説明

縮環芳香族高分子およびその製造方法

【課題】平面性が向上した縮環芳香族高分子を提供する。
【解決手段】本発明のある態様の縮環芳香族高分子は、下記反応式に従うモノマーの自己二量化によって得られる縮重合構造を有する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮環芳香族高分子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縮環構造が連結した平面一次元高分子である縮環芳香族高分子は、パイ電子に由来した電気的・磁気的特性が期待されるため大変興味深い。従来の縮環芳香族高分子の合成方法は、溶媒可溶な前駆体高分子を予め合成し、その後、化学的または熱的な分子内環化反応を行う2段階反応が主であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. B. Goldfinger, T. M. Swager, J. Am. Chem. Soc. 116, 7895 (1994)
【非特許文献2】K. Oyaizu, T. Iwasaki, Y. Tsukahara, E. Tsuchida, Macromolecules 37, 1257 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の縮環芳香族高分子の製造方法は2段階反応であるため、効率を上げることが困難であり、反応段数を少なくするという要請があった。また、従来の手法で得られる縮環芳香族高分子では、分子内反応の未反応および副反応部分が捩れた構造となるため、縮環芳香族高分子の平面性を下げる欠陥部位になるという問題もある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、平面性が向上した縮環芳香族高分子の提供にある。また、本発明の他の目的には、縮環芳香族高分子を効率よく製造する方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、縮環芳香族高分子である。当該縮環芳香族高分子は、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される縮重合構造を有することを特徴とする。
【0007】
【化1】

【化2】

【化3】

式(1)〜(3)中、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはSi含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。また、式(1)〜(3)中、下記式(4)で表される構成単位は、単環式、多環式または複素環式の芳香族基を表す。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【0008】
【化4】

【0009】
本発明の他の態様は、縮環芳香族高分子の製造方法である。当該縮環芳香族高分子の製造方法は、下記式で表される出発原料となるモノマーを(A)Pd系触媒、(B)塩基および(C)還元剤の存在下で下記反応式(I)〜(III)のいずれかに従って自己重縮合反応させることを特徴とする。
【化5】

式中、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはSi含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。また、式中、下記式で表される構成単位は、単環式または複素環式の芳香族基を表す。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平面性が向上した縮環芳香族高分子が提供される。また、本発明によれば、縮環芳香族高分子を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】各実施例の縮環芳香族高分子について得られた紫外可視吸収スペクトルである。
【図2】各実施例の縮環芳香族高分子について得られた紫外可視発光スペクトルである。
【図3】実施例1の縮環芳香族高分子について得られた電気化学測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例2の縮環芳香族高分子について得られた電気化学測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例3の縮環芳香族高分子について得られた電気化学測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例4の縮環芳香族高分子について得られた電気化学測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
本実施の形態に係る縮環芳香族高分子は、下記反応式(I)〜(III)のいずれかに従う一段階自己重縮合反応(自己二量化反応)により合成される。
【0013】
【化10】

【化11】

【化12】

【0014】
本実施の形態に係る縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーは、自己重縮合型の2官能性モノマーであり、下記式で表される。出発原料となるモノマーにおいて、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはシリコン含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。また、下記式で表される構成単位は、単環式、多環式または複素環式の芳香族基を表す。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【化13】

【化14】

【0015】
上記Arで表記される単環式、多環式または複素環式の芳香族基として、たとえば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラセン環、ピレン環、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、インドール環、ホスホール環、カルバゾール環が挙げられる。
【0016】
モノマーおよび縮環芳香族高分子に含まれるR、Rは、それぞれ独立に有機基またはSi含有基であり、たとえば、有機基としては、アルキル基(炭素数1〜24、好ましくは炭素数6〜16)、パーフルオロアルキル基、アリール基、パーフルオロアリール基、p-アルコキシフェニル基、m-アルコキシフェニル基、o-アルコキシフェニル基、3,4-ジアルコキシフェニル基、3,4,5-トリアルコキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、m-ニトロフェニル基、o-ニトロフェニル基、p-N,N-ジアルキルアニリン基、m-N,N-ジアルキルアニリン基、o-N,N-ジアルキルアニリン基、p-アルキルフェニル基、m-アルキルフェニル基、o-アルキルフェニル基、2-(2-ヒドロキシプロピル基)が挙げられる。また、Si含有基としては、シリル基、シラノール基が挙げられ、より具体的には、トリアルキルシリル基が挙げられる。なお、芳香族基に結合している一方のエンイン構造は、パラ位、メタ位、オルト位のいずれでもよいが、反応収率の観点からパラ位が望ましい。
【0017】
モノマーおよび縮環芳香族高分子に含まれるX、Xは、それぞれ独立にBr、Iなどのハロゲンである。
【0018】
また、上記反応式(I)〜(III)によって得られる縮環芳香族高分子の重合度nは、特に限定されないが、たとえば5〜100である。重合度nに応じて縮環芳香族高分子における縮環芳香族平面を適宜拡張することができる。
【0019】
なお、上記反応式(I)〜(III)において、RがRと等しく、かつ、XがXと等しい場合には、一段階自己重縮合反応を下記反応式(IV)で表すことができる。
【化15】

すなわち、RがRと等しく、かつ、XがXと等しい場合には、縮環芳香族高分子を構成する繰り返し単位の構造が簡略化され、縮環芳香族高分子を所望の構造に設計しやすくなる。
【0020】
本実施の形態に係る縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーとして、下記式に示す1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼン誘導体が挙げられる。
【0021】
【化16】

【0022】
上記自己重合反応は、(A)Pd系触媒、(B)塩基および(C)還元剤の存在下で(D)溶媒中で進行する。
(A)Pd系触媒としては、Pd/P触媒が挙げられる。より具体的には、Pd系触媒としてPd2(dba)3/P(tBu)3触媒が好適である。Pd系触媒を用いることにより、ハロゲン置換部位での二量化反応が副生しにくくなるため、他の触媒(たとえばNi触媒)に比べて縮環芳香族高分子の収率を高めることができる。
(B)塩基としては、Cs塩が挙げられ、より具体的にはCs2CO3、CsFが挙げられる。
(C)還元剤としては、たとえば、ヒドロキノンが挙げられる。
(D)溶媒としては、1,4-ジオキサン溶液が挙げられる。
【0023】
自己重合反応終了後、混合溶液をメタノールなどの溶媒に投入することにより、縮環芳香族高分子を得ることができる。さらに再沈澱精製またはHPLCで低分子量体を除去することにより、縮環芳香族高分子を精製することができる。
【0024】
本実施の形態に係る縮環芳香族高分子の製造方法によれば、Pd触媒を利用したハロゲン化エチニルベンゼン部位を官能基とする二官能性モノマーの一段階自己重縮合反応により自己二量化反応で重合が進行する。このため、従来の縮環芳香族高分子合成法のように、前駆体高分子合成、続く分子内環化反応という2段階合成に比べて縮環芳香族高分子をより効率的に製造化することができ、さらに官能基比を考慮する必要がない。
【0025】
また、上述した触媒系を用いることにより、脱ハロゲン化後の水素化が唯一の副反応であるためその部分で重合は停止することになる。すなわち、構造欠陥がない縮環芳香族高分子を得ることができ、縮環芳香族高分子の平面性を向上させることができる。
【0026】
また、側鎖部位(官能基R、R)に炭素数6〜16のアルキル長鎖を導入して高分子の溶解性を確保することができる。この他、側鎖部位(官能基R、R)にアルキル基、アルコキシ基などの電子供与性基やニトロ基、フルオロアルキル基などの電子吸引性基の置換基をすることで縮環芳香族高分子の電子状態を調節できる。薄膜トランジスタや薄膜太陽電池など、様々な有機エレクトロニクスデバイスに応用できる材料となることが期待される。
【0027】
(参考例)
縮環芳香族高分子の一段階自己重縮合反応において、副生成物(ねじれた高分子主鎖構造)が生じにくいことを、上記一段階自己重縮合反応のベースとなる二量化反応を実施して確認した。
【0028】
<4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンの合成>
まず、下記式に従って4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンを合成した。なお、下記式の左辺において、4-エチニル-N,N-ジヘキサデシルアニリンが省略されている。
【化17】

【0029】
具体的には、100mLフラスコに2-ブロモ-1-ヨードベンゼン0.113 g(0.399 mmol)、4-エチニル-N,N-ジヘキサデシルアニリン0.226 g(0.399 mmol)、ジイソプロピルアミン5mL、THF5mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、Pd(PPh3)4 14 mg(0.012 mmol)とCuI 6 mg(0.03 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン5mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン/ヘキサン 2:8)により目的物を粘性液体として0.15 g(0.21 mmol、収率52%)得た。得られた4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンについて、IR法、1H NMR法および13C NMR法を用いた分析結果により同定した。
【0030】
(分析結果)
IR (KBr): 2925, 2851, 2212, 1607, 1584, 1521, 1467, 1433, 1401, 1369, 1197, 1146, 1116, 1043, 1026, 812, 750, 722 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.58 (m, 1H), 7.51 (m, 1H), 7.41 (d, J=8.4, 2H), 7.25 (m, 1H), 7.11 (m, 1H), 6.57 (d, J=8.7, 2H), 3.28 (m, 4H), 1.56 (m, 4H), 1.27 (s, 52H), 0.89 (m, 6H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 148.1, 133.0, 132.7, 132.3, 128.3, 126.9, 126.4, 125.2, 111.1, 108.1, 95.8, 86.0, 50.9, 31.9, 29.70, 29.68, 29.66, 29.61, 29.51, 29.37, 27.2, 27.1, 22.7, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C46H74BrNとして算出 720.99 g mol-1; 719.3 g mol-1 [M-H]+観測
【0031】
<4,4’-インデノ[2,1-a]インデン-5,10-ジイルビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)の合成>
続いて、下記式に従って4,4’-インデノ[2,1-a]インデン-5,10-ジイルビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)を合成した。
【0032】
【化18】

【0033】
具体的には、25mLフラスコにヒドロキノン22 mg(0.20 mmol)、Cs2CO3 65 mg(0.20 mmol)、CsF 33 mg(0.22 mmol)、P(tBu)3 1.2 mg(0.0060 mmol)、Pd2(dba)3 1.4 mg(0.0016 mmol)を加えた後、72 mg(0.10 mmol)の4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンを溶解した1,4-ジオキサン1mLをシリンジで加えた。溶液を130-140℃に加熱して24時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエン10mLを加えた溶液をセライトに通して不溶物を除去した。ろ液の溶媒を減圧除去した後、シリカゲルカラム(ヘキサン)により精製して目的物を暗赤色固体として33 mg(0.026 mmol、収率52%)得た。得られた4,4’-インデノ[2,1-a]インデン-5,10-ジイルビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)について、IR法、1H NMR法および13C NMR法を用いた分析結果により同定した。
【0034】
(分析結果)
IR (KBr): 2922, 2849, 1602, 1517, 1467, 1430, 1402, 1372, 1346, 1313, 1299, 1269, 1250, 1229, 1195, 1152, 1136, 1089, 832, 812, 746, 721 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.57 (d, J=8.4, 4H), 7.36 (m, 2H), 7.16 (m, 2H), 6.86 (m, 4H), 6.73 (d, J=9.0, 4H), 3.33 (m, 8H), 1.65 (m, 8H), 1.26 (s, 104H), 0.88 (m, 12H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 149.6, 148.2, 140.6, 139.8, 136.0, 130.1, 126.6, 122.5, 121.7, 120.6, 119.3, 110.9, 51.9, 31.9, 29.70, 29.66, 29.64, 29.56, 29.37, 27.9, 27.3, 22.7, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C92H148N2として算出 1281.16 g mol-1; 1282 g mol-1 [M+H]+観測
【0035】
このように、Pd係触媒を用いた4-[(2-ブロモフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンの二量化反応では、脱ハロゲン化後に得られる4,4’-インデノ[2,1-a]インデン-5,10-ジイルビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)は触媒反応に寄与しない。このため、縮環芳香族高分子の一段階自己重縮合反応では、脱ハロゲン化後の生成物が生成する高分子の末端部位となる。高収率の反応条件を見出いだすことができれば、完全縮環構造の芳香族高分子が得られる可能性が見いだされた。
【0036】
(実施例1)
実施例1の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーを下記に示す方法に従って合成した。
【0037】
<1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼンの合成>
まず、下記式に従って1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼンを合成した。
【0038】
【化19】

【0039】
具体的には、100mLフラスコに[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(トリメチルシラン)1.28 g(2.99 mmol)とTHF/メタノール混合溶媒(3:1)30mL加えた後、K2CO3 2.5 g(18 mmol)を加えて室温で5時間攪拌した。水で洗浄して水溶性成分を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン)により精製して目的物を白色固体として0.82 g(2.89 mmol、収率97%)得た。得られた1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼンについて、1H NMR法および13C NMR法を用いた分析結果により同定した。
【0040】
(分析結果)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.72(s, 2H), 3.50(s, 2H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 137.0, 126.0, 123.7, 84.7, 80.3 ppm
【0041】
<4,4’-[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)の合成>
続いて、実施例1の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーとして、下記式に従って4,4’-[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)を合成した。なお、下記式の左辺において、N,N-ジヘキサデシル-4-ヨードアニリンが省略されている。
【0042】
【化20】

【0043】
具体的には、200mLフラスコに1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼン0.57 g(2.0 mmol)、N,N-ジヘキサデシル-4-ヨードアニリン2.94 g(4.40 mmol)、ジイソプロピルアミン35mL、THF35mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、Pd(PPh3)4 139 mg(0.120 mmol)とCuI 46 mg(0.24 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン25mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン/ヘキサン 1:2)により目的物を黄色固体として2.13 g(1.56 mmol、収率78%)得た。得られた1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼンについて、IR法、1H NMR法、13C NMR法、MALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
【0044】
(分析結果)
IR (KBr): 2920, 2851, 2211, 1604, 1522, 1466, 1402, 1372, 1299, 1190, 1138, 1057, 880, 810, 721, 528 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.69 (s, 2H), 7.39 (d, J=8.7, 4H), 6.57 (d, J=8.7, 4H), 3.28 (m, 8H), 1.58 (m, 8H), 1.27 (s, 104H), 0.88 (m, 12H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 148.4, 135.2, 133.2, 126.2, 123.1, 111.1, 107.7, 98.5, 85.4, 51.0, 31.9, 29.70, 29.67, 29.65, 29.60, 29.49, 29.36, 27.2, 27.1, 22.7, 14.1 ppm、
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C86H142Br2N2として算出 1360.95 g mol-1; 1361.5 g mol-1 [MH]+ 観測
【0045】
<自己重合反応>
4,4’-[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)をモノマーとして用いた自己重合反応を下記式に従って実施した。
【0046】
【化21】

【0047】
具体的には、25 mLフラスコにヒドロキノン 44 mg(0.40 mmol)、Cs2CO3 130 mg(0.40 mmol)、CsF 66.8mg(0.440 mmol)、P(tBu)3 2.43 mg(0.0120 mmol)、Pd2(dba)3 2.25 mg(0.0032 mmol)を加えた後、4,4’-[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン) 136 mg(0.100 mmol)を溶解した1,4-ジオキサン溶液 1mLをシリンジで加えた。得られた溶液を130-140℃に加熱して24時間攪拌した。室温に冷却した後、メタノール250mLに注ぐと沈殿物を得た。ろ過して回収した後、乾燥して4,4’-[(2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル)ジエチン-2,1-ジイル]ビス(N,N-ジヘキサデシルアニリン)を出発原料とする実施例1に係る縮環芳香族高分子を得た(収率92%)。得られた縮環芳香族高分子について、GPC法、熱分析法、IR法、1H NMR法、紫外可視吸収分析法および紫外可視蛍光分析法を用いた分析結果により同定した。
【0048】
(分析結果)
GPC: Mn 6400、Mw/Mn 1.20
分解温度 (5%): 330℃
ガラス転位点: -40℃
IR (KBr): 2928, 2853, 2203, 1606, 1519, 1466, 1400, 1368, 1193, 813, 720 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.33 (br s), 6.53 (br s), 3.25 (br s), 1.56 (br s), 1.27 (s), 0.86 (s) ppm
紫外可視吸収分析、紫外可視蛍光分析(THF): λmax = 367 nm、λem = 463, 502 nm
【0049】
(実施例2)
実施例2の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーを下記に示す方法に従って合成した。
【0050】
<[(2,5-ジブロモ-4-ヨードフェニル)エチニル](トリメチル)シランの合成>
まず、下記式に従って、[(2,5-ジブロモ-4-ヨードフェニル)エチニル](トリメチル)シランを合成した。
【0051】
【化22】

【0052】
具体的には、500mLフラスコに1,4-ジブロモ-2,5-ジヨードベンゼン6.39 g(13.1 mmol)、ジイソプロピルアミン140mL、THF140mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、トリメチルシリルアセチレン1.29 g(13.1 mmol)、PdCl2(PPh3)2 180 mg(0.256 mmol)とCuI 100 mg(0.525 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン25mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ヘキサン)により精製して目的物を黄色固体として1.50 g(3.28 mmol、収率25%)得た。得られた[(2,5-ジブロモ-4-ヨードフェニル)エチニル](トリメチル)シランについて、1H NMR法を用いた分析結果により同定した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.04(s, 1H), 7.69(s, 1H), 0.27(s, 9H) ppm
【0053】
<4-({2,5-ジブロモ-4-[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンの合成>
続いて、下記式に従って4-({2,5-ジブロモ-4-[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンを合成した。なお、下記式の左辺において、N,N-ジヘキサデシル-4-ヨードアニリンが省略されている。
【0054】
【化23】

【0055】
具体的には、100mLフラスコに[(2,5-ジブロモ-4-ヨードフェニル)エチニル](トリメチル)シラン0.275 g(0.600 mmol)、N,N-ジヘキサデシル-4-ヨードアニリン0.379 g(0.670 mmol)、ジイソプロピルアミン7mL、THF7mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、Pd(PPh3)4 8.5 mg(0.0074 mmol)とCuI 4.6 mg(0.024 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン5mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン/ヘキサン 3:100)により精製して目的物を黄色固体として0.34 g(0.38 mmol、収率63%)得た。得られた4-({2,5-ジブロモ-4-[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンについて、IR法、1H NMR法、13C NMRおよびMALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
【0056】
(分析結果)
IR (KBr): 2924, 2851, 2200, 1607, 1521, 1465, 1400, 1250, 1061, 861, 811, 760 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.68(s, 1H), 7.67(s, 1H), 7.38(d, J=9.0, 2H), 6.57(d, J=9.0, 2H), 3.28(m, 4H), 1.54(m, 4H), 1.26(m, 52H), 0.88(m, 6H) 0.28(m, 9H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 148.6, 136.3, 135.2, 133.2, 127.9, 124.8, 123.7, 123.0, 111.2, 107.4, 102.1, 101.8, 99.4, 85.3, 51.0, 31.9, 29.71, 29.66, 29.64, 29.60, 29.50, 29.36, 27.19, 27.11, 22.7, 14.1, -0.27 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C51H81Br2NSi として算出 893.45 g mol-1; 895.7 g mol-1 [MH]+ 観測
【0057】
<4-[(2,5-ジブロモ-4-エチニルフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンの合成>
続いて、下記式に従って4-[(2,5-ジブロモ-4-エチニルフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンを合成した。
【0058】
【化24】

【0059】
具体的には、100mLフラスコに4-({2,5-ジブロモ-4-[(トリメチルシリル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリン0.25 g(0.28 mmol)、K2CO3 0.12 g(0.84 mmol)、メタノール1mL、THF2mLを加えた。室温で5時間攪拌した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン)により精製して目的物を黄色固体として0.23 g(0.28 mmol、収率100%)得た。得られた4-[(2,5-ジブロモ-4-エチニルフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンについて、IR法、1H NMR法、13C NMRおよびMALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
IR (KBr): 3290, 2924, 2852, 2197, 1606, 1571, 1521, 1465, 1369, 1063, 888, 812 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.71(s, 1H), 7.69(s, 1H), 7.39(d, J=8.7, 2H), 6.57(d, J=8.4, 2H), 3.46(s, 1H), 3.28(m, 4H), 1.58(m, 4H), 1.27(m, 52H), 0.89(m, 6H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 148.6, 136.8, 135.3, 133.3, 128.5, 123.8, 123.6, 123.1, 111.2, 107.4, 99.7, 85.2, 83.6, 80.8, 51.0, 31.9, 29.69, 29.66, 29.60, 29.50, 29.36, 27.20, 27.11, 22.7, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C48H73Br2Nとして算出 821.41 g mol-1; 823.8 g mol-1 [MH]+ 観測
【0060】
<4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンの合成>
続いて、実施例2の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーとして、下記式に従って4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンを合成した。なお、下記式の左辺において、1-ヨード-4-ニトロベンゼンが省略されている。
【0061】
【化25】

【0062】
具体的には、100mLフラスコに4-[(2,5-ジブロモ-4-エチニルフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリン0.165 g(0.200 mmol)、1-ヨード-4-ニトロベンゼン0.075 g(0.30 mmol)、ジイソプロピルアミン3mL、THF3mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、Pd(PPh3)4 8 mg(0.007 mmol)とCuI 2.5 mg(0.013 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン5mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン/ヘキサン 1:9)により目的物を黄色固体として0.17 g(0.18 mmol、収率90%)得た。得られた4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンについて、IR法、1H NMR法、13C NMRおよびMALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
【0063】
(分析結果)
IR (KBr): 2918, 2850, 2200, 1607, 1543, 1512, 1466, 1340, 1062, 884, 810 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 8.24 (d, J=8.7, 2H), 7.77 (s, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.71 (d, J=8.7, 2H), 7.4 (d, J=8.4, 2H), 6.58 (d, J=8.7, 2H), 3.29 (m, 4H), 1.54 (m, 4H), 1.26 (m, 52H), 0.87 (m, 6H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 148.7, 147.4, 136.2, 135.4, 133.3, 132.4, 129.4, 128.8, 123.9, 123.7, 123.2, 111.2, 107.2, 100.4, 93.5, 91.9, 85.4, 51.0, 31.9, 29.69, 29.66, 29.60, 29.50, 29.36, 27.2, 27.1, 22.7, 15.6, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C54H76Br2N2O2として算出 942.43 g mol-1; 943.4 g mol-1 [MH]+ 観測
【0064】
<自己重合反応>
4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンをモノマーとして用いた自己重合反応を下記式に従って実施した。
【0065】
【化26】

【0066】
具体的には、25 mLフラスコにヒドロキノン 44 mg(0.40 mmol)、Cs2CO3 130 mg(0.40 mmol)、CsF 66.8mg(0.440 mmol)、P(tBu)3 2.43 mg(0.0120 mmol)、Pd2(dba)3 2.25 mg(0.0032 mmol)を加えた後、4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリン 95 mg(0.100 mmol)を溶解した1,4-ジオキサン溶液 1mLをシリンジで加えた。得られた溶液を130-140℃に加熱して24時間攪拌した。室温に冷却した後、メタノール250mLに注ぐと沈殿物を得た。ろ過して回収した後、乾燥して4-({2,5-ジブロモ-4-[(4-ニトロフェニル)エチニル]フェニル}エチニル)-N,N-ジヘキサデシルアニリンを出発原料とする実施例2に係る縮環芳香族高分子を得た(収率89%)。得られた縮環芳香族高分子について、GPC法、熱分析法、IR法、1H NMR法、紫外可視吸収分析法および紫外可視蛍光分析法を用いた分析結果により同定した。
【0067】
(分析結果)
GPC: Mn 18700、Mw/Mn 7.29
分解温度 (5%): 280℃
ガラス転位点: -35℃
IR (KBr): 2923, 2851, 2203, 1604, 1571, 1466, 1401, 1342, 1190, 1109, 853, 816, 721 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.26 (br s), 6.60 (br s), 3.25 (br s), 1.88-1.40 (m), 1.25 (s), 0.87 (s) ppm
紫外可視吸収分析、紫外可視蛍光分析(THF): λmax = 351 nm、λem = 453 nm
【0068】
(実施例3)
実施例3の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーを下の方法に従って合成した。
【0069】
<4-ヘキサデシルオキシ-1-ヨードベンゼンの合成>
まず、下記式に従って、4-ヘキサデシルオキシ-1-ヨードベンゼンを合成した。なお、下記式の左辺において、1-ブロモヘキサデカンが省略されている。
【0070】
【化27】

【0071】
具体的には、200mLフラスコに4-ヨードフェノール5.5 g(25 mmol)、1-ブロモヘキサデカン8.4 g(28 mmol)、炭酸カリウム4.14 g(30.0 mmol)、ヨウ化カリウム0.83 g(5.0 mmol)、アセトン70mLを加えた後、窒素雰囲気下で6時間沸点還流した。室温に冷却した後、沈殿物をろ過して除いた。ろ液の溶媒を減圧除去した後、シリカゲルカラム(ヘキサン)により目的物を9.1 g(20.5 mmol、収率82%)得た。得られた4-ヘキサデシルオキシ-1-ヨードベンゼンについて、IR法、1H NMR法、13C NMR法およびMALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
【0072】
(分析結果)
IR (KBr): 2954, 2918, 2849, 1588, 1571, 1489, 1474, 1464, 1400, 1285, 1249, 1175, 1101, 1026, 1003, 830, 814, 511 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.53 (d, J=8.7, 2H), 6.67 (d, J=8.7, 2H), 3.91 (m, 2H), 1.76 (m, 2H), 1.38 (m, 2H), 1.26 (s, 24H), 0.88 (m, 3H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 159.0, 138.1, 116.9, 82.4, 68.1, 31.9, 29.7, 29.6, 29.5, 29.4, 29.1, 26.0, 22.7, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C22H37IOとして算出 444.43 g mol-1; 445.8 g mol-1 [MH]+ 観測
【0073】
<4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンの合成>
続いて、実施例3の縮環芳香族高分子の出発原料となるモノマーとして、下記式に従って下記式に従って4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンを合成した。
【0074】
【化28】

【0075】
具体的には、100mLフラスコに4-[(2,5-ジブロモ-4-エチニルフェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリン0.165 g(0.200 mmol)、4-ヘキサデシルオキシ-1-ヨードベンゼン0.107 g(0.241 mmol)、ジイソプロピルアミン4mL、THF4mLを加えた。この溶液に30分間アルゴンを通気して脱気した後、Pd(PPh3)4 7 mg(0.006 mmol)とCuI 3 mg(0.02 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12時間反応させた後、ジクロロメタン5mLを加えた。シリカゲルカラムに通して塩および触媒を除去した後、シリカゲルカラム(ジクロロメタン/ヘキサン 1:10)により目的物を黄色固体として0.15 g(0.13 mmol、収率66%)得た。得られた4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンについて、IR法、1H NMR法、13C NMR法およびMALDI-TOF-MS法を用いた分析結果により同定した。
【0076】
(分析結果)
IR (KBr): 2954, 2922, 2850, 2215, 1606, 1571, 1522, 1468, 1413, 1362, 1289, 1250, 1174, 1058, 1028, 827, 812, 531 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.72 (s, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.49 (d, J=9, 2H), 7.39 (d, J=8.7, 2H), 6.88 (d, J=9, 2H), 6.57 (d, J=9, 2H) 3.97 (m, 2H), 3.28 (m, 4H), 1.79 (m, 2H), 1.56 (m, 4H), 1.44 (m, 2H), 1.27 (s, 76H), 0.89 (m, 9H) ppm
13C NMR (75 MHz, CDCl3): 159.8, 148.5, 135.6, 135.2, 133.3, 133.2, 127.1, 125.4, 123.4, 123.1, 114.6, 114.2, 111.1, 107.5, 99.0, 96.5, 85.9, 85.4, 68.1, 51.0, 31.9, 29.71, 29.66, 29.61, 29.59, 29.56, 29.50, 29.37, 29.15, 27.2, 27.1, 26.0, 22.7, 14.1 ppm
MALDI-TOF-MS (ジスラノール): m/z: C70H109Br2NOとして算出 1140.43 g mol-1; 1140 g mol-1 [M]+ 観測
【0077】
<自己重合反応>
4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンをモノマーとして用いた自己重合反応を下記式に従って実施した。
【0078】
【化29】

【0079】
具体的には、25 mLフラスコにヒドロキノン 176 mg(1.60 mmol)、Cs2CO3 521 mg(1.60 mmol)、CsF 268mg(1.76 mmol)、P(tBu)3 9.71 mg(0.0480 mmol)、Pd2(dba)3 8.98 mg(0.0128 mmol)を加えた後、4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリン 136 mg(0.100 mmol)を溶解した1,4-ジオキサン溶液 4mLをシリンジで加えた。得られた溶液を130-140℃に加熱して24時間攪拌した。室温に冷却した後、メタノール250mLに注ぐと沈殿物を得た。ろ過して回収した後、乾燥して4-[(2,5-ジブロモ-4-{[4-(ヘキサデシルオキシ)フェニル]エチニル}フェニル)エチニル]-N,N-ジヘキサデシルアニリンを出発原料とする実施例3に係る縮環芳香族高分子を得た(収率86%)。得られた縮環芳香族高分子について、GPC法、熱分析法、IR法、1H NMR法、紫外可視吸収分析法および紫外可視蛍光分析法を用いた分析結果により同定した。
【0080】
(分析結果)
GPC: Mn 5500、Mw/Mn 1.13
分解温度 (5%): 347℃
ガラス転位点: -40℃
IR (KBr): 2923, 2851, 2203, 1604, 1517, 1466, 1401, 1342, 1190, 815, 721 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.40 (br s), 6.85 (br s), 6.54 (br s), 3.94 (br s), 3.25 (br s), 1.78-1.43 (m), 1.26 (s), 0.88 (s) ppm
紫外可視吸収分析、紫外可視蛍光分析(THF): λmax= 355 nm、λem = 470, 530 nm
【0081】
(実施例4)
実施例4の縮環芳香族高分子を下記式に示す自己重合反応により合成した。なお、本実施例では、出発原料となるモノマーして、1,4-ジブロモ-2,5-ビス(トリイソプロビルシリルエチニル)ベンゼン(J.D.Tovar,T.M.Swager,J.Organomet.Chem.,653,215-222(2002)参照)を用いた。
【化30】

【0082】
具体的には、25 mLフラスコにヒドロキノン 44 mg(0.40 mmol)、Cs2CO3 130 mg(0.40 mmol)、CsF 66.8 mg(0.440 mmol)、P(tBu)3 2.43 mg(0.0120 mmol)、Pd2(dba)3 2.25 mg(0.0032 mmol)を加えた後、1,4-ジブロモ-2,5-ビス(トリイソプロビルシリルエチニル)ベンゼン 114 mg(0.100 mmol)を溶解した1,4-ジオキサン溶液 1 mLをシリンジで加えた。得られた溶液を130-140℃に加熱して24時間攪拌した。室温に冷却した後、メタノール250 mLに注ぐと沈殿物を得た。ろ過して回収した後、乾燥して1,4-ジブロモ-2,5-ビス(トリイソプロビルシリルエチニル)ベンゼンを出発原料とする実施例4に係る縮環芳香族高分子を得た(収率68%)。得られた縮環芳香族高分子について、GPC法、熱分析法、IR法、1H NMR法、紫外可視吸収分析法および紫外可視蛍光分析法を用いた分析結果により同定した。
【0083】
(分析結果)
GPC: Mn 5500、Mw/Mn 1.88
分解温度 (5%): 280℃
ガラス転位点: -32℃
IR (KBr): 2925, 2865, 2208, 2153, 1603, 1521, 1506, 1492, 1464, 1384, 1366, 1196, 1137, 1072, 1017, 996, 919, 883, 913, , 1249, 1173, 828, 813, 720 cm-1
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.40 (br s), 7.10 (br s), 1.66 (br s), 1.30-0.87 (m) ppm
紫外可視吸収分析、紫外可視蛍光分析(THF): λmax = 340 nm、λem = 424 nm
【0084】
(分析結果のまとめ)
実施例1に係る縮環芳香族高分子はアルキル長鎖を複数有するためクロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンなどの有機溶媒に十分な溶解性を有する。GPCから算出した分子量はMn 6400(Mw/Mn = 1.20)であった。1H-NMR測定したところ、芳香環由来のブロードなピークとアルキル鎖の強力ピークが観測された。また、IR測定から2203cm-1にアルキン伸縮振動に由来する吸収が観測されたことより、末端部位にアルキン構造が存在することが示唆された。
【0085】
実施例2に係る縮環芳香族高分子の分子量Mn(Mw/Mn)は18700(7.29)であった。実施例2に係る縮環芳香族高分子においても、実施例1と同様に、IRにおいてアルキンピークが観測された。
【0086】
実施例3に係る縮環芳香族高分子の分子量Mn(Mw/Mn)は5500(1.88)であった。実施例3に係る縮環芳香族高分子においても、実施例1と同様に、IRにおいてアルキンピークが観測された。
【0087】
実施例4では、エチニル末端として芳香環ではなく嵩高いシリル基を採用しても自己重合が進行すること確認された。実施例4に係る縮環芳香族高分子の分子量は、Mn(Mw/Mn)5500(1.13)であった。すなわち、本重合手法は汎用性が極めて高く、様々なモノマー構造に適用できることが見いだされた。
【0088】
実施例1乃至4に係る縮環芳香族高分子の熱分析を熱重量測定(TGA)により実施したところ、5%分解温度は280〜347℃の範囲にあり、十分高い熱安定性を有していた。また、示差走査熱量測定(DSC)測定したところ、-40〜-32℃範囲にアルキル長鎖に由来するガラス転位点が観測された。
【0089】
図1は、各実施例の縮環芳香族高分子について得られた紫外可視吸収スペクトルである。テトラヒドロフラン(THF)中で紫外可視吸収測定を実施したところ、各実施例の縮環芳香族高分子は対応するモノマーよりも長波長側に吸収極大が現れた。特に、芳香環が末端置換している実施例1乃至3の縮環芳香族高分子では、トリアルキルシリル末端基の実施例4の縮環芳香族高分子よりも吸収が長波長シフトしており、共役系の拡張を反映している。電子供与性のジアルキルアニリンと電子受容性のニトロフェニル基が置換した実施例2の縮環芳香族高分子では、分子内ドナーアクセプター相互作用に由来した電荷移動吸収バンドがあるため、最も長波長側まで吸収が現れ、最長波長は近赤外域まで達していた。
【0090】
図2は、各実施例の縮環芳香族高分子について得られた紫外可視発光スペクトルである。THF中での発光スペクトルを測定したところ、末端置換基によって大きく異なる発光挙動が観測された。実施例1の縮環芳香族高分子では、463nmと502nmに発光極大値を示したのに対し、ドナーアクセプター型の実施例2の縮環芳香族高分子では、453nmに極大が観測された。また、ジアルキルアニリンとアルコキシフェニル基という二つのドナーを有する実施例3の縮環芳香族高分子では、470nmと530nmに極大が観測された。トリアルキルシリル末端の実施例4の縮環芳香族高分子では、424nmと最も高エネルギー側に発光極大が現れ、吸収スペクトルと同じ傾向を示した。
【0091】
図3乃至6は、それぞれ実施例1乃至4の縮環芳香族高分子について得られた電気化学測定結果を示すグラフである。ジクロロメタン(0.1M n(C4H9)4NClO4)中、20℃で電気化学測定したところ、実施例1乃至4の縮環芳香族高分子では、ジアルキルアニリン部位に由来する酸化波が0.53-0.56V(vs. Fc/Fc+)に明確に現れた。実施例1および実施例3の縮環芳香族高分子では、ポリマー由来の還元波は現れなかったが、実施例2の縮環芳香族高分子では、ニトロフェニル基由来の還元波が-0.84Vに観測された。すなわち、実施例2の縮環芳香族高分子の電気化学測定結果から算出したバンドギャップは1.37Vとなり、吸収スペクトルと良い一致を示している。また、実施例4の縮環芳香族高分子の酸化波は1.45V、還元波は-1.83Vに現れ、ポリ(ジベンゾペンタレン)骨格由来の酸化還元を示している。
【0092】
以上説明したように、容易に合成できる1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼン誘導体モノマーから一段階で欠陥が無い縮環芳香族高分子を得る手法を開発した。エチニル末端にアルキル鎖などの可溶性置換基を導入できるため、高分子の溶解性低下の問題は生じない。また、エチニル末端に電子供与性基や電子受容性基を導入すると分子内で相互作用するため、吸収・発光位置および電子準位を調節できることが分かった。これら得られた高分子は、電池陰極だけでなく、様々な有機エレクトロニクス応用のための材料として有望である。
【0093】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(3)のいずれかで表される縮重合構造を有することを特徴とする縮環芳香族高分子。
【化1】

【化2】

【化3】

式(1)〜(3)中、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはSi含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。また、式(1)〜(3)中、下記式(4)で表される構成単位は、単環式、多環式または複素環式の芳香族基を表す。共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【化4】

【請求項2】
がRと等しく、かつ、XがXと等しく、
下記式(5)で表される縮重合構造を有することを特徴とする請求項1に記載の縮環芳香族高分子。
【化5】

【請求項3】
上記式(1)〜(3)で表される縮重合構造の出発原料となるモノマーが、下記式(6)で表される自己重縮合型の2官能性モノマーである請求項1に記載の縮環芳香族高分子。
【化6】

(6)中、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはSi含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【請求項4】
上記式(1)〜(3)で表される縮重合構造の出発原料となるモノマーが、下記式(7)で表される1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼン誘導体である請求項1に記載の縮環芳香族高分子。
【化7】

【請求項5】
下記式(8)で表される出発原料となるモノマーを(A)Pd系触媒、(B)塩基および(C)還元剤の存在下で下記反応式(I)〜(III)のいずれかに従って自己重縮合反応させることを特徴とする縮環芳香族高分子の製造方法。
【化8】

式(8)中、R、Rは、それぞれ独立に、有機基またはSi含有基である。X、Xは、それぞれ独立に、ハロゲンから選ばれる。
また、式(8)中、下記式で表される構成単位は、単環式または複素環式の芳香族基を表す。出発原料のモノマーおよび、当該モノマーの自己重縮合反応により得られる縮環芳香族高分子において、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。また、共通の芳香環に置換基として結合している、R基を有するエンイン誘導体とXとはオルト位の関係にある。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項6】
(A)Pd系触媒がPd2(dba)3/P(tBu)3触媒である請求項5に記載の縮環芳香族高分子の製造方法。
【請求項7】
自己重縮合反応に用いられるモノマーが下記式で表される1,4-ジブロモ-2,5-ジエチニルベンゼン誘導体である請求項5または6に記載の縮環芳香族高分子の製造方法。
【化13】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−153117(P2011−153117A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17443(P2010−17443)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】