後に一組の校正フィルムの1つまたはすべての対応する光学密度ステップ勾配と比較可能な光学密度ステップ勾配を取得する。しかし、米国特許第6,528,803号に開示されるような現存する方法は、追加の装置、及び光学密度ステップ勾配に関するデータを収集する時間を必要とする。いくつかの場合、それが「相対」校正(百分率で表示される)のみで絶対校正(線量及び痕跡が国家標準であり得る)ではないとき、特別の装置を必要とせず、最小限の時間を要する、次の取得画像のための校正情報を提供するシステム及び方法を有することが望ましいであろう。
【0008】
さらに、真の実験差に対するように不正確さをモデル化することにより、差異が発生する位置を判別するため、実験的に得られる校正曲線の特性を評価して処置計画を作成するシステムにより生成される線量分布を、及び線量分布の他の予測をモデル化するシステムを有することも、望ましいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、画像取得装置の線量応答を校正するシステムは、処置計画に含まれる供与線量を示す線量マップを作成する手段、処置計画の適用から記録された供与線量強度の表示を含む取得画像を生成する手段、及び、供与線量を供与線量強度に関連付ける自己校正曲線を生成する手段を備える。
【0010】
さらに、実施形態によれば、画像取得装置の線量応答を校正するシステムは、第1の自己校正曲線と、第2の自己校正曲線と、初期校正と、(1)第1の自己校正曲線と第2の自己校正曲線との間の少なくとも1つの差または適合を判別し、(2)該少なくとも1つの差または適合に基づいて取得画像を変更し、(3)初期校正の取得画像への適用に基づいて、相対校正を生成することを含む計算を実行する手段とを備える。
【0011】
さらに、実施形態によれば、画像取得装置の線量応答の校正方法は、第1の自己校正曲線を第2の自己校正曲線と比較してこれらの曲線の関係を判別し、少なくとも1つの差に基づいて取得画像を変更し、初期校正を取得画像に適用することを備え、これにより画像取得装置の線量応答が校正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の処置計画のために、計画供与線量を吸収線量に対する検出媒体の応答に関連付ける校正が作成される。また、第1の処置計画の供与線量強度を取得画像の画素強度に関連付けるIMRT自己校正曲線(「ISCC」または「ISCC」曲線)が、第1の処置計画に関して作成される。その後、ISCC曲線は、第2の処置計画のために作成される。第1の処置計画に関するISCC曲線を第2の処置計画に関するISCC曲線と比較することは、校正が第2の処置計画に関する校正情報を提供するために使用可能なように、第2の処置計画に関する取得画像の調整を許容する。したがって、ここで開示されるシステム及び方法は、処置計画が患者に適用される前に試験画像を取得するために使用される画像取得装置の簡単、迅速、効率的、及び費用のかからない校正を提供する。
【0013】
図1に示すシステム100の種々の構成要素の使用は、以下に詳細に説明される。通常、処置計画は、放射線検出器に適用可能であり、従って、以下に図1を参照してより完全に示され、説明される取得画像112を生成する所定の媒体または装置に記録可能である。処置の一部として計画された供与線量の強度を表す取得画像112は、以下に図1を参照してより完全に説明される線量マップ106と比較される。
【0014】
システム概観
図1は、IMRT自己校正曲線(ISCC)を作成するために少なくとも1つの実施形態で使用されるシステム100の概観を提供する。処置計画システム102は、当業者に知られた種々の処置計画システムのうちの任意のものであり、マサチューセッツ州Andoverのフィリップスメディカルシステムズにより製造されたPinnacle3システム、独HeimstettenのブレインラブAGにより製造されたBrainSCAN、オランダVeenendaalのヌクレトロンによるPLATO SunRise、カリフォルニア州Palo Altoのバリアンメディカルシステムズにより製造されたEclipseを含むがこれに限定されない。
【0015】
処置計画システム102は、1以上の放射処置計画104を作成するために使用される。また、処置計画システム102は、場合によっては計画画像として参照される、線量マップ106を作成するためにも使用される。処置計画システム102のそのような使用は、当業者に周知であろう。さらに、当業者は、線量マップ106が、品質保証ファントムまたは患者における計画放射線線量の予測分布を示すことを認識するであろう。線量マップ106の例が、図6Aに示される。
【0016】
放射線検出器108は、当業者に知られるような放射線を検出し受けることができる装置である。いくつかの実施形態では、放射線検出器108は、当業者に知られるような、試験ファントムとしても知られた、品質保証ファントムである。試験ファントムの目的は、ヒト組織のような放射線線量を受けるべき媒体を模擬する。
【0017】
画像取得装置110は、当業者に知られるような、検出された放射線を記録するための装置または媒体であり得、X線撮影フィルム、コンピュータX線撮影装置、電子携帯画像装置、荷電結合素子(CCD)カメラ、またはBANGゲルを含むが、これらに限定されない。画像取得装置110は、1以上の取得画像112を生成する。以下に説明するように、取得画像112と線量マップ106とは、ISCC曲線114を作成するために使用される。取得画像112の例が、図6Bに示される。さらに以下に説明するように、ほとんどの実施形態は、少なくとも2つの処置計画104に関する少なくとも2つのISCC曲線114を作成する。
【0018】
当業者は、システム100を参照してここで説明される処理が、当業者に知られているような、システム100に関してここで説明されるように機能可能な1以上のコンピュータを用いることにより実行可能であり、情報を受信し、出力し、処理し、変換し、組み込み、及び/又は記憶する任意の装置または装置の組み合わせを含み得ることを認識するであろう。したがって、ここで説明する処理は、コンピュータ読取可能な媒体に組み入れられたコンピュータ実行可能な指令の実行により実施可能である。例えば、システム100で使用されるコンピュータは、広範な種々の異なるソフトウェアアプリケーションを実行可能な汎用コンピュータであり得る。さらに、そのようなコンピュータは、特定の機能に限定した特別の装置であってもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは、コンピュータのネットワークである。通常、システム100は、広範な種々の異なる情報技術構成を組み込み可能である。コンピュータは、プロセッサ、メモリ、コンピュータ読取可能な媒体、周辺装置、計算装置、及び/又はオペレーティングシステムのいかなるタイプ、数、形態、または構成にも限定されない。
【0019】
さらに、システム100の要素のいくつかは、コンピュータ内の表示として存在し得る。例えば、処置計画104、線量マップ106、取得画像112、及び/又はISCC曲線114は、1以上のコンピュータ内表示として存在可能である。したがって、コンピュータは、インターフェース、及びユーザ(例えば放射線技術者)にシステム100へのアクセスを提供するアクセス装置を含むことができ、またはこれらに接続可能である。そのため、ユーザは、当業者に知られた任意のアクセス装置またはインターフェースを用いて、システム100の処理及び要素にアクセスすることができる。
【0020】
初期校正処理
図2は、初期校正処理についての処理フローを説明する。ステップ200は、第1の放射線処置計画104aから放射線分布を表す第1の取得画像112aを取得する処理を表す。ステップ200に示す処理は、図3Aを参照して詳細に説明される。ステップ202は、取得画像112aの放射線強度分布を処置計画104aの適用により提供される放射線線量に関連付ける校正、すなわち校正曲線または式の作成処理を表す。上述したように、ステップ202の校正を実行する、種々の手段、方法、及び装置は、当業者に知られるであろう。ステップ204は、ISCC曲線114を生成する処理を表す。ステップ204に示す処理は、図3Bを参照して詳細に説明される。
【0021】
画像取得処理
図3Aは、ISCC曲線を作成するのに使用されるべき取得画像の処理を説明するフロー図である。
【0022】
ステップ300では、放射線処置計画104が作成される。放射線処置計画の作成は周知であり、種々の知られた処置計画システム102を用いて実現可能である。周知なように、放射線処置計画は、放射線療法継続中の腫瘍サイトに加えられる放射線線量の、強度、持続時間、及び位置を含み得る。
【0023】
ステップ302では、処置計画システム102は、場合によっては計画画像として参照される処置計画104に対応する線量マップ106を作成するために使用される。
【0024】
ステップ304では、処置計画104は、放射線検出器108に適用される。検出された放射線の放射線分布は、画像取得装置110に記録される。画像取得装置110は、処置計画104の適用から作成される放射線分布を表す取得画像112を生成するために使用される。当業者は、取得画像112が、種々の方法で生成可能であることを認識するであろう。例えば、図6Bに示す取得画像112例は、IMRT処置領域の品質保証フィルムのスキャンされたデジタル画像を表す。いくつかの実施形態では、取得画像112は、5×5のメディアンフィルタまたは当業者に知られている可能性のあるいくつかの他のフィルタリング手法を用いて、フィルタリングされ得る。フィルタリングは、ノイズを減少するため、及び/又は、処置計画と画像取得装置との間で画素または体素を調整するために、使用可能である。
【0025】
ISCC生成処理
さて図3Bを参照して、ISCC生成処理を説明する。ISCC生成処理の使用は、一定の実施形態に関してここで説明されるが、この開示を読んで当業者に明らかになる他の実施形態にも処理が適用可能であることが理解されるべきである。ステップ306では、取得画像112は、線量マップ106に登録される。画像の登録は、同一の画像空間を占め、そして比較及び/又は結合可能なように画像を配置する処理を参照する。画像を登録する種々の方法及び装置が、当業者に知られ、そのうちのいくつかは、共に係属中の米国出願10/630,015と2004年12月10日に受理され、「画像配置の最適化」という名称の米国出願で説明されている。
【0026】
ステップ308では、共通の対象領域(ROI,region of interest)が線量マップ106と取得画像112とについて取得される。共通のROIは、線量マップ106及び取得画像112の小さい方より決して大きくないことが可能であり、取得画像112のいかなる特別の非線量関連標示を除外するように選択される。例えば、ROIは、いかなる記述または基準標示を含まず、線量マップ106または取得画像112の縁部から離れたいかなる領域も含まないべきである。
【0027】
ステップ308の一部として、当業者に知られた種々の自動化された技術が、1つの画像が針の刺し跡を含む領域のような、線量マップ106及び取得画像112の異常な小さい領域を除外するために採用可能である。さらに、種々の知られた閾値化手法が、選択された線量範囲の低い相関を有すると考えられる領域を除外するために採用可能である。これらの領域は、低線量領域、高勾配領域、物理的媒体境界近傍の領域等を含む。
【0028】
ステップ310では、線量マップ106の値が、線量マップ106の画素の最大値に対して標準化され、そして、「絶対」測定の代わりに「相対」測定が所望される場合には、百分率値に変換される。
【0029】
第1の実施形態では、ステップ312で、線量マップ106は、小さい幾何学領域に分割される。小さい幾何学領域に分割された線量マップ106の例(及び以下に説明するように、統計関数が領域に適用された後の)が図7Aに示される。1つの実施形態では、幾何学領域は、線量マップ106の領域の1%をそれぞれが含む矩形(3D画像について立方体)である。画像の幾何学領域は、隣接してもしなくともよく、及び、採用される特定の画像に応じて物理的に重なっても重ならなくともよいことが注記されるべきである。
【0030】
第2の実施形態では、ステップ312で、線量マップ106の線量レベルが、線量範囲に区分される。これらの線量範囲は、隣接してもしなくともよく、及び、重なっても重ならなくともよい。1つの実施形態では、各線量範囲は、計画画像の全体の線量範囲の1%にわたる。すなわち、各1%の増分は、0から100の尺度で、線量マップ106の0から最大線量までにわたる。線量曲線の各範囲の画素について、平均やメジアンのような統計尺度が計算される。すなわち、処理は、計画画像、すなわち線量マップ106の各線量範囲のすべての画素を見出し、それらの画素の平均(またはメジアンあるいは中央傾向のいくつかの他の尺度)をとる。各範囲の登録画像の画素に配置された指標は、維持される。
【0031】
さらに第3の実施形態では、ステップ312で、線量マップ106は、上述した幾何学領域のような、線量マップ106の領域の百分率を有する副領域に分割される。そして、線量マップ106は、「列形式」として参照されるものに変換される。列形式の使用は、処理を簡略化する目的で選択により採用されるが、ステップ312及びステップ312に続くステップは、列形式の線量マップ106及び取得画像112を表示することなく実行可能であることが理解されるべきである。列形式の線量マップ106の例が、図9Aに示される。図6Aに示す線量マップ106の各副領域は、図9Aに示す画像の各列に表されている。
【0032】
ステップ312を参照して説明した第1の実施形態では、ステップ314で、画素は、ステップ312に関して上述したように定義され、線量マップ106の各幾何学領域に対応する取得画像112に配置される。線量マップ106と取得画像112とは、線量マップ106及び取得画像112のそれぞれが、各幾何学領域の全数を加えた領域を有するように対応する画素が配置される前に、選択により、切除可能である。幾何学領域に分割された取得画像112が、図7Bに示される。そのような配置された各組の画素について、いくつかの統計尺度または特性が計算される。いくつかの実施形態では、例えば、図7A及び7Bに描かれたような、画素強度の平均値が、各組の配置画素について計算される。他の実施形態は、メジアンまたは当業者に知られるようないくつかの他の統計特性を計算可能である。例えば、メジアン値は、画像のエッジを保存し、一方、平均化は、エッジを滑らかにする傾向がある。統計特性の選択は、線量が領域内で変化する速さを含むことができるいくつかの要因に依存する可能性がある。
【0033】
ステップ312を参照して説明した第2の実施形態では、ステップ314で、画素は、ステップ312に関して上述したような線量マップ106で識別される線量レベルに対応する取得画像112に配置される。そして、取得画像112の各線量範囲の統計尺度(例えば、平均、メジアン等)が、ステップ312で線量マップ106に関して上述したように計算される。
【0034】
ステップ312を参照して上述した第3の実施形態では、ステップ314で、取得画像112は、副領域に分割され、次いで、図9Bに示すような列形式で表示される。そのような各副領域について、基準画像、すなわち線量マップ106の画素と取得画像112の対応する幾何学領域の画素との間で相関がとられる。そのような相関は、当業者に知られている。例えば、図10は、図9A及び9Bに示す画像の対応する各組の列(1から100の番号が付された)について、当業者に知られるような、相関係数を表すグラフを示す。対応する列により表される対応する副領域は、相関尺度の順番でランク付けされる。図11A及び11Bは、列が相関係数の値に従って区分された線量マップ106と取得画像112とをそれぞれ表す列形式の画像を示す。最も高く相関する領域から開始して、対応する画素が、以前の段落で説明されたものと類似の方法で、校正曲線を作成するために使用される。
【0035】
いくつかの実施形態では、相関閾値が、その相関が予め定められた閾値を超える列のみがISCC曲線を作成するときに考慮されるように、生成される。例えば、図11A及び11Bを参照して、列画像の列1乃至33は、−0.97より小さいか等しい相関を有し、−0.97という値は、相関閾値として選択されている。したがって、この例では、列1乃至33のみが、ISCC曲線を生成するときに考慮されるべきである。
【0036】
ステップ316で、原ISCC曲線が作成される。1つの実行された実施形態で作成されたISCC曲線の例が、図4に示される。この実施形態のISCC曲線は、取得画像112の対応する画素のぞれぞれの画素強度を表す値に対して、ステップ312で規定された線量マップ106の範囲のそれぞれについて処置計画104の線量の強度を表す値を図示し、この値は、ステップ314で選択されたいかなる統計尺度にも関連付けられる。原ISCC曲線の他の例が、図8Aに提供される。図8Aに示す原ISCC曲線は、図6A及び図7Aに示す線量マップ106と図6B及び図7Bに示す取得画像とを小さい幾何学領域に分割することにより作成された。図12Aは、ステップ314に関して上述した相関閾値を超える線量マップ106及び取得画像112の領域についての画素値のプロットに基づく原ISCC曲線を示す。
【0037】
ステップ318で、ステップ316で作成されたISCC曲線は、線量値が増加するに伴って画素値が単調に減少することを確実にするように後処理される。さらに、当業者に知られるような他の後処理が適用可能である。例えば、ISCC曲線を平滑にまたは適合する手法が、ステップ318で適用可能である。図8Bは、図8Aに示す原ISCC曲線の後処理により生成されるISCC曲線を示す。図12Bは、図12Aに示す原ISCC曲線の後処理により生成されるISCC曲線を示す。
【0038】
次の校正処理
図5は、次の校正処理を、すなわち図2を参照して上述した初期校正処理のステップ202で校正曲線が作成された処置計画104a以外の処置計画104bについて実行される相対校正を説明する。処置計画104bは、第2のまたは次の処置計画として参照される。
【0039】
ステップ502で、次の処置計画104bに関して画像取得処理が実行される。ステップ502は、処置計画104bについて、図3Aを参照して説明したステップを実行することを含む。したがって、ステップ502は、線量マップ106bと取得画像112bとを生成する。
【0040】
ステップ504で、図3Bを参照して上述したISCC生成処理が、線量マップ106bと取得画像112bとについて実行される。したがって、ステップ504は、次のISCC曲線114bを生成する。
【0041】
ステップ506で、第1のISCC曲線114aと次のISCC曲線114bとの間で比較が実行され、2つの曲線の差を識別し、またはこれらを適合させる。ステップ508で、次の取得画像112bは、第1のISCC曲線114aと次のISCC曲線114bとの間で識別された差または適合に基づいて変更される。この変更の目的は、図2を参照して上述したステップ202で作成した校正曲線を用いて校正可能な状態に取得画像112bを変換することである。取得画像112bの変換は、例えば米国特許第6,528,803号で説明されるようなものを含む、当業者に知られた種々の方法を用いて実行可能である。2つの曲線または二組の点の間の関係は、簡単には差であり得るが、より複雑であってもよく、ルックアップテーブルの形態または当業者に知られるような曲線適合をとることができる。
【0042】
ステップ510で、図2を参照して上述したステップ202で作成された校正曲線が、取得画像112bに適用される。
【0043】
実験的校正の評価
上述したように作成したISCC曲線は、当業者に知られた方法を用いて実験的に得られた校正曲線の有効性を評価するために有利に使用可能である。したがって、いくつかの実施形態では、ISCC曲線は、実験的に得られたまたは計算された校正曲線と比較可能である。ISCCと実験的に得られた曲線との間の相関または対応は、線量マップ106により表され、取得画像112で示されるような線量分布を良好にモデル化することができる尺度である。当業者は、過剰な誤差を有する曲線が使用されないように実験的に得られた校正曲線の許容閾値を設定することが可能であることを認識するであろう。また、線量マップ106と取得画像112との乖離が、校正誤差、TPSモデル化誤差または放射線印加誤差によるかどうかを判定するために、ユーザは、ISCC曲線と実験的に得られた校正曲線との対応を使用可能である。
【0044】
標準化値の評価及び選択
上述したように作成したISCC曲線は、さらに、品質保証目的のために比較されるべき取得画像112と線量マップ106のような画像について、標準化値を評価して選択するために有利に使用可能である。ここで新たに開示したような相対線量測定のためのシステム及び方法では、通常、類似範囲にわたって配置されるような計画及び取得画像の画素値を標準化することが必要とされる。これらの標準化値の選択は、しばしば難しい可能性がある。例えば、実験的校正とISCC曲線とが形状が異なる場合、一の線量レベルで標準化を最適化することは、他の線量レベルでの一致を低下させる可能性がある。計画画像、すなわち線量マップ106で標準化値を変更することは、標準化された計画画像と取得画像112との間で生成されるISCC曲線に置き換えられる。したがって、ISCC曲線と実験的に得られた曲線との一致は、曲線全体にわたって、あるいは曲線の選択された範囲または点について標準化値を変更することにより、最適化される。このようにして、最適化された標準化値は、異なる判定基準のために生成可能である。
【0045】
図13は、実験的に得られた校正曲線1310、すなわち当業者に知られた方法または上で新たに開示されたISCC生成処理に従って作成された校正曲線を含むグラフ1300を示す。また、図13は、図3に関して上述したような線量範囲に線量マップ106及び取得画像112を分割することにより作成されたISCC曲線1320を示す。曲線1310,1320を比較して標準化する多数の方法が存在する。例えば、曲線1310,1320を比較する1つの方法は、これらの曲線の差を評価することである。本実施例の目的のために、曲線1310,1320は、画素値の選択された範囲について、通常2つの曲線1310,1320の共通の画素値範囲を有する共通の組の画素値について、評価される。この場合、選択された範囲の各画素値は、線形に補間されるが、当業者は、この補間が実行可能な種々の方法が存在することを認識するであろう。
【0046】
図14に示すグラフに図示された2つの曲線1310,1320の線量差に着目して、画素値から線量レベルに取得画像112を校正するために実験的な校正曲線1310を使用する場合には、差を識別可能であり、そして品質保証目的のためにその取得画像112を線量マップ106と比較可能であり、校正曲線1310の低線量領域(0乃至10cGy)での過剰応答、及び校正曲線1310の10乃至30cGyの範囲での過少応答を認識することができるであろう。図13に示すプロットと組み合わせた図14に示すプロットに着目して、ISCC曲線1320に良好に合致するため、追加の実験的校正が、0乃至10cGy範囲の点について必要とされると結論付けることができるであろう。追加の実験的校正を実行した後、ISCC曲線1320と実験的校正曲線1310との差が改良されたかどうかを確認するため、図13及び図14に関して説明した解析を繰り返すことができる。
【0047】
特定の線量領域に着目する代わりに、図14に関して説明したように、曲線1310,1320は、その全体で比較可能である。例えば、2つの曲線の相関が評価可能であり、または、差の二乗平均(RMS)が算出可能である。線量測定装置を校正する際の使用のため実験的曲線1310を受け入れまたは拒絶するために、これらのパラメータについて許容閾値を設定することができる。その代わりに、曲線の一定の領域(例えば高線量領域)を特に対象にする場合、曲線1310の部分を独立に評価することができる。曲線フィッティングが使用される場合、このことはスプライン適合と称される。例えば、曲線1310は、10の相等しい部分に分割可能であり、図15Aに示すような相関または図15Bに示すようなRMSのような統計が、それぞれについて算出される。
【0048】
さらに、上述したように、標準化値は、比較される画像、すなわち線量マップ106及び取得画像112の間のシステム誤差を減少するように校正曲線を調整するのにしばしば適用される。例えば、ISCC曲線1320と実験的曲線1310とをそれらの最大値に対して標準化可能である。その後、実験的線量曲線1310は、所定の範囲の因子により調整可能であり、さらにISCC曲線1320に対して調整された実験的曲線1310のRMSをプロットすることができる。そして、このプロットの最小点を評価することにより、最適な標準化因子が判定可能である。この手法は、曲線1310の一部に関して実行可能であり、例えば図16に示すような高線量の最適化を許容することが注記される。図16に示す曲線の最小点は、略1.01であるように見られ、1.01が、図16に示す領域についての最適な標準化因子であることを示唆する。当業者は、この因子が、曲線を多項式に適合させることによりさらに改良可能であることを認識するであろう。
【0049】
上記記載は、図解的であることを意図し、制限的ではない。提供した例以外の多数の実施形態及び用途が、上記説明を読んで当業者に明らかになるであろう。本発明の範囲は、上記説明を参照しないで決定されるべきであるが、その代わりに添付のクレームを参照して、そのようなクレームが記載された均等物の全範囲に沿って決定されるべきである。将来の改良は、線量測定画像に発生するであろうし、本発明がそのような将来の実施形態に組み込まれるであろうことが予定され、意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】少なくとも1つの実施形態で使用される、IMRT自己校正曲線(ISCC)を作成するシステムの概観を提供するブロック図である。
【図2】実施形態にかかる、初期校正処理の処理フローを説明する処理フロー図である。
【図3A】実施形態にかかる、ISCC曲線を作成するのに使用されるべき取得画像の処理を説明する処理フロー図である。
【図3B】実施形態にかかる、ISCC生成処理を説明する処理フロー図である。
【図4】ISCC曲線の例を示す。
【図5】次の校正処理を説明する処理フロー図である。
【図6A】線量マップの例を示す。
【図6B】取得画像の例を示す。
【図7A】小さい幾何学領域に分割され、該領域に統計関数が適用された後の線量マップの例を示す。
【図7B】小さい幾何学領域に分割され、該領域に統計関数が適用された後の取得画像の例を示す。
【図8A】原ISCC曲線の例を示す。
【図8B】後処理されたISCC曲線の例を示す。
【図9A】列形式の線量マップの例を示す。
【図9B】列形式の取得画像の例を示す。
【図10】図9A及び9Bに示す画像の対応する列の各組についての相関係数を表す例示的グラフを示す。
【図11A】相関係数の値に従って列が区分されている、線量マップを表す列形式の例示画像を示す。
【図11B】相関係数の値に従って列が区分されている、取得画像を表す列形式の例示画像を示す。
【図12A】線量マップと取得画像の領域について相関閾値を超える画素値を図示することに基づく例示的な原ISCC曲線を示す。
【図12B】後処理後の図12AのISCC曲線の例を示す。
【図13】実験的に得られた校正曲線とISCC曲線とを含む例示的なグラフを示す。
【図14】実験的に得られた校正曲線とISCC曲線との線量差が図示された例示的なグラフを示す。
【図15A】校正曲線の10の相等する部分についての相関統計の例示プロットを示す。
【図15B】校正曲線の10の相等する部分についての最小二乗統計の例示プロットを示す。
【図16】校正曲線の一部の関する例示的な標準化曲線を示す。
【符号の説明】
【0051】
102 処置計画システム
104 処置計画
106 線量マップ
110 画像取得装置
112 取得画像
114 ISCC曲線
114a 一次ISCC曲線
114b 二次ISCC曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の線量マップと少なくとも1つの次の線量マップとを出力するように構成可能な1以上の処置計画システムと、各線量マップが、対応する処置計画に含まれる供与線量を示し、
第1の取得画像と少なくとも1つの次の取得画像とを出力するように構成可能な1以上の画像取得装置と、前記第1の取得画像が前記第1の線量マップに対応し、各次の取得画像が前記次の線量マップの1つに対応し、各取得画像が前記対応する処置計画の適用から記録された供与線量強度の表示を含み、
前記第1の線量マップの供与線量を前記第1の取得画像の前記供与線量強度に関連付ける第1の自己校正曲線、及び、前記少なくとも1つの次の線量マップの供与線量を前記少なくとも1つの次の取得画像の前記供与線量強度に関連付ける少なくとも1つの次の自己校正曲線を作成する手段と、
を備える画像取得装置の線量応答校正システム。
【請求項2】
自己校正曲線を生成する前記手段は、前記線量マップと前記取得画像のそれぞれを複数の幾何学領域に分割する手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
自己校正曲線を生成する前記手段は、前記線量マップと前記取得画像のそれぞれを複数の線量範囲に分割する手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記線量マップと前記取得画像を列形式で表わす手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記自己校正曲線を作成するのに使用されるべき前記線量マップの部分及び前記取得画像の部分を判別するために使用可能な相関閾値をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の取得画像を有する媒体の複数の供与線量強度への応答の吸収線量に対する校正を作成する手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の自己校正曲線と前記次の校正曲線との比較に基づいて変更された次の取得画像を作成する手段をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
初期校正を前記変更された次の取得画像を校正するために使用する相対校正を作成する手段をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記線量マップを作成する前記手段、前記取得画像を作成する前記手段、及び前記自己校正曲線を作成する前記手段のうちの少なくとも1つは、コンピュータ読取可能な媒体に有形的に組み込まれたコンピュータ実行可能な指令を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
第1の自己校正曲線を生成する手段と、
第2の自己校正曲線を生成する手段と、
初期校正を生成する手段と、
(1)前記第1の自己校正曲線と前記第2の自己校正曲線との少なくとも1つの差たは適合を判別すること、
(2)前記少なくとも1つの差または適合に基づいて取得画像を変更すること、
(3)前記初期校正の前記取得画像への適用に基づいて相対校正を作成すること、を含む計算を実行する手段と、
を備える画像取得装置の線量応答校正システム。
【請求項11】
前記初期校正は、第1の処置計画に関連付けられ、次の校正が第2の処置計画に関連付けられる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の自己校正曲線と前記第2の自己校正曲線とはそれぞれ供与線量を供与線量強度に関連付ける、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
計算を実行する前記手段は、コンピュータ読取可能な媒体に有形的に組み込まれた前記計算を実行するためのコンピュータ実行可能な指令を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータ実行可能な指令は、さらに、前記第1の自己校正曲線を生成する前記手段、前記第2の自己校正曲線を生成する前記手段、及び前記初期校正を生成する前記手段のうちの少なくとも1つを有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
第1の自己校正曲線を少なくとも1つの第2の自己校正曲線と比較して前記曲線の間の関係を判別し、
前記少なくとも1つの差に基づいて取得画像を変更し、
前記取得画像に初期校正を適用する、
ことを備え、
これらにより、該画像取得装置の線量応答が校正される、
画像取得装置の線量応答校正方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第2の自己校正曲線は1つの第2の自己校正曲線であり、前記第1の自己校正曲線と前記初期校正とは、第1の処置計画に関連し、前記第2の自己校正曲線は第2の処置計画に関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の自己校正曲線は複数の第2の自己校正曲線であり、前記第1の自己校正曲線と前記初期校正とは、第1の処置計画に関連し、各第2の自己校正曲線は対応する第2の処置計画に関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記取得画像は前記第2の処置計画に関連する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の自己校正曲線と前記第2の自己校正曲線とは、それぞれ、供与線量を供与線量強度に関連付ける、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記比較、変形、及び適用工程は、コンピュータ読取可能な媒体にコンピュータ読取可能な指令として有形的に組み込まれている、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図8A】
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【図8B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−198412(P2006−198412A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11360(P2006−11360)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(502263020)ラジオロジカル イメージング テクノロジー、インク (5)
【Fターム(参考)】