説明

繊維強化成形材料の製造方法

【課題】力学特性に優れる成形品が得られる繊維強化成形材料を効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、次の第1a工程、第2a工程、第3a工程および第4a工程を含む繊維強化成形材料の製造方法などを用いることを特徴とする;第1a:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工する工程;第2a:第1a工程で得られた強化繊維基材(A1)1〜70質量部に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を0.1〜10質量部を付与する工程;第3a:第2a工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)に、熱可塑性樹脂(C)を複合化して、強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%および熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を含む繊維強化成形材料を得る工程;第4a:第3a工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化成形材料の製造方法に関するものである。詳しくは、繊維強化成形材料を、引き取り方式で製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化成形材料は、比強度、比剛性に優れているため、様々な形態の強化繊維基材で補強された成形材料が電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いられている。この強化繊維基材の形態には、高強度化を主目的とした一方向連続繊維基材や織物基材のほか、成形品の力学特性を等方的にするために強化繊維が均一に分散した形態のもの、あるいは熱可塑性樹脂との混練用にチョップド化した形態のものなどが用いられる。さらには強化繊維を特定の処理剤で処理した成形材料を用いることで、より高強度を発現させれば適用可能な用途は非常に多くなる。従ってこのように力学特性に優れた繊維強化成形材料の製造条件についてはこれまで様々な検討がなされてきた。
【0003】
特許文献1には、強化繊維に所定の重合体を付与して得られる強化繊維と溶融した熱可塑性樹脂とを、強化繊維、重合体および熱可塑性樹脂が所定の配合割合となるように複合化する、繊維強化熱可塑性樹脂の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、繊維強化熱可塑性樹脂成形体の強化繊維として、単繊維状の炭素繊維であって質量平均繊維長が0.5〜10mmであり、かつ、配向パラメータが−0.25〜0.25である炭素繊維を用いる繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、(I)成形材料に含まれる熱可塑性樹脂を加熱溶融する工程、(II)金型に成形材料を配置する工程、(III)金型で成形材料を加圧する工程、(IV)金型内で成形材料を固化する工程、(V)金型を開き、繊維強化熱可塑性樹脂成形体を脱型する工程を含む製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、不燃性繊維状物質と熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーを主成分とし、他の所定の成分を含むスラリー原液を、走行もしくは回転する網状または多孔質状の基材に、基材の面と5〜60度の角度で供給した後脱水、乾燥させるシート状物の製造方法が開示されている。
【特許文献1】国際公開第2007/37260号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/97436号パンフレット
【特許文献3】特開昭58−69047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された製造方法は、(メタ)アクリル系重合体成分を強化繊維ウェブに付与するのみであり、その後の引き取り性など生産性を考慮したものではなく、広く繊維強化複合材料として活用するためには、さらなる製造方法の改良が必要とされていた。
【0007】
特許文献2、3で開示された製造方法においては、いずれも、成形材料の引き取りに関して特別な手段が用いられている訳ではなく、そのため、製造に時間および手間を要し、繊維強化成形材料の効率的な製造への適用には、さらなる製造方法の改善が必要とされていた。
【0008】
本発明は、力学特性に優れる成形品が得られる繊維強化成形材料を効率良く製造することができる、繊維強化成形材料の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための本発明は、下記の[1]〜[16]の構成からなる。
【0010】
[1]少なくとも、次の第1a、第2a、第3a、第4a工程を含む繊維強化成形材料の製造方法。
第1a:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工する工程
第2a:第1a工程で得られた強化繊維基材(A1)1〜70質量%に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を0.1〜10質量%付与する工程
第3a:第2a工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)に、熱可塑性樹脂(C)が20〜98.9質量%となるように複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第4a:第3a工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【0011】
[2]少なくとも、次の第1b、第2b、第3b工程を含む繊維強化成形材料の製造方法。
第1b:側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)が0.1〜10質量%付着した、不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A2)に加工する工程
第2b:第1b工程で得られた強化繊維基材(A2)1〜70質量%に、熱可塑性樹脂(C)が20〜98.9質量%となるように複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第3b:第2b工程で得られた繊維強化成形材料を1〜30m/分の速度で引き取る工程。
【0012】
[3]少なくとも、次の第1c、第2c、第3c工程を含む繊維強化成形材料の製造方法。
第1c:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工すると同時に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を前記強化繊維基材(A1)に0.1〜10質量%付与する工程
第2c:第1c工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)1〜70質量%に、熱可塑性樹脂(C)が20〜98.9質量%となるように複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第3c:第2c工程で得られた繊維強化成形材料を1〜30m/分の速度で引き取る工程。
【0013】
[4]前記強化繊維基材(A1)が、以下の方法aにより加工された得られた短繊維ランダム配向基材である、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
方法a:分散媒体に不連続な強化繊維束を投入する工程(i)と、前記強化繊維束を構成する強化繊維が前記分散媒体中に分散したスラリーを調製する工程(ii)と、前記スラリーより分散媒体を除去して強化繊維基材(A1)を得る工程(iii)とを少なくとも有し、前記工程(ii)で調製されるスラリー中の強化繊維の質量含有率をC1とし、前記工程(iii)開始時のスラリー中の強化繊維の質量含有率をC2とした場合に、C1/C2が0.8以上1.2以下とする。
【0014】
[5]前記第2a、1b、1cのいずれかの工程において得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)を、引張強力が1N/cm以上の状態として引き取る、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0015】
[6]前記工程(ii)で調製されるスラリー中の固形成分の質量含有率が0.001〜1質量%である、[4]または[5]に記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0016】
[7]工程(i)において分散媒体と強化繊維束とが分散槽に継続的に投入され、前記工程(i)から工程(iii)までが継続的に実施される、[4]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0017】
[8]全工程がオンラインで実施されてなる、[1]〜[7]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0018】
[9]前記強化繊維基材(A2)における固形分の質量のうち、強化繊維の割合が80質量%以上100質量%以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0019】
[10]前記第1a、1b、1cのいずれかの工程において、強化繊維基材(A1)を加工する際に、熱可塑性樹脂(C)を繊維状または粒子状の形態にて強化繊維基材(A1)中に混合する、[1]〜[8]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0020】
[11]前記第4a、3b、3cのいずれかの工程の後に、得られた繊維強化成形材料を長さ方向、幅方向ともに1〜30mmにカットする工程を有する、[1]〜[10]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0021】
[12]前記(メタ)アクリル系重合体(B)の凝集エネルギー密度CEDが385MPa以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0022】
[13]前記(メタ)アクリル系重合体(B)を構成する(メタ)アクリル系単量体が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体が60質量%以上である、[1]〜[12]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0023】
[14]前記強化繊維が炭素繊維である、[1]〜[13]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0024】
[15]前記炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.5である、[14]に記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【0025】
[16]前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、PEEKより選ばれる少なくとも1種を含んでなる熱可塑性樹脂である、[1]〜[15]のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維強化成形材料の製造方法によれば、比強度、比剛性等の力学特性に優れ、強化繊維の分散性が良好であり、かつ均一性の良好な成形品を成形することができる繊維強化成形材料を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】湿式法により強化繊維基材を抄造するために用いるスラリーの模式図である。
【図2】強化繊維基材(A1)、(A2)を製造するための装置のモデル図である。
【図3】繊維強化成形材料を製造するための装置のモデル図である。
【図4】強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料を製造するための装置のモデル図である。
【図5】強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料を製造するための装置のモデル図である。
【図6】強化繊維基材(A1)を製造するための装置のモデル図である。
【図7】強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料を製造するための装置のモデル図である。
【図8】強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料を製造するための装置のモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。
【0029】
本発明の繊維強化成形材料の製造方法の第1の形態は、次の第1a工程、第2a工程、第3a工程および第4a工程を含む繊維強化成形材料の製造方法である。
第1a:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工する工程
第2a:第1a工程で得られた強化繊維基材(A1)1〜70質量部に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を0.1〜10質量部を付与する工程
第3a:第2a工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%に、熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第4a:第3a工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【0030】
ここで強化繊維束とは、強化繊維から構成される繊維束を意味する。また、強化繊維束を構成する単繊維の本数には、特に制限はないが、生産性の観点からは24,000本以上が好ましく、48,000本以上がさらに好ましい。単繊維の本数の上限については、特に制限はないが、分散性や取り扱い性とのバランスも考慮して、300,000本以下が好ましい。
【0031】
強化繊維束の長さは、1〜50mmであることが好ましく、3〜30mmであることがより好ましい。1mm未満であると強化繊維による補強効果を効率良く発揮することが困難となるおそれがあり、50mmを超えると分散を良好に保つのが困難となるおそれがある。強化繊維束の長さとは、強化繊維束を構成する単繊維の長さをいい、強化繊維束の繊維軸方向の長さをノギスで測定する、あるいは強化繊維束から単繊維を取り出し顕微鏡で観察して測定され得る。また成形材料中の強化繊維の長さを測定するには、以下のようにして繊維強化成形材料から強化繊維を分離して測定することができる。繊維強化成形材料の一部を切り出し、結着している熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒により、熱可塑性樹脂を充分溶解させる。その後濾過などの公知の操作により熱可塑性樹脂から強化繊維を分離する。あるいは、繊維強化成形材料の一部を切り出し、500℃の温度で2時間加熱し、熱可塑性樹脂を焼き飛ばして熱可塑性樹脂から強化繊維を分離する。分離された強化繊維を無作為に400本抽出し、光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にてその長さを10μm単位まで測定し、その平均値を繊維長とする。
【0032】
強化繊維としては特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、比強度、比剛性が高く軽量化効果の観点から、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維およびレーヨン系炭素繊維などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られる成形品の経済性を高める観点から、ガラス繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる成形品の衝撃吸収性や賦形性を高める観点から、アラミド繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる成形品の導電性を高める観点から、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
【0033】
なかでも炭素繊維は、そのX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.5であるものが好ましく、0.06〜0.3であるものがより好ましく、0.07〜0.2であるものがさらにより好ましい。表面酸素濃度O/Cが0.05以上であることにより、炭素繊維表面の極性官能基量を確保し、熱可塑性樹脂との親和性が高くなるので、より強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度O/Cが0.5以下であることにより、表面酸化による炭素繊維自身の強度の低下を少なくすることができる。
【0034】
表面酸素濃度O/Cとは、繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比を意味する。表面酸素濃度O/CをX線光電子分光法により求める場合の手順を、以下に一例を挙げて説明する。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。X線源としてA1Kα1、2を用い、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202cVに合わせる。K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりC1Sピーク面積を求める。K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりO1Sピーク面積を求める。
【0035】
表面酸素濃度O/Cは、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用いた場合は、感度補正値を1.74として算出し得る。
【0036】
炭素繊維の表面酸素濃度O/Cを0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、電界酸化処理、薬液酸化処理、気相酸化処理などの手法が例示される。中でも電界酸化処理が取り扱いやすく好ましい。
【0037】
電界酸化処理に用いられる電解液としては、以下に挙げる化合物の水溶液が好ましく用いられる。硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウム等の無機水酸化物;アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機金属塩類;酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩類;ヒドラジンなどの有機化合物などである。これらの中でも電解液としては無機酸が好ましく、硫酸および硝酸が特に好ましく使用される。電界処理の程度は、電界処理で流れる電気量を設定することにより炭素繊維表面のO/Cを制御することができる。
【0038】
第1a工程では、不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工するにあたり、乾式法、あるいは湿式法を用いることができる。等方的で力学特性の高い強化繊維基材(A1)を得るためには、強化繊維束を高度に分散させて均一に強化繊維が分散した基材とすることが好ましい。
【0039】
乾式法により第1a工程を行う場合、強化繊維束を気相中で分散させて、分散後の強化繊維束を堆積させて、シート状の強化繊維基材(A1)を得ることができる。
【0040】
強化繊維束の気相中での分散は、強化繊維束を非接触式で開繊し、開繊した強化繊維束を堆積させて行う方法(非接触式法)、および、強化繊維束を接触式で開繊し、開繊した強化繊維束を堆積させて行う方法(接触式法)がある。
【0041】
非接触式法は、強化繊維束に固体や開繊装置を接触させることなく開繊させる方法である。例えば、空気や不活性ガスなどの気体を強化繊維束に吹き付ける方法、なかでもコスト面で有利な空気を加圧して吹き付ける方法が好ましく挙げられる。
【0042】
空気流を用いる方法において、強化繊維束に対し空気流を当てる条件は特に限定されない。一例を挙げると、加圧空気(通常0.1MPa以上10MPa以下、好ましくは0.5MPa以上5MPa以下の圧力がかかるような空気流)を強化繊維束が開繊するまで当てる。空気流を用いる方法において、使用し得る装置は特に限定されないが、空気管を備え、空気吸引が可能であり、強化繊維束を収容し得る容器が例示できる。かかる容器を用いることにより、強化繊維束の開繊と堆積を一つの容器内で行うことができる。
【0043】
接触式法とは、強化繊維束に固体や開繊装置を物理的に接触させて開繊させる方法である。接触式法としては、カーディング、ニードルパンチおよびローラー開繊が例示される。このうちカーディングまたはニードルパンチが好ましく、カーディングがより好ましい。接触式法の実施条件は特に限定されず、強化繊維束が開繊する条件を適宜定めることができる。
【0044】
湿式法により第1a工程を行う場合、強化繊維束の分散を水中で行い、得られるスラリーを抄造してシート状の強化繊維基材(A1)を得ることができる。
【0045】
強化繊維束を分散させる水(分散液)は、通常の水道水のほか、蒸留水、精製水等の水を使用することができる。水には必要に応じて界面活性剤や増粘剤を混合し得る。界面活性剤は、陽イオン型、陰イオン型、非イオン型および両性の各種に分類されるが、このうち非イオン性界面活性剤が好ましく用いられ、中でもポリオキシエチレンラウリルエーテルがより好ましく用いられる。増粘剤はポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、でんぷんなどが好ましく用いられる。界面活性剤や増粘剤を水に混合する場合の濃度は、好ましくは0.0001質量%以上0.1質量%以下、より好ましくは0.0003質量%以上0.05質量%以下である。
【0046】
スラリーとは固体成分が分散している懸濁液をいう。スラリーにおける固体成分濃度は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。ここで、スラリーにおける固体成分濃度とは、スラリー中に固体成分として強化繊維以外の成分が含まれていない場合には、スラリー中の強化繊維の質量含有率を意味し、スラリー中に強化繊維以外にも、例えば熱可塑性樹脂の繊維あるいは粒子などの固体成分を含む場合には、それら全ての固体成分のスラリー中の質量含有率のことを意味する。スラリーにおける固体成分濃度が0.01質量%以上1質量%以下であることにより、均一に分散したスラリーを短時間で得ることができ抄造を効率よく行うことができる。水(分散液)に対し強化繊維束を分散させる際には、必要に応じて撹拌を行う。
【0047】
スラリーの抄造は、上記スラリーから水を吸引して行うことができる。スラリーの抄造は、いわゆる抄紙法に倣って行うことができる。一例を挙げて説明すると、底部に抄紙面を有し水を底部から吸引できる槽に、スラリーを流し込み、水を吸引する。前記槽としては、熊谷理機工業株式会社製、No.2553−I(商品名)、底部に幅200mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽が例示される。このようにして強化繊維基材(A1)が得られる。
【0048】
固形成分が均一に配合された抄造体を製造するためには、原料スラリーを抄造工程に供給する前にスラリー濃度を希釈することが一般的である(例えば、特開2006−104608号公報参照)。具体的には、スラリーにおける強化繊維の分散性を保つために、まず強化繊維濃度の高いスラリーを作成し、次にこれを希釈して強化繊維濃度の低いスラリーとすることが提案されている。しかし、2段階を踏むことにより作業が煩雑となるとともに、スラリーの分散媒体への親和性の低い強化繊維の場合、強化繊維濃度の高いスラリーの作製は非常に難しいと言う問題点がある。
【0049】
そこで、湿式法による強化繊維基材(A1)を製造する際には、次の方法で製造することがより好ましい。すなわち、分散媒体に不連続な強化繊維束を投入する工程(i)と、前記強化繊維束を構成する強化繊維が前記分散媒中に分散したスラリーを調製する工程(ii)と、前記スラリーより分散媒体を除去して強化繊維基材(A1)を得る工程(iii)とを含み、前記工程(ii)で調製されたスラリー中の強化繊維の質量含有率をC1とし、前記工程(iii)開始時のスラリー中の強化繊維の質量含有率をC2とした場合に、C1/C2が0.8以上1.2以下の範囲である強化繊維基材(A1)の製造方法である。この強化繊維基材(A1)の製造方法によれば、スラリー調整の際の分散媒体への親和性の低い強化繊維にも適用でき、抄造時の強化繊維の繊維分散性を保持し、樹脂等を配合し成形品とした場合に成形品の力学特性に優れる強化繊維基材(A1)を短時間で得ることができるため好ましい。C1/C2の好ましい範囲は0.8以上1.2以下であるが、0.9以上1.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0050】
また工程(ii)の所要時間は10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内であり、さらに好ましくは3分以内である。10分を超えると、強化繊維の種類によっては、スラリー中で分散した強化繊維が再凝集するおそれがある。工程(ii)の所要時間の下限は特に限定されないが、通常は1分以上である。
【0051】
工程(iii)へのスラリーの流量は、0.001m/秒以上0.1m/秒以下であることが好ましく、0.005m/秒以上0.05m/秒以下であることがより好ましい。0.001m/秒未満であると供給量が少なく、プロセスに時間がかかるために生産性が悪くなるおそれがあり、0.1m/秒を超えるとスラリーの流速が速いため、スラリーに剪断がかかりやすくなり分散状態が不十分となるおそれがある。
【0052】
工程(ii)〜(iii)において、繊維濃度パラメータnLを(0<)nL<L/Dの範囲として抄造することが好ましい。ここで各パラメータは以下の通りである。
n:スラリー単位体積当たりに含まれる強化繊維の本数
L:強化繊維の長さ
D:強化繊維の直径。
【0053】
図1に強化繊維1を分散媒体2に含むスラリーの模式図を示す。Doi, M..and Edwards, S.F., The Theory of Polymer Dynamics 324(1986)では繊維濃度パラメータnLが、nL<1の場合に希薄状態、1<nL<L/Dの場合に準希薄状態と記載されている。繊維濃度パラメータnLがL/D未満であると、スラリー中に分散した各強化繊維1同士が力学的に干渉しにくくなるため、強化繊維1の再凝集を抑え、スラリー中での強化繊維1の分散性を高めるうえで好ましい。強化繊維1の濃度は低いほど強化繊維1の分散性を高めることができるので好ましいが、得られる強化繊維基材(A1)の目付や厚みを確保したい場合や、強化繊維基材(A1)の生産性を高めたい場合には、強化繊維1の濃度が高い方が有利である。したがって、準希薄状態である1<nL<L/Dの強化繊維濃度で抄造することが好ましい。
【0054】
また、得られる強化繊維基材(A1)の含水率は、第2a工程の(メタ)アクリル系重合体の付与工程において、(メタ)アクリル系重合体(B)を付与する前に、脱水や乾燥工程により、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下に調整されることが好ましい。これにより、第2a工程に要する時間を短縮し、プリプレグを短時間で得ることができる
強化繊維の分散が阻害されにくく、強化繊維を良好に分散させる観点および、強化繊維基材(A1)を熱可塑性樹脂と複合させた場合に効率的に補強効果を発現することができる観点からは、強化繊維基材(A1)に占める強化繊維の割合は、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。この場合、後の工程において強化繊維基材に、熱可塑性樹脂を含浸させる割合が多くなる。
【0055】
一方、強化繊維基材(A1)に熱可塑性樹脂を容易に含浸しやすくする観点からは、強化繊維基材(A1)を製造する際に、熱可塑性樹脂を繊維状または粒子状の形態にて強化繊維基材(A1)中に混合させることが好ましい。この結果、強化繊維基材(A1)の内部に熱可塑性樹脂が配置されるため、熱可塑性樹脂を加熱溶融して複合化する工程において容易に強化繊維基材(A1)に熱可塑性樹脂が含浸できる。この場合、熱可塑性樹脂は強化繊維基材(A1)に予備的に複合化された状態である。乾式法では、例えば、第1a工程において強化繊維束と繊維状の熱可塑性樹脂とを混合カーディングすることにより実施することができる。湿式法では、例えば第1a工程において、強化繊維束と繊維状または粒子状の熱可塑性樹脂とを混抄することにより実施することができる。
【0056】
繊維強化成形材料を、射出成形に使用する成形材料とするために、前記第4a、3b、3cのいずれかの工程の後に、得られた繊維強化成形材料を長さ方向、幅方向ともに1〜30mmにカットする工程を設けてもよい。成形材料の取り扱い性(射出成形機への供給安定性など)および得られる成形品の力学特性を考慮すると、長さ方向、幅方向ともに3〜10mmにカットすることが好ましい。
【0057】
強化繊維基材(A1)の目付は、10g/m以上500g/m以下であることが好ましく、50g/m以上300g/m以下あることがより好ましい。目付が10g/m未満であると基材の破れなどの取り扱い性に不具合を生じるおそれがある。目付が500g/mを超えると、湿式法では基材の乾燥に長時間かかることや、乾式法ではウェブが厚くなる場合があり、その後のプロセスで取り扱い性が難しくなるおそれがある。
【0058】
第2a工程では、第1a工程において得られる強化繊維基材(A1)1〜70質量部に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を0.1〜10質量部付与する。(メタ)アクリル系重合体(B)は、工程中における強化繊維基材(A2)の取り扱い性を高める観点および強化繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に対して重要である。(メタ)アクリル系重合体(B)が0.1質量部よりも少なくなると、強化繊維基材(A2)を引き取ることが困難となり、繊維強化成形材料の生産効率が悪くなる。また、10質量部よりも多くなると、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に劣ることになる。
【0059】
(メタ)アクリル系重合体(B)が水酸基を有することで、(メタ)アクリル系重合体(B)同士の相互作用を高め、強化繊維基材(A2)の取り扱い性を高める効果がみられる。また、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性を高める効果も有する。
【0060】
側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を形成する水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体単位としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセリンモノメタクリレート、グリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、3,4−ジヒドロキシブチル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、α−ヒドロキシメチルアクリレート、α−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ジブタンジオールモノアクリレート、トリブタンジオールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、トリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ジブタンジオールモノメタクリレート、トリブタンジオールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル単量体単位が挙げられる。なかでも、入手が容易なアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これら単量体は単独または混合で使用してもよい。
【0061】
側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を形成するその他の(メタ)アクリル系単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、イソボルニルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸(フルオロ)アルキルエステル;ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリル系単量体単位;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体単位;グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピルアクリルアミド)、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミドなどのアミド基含有(メタ)アクリル系単量体単位;N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、N−(2−メタクリルアミドエチル)エチレンウレアなどのウレア基含有(メタ)アクリル系単量体単位;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチルなどのメトキシ基またはエトキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体単位;N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基含有(メタ)アクリル系単量体単位;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、ハイブリッドポリエステルアクリレートオリゴマー「サートマー(登録商標)CN−2402」(サートマー(株)社のZn含有アクリルオリゴマー)、ハイブリッドポリウレタンオリゴマー「サートマー(登録商標)2405」(サートマー(株)社のZn含有アクリルオリゴマー)などの分子中に金属原子(Zn、Al、Ca、Mg、Zr、Cuなど)を含有するモノマー、オリゴマーなどが例示される。これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
【0062】
側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体の凝集エネルギー密度CEDは、好ましくは、385〜500MPa、より好ましくは、395〜450MPa、さらに好ましくは、405〜420MPaであるのが望ましい。凝集エネルギー密度CEDが385MPa以上であれば、強化繊維基材(A1)や熱可塑性樹脂に対する浸透性、ヌレ性および親和性が良好となり、良好な界面接着性が発揮される傾向が見られる。凝集エネルギー密度が高すぎても、低すぎても、親和性のバランスが崩れて、界面接着性が低下する。
【0063】
ここで、(メタ)アクリル系共重合体の凝集エネルギー密度CED(単位MPa)の算出方法について説明する。(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CEDは以下の式で算出する。ただしΣP(n)=1である。
CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ(P(n)×M(n))(n=1〜m)
CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する。また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する。ここで、CS(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造、すなわち単量体のC=C二重結合が開いた状態の化学構造である。また、係数1.15は、(メタ)アクリル系単量体単位の比重を表す。
【0064】
CE(n)はCE(n)=ΣEcoh(n)で算出する。ここで、ΣEcoh(n)は化学構造CS(n)を構成する、例えば、−CH、−CH−、>C<、−COOH、−OHなどの原子団の凝集エネルギーEcoh(n)の総和を表す。
【0065】
ここで、各原子団の凝集エネルギーは、参考文献:(1)R.F.Fedors:「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」, Polm. Eng. Sci., 14(2).147-154(1974)、および、参考文献:(2)「SP値 基礎・応用と計算方法」((株)情報機構)、第6刷、p69、2008を参照し、R.F.Fedors が提案している原子団の凝集エネルギーEcoh (J/mol)を使用した。
【0066】
一例として、メタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチルなどがラジカル重合した化学構造の凝集エネルギー算出例を表1に示した。
【0067】
表1中、MAAはメタクリル酸単位を表し、HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位を表し、4HBMAはメタクリル酸4−ヒドロキシブチル単位を表し、MMAはメタクリル酸メチル単位を表し、BMAはメタクリル酸n−ブチル単位を表し、EHMAはメタクリル酸2−エチルへキシル単位を表す。これらの略号は、以下の説明でも使用する。
【0068】
【表1】

【0069】
MAAを例に取り、(メタ)アクリル単量体単位(n)の凝集エネルギーCE(n)の算出方法を説明する。原子団のEcoh(J/mol)の欄には−CH−などの各原子団の凝集エネルギー(J/mol)を示し、MAA欄左の枠には、MAAがラジカル重合した化学構造が有する原子団の数を示し、右の枠には原子団の凝集エネルギー(J/mol)と原子団の数の積を示した。MAA欄、右枠を縦に合計したものがMAAの凝集エネルギーCE(n)である。
【0070】
(メタ)アクリル単量体単位としてMAA、HEMA、MMAおよびBMAを使用する(メタ)アクリル系重合体を例に取り、凝集エネルギー密度CEDの算出方法を説明する。
【0071】
ここで、本例では、MMA/BMA/MAA/HEMA=35/54/1/10(=100)(質量%)=0.427/0.464/0.014/0.095(=1.000)(モル分率)とする。
【0072】
MMAの単量体単位構造(C=C二重結合が開いた状態)の分子量は100、凝集エネルギーは33830J/mol、BMAの単量体単位の分子量は142、凝集エネルギーは48650J/mol、MAAの単量体単位の分子量は86、凝集エネルギーは38750J/mol、HEMAの単量体単位の分子量は130、凝集エネルギーは60850J/molであるから、(メタ)アクリル系重合体の凝集エネルギー密度CED=1.15×(0.427×33830+0.464×48650+0.014×38750+0.095×60850)/(0.427×100+0.464×142+0.014×86+0.095×130)=408MPaとなる。
【0073】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体単位および、その他の(メタ)アクリル系単量体単位は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した前記(メタ)アクリル系重合体を構成する全ての(メタ)アクリル系単量体単位のうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体単位が60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。この範囲とすることで、(メタ)アクリル系重合体(B)が比較的柔軟になり、強化繊維基材(A2)の取り扱い性を向上させることができること、および(メタ)アクリル系重合体が比較的柔軟になることによって、強化繊維と(メタ)アクリル系重合体および、(メタ)アクリル系重合体と熱可塑性樹脂との接着において、界面部分すなわち接着部分を柔軟に保つことができ、接着性を高めることができる。
【0074】
強化繊維基材(A1)への(メタ)アクリル系重合体(B)の付与は、(メタ)アクリル系重合体(B)を含む水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを用いて行うことが好ましい。水溶液とは、(メタ)アクリル系重合体(B)が水にほぼ完全に溶解した状態の溶液を意味する。エマルジョンとは、分散媒である液体中に(メタ)アクリル系重合体を含む液体が微細粒子を形成して分散している状態を意味する。サスペンジョンとは、固体の(メタ)アクリル系重合体が水に懸濁した状態を意味する。液中の成分粒径の大きさは、水溶液<エマルジョン<サスペンジョンの順である。(メタ)アクリル系重合体を強化繊維基材(A1)に付与する方法は、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系重合体を含む水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンに強化繊維基材(A1)を浸漬する方法、(メタ)アクリル系重合体を含む水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを強化繊維基材(A1)にシャワーする方法等によることができる。付与後は、例えば吸引除去する方法または吸収紙などの吸収材へ吸収させる方法などで、過剰分の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを除去しておくことが好ましい。
【0075】
さらにこの場合、前記第2a工程において、強化繊維基材(A1)は、(メタ)アクリル系重合体(B)の付与後に加熱されることが好ましい。これにより、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された後の強化繊維基材(A1)に含まれる水分を除去し、第3a工程に要する時間を短縮し、繊維強化成形材料を短時間で得ることができる。加熱温度は、適宜設定することができ、100℃以上300℃以下であることが好ましく、120℃以上250℃以下であることがより好ましい。
【0076】
前記第2a工程において得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)は、短時間に多く製造するためには、引き取りを行うことが好ましい。またその際、強化繊維基材(A2)にしわ、たるみが発生しないよう引張強力が1N/cm以上の状態として引き取ることが好ましい。引張強力は、より好ましくは3N/cm以上、さらに好ましくは5N/cm以上である。強化繊維基材(A2)にかけることができる引張強力は、(メタ)アクリル系重合体(B)の種類や付与量を調整することで制御でき、付与量が多くすると引張強力を高くすることができる。また、かけられる引張強力が1N/cm未満の状態となると、強化繊維基材(A2)がちぎれ易い状態であり、強化繊維基材(A2)の取り扱い性の観点からも、引張強力が1N/cm以上あることが好ましい。引張強力の上限は特に限定されないが、100N/cmもあれば、強化繊維基材(A2)の取り扱い性も十分に満足できる状態である。
【0077】
第3a工程では、第2a工程において得られる(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)に熱可塑性樹脂(C)を含浸させ、強化繊維基材(A2)と熱可塑性樹脂とを複合化し、繊維強化成形材料を得る。ここで熱可塑性樹脂(C)としては、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや;ポリオキシメチレン(POM);ポリアミド(PA);ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN);ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂;液晶ポリマー(LCP)」などの結晶性樹脂;「スチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」などの非晶性樹脂;フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂;更にポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系エラストマー等の各種熱可塑エラストマー等;これらの共重合体および変性体等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。中でも、得られる成形品の軽量性の観点からは、ポリオレフィンが好ましい。強度の観点からは、ポリアミドが好ましい。表面外観の観点からは、ポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が好ましい。耐熱性の観点からは、ポリアリーレンスルフィドが好ましい。連続使用温度の観点からは、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。耐薬品性の観点からは、フッ素系樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂(C)には、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの熱可塑性樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂組成物が用いられても良い。
【0078】
繊維強化成形材料に対する強化繊維、(メタ)アクリル系重合体(B)および熱可塑性樹脂(C)の含有量は、強化繊維が1〜70質量%、(メタ)アクリル系重合体(B)が0.1〜10質量%、熱可塑性樹脂(C)が20〜98.9質量%である。この範囲とすることにより、強化繊維の補強を効率良く発揮可能な成形材料が得られ易い。より好ましくは、強化繊維が10〜60質量%、(メタ)アクリル系重合体(B)が0.5〜10質量%、熱可塑性樹脂が30〜89.5質量%である。さらに好ましくは、強化繊維が20〜60質量%、(メタ)アクリル系重合体(B)が1〜8質量%、熱可塑性樹脂が32〜79質量%である。
【0079】
熱可塑性樹脂(C)と、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)との複合化は、熱可塑性樹脂(C)を強化繊維基材(A2)に接触させることにより行うことができる。この場合の熱可塑性樹脂(C)の形態は、特に限定されないが、例えば布帛、不織布およびフィルムから選択される少なくとも1種の形態であることが好ましい。接触の方式は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の布帛、不織布またはフィルムを2枚用意し、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)の上下両面に配置する方式が例示される。
【0080】
熱可塑性樹脂(C)と、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)との複合化は、加圧および/または加熱により行われることが好ましく、加圧と加熱の両方が同時に行われることがより好ましい。加圧の条件は0.01MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上5MPa以下であることがより好ましい。加熱の条件は、用いる熱可塑性樹脂が溶融または流動可能な温度であることが好ましく、温度領域では50℃以上400℃以下であることが好ましく、80℃以上350℃以下であることがより好ましい。加圧および/または加熱は、熱可塑性樹脂(C)を(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)に接触させた状態で行うことができる。例えば、熱可塑性樹脂(C)の布帛、不織布またはフィルムを2枚用意し、(メタ)アクリル系重合体(B)の付与された強化繊維基材(A2)の上下両面に配置し、両面から加熱および/または加熱を行う(ダブルベルトプレス装置で挟み込む方法等)方法が挙げられる。
【0081】
本発明は、上記第1a工程〜第3a工程のほかに、さらに第4a工程を含む。第4a工程は、前記第3a工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程である。側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)と熱可塑性樹脂(C)を複合化することにより、強化繊維基材(A2)が熱可塑性樹脂(C)によってより強固に補強されることとなり、上記速度で繊維強化成形材料を引き取ることが可能となる。繊維強化成形材料の引き取りは、ロールに巻き取って行うことができる。引取速度は3m/分であることが好ましく、より好ましくは5m/分、さらに好ましくは10m/分以上である。引取速度の上限は好ましくは、100m/分以下、より好ましくは30m/分以下である。
【0082】
繊維強化成形材料を短時間で得ることができるため、第1a工程〜第4a工程のすべてがオンラインで実施されることがより好ましい。オンラインとは、各工程が連続的に一連の流れとして実施されるプロセスであり、各工程が独立して実施されるオフラインの反対語である。
【0083】
さらに、第1a工程において、分散媒体と強化繊維束とが継続的に投入され、前記工程(i)から工程(iii)までが継続的に実施されることが好ましい。これにより、強化繊維基材(A1)をより短時間でより多く得ることができる。また、一度にスラリーを大量に投入すると、スラリーの一部は抄紙されるまでに長時間かかり分散状態が不良になってしまう可能性があるが、前記工程(i)から工程(iii)までを継続的に行うことにより、スラリーを少量ずつ投入し、効率よく、かつ、分散状態を保持しつつ抄紙することが可能である。ここで、「継続的に行う」とは、工程(i)において原料を間欠的に、あるいは連続的に投入し、引き続き工程(ii)〜(iii)を実施することを意味する。言い換えれば一連の工程において、分散スラリーの原料の供給、および後工程へのスラリー供給を継続しながら実施する状態を意味し、量産を考慮したプロセスである。継続的に投入を行う方法としては、一定の速度で投入する方法、所定の間隔に略一定量を投入する方法が例示される。一定の速度で投入する条件としては、分散媒体を1×10g/分以上1×10g/分以下、強化繊維束を0.1g/分以上1×10g/分以下の速度で投入する条件が例示される。所定の間隔に略一定量を投入する条件としては、1〜5分おきに分散媒体を1×10g以上1×10g以下ずつ、強化繊維束を0.1g以上1×10g以下ずつ投入する条件が例示される。
【0084】
本発明の繊維強化成形材料の製造方法の第2の形態は、次の第1b工程、第2b工程、第3b工程を含む繊維強化成形材料の製造方法である。
第1b:強化繊維束1〜70質量部に対して、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)が0.1〜10質量部付着した不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A2)に加工する工程
第2b:第1b工程で得られた(メタ)アクリル系重合体が付与された強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%と、熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第3b:第2b工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【0085】
第1の形態と異なる部分は、第1b工程において、(メタ)アクリル系重合体(B)がすでに付与されている強化繊維束を用いる部分である。(メタ)アクリル系重合体(B)がすでに付与されている強化繊維束は、具体的には(メタ)アクリル系重合体(B)の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンに、強化繊維束を浸漬するか、あるいは強化繊維束にそれらをシャワー式、カーテンコート式等で含浸させてから、乾燥させることで、準備することができる。
【0086】
第2b工程および第3b工程は、第1の形態の第3a工程および第4a工程とそれぞれ同じである。
【0087】
本発明の繊維強化成形材料の製造方法の第3の形態は、次の第1c工程、第2c工程、第3c工程を含む繊維強化成形材料の製造方法である。
第1c:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工すると同時に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を前記強化繊維基材(A1)に、強化繊維基材(A1)1〜70質量部に対して0.1〜10質量部付与し、(メタ)アクリル系重合体が付与された強化繊維基材(A2)を得る工程
第2c:第1c工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%と、熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を複合化して、繊維強化成形材料を得る工程
第3c:第2c工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【0088】
第1の形態と異なる部分は、第1c工程において、不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工すると同時に(メタ)アクリル系重合体(B)を付与する部分である。具体的には、乾式法により第1c工程を行う場合は、強化繊維束に空気や不活性ガスなどの気体を吹き付けで開繊させるときに、同時に(メタ)アクリル系重合体(B)の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを、強化繊維束に塗布または噴霧することで付与する方法や、強化繊維束をカーディング、ニードルパンチ、ローラー開繊などの接触式法で開繊する際には、同時に(メタ)アクリル系重合体(B)の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを、強化繊維束に浸漬、塗布あるいは噴霧することで付与する方法が適用できる。湿式法により第1c工程を行う場合は、強化繊維束を分散させる分散槽に(メタ)アクリル系重合体(B)を投入しておき、強化繊維束を分散して強化繊維基材(A1)にすると同時に(メタ)アクリル系重合体(B)を強化繊維基材(A1)に付与する方法が適用できる。
【0089】
第2c工程および第3c工程は、第1の形態の第3a工程および第4a工程とそれぞれ同じである。
【0090】
第1の形態では、(メタ)アクリル系重合体(B)を後工程で付与するため、強化繊維束に予め(メタ)アクリル系重合体(B)が付与されて集束されている第2の形態よりも強化繊維束を容易に分散させやすくなる。また同様に、第1の形態は、強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工すると同時に(メタ)アクリル系重合体(B)を付与する第3の形態よりも、強化繊維束を容易に分散させやすくなる。例えば湿式法では、第3の形態では分散槽に多量の(メタ)アクリル系重合体(B)を投入するのに対し、第1の形態では、分散槽に(メタ)アクリル系重合体(B)を投入する必要がないので、強化繊維束の分散を容易にすることができる。したがって、第1の形態が最も好ましい。
【0091】
本発明において得られる繊維強化成形材料を用いて得られる成形品は、電気・電子機器部品;土木・建築用部品;自動車・二輪車用部品;航空機用部品等の各種用途に用いることができる。なかでも電子機器部品、自動車用の構造部品により好ましく用いられる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例に用いた原料は以下のとおりである。
【0093】
(原料1)強化繊維束A1(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A1は、下記のようにして製造した。
【0094】
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行った後、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A1(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A1の物性を下記に示す。
【0095】
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.10
サイジング剤種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング剤付着量(注4):1.5質量%。
【0096】
(原料2)強化繊維束A2(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A2は、下記のようにして製造した。
【0097】
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数12,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行った後、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A2(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A2の物性を下記に示す。
【0098】
総フィラメント数:12,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.10
サイジング剤種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング剤付着量:0.6質量%。
【0099】
(原料3)強化繊維束A3(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A3は、下記のようにして製造した。
【0100】
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に重炭酸アンモニウムを電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり80クーロンの電解表面処理を行った後、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A3(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A3の物性を下記に示す。
総フィラメント数:24,000本
【0101】
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.20
サイジング剤種類 :ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング剤付着量:1.5質量%。
【0102】
(原料4)強化繊維束A4(ガラス繊維)
強化繊維束A4には、日東紡製、商品名 PF−E001を用いた。
【0103】
(原料5)強化繊維束A5(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A5は、下記のようにして製造した。
【0104】
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行った後、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A5(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A5の物性を下記に示す。
【0105】
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.10
サイジング種類剤:(メタ)アクリル系重合体B1
サイジング付着量:0.5質量%。
【0106】
(原料6)(メタ)アクリル系重合体B1
撹拌装置、温度センサー、還流冷却器およびモノマー滴下口がついた1L四つ口フラスコに、イオン交換水137.4gを仕込み、脱気および窒素ガスのバブリングを数回繰り返し溶存酸素濃度が2mg/L以下になるまで脱酸素した後、昇温を開始した。以後の乳化重合工程では、窒素ガスの吹き込みを継続した。
【0107】
メタクリル酸メチル35.0g、メタクリル酸n−ブチル54.0g、アクリル酸1.0gおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル10.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100g、「アデカリアソーブ(登録商標)SR−1025」(アデカ(株)社製の反応性乳化剤、25%水溶液)8.0g、およびプレエマルジョン製造用イオン交換水39.7gを混合し、乳化機にかけ10000回転で10分間乳化し、プレエマルジョンを製造した。
【0108】
フラスコ内温度が重合温度の75℃になった時点で、前記プレエマルジョンの10wt%(14.8g)を投入した。フラスコ内温度が重合温度の75℃に回復した時点で、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.2gを添加し、この後75℃で1時間乳化重合を行った。
【0109】
プレエマルジョンの残り90wt%(132.9g)を3時間かけてフラスコ内に滴下し、滴下終了後75℃でさらに30分間重合を行った後、30分で80℃に昇温して熟成反応を行った。昇温30分後に過硫酸アンモニウム0.020gおよびイオン交換水0.400gを添加し、この後30分後に、さらに過硫酸アンモニウム0.010gおよびイオン交換水0.200gを添加し、添加終了後さらに30分間熟成反応を行った後、冷却した。
【0110】
40℃以下になるまで冷却して、「アデカネート(登録商標)B−1016」(アデカ(株)の消泡剤)0.05gを添加し、さらに30分間撹拌混合し、25%アンモニア水0.47gおよび希釈用イオン交換水393.5gを添加して(メタ)アクリル系重合体B1を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0111】
以下、表中の記載を含め、(メタ)アクリル系単量体を次のように略記する場合がある。メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸n−ブチル(BMA)、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸イソボルニル(IBOMA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア(MEEU)、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)。
【0112】
(原料7)(メタ)アクリル系重合体B2
メタクリル酸n−ブチル60.0g、メタクリル酸イソボルニル36.0g、アクリル酸1.0gおよびメタクリル酸2−エチルヘキシル3.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100gを用いた以外は、(メタ)アクリル系重合体B1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体B2を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0113】
(原料8)(メタ)アクリル系重合体B3
メタクリル酸メチル29.0g、アクリル酸シクロヘキシル60.0g、アクリル酸1.0gおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル10.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100gを用いた以外は、(メタ)アクリル系重合体B1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体B3を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0114】
(原料9)(メタ)アクリル系重合体B4
メタクリル酸メチル30.0g、アクリル酸シクロヘキシル50.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10.0gおよびN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア10.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100gを用いた以外は、(メタ)アクリル系重合体B1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体B4を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0115】
(原料10)(メタ)アクリル系重合体B5
メタクリル酸メチル30.0g、アクリル酸シクロヘキシル50.0gおよびN−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド20.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100gを用いた以外は、(メタ)アクリル系重合体B1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体B5を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0116】
(原料11)(メタ)アクリル系重合体B6
メタクリル酸メチル35.0g、メタクリル酸n−ブチル54.0g、アクリル酸1.0gおよびメタクリル酸2−エチルヘキシル10.0gからなる(メタ)アクリル単量体混合物100gを用いた以外は、(メタ)アクリル系重合体B1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体B6を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
【0117】
(原料12)ポリビニルアルコールB7
ナカライテスク製のポリビニルアルコール(重合度2000)を用いた。
【0118】
(原料13)熱可塑性樹脂C1(酸変性ポリプロピレン樹脂)
三井化学(株)製、“アドマー(登録商標)”QE510を用いた。その物性は下記の通りである。
比重:0.91
融点:160℃。
【0119】
(原料14)熱可塑性樹脂C2(ポリアミド6樹脂)
東レ(株)製、“アミラン(登録商標)”CM1001を用いた。その物性は下記の通りである。
比重:1.13
融点:225℃。
【0120】
(原料15)熱可塑性樹脂C3(PPS樹脂)
東レ(株)製、“トレリナ(登録商標)”A900を用いた。その物性は下記の通りである。
比重:1.34
融点:278℃。
【0121】
<強化繊維束の引張強度および引張弾性率の測定>
強化繊維束の引張強度および引張弾性率は、日本工業規格(JIS)−R−7601「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により、求めた。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、“BAKELITE(登録商標)”ERL4221(100質量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)/アセトン(4質量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成した。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とした。
【0122】
<強化繊維束のO/Cの測定の測定>
強化繊維束の表面酸素濃度(O/C)は、X線光電子分光法により次の手順に従って求めた。まず、溶剤で炭素繊維表面の付着物などを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた。X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202cVに合わせた。K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりC1Sピーク面積を求めた。K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりO1Sピーク面積を求めた。
【0123】
表面酸素濃度O/Cを、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
【0124】
<強化繊維束へのサイジング剤の付着量の測定>
試料として、サイジング剤が付着している炭素繊維約5gを採取し、耐熱性の容器に投入した。次にこの容器を120℃で3時間乾燥した。吸湿しないようにデシケーター中で注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。続いて、容器ごと、窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱後、同様にデシケーター中で吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤の付着量を次の式により求めた。
付着量(質量%)=100×{(W−W)/W
なお、測定は3回行い、その平均値を付着量として採用した。
【0125】
各実施例で得られる評価基準は次の通りである。
【0126】
(繊維強化成形材料の生産効率の評価)
繊維強化成形材料10kgを製造するのに要する時間を測定し、以下の基準で判定した。
A:30分未満
B:30分以上60分未満
C:60分以上120分未満
D:120分以上。
【0127】
(繊維強化成形材料における強化繊維分散状態の評価)
得られた強化繊維基材(A2)の任意の部位より、50mm×50mmの正方形状に基材を切り出して顕微鏡にて観察した。10本以上の炭素繊維の単繊維が束状になった状態、すなわち分散が不十分な炭素繊維の束の個数を測定した。この手順で20回の測定をおこない、その平均値をもって、分散が不十分な炭素繊維の束の個数を評価した。判定は以下の基準で判定した。
A:分散が不十分な炭素繊維の束の個数1個未満
B:分散が不十分な炭素繊維の束の個数1個以上5個未満
C:分散が不十分な炭素繊維の束の個数5個以上10個未満
D:分散が不十分な炭素繊維の束の個数10個以上。
【0128】
(繊維強化成形材料の比強度の評価)
得られた繊維強化成形材料を200mm×200mmに切り出して、120℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維強化成形材料を4枚積層し、熱可塑性樹脂(C)が酸変性ポリプロピレン樹脂の場合は温度230℃、ポリアミド6樹脂の場合は温度250℃、PPS樹脂の場合は温度300℃とし、圧力30MPaで5分間プレス成形し、圧力を保持したまま50℃まで冷却して厚み1.0mmの成形品を得た。成形品から試験片を切り出し、ISO1183(1987)に基づいて成形品の比重ρを測定した。次いで成形品から試験片を切り出し、ISO527−3法(1995)に従い引張強度を測定した。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について切り出して試験片を作製した。それぞれの方向について測定数はn=5とし、全ての測定値(n=20)の平均値を引張強度σcとした。測定装置としては“インストロン(登録商標)”5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)を使用した。得られた結果より次式により、成形品の比強度を算出した。
成形品の比強度=σc/ρ
判定は成形品の比強度をもとに以下の基準で判定した。
AAA:比強度350MPa以上
AA:比強度325MPa以上350MPa未満
A:比強度300MPa以上325MPa未満
B:比強度275MPa以上300MPa未満
C:比強度250MPa以上275MPa未満
D:比強度250MPa未満。
【0129】
(繊維強化成形材料の比剛性の評価)
得られた繊維強化成形材料を200mm×200mmに切り出して、120℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維強化成形材料を4枚積層し、熱可塑性樹脂(C)が酸変性ポリプロピレン樹脂の場合は温度230℃、ポリアミド6樹脂の場合は温度250℃、PPS樹脂の場合は温度300℃とし、圧力30MPaで5分間プレス成形し、圧力を保持したまま50℃まで冷却して厚み1.0mmの成形品を得た。成形品から試験片を切り出し、ISO178法(1993)に従い曲げ弾性率を測定した。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について切り出して試験片を作製した。それぞれの方向について測定数はn=5とし、全ての測定値(n=20)の平均値を曲げ弾性率Ecとした。測定装置としては“インストロン(登録商標)”5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)を使用した。得られた結果より次式により、成形品の比剛性を算出した。
成形品の比剛性 =Ec1/3/ρ(ρ:成形品の比重)
判定は成形品の比剛性をもとに以下の基準で判定した。
A:比剛性2.20以上
B:比剛性2.00以上2.20未満
C:比剛性1.50以上2.00未満
D:比剛性1.50未満。
【0130】
(成形品の均一性の評価)
成形品の引張強度の評価結果の変動係数(CV値)を評価した。判定は変動係数(CV値)をもとに以下の基準で判定した。
A:変動係数5未満
B:変動係数5以上10未満
C:変動係数10以上15未満
D:変動係数15以上。
【0131】
(強化繊維基材(A2)の引張強力の評価)
強化繊維基材(A2)より、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について幅12.5mm、長さ200mmの試験片を作製した。速度1.6mm/分の引張速度で引張試験し、強化繊維基材(A2)の破断時の荷重を幅12.5mmで除して、引張強力(N/cm)を測定した。それぞれの方向について測定数はn=5とし、全ての測定値(n=20)の平均値を引張強力とした。
【0132】
(実施例1)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図2に示す装置3を用いて、強化繊維基材(A2)を製造した。装置3は、分散槽4、抄紙槽6、および、供給槽9を備えている。分散槽4は、直径500mmの円筒形状の容器であり、容器下部に開口コック5を備える。抄紙槽6は、底部に幅300mmの抄紙面7を有するメッシュコンベア8を備える。供給槽9は、(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョンを強化繊維基材(A1)11に供給する。供給槽9には開口コック5を備える。(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョン付与部10はカーテンコート式であり、強化繊維基材(A1)11上に均一に(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンを散布可能である。分散槽4の上面の開口部には撹拌機12が付属し、開口部から強化繊維束13および分散媒体2を投入可能である。
【0133】
まず、強化繊維束A1(炭素繊維)をカートリッジカッターで6mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。
【0134】
分散槽4に水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、そこに、前記チョップド炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間撹拌してスラリーを調製後、容器下部の開口コック5を開放し、該スラリーを幅300mmの抄紙面7を有するメッシュコンベア8の上に流し込み、水を吸引して引き取り、長さ15m、幅300mmの強化繊維基材(A1)11を得た。次いで、供給槽9の開口コック5を開放して、該強化繊維基材(A1)の上面に、(メタ)アクリル系重合体B1の1質量%エマルジョン液を散布した。余剰分のエマルジョン液を吸引したのち、強化繊維基材を200℃の乾燥炉14に3分間で通過させ、巻取機18で巻き取ることで、(メタ)アクリル系重合体B1が付与された強化繊維基材(A2)15を得た。
【0135】
得られた強化繊維基材(A2)15を製造装置3から取り出し、加圧、加熱および冷却が可能なダブルベルトプレス装置19が設けられた図3の装置20へセットした。装置20は、ダブルベルトプレス装置19の導入部の上下2カ所に熱可塑性樹脂としてC1の不織布(樹脂目付100g/m)を収容するためのクリール16を備え、強化繊維基材(A2)15に熱可塑性樹脂C1が含浸した繊維強化成形材料17を引き取るための巻取機18を備える。
【0136】
強化繊維基材(A2)にクリール16より供給される熱可塑性樹脂C1の不織布(目付:100g/m)を上下方向から狭持し、ダブルベルトプレス装置19に導入した。ダブルベルトプレス装置19では、前半部にて230℃、3.5MPaで加熱加圧し、後半部にて60℃、3.5MPaで冷却加圧して、強化繊維基材(A2)と熱可塑性樹脂C1が複合化された繊維強化成形材料17を得た。
【0137】
強化繊維束、(メタ)アクリル系重合体(B)および熱可塑性樹脂(C)の配合量は表2に示したとおりである。こまた、各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0138】
(実施例2)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図4に示す装置21を用いて、繊維強化成形基材を製造した。装置21は、装置3に装置20が一体化された装置である。装置21を用いて、強化繊維束と分散媒体を継続的に投入し、全工程をオンラインで実施した以外は、実施例1と同様にして、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0139】
(実施例3)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)の配合量を0.4質量%とした以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0140】
(実施例4)乾式プロセスによる繊維強化成形材料の製造
図5の装置22を用いて、繊維強化成形基材を製造した。装置22は、装置21の抄紙部分の構造がカード機23に置き換わった装置である。装置22を用いて、カード機23部分に強化繊維束として強化繊維束A2を継続的に投入し、全工程をオンラインで実施した以外は、実施例2と同様にして、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0141】
(実施例5)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
分散槽4におけるスラリー中の強化繊維の濃度を0.04質量%とし、抄紙槽6において分散媒体2を継続供給してスラリー中の強化繊維の濃度を0.02質量%に薄めた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0142】
(実施例6)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
分散槽4におけるスラリー中の強化繊維の濃度を1.5質量%とした以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表2に示した。
【0143】
(実施例7)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
分散槽4におけるスラリー中の強化繊維の濃度を0.1質量%とした以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0144】
(実施例8)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
分散槽4におけるスラリー中に強化繊維と熱可塑性樹脂のカット繊維とを投入し、強化繊維の濃度を0.02質量%、熱可塑性樹脂のカット繊維(単繊維繊度3dtex、カット長6mm)の濃度を0.03質量%とし、固形成分の合計濃度を0.05質量%とし、クリール16より供給される熱可塑性樹脂C1の不織布を用いずに、ダブルベルトプレス装置19に導入した以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0145】
(実施例9)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)として(メタ)アクリル系重合体B2を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0146】
(実施例10)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)として(メタ)アクリル系重合体B3を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0147】
(実施例11)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
強化繊維束として強化繊維束A3を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0148】
(実施例12)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
強化繊維束として強化繊維束A4を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表3に示した。
【0149】
(実施例13)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)として(メタ)アクリル系重合体B4を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表4に示した。
【0150】
(実施例14)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)として(メタ)アクリル系重合体B5を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表4に示した。
【0151】
(実施例15)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
熱可塑性樹脂(C)として熱可塑性樹脂C2を用い、ダブルベルトプレス装置19では、前半部にて温度を250℃とした以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表4に示した。
【0152】
(実施例16)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
熱可塑性樹脂(C)として熱可塑性樹脂C3を用い、ダブルベルトプレス装置19では、前半部にて温度を300℃とした以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表4に示した。
【0153】
(実施例17)乾式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図5の装置22において、(メタ)アクリル系重合体(B)の供給槽9を用いずに、予め(メタ)アクリル系重合体(B)を付与した強化繊維束A5を、カード機23部分に継続的に投入した以外は、実施例4と同様にして、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表5に示した。
【0154】
(実施例18)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図4の装置21において、(メタ)アクリル系重合体(B)の供給槽9を用いずに、予め(メタ)アクリル系重合体(B)を付与した強化繊維束A5を用いた以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表5に示した。
【0155】
(実施例19)乾式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図7の装置26を用いて、繊維強化成形基材を製造した。装置26は、装置22の(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョンの供給槽9が、カード機23部分に設置され、強化繊維基材(A1)の作製と同時に(メタ)アクリル系重合体(B)を強化繊維基材(A1)に付与することができる装置である。装置26を用いて、カード機23部分に強化繊維束として強化繊維束A1を継続的に投入した以外は、実施例4と同様にして、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0156】
(実施例20)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図8の装置27を用いて、繊維強化成形基材を製造した。装置27は、装置21の(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョンの供給槽9が、分散槽4部分に設置されている装置である。分散槽4に(メタ)アクリル系重合体(B)を継続的に供給することが可能であり、強化繊維基材(A1)の作製と同時に(メタ)アクリル系重合体(B)を強化繊維基材(A1)に付与することができる。装置26を用いて、分散槽4に(メタ)アクリル系重合体(B)を継続的に供給したこと以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0157】
(比較例1)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
図6の装置25を用いて、強化繊維基材(A2)を製造した。装置6は、分散槽4、抄紙槽6および供給槽9を備えている。分散槽4は、容器下部に開口コック5を備える直径500mmの円筒形状の容器である。抄紙槽6は、底部に300mm角の正方形の抄紙面7を有するメッシュシート24を備える槽である。供給槽9は、(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョンを強化繊維基材(A1)11に供給する。供給槽9には開口コック5を備える。(メタ)アクリル系重合体(B)のエマルジョン付与部10は開口コック出口が可動式であり、強化繊維基材(A1)11上に均一に(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンが散布可能である。分散槽4の上面の開口部には撹拌機12が付属し、開口部から強化繊維束13および分散媒体2を投入可能である。なお、装置6は、バッチ式の製造装置であり、強化繊維基材(A1)の引き取りはできない。メッシュシート24の抄紙面7上に強化繊維基材(A1)11が形成された後、(メタ)アクリル系重合体(B)を付与する。(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材を装置25から取り出し、乾燥機に入れて乾燥させることで、強化繊維基材(A2)を得る。
【0158】
熱可塑性樹脂(C)として熱可塑性樹脂C1の不織布(樹脂目付100g/m)を、強化繊維基材(A2)の上下に1枚ずつ配置し、温度230℃、3.5MPaで5分間加熱加圧し、次いで60℃、3.5MPaで5分間冷却加圧して、強化繊維基材(A2)と熱可塑性樹脂C1が複合化された繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0159】
(比較例2)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)を付与しなかったこと以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0160】
(比較例3)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)として(メタ)アクリル系重合体B6を用いたこと以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0161】
(比較例4)湿式プロセスを用いた繊維強化成形材料の製造
(メタ)アクリル系重合体(B)のかわりにポリビニルアルコールB7を用いたこと以外は、実施例2と同様に処理を行い、繊維強化成形材料を得た。材料の配合量と各工程における実施条件および得られた強化繊維基材と繊維強化成形材料との評価結果を、表6に示した。
【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
【表5】

【0166】
【表6】

【0167】
【表7】

【0168】
表2〜7から明らかなように、実施例1〜20ではいずれも短時間で炭素繊維の分散状態に優れ、成形品とした場合にも高い力学特性を保つことのできる繊維強化成形材料を得ることができた。特に原料を継続的に投入して全工程をオンラインで行い、(メタ)アクリル系重合体(B)の付与を後から行うことにより、成形品とした場合に力学特性に優れる繊維強化成形材料を効率的に製造することができた(実施例2、18、20および比較例1参照)。また、C1/C2を0.8〜1.2の範囲とすることで、より優れた強化繊維の分散状態を確保でき、得られる成形品の力学特性も向上することが判明した(実施例2、実施例5参照)。
【0169】
また、(メタ)アクリル系重合体(B)を用いなかった場合には、強化繊維基材の引き取りが不可能であった(比較例2)。さらには、(メタ)アクリル系重合体(B)が側差に水酸基をもたない場合(比較例3)や、(メタ)アクリル系重合体(B)のかわりにポリビニルアルコールを用いた場合(比較例4)には、得られる成形品の力学特性が大きく劣る結果となった。
【符号の説明】
【0170】
1 強化繊維
2 分散媒体
3 強化繊維基材(A1)、(A2)の製造装置
4 分散槽
5 開口コック
6 抄紙槽
7 抄紙面
8 メッシュコンベア
9 (メタ)アクリル系重合体(B)の供給槽
10 (メタ)アクリル系重合体のエマルジョン付与部
11 強化繊維基材(A1)
12 撹拌機
13 強化繊維束
14 乾燥機
15 強化繊維基材(A2)
16 クリール
17 繊維強化成形材料
18 巻取機
19 ダブルベルトプレス装置
20 繊維強化成形材料の製造装置
21 強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料の製造装置
22 強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料の製造装置
23 カード機
24 メッシュシート
25 強化繊維基材(A1)、(A2)、繊維強化成形材料の製造装置
26 強化繊維基材(A1)の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の第1a工程、第2a工程、第3a工程および第4a工程を含む繊維強化成形材料の製造方法;
第1a:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工する工程;
第2a:第1a工程で得られた強化繊維基材(A1)1〜70質量部に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を0.1〜10質量部を付与する工程;
第3a:第2a工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)に、熱可塑性樹脂(C)を複合化して、強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%および熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を含む繊維強化成形材料を得る工程;
第4a:第3a工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【請求項2】
次の第1b工程、第2b工程および第3b工程を含む繊維強化成形材料の製造方法;
第1b:強化繊維束1〜70質量部に対して、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)が0.1〜10質量部付着した、不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A2)に加工する工程;
第2b:第1b工程で得られた(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%に、熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を複合化して、繊維強化成形材料を得る工程;
第3b:第2b工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【請求項3】
次の第1c工程、第2c工程および第3c工程を含む繊維強化成形材料の製造方法;
第1c:不連続な強化繊維束をシート状の強化繊維基材(A1)に加工すると同時に、側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を前記強化繊維基材(A1)に、強化繊維基材(A1)1〜70質量部に対して0.1〜10質量部付与し、(メタ)アクリル系重合体が付与された強化繊維基材(A2)を得る工程;
第2c:第1c工程で得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)1.1〜80質量%に、熱可塑性樹脂(C)20〜98.9質量%を複合化して、繊維強化成形材料を得る工程;
第3c:第2c工程で得られた繊維強化成形材料を1m/分以上の速度で引き取る工程。
【請求項4】
前記強化繊維基材(A1)が、以下の方法aにより加工された得られた短繊維ランダム配向基材である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法;
方法a:分散媒体に不連続な強化繊維束を投入する工程(i)と;
前記強化繊維束を構成する強化繊維が前記分散媒体中に分散したスラリーを調製する工程(ii)と;
前記スラリーより分散媒体を除去して強化繊維基材(A1)を得る工程(iii)とを含み;かつ、
前記工程(ii)で調製されたスラリー中の強化繊維の質量含有率をC1とし、前記工程(iii)開始時のスラリー中の強化繊維の質量含有率をC2とした場合に、C1/C2が0.8以上1.2以下とする。
【請求項5】
前記第2a工程、1b工程および1c工程のいずれかの工程において得られた、(メタ)アクリル系重合体(B)が付与された強化繊維基材(A2)を、引張強力が1N/cm以上の状態として引き取る、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項6】
前記工程(ii)で調製されるスラリー中の固形成分濃度が0.001〜1質量%である、請求項4または5に記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項7】
工程(i)において分散媒体と強化繊維束とが分散槽に継続的に投入され、前記工程(i)から工程(iii)までが継続的に実施される、請求項4〜6のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項8】
全工程がオンラインで実施されてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項9】
前記強化繊維基材(A2)における固形分の質量のうち、強化繊維の割合が80質量%以上100質量%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項10】
前記第1a工程、1b工程および1c工程のいずれかの工程において、強化繊維基材(A1)を加工する際に、熱可塑性樹脂(C)を繊維状または粒子状の形態にて強化繊維基材(A1)中に混合する、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項11】
前記第4a工程、3b工程および3c工程のいずれかの工程の後に、得られた繊維強化成形材料を長さ方向、幅方向ともに1〜30mmにカットする工程を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の凝集エネルギー密度CEDが385MPa以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)を構成する(メタ)アクリル系単量体が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体が60質量%以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項14】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜13のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項15】
前記炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.05〜0.5である、請求項14に記載の繊維強化成形材料の製造方法。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルおよびPEEKより選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂である、請求項1〜15のいずれかに記載の繊維強化成形材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174057(P2011−174057A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15037(P2011−15037)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】