説明

緩み防止治具、建材の接合構造、及び建材の接合施工方法

【課題】 長尺ビスを用いた建材の接合に用いる冶具であって、施工精度を高めることができるとともに、建材が収縮した場合にも長尺ビスの緩みを防止することができる緩み防止冶具を提供する。
【解決手段】 緩み防止冶具は、ビスの頭部と建材との間に保持される緩み防止冶具であって、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部と、曲げ部の一方から延びて、建材に当接されるとともに、ビスを挿入可能な貫通孔を有する固定部と、曲げ部の他方から延びており、ビスが挿入されるとともに、ビスの軸部に当接してビスの打込方向をガイドするガイド溝を有する可動部と、を備え、ビスの軸部が貫通孔及びガイド溝に挿入された状態で、ビスの頭部が可動部に押し付けられて可動部が固定部に接近する方向に移動するとともに、可動部と固定部とが曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスを打ち込んで複数の建材を接合する場合に、ビスの頭部と建材との間に保持されてビスの緩みを防止する緩み防止治具、この緩み防止治具を用いた建材の接合構造、及び建材の接合施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より例えば住宅等の建築において、建材と他の建材との接合に、頭部側にねじが切られていない円筒部と、先端部が木材にねじ込むのに適した尖った鋭角な先端形状を持つねじ部を有する長尺ビスが用いられることがある(例えば特許文献1、特許文献2)。この長尺ビスは、先端のねじ部により抜け方向の力に対して抵抗することができ、建材同士が離反する方向への力に対して強く結合させることができ、結果として、建材を組み立てて構成した構造物の強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295818号公報
【特許文献2】特開2007−327540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような長尺ビスを用いて結合する場合にビスの打ち込み方向がずれると想定している十分な強度を発揮できなくなる。特に建設現場で施工する場合には、必ずしも水平に設置された建材同士を固定するわけではないので、打ち込みの際の施工精度が問題となりやすい。また、建材が温度や乾燥により収縮した場合には、建材同士の接合強度が弱くなる問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、長尺ビスを用いた建材の接合に用いる治具であって、施工精度を高めることができるとともに、建材が収縮した場合にも長尺ビスの緩みを防止することができる緩み防止治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の緩み防止治具は、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部を境界として固定部と可動部とを備え、前記固定部はビスを挿入可能な貫通孔を有し、前記可動部は前記ビスの軸部を打込方向にガイドするガイド溝を有し、前記ビスを建材に打ち込む際に、前記固定部が前記建材に当接されて保持されるとともに前記ビスの前記軸部が前記貫通孔及び前記ガイド溝に挿入された状態で、前記ビスの前記頭部が前記可動部に押し付けられて、前記可動部が前記固定部に接近する方向に移動するとともに、前記可動部と前記固定部とが前記曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢されることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の緩み防止治具は、前記可動部の前記曲げ部と反対側の端部には前記固定部に接近する方向に曲げられた先端曲げ部が形成されることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の緩み防止治具は、前記可動部の中間位置に前記曲げ部と逆方向に曲げられる第2曲げ部が形成されることにより、可動部が折れ曲がった2片を有することを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の緩み防止治具は、前記固定部が少なくとも1以上の山を有する波状に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の建材の接合構造は、皿状の頭部から延びる円柱状の軸部の先端から所定範囲にネジが設けられたビスと、該ビスにより互いに接合される複数の建材と、前記ビスの前記頭部と前記建材との間に保持される緩み防止治具と、を備える建材の固定構造であって、前記緩み防止治具が、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部と、当該曲げ部の一方から延びており、前記建材に当接されるとともに、前記ビスを挿入可能な貫通孔を有する固定部と、前記曲げ部の他方から延びており、前記ビスが挿入されるとともに、ビス打ちのときに当該ビスの軸部に当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝を有する可動部と、を備えており、前記ビスの前記頭部により前記可動部が前記固定部に押し付けられており、前記可動部と前記固定部とが前記曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢されていることを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載の接合施工方法は、皿状の頭部から延びる円柱状の軸部の先端から所定範囲にネジ部が設けられたビスを打ち込んで、複数の建材を接合する建材の接合施工方法であって、前記複数の建材を重ね合わせて保持した状態で、一方の建材に、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部と、当該曲げ部の一方から延びており、前記建材に当接されるとともに、ビスを挿入可能な貫通孔を有する固定部と、前記曲げ部の他方から延びており、前記ビスが挿入されるとともに、当該ビスの軸部に当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝を有する可動部と、を備える緩み防止治具の前記固定部を当接させて保持した後、前記ビスの前記軸部を前記ガイド溝に挿通させつつ、その先端を前記貫通孔の中心に保持し、その後、前記ビスを、その軸部を前記ガイド溝にガイドさせつつ前記一方の建材に打ち込んで貫通させ、前記軸部の先端に設けられた前記ネジ部が他方の建材に締結されることにより、前記複数の建材を接合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の緩み防止治具によると、可動部にビスの軸部が当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝が形成されており、固定部にビスを挿入可能な貫通孔が形成されているので、建材のビスを打ち込む位置に固定部の貫通孔を合わせつつ、固定部を建材に当接させて保持し、ビスの軸部をガイド溝に当接させつつ挿入して、軸部の先端が貫通孔中心に位置するように保持してビスを打ち込むことにより、ビスをより高い精度で適切な方向に打ち込むことができる。また、建材同士を固定した後、緩み防止治具は、ビスの頭部と建材との間で、ビスの頭部が可動部を押し付けられることにより、可動部が固定部に接近する方向に移動するとともに、可動部と固定部とが曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢されることになるので、建材の温度や乾燥による収縮や経年劣化などの原因で、ビスの頭部と建材との間の隙間が大きくなった場合にも、可動部と固定部が互いに離反する方向に移動することで、可動部がビスの頭部に押し付けられるとともに、固定部が建材に押し付けられて、建材の接合強度を維持することができる。
【0013】
請求項2に記載の緩み防止治具によると、可動部の曲げ部と反対側の端部には固定部に接近する方向に曲げられた先端曲げ部が形成されるので、緩み防止治具を、ビスの頭部と建材との間に配置して、可動部を固定部に接するように移動させたときに、曲げ部が弾性変形するとともに、可動部の先端曲げ部も固定部に当接して展開方向に弾性変形する。これにより曲げ部のみ弾性変形する場合に比べて弾性応力が強まり、可動部と固定部とがより大きな力で互いに離反する方向に付勢されることになるので、建材の接合方向に大きな力を加えることができ、建材の接合強度をより確実に維持することができる。
【0014】
請求項3に記載の緩み防止治具によると、可動部の中間部に、曲げ部と逆方向に曲げられる第2曲げ部を有しているので、緩み防止治具を、ビスの頭部と建材との間に配置して、可動部を固定部に接するように移動させたときに、曲げ部がより鋭角になる方向に弾性変形するとともに、第2曲げ部もより鋭角になる方向に弾性変形しするので、曲げ部のみ弾性変形する場合に比べて弾性応力が強まり、可動部と固定部とがより大きな力で互いに離反する方向に付勢されることになるので、可動部がビスの頭部に押し付けられるとともに、固定部が建材に押し付けられて、建材の接合方向により大きな力を加えることができ、建材の接合強度をより確実に維持することができる。
【0015】
請求項4に記載の緩み防止治具によると、固定部が少なくとも1以上の山を有する波状に形成されているので、緩み防止治具を、ビスの頭部と建材との間に配置して、可動部を固定部に接するように移動させたときに、曲げ部がより鋭角になる側に弾性変形するとともに、可動部が固定部に押し付けられて、固定部が平坦になるように弾性変形するので、曲げ部のみ弾性変形する場合に比べて弾性応力が強まり、可動部と固定部とがより大きな力で互いに離反する方向に付勢されることになるので、可動部がビスの頭部に押し付けられるとともに、固定部が建材に押し付けられて、建材の接合方向により大きな力を加えることができ、建材の接合強度をより確実に維持することができる。
【0016】
請求項5に記載の建材の接合構造によると、緩み防止治具の可動部にビスの軸部が当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝が形成されており、固定部にビスを挿入可能な貫通孔が形成されているので、建材のビスを打ち込む位置に固定部の貫通孔を合わせつつ、固定部を建材に当接させて保持し、ビスの軸部をガイド溝に当接させつつ挿入して、軸部の先端が貫通孔中心に位置するようにしてビスを打ち込むことにより、ビスをより高い精度で適切な方向に打ち込むことができる。さらに、建材同士を固定した後、ビスの頭部と建材との間で、緩み防止治具の可動部と固定部とに互いに離反する方向に弾性応力が働くので、建材の温度や乾燥による収縮や経年劣化などの原因で、ビスの頭部と建材との間の隙間が大きくなった場合にも、可動部がビスの頭部に押し付けられるとともに、固定部が建材に押し付けられて、建材の接合強度を維持することができる。
【0017】
請求項6に記載の接合施工方法によると、固定部を建材に当接させて保持した後、ビスの軸部をガイド溝に挿通させつつ、その先端を貫通孔の中心に保持し、その後、ビスをその軸部をガイド溝にガイドさせつつ一方の建材に打ち込んで貫通させ、軸部の先端に設けられた前記ネジ部が他方の建材に締結されるようにするので、ビスを高い精度で適切な方向に打ち込むことができる。また、ビスを打ち込んだ後は、ビスの頭部と建材との間で、緩み防止治具の可動部と固定部とに互いに離反する方向に弾性応力が働くので、建材の温度や乾燥による収縮や経年劣化などの原因で、ビスの頭部と建材との間の隙間が大きくなった場合にも、可動部がビスの頭部に押し付けられるとともに、固定部が建材に押し付けられて、建材の接合強度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】緩み防止治具の構成を示す斜視図。
【図2】緩み防止治具の構成を示す断面図。
【図3】緩み防止治具の構成を示す展開図。
【図4】緩み防止治具を用いて建材にビスを打ち込む状態を説明する図。
【図5】緩み防止治具を用いて建材にビスを打ち込んだ状態を説明する図。
【図6】建材が収縮した状態の建材の接合構造における緩み防止治具の作用を説明する図。
【図7】建材として、垂木、棟木、母屋、及び軒桁を用いた建材の接合構造を示す図。
【図8】緩み防止治具の変形例を用いて建材を接合する状態を説明する図。
【図9】緩み防止治具の別の変形例を用いて建材を接合する状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の緩み防止治具1、この緩み防止治具1を用いた建材の接合構造2、及び接合施工方法の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。緩み防止治具1は、図3に示すように幅が38mmで長さが120mmの矩形平板状の1枚のバネ鋼を塑性変形させて形成したものであって、図1及び図2に示すように、鋭角に塑性変形させた曲げ部3と、曲げ部3の一方側に延びる固定部4と、曲げ部3の他方側に延びる可動部5とを備えている。なお、材質として高い弾性を有するバネ鋼が好ましいが、これに限定されるものではなく、他の弾性を有する金属により形成されたものであってもよい。
【0020】
曲げ部3は緩み防止治具1を展開した場合に一端側から長さ方向の50mmの位置であって他端側から70mmの位置に約48度の角度で塑性変形されており、この曲げ部3の一端側に固定部4が形成されるとともに、他端側に可動部5が形成される。この曲げ部3の側縁には切り欠き6が形成されており、固定部4及び可動部5に対して加わる互いに接近しようとする力がこの曲げ部3に集中するように形成している。固定部4は、その幅方向の中央であって、先端から曲げ部3側に10mmの位置を中心点として直径9mmの貫通孔7が形成されている。またこの固定部4の先端の中央と、側縁の先端から10mmの位置とには墨線に合わせるV字状の位置合わせ溝8が形成されている。可動部5は、幅方向の中央の先端から10mmの位置から20mmに渡って幅6mmのガイド溝9が形成されている。このガイド溝9は端部がそれぞれ直径6mmの半円状に形成されている。また、可動部5には先端から10mmの位置に先端曲げ部13が形成されており、約132度の角度で固定部4に接近する方向に曲げられて形成されている。そして、ガイド溝9の先端側の端部9aに形成された半円の中心点と貫通孔7の中心点とを結ぶ線は、固定部4に対して垂直になるように形成されている。
【0021】
なお、曲げ部3の形状は尖るように折り曲げられたものであっても、円弧状に湾曲されたものであってもよい。また、曲げ部3の角度、固定部4及び可動部5の寸法は、上述の例に限定されるものではなく、建材10に打ち込まれるビス11の方向をガイドすることができ、打ち込まれたときに弾性変形してビス11の頭部11aと建材10とが離反する方向に弾性応力が作用するものであれば、角度及び寸法を限定するものではない。
【0022】
ビス11は、図4に示すように、皿状の頭部11aが形成され、この頭部11aから長さ130mmで直径6mmの先端が尖った軸部11bが延びており、この軸部11bの先端から40mmにはネジが形成されたネジ部11cが設けられている。また、本実施形態においては、例えば図7に示すように、互いに接合される一方の建材10として屋根の勾配を形成する垂木10aを用い、他方の建材10として、建物の構造躯体に水平に架設される棟木10b、母屋10c、又は軒桁10dを用いる。ビス11の先端にネジ部11cが形成されていることによりビス11と棟木10b、母屋10c、又は軒桁10dなどとのビス11の引き抜き方向に対する接合強度を高めることができ、屋根を巻き上げようとする風によって垂木10aが棟木10b、母屋10c、又は軒桁10dから外れることを防ぐことができる。また、ネジ部11cはネジ山を形成するために高い硬度の材料で形成されており、釘に比べてせん断力が弱いが、ビス11のネジ部11cと頭部11aとの間に形成されたネジが形成されていない円柱状の部分をネジ部11cよりも硬度の低い材料で形成することにより、せん断力に対して高い応力を発揮することができ、垂木10aと、棟木10b、母屋10c、又は軒桁10dとがずれる方向に力が加わった場合にも、せん断されることなく接合強度を保つことができる。
【0023】
なお、本発明のビス11の寸法は上記に限定されるものではなく、また、本発明の建材10は、垂木10a、棟木10b、母屋10c、及び軒桁10dに限定されるものではなく、建築物を構成する種々の建材の接合構造2に用いることができる。なお、本発明は、建材10がビス11による接合に適しており乾燥収縮しやすい木材である場合に顕著な効果を発揮するが、建材10は木材に限定されるものではなく、金属材料や樹脂材料であっても良い。
【0024】
本実施形態のビス11及び緩み防止治具1を用いて、建材10としての垂木10aと軒桁10dとを接合する際には、図示しないが垂木10aのビス打ち込み面12に墨打を行い、ビス11を打ち込む位置に墨線を引く。次に、緩み防止治具1の固定部4を墨線に従って、ビス打ち込み面12に当接させる。具体的には、固定部4の先端及び側縁に形成された位置合わせ溝8を墨線の位置に合わせて、固定部4を垂木10aのビス打ち込み面12に当接させた状態に保持する。そして次に、図4(a)に示すように、ビス11の軸部11bを可動部5のガイド溝9の先端側の端部9aに当接させた状態で挿通させるとともに、ビス11の先端が貫通孔7の中心に来るようにビス11を保持する。このとき、緩み防止治具1は、ガイド溝9の先端側の端部9aに形成された半円の中心点と貫通孔7の中心点とを結ぶ線が固定部4に対して垂直になるように形成されているので、この線上に配置されたビス11も固定部4に対して垂直に保持される。そして固定部4は、垂木10aのビス打ち込み面12に当接させた状態に保持されているので、ビス11は垂木10aのビス打ち込み面12に垂直に保持される。
【0025】
そして、次に図4(b)に示すように、例えばハンマーでビス11の頭部11aに打撃を加えて、ビス11を垂木10aに打ち込む。ビス11は緩み防止治具1により垂木10aのビス打ち込み面12に対して垂直に保持されているので、可動部5のガイド溝9にガイドされて、ビス11を垂木10aに対して垂直に打ち込むことができる。そして、さらにビス11を垂木10aに打ち込むと、ビス11の頭部11aに緩み防止治具1の可動部5が押されて、図5(c)に示すように、緩み防止治具1の曲げ部3が弾性変形しながら、ビス11が垂木10aを貫通し、ビス11の先端に形成されたネジ部11cが軒桁10dに没入する。また、このとき可動部5の先端に形成された先端曲げ部13も垂木10aのビス打ち込み面12に当接して展開方向に弾性変形する。そして、図5(d)に示すように、緩み防止治具1の可動部5と固定部4とが当接するまで、ビス11の頭部11aをさらに打ち付けて、建材の接合構造2を完成させる。
【0026】
このように、本実施形態の緩み防止治具1を用いると、傾斜して設けられている垂木10aにビス11を打ち込む場合にも、垂木10aのビス打ち込み面12に対して垂直にビス11を打ち込むことができ、施工者の技量に関わらず高い施工精度で建材10同士を接合することができる。なお、本実施形態における緩み防止治具1は、ビス打ち込み面12に対して垂直にビス11を打ち込むものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、可動部5に形成されるガイド溝9の位置を変えることで、ビス打ち込み面12に対して所望の角度でビス11を打ち込むことができる緩み防止治具1を形成することができる。
【0027】
例えば木材で形成された垂木10aは、図6に示すように、乾燥などにより収縮することがある。ビス11の軸部11bの先端に形成されたネジ部11cは軒桁10dに没入しており、ビス11と軒桁10dとは強固に接合しているので、垂木10aが乾燥収縮してもビス11の頭部11aと軒桁10dとの間の間隔は変化しないため、垂木10aとビス11の頭部11aとの間に間隙が生まれる。そして、垂木10aとビス11の頭部11aとの間には緩み防止治具1が設置されており、この緩み防止治具1は曲げ部3の弾性応力により、固定部4と可動部5とが互いに離反する方向に付勢されているので、ビス11の頭部11aが可動部5に押圧されるとともに、垂木10aが固定部4に押圧されて軒桁10dとの接合強度を維持することができる。
【0028】
なお、緩み防止治具1は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、緩み防止治具1の変形例として、図8に示すように、固定部4aが波状に形成されたものであってもよい。このように形成したとしても、上述の実施形態と同様に、図8(a)に示すように、建材10にビス11を打ち込む際には、可動部5に形成されたガイド溝9がガイドの役割を果たして、高い精度でビス11を打ち込み面に対して垂直に打ち込むことができる。また、図8(b)に示すように、ビス11を建材10に打ち込んだときには、緩み防止治具1の曲げ部3が折り曲げ方向に弾性変形するとともに、先端曲げ部13が展開方向に弾性変形する。さらに、ビス11が打ち込まれると、図8(c)に示すように、波状の固定部4aが弾性変形して平坦な状態になる。このように、ビス11が建材10に打ち込まれる際に緩み防止治具1の曲げ部3、先端曲げ部13、及び波状の固定部4aが弾性変形し、ビス11の頭部11a及び建材10に対して互いに離反する方向に付勢するので、建材10の乾燥収縮したような場合でも、建材10同士の接合強度を維持することができる。
【0029】
また、緩み防止治具1の別の変形例として、図9に示すように、可動部5aの中間位置に曲げ部3と逆方向に曲げられる第2曲げ部14が形成され、緩み防止治具1が、側面視Z字状に形成されたものであってもよい。この実施形態の可動部5aは、第2曲げ部14を挟んで、それぞれの面にビス11を挿入できるとともに、ビス11を打ち込み方向にガイドするガイド溝9が形成されている。このように形成すると、ビス11を建材10に打ち込んだ際に曲げ部3及び第2曲げ部14がそれぞれ弾性変形するので、ビス11の頭部11aと建材10とを互いに離反する方向により強い力で付勢することができる。これにより建材10の乾燥収縮したような場合でも建材10同士の接合強度をより強力に維持することができる。なお、曲げ部3はさらに増やすことができ、これにより建材10同士の接合強度をより高めることもできる。
【0030】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る緩み防止治具1、建材の接合構造2、及び接合施工方法は、建築物の施工の際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 緩み防止治具
2 建材の接合構造
3 曲げ部
4 固定部
5 可動部
7 貫通孔
9 ガイド溝
10 建材
11 ビス
11a 頭部
11b 軸部
11c ネジ部
13 先端曲げ部
14 第2曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部を境界として固定部と可動部とを備え、
前記固定部はビスを挿入可能な貫通孔を有し、前記可動部は前記ビスの軸部を打込方向にガイドするガイド溝を有し、
前記ビスを建材に打ち込む際に、前記固定部が前記建材に当接されて保持されるとともに前記ビスの前記軸部が前記貫通孔及び前記ガイド溝に挿入された状態で、前記ビスの頭部が前記可動部に押し付けられて、前記可動部が前記固定部に接近する方向に移動するとともに、前記可動部と前記固定部とが前記曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢されることを特徴とする緩み防止治具。
【請求項2】
前記可動部の前記曲げ部と反対側の端部には前記固定部に接近する方向に曲げられた先端曲げ部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の緩み防止治具。
【請求項3】
前記可動部の中間位置において前記曲げ部と逆方向に曲げられる第2曲げ部が形成されることにより、可動部が折れ曲がった2片を有することを特徴とする請求項1に記載の緩み防止治具。
【請求項4】
前記固定部が少なくとも1以上の山を有する波状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の緩み防止治具。
【請求項5】
皿状の頭部から延びる円柱状の軸部の先端から所定範囲にネジが設けられたビスと、
該ビスにより互いに接合される複数の建材と、
前記ビスの前記頭部と前記建材との間に保持される緩み防止治具と、を備える建材の固定構造であって、
前記緩み防止治具が、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部と、当該曲げ部の一方から延びており、前記建材に当接されるとともに、前記ビスを挿入可能な貫通孔を有する固定部と、前記曲げ部の他方から延びており、前記ビスが挿入されるとともに、ビス打ちのときに当該ビスの軸部に当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝を有する可動部と、を備えており、
前記ビスの前記頭部により前記可動部が前記固定部に押し付けられており、前記可動部と前記固定部とが前記曲げ部の弾性応力により互いに離反する方向に付勢されていることを特徴とする建材の接合構造。
【請求項6】
皿状の頭部から延びる円柱状の軸部の先端から所定範囲にネジ部が設けられたビスを打ち込んで、複数の建材を接合する建材の接合施工方法であって、
前記複数の建材を重ね合わせて保持した状態で、
一方の建材に、弾性を有する板状金属材料を鋭角に塑性変形させた曲げ部と、当該曲げ部の一方から延びており、前記建材に当接されるとともに、ビスを挿入可能な貫通孔を有する固定部と、前記曲げ部の他方から延びており、前記ビスが挿入されるとともに、当該ビスの軸部に当接して当該ビスの打込方向をガイドするガイド溝を有する可動部と、を備える緩み防止治具の前記固定部を当接させて保持した後、
前記ビスの前記軸部を前記ガイド溝に挿通させつつ、その先端を前記貫通孔の中心に保持し、
その後、前記ビスを、その軸部を前記ガイド溝にガイドさせつつ前記一方の建材に打ち込んで貫通させ、前記軸部の先端に設けられた前記ネジ部が他方の建材に締結されることにより、前記複数の建材を接合することを特徴とする建材の接合施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−231800(P2011−231800A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100118(P2010−100118)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】