締付後のよじれ耐性を有する血管移植片
【課題】元々の血管と比べて径方向に適合できる自己封止ePTFE移植片を提供する。
【解決手段】よじれ耐性を有する自己封止血管移植片130が記載される。血管移植片130は、いくつかの材料層を含むことができる自己封止領域131を有する、PTFEであってもよい基体を備えている。血管移植片130の中心部は、移植片130の締付の後によじれ耐性を与えるために、周囲の自己封止領域131とは異なるように構成することができる。また、一端部または両端部に取り付けられたフレア状カフ150を備えた移植片130が記載されており、取付または遷移領域は補強ビード142を備えている。
【解決手段】よじれ耐性を有する自己封止血管移植片130が記載される。血管移植片130は、いくつかの材料層を含むことができる自己封止領域131を有する、PTFEであってもよい基体を備えている。血管移植片130の中心部は、移植片130の締付の後によじれ耐性を与えるために、周囲の自己封止領域131とは異なるように構成することができる。また、一端部または両端部に取り付けられたフレア状カフ150を備えた移植片130が記載されており、取付または遷移領域は補強ビード142を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年8月30日出願の国際特許出願第PCT/US2005/031186号の一部継続出願であり、米国特許法第119条(e)に基づき、2005年6月17日出願の米国仮特許出願第60/692,172号の優先権を主張するものであり、それぞれ本明細書に全体が記載されているように参照として本出願に援用する。
【背景技術】
【0002】
低下した腎機能または腎不全に苦しむ患者はしばしば、血液透析治療を行なわなければならない。透析中、血液は患者から引き抜かれ、血液透析機械を通して循環される。機械は有毒な排泄物を取り除き、浄化した血液を患者に戻す。普通、透析治療は腎臓移植手術が行なわれない限り、患者の人生の期間にわたって1週間に3回行なわれる。血液透析治療を上手く行なうためには、血液は約3〜4時間の間、150から600ml/分以上の流量で血液透析機械を通して循環させなければならない。静脈系からの血流は、所要の流量を満たすのには不適当であると考えられ、大動脈の繰返しの穿刺は実行可能ではない。したがって、血液透析機械に血流アクセスを提供するために、元々の瘻孔がしばしば作り出される。
【0003】
元々の瘻孔が血液透析に利用可能ではない、または使用することができない場合、普通は拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)管でできている血管移植片は、動脈と静脈の間に外科的に定置される(ePTFE AV移植片)。この処置は、前腕内のより伝統的な主要な元々の瘻孔の構成を支持する血管を有していない患者に特に有用である。押出成形されたePTFE AV移植片は、ePTFE移植片に与えられた結節および原線維を特徴とする独自のミクロ構造を含むいくつかの理由により、織られた、接合された、編み込まれた、あるいは形成された織物AV移植片の上で好ましく、それによって血液が流れることができる流体密導管を同時に提供しながら組織の内部成長を簡単にし、必要な強度特徴を維持しながら比較的薄い壁面を備えた移植片を提供することができることを容易にする。
【0004】
拡張ポリテトラフルオロエチレンAV移植片は、少なくとも部分的に(ポリウレタンなど)他の材料を凌ぐePTFE材料の血液適合性の利点により、AVブリッジ瘻孔などの血液透析治療に幅広く使用される。しかし、ePTFE AV移植片を使用する際の1つの潜在的な欠点は、約14日間の着床後まで、血液透析のために血液を抜き取るために安全に使用することができないということである。これは、穿刺の際に自己封止することができない、ePTFEの非エラストマー性によるものであると考えられる。したがって、しばらくの間、他の透析手段を利用しなければならない(例えば、血液透析カテーテルなど)。14日間の後、普通は封止剤層として働くようにePTFE表面内への十分な組織内部成長があり、したがって、移植片は透析針の除去によって作り出された穿刺外傷を封止することができる。しかし、このような封止は圧力および止血の組み合わせが必要であり、このような処置中に存在する多くの変数(透析技術者/看護師の技術レベル、手術条件など)による不均一性に役に立たない。したがって、止血およびこれに付随する変数に左右されず、追加の透析方法を利用する必要がないように移植の際にすぐに封止するePTFE血管移植片用の封止機構を有することが好ましい。
【0005】
したがって、エラストマー封止剤の層をePTFE、および複合構造上に定置することなどの様々な封止技術が、ePTFE AV移植片に迅速な自己封止性状を提供するために示されているまたは記載されている。様々なタイプのエラストマー封止剤、ePTFE移植片、自己封止移植片、および複合移植片の例としては、それぞれを本明細書に全体が記載されているように参照として援用する以下の米国特許および出願公開に開示されたものが挙げられる。米国再発行特許第31,618号、同4,604,762号;同4,619,641号;同4,731,073号;同4,739,013号;同4,743,252号;同4,810,749号;同4,816,339号;同4,857,069号;同4,955,899号;同5,024,671号;同5,061,276号;同5,116,360号;同5,133,742号;同5,152,782号;同5,192,310号;同5,229,431号;同5,354,329号;同5,453,235号;同5,527,353号;同5,556,426号;同5,607,478号;同5,609,624号;同5,620,763号;同5,628,782号;同5,641,373号;同5,665,114号;同5,700,287号;同5,716,395号;同5,716,660号;同5,800,510号;同5,800,512号;同5,824,050号;同5,840,240号;同5,843,173号;同5,851,229号;同5,851,230号;同5,866,217号;同5,897,587号;同5,904,967号;同5,910,168号;同5,931,865号;同5,976,192号;同6,001,125号;同6,036,724号;同6,039,755号;同6,042,666号;同6,056,970号;同6,080,198号;同6,099,557号;同6,203,735号;同6,261,257号;同6,267,834号;同6,287,337号;同6,319,279号;同6,368,347号;同6,416,537号;同6,428,571号;同6,534,084号;同6,547,820号;同6,589,468号;同6,712,919号;同6,716,239号;同6,719,783号;同6,790,226号;同6,814,753号;同6,827,737号;同6,863,686号;同6,926,735号;および米国特許出願公開第2003/0004559号;同2003/0027775号;同2003/0100859号;同2003/0139806号;同2004/0033364号;同2004/0049264号;同2004/0054406号;同2004/0122507号;同2004/0182511号;同2004/0193242号;および同2004/0215337号。
【0006】
血液透析のためにePTFE AV移植片にアクセスする前に、皮膚の表面に優しく触ることによって移植片を通して脈を感じることによって、移植片を通した血流検査が普通行なわれる。移植片を通して脈を感じる能力は普通、「触知可能性」として定義される。最も商業的なePTFE血管移植片は優れた触知可能性を提供するが、エラストマー封止剤の層をePTFE基体の表面上に定置すると、移植片の触知可能性は層が厚すぎる場合に損なわれる場合がある。血液透析のためにePTFE AV移植片を使用する際の別の潜在的な欠点は、移植した場合に、移植片がループ部位によじれを形成する傾向があるということである。普通のループ部位の例が、図1A(上腕動脈から尺側皮静脈までの前腕ループAV移植片2)、および1B(大腿動脈から大腿静脈までの大腿部ループAV移植片4)に示されている。ループ部位での移植片のよじれは血流を塞ぐ可能性があり、この場合、迅速な医療的介入が必要である。明らかに、このような介入は不都合な結果の可能性が大きくなるにつれて、強く疎んじられる。運の悪いことに、エラストマー封止剤で被覆された、あるいは封止の問題に対処するように形成されたePTFE移植片は、おそらくループ部位での移植片の剛性により簡単によじれを形成する可能性があることが発見された。
【0007】
ePTFE材料を利用する際の他の1つの潜在的な欠点は、元々の血管と比べて径方向に不適合であり、元々の血管をそこを通る血流の脈動と共に膨張および収縮させる血液の波動伝播が、ePTFE移植片を通して前進するときに消えるということである。このように脈動が消えることは、宿主血管に対するコンプライアンス不一致などの、様々な合併症につながる可能性がある。運の悪いことに今まで、元々の血管のコンプライアンスを模倣する径方向に適合するePTFE移植片が上手く開発されていなかったと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記欠点の一部または全てを克服する自己封止ePTFE移植片の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、有利な性状を提供する血管移植片、より詳細にはePTFE移植片およびePTFE AV移植片が、本明細書に記載されている。本発明の一態様では、自己封止血管移植片は、第1の表面および第1の表面から間隔を置いて配置された第2の表面を有すると共に、高い多孔性の移植片、薄い壁面の移植片およびその組み合わせからなる群から選択されたほぼ管状のePTFE基体と、基体の第1および第2の表面の一方の上に配置された封止剤層とを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止移植片は、高い多孔性の移植片、薄い壁面の移植片またはその組み合わせのいずれかである管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部の上に配置された封止剤層とを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、AV瘻孔などの移植用移植片は、管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部の上に配置され、その長さに沿って間隔を置いて配置された複数の溝付部分を有する封止剤層とを含んでいる。
【0010】
本発明の別の態様では、血管移植片は、基体および基層を囲む外側ポリマー封止剤層と、基体と外側ポリマー層の間に分散された複数の発泡体層とを含んでいる。本発明の代替実施形態によれば、血管移植片は第1の厚さを有し基体を囲むポリマーの内側封止剤層と、内側封止剤層を囲み第1の厚さの1.5倍の第2の厚さを有するポリウレタンの発泡体層とを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、血管移植片は、外側壁面を含む基体と、基体の長さにわたって配置された、ポリマー封止剤を含む、封止基層と、基層の長さにわたって配置されたポリマー発泡体材料からなる第1の発泡体層と、第1の発泡体層内に少なくとも部分的に埋め込まれたビードと、第1の発泡体層およびビードの長さにわたって配置されたポリマー発泡体材料からなる第2の発泡体層と、ポリマーからなる外側層とを含んでいる。
【0011】
本発明の代替態様では、径方向に適合した移植片を形成する方法は、ePTFE基体を提供するステップと、基体を径方向に拡張させるステップと、エラストマー材料層を径方向に拡張させた基体上に配置して被覆した基体を提供するステップと、被覆した基体を加熱するステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、血管移植片を形成する方法は、ePTFE基体を提供するステップと、第1のポリウレタン層を基体の長さにわたって塗布するステップと、基体を長手方向に圧縮するステップと、第2のポリウレタン層を第1のポリウレタン層にわたって塗布するステップと、ePTFEテープの層でポリウレタン被覆基体の周りを包むステップと、ePTFEテープをある量の溶液がePTFEテープに塗布されるように溶液を最初に通過するステップとを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、ePTFE基体の第1の端部上にカフのネック部を位置決めするステップと、基体をその第2の端部からカフのネック部まで封止材料に浸漬させるステップと、基体およびカフのネック部を封止材料に浸漬させるステップとを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、よじれ耐性自己封止血管移植片を作る方法は、ほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、封止剤層を基体の外側表面の少なくとも一部に配置するステップと、封止剤層内に溝付部を作り出すステップとを含んでいる。
【0012】
本発明のさらなる態様では、自己封止血管移植片は、第1の表面および第1の表面から間隔を置いて配置された第2の表面を有するほぼ管状のePTFE基体と、第1および第2の表面の一方の上に配置され、封止層を通した穿刺部材の挿入の際に塑性変形に対する耐性を有する高分子材料からなる封止剤層とを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管移植片は、ほぼ管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部に配置された封止剤層と、基体および封止剤の一方の表面周りに配置されたビードとを含んでいる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、よじれ耐性自己封止血管移植片を作る方法は、ほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、基体の外側表面の少なくとも一部に封止剤層を配置するステップと、封止剤層の少なくとも一部にビードを位置決めするステップと、カフ移植片を血管移植片に結合させるステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、長手軸に沿って延びる第1の端部および第2の端部を有するほぼ管状のePTFE基体周りにほぼ螺旋状に配置されたビードを取り付けるステップと、第1および第2の端部の一方にフレア状の血管カフを結合させるステップと、結合させた血管カフおよびほぼ管状のePTFE基体を結合させるステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管移植片を作る方法は、ePTFE基体の外側表面の長さにわたってエラストマー封止剤層を提供するステップと、封止剤層の少なくとも一部にわたって発泡体層を配置するステップであって、発泡体層の厚さは基体の壁面の厚さより実質的に大きいステップとを含んでいる。本発明の別の代替形態によれば、自己封止血管移植片を作る方法は、ePTFE基体の表面上にポリウレタン材料の少なくとも1層を分散させるステップと、ePTFE部材に溶剤を加えることによってポリウレタン材料にePTFE部材を結合させるステップとを含んでいる。
【0014】
一実施形態では、自己封止血管移植片は、近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体と、自己封止領域を含む近接端部、中心部、および遠位端部の少なくとも1つと、中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に連続している第1のビードとを含んでいる。別の実施形態では、血管移植片は、長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、ePTFE基体周りに配置されたポリウレタンマトリックス層と、ポリウレタンマトリックス内に配置された第1のビードとを含んでいる。
【0015】
さらに別の実施形態では、自己封止血管カフ移植片は、ほぼ管状のePTFE基体と、その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びており、封止剤層および発泡体層の少なくとも一方を含む自己封止領域と、自己封止領域の少なくとも一部に位置決めされた外側ePTFE部材と、自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に位置決めされた第1のビードであって、外側ePTFE部材が第1のビードの少なくとも一部の上に延びている第1のビードと、自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に位置決めされた第2のビードと、第1および第2のビードの少なくとも一部に位置決めされた近接端を有するフレア状の血管カフとを含んでいる。
【0016】
さらに別の実施形態では、血管移植片は、長手軸周りに第1の断面積を有するePTFE基体の遠位部を通して延びている長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、ePTFE基体が基体の遠位部を約20ミリ以下の直径を有するほぼ円形のピンに接触させるように湾曲しているので、ePTFEは第2の断面積が円形のピンの外側表面から約20ミリに配置されている場合に、第1の断面積の少なくとも約50%のePTFE基体の第2の断面積を含んでいるように、ePTFE基体の周りに配置されたエラストマー部材とを含んでいる。
【0017】
一実施形態では、よじれ耐性血管移植片を作る方法は、近接端部、遠位端部および近接端部と遠位端部の間に中心部を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に第1のビードを結合させるステップとを含んでいる。
【0018】
別の実施形態では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びている自己封止領域を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に第1のビードを位置決めするステップと、自己封止領域および第1のビードの少なくとも一部の上に外側のePTFE部材を配置するステップと、自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に第2のビードを位置決めするステップと、第1および第2のビードの少なくとも一部の上で基体にフレア状の管状カフを取り付けるステップとを含んでいる。
【0019】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特性および利点は、最初に簡単に説明した添付の図面と合わせて、本発明の以下のより詳細な説明を参照すれば、当業者にはより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の詳細な説明は、異なる図面において同様の要素は同一の番号が付してある図面を参照して読むべきである。必ずしも等尺度ではない図面は、選択した実施形態を示しており、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。詳細な説明は、限定ではなく例として、本発明の原則を示している。この説明は、明らかに当業者が本発明を行ない使用することを可能にし、本発明を行なう最良の形態であると現時点で考えられるものを含む、発明のいくつかの実施形態、適応形態、変更形態、代替形態および使用を記載している。
【0021】
本明細書に含まれる例は、ePTFE基体を利用している。当業界で知られているように、ePTFE基体は、例えば、管(シームレス)の押出加工、管(1つまたは複数のシーム)内に連続して形成されたシートの押出加工、マンドレル(例えば、多数のシーム、または好ましくは単一の螺旋状シーム)周りのePTFEテープの螺旋状包装などを含む、いくつかの方法で製造することができる。本発明のePTFE基体を形成するのに使用された好ましい方法は管を押出成形することであるが、他の成形方法が可能であり、本発明の範囲内にあることを理解すべきである。さらに、ePTFEを基体層の選択材料として述べているが、当業者は、例えばポリエステル、ポリウレタン、およびペルフルオロエラストマーなどのフルオロエラストマーを含む、他の材料も基体としての使用に適切であることが分かるだろう。
【0022】
さらに、本明細書に記載した移植片の自己封止性状はそこからの針の取り外しによる失血を参照して作られているが、自己封止性状は移植中に移植片内に作り出された縫合糸孔による失血にも及ぶことを理解すべきである。さらに、封止剤層に関する本明細書の特定のポリウレタン材料の説明は単に例示的なものであり、本発明を限定するために利用されるべきものではないことを理解すべきである。より詳細には、多くの異なるタイプのポリウレタン材料が、非ポリウレタンエラストマー封止材料と同様に、本発明の範囲内にある。本明細書で使用されるように、エラストマー、エラストマー封止剤などの用語は、ほとんどの例で、それに封止性状を与えることができるが、穿刺の際に自己封止する必要がない基体上に分散または配置されたほぼ可撓性のある材料の1つまたは複数の層のことを言及するために交換可能に使用されている。
【0023】
加えて、生体活性剤を(1つまたは複数の)材料に組み込んで、本明細書に記載する血管移植片を形成することができる。生体活性剤は、移植片の内外腔面の少なくとも一方内に合成非金属材料(例えば、Dacron(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シクロヘキサン、およびその組み合わせ)と組み合わせることができ、移植片の合成非金属材料全体を通して分散させることができ、その上に被覆することができ、その上に噴霧被覆することができ、移植片をその中に浸漬させることができ、その上に蒸着させることができ、その上にスパッタリング蒸着させることができ、または移植片上に放射線不透過性表面を形成するのに使用することができる。使用される材料または材料の組み合わせ(例えば、Dacron(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シクロヘキサン、およびその組み合わせ)は、表面改質添加物または他の材料を含むことができる。
【0024】
基体、生体活性剤、封止剤層、発泡体層、その他の層および他の設計パラメータの構造または構成の変更は、本明細書に記載した移植片で利用されるものであることを強調すべきである。例えば、移植片内の生体活性剤の重量パーセントは、約0.1パーセントから約90パーセントまで、最も好ましくは約10から約60パーセントまで変わることができ、生体活性剤の平均粒径は約20ナノメートルから約100ミクロンまで、最も好ましくは約0.1ミクロンから約5ミクロンまでにわたることができ、生体活性剤粒子は特定の構造では多孔質で、他の構造では非多孔質であってもよく、生体活性剤は移植片の内外腔面の100パーセントを構成することができ、移植片本体全体を通して均質に分配することができ、生体活性剤はまた約10ミクロンから約1000ミクロンの接着フィルムを構成することもできる。
【0025】
生体活性剤は、これに限らないが、炭素粒子、銀粒子、黒鉛粒子、抗生物質(アメトプリンリファンピンまたはゲンタマイシン)、マクロライド抗生物質、ステロイド剤または抗炎症剤(例えば、エストラジオール)、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成剤、抗血管形成剤、プロテイナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞周期調整剤(ラパマイシン、シロリムス、またはパクリタキセルなど)などの化合物を含むことができる。他の生体活性剤はまた、これに限らないが、例えば、ビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、パクリタキセル、エピディポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびミトマイシン、酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力を有していない細胞を派生するL−アスパラギナーゼ)などの天然生成物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)IIb/IIIa阻害剤およびビトロネクチン受容体拮抗薬などの抗血小板薬、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホン酸ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンデカルバアジニン(decarbazinine)(DTIC)、葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗増殖/抗有糸分裂性代謝拮抗物質、白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン(すなわち、エストロゲン)、抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびトロンビンの他の阻害剤)、線維素溶解薬(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブキシマブ、抗遊走薬、抗分泌薬(ブレベルジン)、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン、パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン、インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、およびエトドラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム)などの抗炎症剤、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管形成剤、すなわち血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその組み合わせ、細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、および成長因子受容体シグナル変換キナーゼ阻害剤、レテノイド、サイクリン/CDK阻害剤、HMGコエンザイムレダクターゼ阻害剤(スタチン)、およびプロテアーゼ阻害剤などの物質を含むことができる。
【0026】
これらの物質は、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはこれに限らないが、第二リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸テトラカルシウム、およびリン酸カルシウムまたはカルボン酸カルシウム系の他の化合物を含む他の生体適合性カルシウム塩などの他の物質を結合させることができる。記載したカルシウム塩のグループの部材のいずれかを、塩が移植片内で実質的に骨誘導性(すなわち、骨形成性)でない限り、利用することができる。また、ナノサイズの炭素管、炭酸カルシウム、および遺伝子またはウィルス材料などのセラミック材料も、本明細書に記載する移植片材料の少なくとも1つと組み合わせることができる。
【0027】
HAまたは他の生体適合性カルシウム塩の利用に関して、当業者に知られている様々な方法または技術を使用して、薬剤または生体活性化合物を中に組み込むことができる。例えば、HA移植片合成物を作った後に薬剤を加えることができる。有機または水溶液ベースの技術を使用して、HA粒子内に薬剤または他の生体活性剤を拡散させることができる。別の方法では、HA粒子は最初に、薬剤または他の生体活性剤を装填し、その後、移植片内に組み込むことができる。薬剤または他の生体活性剤は、60分以内に迅速に放出することができる、または数日から2年間まで制御した方法で放出することができる。HA粒子上の追加の高分子コーティングまたはセラミックコーティングを使用して、薬剤または他の生体活性剤の放出を制御することができる。
【0028】
加えて、ePTFEがHAと合わせて使用される場合、合成HA−ePTFE移植片は、異なる多孔性および結節/原線維構造を有することができる。ePTFEの多孔性は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲にあってもよく、好ましい多孔性または結節間距離は約10ミクロンから約40ミクロンの範囲である。拡張比、潤滑剤レベル、PTFE樹脂粒径、および他のePTFE処理パラメータを制御することによって、異なる多孔性の領域をもつHA結合移植片を与えるために様々な多孔性を有する移植片を作ることができる。HA結合移植片はまた、多数の層のePTFE移植片管を使用して作ることもできる。HAベース移植片はまた、開通性を良くする1つまたは複数のカフ、よじれ耐性を良くするビード、および移植または他の外科的処置中に助けとなるような可視配向線などの、本明細書に記載された追加の特性を有することができる。HAまたは他の生体適合性カルシウム塩を組み込んだ移植片のこれらおよび他の態様は、本明細書に全体が記載されているように、参照として援用する、「無機生体適合カルシウム塩を有する移植片およびステント移植片」という名称の2005年6月8日出願の米国仮特許出願第60/689,034号に記載されている。
【0029】
封止剤層
自己封止移植片の好ましい一実施形態では、利用される封止剤層材料は、低い程度のクリープまたは応力緩和を示すと考えられているものである。材料のクリープまたは応力緩和は、好ましい実施形態の内容では、長い時間の材料を通した針の挿入により起こる可能性がある、その塑性変形により起こる。封止剤層の適切な材料の例としては、これに限らないが、芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシクロヘキサンエラストマー、他のシリコンエラストマーなどが挙げられる。より詳細には、低い程度のクリープまたは応力緩和を示す好ましいポリウレタンとしては、芳香族ポリウレタンが挙げられる。さらに、封止剤層の封止反応は、封止剤層により示されるクリープまたは応力緩和の低下につながる加熱によって、および/または本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に記載されたように、ポリウレタンテレフタラート(ポリエステル)を含む粒子を封止材料に加えることによって、ポリマーの操作により良くすることができる。また、封止剤の濃さが移植片の封止反応に影響を与え、移植片特徴は、移植片の封止反応を良くすることに関して上に述べた処理/方法(すなわち、選択した封止剤のタイプ、加熱処理、粒子添加など)に加えて、封止剤の濃さを変えることにより操作することができる。
【0030】
自己封止ePTFE移植片
本明細書に記載するような自己封止移植片としては、共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Kowligi他の米国特許第5,152,782号に記載されているように、封止剤層を上に備えたePTFE基体が挙げられる。より詳細には、高い多孔性の移植片または薄い壁面の移植片のいずれかとして当業者に分類されたePTFE基体は、封止剤層で被覆され、封止剤層を備えた通常の壁面の移植片、および封止剤層のない上記タイプの移植片と比較される。本明細書で使用される「高い多孔性の移植片」という用語は、約30から約100ミクロンまでの範囲内の結節間距離(IND)を有する移植片のことを言う。本明細書で使用される「薄い壁面の移植片」という用語は、約500ミクロン未満の壁面厚さ、より好ましくは約200から約500ミクロンまでの範囲の厚さを有する移植片のことを言う。薄い壁面の移植片または高い多孔性の移植片のいずれか(または、その組み合わせ)であるePTFE基体を提供することによって、ePTFE基体の壁面内を適切に貫通するように上に配置された封止剤層(例えば、ポリウレタンなどのエラストマー封止剤)は、本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に記載されたように、針を取り除く際のクロージャ反応を支配する傾向がある。
【0031】
ePTFE AV移植片
封止剤で被覆したePTFE移植片は、有利な自己封止性状を示すことに加えて、移植片のよじれ耐性をかなり低下させるという付随した欠点を有する可能性がある。したがって、封止層だけで被覆されたePTFE基体の実施形態は、ePTFE AV移植片が移植片中に屈曲が必要ないように移植された場合に好ましい可能性がある。ePTFE AV移植片が移植のために屈曲を必要とする場合(図1AおよびBの例に示すように)、移植片によじれ耐性を与えるために、追加の処理ステップが必要である可能性がある。
【0032】
移植片に長手方向のコンプライアンスも加える、被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第1の例は、共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Della Corna他の米国特許第4,995,899号に示され記載されたように、封止剤でePTFE移植片を被覆するステップの前にePTFE移植片を長手方向に圧縮するステップである。ePTFE移植片の圧縮は、例えば、ePTFE移植片を円筒形マンドレルの上に配置し、その長手軸に沿って圧縮力を加えることによって達成することができる。被覆前のePTFE移植片の圧縮は、屈曲部の外径上で移植片を伸ばすことを可能にすることによってよじれ耐性を大きくし、屈曲部の内径の上で圧縮するように働く。ePTFE AV移植片では、封止剤層での被覆前のePTFE移植片の長手方向圧縮は普通、別の処理ステップを利用するかどうかに関わらず、利用される。
【0033】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第2の例は、移植片の外側表面周りでビードを包むステップである。ビードが上に配置された被覆したePTFE移植片の仕様(例えば、移植片の材料性状、移植片の寸法、封止剤の材料性状、封止剤層の寸法、移植片の意図する使用、移植片の意図する定置位置など)によって、いくつかのビードパラメータが可能である。例えば、ビードの厚さ、ビード材料のタイプ、ビードの硬度、ビードの巻線間の間隙、ビードの断面形状、およびビードの巻線角度は全て、ePTFE AV移植片の意図する性能、より詳細にはそのよじれ耐性を達成するように変えることができる。さらに、放射線不透過性顔料をビード内に組み込んで、放射線コントラストに放射線不透過性を与えることができる。ビード内に組み込まれる放射線不透過性材料の例としては、これに限らないが、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、タンタルなどが挙げられる。一実施形態では、ビードは放射線不透過性を示す金属材料を含んでいる。ビードはePTFEの周りで包まれた細長い部材として示されているが、ビードは別個の部材(例えば、複数のリング)としてePTFEの周りで包まれた、または直接あるいは中間部材により互いに連結された個別の細長い部材を含んでいることに留意すべきである。
【0034】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第3の例は、移植片表面上の封止材料の選択蒸着のステップである。このような選択蒸着は、部分レーザ切除によって、あるいは被覆したePTFE移植片の長さの少なくとも一部の上に離れた間隔で封止材料に溝を付けることによって達成することができる。溝付けは、ePTFE基体に封止剤層を通して精密溝を切り込むことが可能な、CO2レーザまたは他の器具を使用して達成することができる。溝は、あらゆる角度または深さで封止剤層内に切り込むことができ、あらゆる長さで間隔を置いて配置することができる。さらに、溝の角度および/または溝間の長さは、選択した長さに沿って変えることができる。処理ステップとしての被覆したePTFE移植片への溝付けは、それだけで、または前に説明した処理ステップ、および/または被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするような本明細書では特に記載していないあらゆる処理ステップと組み合わせて使用することができる。加えて、被覆したePTFE移植片の選択した長さのみに溝を付けることができる(例えば、移植片が移植の際に屈曲される場合、被覆したePTFE移植片の中間部)。
【0035】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第4の例は、被覆したePTFE移植片の上に発泡体層を配置するステップである。発泡体は、ポリマー材料を含むことができ、被覆したePTFE移植片の外側表面上に配置することができる(それだけで、または組み合わせて、上記処理ステップのいずれかを行なうことができる)。ポリマー発泡体を被覆したePTFE移植片の外側表面上に配置することができる方法の例が、本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に与えられている。
【0036】
被覆したePTFE移植片はさらに、ePTFEテープなどの多孔質材料の外側層で包むことによって、ePTFE AV移植片として使用するために準備することができる。外側ラップの追加は、移植片を身体組織内に固定するようにePTFE AV移植片内への組織内部成長を良くし、また(1つまたは複数の)ポリウレタン層への組織液露出を少なくすると考えられている。外側ラップの厚さおよび密度は、よじれ耐性および処理が悪い影響を受けないように選択することができる。ePTFEテープをポリウレタンなどの下にある非PTFE材料に接着することに関して、THFなどの溶剤の同時の使用は、下にある材料にePTFEテープを結合させるように働くことが発見された。THFまたは他の溶剤は、テープを移植片に塗布した(すなわち、螺旋状に包んだ)後に噴霧することによって、または包装の前に溶剤中にテープを浸すことによってePTFEテープに塗布することができる。
【0037】
好ましい一実施形態では、ePTFEテープは、溶剤分配装置の上またはこれを通して最初に通過した後に、ポリウレタンなどの封止剤層の上で包まれる。例えば、ePTFEテープがスプールまたはプーリシステムから供給される時にマンドレル上の移植片を回転させることができ、ePTFEテープはマンドレルとプーリシステムの間に位置決めされた分配装置の上を通過する。分配装置は、様々な構成をとることができるが、一実施形態では、分配される溶剤を入れたリザーバ、圧力制御装置、および調整装置に連結された1つまたは複数の開口部、スリット、または他の開口を中に備えた加圧管である。処置の開始の際に、溶剤で飽和されたスポンジまたは同様に機能する物体が、分配管の(1つまたは複数の)開口部上に位置決めされている。ePTFEテープがプーリシステム上のスプールからマンドレル上の移植片まで供給されると、分配管スポンジ上を通過し、それによって均一な量の溶剤がePTFEテープに塗布される。
【0038】
図2〜9は、上記処理ステップの1つまたは複数を組み込んだ、被覆されたePTFE移植片の図である。図2は、中間部16までつながっているが、中間部16を含んでいない、その長さの一部にわたってポリウレタンコーティング14を有するePTFE基体12を示しており、螺旋状に包まれたPTFEビード18がその上に配置されている。図3は、図2のePTFE移植片上のポリマー発泡体層22を示しており、図4はePTFE AV移植片26を作り出すように、図3の発泡体層22の周りに螺旋状に巻かれたePTFEテープ層24の外側ラップを示している。図5は、極めて小さな半径で優れたよじれ耐性を示す、ループ状構造の(すなわち、中間部16に沿って屈曲している)図4の移植片26を示している。図6は、その全体の長さにわたってポリウレタンコーティングを有するePTFE基体を含む移植片28を示しており、コーティングは移植片の長手軸とほぼ垂直な角度で中に切り込まれた溝32を有する。移植片28はまた、その長さに沿って長手方向に延びている1対の平行な配向線を有する。図7は、溝32によって与えられるよじれ耐性を示すように、ループ状構造の図6の移植片28を示している。図8は、移植片28と同様であるが、中間部42にいかなる封止層を備えておらず、代わりに螺旋状に包まれたPTFEビード18を備えている(図2と同様)移植片38を示している。図9は、また極めて小さな半径で優れたよじれ耐性を示す、ループ状構造の発泡体層44を備えた移植片38を示している。
【0039】
図10は、本明細書に記載するようなePTFE AV移植片用の異なる材料層を示している。図10の層の配置は、異なるタイプの層を例示するものであり、必ずしも互いに対する層の順序を反映しているものではないことを理解すべきである。上に述べたような薄い壁面の移植片または高い多孔性の移植片を含むことができるePTFE管状基体10は、ポリウレタンベースコート20によって囲まれている。一実施形態ではePTFE基体10の全長にわたって配置されたこのベースコート20は、ポリウレタンなどの材料で作ることができる。ベースコートの一部は、移植片の壁面を貫通する。封止剤層30は、ベースコート20の上に配置され、また移植片壁面厚さ、封止剤のタイプなどの様々な要因に左右される厚さを有する、ポリウレタン(または、上に述べるような他のタイプの材料)で作ることもできる。しかし普通は、封止剤層およびベースコートの厚さは、約10〜400ミクロンの範囲、ベースコート20では好ましくは約20ミクロンから約40ミクロン、封止剤層およびベースコートでは合計約100ミクロンの範囲にある。封止剤層30は移植片の全長にわたって配置することができるが、一実施形態では、移植片の端部または移植片の中間部のいずれの上にも位置決めされていない。上に述べるように、封止剤層30はよじれ耐性を助けるように、移植片の選択した長さに沿って溝を付けることができる。発泡体層40が、封止剤層30上に位置決めされ、ビード層50、別の発泡体層60および外側ラップ層70が続く。
【0040】
図11〜14は、ePTFE AV移植片の他の好ましい実施形態の例を示しており、それぞれ図10に示す層の一部または全てを組み込んでいる。図11は、ePTFE AV移植片100の断面図であり、ePTFE基体10はベース層20によってその長さに沿って被覆されている。封止剤層30が、軸方向に間隔を置いた位置でベース層20の上にあり、発泡体層40は発泡体層40が封止剤層30を実質的に有していない領域内でベース層20と接触するように封止剤層30上に配置されている。発泡体層40の上では、ビードが移植片100の中間部の周りで螺旋状になっておりビード層50を作り出し、別の発泡体層60が塗布される。発泡体層60の周りでは、ラップ層70は、螺旋状に包むことができる、(上に述べるような)ePTFEテープなどの材料を包むことによって位置決めされている。図12は、ePTFE AV移植片100と同様のePTFE AV移植片200の断面図であり、違いは、ビード層50は、ビードが間隙が封止剤層30内に存在する位置に位置決めされる(すなわち、ビードが封止剤層30を含む移植片200の長さに重ならない)ように、移植片200の中間部の間隔を置いた長さにわたって螺旋状になっているビードを備えていることである。この実施形態の1つの利点は、吻合までの移植片のよじれ耐性を維持しながら、吻合中に移植片端部の縫合を可能するために、外科医が一端部からあらゆる所望の長さまで移植片のビードをほぐすことが可能であるということである。
【0041】
図13は、ePTFE基体10上にベース層20を有するePTFE AV移植片300の断面図である。この実施形態では、ベース層20上に位置決めされた封止剤層30は、ベース層20まで切断された「V」字形の溝付部32を備えた移植片300の中間部に沿って続いている。図示するように、溝付部32は3つの小さな間隔で離され、1つの長い間隔が続く。しかし、このような間隔は、移植片300の所望の可撓性およびよじれ耐性を得るために、いくつかの異なる方法でパターン化することができる。発泡体層40は、封止剤層30の上に配置され、ラップ層70が続く。図14は、図13と同様の封止剤層30を有するePTFE AV移植片の断面図であるが、移植片300の中間部の封止剤30の長い間隔の代わりに、ビード層50が移植片400の中間部に位置決めされている。
【0042】
上記各移植片はまた、移植中に適切な位置合わせ(ねじれのないこと)を保証するように、その外側表面に沿って1つまたは複数の長手配向線(例えば、1つまたは複数の青いストライプ)を組み込むことができることを理解すべきである。1つまたは複数の配向線はまた、(例えば、非均質特徴を備えた移植片を避けるために)回転マンドレルなどの上に取り付けられた場合に移植片がねじれないことを保証するのを製造中に助けることができる。例えば、本明細書で述べる自己封止血管移植片用のePTFE基体は、1つまたは複数の色付き(例えば、黒色、青色など)線で作ることができ、それによって(例えば、自己封止血管移植片を構築する際の別の処理ステップのために)基体が上に配置されるマンドレル上の線の位置合わせにより、移植片がねじれていないという視覚的確認が製造者に与えられる。1つまたは複数の配向線は、標準的な共押し出し過程を使用して基体上に組み込むことができる。1つまたは複数の好ましい配向線は、黒色、青色または緑色の生体適合性顔料または染料でできている。最も好ましい色は青である。自己封止血管移植片の外側表面上に組み込まれた1つまたは複数の配向線に関して、印刷過程を行なうことができる。移植片の基体または外側表面上の1つまたは複数の線は、移植片の中心を示す、または移植片の異なる領域(カニューレ挿入領域など)を示すように、実線、点線、またはその組み合わせであってもよい。また、1つまたは複数の線の代わりに、英数字識別子、または(1つまたは複数の)線および(1つまたは複数の)英数字識別子の組み合わせを、ePTFE表面上に印刷あるいは配置することができることに留意すべきである。
【0043】
自己封止血管移植片の外側表面がePTFEを含んでいる場合、ePTFE表面上への1つまたは複数の線の接着を保証するために、特殊インク配合が必要である。一実施形態では、ePTFE表面に対する配向線用のインク配合は、ePTFE表面に十分付着する適切な高分子結合剤、生体適合性染料または顔料、および高分子結合剤を溶解する溶剤を含んでいる。加えて、インク配合は、(インク陰影を調節するために)二酸化チタンなどの無機白色固体物、および粘度調整剤を含むことができる。配向線を作るために多くの顔料または染料を使用することができるが、人体移植の長い歴史を有する顔料または染料が最も好ましい。インク中の好ましい色化合物としては、これに限らないが、(フタロシアニナト(2−))銅、D&C青色9号、D&C緑色5号、クロロフィリン銅錯体、油溶性物、酸化クロムコバルトアルミニウム、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&C青色5号、FD&C青色2号、D&C緑色6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄などが挙げられる。(フタロシアニナト(2−))銅は、最も好ましい青色化合物である。インクの色(例えば、黒色、青色など)は、約6500°Kの温度を有する光の下で見ることによって判断することができる。
【0044】
提供された説明により作られたePTFE AV移植片の1つの好ましい例を次に説明する。炭素線を有する内側表面を備えたePTFE基体は、(炭素でできている)配向線で押し出し加工され、最終結節間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンまでであり、壁面厚さが約200ミクロンから約300ミクロンまで、好ましくは約260ミクロンであるように長手方向に膨張される。ePTFE基体は、(例えば、約6.3mmの直径を有する)マンドレル上に位置決めされており、マンドレルは2パスのポリカーボネートポリウレタンが塗布されるときに回転される。ポリウレタンは、約1mm未満のノズル開口直径を有するBinks(登録商標) Model 2001スプレーガンを使用して塗布され、ポリウレタン、および(非酸化剤タイプの抑制剤を備えた)THFなどの溶剤は、スプレーガンの上部から加圧され、ポリウレタンがスプレーガンのノズルから噴霧されたときに外気(しかし、一実施形態では、空気の代わりに窒素が使用される)と混合する。スプレーガンは、約2インチから約15インチ、好ましくは3インチ未満だけePTFE基体から離れており、ポリウレタンは基体上に噴霧される。第1のパスでは、マンドレルは約150rpmから約260rpmまで回転され、第2のパスでは、マンドレルは約350rpmから約675rpmまで、好ましくは約435rpmで回転される。これにより、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する、移植片上の封止剤層またはコーティングが形成される。
【0045】
所望の粘度に到達するまで上に記載するように溶剤中に最初に溶解される(ポリウレタンストランドの長さは粘度によって変わる、より高い粘度がより長いストランドにつながる)、ポリウレタンの第1のパスが、約20ミクロンから約40ミクロンまでの厚さを有するポリウレタンのベースコートが塗布されるまで(外壁内に貫通するある程度のポリウレタンを備えた)基体の外壁に塗布される。いくつかの状況では、ポリカーボネートポリウレタンなどのポリウレタンは、溶剤に溶解するために、最初に加熱すべきであることに留意すべきである。得られる構造(基体およびポリウレタンの第1のパス)はその後、長手方向に(例えば、手によって)圧縮され、第2のパスが加えられ、ポリウレタン封止剤層の合計厚さが約100ミクロンになるまで(厚さを確認するのにレーザミクロメータが使用される)、ポリウレタンの追加のコートが同じ方法で(しかし、マンドレルのより速い回転で)基体およびポリウレタンのベースコート上に塗布される。
【0046】
ポリウレタン発泡体層はその後、約700ミクロンの厚さを有するポリウレタン封止剤層の上に塗布され、それによって発泡体層の塗布の後の移植片構造の合計壁面厚さは、約1mmから約1.1mmである。好ましい一実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さと同じ厚さを有し、より好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍の厚さを有し、最も好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍より大きい厚さを有する。発泡体層は、ポリカーボネートポリウレタンを約12〜20インチの距離、好ましくは約15インチの距離で封止剤層の上に噴霧することによって塗布される。発泡体層の塗布の後に、移植片構造は約1時間から約24時間の間、約50℃から約70℃の空気温度に、好ましくは約15時間の間、約50℃の空気温度に設定された炉内に置かれ、硬化させるために(すなわち、破壊された水素結合を再び確立するために)その後、硫酸バリウムを有するポリウレタンのビード(視覚化のために放射線不透過性を提供する)は、硬化させた移植片構造の上で螺旋状に包まれている。ビードは、円形、楕円形などを含む様々な断面形状を有することができるが、好ましい一実施形態では、ビードは矩形形状を有する。
【0047】
より詳細には、好ましい一実施形態では、ビードは、Polymer Engineering Group,Tempe,AZによって供給される20%硫酸バリウム充填剤(剛性を増すため)を有するCarbothane PC−35(72ショアDの硬度)でできており、長辺が約1mmであり短辺が約500ミクロンである矩形の断面形状を有し、長辺は移植片の外側表面に対して位置決めされている。移植片にビードを塗布する好ましい方法では、溶剤の溶液を通して、約1mmから約2mm離れているビードの隣接する巻線を有する移植片の外側表面周りで巻かれているので、ビードは約500グラムの力の張力の下に置くことによって予め負荷が加えられる。包装は、ビードが発泡体層内に埋め込まれるように張力をかけて行なわれる。次に、別の発泡体層が塗布されて、約1mmから約5mmの全壁面厚さにつながり、最も好ましくは、カニューレ挿入される領域上のビード間隙は約4mmであり、中心曲げビードは約2mmである。この発泡体層上に、縁部がいくらか重なるように螺旋状に包まれることが好ましいePTFEテープが塗布される。ePTFEテープ包装は、基体と同じIND(すなわち、約10ミクロンから約100ミクロン)を有するが、約90ミクロンから約300ミクロンのはるかに薄い壁面を有する。ePTFE移植片の最終厚さは、約1mmから約2mmまで、好ましくは約1.5mmである。
【0048】
ePTFEテープが包まれるときに、テープを発泡体に結合させるのを助けるように溶剤が同時に塗布される(THFまたは他の非プロトン性溶剤がポリウレタンを溶解すると考えられ、それによって包装過程中に少量が塗布される場合、機械的結合がその間に展開される)。張力(例えば、約100グラムの力から約200グラムの力)が包装過程中に加えられ、それによってポリウレタンが結合を助けるようにePTFEミクロ構造内に侵入することになる。この例では、ePTFEテープの重なり領域は互いに結合せず、代わりに、長手方向コンプライアンスを可能にすることができる下にあるポリウレタン発泡体に結合する。しかし、別の実施形態では、テープの重なり領域は互いに付着される。張力を加えてのビードおよび/またはテープの包装は、移植片の封止反応を大きくすると考えられる。任意の配向線はその後、移植片の長さにわたって長手方向に加えられる。この時点では被覆されていないままである移植片の端部は次に、必要に応じて埋め込んだビード層に影響を与えることなく臨床医がビードを取り除くことができるようにこの段階で塗布された、ビードの螺旋状ラップの後のポリウレタン層で被覆される。ビードは、結合を助けるように溶剤が塗布される。
【0049】
そうでないと記されていない限り上記の処理方法および器具が利用される、別の好ましい実施形態を次に説明する。炭素線を有する内側表面を備えたePTFE基体は、(炭素でできている)配向線で押し出し加工され、最終結節間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンまでであり、壁面厚さが約100ミクロンから約500ミクロンまで、好ましくは約200ミクロンであるように長手方向に膨張される。ePTFE基体は、マンドレル上に位置決めされており、マンドレルは2パスの溶剤を伴うポリカーボネートポリウレタンが基体の全長に塗布されるときに回転される。第1のパスの後に、基体は長手方向に約20%圧縮され、第2のパスが基体の全長に塗布される間この長さで維持され、それによって基体はポリウレタンの影響によりその元の長さの約80%に留まる。2パスのポリウレタンにより、約10ミクロンから約150ミクロン、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する、移植片上の封止剤層が形成される。
【0050】
第1のポリウレタン発泡体層はその後、上に記載するようにポリウレタン封止剤層の上に塗布される。この第1の発泡体層は、基体の中間部にのみ塗布され、それによって基体の各端部は第1の発泡体層がない。基体の各端部の縁部から第1の発泡体層までの距離は、最大約5cmである。第1の発泡体層の塗布の後に、硫酸バリウムを備えたポリウレタンの第1のビードの長さが、第1の発泡体層を含む基体の中間部上で(上に記載するように張力を加えて)螺旋状に包まれている。第1のビードは、約200ミクロンから600ミクロンの高さ、および200ミクロンから1200ミクロンの幅の範囲の寸法を有する楕円形断面形状を有する。蒸発(例えば、大気温度による、または熱による)は、ビードの包装のほぼ前に溶剤を取り除くために行なわれる。次に、第2のビードの長さは、基体の縁部から約5cmから基体の縁部から約6cmまでの、第1の発泡体層の各端部上で(上に記載するように張力を加えて)螺旋状に包まれている。この第2のビードはまた、楕円形の断面形状(楕円の2つの中心が同じである場合円形となる)を有するが、第1のビードより小さい断面積(例えば、約100ミクロンの直径)を有する。第2のビードの塗布の後に、第2の発泡体層が基体の中間部に沿って第1の発泡体層およびビードの上に塗布され、第2の発泡体層は第1の発泡体層を越えて長手方向に延びることなく、第1の発泡体層を実質的に覆う。第1および第2の発泡体層の合計組み合わせ厚さは、約300ミクロンから約1500ミクロン、好ましくは約700ミクロンである。
【0051】
ePTFE部材、好ましくはある長さのePTFEテープはその後、張力を加えて組み合わせた発泡体層の周りで包まれており、組み合わせた発泡体層とテープが接触する前に、テープに溶剤を塗布する分配装置の上をまたはこれを通して通過する。テープの縁部はいくらか重なっていることが好ましい。ePTFEテープは、基体と同じIND(すなわち、約10ミクロンから約40ミクロン)を有するが、約100ミクロンから約300ミクロン、好ましくは約260ミクロンのはるかに薄い壁面を有する。別の長さの第2のビードはその後、基体のほぼ縁部からePTFEテープのほぼ縁部まで(組み合わせた発泡体層上にある)基体の各端部上で、または基体の各端部上で約6cmの距離にわたって螺旋状に包まれている。基体の2つの端部(すなわち、各端部から約6cmの長さ)はその後、溶剤に急速に浸漬される。約6cmの長さをそれぞれ有する2つのePTFEのほぼ管状のスリーブが準備され、第2のビードが全体的に覆われ、スリーブがePTFEテープの縁部の上に部分的に延びるまで、基体の端部の上に「ねじ込まれる」(すなわち、スリーブが基体の中間部に向かう方向に移動するように加えられた力で回転され、第2のビードは「ねじ山」として働く)。スリーブ付端部はその後、溶剤内に急速に浸漬され、移植片は約14時間から約16時間の範囲の時間だけ約50℃の空気温度に設定された炉内に置かれる。
【0052】
図16A〜16EはePTFE AV移植片の実施形態を示しており、図16Aおよび図16Cはそれぞれ、現時点で好ましい中間部および端部設計を示している。図16Bおよび16Dは、ePTFE AV移植片の前の好ましい中間部および端部設計を示している。図16Aおよび16Bを最初に参照すると、中間部はePTFE基体80を備えており、その上に封止層82(本明細書に記載するように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置され、その上に発泡体層84(また、本明細書に記載するように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置/形成される。ビード86が発泡体層84内に埋め込まれ(すなわち、ビード86がポリウレタンマトリックス内に配置され)、発泡体層84の表面に付着され、発泡体層84を覆っているのはePTFE部材88である。図16Aの移植片は、少なくとも以下のように図16Bの移植片と異なる。1)ビード厚さは約16%小さくなる。2)封止剤層82の厚さは、約67%だけ小さくなる。3)ビード86は約44%封止剤層82に近くなるように移動される。4)発泡体層の厚さは約26%小さくなる。5)ビードの回転の間の間隙は、約18%大きくなる。これらの変化は、移植片の機能を改善させた小さな輪郭の移植片につながった。
【0053】
図16Cおよび16Dに関して、ePTFE AV移植片の端部設計はまた、移植片の機能および性能を改良するように変えられた。図16Dに示す前の端部設計では、第1の封止剤層92は、ePTFE基体90の上に分配され、ePTFEテープ層94が続き、第2の封止剤層96はePTFEテープ層94の上に配置された。ビード98はその後、第2の封止剤層96の上で包まれ、そこに付着された。図16Cに示す新規の設計では、ビード98より小さい断面積のビード99が、ePTFE基体90の直接上で包まれ、本明細書で記載された方法および過程によってそこに付着される。ePTFEテープラップではなくePTFEスリーブ102はその後、ビード99の上で押されるまたはねじ込まれ、移植片の端部に対するはるかに低いプロファイルにつながる。ePTFE基体90へのePTFEスリーブ102の付着はまた、基体90をビード99で螺旋状に包み、ビード99の上にスリーブ102を配置し、溶剤が外側スリーブ102を通してビード99の上を貫通し、それによってビード99のポリウレタン部分が軟化し、スリーブ102および基体90両方との結合を形成するように、THFなどの適切な溶剤をスリーブ102の外側表面上に噴霧することによって達成することができる。この技術により、基体に溶剤を噴霧する必要なく、またはビード99を溶剤に浸漬する必要なく、基体90からのスリーブ102の剥離の際の実質的な減少が可能になると考えられる。
【0054】
図16Aに示された実施形態では、封止剤またはベース層82は約0.04mmの厚さであり、発泡体層84は約0.6mmの第1の発泡体層を噴霧し、合計発泡体層84が約1.2mmであるように第2の発泡体層を噴霧する前にこの第1の発泡体層を乾燥させることによって形成される。図16Cに示された実施形態では、ビード90は約2mmにわたって間隔を置いた約0.2mmの平均直径を有し、外側スリーブ102が約500ミクロンである場合に基体90と外側スリーブ102の間のインターフェイスに近接して配置されている。
【0055】
図16Eは、ePTFE AV移植片の現時点で好ましい中間部または中心部を示している。特定の状況では、外科医は移植片を通る流体流を防ぐように、移植片の上に締付機構を置くことによって移植片を締め付けたい可能性がある。この締付動作は、図16A〜Dに記載したものなどのePTFE AV移植片の特定の性状に悪影響を与える可能性がある。図16Eでは、ePTFE AV移植片の中心部104は、移植片の自己封止領域の残りとは異なるように構成されている。中心部104では、比較的大きな断面積を有するビード86が、封止剤層を介在させることなく、ePTFE基体80の外側表面に対して直接位置決めされている。一実施形態では、ビードは約300ミクロンから約700ミクロンの高さ、および約200ミクロンから約1200ミクロンの幅の範囲の寸法を有する楕円形断面形状を有する。好ましい一実施形態では、ビード86は、上に詳細に説明したように、THFなどの溶剤を含む槽を通過した後に、ePTFE基体80の表面の上で螺旋状に包まれている。発泡体層は、上に記載したように、ビードの上のePTFE基体上に配置される。一実施形態では、封止剤層は、発泡体層の蒸着の前に、ビードの上のePTFE基体の上に配置される。
【0056】
自己封止カフ移植片
本明細書に記載した様々な移植片構成はまた、血管への取付を助けるように設けられた1つまたは複数のカフを有することができる。カフを備えた血管移植片、カフ構成、および血管に取り付けるためにこのようなカフおよびカフ移植片を作る方法および装置が、それぞれ共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Scholz他の米国特許第6,273,912号、Scholz他の米国特許第6,746,480号、Scholz他の米国特許出願公開第2004/0210302号、Randall他の米国特許第6,190,590号、Edwin他の米国特許第6,203,735号、Harris他の米国特許第5,861,026号、Harris他の米国特許第6,221,101号、Harris他の米国特許第6,589,278号、およびHarris他の米国特許出願公開第2004/0064181号に記載されている。
【0057】
カフは、ePTFE、およびシリコンまたはポリウレタンなどの他の材料から作ることができ、シリコン、ポリウレタンまたは他の材料基体を有するePTFE AV移植片または移植片に結合させることができる。移植片に取り付けるカフの一例が図17に示されており、カフ110の背面図はカフ部112およびネック部114を示しており、ネック部114はその長さの少なくとも一部に沿って離れており、したがって移植片の一端部上へのカフの定置が容易になる。カフ110はその後、それぞれの材料性状によって、移植片に結合させることができる。例えば、カフおよびカフを取り付ける移植片表面がePTFEである場合、カフは当業者に知られているように、加熱により取り付けることができる。上に記載したePTFE AV移植片の実施形態に関して、カフは様々な製造段階で移植片の一端部または両端部上に定置することができる。一実施形態では、ePTFEテープラップの塗布と同様に、ePTFEカフは、その上に塗布されたポリウレタン層(例えば、ベース層、発泡体など)を有する移植片の端部上に定置される。例えば、ジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、THF、またはその混合物を含む非プロトン性溶剤などの適切な溶剤はその後、ネック部の下にあるポリウレタンを溶解するようにカフのネック部に塗布され、その結果カフが移植片に結合する。本明細書で述べているように、ビードまたは他の処理ステップがその後、カフ/移植片結合部の上で可能である。
【0058】
別の実施形態では、カフ移植片は、本明細書に記載されるように、ePTFE AV移植片とは別個に形成される。カフ移植片の管状部はその後、管状部の開口端部の壁面を(例えば、拡張器具の使用により)伸ばし、ePTFE AV移植片の端部の一方の上で摺動することによって、ePTFE AV移植片に取り付けられる。一実施形態では、ePTFE AV移植片は外部ビードを有し、カフ移植片の管状部の開口端部は、管状部がePTFE AV移植片の外部ビード部に到達するまで、ePTFE AV移植片の上で摺動し、この地点で、カフ移植片の管状部は外部ビードの上で回転されるまたは「ねじ込まれる」。カフ移植片の管状部の内側表面は、結合を助けるようにその上に接着剤を有することができる、または別の結合を必要に応じて初期取付ステップの後に行なうことができる。
【0059】
別の実施形態では、自己封止カフ移植片は、ポリウレタンまたは同様のポリマーを当業者に知られているような真空蒸着、スプレー被覆、または浸漬被覆処理によって、ePTFEカフ移植片のミクロ構造内に含浸させることによって作り出すことができる。ポリウレタンまたは同様のポリマーが導入されると、ポリウレタンをePTFEの結節と原線維の間の間隙に形成することができるように、あらゆる余分なポリマーが移植片の外部から取り除かれる。別の実施形態は、本明細書で述べるようにポリマーおよび溶剤の組み合わせでePTFEカフ移植片をスプレー被覆し、ePTFE/ポリマー/ePTFE積層物を作り出すようにその上にePTFEテープまたはパッチを塗布することを含んでいる。別の実施形態では、自己封止カフ移植片は、ネック部を有するカフを移植片に連結させ、移植片とカフのネック部の間の連結点まで移植片を封止材料(例えば、ポリウレタン)内に移植片を浸漬被覆させ、移植片およびネック部を封止材料に(カフまで)浸漬被覆し、ビードを移植片およびネック部の長さにわたって封止材料の周りで螺旋状に包み、ビード付移植片およびネック部を封止材料内に(カフまで)浸漬被覆することによって作り出される。
【0060】
さらに別の実施形態では、ePTFEカフ移植片の管状本体は、移植片に自己封止、よじれ耐性などを与えるように、本明細書に記載された様々な処理ステップに対してePTFE基体として利用される。ePTFEカフ移植片のカフ部は、移植片の一端部または両端部上にあってもよく、上に塗布された封止剤層を有することができる、または処理されていないままにすることができる。例えば、カフ部はカフ形状を維持するように、ポリウレタンコーティングを有することができる。カフ部が上に塗布された封止剤層を有する場合、封止材料(例えば、ポリマー)はパターンで塗布することができる。一実施形態では、(カフを備えた)ePTFE AV移植片のカフ部に塗布されるポリマーは、図18に示すように、カフの上部の「隆線」のパターンでそのように行なわれる。カフ120の隆線部122の例えば、ポリウレタンなどのポリマーは、臨床医が、血管への取付の際に、縫合糸孔出血を緩和するまたは防ぐような縫合糸領域を提供する。これらの隆線部は例えば、ポリマーを塗布する前にカフの上にマスクを置くことによって、またはカフに塗布された場合に隆線をポリマー内にレーザ切り込みすることによって作り出すことができる。隆線部は、当業者が分かるように、様々な構成をとることができ、様々な角度に設定することができる。さらに、一実施形態では、隆線を作り出すのに使用される材料は、ePTFEカフの縁部が手術中に簡単に特定することができるように中に組み込まれた放射線不透過性物質を有する。
【0061】
別の実施形態では、ePTFEカフ移植片は、図19に示すように第1および第2のビードが端部の上に位置決めされた後に、カフの近接端をePTFE AV移植片の端部の上に位置決めすることによって作り出される。この実施形態では、ePTFE基体とカフの間の遷移を補強するように二重のビード層が利用されている。ePTFEカフ移植片130は、ePTFE基体132の上に配置された封止剤またはベース層134を含む自己封止領域131を備えており、その上に第1の発泡体層136が配置され、続いてビード139および第2の発泡体層138が配置されている。他の実施形態では、封止剤層134、第1の発泡体層136、第2の発泡体層138、およびビード139の1つまたは複数は、自己封止領域131内に含まれていない。基体132の外側表面と接触するビード142が、ePTFE基体132の端部で自己封止領域131に隣接して位置決めされている。上に述べるように、ビードがポリウレタンを含んでいる一実施形態では、ビードは最初に、基体132へのビード142の付着を助けるように、THFなどの溶剤で処理または被覆することができる。ビードは例えば、張力を加えて基体132の周りで螺旋状に包まれた連続した長さのビード、または基体132の端部の長さに沿って間隔を置いて配置された複数のビードリングを備えることができる。一実施形態で隣接するビードリングまたは螺旋状に包まれたビードの巻線の間の距離は、約1.2mmから約2.8mmまでの範囲である。
【0062】
ePTFE部材140はその後、自己封止領域131およびビード142の一部の両方の上に位置決めされる。一実施形態では、上に詳細に説明するように、ePTFE部材140は、第2の発泡体層138およびビード142の一方または両方にePTFEテープを結合させるのを助けるように、THFなどの溶剤の槽を最初に通過することができる、ある長さのePTFEテープである。ビード144はその後、自己封止領域131に隣接してビード142を覆うある長さのePTFE部材140の周りに位置決めされている。ビード142と同様に、ビード144は最初に溶剤で処理または被覆することができる、および/または張力を加えてePTFE部材140の周りで螺旋状に包むことができる。好ましい一実施形態では、ビード144は、ビード144の隣接するリングまたは巻線が図19に示すようにビード142の隣接するリングまたは巻線の間に配置されるように、移植片の端部に沿って位置決めされている。一実施形態では、ビード142は、約0.5cmから約1.5cmまでの範囲内の長さに対してePTFE部材140の上に延びている。ビード144がePTFE部材140の上に位置決めされると、カフ150の近接端152は、ePTFE AVカフ移植片130を形成するように、ePTFE AV移植片の端部の上に配置され、それに結合される。カフ150は、上に述べた方法のいずれかを使用して、移植片に結合することができる。好ましい一実施形態では、ビード142および144は、互いにほぼ同じであるが自己封止領域内のビード139より小さい断面積を有する円形断面形状を有する。
【0063】
ePTFE基体の周りに配置されたエラストマービードの利用により、血管移植片に利用可能であったのより大きいよじれ耐性を提供することが、出願人によって発見された。さらに、ポリウレタンマトリックス(例えば、ポリウレタン発泡体層)の厚さを効果的に大きくするように、ePTFE基体と接触するポリウレタンのベース層を取り除くことにより、血管移植片が、移植片へのあらゆる外部締付の悪影響を少なくしながら、基本的に同じレベルのよじれ耐性を備えたその自己封止性を維持することが可能になる。移植片の「よじれ耐性」または可撓性は、図20A、20Bおよび20Cに関する以下のプロトコルを利用することによって決めることができる。
【0064】
このプロトコルでは、血管移植片は、所定の直径Dを有するほぼ円形のピンの周りで湾曲している。移植片の外側表面は、検査ピン上の2つの接線位置でピンに接触するように構成されており、それによって移植片はピンの最も近い表面から頂点までの距離Lで移植片の外側表面と一致する曲線の頂点を備えた曲線を画定し、LはDとほぼ同じである(図20A)。よじれない移植片はしたがって、ピンの周りで湾曲していない移植片の第1の断面積と基本的に同じである頂点に近接した断面積を維持する(図20B)。よじれはしたがって、ほぼ直線構成(すなわち、湾曲していない)の移植片と比較して頂点に近接した断面積の変化として規定される(図20C)。移植片がより可撓性があればあるほど、移植片はよりよじれ耐性が大きくなると考えられる。よじれによる断面積の損失が移植片を通る流れを逆に少なくする閾値は、第1の断面積の約50%、好ましくは検査ピンの所与の直径に対して湾曲していない移植片の第1の断面積の約66%より小さい断面積として規定される。断面積は、円形領域に対する式を使用して移植片の内径(定数piの径自乗倍)を利用することによって、円形断面移植片内で測定することができることを留意すべきである。しかし、計算を簡単にするために、移植片の外径を代わりに使用することができる。
【0065】
本明細書に記載された移植片のいくつかの実施形態は、60ミリ、50ミリ、20ミリおよび15ミリで始まるピン直径Dを備えた上記プロトコルを使用して検査された。移植片は、60mm、50mm、20mmおよび15mmの少なくともピンの約50%の断面積を維持することを可能にした。これまで、移植片が上に述べた検査プロトコルと合わせて20mmおよび15mmの検査ピン直径で少なくとも約50%の断面流れ面積を維持することが可能であるという点において、よじれ耐性があるエラストマービードを備えたePTFE血管移植片を出願人が最初に提供していると考えられる。さらに、移植片が20mmおよび15mmの検査ピン直径で少なくとも約50%の断面流れ面積を維持することが可能であるという点において、よじれ耐性があるePTFE基体およびエラストマービードを有する自己封止血管移植片を出願人が最初に提供していると考えられる。
【0066】
移植片が普通は締め付けられ、したがってよじれの影響性を大きくする場合に移植片の臨床使用をさらにシミュレーションするために、このような移植片は、45分間歯付クランプで締め付けられ、約5秒間の間円形断面積に向かって手によってマッサージされ、締付の約10分間内で検査された。図16Eに関して記載および図示した血管移植片の実施形態は、20mmおよび15mmの検査ピン直径に対して、湾曲していない移植片内の元の断面積の少なくとも50%のその断面積流れ面積を維持することによってそのよじれ耐性を維持することが可能であった。
【0067】
好ましい実施形態を、Polymer Technology Groupから市販されているCarbothane PC−2585に関して記載したが、例えばBionate、93ショアAの硬度を有するChronoflex C(Cardiotech)、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオール)、1,4−ブタンジオール/ジメチルシレートを備えた14,4−メチレンビスフェノールジイソシアネートウレタン(約1000から約3000までのポリウレタンの軟質部分の分子重量)などの他の適切なポリウレタンも利用できる。適切なポリウレタン(すなわち、ポリマー全体)に対する重量平均分子重量(MW)は、約25,000g/モルから約500,000g/モルの範囲、好ましくは約40,000g/モルから約150,000g/モルの範囲である。好ましい一実施形態では、重量平均分子重量は約50,000g/モルである。最後に、本明細書に記載するような(例えば、その剛性性状)移植片上のビードは、透析針または導入装置シースをビードとの接触の際にビードから、また移植片内に偏向させると考えられていることに留意する。
【0068】
本発明を説明し、本発明の特定の例を描写した。本発明を特定の変更形態および例示的な図に関して説明したが、当業者は本発明は記載した変更形態または図に限るものではないことが分かるだろう。例えば、ePTFEテープまたはラップは、血管移植片の自己封止機能を得るために、発泡体層で利用する必要はない。さらに、本明細書に記載および図示したようなポリウレタンの噴霧は、例えば、被覆したステントを作り出すためのステント上へのポリウレタンの噴霧、カプセル封入したステントを作り出すためのステントの両方の表面上へのポリウレタンの噴霧、フィルタを作り出すためのフレーム上へのポリウレタンなどの材料の噴霧などの、移植片基体上へのポリウレタンの塗布以外の応用例に利用することができる。例示的な一実施形態として、血栓材料が発泡体層に組み込まれている。別の実施形態では、移植片を作り出すために本明細書に記載されている方法、過程および材料が、縫合糸孔出血を少なくするために、頸動脈応用例用のパッチに適用されている。さらに別の実施形態では、本明細書に記載および図示した特性は、例えば、被覆したステント、ステント移植片、または部分的に被覆したステントなどの自己封止移植片以外の移植可能人工器官に適用可能である。
【0069】
加えて、上に記載した方法およびステップが特定の順序で起こる特定の事象を示す場合、当業者は特定のステップの順序を変えることができ、このような変更は本発明の変更形態によるものであることが分かるだろう。加えて、特定のステップを可能な場合、並列過程で同時に行なうことができ、また上に記載したように連続して行なうことができる。したがって、開示の精神内にある、または特許請求の範囲で見られる発明と同等である本発明の変更形態がある程度において、本特許はこれらの変更形態も含んでいることを意図している。最後に、本明細書内で引用した刊行物および特許出願は全て、各個別の刊行物または特許出願が本明細書に特におよび個別に記載されているように、全体に参照として援用する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】患者の前腕に移植したループAV移植片を示す図である。
【図1B】患者の大腿に移植したループAV移植片を示す図である。
【図2】その周りに螺旋状になっているビードを有する、中間部のいずれか側に封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片を示す図である。
【図3】発泡体層が封止剤層およびビードの上に配置された、図2の移植片の図である。
【図4】ePTFEテープが発泡体層の周りで包まれている、図3の移植片の図である。
【図5】屈曲構成で示した、図4の移植片の図である。
【図6】その中に離れた間隔で切り込まれた溝付部を有するその長さにわたる封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片の図である。
【図7】屈曲構成で示した、図6の移植片の図である。
【図8】その周りに螺旋状になっているビードを有し、その中に離れた間隔で切り込まれた溝付部を有する、中間部のいずれか側に封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片の図である。
【図9】屈曲構成で示した、発泡体層が封止剤層およびビードの上に配置された、図8の移植片の図である。
【図10】多数の材料層を備えた、本発明によるePTFE AV移植片の図である。
【図11】本発明によるePTFE AV移植片の一実施形態の図である。
【図12】本発明によるePTFE AV移植片の別の実施形態の図である。
【図13】本発明によるePTFE AV移植片のさらに別の実施形態の図である。
【図14】本発明によるePTFE AV移植片のさらに別の実施形態の図である。
【図15】本発明による別のePTFE AV移植片の図である。
【図16A】ePTFE AV移植片の第1の好ましい実施形態の中間部の長手断面図である。
【図16B】ePTFE AV移植片の第2の好ましい実施形態の中間部の長手断面図である。
【図16C】ePTFE AV移植片の第1の好ましい実施形態の端部設計の長手断面図である。
【図16D】ePTFE AV移植片の第2の好ましい実施形態の端部設計の長手断面図である。
【図16E】ePTFE AV移植片の別の実施形態の中間部または中心部の長手断面図である。
【図17】取付可能なカフの背面斜視図である。
【図18】カフを備えたePTFE AV移植片のカフ部の正面斜視図である。
【図19】ePTFE AVカフ移植片の端部の一実施形態の端部の長手断面図である。
【図20A】よじれ耐性を測定するプロトコルを示すために、ほぼ円形のピン周りで湾曲した血管移植片の側面図である。
【図20B】ピン周りでの屈曲の際によじれなかった移植片を示す、線20B−20Bに沿った図20Aの断面図である。
【図20C】ピン周りでの屈曲の際のよじれによる、図20Aの移植片の断面積の変化を示す、図20Aの断面図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年8月30日出願の国際特許出願第PCT/US2005/031186号の一部継続出願であり、米国特許法第119条(e)に基づき、2005年6月17日出願の米国仮特許出願第60/692,172号の優先権を主張するものであり、それぞれ本明細書に全体が記載されているように参照として本出願に援用する。
【背景技術】
【0002】
低下した腎機能または腎不全に苦しむ患者はしばしば、血液透析治療を行なわなければならない。透析中、血液は患者から引き抜かれ、血液透析機械を通して循環される。機械は有毒な排泄物を取り除き、浄化した血液を患者に戻す。普通、透析治療は腎臓移植手術が行なわれない限り、患者の人生の期間にわたって1週間に3回行なわれる。血液透析治療を上手く行なうためには、血液は約3〜4時間の間、150から600ml/分以上の流量で血液透析機械を通して循環させなければならない。静脈系からの血流は、所要の流量を満たすのには不適当であると考えられ、大動脈の繰返しの穿刺は実行可能ではない。したがって、血液透析機械に血流アクセスを提供するために、元々の瘻孔がしばしば作り出される。
【0003】
元々の瘻孔が血液透析に利用可能ではない、または使用することができない場合、普通は拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)管でできている血管移植片は、動脈と静脈の間に外科的に定置される(ePTFE AV移植片)。この処置は、前腕内のより伝統的な主要な元々の瘻孔の構成を支持する血管を有していない患者に特に有用である。押出成形されたePTFE AV移植片は、ePTFE移植片に与えられた結節および原線維を特徴とする独自のミクロ構造を含むいくつかの理由により、織られた、接合された、編み込まれた、あるいは形成された織物AV移植片の上で好ましく、それによって血液が流れることができる流体密導管を同時に提供しながら組織の内部成長を簡単にし、必要な強度特徴を維持しながら比較的薄い壁面を備えた移植片を提供することができることを容易にする。
【0004】
拡張ポリテトラフルオロエチレンAV移植片は、少なくとも部分的に(ポリウレタンなど)他の材料を凌ぐePTFE材料の血液適合性の利点により、AVブリッジ瘻孔などの血液透析治療に幅広く使用される。しかし、ePTFE AV移植片を使用する際の1つの潜在的な欠点は、約14日間の着床後まで、血液透析のために血液を抜き取るために安全に使用することができないということである。これは、穿刺の際に自己封止することができない、ePTFEの非エラストマー性によるものであると考えられる。したがって、しばらくの間、他の透析手段を利用しなければならない(例えば、血液透析カテーテルなど)。14日間の後、普通は封止剤層として働くようにePTFE表面内への十分な組織内部成長があり、したがって、移植片は透析針の除去によって作り出された穿刺外傷を封止することができる。しかし、このような封止は圧力および止血の組み合わせが必要であり、このような処置中に存在する多くの変数(透析技術者/看護師の技術レベル、手術条件など)による不均一性に役に立たない。したがって、止血およびこれに付随する変数に左右されず、追加の透析方法を利用する必要がないように移植の際にすぐに封止するePTFE血管移植片用の封止機構を有することが好ましい。
【0005】
したがって、エラストマー封止剤の層をePTFE、および複合構造上に定置することなどの様々な封止技術が、ePTFE AV移植片に迅速な自己封止性状を提供するために示されているまたは記載されている。様々なタイプのエラストマー封止剤、ePTFE移植片、自己封止移植片、および複合移植片の例としては、それぞれを本明細書に全体が記載されているように参照として援用する以下の米国特許および出願公開に開示されたものが挙げられる。米国再発行特許第31,618号、同4,604,762号;同4,619,641号;同4,731,073号;同4,739,013号;同4,743,252号;同4,810,749号;同4,816,339号;同4,857,069号;同4,955,899号;同5,024,671号;同5,061,276号;同5,116,360号;同5,133,742号;同5,152,782号;同5,192,310号;同5,229,431号;同5,354,329号;同5,453,235号;同5,527,353号;同5,556,426号;同5,607,478号;同5,609,624号;同5,620,763号;同5,628,782号;同5,641,373号;同5,665,114号;同5,700,287号;同5,716,395号;同5,716,660号;同5,800,510号;同5,800,512号;同5,824,050号;同5,840,240号;同5,843,173号;同5,851,229号;同5,851,230号;同5,866,217号;同5,897,587号;同5,904,967号;同5,910,168号;同5,931,865号;同5,976,192号;同6,001,125号;同6,036,724号;同6,039,755号;同6,042,666号;同6,056,970号;同6,080,198号;同6,099,557号;同6,203,735号;同6,261,257号;同6,267,834号;同6,287,337号;同6,319,279号;同6,368,347号;同6,416,537号;同6,428,571号;同6,534,084号;同6,547,820号;同6,589,468号;同6,712,919号;同6,716,239号;同6,719,783号;同6,790,226号;同6,814,753号;同6,827,737号;同6,863,686号;同6,926,735号;および米国特許出願公開第2003/0004559号;同2003/0027775号;同2003/0100859号;同2003/0139806号;同2004/0033364号;同2004/0049264号;同2004/0054406号;同2004/0122507号;同2004/0182511号;同2004/0193242号;および同2004/0215337号。
【0006】
血液透析のためにePTFE AV移植片にアクセスする前に、皮膚の表面に優しく触ることによって移植片を通して脈を感じることによって、移植片を通した血流検査が普通行なわれる。移植片を通して脈を感じる能力は普通、「触知可能性」として定義される。最も商業的なePTFE血管移植片は優れた触知可能性を提供するが、エラストマー封止剤の層をePTFE基体の表面上に定置すると、移植片の触知可能性は層が厚すぎる場合に損なわれる場合がある。血液透析のためにePTFE AV移植片を使用する際の別の潜在的な欠点は、移植した場合に、移植片がループ部位によじれを形成する傾向があるということである。普通のループ部位の例が、図1A(上腕動脈から尺側皮静脈までの前腕ループAV移植片2)、および1B(大腿動脈から大腿静脈までの大腿部ループAV移植片4)に示されている。ループ部位での移植片のよじれは血流を塞ぐ可能性があり、この場合、迅速な医療的介入が必要である。明らかに、このような介入は不都合な結果の可能性が大きくなるにつれて、強く疎んじられる。運の悪いことに、エラストマー封止剤で被覆された、あるいは封止の問題に対処するように形成されたePTFE移植片は、おそらくループ部位での移植片の剛性により簡単によじれを形成する可能性があることが発見された。
【0007】
ePTFE材料を利用する際の他の1つの潜在的な欠点は、元々の血管と比べて径方向に不適合であり、元々の血管をそこを通る血流の脈動と共に膨張および収縮させる血液の波動伝播が、ePTFE移植片を通して前進するときに消えるということである。このように脈動が消えることは、宿主血管に対するコンプライアンス不一致などの、様々な合併症につながる可能性がある。運の悪いことに今まで、元々の血管のコンプライアンスを模倣する径方向に適合するePTFE移植片が上手く開発されていなかったと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記欠点の一部または全てを克服する自己封止ePTFE移植片の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、有利な性状を提供する血管移植片、より詳細にはePTFE移植片およびePTFE AV移植片が、本明細書に記載されている。本発明の一態様では、自己封止血管移植片は、第1の表面および第1の表面から間隔を置いて配置された第2の表面を有すると共に、高い多孔性の移植片、薄い壁面の移植片およびその組み合わせからなる群から選択されたほぼ管状のePTFE基体と、基体の第1および第2の表面の一方の上に配置された封止剤層とを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止移植片は、高い多孔性の移植片、薄い壁面の移植片またはその組み合わせのいずれかである管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部の上に配置された封止剤層とを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、AV瘻孔などの移植用移植片は、管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部の上に配置され、その長さに沿って間隔を置いて配置された複数の溝付部分を有する封止剤層とを含んでいる。
【0010】
本発明の別の態様では、血管移植片は、基体および基層を囲む外側ポリマー封止剤層と、基体と外側ポリマー層の間に分散された複数の発泡体層とを含んでいる。本発明の代替実施形態によれば、血管移植片は第1の厚さを有し基体を囲むポリマーの内側封止剤層と、内側封止剤層を囲み第1の厚さの1.5倍の第2の厚さを有するポリウレタンの発泡体層とを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、血管移植片は、外側壁面を含む基体と、基体の長さにわたって配置された、ポリマー封止剤を含む、封止基層と、基層の長さにわたって配置されたポリマー発泡体材料からなる第1の発泡体層と、第1の発泡体層内に少なくとも部分的に埋め込まれたビードと、第1の発泡体層およびビードの長さにわたって配置されたポリマー発泡体材料からなる第2の発泡体層と、ポリマーからなる外側層とを含んでいる。
【0011】
本発明の代替態様では、径方向に適合した移植片を形成する方法は、ePTFE基体を提供するステップと、基体を径方向に拡張させるステップと、エラストマー材料層を径方向に拡張させた基体上に配置して被覆した基体を提供するステップと、被覆した基体を加熱するステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、血管移植片を形成する方法は、ePTFE基体を提供するステップと、第1のポリウレタン層を基体の長さにわたって塗布するステップと、基体を長手方向に圧縮するステップと、第2のポリウレタン層を第1のポリウレタン層にわたって塗布するステップと、ePTFEテープの層でポリウレタン被覆基体の周りを包むステップと、ePTFEテープをある量の溶液がePTFEテープに塗布されるように溶液を最初に通過するステップとを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、ePTFE基体の第1の端部上にカフのネック部を位置決めするステップと、基体をその第2の端部からカフのネック部まで封止材料に浸漬させるステップと、基体およびカフのネック部を封止材料に浸漬させるステップとを含んでいる。本発明のさらに別の態様では、よじれ耐性自己封止血管移植片を作る方法は、ほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、封止剤層を基体の外側表面の少なくとも一部に配置するステップと、封止剤層内に溝付部を作り出すステップとを含んでいる。
【0012】
本発明のさらなる態様では、自己封止血管移植片は、第1の表面および第1の表面から間隔を置いて配置された第2の表面を有するほぼ管状のePTFE基体と、第1および第2の表面の一方の上に配置され、封止層を通した穿刺部材の挿入の際に塑性変形に対する耐性を有する高分子材料からなる封止剤層とを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管移植片は、ほぼ管状のePTFE基体と、基体の少なくとも一部に配置された封止剤層と、基体および封止剤の一方の表面周りに配置されたビードとを含んでいる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、よじれ耐性自己封止血管移植片を作る方法は、ほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、基体の外側表面の少なくとも一部に封止剤層を配置するステップと、封止剤層の少なくとも一部にビードを位置決めするステップと、カフ移植片を血管移植片に結合させるステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、長手軸に沿って延びる第1の端部および第2の端部を有するほぼ管状のePTFE基体周りにほぼ螺旋状に配置されたビードを取り付けるステップと、第1および第2の端部の一方にフレア状の血管カフを結合させるステップと、結合させた血管カフおよびほぼ管状のePTFE基体を結合させるステップとを含んでいる。本発明の別の態様では、自己封止血管移植片を作る方法は、ePTFE基体の外側表面の長さにわたってエラストマー封止剤層を提供するステップと、封止剤層の少なくとも一部にわたって発泡体層を配置するステップであって、発泡体層の厚さは基体の壁面の厚さより実質的に大きいステップとを含んでいる。本発明の別の代替形態によれば、自己封止血管移植片を作る方法は、ePTFE基体の表面上にポリウレタン材料の少なくとも1層を分散させるステップと、ePTFE部材に溶剤を加えることによってポリウレタン材料にePTFE部材を結合させるステップとを含んでいる。
【0014】
一実施形態では、自己封止血管移植片は、近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体と、自己封止領域を含む近接端部、中心部、および遠位端部の少なくとも1つと、中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に連続している第1のビードとを含んでいる。別の実施形態では、血管移植片は、長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、ePTFE基体周りに配置されたポリウレタンマトリックス層と、ポリウレタンマトリックス内に配置された第1のビードとを含んでいる。
【0015】
さらに別の実施形態では、自己封止血管カフ移植片は、ほぼ管状のePTFE基体と、その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びており、封止剤層および発泡体層の少なくとも一方を含む自己封止領域と、自己封止領域の少なくとも一部に位置決めされた外側ePTFE部材と、自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に位置決めされた第1のビードであって、外側ePTFE部材が第1のビードの少なくとも一部の上に延びている第1のビードと、自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に位置決めされた第2のビードと、第1および第2のビードの少なくとも一部に位置決めされた近接端を有するフレア状の血管カフとを含んでいる。
【0016】
さらに別の実施形態では、血管移植片は、長手軸周りに第1の断面積を有するePTFE基体の遠位部を通して延びている長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、ePTFE基体が基体の遠位部を約20ミリ以下の直径を有するほぼ円形のピンに接触させるように湾曲しているので、ePTFEは第2の断面積が円形のピンの外側表面から約20ミリに配置されている場合に、第1の断面積の少なくとも約50%のePTFE基体の第2の断面積を含んでいるように、ePTFE基体の周りに配置されたエラストマー部材とを含んでいる。
【0017】
一実施形態では、よじれ耐性血管移植片を作る方法は、近接端部、遠位端部および近接端部と遠位端部の間に中心部を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に第1のビードを結合させるステップとを含んでいる。
【0018】
別の実施形態では、自己封止血管カフ移植片を作る方法は、その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びている自己封止領域を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に第1のビードを位置決めするステップと、自己封止領域および第1のビードの少なくとも一部の上に外側のePTFE部材を配置するステップと、自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に第2のビードを位置決めするステップと、第1および第2のビードの少なくとも一部の上で基体にフレア状の管状カフを取り付けるステップとを含んでいる。
【0019】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特性および利点は、最初に簡単に説明した添付の図面と合わせて、本発明の以下のより詳細な説明を参照すれば、当業者にはより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の詳細な説明は、異なる図面において同様の要素は同一の番号が付してある図面を参照して読むべきである。必ずしも等尺度ではない図面は、選択した実施形態を示しており、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。詳細な説明は、限定ではなく例として、本発明の原則を示している。この説明は、明らかに当業者が本発明を行ない使用することを可能にし、本発明を行なう最良の形態であると現時点で考えられるものを含む、発明のいくつかの実施形態、適応形態、変更形態、代替形態および使用を記載している。
【0021】
本明細書に含まれる例は、ePTFE基体を利用している。当業界で知られているように、ePTFE基体は、例えば、管(シームレス)の押出加工、管(1つまたは複数のシーム)内に連続して形成されたシートの押出加工、マンドレル(例えば、多数のシーム、または好ましくは単一の螺旋状シーム)周りのePTFEテープの螺旋状包装などを含む、いくつかの方法で製造することができる。本発明のePTFE基体を形成するのに使用された好ましい方法は管を押出成形することであるが、他の成形方法が可能であり、本発明の範囲内にあることを理解すべきである。さらに、ePTFEを基体層の選択材料として述べているが、当業者は、例えばポリエステル、ポリウレタン、およびペルフルオロエラストマーなどのフルオロエラストマーを含む、他の材料も基体としての使用に適切であることが分かるだろう。
【0022】
さらに、本明細書に記載した移植片の自己封止性状はそこからの針の取り外しによる失血を参照して作られているが、自己封止性状は移植中に移植片内に作り出された縫合糸孔による失血にも及ぶことを理解すべきである。さらに、封止剤層に関する本明細書の特定のポリウレタン材料の説明は単に例示的なものであり、本発明を限定するために利用されるべきものではないことを理解すべきである。より詳細には、多くの異なるタイプのポリウレタン材料が、非ポリウレタンエラストマー封止材料と同様に、本発明の範囲内にある。本明細書で使用されるように、エラストマー、エラストマー封止剤などの用語は、ほとんどの例で、それに封止性状を与えることができるが、穿刺の際に自己封止する必要がない基体上に分散または配置されたほぼ可撓性のある材料の1つまたは複数の層のことを言及するために交換可能に使用されている。
【0023】
加えて、生体活性剤を(1つまたは複数の)材料に組み込んで、本明細書に記載する血管移植片を形成することができる。生体活性剤は、移植片の内外腔面の少なくとも一方内に合成非金属材料(例えば、Dacron(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シクロヘキサン、およびその組み合わせ)と組み合わせることができ、移植片の合成非金属材料全体を通して分散させることができ、その上に被覆することができ、その上に噴霧被覆することができ、移植片をその中に浸漬させることができ、その上に蒸着させることができ、その上にスパッタリング蒸着させることができ、または移植片上に放射線不透過性表面を形成するのに使用することができる。使用される材料または材料の組み合わせ(例えば、Dacron(登録商標)、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、シクロヘキサン、およびその組み合わせ)は、表面改質添加物または他の材料を含むことができる。
【0024】
基体、生体活性剤、封止剤層、発泡体層、その他の層および他の設計パラメータの構造または構成の変更は、本明細書に記載した移植片で利用されるものであることを強調すべきである。例えば、移植片内の生体活性剤の重量パーセントは、約0.1パーセントから約90パーセントまで、最も好ましくは約10から約60パーセントまで変わることができ、生体活性剤の平均粒径は約20ナノメートルから約100ミクロンまで、最も好ましくは約0.1ミクロンから約5ミクロンまでにわたることができ、生体活性剤粒子は特定の構造では多孔質で、他の構造では非多孔質であってもよく、生体活性剤は移植片の内外腔面の100パーセントを構成することができ、移植片本体全体を通して均質に分配することができ、生体活性剤はまた約10ミクロンから約1000ミクロンの接着フィルムを構成することもできる。
【0025】
生体活性剤は、これに限らないが、炭素粒子、銀粒子、黒鉛粒子、抗生物質(アメトプリンリファンピンまたはゲンタマイシン)、マクロライド抗生物質、ステロイド剤または抗炎症剤(例えば、エストラジオール)、抗腫瘍薬、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗体、遺伝子配列剤、成長因子阻害剤、血管形成剤、抗血管形成剤、プロテイナーゼ阻害剤、抗増殖化合物または細胞周期調整剤(ラパマイシン、シロリムス、またはパクリタキセルなど)などの化合物を含むことができる。他の生体活性剤はまた、これに限らないが、例えば、ビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、パクリタキセル、エピディポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびミトマイシン、酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力を有していない細胞を派生するL−アスパラギナーゼ)などの天然生成物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)IIb/IIIa阻害剤およびビトロネクチン受容体拮抗薬などの抗血小板薬、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホン酸ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンデカルバアジニン(decarbazinine)(DTIC)、葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗増殖/抗有糸分裂性代謝拮抗物質、白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン(すなわち、エストロゲン)、抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびトロンビンの他の阻害剤)、線維素溶解薬(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブキシマブ、抗遊走薬、抗分泌薬(ブレベルジン)、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン、パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン、インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、およびエトドラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム)などの抗炎症剤、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管形成剤、すなわち血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその組み合わせ、細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、および成長因子受容体シグナル変換キナーゼ阻害剤、レテノイド、サイクリン/CDK阻害剤、HMGコエンザイムレダクターゼ阻害剤(スタチン)、およびプロテアーゼ阻害剤などの物質を含むことができる。
【0026】
これらの物質は、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはこれに限らないが、第二リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸テトラカルシウム、およびリン酸カルシウムまたはカルボン酸カルシウム系の他の化合物を含む他の生体適合性カルシウム塩などの他の物質を結合させることができる。記載したカルシウム塩のグループの部材のいずれかを、塩が移植片内で実質的に骨誘導性(すなわち、骨形成性)でない限り、利用することができる。また、ナノサイズの炭素管、炭酸カルシウム、および遺伝子またはウィルス材料などのセラミック材料も、本明細書に記載する移植片材料の少なくとも1つと組み合わせることができる。
【0027】
HAまたは他の生体適合性カルシウム塩の利用に関して、当業者に知られている様々な方法または技術を使用して、薬剤または生体活性化合物を中に組み込むことができる。例えば、HA移植片合成物を作った後に薬剤を加えることができる。有機または水溶液ベースの技術を使用して、HA粒子内に薬剤または他の生体活性剤を拡散させることができる。別の方法では、HA粒子は最初に、薬剤または他の生体活性剤を装填し、その後、移植片内に組み込むことができる。薬剤または他の生体活性剤は、60分以内に迅速に放出することができる、または数日から2年間まで制御した方法で放出することができる。HA粒子上の追加の高分子コーティングまたはセラミックコーティングを使用して、薬剤または他の生体活性剤の放出を制御することができる。
【0028】
加えて、ePTFEがHAと合わせて使用される場合、合成HA−ePTFE移植片は、異なる多孔性および結節/原線維構造を有することができる。ePTFEの多孔性は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲にあってもよく、好ましい多孔性または結節間距離は約10ミクロンから約40ミクロンの範囲である。拡張比、潤滑剤レベル、PTFE樹脂粒径、および他のePTFE処理パラメータを制御することによって、異なる多孔性の領域をもつHA結合移植片を与えるために様々な多孔性を有する移植片を作ることができる。HA結合移植片はまた、多数の層のePTFE移植片管を使用して作ることもできる。HAベース移植片はまた、開通性を良くする1つまたは複数のカフ、よじれ耐性を良くするビード、および移植または他の外科的処置中に助けとなるような可視配向線などの、本明細書に記載された追加の特性を有することができる。HAまたは他の生体適合性カルシウム塩を組み込んだ移植片のこれらおよび他の態様は、本明細書に全体が記載されているように、参照として援用する、「無機生体適合カルシウム塩を有する移植片およびステント移植片」という名称の2005年6月8日出願の米国仮特許出願第60/689,034号に記載されている。
【0029】
封止剤層
自己封止移植片の好ましい一実施形態では、利用される封止剤層材料は、低い程度のクリープまたは応力緩和を示すと考えられているものである。材料のクリープまたは応力緩和は、好ましい実施形態の内容では、長い時間の材料を通した針の挿入により起こる可能性がある、その塑性変形により起こる。封止剤層の適切な材料の例としては、これに限らないが、芳香族ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、ポリジメチルシクロヘキサンエラストマー、他のシリコンエラストマーなどが挙げられる。より詳細には、低い程度のクリープまたは応力緩和を示す好ましいポリウレタンとしては、芳香族ポリウレタンが挙げられる。さらに、封止剤層の封止反応は、封止剤層により示されるクリープまたは応力緩和の低下につながる加熱によって、および/または本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に記載されたように、ポリウレタンテレフタラート(ポリエステル)を含む粒子を封止材料に加えることによって、ポリマーの操作により良くすることができる。また、封止剤の濃さが移植片の封止反応に影響を与え、移植片特徴は、移植片の封止反応を良くすることに関して上に述べた処理/方法(すなわち、選択した封止剤のタイプ、加熱処理、粒子添加など)に加えて、封止剤の濃さを変えることにより操作することができる。
【0030】
自己封止ePTFE移植片
本明細書に記載するような自己封止移植片としては、共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Kowligi他の米国特許第5,152,782号に記載されているように、封止剤層を上に備えたePTFE基体が挙げられる。より詳細には、高い多孔性の移植片または薄い壁面の移植片のいずれかとして当業者に分類されたePTFE基体は、封止剤層で被覆され、封止剤層を備えた通常の壁面の移植片、および封止剤層のない上記タイプの移植片と比較される。本明細書で使用される「高い多孔性の移植片」という用語は、約30から約100ミクロンまでの範囲内の結節間距離(IND)を有する移植片のことを言う。本明細書で使用される「薄い壁面の移植片」という用語は、約500ミクロン未満の壁面厚さ、より好ましくは約200から約500ミクロンまでの範囲の厚さを有する移植片のことを言う。薄い壁面の移植片または高い多孔性の移植片のいずれか(または、その組み合わせ)であるePTFE基体を提供することによって、ePTFE基体の壁面内を適切に貫通するように上に配置された封止剤層(例えば、ポリウレタンなどのエラストマー封止剤)は、本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に記載されたように、針を取り除く際のクロージャ反応を支配する傾向がある。
【0031】
ePTFE AV移植片
封止剤で被覆したePTFE移植片は、有利な自己封止性状を示すことに加えて、移植片のよじれ耐性をかなり低下させるという付随した欠点を有する可能性がある。したがって、封止層だけで被覆されたePTFE基体の実施形態は、ePTFE AV移植片が移植片中に屈曲が必要ないように移植された場合に好ましい可能性がある。ePTFE AV移植片が移植のために屈曲を必要とする場合(図1AおよびBの例に示すように)、移植片によじれ耐性を与えるために、追加の処理ステップが必要である可能性がある。
【0032】
移植片に長手方向のコンプライアンスも加える、被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第1の例は、共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Della Corna他の米国特許第4,995,899号に示され記載されたように、封止剤でePTFE移植片を被覆するステップの前にePTFE移植片を長手方向に圧縮するステップである。ePTFE移植片の圧縮は、例えば、ePTFE移植片を円筒形マンドレルの上に配置し、その長手軸に沿って圧縮力を加えることによって達成することができる。被覆前のePTFE移植片の圧縮は、屈曲部の外径上で移植片を伸ばすことを可能にすることによってよじれ耐性を大きくし、屈曲部の内径の上で圧縮するように働く。ePTFE AV移植片では、封止剤層での被覆前のePTFE移植片の長手方向圧縮は普通、別の処理ステップを利用するかどうかに関わらず、利用される。
【0033】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第2の例は、移植片の外側表面周りでビードを包むステップである。ビードが上に配置された被覆したePTFE移植片の仕様(例えば、移植片の材料性状、移植片の寸法、封止剤の材料性状、封止剤層の寸法、移植片の意図する使用、移植片の意図する定置位置など)によって、いくつかのビードパラメータが可能である。例えば、ビードの厚さ、ビード材料のタイプ、ビードの硬度、ビードの巻線間の間隙、ビードの断面形状、およびビードの巻線角度は全て、ePTFE AV移植片の意図する性能、より詳細にはそのよじれ耐性を達成するように変えることができる。さらに、放射線不透過性顔料をビード内に組み込んで、放射線コントラストに放射線不透過性を与えることができる。ビード内に組み込まれる放射線不透過性材料の例としては、これに限らないが、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、タンタルなどが挙げられる。一実施形態では、ビードは放射線不透過性を示す金属材料を含んでいる。ビードはePTFEの周りで包まれた細長い部材として示されているが、ビードは別個の部材(例えば、複数のリング)としてePTFEの周りで包まれた、または直接あるいは中間部材により互いに連結された個別の細長い部材を含んでいることに留意すべきである。
【0034】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第3の例は、移植片表面上の封止材料の選択蒸着のステップである。このような選択蒸着は、部分レーザ切除によって、あるいは被覆したePTFE移植片の長さの少なくとも一部の上に離れた間隔で封止材料に溝を付けることによって達成することができる。溝付けは、ePTFE基体に封止剤層を通して精密溝を切り込むことが可能な、CO2レーザまたは他の器具を使用して達成することができる。溝は、あらゆる角度または深さで封止剤層内に切り込むことができ、あらゆる長さで間隔を置いて配置することができる。さらに、溝の角度および/または溝間の長さは、選択した長さに沿って変えることができる。処理ステップとしての被覆したePTFE移植片への溝付けは、それだけで、または前に説明した処理ステップ、および/または被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするような本明細書では特に記載していないあらゆる処理ステップと組み合わせて使用することができる。加えて、被覆したePTFE移植片の選択した長さのみに溝を付けることができる(例えば、移植片が移植の際に屈曲される場合、被覆したePTFE移植片の中間部)。
【0035】
被覆したePTFE移植片内のよじれ耐性を大きくするための処理ステップの第4の例は、被覆したePTFE移植片の上に発泡体層を配置するステップである。発泡体は、ポリマー材料を含むことができ、被覆したePTFE移植片の外側表面上に配置することができる(それだけで、または組み合わせて、上記処理ステップのいずれかを行なうことができる)。ポリマー発泡体を被覆したePTFE移植片の外側表面上に配置することができる方法の例が、本明細書に全体が記載されているように参照として援用する、「よじれ耐性を有する自己封止PTFE移植片」という名称の2005年8月30日出願のPCT/US05/31186に詳細に与えられている。
【0036】
被覆したePTFE移植片はさらに、ePTFEテープなどの多孔質材料の外側層で包むことによって、ePTFE AV移植片として使用するために準備することができる。外側ラップの追加は、移植片を身体組織内に固定するようにePTFE AV移植片内への組織内部成長を良くし、また(1つまたは複数の)ポリウレタン層への組織液露出を少なくすると考えられている。外側ラップの厚さおよび密度は、よじれ耐性および処理が悪い影響を受けないように選択することができる。ePTFEテープをポリウレタンなどの下にある非PTFE材料に接着することに関して、THFなどの溶剤の同時の使用は、下にある材料にePTFEテープを結合させるように働くことが発見された。THFまたは他の溶剤は、テープを移植片に塗布した(すなわち、螺旋状に包んだ)後に噴霧することによって、または包装の前に溶剤中にテープを浸すことによってePTFEテープに塗布することができる。
【0037】
好ましい一実施形態では、ePTFEテープは、溶剤分配装置の上またはこれを通して最初に通過した後に、ポリウレタンなどの封止剤層の上で包まれる。例えば、ePTFEテープがスプールまたはプーリシステムから供給される時にマンドレル上の移植片を回転させることができ、ePTFEテープはマンドレルとプーリシステムの間に位置決めされた分配装置の上を通過する。分配装置は、様々な構成をとることができるが、一実施形態では、分配される溶剤を入れたリザーバ、圧力制御装置、および調整装置に連結された1つまたは複数の開口部、スリット、または他の開口を中に備えた加圧管である。処置の開始の際に、溶剤で飽和されたスポンジまたは同様に機能する物体が、分配管の(1つまたは複数の)開口部上に位置決めされている。ePTFEテープがプーリシステム上のスプールからマンドレル上の移植片まで供給されると、分配管スポンジ上を通過し、それによって均一な量の溶剤がePTFEテープに塗布される。
【0038】
図2〜9は、上記処理ステップの1つまたは複数を組み込んだ、被覆されたePTFE移植片の図である。図2は、中間部16までつながっているが、中間部16を含んでいない、その長さの一部にわたってポリウレタンコーティング14を有するePTFE基体12を示しており、螺旋状に包まれたPTFEビード18がその上に配置されている。図3は、図2のePTFE移植片上のポリマー発泡体層22を示しており、図4はePTFE AV移植片26を作り出すように、図3の発泡体層22の周りに螺旋状に巻かれたePTFEテープ層24の外側ラップを示している。図5は、極めて小さな半径で優れたよじれ耐性を示す、ループ状構造の(すなわち、中間部16に沿って屈曲している)図4の移植片26を示している。図6は、その全体の長さにわたってポリウレタンコーティングを有するePTFE基体を含む移植片28を示しており、コーティングは移植片の長手軸とほぼ垂直な角度で中に切り込まれた溝32を有する。移植片28はまた、その長さに沿って長手方向に延びている1対の平行な配向線を有する。図7は、溝32によって与えられるよじれ耐性を示すように、ループ状構造の図6の移植片28を示している。図8は、移植片28と同様であるが、中間部42にいかなる封止層を備えておらず、代わりに螺旋状に包まれたPTFEビード18を備えている(図2と同様)移植片38を示している。図9は、また極めて小さな半径で優れたよじれ耐性を示す、ループ状構造の発泡体層44を備えた移植片38を示している。
【0039】
図10は、本明細書に記載するようなePTFE AV移植片用の異なる材料層を示している。図10の層の配置は、異なるタイプの層を例示するものであり、必ずしも互いに対する層の順序を反映しているものではないことを理解すべきである。上に述べたような薄い壁面の移植片または高い多孔性の移植片を含むことができるePTFE管状基体10は、ポリウレタンベースコート20によって囲まれている。一実施形態ではePTFE基体10の全長にわたって配置されたこのベースコート20は、ポリウレタンなどの材料で作ることができる。ベースコートの一部は、移植片の壁面を貫通する。封止剤層30は、ベースコート20の上に配置され、また移植片壁面厚さ、封止剤のタイプなどの様々な要因に左右される厚さを有する、ポリウレタン(または、上に述べるような他のタイプの材料)で作ることもできる。しかし普通は、封止剤層およびベースコートの厚さは、約10〜400ミクロンの範囲、ベースコート20では好ましくは約20ミクロンから約40ミクロン、封止剤層およびベースコートでは合計約100ミクロンの範囲にある。封止剤層30は移植片の全長にわたって配置することができるが、一実施形態では、移植片の端部または移植片の中間部のいずれの上にも位置決めされていない。上に述べるように、封止剤層30はよじれ耐性を助けるように、移植片の選択した長さに沿って溝を付けることができる。発泡体層40が、封止剤層30上に位置決めされ、ビード層50、別の発泡体層60および外側ラップ層70が続く。
【0040】
図11〜14は、ePTFE AV移植片の他の好ましい実施形態の例を示しており、それぞれ図10に示す層の一部または全てを組み込んでいる。図11は、ePTFE AV移植片100の断面図であり、ePTFE基体10はベース層20によってその長さに沿って被覆されている。封止剤層30が、軸方向に間隔を置いた位置でベース層20の上にあり、発泡体層40は発泡体層40が封止剤層30を実質的に有していない領域内でベース層20と接触するように封止剤層30上に配置されている。発泡体層40の上では、ビードが移植片100の中間部の周りで螺旋状になっておりビード層50を作り出し、別の発泡体層60が塗布される。発泡体層60の周りでは、ラップ層70は、螺旋状に包むことができる、(上に述べるような)ePTFEテープなどの材料を包むことによって位置決めされている。図12は、ePTFE AV移植片100と同様のePTFE AV移植片200の断面図であり、違いは、ビード層50は、ビードが間隙が封止剤層30内に存在する位置に位置決めされる(すなわち、ビードが封止剤層30を含む移植片200の長さに重ならない)ように、移植片200の中間部の間隔を置いた長さにわたって螺旋状になっているビードを備えていることである。この実施形態の1つの利点は、吻合までの移植片のよじれ耐性を維持しながら、吻合中に移植片端部の縫合を可能するために、外科医が一端部からあらゆる所望の長さまで移植片のビードをほぐすことが可能であるということである。
【0041】
図13は、ePTFE基体10上にベース層20を有するePTFE AV移植片300の断面図である。この実施形態では、ベース層20上に位置決めされた封止剤層30は、ベース層20まで切断された「V」字形の溝付部32を備えた移植片300の中間部に沿って続いている。図示するように、溝付部32は3つの小さな間隔で離され、1つの長い間隔が続く。しかし、このような間隔は、移植片300の所望の可撓性およびよじれ耐性を得るために、いくつかの異なる方法でパターン化することができる。発泡体層40は、封止剤層30の上に配置され、ラップ層70が続く。図14は、図13と同様の封止剤層30を有するePTFE AV移植片の断面図であるが、移植片300の中間部の封止剤30の長い間隔の代わりに、ビード層50が移植片400の中間部に位置決めされている。
【0042】
上記各移植片はまた、移植中に適切な位置合わせ(ねじれのないこと)を保証するように、その外側表面に沿って1つまたは複数の長手配向線(例えば、1つまたは複数の青いストライプ)を組み込むことができることを理解すべきである。1つまたは複数の配向線はまた、(例えば、非均質特徴を備えた移植片を避けるために)回転マンドレルなどの上に取り付けられた場合に移植片がねじれないことを保証するのを製造中に助けることができる。例えば、本明細書で述べる自己封止血管移植片用のePTFE基体は、1つまたは複数の色付き(例えば、黒色、青色など)線で作ることができ、それによって(例えば、自己封止血管移植片を構築する際の別の処理ステップのために)基体が上に配置されるマンドレル上の線の位置合わせにより、移植片がねじれていないという視覚的確認が製造者に与えられる。1つまたは複数の配向線は、標準的な共押し出し過程を使用して基体上に組み込むことができる。1つまたは複数の好ましい配向線は、黒色、青色または緑色の生体適合性顔料または染料でできている。最も好ましい色は青である。自己封止血管移植片の外側表面上に組み込まれた1つまたは複数の配向線に関して、印刷過程を行なうことができる。移植片の基体または外側表面上の1つまたは複数の線は、移植片の中心を示す、または移植片の異なる領域(カニューレ挿入領域など)を示すように、実線、点線、またはその組み合わせであってもよい。また、1つまたは複数の線の代わりに、英数字識別子、または(1つまたは複数の)線および(1つまたは複数の)英数字識別子の組み合わせを、ePTFE表面上に印刷あるいは配置することができることに留意すべきである。
【0043】
自己封止血管移植片の外側表面がePTFEを含んでいる場合、ePTFE表面上への1つまたは複数の線の接着を保証するために、特殊インク配合が必要である。一実施形態では、ePTFE表面に対する配向線用のインク配合は、ePTFE表面に十分付着する適切な高分子結合剤、生体適合性染料または顔料、および高分子結合剤を溶解する溶剤を含んでいる。加えて、インク配合は、(インク陰影を調節するために)二酸化チタンなどの無機白色固体物、および粘度調整剤を含むことができる。配向線を作るために多くの顔料または染料を使用することができるが、人体移植の長い歴史を有する顔料または染料が最も好ましい。インク中の好ましい色化合物としては、これに限らないが、(フタロシアニナト(2−))銅、D&C青色9号、D&C緑色5号、クロロフィリン銅錯体、油溶性物、酸化クロムコバルトアルミニウム、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&C青色5号、FD&C青色2号、D&C緑色6号、二酸化チタン、炭素、酸化鉄などが挙げられる。(フタロシアニナト(2−))銅は、最も好ましい青色化合物である。インクの色(例えば、黒色、青色など)は、約6500°Kの温度を有する光の下で見ることによって判断することができる。
【0044】
提供された説明により作られたePTFE AV移植片の1つの好ましい例を次に説明する。炭素線を有する内側表面を備えたePTFE基体は、(炭素でできている)配向線で押し出し加工され、最終結節間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンまでであり、壁面厚さが約200ミクロンから約300ミクロンまで、好ましくは約260ミクロンであるように長手方向に膨張される。ePTFE基体は、(例えば、約6.3mmの直径を有する)マンドレル上に位置決めされており、マンドレルは2パスのポリカーボネートポリウレタンが塗布されるときに回転される。ポリウレタンは、約1mm未満のノズル開口直径を有するBinks(登録商標) Model 2001スプレーガンを使用して塗布され、ポリウレタン、および(非酸化剤タイプの抑制剤を備えた)THFなどの溶剤は、スプレーガンの上部から加圧され、ポリウレタンがスプレーガンのノズルから噴霧されたときに外気(しかし、一実施形態では、空気の代わりに窒素が使用される)と混合する。スプレーガンは、約2インチから約15インチ、好ましくは3インチ未満だけePTFE基体から離れており、ポリウレタンは基体上に噴霧される。第1のパスでは、マンドレルは約150rpmから約260rpmまで回転され、第2のパスでは、マンドレルは約350rpmから約675rpmまで、好ましくは約435rpmで回転される。これにより、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する、移植片上の封止剤層またはコーティングが形成される。
【0045】
所望の粘度に到達するまで上に記載するように溶剤中に最初に溶解される(ポリウレタンストランドの長さは粘度によって変わる、より高い粘度がより長いストランドにつながる)、ポリウレタンの第1のパスが、約20ミクロンから約40ミクロンまでの厚さを有するポリウレタンのベースコートが塗布されるまで(外壁内に貫通するある程度のポリウレタンを備えた)基体の外壁に塗布される。いくつかの状況では、ポリカーボネートポリウレタンなどのポリウレタンは、溶剤に溶解するために、最初に加熱すべきであることに留意すべきである。得られる構造(基体およびポリウレタンの第1のパス)はその後、長手方向に(例えば、手によって)圧縮され、第2のパスが加えられ、ポリウレタン封止剤層の合計厚さが約100ミクロンになるまで(厚さを確認するのにレーザミクロメータが使用される)、ポリウレタンの追加のコートが同じ方法で(しかし、マンドレルのより速い回転で)基体およびポリウレタンのベースコート上に塗布される。
【0046】
ポリウレタン発泡体層はその後、約700ミクロンの厚さを有するポリウレタン封止剤層の上に塗布され、それによって発泡体層の塗布の後の移植片構造の合計壁面厚さは、約1mmから約1.1mmである。好ましい一実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さと同じ厚さを有し、より好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍の厚さを有し、最も好ましい実施形態では、発泡体層はePTFE基体の厚さの2倍より大きい厚さを有する。発泡体層は、ポリカーボネートポリウレタンを約12〜20インチの距離、好ましくは約15インチの距離で封止剤層の上に噴霧することによって塗布される。発泡体層の塗布の後に、移植片構造は約1時間から約24時間の間、約50℃から約70℃の空気温度に、好ましくは約15時間の間、約50℃の空気温度に設定された炉内に置かれ、硬化させるために(すなわち、破壊された水素結合を再び確立するために)その後、硫酸バリウムを有するポリウレタンのビード(視覚化のために放射線不透過性を提供する)は、硬化させた移植片構造の上で螺旋状に包まれている。ビードは、円形、楕円形などを含む様々な断面形状を有することができるが、好ましい一実施形態では、ビードは矩形形状を有する。
【0047】
より詳細には、好ましい一実施形態では、ビードは、Polymer Engineering Group,Tempe,AZによって供給される20%硫酸バリウム充填剤(剛性を増すため)を有するCarbothane PC−35(72ショアDの硬度)でできており、長辺が約1mmであり短辺が約500ミクロンである矩形の断面形状を有し、長辺は移植片の外側表面に対して位置決めされている。移植片にビードを塗布する好ましい方法では、溶剤の溶液を通して、約1mmから約2mm離れているビードの隣接する巻線を有する移植片の外側表面周りで巻かれているので、ビードは約500グラムの力の張力の下に置くことによって予め負荷が加えられる。包装は、ビードが発泡体層内に埋め込まれるように張力をかけて行なわれる。次に、別の発泡体層が塗布されて、約1mmから約5mmの全壁面厚さにつながり、最も好ましくは、カニューレ挿入される領域上のビード間隙は約4mmであり、中心曲げビードは約2mmである。この発泡体層上に、縁部がいくらか重なるように螺旋状に包まれることが好ましいePTFEテープが塗布される。ePTFEテープ包装は、基体と同じIND(すなわち、約10ミクロンから約100ミクロン)を有するが、約90ミクロンから約300ミクロンのはるかに薄い壁面を有する。ePTFE移植片の最終厚さは、約1mmから約2mmまで、好ましくは約1.5mmである。
【0048】
ePTFEテープが包まれるときに、テープを発泡体に結合させるのを助けるように溶剤が同時に塗布される(THFまたは他の非プロトン性溶剤がポリウレタンを溶解すると考えられ、それによって包装過程中に少量が塗布される場合、機械的結合がその間に展開される)。張力(例えば、約100グラムの力から約200グラムの力)が包装過程中に加えられ、それによってポリウレタンが結合を助けるようにePTFEミクロ構造内に侵入することになる。この例では、ePTFEテープの重なり領域は互いに結合せず、代わりに、長手方向コンプライアンスを可能にすることができる下にあるポリウレタン発泡体に結合する。しかし、別の実施形態では、テープの重なり領域は互いに付着される。張力を加えてのビードおよび/またはテープの包装は、移植片の封止反応を大きくすると考えられる。任意の配向線はその後、移植片の長さにわたって長手方向に加えられる。この時点では被覆されていないままである移植片の端部は次に、必要に応じて埋め込んだビード層に影響を与えることなく臨床医がビードを取り除くことができるようにこの段階で塗布された、ビードの螺旋状ラップの後のポリウレタン層で被覆される。ビードは、結合を助けるように溶剤が塗布される。
【0049】
そうでないと記されていない限り上記の処理方法および器具が利用される、別の好ましい実施形態を次に説明する。炭素線を有する内側表面を備えたePTFE基体は、(炭素でできている)配向線で押し出し加工され、最終結節間距離(IND)が約10ミクロンから約40ミクロンまでであり、壁面厚さが約100ミクロンから約500ミクロンまで、好ましくは約200ミクロンであるように長手方向に膨張される。ePTFE基体は、マンドレル上に位置決めされており、マンドレルは2パスの溶剤を伴うポリカーボネートポリウレタンが基体の全長に塗布されるときに回転される。第1のパスの後に、基体は長手方向に約20%圧縮され、第2のパスが基体の全長に塗布される間この長さで維持され、それによって基体はポリウレタンの影響によりその元の長さの約80%に留まる。2パスのポリウレタンにより、約10ミクロンから約150ミクロン、好ましくは約100ミクロンの厚さを有する、移植片上の封止剤層が形成される。
【0050】
第1のポリウレタン発泡体層はその後、上に記載するようにポリウレタン封止剤層の上に塗布される。この第1の発泡体層は、基体の中間部にのみ塗布され、それによって基体の各端部は第1の発泡体層がない。基体の各端部の縁部から第1の発泡体層までの距離は、最大約5cmである。第1の発泡体層の塗布の後に、硫酸バリウムを備えたポリウレタンの第1のビードの長さが、第1の発泡体層を含む基体の中間部上で(上に記載するように張力を加えて)螺旋状に包まれている。第1のビードは、約200ミクロンから600ミクロンの高さ、および200ミクロンから1200ミクロンの幅の範囲の寸法を有する楕円形断面形状を有する。蒸発(例えば、大気温度による、または熱による)は、ビードの包装のほぼ前に溶剤を取り除くために行なわれる。次に、第2のビードの長さは、基体の縁部から約5cmから基体の縁部から約6cmまでの、第1の発泡体層の各端部上で(上に記載するように張力を加えて)螺旋状に包まれている。この第2のビードはまた、楕円形の断面形状(楕円の2つの中心が同じである場合円形となる)を有するが、第1のビードより小さい断面積(例えば、約100ミクロンの直径)を有する。第2のビードの塗布の後に、第2の発泡体層が基体の中間部に沿って第1の発泡体層およびビードの上に塗布され、第2の発泡体層は第1の発泡体層を越えて長手方向に延びることなく、第1の発泡体層を実質的に覆う。第1および第2の発泡体層の合計組み合わせ厚さは、約300ミクロンから約1500ミクロン、好ましくは約700ミクロンである。
【0051】
ePTFE部材、好ましくはある長さのePTFEテープはその後、張力を加えて組み合わせた発泡体層の周りで包まれており、組み合わせた発泡体層とテープが接触する前に、テープに溶剤を塗布する分配装置の上をまたはこれを通して通過する。テープの縁部はいくらか重なっていることが好ましい。ePTFEテープは、基体と同じIND(すなわち、約10ミクロンから約40ミクロン)を有するが、約100ミクロンから約300ミクロン、好ましくは約260ミクロンのはるかに薄い壁面を有する。別の長さの第2のビードはその後、基体のほぼ縁部からePTFEテープのほぼ縁部まで(組み合わせた発泡体層上にある)基体の各端部上で、または基体の各端部上で約6cmの距離にわたって螺旋状に包まれている。基体の2つの端部(すなわち、各端部から約6cmの長さ)はその後、溶剤に急速に浸漬される。約6cmの長さをそれぞれ有する2つのePTFEのほぼ管状のスリーブが準備され、第2のビードが全体的に覆われ、スリーブがePTFEテープの縁部の上に部分的に延びるまで、基体の端部の上に「ねじ込まれる」(すなわち、スリーブが基体の中間部に向かう方向に移動するように加えられた力で回転され、第2のビードは「ねじ山」として働く)。スリーブ付端部はその後、溶剤内に急速に浸漬され、移植片は約14時間から約16時間の範囲の時間だけ約50℃の空気温度に設定された炉内に置かれる。
【0052】
図16A〜16EはePTFE AV移植片の実施形態を示しており、図16Aおよび図16Cはそれぞれ、現時点で好ましい中間部および端部設計を示している。図16Bおよび16Dは、ePTFE AV移植片の前の好ましい中間部および端部設計を示している。図16Aおよび16Bを最初に参照すると、中間部はePTFE基体80を備えており、その上に封止層82(本明細書に記載するように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置され、その上に発泡体層84(また、本明細書に記載するように1つまたは複数の層を含むことができる)が配置/形成される。ビード86が発泡体層84内に埋め込まれ(すなわち、ビード86がポリウレタンマトリックス内に配置され)、発泡体層84の表面に付着され、発泡体層84を覆っているのはePTFE部材88である。図16Aの移植片は、少なくとも以下のように図16Bの移植片と異なる。1)ビード厚さは約16%小さくなる。2)封止剤層82の厚さは、約67%だけ小さくなる。3)ビード86は約44%封止剤層82に近くなるように移動される。4)発泡体層の厚さは約26%小さくなる。5)ビードの回転の間の間隙は、約18%大きくなる。これらの変化は、移植片の機能を改善させた小さな輪郭の移植片につながった。
【0053】
図16Cおよび16Dに関して、ePTFE AV移植片の端部設計はまた、移植片の機能および性能を改良するように変えられた。図16Dに示す前の端部設計では、第1の封止剤層92は、ePTFE基体90の上に分配され、ePTFEテープ層94が続き、第2の封止剤層96はePTFEテープ層94の上に配置された。ビード98はその後、第2の封止剤層96の上で包まれ、そこに付着された。図16Cに示す新規の設計では、ビード98より小さい断面積のビード99が、ePTFE基体90の直接上で包まれ、本明細書で記載された方法および過程によってそこに付着される。ePTFEテープラップではなくePTFEスリーブ102はその後、ビード99の上で押されるまたはねじ込まれ、移植片の端部に対するはるかに低いプロファイルにつながる。ePTFE基体90へのePTFEスリーブ102の付着はまた、基体90をビード99で螺旋状に包み、ビード99の上にスリーブ102を配置し、溶剤が外側スリーブ102を通してビード99の上を貫通し、それによってビード99のポリウレタン部分が軟化し、スリーブ102および基体90両方との結合を形成するように、THFなどの適切な溶剤をスリーブ102の外側表面上に噴霧することによって達成することができる。この技術により、基体に溶剤を噴霧する必要なく、またはビード99を溶剤に浸漬する必要なく、基体90からのスリーブ102の剥離の際の実質的な減少が可能になると考えられる。
【0054】
図16Aに示された実施形態では、封止剤またはベース層82は約0.04mmの厚さであり、発泡体層84は約0.6mmの第1の発泡体層を噴霧し、合計発泡体層84が約1.2mmであるように第2の発泡体層を噴霧する前にこの第1の発泡体層を乾燥させることによって形成される。図16Cに示された実施形態では、ビード90は約2mmにわたって間隔を置いた約0.2mmの平均直径を有し、外側スリーブ102が約500ミクロンである場合に基体90と外側スリーブ102の間のインターフェイスに近接して配置されている。
【0055】
図16Eは、ePTFE AV移植片の現時点で好ましい中間部または中心部を示している。特定の状況では、外科医は移植片を通る流体流を防ぐように、移植片の上に締付機構を置くことによって移植片を締め付けたい可能性がある。この締付動作は、図16A〜Dに記載したものなどのePTFE AV移植片の特定の性状に悪影響を与える可能性がある。図16Eでは、ePTFE AV移植片の中心部104は、移植片の自己封止領域の残りとは異なるように構成されている。中心部104では、比較的大きな断面積を有するビード86が、封止剤層を介在させることなく、ePTFE基体80の外側表面に対して直接位置決めされている。一実施形態では、ビードは約300ミクロンから約700ミクロンの高さ、および約200ミクロンから約1200ミクロンの幅の範囲の寸法を有する楕円形断面形状を有する。好ましい一実施形態では、ビード86は、上に詳細に説明したように、THFなどの溶剤を含む槽を通過した後に、ePTFE基体80の表面の上で螺旋状に包まれている。発泡体層は、上に記載したように、ビードの上のePTFE基体上に配置される。一実施形態では、封止剤層は、発泡体層の蒸着の前に、ビードの上のePTFE基体の上に配置される。
【0056】
自己封止カフ移植片
本明細書に記載した様々な移植片構成はまた、血管への取付を助けるように設けられた1つまたは複数のカフを有することができる。カフを備えた血管移植片、カフ構成、および血管に取り付けるためにこのようなカフおよびカフ移植片を作る方法および装置が、それぞれ共同して譲渡され、本明細書に完全に記載されているように参照として援用する、Scholz他の米国特許第6,273,912号、Scholz他の米国特許第6,746,480号、Scholz他の米国特許出願公開第2004/0210302号、Randall他の米国特許第6,190,590号、Edwin他の米国特許第6,203,735号、Harris他の米国特許第5,861,026号、Harris他の米国特許第6,221,101号、Harris他の米国特許第6,589,278号、およびHarris他の米国特許出願公開第2004/0064181号に記載されている。
【0057】
カフは、ePTFE、およびシリコンまたはポリウレタンなどの他の材料から作ることができ、シリコン、ポリウレタンまたは他の材料基体を有するePTFE AV移植片または移植片に結合させることができる。移植片に取り付けるカフの一例が図17に示されており、カフ110の背面図はカフ部112およびネック部114を示しており、ネック部114はその長さの少なくとも一部に沿って離れており、したがって移植片の一端部上へのカフの定置が容易になる。カフ110はその後、それぞれの材料性状によって、移植片に結合させることができる。例えば、カフおよびカフを取り付ける移植片表面がePTFEである場合、カフは当業者に知られているように、加熱により取り付けることができる。上に記載したePTFE AV移植片の実施形態に関して、カフは様々な製造段階で移植片の一端部または両端部上に定置することができる。一実施形態では、ePTFEテープラップの塗布と同様に、ePTFEカフは、その上に塗布されたポリウレタン層(例えば、ベース層、発泡体など)を有する移植片の端部上に定置される。例えば、ジメチルアセトアミド(DMSE)、ジメチルホルムアミド、THF、またはその混合物を含む非プロトン性溶剤などの適切な溶剤はその後、ネック部の下にあるポリウレタンを溶解するようにカフのネック部に塗布され、その結果カフが移植片に結合する。本明細書で述べているように、ビードまたは他の処理ステップがその後、カフ/移植片結合部の上で可能である。
【0058】
別の実施形態では、カフ移植片は、本明細書に記載されるように、ePTFE AV移植片とは別個に形成される。カフ移植片の管状部はその後、管状部の開口端部の壁面を(例えば、拡張器具の使用により)伸ばし、ePTFE AV移植片の端部の一方の上で摺動することによって、ePTFE AV移植片に取り付けられる。一実施形態では、ePTFE AV移植片は外部ビードを有し、カフ移植片の管状部の開口端部は、管状部がePTFE AV移植片の外部ビード部に到達するまで、ePTFE AV移植片の上で摺動し、この地点で、カフ移植片の管状部は外部ビードの上で回転されるまたは「ねじ込まれる」。カフ移植片の管状部の内側表面は、結合を助けるようにその上に接着剤を有することができる、または別の結合を必要に応じて初期取付ステップの後に行なうことができる。
【0059】
別の実施形態では、自己封止カフ移植片は、ポリウレタンまたは同様のポリマーを当業者に知られているような真空蒸着、スプレー被覆、または浸漬被覆処理によって、ePTFEカフ移植片のミクロ構造内に含浸させることによって作り出すことができる。ポリウレタンまたは同様のポリマーが導入されると、ポリウレタンをePTFEの結節と原線維の間の間隙に形成することができるように、あらゆる余分なポリマーが移植片の外部から取り除かれる。別の実施形態は、本明細書で述べるようにポリマーおよび溶剤の組み合わせでePTFEカフ移植片をスプレー被覆し、ePTFE/ポリマー/ePTFE積層物を作り出すようにその上にePTFEテープまたはパッチを塗布することを含んでいる。別の実施形態では、自己封止カフ移植片は、ネック部を有するカフを移植片に連結させ、移植片とカフのネック部の間の連結点まで移植片を封止材料(例えば、ポリウレタン)内に移植片を浸漬被覆させ、移植片およびネック部を封止材料に(カフまで)浸漬被覆し、ビードを移植片およびネック部の長さにわたって封止材料の周りで螺旋状に包み、ビード付移植片およびネック部を封止材料内に(カフまで)浸漬被覆することによって作り出される。
【0060】
さらに別の実施形態では、ePTFEカフ移植片の管状本体は、移植片に自己封止、よじれ耐性などを与えるように、本明細書に記載された様々な処理ステップに対してePTFE基体として利用される。ePTFEカフ移植片のカフ部は、移植片の一端部または両端部上にあってもよく、上に塗布された封止剤層を有することができる、または処理されていないままにすることができる。例えば、カフ部はカフ形状を維持するように、ポリウレタンコーティングを有することができる。カフ部が上に塗布された封止剤層を有する場合、封止材料(例えば、ポリマー)はパターンで塗布することができる。一実施形態では、(カフを備えた)ePTFE AV移植片のカフ部に塗布されるポリマーは、図18に示すように、カフの上部の「隆線」のパターンでそのように行なわれる。カフ120の隆線部122の例えば、ポリウレタンなどのポリマーは、臨床医が、血管への取付の際に、縫合糸孔出血を緩和するまたは防ぐような縫合糸領域を提供する。これらの隆線部は例えば、ポリマーを塗布する前にカフの上にマスクを置くことによって、またはカフに塗布された場合に隆線をポリマー内にレーザ切り込みすることによって作り出すことができる。隆線部は、当業者が分かるように、様々な構成をとることができ、様々な角度に設定することができる。さらに、一実施形態では、隆線を作り出すのに使用される材料は、ePTFEカフの縁部が手術中に簡単に特定することができるように中に組み込まれた放射線不透過性物質を有する。
【0061】
別の実施形態では、ePTFEカフ移植片は、図19に示すように第1および第2のビードが端部の上に位置決めされた後に、カフの近接端をePTFE AV移植片の端部の上に位置決めすることによって作り出される。この実施形態では、ePTFE基体とカフの間の遷移を補強するように二重のビード層が利用されている。ePTFEカフ移植片130は、ePTFE基体132の上に配置された封止剤またはベース層134を含む自己封止領域131を備えており、その上に第1の発泡体層136が配置され、続いてビード139および第2の発泡体層138が配置されている。他の実施形態では、封止剤層134、第1の発泡体層136、第2の発泡体層138、およびビード139の1つまたは複数は、自己封止領域131内に含まれていない。基体132の外側表面と接触するビード142が、ePTFE基体132の端部で自己封止領域131に隣接して位置決めされている。上に述べるように、ビードがポリウレタンを含んでいる一実施形態では、ビードは最初に、基体132へのビード142の付着を助けるように、THFなどの溶剤で処理または被覆することができる。ビードは例えば、張力を加えて基体132の周りで螺旋状に包まれた連続した長さのビード、または基体132の端部の長さに沿って間隔を置いて配置された複数のビードリングを備えることができる。一実施形態で隣接するビードリングまたは螺旋状に包まれたビードの巻線の間の距離は、約1.2mmから約2.8mmまでの範囲である。
【0062】
ePTFE部材140はその後、自己封止領域131およびビード142の一部の両方の上に位置決めされる。一実施形態では、上に詳細に説明するように、ePTFE部材140は、第2の発泡体層138およびビード142の一方または両方にePTFEテープを結合させるのを助けるように、THFなどの溶剤の槽を最初に通過することができる、ある長さのePTFEテープである。ビード144はその後、自己封止領域131に隣接してビード142を覆うある長さのePTFE部材140の周りに位置決めされている。ビード142と同様に、ビード144は最初に溶剤で処理または被覆することができる、および/または張力を加えてePTFE部材140の周りで螺旋状に包むことができる。好ましい一実施形態では、ビード144は、ビード144の隣接するリングまたは巻線が図19に示すようにビード142の隣接するリングまたは巻線の間に配置されるように、移植片の端部に沿って位置決めされている。一実施形態では、ビード142は、約0.5cmから約1.5cmまでの範囲内の長さに対してePTFE部材140の上に延びている。ビード144がePTFE部材140の上に位置決めされると、カフ150の近接端152は、ePTFE AVカフ移植片130を形成するように、ePTFE AV移植片の端部の上に配置され、それに結合される。カフ150は、上に述べた方法のいずれかを使用して、移植片に結合することができる。好ましい一実施形態では、ビード142および144は、互いにほぼ同じであるが自己封止領域内のビード139より小さい断面積を有する円形断面形状を有する。
【0063】
ePTFE基体の周りに配置されたエラストマービードの利用により、血管移植片に利用可能であったのより大きいよじれ耐性を提供することが、出願人によって発見された。さらに、ポリウレタンマトリックス(例えば、ポリウレタン発泡体層)の厚さを効果的に大きくするように、ePTFE基体と接触するポリウレタンのベース層を取り除くことにより、血管移植片が、移植片へのあらゆる外部締付の悪影響を少なくしながら、基本的に同じレベルのよじれ耐性を備えたその自己封止性を維持することが可能になる。移植片の「よじれ耐性」または可撓性は、図20A、20Bおよび20Cに関する以下のプロトコルを利用することによって決めることができる。
【0064】
このプロトコルでは、血管移植片は、所定の直径Dを有するほぼ円形のピンの周りで湾曲している。移植片の外側表面は、検査ピン上の2つの接線位置でピンに接触するように構成されており、それによって移植片はピンの最も近い表面から頂点までの距離Lで移植片の外側表面と一致する曲線の頂点を備えた曲線を画定し、LはDとほぼ同じである(図20A)。よじれない移植片はしたがって、ピンの周りで湾曲していない移植片の第1の断面積と基本的に同じである頂点に近接した断面積を維持する(図20B)。よじれはしたがって、ほぼ直線構成(すなわち、湾曲していない)の移植片と比較して頂点に近接した断面積の変化として規定される(図20C)。移植片がより可撓性があればあるほど、移植片はよりよじれ耐性が大きくなると考えられる。よじれによる断面積の損失が移植片を通る流れを逆に少なくする閾値は、第1の断面積の約50%、好ましくは検査ピンの所与の直径に対して湾曲していない移植片の第1の断面積の約66%より小さい断面積として規定される。断面積は、円形領域に対する式を使用して移植片の内径(定数piの径自乗倍)を利用することによって、円形断面移植片内で測定することができることを留意すべきである。しかし、計算を簡単にするために、移植片の外径を代わりに使用することができる。
【0065】
本明細書に記載された移植片のいくつかの実施形態は、60ミリ、50ミリ、20ミリおよび15ミリで始まるピン直径Dを備えた上記プロトコルを使用して検査された。移植片は、60mm、50mm、20mmおよび15mmの少なくともピンの約50%の断面積を維持することを可能にした。これまで、移植片が上に述べた検査プロトコルと合わせて20mmおよび15mmの検査ピン直径で少なくとも約50%の断面流れ面積を維持することが可能であるという点において、よじれ耐性があるエラストマービードを備えたePTFE血管移植片を出願人が最初に提供していると考えられる。さらに、移植片が20mmおよび15mmの検査ピン直径で少なくとも約50%の断面流れ面積を維持することが可能であるという点において、よじれ耐性があるePTFE基体およびエラストマービードを有する自己封止血管移植片を出願人が最初に提供していると考えられる。
【0066】
移植片が普通は締め付けられ、したがってよじれの影響性を大きくする場合に移植片の臨床使用をさらにシミュレーションするために、このような移植片は、45分間歯付クランプで締め付けられ、約5秒間の間円形断面積に向かって手によってマッサージされ、締付の約10分間内で検査された。図16Eに関して記載および図示した血管移植片の実施形態は、20mmおよび15mmの検査ピン直径に対して、湾曲していない移植片内の元の断面積の少なくとも50%のその断面積流れ面積を維持することによってそのよじれ耐性を維持することが可能であった。
【0067】
好ましい実施形態を、Polymer Technology Groupから市販されているCarbothane PC−2585に関して記載したが、例えばBionate、93ショアAの硬度を有するChronoflex C(Cardiotech)、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオール)、1,4−ブタンジオール/ジメチルシレートを備えた14,4−メチレンビスフェノールジイソシアネートウレタン(約1000から約3000までのポリウレタンの軟質部分の分子重量)などの他の適切なポリウレタンも利用できる。適切なポリウレタン(すなわち、ポリマー全体)に対する重量平均分子重量(MW)は、約25,000g/モルから約500,000g/モルの範囲、好ましくは約40,000g/モルから約150,000g/モルの範囲である。好ましい一実施形態では、重量平均分子重量は約50,000g/モルである。最後に、本明細書に記載するような(例えば、その剛性性状)移植片上のビードは、透析針または導入装置シースをビードとの接触の際にビードから、また移植片内に偏向させると考えられていることに留意する。
【0068】
本発明を説明し、本発明の特定の例を描写した。本発明を特定の変更形態および例示的な図に関して説明したが、当業者は本発明は記載した変更形態または図に限るものではないことが分かるだろう。例えば、ePTFEテープまたはラップは、血管移植片の自己封止機能を得るために、発泡体層で利用する必要はない。さらに、本明細書に記載および図示したようなポリウレタンの噴霧は、例えば、被覆したステントを作り出すためのステント上へのポリウレタンの噴霧、カプセル封入したステントを作り出すためのステントの両方の表面上へのポリウレタンの噴霧、フィルタを作り出すためのフレーム上へのポリウレタンなどの材料の噴霧などの、移植片基体上へのポリウレタンの塗布以外の応用例に利用することができる。例示的な一実施形態として、血栓材料が発泡体層に組み込まれている。別の実施形態では、移植片を作り出すために本明細書に記載されている方法、過程および材料が、縫合糸孔出血を少なくするために、頸動脈応用例用のパッチに適用されている。さらに別の実施形態では、本明細書に記載および図示した特性は、例えば、被覆したステント、ステント移植片、または部分的に被覆したステントなどの自己封止移植片以外の移植可能人工器官に適用可能である。
【0069】
加えて、上に記載した方法およびステップが特定の順序で起こる特定の事象を示す場合、当業者は特定のステップの順序を変えることができ、このような変更は本発明の変更形態によるものであることが分かるだろう。加えて、特定のステップを可能な場合、並列過程で同時に行なうことができ、また上に記載したように連続して行なうことができる。したがって、開示の精神内にある、または特許請求の範囲で見られる発明と同等である本発明の変更形態がある程度において、本特許はこれらの変更形態も含んでいることを意図している。最後に、本明細書内で引用した刊行物および特許出願は全て、各個別の刊行物または特許出願が本明細書に特におよび個別に記載されているように、全体に参照として援用する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】患者の前腕に移植したループAV移植片を示す図である。
【図1B】患者の大腿に移植したループAV移植片を示す図である。
【図2】その周りに螺旋状になっているビードを有する、中間部のいずれか側に封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片を示す図である。
【図3】発泡体層が封止剤層およびビードの上に配置された、図2の移植片の図である。
【図4】ePTFEテープが発泡体層の周りで包まれている、図3の移植片の図である。
【図5】屈曲構成で示した、図4の移植片の図である。
【図6】その中に離れた間隔で切り込まれた溝付部を有するその長さにわたる封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片の図である。
【図7】屈曲構成で示した、図6の移植片の図である。
【図8】その周りに螺旋状になっているビードを有し、その中に離れた間隔で切り込まれた溝付部を有する、中間部のいずれか側に封止剤層を備えたePTFE基体を有するePTFE移植片の図である。
【図9】屈曲構成で示した、発泡体層が封止剤層およびビードの上に配置された、図8の移植片の図である。
【図10】多数の材料層を備えた、本発明によるePTFE AV移植片の図である。
【図11】本発明によるePTFE AV移植片の一実施形態の図である。
【図12】本発明によるePTFE AV移植片の別の実施形態の図である。
【図13】本発明によるePTFE AV移植片のさらに別の実施形態の図である。
【図14】本発明によるePTFE AV移植片のさらに別の実施形態の図である。
【図15】本発明による別のePTFE AV移植片の図である。
【図16A】ePTFE AV移植片の第1の好ましい実施形態の中間部の長手断面図である。
【図16B】ePTFE AV移植片の第2の好ましい実施形態の中間部の長手断面図である。
【図16C】ePTFE AV移植片の第1の好ましい実施形態の端部設計の長手断面図である。
【図16D】ePTFE AV移植片の第2の好ましい実施形態の端部設計の長手断面図である。
【図16E】ePTFE AV移植片の別の実施形態の中間部または中心部の長手断面図である。
【図17】取付可能なカフの背面斜視図である。
【図18】カフを備えたePTFE AV移植片のカフ部の正面斜視図である。
【図19】ePTFE AVカフ移植片の端部の一実施形態の端部の長手断面図である。
【図20A】よじれ耐性を測定するプロトコルを示すために、ほぼ円形のピン周りで湾曲した血管移植片の側面図である。
【図20B】ピン周りでの屈曲の際によじれなかった移植片を示す、線20B−20Bに沿った図20Aの断面図である。
【図20C】ピン周りでの屈曲の際のよじれによる、図20Aの移植片の断面積の変化を示す、図20Aの断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体であって、近接端部、中心部、および遠位端部の少なくとも1つが自己封止領域を含んでいる基体と、
中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に連続している第1のビードとを備えている、自己封止血管移植片。
【請求項2】
中心部が、約5cmから約12cmまでの範囲内の長さを有する、請求項1に記載の血管移植片。
【請求項3】
封止剤層が、約10ミクロンから300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項1から2のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項4】
ビードが、表面の周りで螺旋状に位置決めされている、請求項1から3のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項5】
螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線間の間隙が、約1mmから約2mmの範囲内である、請求項4に記載の血管移植片。
【請求項6】
近接端部、遠位端部および中心部が、発泡体層を画定するポリウレタンマトリックス層を含んでいる、請求項1から5のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項7】
近接部および中心部の一方が第2のビードを備え、第1のビードがePTFE基体に連続している部分を備えている、請求項1から6のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項8】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項7に記載の血管移植片。
【請求項9】
第1のビードが第1の断面積を備えており、第2のビードが第1の断面積と異なる第2の断面積を備えている、請求項7に記載の血管移植片。
【請求項10】
第2の断面積が第1の断面積より小さい、請求項8に記載の移植片。
【請求項11】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項1から10のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項12】
近接端部、遠位端部、および中心部が外側ePTFE部材を備えている、請求項1から11のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項13】
遠位および近接端部の一方が、外側ePTFE部材の少なくとも一部を囲んでいる別のePTFE部材を備えている、請求項12に記載の移植片。
【請求項14】
ePTFE基体、発泡体層、および外側ePTFE部材の少なくとも1つが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項1から13のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項15】
長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、
ePTFE基体周りに配置されたポリウレタンマトリックス層と、
ポリウレタンマトリックス内に配置された第1のビードとを備えている、血管移植片。
【請求項16】
第1のビードが、ePTFE基体の周りで螺旋状に位置決めされている、請求項15に記載の血管移植片。
【請求項17】
螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線間の間隙が、約1mmから約2mmの範囲内である、請求項16に記載の血管移植片。
【請求項18】
さらに第2のビードを備えている、請求項15から17のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項19】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項18に記載の血管移植片。
【請求項20】
第1のビードが第1の断面積を備えており、第2のビードが第1の断面積と異なる第2の断面積を備えている、請求項18に記載の血管移植片。
【請求項21】
第2の断面積が第1の断面積より小さい、請求項20に記載の移植片。
【請求項22】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項15から21のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項23】
ePTFE基体およびポリウレタンマトリックスの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項15から22のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項24】
近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、
第1のビードを中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に結合させるステップとを含む、よじれ耐性血管移植片を作るための方法。
【請求項25】
第1のビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1のビードが、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項24から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
結合させるステップが、ビードをePTFE基体に接触させる前に、THFを含む溶液を通して第1のビードを移動させるステップを含んでいる、請求項24から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
結合させるステップが、張力を加えてビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項24から27に記載の方法。
【請求項29】
さらに、近接端部、遠位端部および中心部の少なくとも一部の上に第1の高分子発泡体層を配置するステップを含んでいる、請求項24から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
さらに、近接端部および遠位端部内でePTFE基体の周りに第2のビードを位置決めするステップを含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
さらに、血管移植片の全体の壁面厚さが約1mmから約2mmまでの範囲内であるように、第1の高分子発泡体層の上に第2の高分子発泡体層を配置するステップを含んでいる、請求項29から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
配置するステップが、第1および第2の高分子発泡体層の一方内にビードの一部を配置するステップを含んでいる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
さらに、テープの隣接する巻線の縁部が重なるように、第2の高分子発泡体層の上で高分子テープを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
さらに、高分子テープ周りで第3のビードを包むステップと、第3のビードを第2のほぼ管状のePTFE部材で覆うステップとを含んでいる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
高分子テープがePTFEを含んでおり、テープを螺旋状に包むステップがテープにTHFを塗布するステップを含んでいる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
高分子テープがePTFEを含んでおり、テープを螺旋状に包むステップがテープに張力を加えるステップを含んでいる、請求項33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
さらに、ePTFE基体、第1の高分子発泡体層、および第2の高分子発泡体層の少なくとも1つに1つまたは複数の生体活性剤を組み込むステップを含んでいる、請求項24から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
さらに、フレア状の血管カフを基体の端部に結合させるステップを含んでいる、請求項24から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
ほぼ管状のePTFE基体と、
その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びており、封止剤層および発泡体層の少なくとも一方を含む自己封止領域と、
自己封止領域の少なくとも一部に位置決めされた外側ePTFE部材と、
自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に位置決めされた第1のビードであって、外側ePTFE部材が第1のビードの少なくとも一部の上に延びている第1のビードと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に位置決めされた第2のビードと、
第1および第2のビードの少なくとも一部に位置決めされた近接端を有するフレア状の血管カフとを備えた、自己封止血管カフ移植片。
【請求項40】
第1のビードが基体の外側表面と接触する、請求項39に記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項41】
第1のビードが基体の周りで螺旋状に包まれている、請求項39から40のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項42】
第2のビードが、外側ePTFE部材の周りで螺旋状に包まれている、請求項39から41のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項43】
第2のビードの各巻線が、第1のビードの隣接する巻線の間に位置決めされている、請求項41から42のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項44】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、第1の端部の長さに沿って間隔を置いて配置された複数のリングを備えている、請求項39から40のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項45】
隣接するビード巻線またはリングが、約1.2mmから約2.8mmの範囲内の距離で互いに離れている、請求項39から44のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項46】
第2のビードが、約0.5cmから約1.5cmの範囲内の長さだけ延びている、請求項39から45のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項47】
第1および第2のビードが円形断面積を有する、請求項39から46のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項48】
第1および第2のビードの断面積はほぼ同じである、請求項39から47のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項49】
自己封止領域が、第1および第2のビードの両方より大きな断面積を有する第3のビードを備えている、請求項39から48のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項50】
ePTFE部材がある長さのePTFEテープを含んでいる、請求項39から49のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項51】
自己封止領域が、第1の発泡体層および第2の発泡体層を備えている、請求項39から50のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項52】
第3のビードが第1および第2の発泡体層の両方と接触する、請求項51のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項53】
長手軸周りに第1の断面積を有するePTFE基体の遠位部を通して延びている長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、
ePTFE基体が基体の遠位部を約20ミリ以下の直径を有するほぼ円形のピンに接触させるように湾曲しているので、ePTFEは第2の断面積が円形のピンの外側表面から約20ミリに配置されている場合に、第1の断面積の少なくとも約50%のePTFE基体の第2の断面積を含んでいるように、ePTFE基体の周りに配置されたエラストマー部材とを備えた、血管移植片。
【請求項54】
第2の断面積が、第1の断面積の約66%である、請求項53に記載の血管移植片。
【請求項55】
エラストマー部材がポリウレタン材料を含んでいる、請求項54に記載の血管移植片。
【請求項56】
その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びている自己封止領域を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に第1のビードを位置決めするステップと、
自己封止領域および第1のビードの少なくとも一部の上に外側ePTFE部材を配置するステップと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に第2のビードを位置決めするステップと、
第1および第2のビードの少なくとも一部の上で基体にフレア状の管状カフを取り付けるステップとを含んでいる、自己封止血管カフ移植片を作るための方法。
【請求項57】
第1のビードを位置決めするステップは、ビードが基体の外側表面に接触するようにビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
第2のビードを位置決めするステップが、外側ePTFE部材の周りでビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項56から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
第2のビードを位置決めするステップが、第1のビードの隣接する巻線の間に第2のビードの各巻線を位置決めするステップを含んでいる、請求項56から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
第1および第2のビードを位置決めするステップが、約1.2mmから約2.8mmの範囲内の距離で隣接するビード巻線を互いに離すステップを含んでいる、請求項56から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
第2のビードを位置決めするステップが、約0.5cmから約1.5cmの範囲内の長さにわたって第2のビードを延ばすステップを含んでいる、請求項56から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
外側ePTFE部材がある長さのePTFEテープを含んでおり、ePTFEテープを配置するステップがePTFEテープを溶剤に接触させるステップを含んでいる、請求項56から61のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体であって、近接端部、中心部、および遠位端部の少なくとも1つが自己封止領域を含んでいる基体と、
中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に連続している第1のビードとを備えている、自己封止血管移植片。
【請求項2】
中心部が、約5cmから約12cmまでの範囲内の長さを有する、請求項1に記載の血管移植片。
【請求項3】
封止剤層が、約10ミクロンから300ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項1から2のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項4】
ビードが、表面の周りで螺旋状に位置決めされている、請求項1から3のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項5】
螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線間の間隙が、約1mmから約2mmの範囲内である、請求項4に記載の血管移植片。
【請求項6】
近接端部、遠位端部および中心部が、発泡体層を画定するポリウレタンマトリックス層を含んでいる、請求項1から5のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項7】
近接部および中心部の一方が第2のビードを備え、第1のビードがePTFE基体に連続している部分を備えている、請求項1から6のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項8】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項7に記載の血管移植片。
【請求項9】
第1のビードが第1の断面積を備えており、第2のビードが第1の断面積と異なる第2の断面積を備えている、請求項7に記載の血管移植片。
【請求項10】
第2の断面積が第1の断面積より小さい、請求項8に記載の移植片。
【請求項11】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項1から10のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項12】
近接端部、遠位端部、および中心部が外側ePTFE部材を備えている、請求項1から11のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項13】
遠位および近接端部の一方が、外側ePTFE部材の少なくとも一部を囲んでいる別のePTFE部材を備えている、請求項12に記載の移植片。
【請求項14】
ePTFE基体、発泡体層、および外側ePTFE部材の少なくとも1つが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項1から13のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項15】
長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、
ePTFE基体周りに配置されたポリウレタンマトリックス層と、
ポリウレタンマトリックス内に配置された第1のビードとを備えている、血管移植片。
【請求項16】
第1のビードが、ePTFE基体の周りで螺旋状に位置決めされている、請求項15に記載の血管移植片。
【請求項17】
螺旋状に位置決めされたビードの隣接する巻線間の間隙が、約1mmから約2mmの範囲内である、請求項16に記載の血管移植片。
【請求項18】
さらに第2のビードを備えている、請求項15から17のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項19】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項18に記載の血管移植片。
【請求項20】
第1のビードが第1の断面積を備えており、第2のビードが第1の断面積と異なる第2の断面積を備えている、請求項18に記載の血管移植片。
【請求項21】
第2の断面積が第1の断面積より小さい、請求項20に記載の移植片。
【請求項22】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項15から21のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項23】
ePTFE基体およびポリウレタンマトリックスの少なくとも一方が、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項15から22のいずれかに記載の血管移植片。
【請求項24】
近接端部、遠位端部、および近接端部と遠位端部の間に位置決めされた中心部を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、
第1のビードを中心部の少なくとも一部に沿ってePTFE基体の表面に結合させるステップとを含む、よじれ耐性血管移植片を作るための方法。
【請求項25】
第1のビードが、基本的に硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン、またはタンタル、およびその組み合わせからなる群から選択された放射線不透過性材料を含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1のビードが、基本的に形状記憶材料、超弾性金属、ステンレス鋼、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、PTFE、またはePTFE、およびその組み合わせからなる群から選択された材料を含んでいる、請求項24から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
結合させるステップが、ビードをePTFE基体に接触させる前に、THFを含む溶液を通して第1のビードを移動させるステップを含んでいる、請求項24から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
結合させるステップが、張力を加えてビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項24から27に記載の方法。
【請求項29】
さらに、近接端部、遠位端部および中心部の少なくとも一部の上に第1の高分子発泡体層を配置するステップを含んでいる、請求項24から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
さらに、近接端部および遠位端部内でePTFE基体の周りに第2のビードを位置決めするステップを含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
さらに、血管移植片の全体の壁面厚さが約1mmから約2mmまでの範囲内であるように、第1の高分子発泡体層の上に第2の高分子発泡体層を配置するステップを含んでいる、請求項29から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
配置するステップが、第1および第2の高分子発泡体層の一方内にビードの一部を配置するステップを含んでいる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
さらに、テープの隣接する巻線の縁部が重なるように、第2の高分子発泡体層の上で高分子テープを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
さらに、高分子テープ周りで第3のビードを包むステップと、第3のビードを第2のほぼ管状のePTFE部材で覆うステップとを含んでいる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
高分子テープがePTFEを含んでおり、テープを螺旋状に包むステップがテープにTHFを塗布するステップを含んでいる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
高分子テープがePTFEを含んでおり、テープを螺旋状に包むステップがテープに張力を加えるステップを含んでいる、請求項33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
さらに、ePTFE基体、第1の高分子発泡体層、および第2の高分子発泡体層の少なくとも1つに1つまたは複数の生体活性剤を組み込むステップを含んでいる、請求項24から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
さらに、フレア状の血管カフを基体の端部に結合させるステップを含んでいる、請求項24から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
ほぼ管状のePTFE基体と、
その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びており、封止剤層および発泡体層の少なくとも一方を含む自己封止領域と、
自己封止領域の少なくとも一部に位置決めされた外側ePTFE部材と、
自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に位置決めされた第1のビードであって、外側ePTFE部材が第1のビードの少なくとも一部の上に延びている第1のビードと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に位置決めされた第2のビードと、
第1および第2のビードの少なくとも一部に位置決めされた近接端を有するフレア状の血管カフとを備えた、自己封止血管カフ移植片。
【請求項40】
第1のビードが基体の外側表面と接触する、請求項39に記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項41】
第1のビードが基体の周りで螺旋状に包まれている、請求項39から40のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項42】
第2のビードが、外側ePTFE部材の周りで螺旋状に包まれている、請求項39から41のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項43】
第2のビードの各巻線が、第1のビードの隣接する巻線の間に位置決めされている、請求項41から42のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項44】
第1および第2のビードの少なくとも一方が、第1の端部の長さに沿って間隔を置いて配置された複数のリングを備えている、請求項39から40のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項45】
隣接するビード巻線またはリングが、約1.2mmから約2.8mmの範囲内の距離で互いに離れている、請求項39から44のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項46】
第2のビードが、約0.5cmから約1.5cmの範囲内の長さだけ延びている、請求項39から45のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項47】
第1および第2のビードが円形断面積を有する、請求項39から46のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項48】
第1および第2のビードの断面積はほぼ同じである、請求項39から47のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項49】
自己封止領域が、第1および第2のビードの両方より大きな断面積を有する第3のビードを備えている、請求項39から48のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項50】
ePTFE部材がある長さのePTFEテープを含んでいる、請求項39から49のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項51】
自己封止領域が、第1の発泡体層および第2の発泡体層を備えている、請求項39から50のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項52】
第3のビードが第1および第2の発泡体層の両方と接触する、請求項51のいずれかに記載の自己封止血管カフ移植片。
【請求項53】
長手軸周りに第1の断面積を有するePTFE基体の遠位部を通して延びている長手軸を画定するほぼ管状のePTFE基体と、
ePTFE基体が基体の遠位部を約20ミリ以下の直径を有するほぼ円形のピンに接触させるように湾曲しているので、ePTFEは第2の断面積が円形のピンの外側表面から約20ミリに配置されている場合に、第1の断面積の少なくとも約50%のePTFE基体の第2の断面積を含んでいるように、ePTFE基体の周りに配置されたエラストマー部材とを備えた、血管移植片。
【請求項54】
第2の断面積が、第1の断面積の約66%である、請求項53に記載の血管移植片。
【請求項55】
エラストマー部材がポリウレタン材料を含んでいる、請求項54に記載の血管移植片。
【請求項56】
その第1と第2の端部の間でほぼ管状の基体の長さに沿って延びている自己封止領域を含むほぼ管状のePTFE基体を提供するステップと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で基体上に第1のビードを位置決めするステップと、
自己封止領域および第1のビードの少なくとも一部の上に外側ePTFE部材を配置するステップと、
自己封止領域に隣接した第1の端部で外側ePTFE部材の上に第2のビードを位置決めするステップと、
第1および第2のビードの少なくとも一部の上で基体にフレア状の管状カフを取り付けるステップとを含んでいる、自己封止血管カフ移植片を作るための方法。
【請求項57】
第1のビードを位置決めするステップは、ビードが基体の外側表面に接触するようにビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
第2のビードを位置決めするステップが、外側ePTFE部材の周りでビードを螺旋状に包むステップを含んでいる、請求項56から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
第2のビードを位置決めするステップが、第1のビードの隣接する巻線の間に第2のビードの各巻線を位置決めするステップを含んでいる、請求項56から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
第1および第2のビードを位置決めするステップが、約1.2mmから約2.8mmの範囲内の距離で隣接するビード巻線を互いに離すステップを含んでいる、請求項56から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
第2のビードを位置決めするステップが、約0.5cmから約1.5cmの範囲内の長さにわたって第2のビードを延ばすステップを含んでいる、請求項56から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
外側ePTFE部材がある長さのePTFEテープを含んでおり、ePTFEテープを配置するステップがePTFEテープを溶剤に接触させるステップを含んでいる、請求項56から61のいずれかに記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【公開番号】特開2012−236045(P2012−236045A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−166003(P2012−166003)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−516811(P2008−516811)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166003(P2012−166003)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−516811(P2008−516811)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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