説明

編地および編地の編成方法

【課題】横編機を用いて編成された筒状編地の内方にラベルや紐等を取り付けても外観が美しく、風合いも損ねない編地およびその編地の編成方法を提供する。
【解決手段】横編機を用いて無縫製で編成された筒状の編地本体3の筒内部に、ラベルや紐等を取り付けるための内部編地4を形成する。筒状の編地本体3と、内部編地4とは並行して編成されながら、内部編地4が編地本体3に無縫製で接合されていく。内部編地4は、編地本体3よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、上下方向(コース方向)両端部のコースが編地本体と接合されることなく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体3に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地本体と、この編地本体の筒内部に形成され、編地本体よりも編成コース数が少なく、一部が編地本体に接合される内部編地とを横編機で編成した編地およびその編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、洋服等の衣服には、その内側に品質表示ラベルや洗濯表示ラベル等の取り扱いが表示されたラベル、そして、会社のロゴマークや製品名が記載されたネーム入りラベルが縫い付けられる(例えば、特許文献1または特許文献2を参照)。そして、無縫製のニットウエアにおいても、内側にこれらのラベルが取り付けられる。さらに、スカートにおいては、ウエスト位置の内側に、吊り下げ用の紐を取り付ける場合もある。これら、ラベルや紐は、直接製品に縫い付けており、ニットウエアにおいても、ラベル等を直接編地部分に縫い付けるようにしている。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3064894号公報
【特許文献2】実用新案登録第3076647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラベル等を編地に直接縫い付けてしまうと、ミシン目が編地の表面に現れて見栄えが悪くなる場合がある。そして、ミシン目が編地の表面になるべく現れないように縫い付けようとすると、縫い付け作業に時間を要し、作業性が悪くなる。
【0005】
さらに、編地のような柔らかく伸縮性のある素材に、ラベルのような硬い部材を縫い付けると、編地の縫い付けられた部分の風合いが硬くなり、その部分だけ伸縮しなくなってしまうという不具合も生ずる。また、ラベル等を取り付けるための内部編地を別途編成しておいて、この内部編地を筒状の編地(編地本体)に縫い付けるようにすることも考えられるが、このように、内部編地を編地本体に縫い付けても、やはり、縫い目が編地本体の表面に現れて見栄えが悪くなる場合があるし、縫った部分は編地の伸縮性が無くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、横編機を用いて編成された筒状編地の内方に、ラベルや紐等を取り付けても外観が美しく、風合いも損ねない編地の編成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、横編機を用いて編成された筒状の編地本体の内方に、ラベルや紐等を取り付けるための内部編地を形成する編成を行うことにより上記目的を達成する。
【0008】
上記目的を達成するため本発明の編地の編成方法は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床の少なくとも一方が左右にラッキング可能で、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて、筒状の編地本体と、この編地本体の筒内部に形成され、編地本体よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、上下方向(コース方向)両端部のコースが編地本体と接合されることなく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に接合される内部編地とを並行して編成することを特徴とする。
【0009】
本発明の編地の編成方法は、さらに、前記編地本体を針抜きで筒状に編成しながら、前後一方の針床において、前記内部編地を折り返し編成により編成する。そして、内部編地は、編幅方向端部の編目のうち少なくとも一方の編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体の編目が係止されている針の間に位置する針を用いて形成する。内部編地の編目が針床の針に係止されているときに、編地本体を編成するときは、前後の針床において、編地本体の編目と内部編地の編目とを連結するために用いる針を除いて、内部編地の編目が係止される針に対向する空針を確保した状態で、針床の針に係止されている内部編地の編目を、編地本体を編成する針床とは反対側の針床に目移しをしておく。
【0010】
前記した内部編地の編幅方向端部の編目を、編地本体の編目と連結するように形成するには、例えば、編地本体の編目が係止される針に内部編地を編成する糸をタックしたりニットすることにより形成することができる。また、編地本体を編成する糸と内部編地を編成する糸を交差させたり、一方の編地のループに他方の編地を編成する糸を交差させたりすることにより内部編地を編地本体に連結することもできる。
【0011】
本発明では、編地本体と内部編地とを編成するにあたって、前針床、後針床からなる2枚ベッドの横編機を用いて編成することもできるし、下部前針床と下部後針床と、これら下部針床の上に設ける上部前針床と上部後針床とを備える4枚ベッドの横編機を用いて編成することもできる。
【0012】
2枚ベッドまたは4枚ベッドの横編機を用いて編地本体と内部編地とを編成する場合、例えば、前後の各針床において編地本体の編目を1本空針を置きながら針に係止させるように編地本体を編成し、前記した空針を用いて内部編地を編成する。
【0013】
本発明の編地の編成方法は、具体的には、以下のステップを含む編成方法で編成を行うことが好ましい。
【0014】
a) 編地本体を針抜き編成で筒状に編成するステップ、
b) 前記内部編地の編幅方向端部の編目のうち少なくとも一方の編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体の編目が係止されている針の間に位置する針で形成するように、折り返し編成して内部編地の編み出しを行うステップ、
c) 前後一方の針床の針に係止される内部編地の編目を対向する他方の針床の空針に目移しした後、一方の針床で編地本体の編成を行うステップ、
d) 前後他方の針床の針に係止される内部編地の編目を対向する一方の針床の空針に目移しした後、他方の針床で編地本体の編成を行うステップ、
e) 前記内部編地の編幅方向端部の編目のうちステップbの端部の編目と同じウエールの編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体を編成する針の間に位置する針を用いて形成するように、折り返し編成により内部編地を編成するステップ、
f) 前記ステップc、ステップd、ステップeによる内部編地と編地本体の編成を、内部編地について所定の編成コースが得られるまで繰り返すステップ、
g) 内部編地の最終コースを伏せ目処理するステップ、
h) 編地本体を周回編成していくステップ。
【0015】
前記ステップfにおける内部編地と編地本体の編成は、ステップc、ステップd、ステップeの順番に編成するだけでなく、ステップdにおける目移しを行った後に、ステップeの内部編地の折り返し編成における一方向の編成を行い、ステップdにおける編地本体の編成を行って、ステップeの内部編地の他方方向の編成を行うようにしてもよい。さらに、前記ステップeにおける内部編地の編成は、一針おきにミスをしながら一方向に編成した後、折り返して、先にミスをした針で編目を形成し、先に編目を形成した針をミスすることにより編地の編成を行うことが好ましい。
【0016】
このように内部編地を一針おきにミスをしながら編成することにより、1往復の折り返し編成で1コース編目を形成した状態にできる。その結果、編地本体を1コース周回編成した後に、内部編地の編目を1コース編成した状態、即ち、編地本体と内部編地の編目列の比を1:1にでき、編地本体と内部編地の編成を繰り返し行った際に、内部編地の編成コース数が編地本体に比べて多くなり過ぎない。
【0017】
さらに、内部編地を一針おきにミスをしながら編成することにより、ミスの部分によって編地の厚みが厚くなるとともに、カールや型崩れの起こらない形態安定性の良好な編地を形成できる。
【0018】
なお、内部編地は、一針おきにミスをせずに、天竺編み等で編目を形成するように編成してもよい。天竺編みで内部編地を編成する場合で、編地本体を1コース編成する毎に内部編地を折り返し編成により2コース編成する場合には、編地本体と内部編地の編目列の比は1:2となる。また、天竺編みで内部編地を編成する場合、編地本体を1コース編成する毎に内部編地を1コース編成する場合には、編地本体と内部編地の編目列の比は1:1となる。
【0019】
内部編地は、編幅方向一端のウエールを編地本体に接合するようにしてもよいし、編幅方向両端部のウエールを編地本体に接合するようにしてもよい。
【0020】
内部編地は、編幅方向一端のウエールを編地本体に接合する場合には、ラベルやスカート吊り下げ用の紐等を縫い付ける縫い付け代(ラベル等の接続部)として利用できる。また、一端部を接合した内部編地においては、スカートの裏地の下部を編地本体に取り付ける際の縫い付け代(裏地の接続部)としても利用できる。
【0021】
また、編幅方向両端のウエールを編地本体に接合する場合には、内部編地に衿ネームを取り付けることができるし、ラベル固定用以外の用途、例えば、筒状の編地本体を上部が閉鎖されたカバーとし、このカバーで覆われる物(器具等)にカバー取付用または位置決め用の突起部が形成されている場合、内部編地をこの突起部に引っ掛けるようにすることもできる。さらに、ミトンの手袋において、人差指から小指が挿入される指袋部の内部に、例えば、人差指と小指を所定の位置に維持するための仕切り部として形成することもできる。また、内部編地を一針おきにミスをしながら編成すれば、編地がしっかりしているので、内部編地そのものを、従来の吊り下げ用の紐の代わりに用いることができる。
【0022】
内部編地の編地本体への接合位置は、編地本体の編幅方向端部付近(前後の編地の境界部付近)でもよいし、編幅方向中央部でもよいし、その他の部分でもよい。さらに、内部編地は、一つだけ形成してもよいし、複数形成してもよい。
【0023】
本発明の編成方法では、内部編地を編成する糸は、伸縮性が大きい糸を用いることが好ましい。そして、編地本体を編成する糸と、内部編地を編成する糸とは、同じ糸で編成し、即ち、同じ給糸口から給糸しながら編成するようにしてもよいし、双方の糸を異なる種類の糸として、それぞれ異なる給糸口から給糸するようにしてもよい。双方の糸を異なる糸とする場合には、内部編地を編成する糸を、編地本体を編成する糸よりも伸縮性が大きくて細い、柔らいものを用いることが好ましい。例えば、ウーリーナイロン等の、細くて伸縮性に優れたものを内部編地編成用に用いることが好ましい。
【0024】
このように、内部編地を編成する糸を、編地本体を編成する糸よりも伸縮性が大きく、細い糸を用いて、編地本体と内部編地とを編成することにより、内部編地の編地本体との接合部で、内部編地を編成する糸と編地本体を編成する糸とが重なってしまっても、この重ね目を目立ち難くすることができる。
【0025】
また、本発明では、多数の編針を装着した針床を前後に対向して設けた横編機を使用して、上記した編成方法により、無縫製で編成される筒状の編地本体と、この編地本体の筒内部に形成される内部編地とを有し、内部編地が、編地本体よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、上下方向(コース方向)両端部のコースが編地本体と接合されることなく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に無縫製で接合されている編地を作製する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の編地の編成方法では、横編機を用いて、筒状の編地本体の内方に、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に接合される内部編地を形成するように、編地本体と内部編地とを並行して編成するので、ラベルや紐を内部編地を介して編地本体に取り付けることができる。
【0027】
本発明で編成される内部編地は、編地本体に縫い付けるのではなく、内部編地を編成しながら、この内部編地を編地本体に接合していくので、縫い付けた場合のように編地本体は縫い目によって伸縮性が損なわれることがない。さらに、内部編地を編成する糸を、編地本体を編成する糸よりも伸縮性が大きい糸を用いることにより、編地本体における、内部編地取付位置において、編地本体の伸縮性および風合いを維持できる。さらに、伸縮性が大きい細い糸を用いる場合には、内部編地を編成する糸が編地本体の表面に現れ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の好適な実施の形態を図面と共に以下詳細に説明する。以下に示す各実施形態は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有し、後針床が左右にラッキング可能で、しかも、前後の針床の間で編目の目移しが可能ないわゆる2枚ベッドの横編機を用いて筒状の編地本体と内部編地とを並行して編成する。内部編地は、編地本体の筒内部に形成され、編地本体よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に接合される。
【0029】
<第1実施形態>
本発明の好適な実施の形態の一つとして、内部編地の編幅方向一端部のウエールを編地本体に接合するように内部編地と編地本体とを編成する第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、編地本体3の部分切欠き斜視図であり、編地本体3の筒の内側に小片の内部編地4が形成され、この内部編地4にラベル5が縫い付けられた状態を示している。この第1実施形態の編地本体3の概略断面図が図2(a)に示されており、編地本体3の編幅方向一端側に内部編地4が形成されている。図2(a)では、編地本体3の前側編地31と後側編地32の境界部において内部編地4が接合されている。
【0031】
図3は、編地本体3と内部編地4とを並行して編成する際の編成ステップを示す。図3における各ステップにおいて下段が前針床F、上段が後針床B、a〜lは前針床Fの針番号、m〜xは後針床Bの針番号を示す。図中右端の矢印は給糸口の移動方向、図中右端に示すR:1Pは前針床Fを右方向に1ピッチだけラッキングしたことを示す。図3の編成ステップ図は、編地本体3の一端側の編成状態のみを示し、他端側の編成状態は省略しており、説明の便宜上編成に使用される針数は実際の針数よりも少なくしている。
【0032】
また、本実施形態では、編地本体3を第1給糸口1を用いて第1編糸で編成し、内部編地4を第2給糸口2を用いて第2編糸で編成する。なお、各給糸口は、図3において、三角内に数字が表示されている部分で示す。第1編糸は、ウール100%の糸を用い、第2編糸は、ウーリーナイロン糸を用いる。なお、第1編糸と第2編糸とはウーリーナイロンを用いてもよい。
【0033】
また、図3の編成ステップ図では、編地本体3を構成する前側編地31は前針床Fの針(a,c,e,g,i,k)を用いて編成され、後側編地32は後針床Bの針(n,p,r,t,v,x)を用いて編成される。内部編地4は、前針床Fの針(d,f,h,j,k)を用いて編成される。
【0034】
本実施形態では、編地本体3を第1給糸口1を用いて1コース周回編成する毎に、内部編地4の折り返し編成を1往復行う動作を繰り返す。本実施形態における編地本体3と内部編地4の編成方法について、図3に基づいて説明する。
【0035】
第1給糸口1から給糸して、編地本体3の後側編地32を後針床Bで1コース編成し、そのまま、編地本体3の前側編地31を前針床Fで1コース編成する(ステップ1)。このとき、前後の針床では、一針おきに空針が形成されるように編地本体3を編成する。そして、編地本体3が1コース周回編成された後、編地本体3の編目が係止されている前後の針床の針が互いに対向するように前針床Fを右方向に1ピッチラッキングさせる(ステップ2)。
【0036】
第1給糸口1を右方向に移動させながら、第1給糸口1から給糸し、後針床Bで編地本体3の後側編地32の編成を1コース行う。続いて、第2給糸口2を編地本体3の編幅方向端部から左方向に移動させながら、第2給糸口2から給糸し、内部編地4の編み出しを開始する。このときの内部編地4の編成は、編地本体3の前側編地31の編目(編幅方向端部の編目)が係止される針kにタックした後、編地本体3の編目が係止されている針(a,c,e,g,i,k)の間に位置する空針(d,f,h,j)のうち針(h,d)を用いて、針(j,f)をミスしながら編目を形成する(ステップ3)。
【0037】
第2給糸口2を、折り返して、右方向に移動させながら、第2給糸口2から給糸し、針(d,f,h,j)のうち針(f,j)を用いて、針(d,h)をミスしながら編目を形成する(ステップ4)。ステップ3とステップ4の内部編地4の編成により、前針床Fで一針おきにミスをしながら折り返し編成され、内部編地4の編み出しが行われる。
【0038】
次に、前針床Fの針(d,f,h,j)に係止される内部編地4の編目を対向する後針床Bの空針(q,s,u,w)に目移しする(ステップ5)。その後、第1給糸口1を左方向に移動させながら、第1給糸口1から給糸し、前針床Fで編地本体3の前側編地31の編成を行う(ステップ6)。
【0039】
そして、後針床Bの針(q,s,u,w)に係止される内部編地4の編目を対向する前針床Fの空針(d,f,h,j)に目移しする(ステップ7)。その後、第1給糸口1を右方向に移動させながら、第1給糸口1から給糸し、後針床Bで編地本体3の後側編地32の編成を行う(ステップ8)。
【0040】
第2給糸口2を編地本体3の編幅方向端部から左方向に移動させながら、第2給糸口2から給糸し、内部編地4の編成を行う。このときの内部編地4の編成は、編地本体3の前側編地31の編目が係止される針kにタックした後、針(h,d)を用いて、針(j,f)をミスしながら編目を形成する(ステップ9)。
【0041】
第2給糸口2を、折り返して、右方向に移動させながら、第2給糸口2から給糸し、針(f,j)を用いて、針(d,h)をミスしながら編目を形成する(ステップ10)。ステップ9とステップ10の内部編地4の編成により、前針床Fで一往復折り返し編成されて内部編地4の編成が行われる。
【0042】
そして、前記ステップ5からステップ10を内部編地の所定の編成コースが得られるまで繰り返す。図3には示していないが、内部編地の所定コース数の編成が行われた後は、内部編地4の最終コースを伏せ目処理し、編地本体3のみを第1給糸口1を用いて周回編成していく。
【0043】
上記のように編成することにより、編地本体3の筒内部に内部編地4が形成された状態となる。本実施形態では、内部編地4を編成していく際に、編地本体3の前側編地31の編目が係止される針kにタックすることにより、内部編地4を編地本体3に接合するようになっている。本実施形態では、図2(a)に示すように、内部編地4の編幅方向一端のウエールが編地本体3に接合された状態になる。
【0044】
編地本体3の編成が終了して、ニット製品が出来上がった後、図1に示すように、内部編地4に品質表示ラベルや取扱ラベル等のラベル5やスカート吊り下げ用の紐を縫い付ける。本実施形態では、編地本体3と内部編地4とを編成しながら接合し、この内部編地4にラベル等を縫い付けているので、編地本体3における内部編地4の形成部分において、縫い目が形成されることは無く、編地本体3の伸縮性を維持できる。
【0045】
第1実施形態では、内部編地4を伸縮性に優れた細い糸(ウーリーナイロン)を用いて編成しているので、内部編地4を一針おきにミスをしながら編成することにより編組織が密となるように編成しても、この内部編地は、編地本体3に比べて薄くて柔らかく、伸縮性が良好な編地となる。しかも、ウーリーナイロンは、細いので、編地本体3と内部編地4との接合部において編地本体3の表面に殆ど現れない。
【0046】
さらに、編地本体3を1コース周回編成(ステップ6とステップ8)する毎に、内部編地4を一針おきにミスをしながら一往復の折り返し編成(ステップ9とステップ10)を行って、内部編地4の編目を1コース分形成した状態にできる。その結果、編地本体3と内部編地4の編目列の比を1:1にすることができ、編地本体3と内部編地4の編組織のバランスを良くすることができる。さらに、ミスした糸の上に編目が形成されるように内部編地4を編成しているので、編組織として目が詰み、カールや型崩れの起こり難い形態安定性の良好な編地を形成できる。その結果、細いウーリーナイロンを用いて内部編地4を編成していても、丈夫で形態安定性の良好な編地を形成できる。
【0047】
本実施形態では、編地本体3と内部編地4を編成する糸を異種の糸としたが、編地本体と内部編地4とを同じ糸で編成するように第1給糸口1のみを用いて編地本体3と内部編地4とを編成するようにしてもよい。この場合の編成方法も、前記した編成工程と同様のことを行う。
【0048】
さらに、本実施形態では、内部編地4の目移し用の空針を確保するために、前記ステップ2において、前針床Fを右方向に1ピッチラッキングするようにしたが、このラッキング動作は、次のように行ってもよい。ステップ3における編地本体3の後側編地32の編成を行った後にラッキングを行って、内部編地4の編み出しを行うようにしてもよいし、また、ステップ3の内部編地4の編み出し後にラッキングを行ってもよいし、ステップ4の内部編地4の編み出しが終了した時点でラッキングを行うようにしてもよい。
【0049】
さらに、内部編地4の目移し用の空針を確保するために、針床をラッキングさせておくのではなく、内部編地4が形成される針のみに対向する空針を確保するように、編地本体3の編目の一部を1ピッチずらすように目移ししてもよい。
【0050】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、内部編地4を一針おきにミスをしながら編成したが、内部編地4を天竺編で編成してもよい。第2実施形態も、内部編地4は、編地本体3における編幅方向一端側において、内部編地4の編幅方向一端のウエールが編地本体3に接合するように編成する。
【0051】
なお、本実施形態では、編地本体3を編成する糸、内部編地4を編成する糸は、第1実施形態と同じものを使用し、また、各編地を編成する針も第1実施形態と同じ針を用いる。
【0052】
本実施形態は、編地本体3を第1給糸口1を用いて1コース周回編成する毎に、内部編地4の折り返し編成を1往復行う動作を繰り返すが、編地本体3を1コース編成する毎に、内部編地4の編目が2コース分形成される。
【0053】
本実施形態では、内部編地4を天竺編で編成するが、内部編地4の編み出しは、前記した第1実施形態と同様に、一針おきにミスして行う。また、編地本体3も第1実施形態と同じ編成を行う。従って、第2実施形態は、図3に示す第1実施形態のステップ1からステップ8までは、同じ編成を行うので、ステップ1からステップ8の編成については説明を省略する。本実施形態のステップ9とステップ10は、図3のステップ9とステップ10に替えて、次のように行う。
【0054】
ステップ9は、第2給糸口2から給糸して、針kにタックした後、針(j,h,f,d)を用いて編目を形成することにより内部編地4を1コース編成する。ステップ10は、第2給糸口2を、折り返し、この第2給糸口2から給糸して、針(d,f,h,j)を用いて編目を形成し、内部編地4をさらに1コース編成する。ステップ9とステップ10の内部編地4の編成により、天竺の編目が2コース編成される。
【0055】
そして、ステップ5からステップ10を内部編地の所定の編成コースが得られるまで繰り返した後、内部編地4の最終コースを伏せ目処理し、編地本体3のみを第1給糸口1を用いて周回編成していく。このように編成することにより、図2(a)に示すように、編地本体3の筒内部に内部編地4が形成された状態となる。
【0056】
第2実施形態では、編地本体3が1コース編成される毎に、内部編地4が2コース編成された状態なる。第2実施形態では、編地本体3と内部編地4の編目列の比が1:2となるが、内部編地4を編成する糸が編地本体3を編成する糸に比べて、細くて柔らかいウーリーナイロンを用いているので、内部編地4の編成コース数が内部編地4の編成コースに対して2倍になっても、編地本体3の表面側での外観の影響は少ない。
【0057】
なお、編地本体3を1コース周回編成する毎に、内部編地4を1コースだけ天竺編で編成するようにしてもよい。この場合には、編地本体3と内部編地4の編目列の比を1:1にすることができる。但し、内部編地4の一端部のみを編地本体3に接合する場合には、糸の種類に関係なく、編地本体3を編成するための給糸口と内部編地4を編成するための給糸口を設け、編地本体3を編成する給糸口を、針床に対して編地本体3を編成する給糸口よりも後側に配置させる。そして、編地本体3と内部編地4の編成は、前記したステップ5からステップ10を、ステップ5、ステップ6、ステップ7、ステップ9、ステップ8、ステップ10の順に行う。このように編成することにより、糸の交差を回避できる。
【0058】
<第3実施形態>
上記第1実施形態および第2実施形態では、内部編地の編幅方向一端部のウエールを編地本体に接合するようにしたが、第3実施形態では、図2(b)に示すように、内部編地4の編幅方向両端部のウエールを編地本体3に接合する。図2(b)に示す実施形態では、編地本体3の前側編地31の編幅方向両端側において、内部編地4が形成され、これら内部編地4は、編幅方向両端が編地本体3に接合されている。
【0059】
なお、本実施形態では、編地本体3を編成する糸、内部編地4を編成する糸は、第1実施形態と同じものを使用し、また、各編地を編成する針も第1実施形態と同じ針を用いる。だだし、内部編地4を編成するために用いる針は、内部編地の編幅方向両端部を編地本体3に接合するので、さらに、針cを用いる。
【0060】
本実施形態は、内部編地4の編み出しとその後の編成を、前記した第1実施形態と同様に、一針おきにミスをしながら編成を行うが、内部編地4の編幅方向両端を編地本体3に接合するため、内部編地4の編成が第1実施形態と異なる。
【0061】
本実施形態では、図3に示す第1実施形態のステップ4とステップ10の編成が異なるだけであり、他のステップ1からステップ3、ステップ5からステップ9までは、第1実施形態と同じ編成を行うので、ステップ4とステップ10を除くステップの編成については説明を省略する。本実施形態のステップ4とステップ10は、図3のステップ4とステップ10に替えて、次のように行う。
【0062】
ステップ4は、第2給糸口2から給糸し、編地本体3の前側編地31の編目が係止される針cにタックした後、針(f,j)を用いて、針(d,h)をミスしながら編目を形成する。ステップ3とステップ4の内部編地4の編成により、前針床Fで一針おきにミスをしながら折り返し編成され、内部編地4は、編幅方向両端が編地本体3に接合された状態で編み出しが行われる。
【0063】
また、ステップ10は、第2給糸口2から給糸し、編地本体3の前側編地31の編目が係止される針cにタックした後、針(f,j)を用いて、針(d,h)をミスしながら編目を形成する。ステップ9とステップ10の内部編地4の編成により、前針床Fで一針おきにミスをしながら一往復折り返し編成されて内部編地4の編成が行われる。
【0064】
本実施形態も、ステップ5からステップ10を内部編地の所定の編成コースが得られるまで繰り返した後、内部編地4の最終コースを伏せ目処理し、編地本体3のみを周回編成していく。このように編成することにより、編地本体3の筒内部に内部編地4が、その編幅方向両端のウエールが編地本体3に接合された状態で形成される。
【0065】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、編地本体3が1コース編成される毎に、内部編地4の編目も1コース分編成された状態なる。第3実施形態の編成方法においても、第2実施形態と同じように、天竺で内部編地を編成し、編地本体3と内部編地4の編目列の比を1:1または1:2とすることができる。
【0066】
第3実施形態では、内部編地4の編幅方向両端部が編地本体3に接合されるので、図2(b)に示す形状の場合には、内部編地4そのもので、スカートの吊り下げ用紐や、カバー(編地本体)を器具に取り付けるための取付部としたり、ミトンの手袋の仕切り部としたりすることができる。
【0067】
また、図2(c)に示すように、編地本体3の後側編地32の中央部において内部編地4の編幅方向両端を接合するように内部編地4を編成することもできる。このように内部編地4を編成する場合としては、内部編地4をセーター等の衿の内側に形成する場合が挙げられる。このように内部編地4をセーター等の衿の内側に形成すれば、内部編地4に衿マークを縫い付けることができるので、この衿マークを縫い付けたときの縫い目が編地本体3の表面側に現れないようにすることができる。
【0068】
なお、前記した各実施形態では、内部編地の編成は、前針床または後針床のいずれか一方の針床において編成を行ったが、前後両方の針床の針を用いてゴム編みを編成するようにしてもよい。ゴム編みで編成する場合も、編地本体3と内部編地4の編目列の比を1:1または1:2とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の編成方法は、無縫製のニットウエアに表示ラベル等を取り付ける場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる編地の部分斜視図であって、内部編地にラベルを取り付けた状態を示す。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態にかかる内部編地の編幅方向一端部を編地本体に接合した編地の概略断面構成図であり、(b)は、本発明の第3実施形態にかかる内部編地の編幅方向両端部を編地本体に接合した編地の概略断面構成図であり。(c)は、内部編地の編幅方向両端部を編地本体に接合した他の実施形態を示した概略断面図である。
【図3】第1実施形態における内部編地と編地本体を編成する際の編成工程図である。
【符号の説明】
【0071】
F 前針床
B 後針床
1 第1給糸口 2 第2給糸口
3 編地本体 31 前側編地部(編地本体) 32 後側編地部(編地本体)
4 内部編地
5 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床の少なくとも一方が左右にラッキング可能で、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて、筒状の編地本体と、この編地本体の筒内部に形成され、編地本体よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、上下方向(コース方向)両端部のコースが編地本体と接合されることなく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に接合される内部編地とを並行して編成する編地の編成方法であって、
前記編地本体を針抜きで筒状に編成しながら、
前後一方の針床において、前記内部編地を折り返し編成により編成するのであって、
内部編地は、編幅方向端部の編目のうち少なくとも一方の編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体の編目が係止されている針の間に位置する針を用いて形成して、
内部編地の編目が針床の針に係止されているときに、編地本体を編成するときは、
前後の針床において、編地本体の編目と内部編地の編目とを連結するために用いる針を除いて、内部編地の編目が係止される針に対向する空針を確保し、
針床の針に係止されている内部編地の編目を、編地本体を編成する針床とは反対側の針床に目移しをしておくことを特徴とする編地の編成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の編地の編成方法は、以下のステップを含む編成方法であることを特徴とする、
a) 編地本体を針抜き編成で筒状に編成するステップ、
b) 前記内部編地の編幅方向端部の編目のうち少なくとも一方の編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体の編目が係止されている針の間に位置する針で形成するように、折り返し編成して内部編地の編み出しを行うステップ、
c) 前後一方の針床の針に係止される内部編地の編目を対向する他方の針床の空針に目移しした後、一方の針床で編地本体の編成を行うステップ、
d) 前後他方の針床の針に係止される内部編地の編目を対向する一方の針床の空針に目移しした後、他方の針床で編地本体の編成を行うステップ、
e) 前記内部編地の編幅方向端部の編目のうちステップbの端部の編目と同じウエールの編目を編地本体の編目と連結するように形成し、内部編地の残りの編目を編地本体を編成する針の間に位置する針を用いて形成するように、折り返し編成により内部編地を編成するステップ、
f) 前記ステップc、ステップd、ステップeによる内部編地と編地本体の編成を、内部編地について所定の編成コースが得られるまで繰り返すステップ、
g) 内部編地の最終コースを伏せ目処理するステップ、
h) 編地本体を周回編成していくステップ。
【請求項3】
前記ステップeにおける内部編地の編成は、
一針おきにミスをしながら一方向に編成した後、折り返して、先にミスをした針で編目を形成し、先に編目を形成した針をミスすることにより編地の編成を行うことを特徴とする請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項4】
内部編地の編幅方向一端のウエールを編地本体に接合することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の編地の編成方法。
【請求項5】
内部編地の編幅方向両端部のウエールを編地本体に接合することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の編地の編成方法。
【請求項6】
内部編地を編成する糸は、伸縮性が大きい糸であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の編地の編成方法。
【請求項7】
多数の編針を装着した針床を前後に対向して設けた横編機を使用して無縫製で編成される筒状の編地本体と、この編地本体の筒内部に形成される内部編地とを有し、
内部編地は、編地本体よりも編成コース数および編成ウエール数が少なく、上下方向(コース方向)両端部のコースが編地本体と接合されることなく、編幅方向端部の少なくとも一方のウエールが編地本体に無縫製で接合されていることを特徴とする編地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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