説明

縦可動手摺

【課題】手摺体の使用状態の姿勢を安定保持することができに、組立作業を容易に行えるようにし、手摺体の回動時の安全面を配慮した縦可動手摺を提供する。
【解決手段】使用時の水平位置と、不使用時の起立位置との間で回動可能に形成され、水平位置及び起立位置において停止可能な手摺体20を具備する縦可動手摺において、壁面に固定されるベース11と、ベースの中間部より突出する一対の支持片12とからなる支持部材10と、手摺体を固定保持するブラケット30と、ブラケットに貫通固着され、支持部材の支持片に回転可能に枢着される回転軸40と、支持部材の支持片間におけるベースの上端に被着係止されてベース表面に添設され、手摺体の回動時におけるブラケットの上端角部38が僅かな隙間を残して回動可能な凹状円弧部56と、凹状円弧部の下方に連接して、使用時におけるブラケットと当接可能な平坦膨隆部54とを有する位置規制部材50とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は縦可動手摺に関するもので、更に詳細には、例えばトイレ等の場所において、高齢者等の身体的弱者の介助に供する縦可動手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ等において使用者の身体を支持するために手摺が設置されているが、トイレ内は面積に余裕がないことが多く、壁面から突出する手摺を常設しておくと不便なことが多いので、壁面側に回動させて格納することができるようにした手摺が使用されている。特に、縦方向に回動する縦可動手摺は回動時に必要なスペースを小さく取ることができるため、多く使用されている。
【0003】
このような縦可動手摺として、壁面に固定されるベースと、該ベース面に溶接等によって起立固定される一対の支持片とからなる支持部材と、先端部が弧状の略U字形のパイプ部材からなる手摺体と、該手摺体の上下の基端部を固定保持するブラケットと、該ブラケットに貫通固着され、上記両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、回転軸の一端部に係合され、手摺体の下降時に手摺体に持ち上げ方向の復元弾力を付勢する渦巻きスプリングと、回転軸の他端部に係合され、回転軸の回動を制動するディスクダンパと、を具備する縦可動手摺が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この種の縦可動手摺においては、不使用時の起立位置における安定性を図るために、ブラケットと支持部材の対向部位に、互いに吸着可能なマグネットと磁性プレートを設けている。
【特許文献1】特開2001−220876号公報(段落0010〜0012,0016,0017、図1,図2,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、手摺体の上下の基端部は平行でなく、傾斜しているため、手摺体の基端部をブラケットに嵌挿して取り付けることができず、ブラケットを2分割にして手摺体を挟持し、溶接等によって固定する必要がある。したがって、構成部材が多くなると共に、組立が面倒であるという問題があった。また、使用時において、手摺体に大きな荷重が加わるため、支持部材のベース表面とブラケットの基端面との当接部に過大な負荷がかかり支持部材が変形する懸念があった。したがって、支持部材及びブラケットを耐強度性に富む部材例えばステンレス鋼製部材にて形成していた。
【0006】
また、この種の縦可動手摺においては、手摺体の回動時に支持部材とブラケットとの間に指が挟まれないようにする安全面の工夫を施す必要がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手摺体の使用状態の姿勢を安定保持することができると共に、組立作業を容易に行えるようにし、かつ、手摺体の回動時の安全面を配慮した縦可動手摺を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置との間で回動可能に形成され、水平位置及び起立位置において停止可能な手摺体を具備する縦可動手摺であって、 壁面に固定されるベースと、該ベースの中間部より突出する一対の支持片とからなる支持部材と、 上記手摺体の基端部を固定保持するブラケットと、 上記ブラケットに貫通固着され、上記支持部材の両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、 上記支持部材の両支持片間におけるベースの上端に被着係止されてベース表面に添設され、上記手摺体の回動時における上記ブラケットの上端角部が僅かな隙間を残して回動可能な凹状円弧部と、該凹状円弧部の下方に連接して、使用時における上記ブラケットの基端面と当接可能な平坦膨隆部とを有する位置規制部材と、を具備することを特徴とする。
【0009】
このように構成することにより、使用時における水平位置においては、手摺体を固定保持するブラケットの基端面が、支持部材の支持片間におけるベース表面に添設された位置規制部材の平坦膨隆部に当接することで、手摺体に係る荷重を受けることができる。
【0010】
また、位置規制部材に、手摺体の回動時におけるブラケットの上端角部が僅かな隙間を残して回動可能な凹状円弧部を設けることで、手摺体を回動する際に、使用者が支持部材とブラケットとの間に指を挟む虞がない。この場合、手摺体の回動時におけるブラケットの上端角部の軌跡と円弧状凹部との隙間を例えば4mm以下にすることにより、小児の指の入り込みを防止することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の縦可動手摺において、上記ブラケットの上端面にマグネット受けを設けると共に、該マグネット受けにマグネットを固着し、上記位置規制部材の凹状円弧部の上方に連接して嵌合溝部を横設すると共に、該嵌合溝部に、上記マグネットに吸着可能な磁性プレートを嵌合固着してなる、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、不使用時における手摺体の起立位置を安定化するマグネット及び磁性プレートの取り付けを容易かつ確実にすることができる。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の縦可動手摺において、上記支持部材及び位置規制部材をアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする。ここで、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む意味である。
【0014】
このように構成することにより、ベースと支持片とを溶接する構造のものに比べて支持部材の作製を容易にすることができると共に、軽量にすることができ、かつ、支持部材に付加される手摺体の位置規制機能を有する部材の作製を容易にすることができる。
【0015】
加えて、請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の縦可動手摺において、上記支持部材のベース両側と支持片の外方にそれぞれ被着可能なカバー部材を更に具備し、上記カバー部材は、上記支持部材のベースの一方の外方張り出し部と、上記支持片の上端及び下端を塞ぐ略三角形状の天板部及び底板部と、上記天板部と底板部とを連結する傾斜側面部とからなり、上記傾斜側面部の一端に、上記ベースの両側縁に突設された係止爪片と係合可能な係止爪を有し、他端に上記支持片の先端に形成された係止段部に係合可能な係止溝部を有する合成樹脂製部材にて形成される、ことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、支持部材のベース両側と支持片の外方側の上下開口部及び側部開口部をカバー部材によって容易に被覆することができる。したがって、支持片に枢着される回転軸の突出部を外部から目隠しすることができ、例えば、回転軸の突出部に係合される、手摺体に持ち上げ方向の復元弾力を付勢するばね部材例えば渦巻きスプリングや、回転軸の回動を制動する制動部材例えばディスクダンパ等を外部から目隠しすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成することにより、以下のような効果が得られる。
【0018】
(1)請求項1記載の発明によれば、手摺体を固定保持するブラケットの基端面が、支持部材の支持片間におけるベース表面に添設された位置規制部材の平坦膨隆部に当接することで、手摺体に係る荷重を受けることができるので、使用時における手摺体の水平姿勢を安定化させることができると共に、手摺体に加わる荷重に対する強度を持たせて変形を防止することができる。
【0019】
また、手摺体を回動する際に、使用者が支持部材とブラケットとの間に指を挟む虞がないので、安全面の維持を図ることができる。
【0020】
(2)請求項2記載の発明によれば、不使用時における手摺体の起立位置を安定化するマグネット及び磁性プレートの取り付けを容易かつ確実にすることができるので、上記(1)に加えて、更に不使用時における手摺体の起立位置の安定化を容易にすることができる。
【0021】
(3)請求項3記載の発明によれば、上記(1),(2)に加えて、更にベースと支持片とを溶接する構造のものに比べて支持部材の作製を容易にすることができると共に、軽量にすることができ、かつ、支持部材に付加される手摺体の位置規制機能を有する部材の作製を容易にすることができる。
【0022】
(4)請求項4記載の発明によれば、支持片に枢着される回転軸の突出部を外部から目隠しすることができ、例えば、回転軸の突出部に係合される、手摺体に持ち上げ方向の復元弾力を付勢するばね部材(渦巻きスプリング)や、回転軸の回動を制動する制動部材(ディスクダンパ)等を外部から目隠しすることができる。したがって、上記(1)〜(3)に加えて、更に美観の向上が図れると共に、使用者の手や被服等の引っ掛かりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る縦可動手摺をトイレに適用した場合について説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る縦可動手摺をトイレに取り付けた場合の使用状態を示す概略斜視図、図2は、上記縦可動手摺の使用状態の一部を断面で示す斜視図(a)及び要部を断面で示す斜視図(b)、図3は、上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態を示す斜視図である。
【0025】
上記縦可動手摺H(以下に、単に手摺Hという)は、壁面1に固定されるベース11と互いに平行に対峙する一対の支持片12とからなる支持部材10と、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置との間で回動自在に形成され、水平位置及び起立位置で停止可能な先端部が弧状の略U字形の手摺体20と、この手摺体20の上下の基端部21,22を固定保持するブラケット30と、ブラケット30に貫通固着され、両支持片12に回転可能に枢着される回転軸40と、使用時における手摺体20の水平姿勢を規制する位置規制部材50と、を具備している。
【0026】
この場合、上記手摺体20は、図4ないし図10に示すように、外周を例えば合成樹脂部材20aで被覆した中空円筒状のパイプ部材20bにて形成されており、先端に略半円の弧状部23を有する略U字形に屈曲されると共に、基端側は下部側基端部22が上部側基端部21に対して平行に近接して設けられている。すなわち、手摺体20の主要部を構成する略U字形の手摺本体24の互いに平行な上部24aと下部24bにおける上部24aに延在する上部側基端部21に対して、下部24bの基端側から上部24a側に向かって傾斜する傾斜部24cを介して上部側基端部21に平行に近接して下部側基端部22が設けられている。
【0027】
また、手摺体20の上部側基端部21の中空部内には、例えば鉄製の矩形ブロック状の補強部材25が挿入されている(図11及び図12参照)。この補強部材25は、上部側基端部21の中空部内にほぼ内接するように挿入されている。また、補強部材25には、図5,図6,図8及び図10に示すように、基端側に回転軸40の嵌挿用孔25aが設けられると共に、基端面から嵌挿用孔25aに向かって固定ねじ孔25bが刻設されている。また、補強部材25の挿入側の2箇所には、係止ねじ孔25cが刻設されており、補強部材25が手摺体20の上部側基端部21内に挿入された状態で、ブラケット30及び上部側基端部21を貫通する固定ねじ26を係止ねじ孔25cに螺合することで、補強部材25が手摺体20の上部側基端部21内に固定される。この補強部材25は、取付状態においてブラケット30より突出する長さに形成されている。また、補強部材25の基端面から嵌挿用孔25aに向かって固定ねじ孔25bを設けることにより、嵌挿用孔25a内に嵌挿される回転軸40の中間部に設けられた平坦面41に、固定ねじ孔25bに螺合される例えば芋ねじからなる押しねじ27を押圧して、補強部材25と回転軸40とを固定することができる。
【0028】
また、手摺体20の下部側基端部22の中空部内には、例えば鉄製の矩形ブロック状の当て板部材28が挿入されている(図11及び図12参照)。この当て板部材28は、補強部材25に比べて強度が小さくてもよいので、小さく形成されており、両端部の2箇所には、係止ねじ孔28aが刻設され、当て板部材28が手摺体20の上部側基端部21内に挿入された状態で、ブラケット30及び下部側基端部22を貫通する固定ねじ26を係止ねじ孔28aに螺合することで、当て板部材28が手摺体20の上部側基端部21内に固定される。
【0029】
上記補強部材25と当て板部材28は、手摺Hを組み立てる前に、手摺体20の上下部側基端部21,22の中空部内に挿入固定される。そして、後述する支持部材10に設けられた貫通孔10a、ブラケット30に設けられた貫通孔30aと手摺体20の上部側基端部21に設けられた貫通孔21a及び補強部材25に設けられた嵌挿用孔25aを貫通する回転軸40を、押しねじ27で固定することで、手摺体20とブラケット30及び回転軸40が一体に固定される。
【0030】
上記ブラケット30は、互いに平行な2つの手摺体基端部嵌挿用穴31,32(以下に穴31,32という)及び両穴31,32を連通するスリット33を有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、ブラケット30は、図11及び図12に示すように、2つの穴31,32の両側面と上端面及び下端面は平坦状に形成され、スリット33の両側面は凹状に括れている。これにより、ブラケット30の無駄な材料を削減すると共に、ブラケット30の押出成形を容易にすることができる。また、ブラケット30の基端部側の上部側の穴31の側面には回転軸40が嵌挿可能な貫通孔30aが設けられている。なお、ブラケット30の先端側の上端面には円形凹状のマグネット受け34が設けられており、このマグネット受け34に円柱状のマグネット35が例えば両面接着テープ等の接着手段を介して固着されるようになっている。
【0031】
上記のように形成されるブラケット30の小口側の2つの穴31,32及びスリット33には、キャップ部材37が被着されて、外部から目隠しされている。このキャップ部材37は、図11及び図12に示すように、2つの穴31,32内に嵌挿される2つの円板部37a,37bと両円板部37a,37bの間に連結され、スリット33内に挿入される矩形ブロック状の挿入部37cとからなり、例えば合成ゴム製部材にて形成されている。
【0032】
上記回転軸40はステンレス鋼製の部材にて形成されており、図11及び図12に示すように、中間部の両側に平坦面41が設けられ、両端部の中央には軸方向に沿うスリット部42が形成されている。このように形成される回転軸40は、上述したように、支持部材10,ブラケット30,手摺体20及び補強部材25を貫通して取り付けられた状態で、一端のスリット部42に、手摺体20の下降時に手摺体20を持ち上げる方向の復元弾力を付与するばね部材例えば渦巻きスプリング43が係合され、他端のスリット部42には回転軸40を制動するための制動部材例えばオイルの粘性を利用してトルクを発生させるディスクダンパ44が係合されている。
【0033】
一方、上記支持部材10は、図6,図11及び図12に示すように、矩形状のベース11と、このベース11の中心部に対して互いに平行に対峙する一対の支持片12とからなる断面略π字状のアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、ベース11の上下両端部の4箇所には取付孔13が穿設され、また、両側縁の表面側すなわち支持片12側には、後述するカバー部材60を係止する係止爪片14が突設されている(図6参照)。
【0034】
また、両支持片12は、中間部から基端部側に渡って厚肉部15が形成されると共に、中間部から先端側に薄肉部16が形成され、先端部には、カバー部材60を係止する係止段部17が形成されている。この支持片12の厚肉部15に回転軸40を嵌挿する貫通孔10aが穿設されている。
【0035】
また、支持部材10のベース11における両支持片12間には、手摺体20の使用時の水平位置及び不使用時の格納位置を維持するための位置規制部材50が取り付けられている。この位置規制部材50は、図5,図8,図10,図11及び図12に示すように、両支持片12a間のベース11表面に位置する略矩形状の位置規制片51と、この位置規制片51の上端から直角に折曲され、ベース11の上端部に係止される水平係止片52とからなる。
【0036】
この場合、位置規制片51の上部側には、上記ブラケット30に取り付けられたマグネット35に吸着可能な例えば鋼板等の磁性プレート36が嵌挿可能な嵌合溝53が横設されている。この嵌合溝53は、上下に対峙する一対の断面逆L字状の案内凸条53aによって形成されている。このように形成された嵌合溝53内に磁性プレート36が嵌挿固定される。これにより、手摺体20が水平状態から起立された際に、ブラケット30に固定されたマグネット35と磁性プレート36が吸着して手摺体20の格納位置が維持される。
【0037】
また、位置規制片51の下部側には、手摺体20が水平位置におかれた際に、ブラケット30の端面に当接して手摺体20の水平位置を維持する平坦膨隆部54が形成されている。なお、この平坦膨隆部54の裏面側には、ベース表面に接触する互いに平行な複数の補強リブ55が突設されている。このように平坦膨隆部54の裏面側に補強リブ55を突設することにより、手摺体20の使用位置でブラケット30が当接する平坦膨隆部54の耐圧強度を高めることができる。
【0038】
また、位置規制片51における嵌合溝53と平坦膨隆部54との間には、手摺体20の回動に伴って回動するブラケット30の上端角部38が干渉しないように僅かな隙間を残して回動可能な凹状円弧部56が形成されている。すなわち、上端角部38の回動軌跡よりやや大きい曲率の凹状円弧部56が形成されている(図4,図5,図7〜図11参照)。この場合、凹状円弧部56とブラケット30の上端角部38の軌跡との隙間sは、小児の指が入り込まない隙間例えば4mm以下に設定されている。つまり、凹状円弧部56の曲率面と、ブラケット30の上端角部38の回動軌跡との隙間sは、小児の指が入り込まない範囲以下(4mm以下)に設定されている。これにより、図4及び図5に示す使用時の手摺体20の水平位置において、凹状円弧部56とブラケット30の上端角部38との隙間sに小児の指が入り込むことがなく、また、図9及び図10に示す不使用時の手摺体20の起立位置(格納位置)においても、凹状円弧部56とブラケット30の上端角部38との隙間sに小児の指が入り込むことがない。
【0039】
上記のように形成される位置規制部材50を支持部材10の両支持片12間に取り付けた状態で、支持部材10の両側にそれぞれカバー部材60が被着されて、渦巻きスプリング43及びディスクダンパ44が外部から目隠しされている。
【0040】
この場合、カバー部材60は、支持部材10のベース11の一方の外方張り出し部と、支持片12の上端及び下端を塞ぐ略三角形状の天板部61及び底板部62と、天板部61と底板部62を連結する傾斜側板部63とからなる例えばABS樹脂等の合成樹脂製部材にて形成されている。
【0041】
なおこの場合、傾斜側板部63は、一端に支持部材10の係止爪片14に係合する係止爪64を有し、他端に支持部材10の係止段部17に係合する二股状の係止溝部65を有しており、支持部材10に係止された状態において、係止溝部65の外側面は支持片12の対向側面と同一平面上に位置するように形成されている。なお、係止爪64は、傾斜側板部63の上下端部と中間部の3箇所に設けられている。また、天板部61は、位置規制部材50の水平係止片52の上面と同一平面上に位置する上面を有すると共に、支持片12の上端部を覆う垂下片61aを有している(図2参照)。なお、垂下片61aの端部は係止溝部65の外側面の上端部に膨隆形成されている。また、底板部62は、支持片12の下端部を覆う起立片62aを有しており、起立片62aの端部は係止溝部65の外側面の下端部に膨隆形成されている。
【0042】
上記のように形成されるカバー部材60は、支持部材10の支持片12の外方側面に両面接着テープ等によって固着されるカバー受け70を介して支持部材10の両側に被着される。この場合、カバー受け70は、カバー部材60の傾斜側板部63の傾斜面に沿った傾斜角を有する傾斜受け片71と、傾斜受け片71の両端に折曲される一対の脚片72と、両脚片72の先端から外側に折曲される取付片73とからなる断面略ハット状の例えばアルミニウム製押出形材にて形成されている。このように形成されるカバー受け70は、取付片73の裏面に両面接着剤等を介して支持部材10の支持片12の外方側面に固着される。
【0043】
次に、手摺Hの組み立て及び壁面1への取付け手順について説明する。まず、手摺体20の上下側基端部21,22内にそれぞれ補強部材25と当て板部材28を挿入し、手摺体20の上下側基端部21,22をブラケット30の2つの穴31,32内に挿入し、ブラケット30に設けられた貫通孔30aと補強部材25に設けられた嵌挿用孔25aとを合致させた状態で、固定ねじ26によってブラケット30と手摺体20の上下側基端部21,22を固定する。
【0044】
次に、両支持片12間の上部に位置規制部材50が取り付けられた支持部材10の両支持片12間に、手摺体20を固定保持したブラケット30を挿入し、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30の貫通孔30aとを合致させる。次に、回転軸40を、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30の貫通孔30a及び補強部材25の嵌挿用孔25aに嵌挿する。この状態で、押しねじ27を補強部材25の固定ねじ孔25bに螺合して押しねじ27を回転軸40の平坦面41に押圧して回転軸40とブラケット30を固定する。その後、ブラケット30の小口側の2つの穴31,32とスリット33にキャップ部材37を被着する。
【0045】
次に、上記のようにしてブラケット30に固定された回転軸40の突出側のスリット部42にそれぞれ渦巻きスプリング43及びディスクダンパ44を取り付ける。この際、ブラケット30と両支持片12との間に隙間がある場合は座金45を介在してもよい。
【0046】
支持部材10に手摺体20及びブラケット30を組み付けた状態で出荷され、現場において、支持部材10が取付ねじ(図示せず)によって便器2の側方の壁面1に取り付けられた後に、支持部材10の両側にカバー部材60が取り付けられる。
【0047】
上記のように構成されるこの発明に係る手摺Hは、手摺体20の上部側基端部21がブラケット30の穴31内に嵌挿された状態で、回転軸40が貫通してブラケット30と手摺体20が固定されるので、ブラケット30と手摺体20とを強固に連結することができる。したがって、使用状態において、手摺体20に大きな荷重を加えても手摺体20のがたつきの心配がない。また、使用状態すなわち手摺体20が水平位置にある状態では、ブラケット30の基端側部が、裏面に複数の補強リブ55を有する位置規制部材50の平坦膨隆部54に当接するので、手摺体20に大きな荷重が加わっても平坦膨隆部54によって手摺体20の水平姿勢を安定して維持することができると共に、手摺体20に加わる荷重に対する強度を持たせて変形を防止することができる(図4,図5参照)。
【0048】
また、不使用状態すなわち手摺体20が垂直に起立した格納状態では、手摺体20の上部24a及び該上部24aの端部に延在する上部側基端部21が壁面1に平行に近接するので、壁面1との間の隙間を小さくして格納することができる。また、この格納状態では、ブラケット30に固着されたマグネット35と磁性プレート36が吸着して手摺体20の格納位置が維持される(図9,図10参照)。
【0049】
また、ブラケット30の上端角部38と支持部材10に取り付けられた位置規制部材50の凹状円弧部56との隙間sは、小児の指が入り込まない隙間例えば4mm以下に設定されているので、手摺体20を使用位置から格納位置、あるいは、格納位置から使用位置の回動した場合に、使用者が指を挟まれる心配がない。
【0050】
更にまた、支持部材10のベース11両側と支持片12の外方側の上下開口部及び側部開口部をカバー部材60によって被覆するので、支持片12に枢着される回転軸40の突出部に係合される、手摺体20に持ち上げ方向の復元弾力を付勢する渦巻きスプリング43や、回転軸40の回動を制動するディスクダンパ44等を外部から目隠しすることができる。この場合、カバー部材60の傾斜側板部63を、支持部材10の支持片12の外面に固着される断面略ハット状のアルミニウム製押出形材にて形成されるカバー受け70の傾斜受け片71に接触支持することにより、合成樹脂製のカバー部材60の変形を防止することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、手摺体20が略U字形に形成され、上下部側基端部21,22がブラケット30に固定保持される構造について説明したが、手摺体は必ずしもこの構造に限定されるものではない。例えば、略U字形の手摺体の上部側基端部をブラケットに固定保持した構造でもよく、あるいは、手摺体を略U字形以外の形状にしてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、この発明に係る縦可動手摺をトイレに適用した場合について説明したが、トイレ以外の例えばバスルームや、その他高齢者施設等の介助に供することができる場所にも同様に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明に係る縦可動手摺をトイレに取り付けた場合の使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】上記縦可動手摺の使用状態の一部を断面で示す斜視図(a)及び要部を断面で示す斜視図(b)である。
【図3】上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態を示す斜視図である。
【図4】上記縦可動手摺の使用時の状態の一部を断面で示す側面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【図7】上記縦可動手摺の回動状態の一部を断面で示す側面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態の一部を断面で示す側面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】上記縦可動手摺の構成部材を示す分解斜視図である。
【図12】組立状態を示す分解斜視図である。
【図13】この発明におけるカバー部材の取り付け前の状態を示す斜視図である。
【図14】この発明における位置規制部材の正面斜視図(a)及び背面斜視図(b)である。
【符号の説明】
【0054】
1 壁面
10 支持部材
10a 貫通孔
11 ベース
12 支持片
14 係止爪片
17 係止段部
20 手摺体
30 ブラケット
34 マグネット受け
35 マグネット
36 磁性プレート
38 上端角部
40 回転軸
43 渦巻きスプリング
44 ディスクダンパ
50 位置規制部材
51 位置規制片
52 水平係止片
53 嵌合溝部
54 平坦膨隆部
55 補強リブ
56 凹状円弧部
60 カバー部材
61 天板部
62 底板部
63 傾斜側板部
64 係止爪
65 係止溝部
70 カバー受け
71 傾斜受け片
H 縦可動手摺
s 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時における水平位置と、不使用時における起立位置との間で回動可能に形成され、水平位置及び起立位置において停止可能な手摺体を具備する縦可動手摺であって、
壁面に固定されるベースと、該ベースの中間部より突出する一対の支持片とからなる支持部材と、
上記手摺体の基端部を固定保持するブラケットと、
上記ブラケットに貫通固着され、上記支持部材の両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、
上記支持部材の両支持片間におけるベースの上端に被着係止されてベース表面に添設され、上記手摺体の回動時における上記ブラケットの上端角部が僅かな隙間を残して回動可能な凹状円弧部と、該凹状円弧部の下方に連接して、使用時における上記ブラケットの基端面と当接可能な平坦膨隆部とを有する位置規制部材と、
を具備することを特徴とする縦可動手摺。
【請求項2】
請求項1記載の縦可動手摺において、
上記ブラケットの上端面にマグネット受けを設けると共に、該マグネット受けにマグネットを固着し、
上記位置規制部材の凹状円弧部の上方に連接して嵌合溝部を横設すると共に、該嵌合溝部に、上記マグネットに吸着可能な磁性プレートを嵌合固着してなる、
ことを特徴とする縦可動手摺。
【請求項3】
請求項1又は2記載の縦可動手摺において、
上記支持部材及び位置規制部材をアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする縦可動手摺。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の縦可動手摺において、
上記支持部材のベース両側と支持片の外方にそれぞれ被着可能なカバー部材を更に具備し、
上記カバー部材は、上記支持部材のベースの一方の外方張り出し部と、上記支持片の上端及び下端を塞ぐ略三角形状の天板部及び底板部と、上記天板部と底板部とを連結する傾斜側面部とからなり、上記傾斜側面部の一端に、上記ベースの両側縁に突設された係止爪片と係合可能な係止爪を有し、他端に上記支持片の先端に形成された係止段部に係合可能な係止溝部を有する合成樹脂製部材にて形成される、
ことを特徴とする縦可能手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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