説明

練歯磨剤組成物の製造方法

【解決手段】粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤及び水を含有してなる練歯磨剤組成物を、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行い、かつ第3工程の発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを使用して製造する。
【効果】本発明によれば、使用時のべたつき感がない上、口腔内分散性に優れ、かつ、製造過程でのダマの形成がなく練り肌が滑らかで、成形性の経時安定性が良好であり、保存時に析出物が生じることのない保存安定性に優れた練歯磨剤組成物を、工業的に有利に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時のべたつき感がなく、口腔内分散性に優れ、かつ製造過程でダマが形成されることがなく練り肌が滑らかで、成形性の経時安定性が良好であり、保存時に析出物もなく保存安定性の良好な練歯磨剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
練歯磨剤組成物の基本的な配合成分は、発泡剤、粘結剤、研磨剤、湿潤剤、水等である。ここで、練歯磨剤組成物には、良好な成形性を経時で安定に保つためにカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、グアガム、ゼラチン、キサンタンガム等の粘結剤が配合されるが、一般的に用いられる粘結剤は、水溶性高分子であることから粘稠な性質を持ち、このため練歯磨剤組成物が使用時にべたついたり、口腔内分散性に劣るという問題があった。また、成形性の経時安定性を向上させる目的で粘結剤の配合量を多くすると、使用時のべたつきがひどくなると共に口腔内分散性が悪くなり、逆に粘結剤の配合量を少なくすると、使用時のべたつきや口腔内の分散性は改善できるものの、成形性の経時安定性が低下してしまい、練歯磨剤組成物において、相反する上記課題を同時に解決することは困難であった。
【0003】
粘稠な水溶性高分子に特有な使用時のべたつき、口腔内分散性の悪さを改善しつつ成形性の経時安定性を確保するひとつの手段として、製剤にアルギン酸ゲル等のゲルを含有させれば、水溶性高分子をゲル化させて構造が変化することで水溶性高分子に特有な粘稠さに由来するべたつきや口腔内分散性の悪さを回避でき、また、より固体に近い性質であるゲルを含有することにより粘結剤の配合量を多くせずに成形性の経時安定性を保持でき、上記課題を改善できると考えられる。
【0004】
アルギン酸ゲルを使用した製剤の製造方法としては、種々の提案がある。具体的には、皮膜でコーティングされた1単位用剤形の口腔用製品として、アルギン酸ナトリウム、香味料、保湿剤、水及び植物油を含むアルギン酸ゲル状混合物を1単位用量型の形態に賦形し、カルシウムイオンを含む水性凝固浴中へ浸漬してゲル化し、乾燥することなく固化させて皮膜を形成して製剤化することで、これを口中で噛んだときに固形状からペースト状に変わる1単位用剤型の練歯磨の製造法(特許文献1;特開昭62−223109号公報)、徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物の表面にゲル化剤のアルギン酸とカルシウム塩の粉末を散布しながら水溶性の結合剤でコーティングし造粒する医薬組成物の製造方法(特許文献2;特開2003−34632号公報)などが提案されている。
しかし、上記方法は、アルギン酸ゲルで皮膜を形成させる技術であり、均一なペースト状の練歯磨剤組成物の製造には適用し難く、上記課題の解決策とはならない。
【0005】
更に、特許文献3(特開2005−263948号公報)には、界面活性剤の存在下、水性溶液中に油溶性物質及びカルシウム成分を分散させた後、増粘安定剤を加える油溶性物質含有粉末の製造方法が提案されているが、この方法は粉末を製造する方法であって、アルギン酸ゲルをペースト状の練歯磨剤組成物に含有させるための製造法としては適用できない。
【0006】
一方、練歯磨剤の製造方法としては、例えば、下記工程を含む方法(特許文献4;特開平11−171743号公報)が提案されている。
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に香料を混合する工程
(3)前記香料を混合した膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(4)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
また、この他にも種々の練歯磨剤の製造方法が開示されている(特許文献5;特開平11−171744号公報、特許文献6;特開平11−171745号公報、特許文献7;特開平11−171747号公報、特許文献8;特開2000−75756号公報、特許文献9;特開平6−72833号公報)。
しかしながら、上記特許文献5〜9には、練歯磨剤にアルギン酸ゲルを含有させることも、その製造方法も示されていない。
【0007】
特許文献10(特開2005−104966号公報)には、寒天、ジュランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれるゲル化剤を水溶性溶媒に溶解した溶解液を酸性物質や金属塩等の架橋剤の添加又は架橋剤と強制冷却とによりゲル化しながら剪断する工程を行うことで、平均粒子径が0.01μm以上1,000μm未満のミクロゲル粒子を含有する、25℃における粘度が1〜5,000mPa・sである口腔用組成物を製造する方法が提案されている。
【0008】
この特許文献10では、ゲル化剤を直接水等の水溶性溶媒に溶解して水溶液を得、この溶解液を架橋剤の添加又は架橋剤の添加と強制冷却とによりゲル化しながら2m/s以上の剪断力で剪断して破砕することで、流動性と降伏値をもった上記ミクロゲル粒子を含有する口腔用組成物が製造できることが記載されている。しかし、この口腔用組成物は、スプレー式容器等に充填され、霧状に噴霧して用いられるもので、粘度が1〜5,000mPa・s(0.001〜5Pa・s)であり、一般的に25℃における粘度が20,000mPa・s(20Pa・s)以上であるペースト状の練歯磨剤に比較して低粘度で形状も相違する。このような低粘度の口腔用組成物においては、上記方法でゲルを含有させることが可能であるが、この方法を採用してペースト状の練歯磨剤組成物にアルギン酸ゲルを含有させると、製造過程で著しいダマが形成し、成形性の経時安定性も悪くなってしまうという問題が生じ、上記課題を解決することは困難である。
【0009】
このように、従来の技術では、ペースト状の練歯磨剤組成物にアルギン酸ゲルを均一かつ安定に分散させることは難しく、練歯磨剤組成物における上記した使用感及び口腔内分散性と成形性の経時安定性という、相反する課題を解決することは困難であった。更に、練歯磨剤組成物にカルシウム塩を含有させた場合、練歯磨剤組成物に発泡剤として汎用されているアルキル硫酸ナトリウムを使用した場合、保存時に析出物が生じる問題もあり、高品質での製剤化が難しい。
【0010】
従って、上記した使用感及び口腔内分散性と成形性の経時安定性という、相反する課題を解決して高品質の練歯磨剤組成物を得ることができる技術の開発が望まれる。
【0011】
【特許文献1】特開昭62−223109号公報
【特許文献2】特開2003−34632号公報
【特許文献3】特開2005−263948号公報
【特許文献4】特開平11−171743号公報
【特許文献5】特開平11−171744号公報
【特許文献6】特開平11−171745号公報
【特許文献7】特開平11−171747号公報
【特許文献8】特開2000−75756号公報
【特許文献9】特開平06−72833号公報
【特許文献10】特開2005−104966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、使用時のべたつき感がなく、口腔内分散性に優れ、かつ、製造過程でダマの形成がなく練り外観が滑らかで、成形性の経時安定性が良好であり、保存時に析出物がほとんどない保存安定性に優れた練歯磨剤組成物を効率よく製造できる練歯磨剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤及び水を含有してなる練歯磨剤組成物を、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行い、かつ第3工程で発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを混合することにより、アルギン酸ナトリウムがクエン酸カルシウムの添加によって架橋して形成されたアルギン酸ゲルを含む練歯磨剤組成物が得られ、かかる練歯磨剤組成物が、使用時のべたつき感がほとんどない上、口腔内分散性に優れ、かつ製造過程でダマが形成することがなく滑らかな練り外観で、成形性の経時安定性が良好であり、長期保存時にアルキル硫酸塩等の析出物が生じることがなく、保存安定性も良好であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
本発明の製造方法では、上記(1)〜(3)の工程を行って練歯磨剤組成物を製造する際、前記第1工程で、アルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行うことにより、アルギン酸ナトリウムが膨潤水溶液中に均一に分散され、引き続いてこの膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを加えることでクエン酸カルシウムも均一に分散して、アルギン酸ナトリウムが速やかに架橋し、アルギン酸ナトリウムのダマが形成されることなくアルギン酸ゲルが形成され、均一かつ安定に分散し、膨潤水溶液全体が均一にゲル化する。その後、このゲルに研磨剤を混練し、発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを加えることで、上記ゲル中に研磨剤及びアルキル硫酸ナトリウムも均一に分散し、また、ゲル化させた後に研磨剤を加え、最後にアルキル硫酸ナトリウムを加えて混合することで、カルシウムイオンとアルキル硫酸ナトリウムが接触して不溶性のアルキル硫酸カルシウムが形成されることを回避することで、保存時のアルキル硫酸塩の析出も防止できる。
【0015】
なお、特許文献10では、ゲル化剤を直接水等の水溶性溶媒に溶解して水溶液を得、この溶解液を架橋剤の添加又は架橋剤の添加と強制冷却とによりゲル化しながら2m/s以上の剪断力で剪断して破砕することで、ミクロゲル粒子を含有する粘度が1〜5,000mPa・s(0.001〜5Pa・s)の口腔用組成物を製造しているが、この方法を採用してペースト状の練歯磨剤組成物にアルギン酸ゲルを含有させると、製造過程で著しいダマが形成し、成形性の経時安定性も悪くなってしまうという問題が生じた。このようにペースト状の練歯磨剤組成物では上記方法でダマ形成や安定性低下が生じるのは、アルギン酸ナトリウムは直接水等の水溶性溶媒に溶解するには85℃以上に加熱することが必須であり、この温度条件ではゲル化のコントロールが困難となるためダマ形成が起こり易くなり、また強制冷却した場合もアルギン酸溶液の粘度が温度条件により著しく変化することから一定の条件で撹拌することが難しくなるため、ダマ形成が起こり易くなること、更にゲル化しながら2m/s以上の剪断力で剪断すると、ゲルがミクロゲル粒子にまで破砕されてしまうために練歯磨剤に必要な均一なゲルが形成できず、成形性の経時安定性も悪くなってしまうことが原因であることがわかった。
これに対して、本発明では、上記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行うこと、更に第3工程の発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを使用することにより、85℃以上に加熱しなくてもアルギン酸ナトリウムを均一に分散した膨潤水溶液を得ることができ、加熱や強制冷却によりアルギン酸溶液の粘度が左右されて変化することがないので、一定の条件で撹拌でき、更に上記膨潤水溶液にクエン酸カルシウムが均一に分散するので、ゲル化をコントロールできることによって、上記問題を解決でき、練歯磨剤組成物を製造する際に、均一かつ安定にアルギン酸ゲルを形成させることができ、練歯磨剤組成物の製造過程でダマが生成することがなくアルギン酸ゲルが均一かつ安定に形成され、滑らかな練り肌で、長期保存時にアルキル硫酸塩等の析出物が生じることもない練歯磨剤組成物が得られ、かかる練歯磨剤組成物は、優れた使用性及び口腔内分散性を有し、粘結剤の配合量を増量しなくても成形性を経時で安定に保持できる。従って、本発明によれば、使用時のべとつき感及び口腔内分散性と成形性の経時安定性という、相反する特性のいずれの特性にも優れた練歯磨剤組成物を得ることができる。
【0016】
従って、本発明は、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤及び水を含有してなる練歯磨剤組成物を、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行い、かつ第3工程で発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを混合することを特徴とする練歯磨剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用時のべたつき感がない上、口腔内分散性に優れ、かつ、製造過程でのダマの形成がなく練り肌が滑らかで、成形性の経時安定性が良好であり、保存時に析出物が生じることのない保存安定性に優れた練歯磨剤組成物を、工業的に有利に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について更に詳細に説明すると、本発明にかかわる練歯磨剤組成物は、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤及び水を含有してなる練歯磨剤組成物を、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行い、かつ第3工程で発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを混合することを特徴とするもので、アルギン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、湿潤剤、研磨剤、発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウム、及び水等を含有してなる。
【0019】
[アルギン酸ナトリウム]
アルギン酸ナトリウムとしては、アルギン酸ナトリウムの1質量%水溶液の粘度が20〜1,100mPa・s、とりわけ80〜400mPa・sのものが好適である。粘度が20mPa・s未満では、練歯磨剤として成形性の経時安定性が確保できないことがあり、1,100mPa・sを超えると製造工程においてダマが形成する場合がある。
なお、上記粘度は、BM型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、20℃、測定時間1分による値である(以下、同じ)。
【0020】
このようなアルギン酸ナトリウムとしては、例えば株式会社キミカ製のキミカアルギンIシリーズが挙げられ、特にキミカアルギンI−1(1%水溶液の粘度:80〜200mPa・s)、キミカアルギンI−2(1%水溶液の粘度:250〜350mPa・s)、キミカアルギンI−3(1%水溶液の粘度:300〜400mPa・s)等、とりわけ練歯磨剤としての成形性の経時安定性と製造工程中でのダマの形成し難さの点から、キミカアルギンI−2が好適である。
【0021】
アルギン酸ナトリウムの配合量は、組成物中0.2〜5%(質量%、以下同様。)、特に0.5〜2%が好ましい。0.2%未満では成形性の経時安定性が確保できず、5%を超えると満足に分散せず、製造過程でダマが形成されてしまう場合がある。
【0022】
[クエン酸カルシウム]
クエン酸カルシウムは、アルギン酸ナトリウムを架橋させてゲルを形成する架橋剤として作用するもので、本発明では、架橋剤としてクエン酸カルシウムを使用することが必須である。クエン酸カルシウムは、水和物、無水物のいずれであってもよく、例えば関東化学株式会社製のクエン酸カルシウム・四水和物、磐田化学工業株式会社製のスーパーコロイダル等の市販品を用いることができる。
【0023】
クエン酸カルシウムの配合量は、アルギン酸ナトリウムの含有量に応じて調整することが好ましいが、組成物全体に対してクエン酸カルシウム・四水和物として0.1〜3%、特に0.2〜1%が好ましい。0.1%未満では成形性の経時安定性が確保できず、3%を超えると満足に分散せず、製造過程でダマが形成されてしまう場合がある。
【0024】
[湿潤剤]
湿潤剤としては、例えばソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の多価アルコール、糖アルコールなどの1種又は2種以上を配合できる。
【0025】
湿潤剤の配合量は、組成物全体の20〜60%、特に30〜50%が好ましい。20%未満ではアルギン酸ナトリウム等の混合、分散が困難となって製造工程中にダマが形成される場合があり、60%を超えると使用時にべたつきが生じることがある。
【0026】
[研磨剤]
研磨剤としては、例えば沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
【0027】
研磨剤の配合量は、組成物全体の2〜50%、特に10〜40%が望ましく、2%未満では成形性の経時安定性が確保できない場合があり、50%を超えると製造工程中にダマが形成される場合がある。
【0028】
発泡剤としては、アルキル硫酸ナトリウムが配合され、具体的には、カプリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等の1種又は2種以上を使用できるが、特にラウリル硫酸ナトリウムが好適である。
アルキル硫酸ナトリウムとしては、例えば東邦化学工業株式会社製のラウリル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOL SLSなどの市販品を使用できる。
【0029】
アルキル硫酸ナトリウムの配合量は、組成物中0.1〜3%、特に0.2〜1.5%が好ましく、0.1%未満では口腔内分散性が悪くなる場合があり、3%を超えると保存時にアルキル硫酸塩の析出が起こる場合がある。
【0030】
[水]
水は、脱イオン水、蒸留水、超純水などを使用でき、その配合量は、組成物中20〜45%が好ましい。配合量が20%未満では配合成分の混合、分散が困難となり、また、45%を超えると研磨剤の均一混練に長時間を要し、いずれの場合も製造工程中にダマが形成される場合がある。
【0031】
更に、本発明では、上記成分に加えて、必要に応じてその他の任意成分を本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。具体的には、アルキル硫酸ナトリウム以外の発泡剤、アルギン酸ナトリウム以外の粘結剤、甘味剤、防腐剤、香料、着色料、薬効成分、pH調整剤等を配合できる。
【0032】
発泡剤としては、アルキル硫酸ナトリウムに加えて、他のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を本発明の効果を妨げない範囲で配合し得る。他のアニオン性界面活性剤としては、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のエーテル型の界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類などが挙げられる。両性界面活性剤としては酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。これら他の界面活性剤の配合量は、通常0〜2%であり、アルキル硫酸ナトリウムとの合計配合量は、組成物全体の0.3〜4.5%が望ましい。
【0033】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウムに加えて、本発明の効果を妨げない範囲で他の粘結剤を配合してもよい。具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カラギーナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム等のガム類、ポリビニルアルコール、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム等のカルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の有機系粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。なお、本発明の効果である使用時のべたつき感のなさ、優れた口腔内分散性を十分確保するには、他の粘結剤を配合しないか、あるいは配合しても少量とすることが好ましく、上記した他の粘結剤の配合量は、通常0〜2%、特に0〜0.5%が好適である。
【0034】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0035】
香料成分としては、例えばペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分溜、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1.2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、練歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、これらを単独で又は組み合わせ、更に必要に応じてエチルアルコールに溶解分散して使用することが好ましい。
【0036】
着色料としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等を挙げることができる。
【0037】
薬効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロリン酸などのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びリンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩などを挙げることができる。
【0039】
なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0040】
本発明にかかわる練歯磨剤組成物は、アルギン酸ゲルを含むものであり、その25℃における粘度が好ましくは20〜200Pa・s、より好ましくは30〜120Pa・sである。なお、上記粘度は、BM型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.7、20回転、25℃、測定時間3分による測定値である。
【0041】
[製造方法]
本発明の練歯磨剤組成物の製造方法は、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程で
(1−1)アルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製する工程、
(1−2)次いで、前記膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させる工程
を行い、その後に第2工程を行い、更に第3工程で発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを混合する。
【0042】
上記第1−1工程は、アルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製するものである。このような工程を行って、アルギン酸ナトリウム及び湿潤剤を混合した混合液を調製し、この混合液を水と水溶解性成分及び/又は水分散性成分を含む混合液と混合して膨潤水溶液を調製することにより、膨潤水溶液中にアルギン酸ナトリウムを短時間で均一に分散でき、引き続いて次の1−2工程で架橋剤としてクエン酸カルシウムを添加することで、上記膨潤水溶液中にクエン酸カルシウムが均一に分散して、アルギン酸ナトリウムが速やかに架橋し、アルギン酸ナトリウムのダマが形成されることなくゲル化し、安定した成形性の経時安定性が得られる。この場合、アルギン酸ナトリウム及び湿潤剤を混合した混合液と、水溶解性成分及び/又は水分散性成分と水との混合液とを別々に調製し、その後、両者を混合して膨潤水溶液を調製することができる。
【0043】
上記第1−1工程においては、アルギン酸ナトリウムと湿潤剤との混合液に、更に、任意成分であるアルギン酸ナトリウム以外の他の粘結剤を加えても良い。なお、他の粘結剤は、本発明の効果を妨げない範囲が望ましく、その配合量は、組成物全体の0〜2%、特に0〜0.5%が好ましい。
【0044】
上記第1−1工程は、例えばパドル翼を備えた混合槽、ユニバーサルミキサー等を使用して行うことができる。この場合、アルギン酸ナトリウムと湿潤剤の混合液と、水溶解性及び/又は水分散性成分と水との混合液とを別々に調製し、両者を混合して膨潤水溶液を製造する際に同じ配合槽を使用すれば、より短時間で均一に混合分散できる。
【0045】
次に、得られた膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加し、分散させる(第1−2工程)。このように上記第1−1工程で膨潤水溶液を調製後に、引き続いてクエン酸カルシウムを加えることで、アルギン酸ナトリウムが分散した膨潤水溶液中にクエン酸カルシウムが均一に分散し、クエン酸カルシウムのカルシウム塩によりアルギン酸ナトリウムが架橋してゲル化するもので、この際、ダマが形成されることなく、アルギン酸ゲルが均一かつ安定に分散し、上記膨潤水溶液が均一にゲル化する。第1−1工程でクエン酸カルシウムを加えて混合液を調製したり、あるいは水にクエン酸カルシウムを加え、膨潤水溶液を調製したのでは、クエン酸カルシウムが均一に分散せず、ゲル化の際にダマが形成されてしまい、均一なゲルが得られない。なお、第2工程で研磨剤を添加した後にクエン酸カルシウムを加え、第3工程を行った場合は、アルギン酸ナトリウムのゲル化のコントロールが困難となり、第3工程においてダマが形成して、不均一となるうえ、カルシウムイオンと次工程である第3工程で添加されるアルキル硫酸ナトリウムとが直接接触して不溶性のアルキル硫酸カルシウムが形成してしまい、析出の原因となってしまう。第3工程でアルキル硫酸ナトリウムを添加後にクエン酸カルシウムを加えたのでは、カルシウムイオンとアルキル硫酸ナトリウムとが直接接触して不溶性のアルキル硫酸カルシウムが形成してしまい、保存時の析出の原因となってしまう。
【0046】
上記第1−2工程は、例えばパドル翼を備えた混合槽、ユニバーサルミキサー等、一般的な撹拌装置を使用して行うことができ、クエン酸カルシウムの添加方法は、手投入又はホッパーを用いて投入して撹拌することができる。また、膨潤水溶液を製造する際に同じ配合槽を使用すれば、より短時間で均一に混合分散できる。混合撹拌の条件は、使用する撹拌装置にもよるが、剪断力は2m/s未満が望ましい。2m/s以上では、アルギン酸ゲルが破砕されて、練歯磨剤に必要な均一なゲルが形成できず成形性の経時安定性が悪くなってしまう。
【0047】
更に、本発明においては、任意成分として香料を添加できるが、香料の添加は、クエン酸カルシウムを添加した後、すなわち上記第1工程後、第2工程を行う前に行うことが好ましい。第2工程で研磨剤を混練する前に香料を添加することにより、香料の消泡効果により脱泡し易くなる上、香り立ちを改善することができる。研磨剤を添加後に香料を入れると、香料(多くの香料成分は疎水性)の一部が液に均一に分散される前に、固体である研磨剤の表面に過剰に吸着されてしまい、発泡し易くなったり、香り立ちが落ちてしまうおそれがある。
【0048】
第2工程では、前記クエン酸カルシウムを分散してアルギン酸ゲルが形成された膨潤水溶液に研磨剤を添加して混練する。第4工程を第5工程のアルキル硫酸ナトリウムの添加工程前に行うことによって、第3工程でのアルキル硫酸ナトリウムの配合によって、界面張力が下がったところに研磨剤の持ち込み空気が導入されることがなくなり、前記持ち込み空気により必要以上に発泡し易くなることを防止できる。
【0049】
第2工程での研磨剤の添加は、例えば上記ゲルを含む膨潤水溶液をニーダーに移して研磨剤を添加する方法を採用することが好適である。
【0050】
更に、本発明においては、有効成分を添加する際は、有効成分の添加を研磨剤添加混合後、即ち、上記第2工程後、第3工程の前に行うことが望ましく、これによって分解し易い有効成分についても過度の剪断力による悪影響を防止でき、かつ次工程のアルキル硫酸ナトリウムと混合することでより均一に混合することができる。
【0051】
次の第3工程では、研磨剤を混練した混練物にアルキル硫酸ナトリウムを混合する。この工程も、第2工程と同様にニーダーを用いて行うことができる。
【0052】
本発明においては、上記第2工程の研磨剤混練物及び第3工程のアルキル硫酸ナトリウム添加混練物のいずれか一方又は双方、好ましくは双方を減圧脱泡することが推奨される。この場合、研磨剤を混練した後、或いはアルキル硫酸ナトリウムを添加、混合した後に脱泡を行ってもよいが、研磨剤を混練しながら、或いはアルキル硫酸ナトリウムを混合しながら脱泡を行ってもよい。
【0053】
ここで、減圧脱泡は、減圧度2〜20kPa、特に2〜10kPaの圧力下で行うことが好ましく、この圧力範囲で行うことにより、効率的な脱泡ができる。また、任意成分である香料を加えた場合に、効率的な脱泡と香料の低沸点分の過剰飛散防止という、相反する2つの課題を克服することができる。20kPaを超えた圧力で行うと、脱泡を効率的に行うことができなくなる場合があり、減圧度が2kPa未満であると、任意成分である香料を加えた場合に香料の中の低沸点分が過剰に飛散してしまう場合がある。
【0054】
上記製造方法において、各工程の温度条件は適宜選定できるが、いずれも50℃以下、特に10〜50℃が好ましく、室温(15〜30℃)で行ってもよい。この場合、第1工程の膨潤水溶液の調製は10〜50℃、特に15〜40℃で行うことが望ましく、室温(15〜30℃)で行ってもよい。10℃以上で調製することでアルギン酸ナトリウムが短時間で均一に分散した膨潤水溶液を得ることができ、10℃未満では均一に膨潤しないことがある。第1工程のクエン酸カルシウムの添加も上記と同じ温度範囲の条件で行うことができ、ゲル化する際に強制冷却などを行う必要はない。また、第2工程では、50℃以下で行うことで任意成分である香料の製品性能に悪影響を与えるような飛散を防止できるもので、50℃を超えると製品性能に劣る場合がある。
本発明では、このような範囲の温度条件で各工程を行うことにより、膨潤水溶液の調製からその後の工程まで特に加温、冷却を必要とせずに製造することが可能である。
【0055】
なお、任意成分の配合順序に特に制限はないが、有効成分については上述した通りであり、また他の水溶性成分は第2工程時に添加混合し得る。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0057】
また、練歯磨剤の調製に用いた各成分としては、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業株式会社、ラウリル硫酸ナトリウム)、アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ、キミカアルギンI−2)、クエン酸カルシウム・四水和物(関東化学株式会社)、グルコン酸カルシウム・一水和物(関東化学株式会社)、塩化カルシウム・二水和物(関東化学株式会社)、リン酸水素カルシウム・二水和物(東ソーファインケム株式会社、第二リン酸カルシウムDグレード)、炭酸カルシウム(株式会社カルファイン、重質炭酸カルシウムKS−1000)、カルボキシメチルセルロースナトリウムI(日本製紙ケミカル株式会社、サンローズF10LC)、カルボキシメチルセルロースナトリウムII(ダイセル化学株式会社、品番1260)、カルボキシメチルセルロースナトリウムIII(ダイセル化学株式会社、品番1220)、キサンタンガム(大日本住友製薬株式会社、ケルデント)を用い、その他の成分は、旧化粧品原料基準(粧原基)又は医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。ソルビットについては、70%ソルビット水溶液を用いたが、表中には純分換算の配合量を示した。
【0058】
〔実施例1〜3、比較例1〜10〕
表1に示す組成の練歯磨剤を下記の製造方法−1〜4を用いてニーダー法にて調製した。なお、ニーダーは、約1Lの練歯磨剤を調製することができる実験室用のもの(特注品:石山商店製)を用い、1.3kg調製した。
【0059】
〈製造方法−1〉
膨潤水溶液の調製:
表1に示す配合成分を用い、25℃の温度条件下で、精製水にサッカリン、70%ソルビット水溶液を溶解し、クエン酸カルシウム・四水塩を加えたA液と、プロピレングリコールにアルギン酸ナトリウムを混合したB液を別々に調製した後、パドル翼を備えた混合槽でA液及びB液を撹拌混合し、アルギン酸ゲルを含む膨潤水溶液を得た。
練歯磨剤の調製:
得られたアルギン酸ゲルを含む膨潤水溶液をニーダーに移し、香料を添加混合し、無水ケイ酸を混合した。この混合物を温度25℃、圧力4kPaで混練しながら第1段階の減圧脱泡を行った。更に、ラウリル硫酸ナトリウムを添加し、温度25℃、圧力4kPaで混合しながら第2段階の減圧脱泡を行い、練歯磨剤を調製した。
【0060】
〈製造方法−2〉
膨潤水溶液の調製:
表1に示す配合成分を用い、25℃の温度条件下で、精製水にサッカリン、70%ソルビット水溶液を溶解したA液と、プロピレングリコールにアルギン酸ナトリウムを混合したB液を別々に調製した後、パドル翼を備えた混合槽でA液及びB液を撹拌混合し、膨潤水溶液を得た。その後、続いて、同温度条件下でクエン酸カルシウム・四水塩を加えて撹拌混合して、クエン酸カルシウムを分散させ、アルギン酸ゲルを含むゲル状の膨潤水溶液を得た。
【0061】
練歯磨剤の調製:
上記温度条件下、アルギン酸ゲルを含む膨潤水溶液をニーダーに移し、香料を添加混合した後、無水ケイ酸を混合した。この混合物を温度25℃、圧力4kPaで混練しながら第1段階の減圧脱泡を行った。更に、ラウリル硫酸ナトリウムを添加し、温度25℃、圧力4kPaで混合しながら第2段階の減圧脱泡を行い、練歯磨剤を調製した。
【0062】
〈製造方法−3〉
膨潤水溶液の調製:
表1に示す配合成分を用い、25℃の温度条件下で、精製水にサッカリン、70%ソルビット水溶液を溶解したA液と、プロピレングリコールにアルギン酸ナトリウムを混合したB液を別々に調製した後、パドル翼を備えた混合槽でA液及びB液を撹拌混合し、膨潤水溶液を得た。
【0063】
練歯磨剤の調製:
上記温度条件下、得られた膨潤水溶液をニーダーに移し、香料を添加混合し、無水ケイ酸を混合した後、クエン酸カルシウム・四水塩を添加混合し、アルギン酸ゲルを形成させた。この混合物を温度25℃、圧力4kPaで混練しながら第1段階の減圧脱泡を行った。更に、ラウリル硫酸ナトリウムを添加し、温度25℃、圧力4kPaで混合しながら第2段階の減圧脱泡を行い、練歯磨剤を調製した。
【0064】
〈製造方法−4〉
膨潤水溶液の調製:
表1に示す配合成分を用い、25℃の温度条件下で、精製水にサッカリン、70%ソルビット水溶液を溶解したA液と、プロピレングリコールにアルギン酸ナトリウムを混合したB液を別々に調製した後、パドル翼を備えた混合槽でA液及びB液を撹拌混合し、膨潤水溶液を得た。
【0065】
練歯磨剤の調製:
上記温度条件下、膨潤水溶液をニーダーに移し、香料を添加混合し、無水ケイ酸を混合した。この混合物を温度25℃、圧力4kPaで混練しながら第1段階の減圧脱泡を行った。更に、ラウリル硫酸ナトリウムを添加混合した後、クエン酸カルシウム・四水塩を添加混合してアルギン酸ゲルを形成し、温度25℃、圧力4kPaで混合しながら第2段階の減圧脱泡を行い、練歯磨剤を調製した。
【0066】
得られた練歯磨剤について、ダマの形成の有無、成形性の経時安定性、保存時の析出物の有無、使用時のべたつき感、口腔内分散性を下記方法で評価した。なお、粘度は下記方法で測定した値である。結果を表1に示す。
【0067】
ダマの形成の有無の評価:
練歯磨剤10gを紙面に取って目視観察し、下記基準でダマの形成について評価した。
○:アルギン酸ゲルが均一かつ安定に形成、分散し、ダマの形成は認められない
×:アルギン酸ゲルが形成されているが不均一に分散し、ダマの形成が認められる
【0068】
成形性の経時安定性の評価:
練歯磨剤を口部内径6mmの容器に充填し、50℃で1ヶ月保存後、10名の被験者が適量(約1g、約2cm)を歯ブラシにとり、目視観察し、以下の基準による絶対評価で官能試験を行い、平均値を求めて評価した。
(評点)
3点:歯ブラシ上でペースト形状が保たれ、歯磨剤が歯ブラシからたれ落ちない
2点:歯ブラシ上でのペースト形状はわずかに崩れているが、歯磨剤が歯ブラシからたれ
落ちない
1点:歯ブラシ上でペースト形状が崩れ、歯磨剤が歯ブラシからたれ落ちる
(成形性の評価基準)
◎:成形性の平均点 2.5点以上
○:成形性の平均点 2.0点以上〜2.5点未満
×:成形性の平均点 2.0点未満
【0069】
保存時の析出物の有無の評価:
10℃恒温槽にて1ヶ月保存後の練歯磨剤について、10gを紙面に出して目視で観察し、析出物の有無を下記基準により評価した。
○:表面上にも内部にも析出物はまったくない
△:表面上に析出物は無いが、内部に析出物あり
×:表面上、内部共に析出物あり
【0070】
使用時のべたつき感の評価:
10名の被験者が、適量(約1g、約2cm)の練歯磨剤を歯ブラシにとり歯磨きを行い、通常歯を磨く方法で使用した。使用中でのべたつき感の段階を7段階で絶対評価により官能試験を行い、平均値を求めて評価した。
(評点)
7点:べたつきは全く感じられない
6点:べたつきはほとんど感じられない
5点:わずかにべたつきが感じられる
4点:弱いべたつきが感じられる
3点:べたつきが感じられる
2点:強いべたつきが感じられる
1点:著しいべたつきが感じられる
【0071】
(使用時のべたつき感の評価基準)
◎:べたつきの平均点 6点以上
○:べたつきの平均点 5点以上〜6点未満
△:べたつきの平均点 4点以上〜5点未満
×:べたつきの平均点 4点未満
【0072】
口腔内分散性の評価:
10名の被験者が、適量(約1g、約2cm)の練歯磨剤を歯ブラシにとり歯磨きを行い、通常歯を磨く方法で使用した。使用中の練歯磨剤の分散性を下記基準による絶対評価で官能試験し、下記基準で評価した。
【0073】
(評点)
4点:分散性がかなり良い
3点:分散性が良い
2点:分散性が悪い
1点:分散性がかなり悪い
(口腔内分散成の評価基準)
○:分散性平均点 3.0点以上
△:分散性平均点 2.0点以上〜3.0点未満
×:分散性平均点 2.0点未満
【0074】
練歯磨剤の粘度の測定:
粘度は、BM型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.7、20回転、25℃、測定時間3分によって測定した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の結果より、クエン酸カルシウムの添加工程が異なる場合(比較例1〜3)、クエン酸カルシウムを配合していない場合やクエン酸カルシウム以外のカルシウム塩を配合した場合(比較例4〜8、10)、アルギン酸ナトリウムを添加せず他の粘結剤を配合した場合(比較例9)は、アルギン酸ゲルのゲル化のコントロールが不十分であったり、分散が不均一になってダマの形成が確認されたり、成形性の経時安定性が劣る、保存時の析出物、使用時のべたつき感、口腔内分散性に劣るなど、いずれかの評価に劣るのに対して、本発明の製造方法により得られた練歯磨剤(実施例1〜3)は、アルギン酸ゲルが均一かつ安定に形成、分散し、製造過程でダマが形成されることがなく、使用時のべたつき感がなく、口腔内分散性に優れ、成形性の経時安定性も良好で、保存時の析出物もないことが確認された。
【0077】
次に、下記組成の練歯磨剤を上記実施例記載の製造方法−2の方法で調製し、上記実施例と同様に評価したところ、いずれもアルギン酸ゲルが均一かつ安定に形成、分散し、製造過程でダマが形成することがなく、かつ、使用時のべたつき感がなく、口腔内分散性が良好で、成形性の経時安定性に優れ、長期保存時の析出物もない練歯磨剤であることが確認された。
【0078】
〔実施例4〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 0.7
アルギン酸ナトリウム 1.0
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
無水ケイ酸 10
プロピレングリコール 3.0
ソルビット 42
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.2
フッ化ナトリウム 0.21
香料 1.0
精製水 41.19
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);41.7Pa・s
【0079】
〔実施例5〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 0.8
アルギン酸ナトリウム 0.8
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
無水ケイ酸 20
プロピレングリコール 3.0
ソルビット 35
カルボキシメチルセルロースナトリウムIII 0.1
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.2
フッ化ナトリウム 0.21
香料 1.0
精製水 38.19
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);42.4Pa・s
【0080】
〔実施例6〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
アルギン酸ナトリウム 0.9
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
水酸化アルミニウム 40
プロピレングリコール 3.0
ソルビット 30
キサンタンガム 0.2
サッカリンナトリウム 0.2
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
香料 1.0
精製水 22.27
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);46.1Pa・s
【0081】
〔実施例7〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 0.7
アルギン酸ナトリウム 1.0
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
無水ケイ酸 15
プロピレングリコール 3.0
グリセリン 35
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.2
フッ化酸ナトリウム 0.21
香料 1.0
精製水 43.19
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);47.1Pa・s
【0082】
〔実施例8〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
アルギン酸ナトリウム 1.0
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
水酸化アルミニウム 40
プロピレングリコール 3.0
グリセリン 25
サッカリンナトリウム 0.2
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
香料 1.0
精製水 27.57
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);65.9Pa・s
【0083】
〔実施例9〕練歯磨剤
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
アルギン酸ナトリウム 0.9
クエン酸カルシウム・四水和物 0.5
水酸化アルミニウム 40
プロピレングリコール 3.0
ソルビット 30
サッカリンナトリウム 0.2
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
無水ピロリン酸ナトリウム 0.2
香料 1.0
精製水 22.27
計 100.0%
組成物の粘度(25℃);58.1Pa・s

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤及び水を含有してなる練歯磨剤組成物を、
(1)粘結剤及び湿潤剤を含有する膨潤水溶液を調製する工程
(2)前記膨潤水溶液に研磨剤を混練する工程
(3)前記研磨剤混練物に発泡剤を混合する工程
を含む工程で製造するに際し、前記第1工程でアルギン酸ナトリウム及び湿潤剤の混合液と水とを混合して膨潤水溶液を調製し、次いで、該膨潤水溶液にクエン酸カルシウムを添加してアルギン酸ゲルを形成し、該膨潤水溶液をゲル化させた後に第2工程を行い、かつ第3工程で発泡剤としてアルキル硫酸ナトリウムを混合することを特徴とする練歯磨剤組成物の製造方法。
【請求項2】
練歯磨剤の25℃における粘度が20〜200Pa・sである請求項1記載の練歯磨剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−120552(P2009−120552A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297445(P2007−297445)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】